Remfry & Sagar Ms. Sangeena Savant(弁護士)
インドにおける商標ライセンス契約の留意点
Remfry & Sagar Ms. Xxxxxxxx Xxxxxx(弁護士)
Mr. Xxxxx Xxxxxxx(弁護士)
Remfry & Sagar は、1827 年に設立され、インドで最も古い歴史を持つ最大の法律事務所である。現在 75 名の弁護士・弁理士と 125 名のスタッフを抱え、知的財産の分野では日本企業をはじめとする多くのクライアントの出願や紛争案件を手掛けている。Savant 氏および Sangara 氏はともに商標に関してxxの経験と豊富な知見を有している。
「商標ライセンス」とは、契約書によるロイヤルティの支払いと引き換えに、取引において商標を使用する権限を第三者(商標権者以外の者)に付与することをいう。商標ライセンスは、コモンローおよび制定法(1999 年商標法)に基づきインドにおいて有効であると認められている。
1999 年商標法(「商標法」)の第 2 条(r) は、以下のとおり「許諾使用(permitted use)」を定義している。
「許諾使用」とは、登録商標についての下記に掲げる使用をいう。
(1)登録された使用権者による、以下に挙げる商品または役務についての使用 (a)取引の過程において当該使用権者と関連性があり、
(b)その時点で有効に存続する登録商標にかかるものであって、 (c)当該使用権者が使用権者として登録されており、かつ
(d)登録使用権者の登録に課せられる全ての条件または制限を満たす商品または役務。
(2)商標権者および登録された使用権者以外の者による、以下に挙げる商品または役務の使用
(a)取引の過程において当該使用権者と関連性があり、
(b)その時点で有効に存続する登録商標にかかるものであって、 (c)当該商標権者から契約書による同意を得ており、かつ
(d)登録使用権者および当該商標の登録に課せられる全ての条件または制限を満たす商品または役務。
商標ライセンスは、公衆に混同を生じるものであってはならず、許諾商標の識別性を損なうものであってもならない。したがって、商標ライセンスは書面による契約に基づいて付与されるべきであり、当該商標の出所と当該商標が使用される商品または役務との間の関連性が確実に維持されるよう、それに関する条件および要件を明確に記載すべきである。具体的には、契約書を作成する際は下記の点に留意する必要がある。
(a)商標権者と登録使用権者との間の正確な関係を明確に定義する。例えば、両者の関係が親会社と子会社の関係か、などを明確にする。
(b)使用期限の有無。期限がある場合は使用期間を明確にする。 (c)独占的か非独占的な使用許諾か。
(d)商標ライセンスが適用される地域。 (e)使用許諾に係る商品または役務。
(f)使用許諾に係る商品または役務の品質および仕様および地域についての条件または制限事項。
(g)上述した条件または制限事項には、品質管理の内容に関する条項を含めるべきである。具体的には、商標権者の基準および仕様を満たす商品の製造、商標権者による定期的な工場の管理監督、すなわち、生産施設および製造工程を検査する権限、商品の品質を保証するための製品を検査する権限ならびに欠陥品を回収する権限を含めることも可能である。
(h)商標の全所有権が商標権者に帰属していること、すなわち、契約期間中および終了後において使用権者が当該商標に関するいかなる権利をも主張しないことを明記すべきである。また、インドまたは外国を問わず、使用権者が同一または類
似する商標をいかなる商品または役務について出願をしてはならない旨を規定してもよい。
(i)使用権者が商標権者に支払うべきロイヤルティその他の報酬に関する条件。 (j)商標権者による使用権者に対する監督が終了する場合、またはライセンス契
約に違反した場合における使用許諾を消滅させる手段。
インドでは、商標に係る商品または役務の全部または一部について商標権者以外のあらゆる者を使用権者として登録することができる。使用権者の登録手続は商標法第 48 条~第 54 条に規定されており、商標ライセンス契約締結後 6 か月以内に下記に示す書類を所定の書式(書式 TM-28)をもって商標権者および使用権者が共同でインド特許庁に申請しなければならない。
(a)商標権者および使用権者の両者が署名した商標ライセンス契約書。商標ライセンス契約書の原本(領事認証もしくは公証は不要)または商標ライセンス契約書の認証謄本。
(b)申請書に添付された書類が真正なものであることを証言する、公証人の面前で商標権者またはその代理人により作成された宣誓供述書。
(c)商標権者および使用権者の委任状(領事認証もしくは公証は不要)。
登録官は、上記の申請書および添付書類について承認した後、当該ライセンスの対象商品または対象役務について使用権者として登録する。登録簿には、登録された使用権者の登録申請書が提出された日付が明記される。この記録は登録日から 2か月以内に商標公報に公告され、登録官は使用権者の登録が行われたことについて他の使用権者がいる場合には通知する義務を負う。
また、インドでは、商標権者が複数の第三者と単一の商標ライセンス契約を締結することを禁じる規定はない。ただし、使用権者ごとに登録使用権者としての登録申請書を提出する必要がある。よって、複数の使用権者の登録申請書を提出しなければならない場合、使用権者ごとに個別の商標ライセンス契約を締結する方がxxである。
使用権者の登録の更新は、対象となる登録商標の権利期間の満了またはライセンス期間の満了のいずれか早いときまでに行わなければならない。登録の更新には、所定の書式(書式 TM-29)をもって更新の理由を述べた陳述書、使用権者が更新申請の提出に同意することを証明する同意書および委任状を提出する。使用権者の登録申請は、電子または書面により申請することができる。
現行の商標法の下では、商標ライセンスの登録の有無にかかわらず、使用権者による「使用」は上記の条件および要件が満たされているかぎり、商標権者に恩恵をもたらすものである。すなわち、商標権者は、使用権者による使用が上記に詳述された「許諾使用」の範囲内にある限り、登録商標の不使用を理由として当該商標を取消されることはなく、一方で商標局にライセンス登録していなくとも不利益を被ることはない。商標法に基づく使用権者として登録するメリットとは、両当事者間の合意が前提ではあるが、登録された使用権者が商標権者と同様に自らの名義で侵害訴訟を提起できることにあり、登録されていない使用権者はこの利益を享受することができないことにある。
注意点として、インド商標法は、登録商標についてのみライセンスの登録を規定しており、出願中の商標に関するライセンス契約は商標局に登録することはできない。ただし、出願中の商標のライセンスはコモンローに基づく効力を有する。
上記より、ライセンス契約は、商標権者と使用権者の権利が十分に保護され、いかなる方法によってもその権利が損なわれないために包括的な内容でなければならず、あらゆるシナリオを想定する必要がある。
(編集協力:日本技術貿易株式会社)