Contract
設計・工事監理業務の構成と完成すべき成果図書(戸建木造住宅等小規模建築の場合)(試案)
1. はじめに
2010 年4月司法支援建築会議調査研究部会
設計・工事監理契約において、報酬額は定められていても業務が中断した場合においては、予め明確かつ具体的な合意が成立していないと、既に遂行した業務の報酬額等に関して紛争が発生することがある。紛争を解決するためには、何等かの方法により業務の内容、達成度、報酬金額等を判定する必要が生じる。
そこで、司法支援建築会議調査研究部会(以下、調査研究部会と略す)では、紛争処理の場合に利用できる現実的な判定方法を、既存の公開資料に基づいて検討することとした。
1.1 検討の前提
設計・工事監理業務の構成、要素となる業務の比重の置き方等、業務遂行の方針は、個々の設計工事監理者の判断に委ねられているものなので、現実には多様である。
従って、業務の達成度( 出来高)に関する統一的、標準的な判定方法を模索することは、困難なので、ここでは、以下の前提を置いて検討することとした。
① 対象は小規模建築物(主に戸建木造住宅等)に関する紛争( 鑑定を利用することが合理的でない事案)とする
② 算定方法は、個人裁判官、代理人等、非建築専門家が利用できる簡易なものを目標とする
③ 契約の成果物である「成果図書」の構成は、平成 21 年 1 月 7 日付け国土交通省告示第 15 号「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準」(以下、「告示」という)による
1.2 運用方法の想定
本判定方法は、様々な場面で利用される可能性があるが、ここでは、裁判等に利用される場合に裁判所が当事者に対して本判定方式を説明し、又はこれに代わる十分に合理的な方法を選定させ、これにより金額等を算定させ、その結果を裁判所が審査して、判定することを想定する。
なお、大規模あるいは複雑な建築物の設計等に関しては、専門家の鑑定に委ねることが合理的と考えた。
2. 業務構成と成果物図書対応x
xの基本方針等に従って調査し、検討結果を次ページの表として取りまとめた。
(1) 設計工事監理業務の構成に関しては、対象建築物( 戸建木造住宅等)に関して、設計事務所がウエブサイト上に公表した業務所要時間量(単位:月又は週)を調査してまとめる
従って、調査結果は個々の事案の実際の所要量と一致しない可能性がある。別途、事案に即した信頼できる DATA があれば、これによる判定が合理的である
(2) 成果図書には建築物の計画に応じて作成されないものもある点にも注意が必要( 告示参照)
(3) 地盤調査等、通常、建築主が外注する業務は含めない。その費用は別途算定する必要がある
(4) 成果図書の充実度(綿密さ等)は報酬算定上重要な要素であるがここでは考慮していない(簡易な方法での算定は事実上不可能)
(5) 業務または成果分類は告示の分類に可能な限り対応させる
原調査資料の分類又は用語法は、告示とは必ずしも一致していないものがある。本案作成者が解釈し分類した。
(6) 「確認申請業務」は、建築基準法改正(厳格適用等)の影響で、構成割合が大きくなっている(設計業務全体の 10 %程度)。また、
「実施設計業務」と完全には分離できない。タイミングとしても同時並行して行われる業務部分がある
設計・工事監理業務の構成と完成すべき成果図書対応表(戸建木造住宅等小規模建築物用)(案) 単位 %
大 分 類 | 中 | 分 | 類 | 成 果 図 書 及 び 成 果 に 関 す る 証 拠 類 | |||||||||||||||||||||||
設の | 計み | 監を む | 理含 | 設の | 計み | 監を む | 理含 | ||||||||||||||||||||
基 | 本 | 設 | 計 | 4 0 | 3 0 | xxx 策 | 査等x x | 、 役打 合 、方 針 | 1 0 | 7 . 5 | 打設 | 合計 | 記 録案 | 模ス | 型ケ | ッ | チ | ||||||||||
基業 | 本務 | 設 | 計 | 3 0 | 2 2 . 5 | 仕各工 書 | 様階事 | 概 x x 面費 | 書図概 | 算 | 仕断設 | 上面備 | 概図位 | 要 表 置 図 | 配立設 | 置 図 面 図 備 仕 様 概 要 書 | |||||||||||
( | 小 | 計 ) | 4 0 | 3 0 | |||||||||||||||||||||||
実 | 施 | 設 | 計 | 6 0 | 4 5 | 実業 | xx | 設 | 計 | 5 0 | 3 7 . 5 | 仕 x | x 計 | 書 図 | 仕 展 | x x | 表 図 | 各面天 図 | 階図井 | 平 伏 | 断 面 図 は り 伏図 | 立xx | 面 図 ( 各 ) 屋 伏 図 | ||||
床建工 書 | 伏具事 | 図表 費 | 概 | 算 | 軸設構 | 組備造 | 図位計 | 置 図 算 書 | |||||||||||||||||||
確 | 認 | 申 請 | 1 0 | 7 . 5 | 建書 | 築 | 物 | 概 | 要 | x | x | 表 | 敷内 | 地図 | 案 | 配 置 図 | そ要 | の 他な 図 書 | 必 | ||||||||
( | 小 | 計 ) | 6 0 | 4 5 | |||||||||||||||||||||||
設 | 計 | 合 | 計 | 1 0 0 | 7 5 | 1 0 0 | 7 5 | ||||||||||||||||||||
工 | 事 | 監 | 理 | - | 2 5 | - | 2 5 | 工告 | 事書 | 監 | 理 | 報 | |||||||||||||||
総 | 計 | 1 0 0 | 1 0 0 |
注 ・ 地 盤 調 査 等 、 注 文 主 の 負 担 で 、 別 途 専 門 家 に x x す る 必 要 の あ る 業 務 は こ の 表 に は 含 ま れ な い 。
・ 建 築 物 の 計 画 に 応 じ て 、 x x さ れ な い 図 書 が あ る 。 工 事 監 理 業 務 の 構 成 割 合 は 、 告 示 に よ る と 、ほ ぼ 2 5 % で あ る が 、 建 築 物 の 種 類 等 に よ り 個 別 に 算 定 可 能 で あ る 。
・ 構 成 割 合 は 、 本 来 、 設 計 者 の 方 針 、 対 象 建 築 物 の 性 質 等 に よ り 変 動 す る も の で あ る 。
・ 設 計 x x x の 判 定 に 当 た っ て は 、 事 案 の 個 別 事 情 を 考 慮 す る こ と が 不 可 欠 で あ る 。
・ 中 分 類 内 の 業 務 達 成 度 の 判 定 に つ い て は 、 信 頼 で き る D A T A が 無 く し て は 無 理 で あ ろ う 。
付 録 用 語 に 関 す る 注 意
「工事費概算書」
(出所:「四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約書類」の中の業務の説明)
告示には、「工事費概算書」が2 種類ある。基本設計段階と実施設計段階の成果図書で、同一名称を使用している。この相違の説明は、以下の通りである。
(1) 「基本設計に関する業務」の「概算工事費の検討」における成果
「基本設計図書の作成が完了した時点において、当該基本設計図書に基づく建築工事に通常要する費用を概算し、工事費概算書(工事費内訳明細書、数量調書等を除く。以下同じ。)を作成する。
なお、ここで算出される概算工事費は、工事予算の目安とするもので、工事請負契約により決定される工事代金額とは必ずしも一致するものではない。」
(2) 「実施設計に関する業務」の「概算工事費の検討」における成果
「実施設計図書の作成が完了した時点において、当該実施設計図書に基づく建築工事に通常要する費用を概算し、工事費概算書を作成する。
なお、ここで算出される概算工事費は、工事予算の目安とするもので、工事請負契約により決定される工事代金額とは必ずしも一致するものではない。
いずれも、告示の「標準業務」の業務内容に関する記述と同じで、算定の対象となる「設計」が異なるだけである。
以上
【参考文献】
「新しい業務報酬基準 講習会テキスト」(第2版) 発行:新・建築士制度普及会 平成 21 年9月