「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」の重点戦略の1つである「元気な長寿社会を実現する健康・医療・福祉戦略」及び「人口減少社会における地域力創造戦略」の目標 達成にとって、有効な事業となっているかが視点となる。具体的には、監査の対象となる事業が、「第2 期ふる さと秋田元気創造プラン」の理念及び目標に沿った有効な成 果指標が設定されており、次に事業実施の結果としての成果実績がその成果指標と比較して十分であるかについて分析した。また、秋田県が事業の成果実績を適切に評価し、そ...
平成29年xx県告示第205号で告示された外部監査契約について、外部監査人から監査の結果に関する報告の提出があったので、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の38第3項の規定により、次のとおり公表する。
平成30年4月17日
xx県監査委員 | x | x | x | x |
xx県監査委員 | x | x | x | x |
xx県監査委員 | x | x | x | x |
xx県監査委員 | x | x | x | x |
※以下別紙報告書のとおり
- 1 -
包括外部監査結果報告書
平成 30 年 3 月
xx県包括外部監査人公認会計士 xx xx
(本報告書における記載内容の注意事項)
1.端数処理
報告書の数値は、原則として単位未満の端数を切り捨てて表示しているため、xxの総額の内訳の合計が一致しない場合がある。
公表されている資料等を使用している場合には、原則としてその数値をそのまま使用している。そのため、端数処理は不明確な場合もある。
2.報告書の数値の出所
報告書の数値等の資料は、原則すべて出所を明示している。また、包括外部監査人が作成したものについてもその旨明示している。
3.報告書の写真の出所
監査チーム以外の写真等の資料を利用した場合も含めて、写真の出所は明示している。
4.事業費の推移について
「事業費の財源」については 100%県の一般財源の場合、表の記載を省略している。
5.指摘事項及び意見について
本報告書では、監査の結論を【指摘事項】と【意見】に分けて記載する。【指摘事項】は、財務に関する事務のxxxにおいて、適当でない事務処理があったと判断された事項(法規等準拠性)に該当するものである。これらは、県として速やかに措置する必要があると判断した内容である。
また、【意見】は、法規等準拠性の問題は認められないものの、最少の経費で最大の効果を上げる努力の面で検討が望まれる事項や組織及び運営の合理化の観点から改善が望まれる事項など(経済性、効率性及び有効性に関する事項)に該当するものである。ただし、経済性、効率性及び有効性に関する事項についても、質的、金額的に重要性が高いと監査人が判断 される場合には【指摘事項】としている。
6.省略について
省略する場合には、(以下、「○○」という。)と記載している。なお、省略は事業項目(1.2.
…)ごとに行っているため、事業項目が変われば再度省略について説明している。
7.所管課について
「第5 外部監査の結論-事業別-」では担当課ごとに記載しているが、これは監査の対象期間である平成 28 年度時点の担当課である(図 5(21 ページ)参照)。
目 次
2.高齢者の社会参加促進事業 84
3.老人クラブ助成事業 88
4.地域で支える認知症施策推進事業 94
5.介護人材確保対策事業 99
6.社会福祉施設職員退職手当共済費補助金 105
7.老人福祉施設等環境整備事業 107
8.地域介護福祉施設等整備事業 110
9.老人福祉総合エリア運営費(北部、中央地区、南部) 113
10.施設入所者援護費 124
11.軽費老人ホーム減免利用料補助金 127
12.福祉医療費等助成事業 129
Ⅲ 子育て支援課 133
1.すこやか子育て支援事業 133
2.児童手当県負担金 136
3.地域の子育て力向上事業 140
4.児童福祉諸費 145
5.児童会館費 149
6.子どもの居場所づくり促進事業 154
7.市町村子ども・子育て支援事業 157
Ⅳ 健康推進課 166
1.妊婦・出産への健康づくり支援事業 166
第 1 包括外部監査の概要
第 1 包括外部監査の概要
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項に基づく包括外部監査
「xx県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について」
平成 28 年度(平成 28 年 4 月 1 日から平成 29 年 3 月 31 日まで)ただし、必要に応じて他の年度も含む。
平成 29 年 6 月 27 日から平成 30 年 3 月 6 日まで
健康福祉部、あきたxx創造部
xx県では、監査実施年度である平成 29 年 7 月 1 日現在、高齢化率(注 1)が 35.5%と
なっている。この数値は全国平均(平成 28 年 10 月 1 日現在で 27.3%)(注 2)と比べて高い
だけではなく、最近の統計では 47 都道府県で最も高齢化率が高い県となっている。
このような状況のもと、xx県では、平成12 年3 月に「xx県介護保険事業支援計画・第2
次老人保健福祉計画」を策定して以来、3 年ごとに同計画を策定している。現在は、平成 27
年度から平成 29 年度までを計画期間とする「第 6 期介護保険事業支援計画・第 7 期老人福祉計画」が実施されており、高齢化率全国一の県として、地域包括ケアシステムの実現に必要な取組をより一層発展させていく施策を進めている。統計によると、平成 52 年(2040 年)には、xx県の高齢化率は 43.8%に達すると推計されており、来るべき長寿社会に対応した政策を着実に実施することは、xx県にとって重要なテーマとなっている。
また、高齢化が進む一方でxx県の人口は年々減少し続けており、ピーク(昭和 31 年)の
約 135 万人から平成 29 年 4 月 1 日時点で 100 万人を割り込み、国立社会保障・人口問題
研究所の推計では、平成 52 年には 70 万人を下回ると予想されている。人口減少の大きな要
テーマ:xx県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
因となる出生率(注3)において、xx県は平成28 年において5.6 である。高齢化率が全国で
最も高い一方で、この出生率 5.6 も全国で最も低く、しかも平成 7 年度以降連続して最も低い率を継続している。このような人口減少社会においては、少しでも子どもを産み育てる環境を整備するなど、地域全体で子育てを支援する体制は急務となっている。
平成26 年度からスタートした「第2 期ふるさとxxxx創造プラン」では、その重点戦略の1つとして「元気な長寿社会を実現する健康・医療・福祉戦略」及び「人口減少社会における地域xxx戦略」を掲げ、高齢者や障害者等を地域で支える体制づくりや子どもを産み育てる環境の充実強化を重点的に行っていくとしている。
以上から、xx県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について検討することは重要であり、また、過去にxx県の包括外部監査において当該事務を事件(テーマ)としていないことから、平成 29 年度の包括外部監査の事件(テーマ)として有意義であると判断し事件(テーマ)として選択した。
(注 1)高齢化率…65 歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合のこと
(注 2)「平成 29 年版高齢社会白書」(内閣府)より
(注 3)出生率…人口 1000 人当たりにおける出生数
なお、今回の監査では、できる限り幅広く事業を監査することを目的とするため、介護給付費や後期高齢者医療給付費に関する事業は、監査の対象から除外した。
包括外部監査人 | 公認会計士 | xx | xx |
包括外部監査人の事務を補助した者 | 公認会計士 | xx | xx |
公認会計士 | xx | xx | |
公認会計士 | xx | xx | |
公認会計士 | xx | xx | |
公認会計士 | xx | x | |
コンサルタント | xx | xx |
外部監査の対象とした事件につき、包括外部監査人及び監査補助者は地方自治法第 252
条の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
第 2 外部監査の方法
第 2 外部監査の方法
(1)規則等への準拠性の視点
規則等への準拠性は、xx県の「ふるさとxx元気創造プラン」及び「あきたxx総合戦略」に関する事業の各種事務手続きが各種規則や要綱等に定める手続きに沿って適切に行われているかという視点である。
監査においては、対象事業の、1)平成 26 年度から平成 28 年度までの 3 年間の決算額の
推移及び平成 28 年度の予算額、2)平成 28 年度の事業費の内容、3)平成 28 年度決算額の財源構成の内容等について分析的に監査を実施した。また、事業費の内、重要な費目については、支出根拠資料一式を入手することによって支出の適正性を確認した。具体的に入手した資料は、契約締結伺、契約書、仕様書、設計書、予定価格調書、入札書・入札結果表、見積書、支出負担行為伺、実施計画、実施報告(支出報告書を含む)、成果物、納品書、請求書、検査調書、支出命令、その他実績(成果)に関する資料、データなどである。
さらに、対象事業において、指定管理者制度を活用している場合には、設置条例等の整備状況を確認の上、指定管理者の選定手続きの妥当性や業務実施の協定書等への準拠性なども検討する。
以上の手続きの結果、法規等に準拠していない不適正な処理がなされているか確認の上、県に改善策を提案した。
(2)事業の有効性の視点
有効性とは、事務・事業の成果が十分に発現されているかという視点となる。xx県では、平成 26 年度から 4 年間を計画期間とする「第 2 期ふるさとxxxx創造プラン」を作成し、その実現に向けて推進している。よって、健康福祉部、あきたxx創造部が実施する各事業が、
「第 2 期ふるさとxxxx創造プラン」の重点戦略の1つである「元気な長寿社会を実現する健康・医療・福祉戦略」及び「人口減少社会における地域xxx戦略」の目標達成にとって、有効な事業となっているかが視点となる。具体的には、監査の対象となる事業が、「第2 期ふる さとxx元気創造プラン」の理念及び目標に沿った有効な成果指標が設定されており、次に事業実施の結果としての成果実績がその成果指標と比較して十分であるかについて分析した。また、xx県が事業の成果実績を適切に評価し、その結果を将来の事業にフィードバックしているかといったPDCA サイクルの観点も重要となる。
テーマ:xx県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
(例)有効性の指標例
項目 | 目標 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 |
健康寿命(代表指標) | 平均寿命の延びを上回る健康寿命の延伸 | ○○% | ○○% |
出生数 | 6,100 人 | 〇〇人 | ○○人 |
有効性の判断 | 向上 | 低下 |
(3)事業の経済性の視点
経済性とは、事務・事業の遂行に当たり、より少ない予算で事務・事業が遂行できるかという視点である。具体的には、一般財源の持ち出しの程度が分析内容となる。監査の実施においては、過去数年間の行政収支差額の推移の分析によって、各事業における経済性の改善又は悪化の状況について確認することとなる。また、経済性が悪化している場合には、その原因についても分析した上で、改善策を提案する必要がある。xx県においては、限られた予算で事業を推進する必要があるため、この視点は重要となる。ただし、効果を度外視して予算の削減を図る場合などは問題となる。
(例)経済性の指標例
科目 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 |
支出 | △110,000 千円 | △115,000 千円 |
収入 | 15,000 千円 | 31,000 千円 |
収支差額 | △95,000 千円 | △84,000 千円 |
経済性の判断 | - | 向上 |
(4)事業の効率性の視点
効率性とは、成果に対してより少ない経費・労力で事業が執行されているかという視点となる。健康福祉部、あきたxx創造部が実施する各事業が、財政制約の中で効率的に実施されているかが視点となる。具体的には、監査の実施においては、各事業について、事業の成果とコストとの関係を分析することによって、効率的に事業が推進されているかどうかについて確認することとなる。
たとえば、民間委託(指定管理者制度含む)や補助への流れがある中、民間委託であればできるだけ入札などの競争契約を実施しているか、随意契約であればその妥当性はあるか、また補助であれば精算事務手続きを適切に実施するなどにより目的に合致しない支出がないかどうかを確認した。さらに、重点戦略達成のため、選択と集中のもと重点戦略達成のために効果的な事業を実施しているかを確認した。
第 2 外部監査の方法
(例)効率性の指標例
科目 | 平成 26 年度 | 平成 27 年度 |
高齢者施設利用者数(例) | 50,000 人 | 40,000 人 |
成果実績 1 単位 当たりコスト | 1,900 円 (95,000 千円/50,000 人) | 2,100 円 (84,000 千円/40,000 人) |
効率性の判断 | - | 悪化 |
テーマ:xx県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
第 3 外部監査対象の概要
xx県は、全都道府県の中でも最も少子高齢化が進行している都道府県の 1 つといわれ
ている。少子高齢化は、少子化と高齢化の 2 つの問題に分解できる。少子化の問題は総人口の減少として、一方、高齢化の問題は労働人口の減少として、いずれも直接的にxx県の経済に大きな影響を与えることとなる。
(1)xx県のこれまでの人口の推移
xx県においては、国立社会保障・人口問題研究所の『日本の地域別将来推計人口(平成 25 年 3 月推計)』(以下、「社人研資料」という。)等をもとにして、平成 25 年 7 月「xx県人
口の現状と将来」(xx県企画振興部調査統計課)を公表するとともに、平成 26 年 5 月「人口問題対策プロジェクトチーム」を設置し、人口問題に関する調査分析を実施している。以下では、その主なものを示すこととする。
xx県の人口は、明治以降ほぼ一貫して増加を続け、昭和 31 年の 135 万人をピークに減
少に転じている。昭和 49 年から 56 年まで一時持ち直したものの、再び減少をしはじめ、平成
25 年には 105 万人となり、平成 29 年 4 月時点で遂に 100 万人を割り込んでいる。
平成 17 年以降は年間 1 万人以上の人口が減少し、平成 18 年は人口減少率 1%超、平成
25 年には 1.18%となるなど、全国最速のペースで人口減少が進行している。
人口減少の原因分析としては、現象面からの分析と構造面からの分析に分けて説明がなされている。前者はさらに社会動態及び自然動態に、後者は産業構造、社会構造に分けて分析されており、現象面が構造面に影響を与えているとしている。
図 1 xx県の人口の推移(単位:千人)
(出所)「xxの人口問題レポート」(平成 27 年 3 月、人口問題対策プロジェクトチーム)。
第 3 外部監査対象の概要
表 1 人口減少の原因分析
現象面 | 構造面 |
【社会動態面】 若年者の県外流出(高卒、大卒世代等の就職・進学、女性の県内定着率の低下) | 【産業構造】 農業の生産効率の向上と所得水準の低下県内産業の就業者数や生産額 資源立地型産業の衰退 |
【自然動態面】 ① 晩婚 ・未婚化・晩婚化の進行 ・女性の社会進出、結婚に対する考え方の変化、将来への不安 ② 出産 ・第1子出産年齢の上昇 ・夫婦が持つ子供数の減少、過去の産児調整の影響 ③ 死亡 ・高齢化の進行に伴う死亡者の増加 | 【社会構造】 都市と地方の格差 県外大学等への進学女性の就業率 県内各市の社会動態 |
(出所)「xxの人口問題レポート」(平成 27 年 3 月、人口問題対策プロジェクトチーム)。
(2)xx県の過去 10 年間の総人口の推移と少子化の現状について
xx県の過去 10 年間の人口の推移は以下のとおりである。
表 2 xx県の過去 10 年の総人口の推移
(単位:人)
平成 20 年 | 平成 21 年 | 平成 22 年 | 平成 23 年 | 平成 24 年 | 平成25 年 | 平成26 年 | 平成 27 年 | 平成 28 年 | 平成 29 年 | |
総人口 | 1,109,007 | 1,097,483 | 1,086,571 | 1,075,058 | 1,063,143 | 1,050,132 | 1,036,861 | 1,023,151 | 1,009,659 | 995,374 |
対前年 増減数 A | △12,293 | △11,524 | △10,912 | △10,939 | △11,915 | △13,001 | △13,271 | △13,710 | △13,460 | △14,285 |
(出所) xx県作成「平成 29 年 xx県の人口と人口動態」より抜粋。
(注 1) 各年の数値は、県算出による人口で各年 10 月 1 日現在。
(注 2) 表 2 と表 3 の「対前年増減数 A」は一致。
この表のとおり、xx県の総人口は、近年も減少し続けている。また対前年比からもわかるとおり、その減少度合いは年々増している。その結果、遂に平成 29 年の総人口は 100 万人を
割り込み平成 29 年 10 月 1 日時点で 99 万 5374 人となった。ここで、総人口の増減は、出生
と死亡の差としての自然増減と、県内への流入と県外への流出の差としての社会増減の 2 つ
に分けられることから、表 3 において、対前年増減数の内容を、自然増減数と社会増減数に分けて示した。
テーマ:xx県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
表 3 xx県の過去 10 年の自然増減と社会増減 (単位:人)
平成 | 20 年 | 21 年 | 22 年 | 23 年 | 24 年 | 25 年 | 26 年 | 27 年 | 28 年 | 29 年 |
出生 a | 7,528 | 7,044 | 6,871 | 6,715 | 6,505 | 6,248 | 6,077 | 5,988 | 5,739 | 5,461 |
死亡 b | 13,604 | 13,982 | 14,125 | 14,583 | 14,798 | 15,016 | 14,862 | 14,909 | 15,099 | 15,493 |
自然増減 c(a-b) | △6,076 | △6,938 | △7,254 | △7,868 | △8,293 | △8,768 | △8,785 | △8,921 | △9,360 | △10,032 |
転入 d | 15,010 | 15,469 | 14,401 | 14,444 | 13,956 | 13,797 | 13,440 | 12,959 | 13,323 | 12,498 |
転出e | 21,227 | 20,055 | 18,059 | 17,515 | 17,578 | 18,040 | 17,926 | 17,748 | 17,423 | 16,751 |
社会増減 f(d-e) | △6,217 | △4,586 | △3,658 | △3,071 | △3,622 | △4,243 | △4,486 | △4,789 | △4,100 | △4,253 |
対前年増減数 A(c+f) | △12,293 | △11,524 | △10,912 | △10,939 | △11,915 | △13,011 | △13,271 | △13,710 | △13,460 | △14,285 |
(出所) xx県作成「平成 29 年 xx県の人口と人口動態」より抜粋。
(注) 各数値は、各年 10 月 1 日時点の住民基本台帳等登録者の増減数(1年間)であり、各年とも県算出による数値である。
平成 29 年のxx県の総人口の対前年比はマイナス 14,285 人となっており、これは平成
20 年の対前年比マイナス 12,293 人と比べ多くなっている。つまり、過去 10 年で人口減少率
は確実に加速していることがわかる。この表が示すとおり、平成 20 年は自然増減がマイナス
6,076 人である一方、社会増減がマイナス 6,217 で、その差は 141 人(6,217 人-6,076 人)
で、僅かではあるが社会増減のマイナス要因の方が大きかった。一方、平成 29 年は、自然増
減がマイナス10,032 人、社会増減がマイナス4,253 人で、自然増減のマイナス要因が社会増減のマイナス要因を逆転したばかりか、その差は 5,779 人(10,032 人-4,253 人)まで広がっている。
社会増減については、過去 10 年に限ってはxx県外への流出に歯止めがかかっており、
この結果社会増減は依然マイナスではあるが、減少率は 10 年前と比べて低くなっているのである。一方、自然増減については、10 年前と比べて減少率は増している。自然増減には死亡数の増加と出生数の減少の 2 つの要因があるが、死亡数の増加については高齢化が進んでいる現状では避けられないと考えると、自然増減のマイナスは出生数の減少、つまり少子化が重大な要因であることがわかる。xx県の総人口の減少の大きな要因は、出生数の減少が主な原因となっているのである。
出生数の減少を示す指標としては、まず、合計特殊出生率と出生率(人口千人当たり)がある。合計特殊出生率とは、15 歳から 49 歳までの年齢別出生率(母の年齢別の出生数をその年齢の女性人口で割った値)を合計することによって計算されるもので、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に子どもを生むとしたときの子どもの数に相当する。xx県の合計特殊出生率は、約 1.40 前後で推移しており、たとえば 1.20 前後で推移している東京などと比べ
て高い数値となっている。しかしながら、そもそもxx県においては 15 歳から 49 歳までの女
性数が他の都道府県と比べて相対的に少ないので、xx県より合計特殊出生率が低い都道府県と比べて、xx県が少子化の進行度合いが遅いとは言えないのである。
一方、出生率(人口千人当たり)は、人口に対する出生数の割合を示すもので、社会へのイ
第 3 外部監査対象の概要
ンパクトを示す指標としては、より重要なものとなっている。
表 4 は、厚生労働省の調査による平成 28 年度の出生率及び自然増減率(いずれも人口千人当たり)を、出生率の低い都道府県順に並べた変えたものである。この表が示すとおり、秋田県は出生率で全国最下位となっている(自然増減率も全国最下位)。実は、秋田県は平成7 年以降連続で、出生率が全国で最も低くなっているのである。出生率が全国で最も低いという事実は、秋田県の経済規模の縮小、地域活力の低下として顕在化することになり、今後も確実に秋田県の様々な分野に影響を与えることになる。
秋田県における出生率の低下つまり少子化は、若年女性人口の減少と晩婚化等による有配偶率の低下が直接的な要因と考えられるが、そもそも少子化の背景には、若者の働く場の不足や低い所得水準など様々な要因が重なっていることが考えられるため、その克服には、秋田県としても子育て支援、教育の充実、出会い・結婚支援だけではなく、若者の働く場を増やすための経済活性化策といった経済産業分野の施策を実施するなど、総合的な視点に立って、官民一体となった取り組みが急務となっているのである。
表 4 平成 28 年度の各都道府県の出生率及び自然増減率(出生率の低い順)
都道府県 | 出生率 (人口千対) | 自然増減率 (人口千対) | 都道府県 | 出生率 (人口千対) | 自然増減率 (人口千対) | 都道府県 | 出生率 (人口千対) | 自然増減率 (人口千対) |
1.秋田 | 5.6 | △9.5 | 15.愛媛 | 7.3 | △5.7 | 31.大阪 | 7.9 | △1.8 |
2.北海道 | 6.6 | △5.0 | 18.千葉 | 7.4 | △1.8 | 31.大分 | 7.9 | △4.5 |
2.岩手 | 6.6 | △6.8 | 18.長野 | 7.4 | △4.8 | 35.兵庫 | 8.0 | △2.2 |
4.青森 | 6.7 | △6.7 | 18.三重 | 7.4 | △3.7 | 35.長崎 | 8.0 | △4.6 |
4.高知 | 6.7 | △7.7 | 21.宮城 | 7.5 | △2.6 | 37.広島 | 8.1 | △2.6 |
6.山形 | 6.8 | △6.9 | 21.栃木 | 7.5 | △3.5 | 38.岡山 | 8.2 | △3.2 |
7.新潟 | 6.9 | △5.8 | 21.岐阜 | 7.5 | △3.8 | 38.宮崎 | 8.2 | △4.4 |
8.富山 | 7.0 | △5.3 | 24.埼玉 | 7.6 | △1.3 | 40.佐賀 | 8.3 | △3.5 |
8.奈良 | 7.0 | △3.4 | 24.静岡 | 7.6 | △3.2 | 41.熊本 | 8.4 | △3.7 |
8.和歌山 | 7.0 | △6.3 | 24.京都 | 7.6 | △2.5 | 41.鹿児島 | 8.4 | △4.9 |
11.群馬 | 7.1 | △4.4 | 27.島根 | 7.7 | △6.2 | 43.東京 | 8.5 | △0.1 |
11.山梨 | 7.1 | △4.6 | 28.石川 | 7.8 | △3.1 | 44.滋賀 | 8.7 | △0.3 |
11.山口 | 7.1 | △6.2 | 28.鳥取 | 7.8 | △5.2 | 44.福岡 | 8.7 | △1.4 |
14.徳島 | 7.2 | △6.0 | 28.香川 | 7.8 | △4.6 | 46.愛知 | 8.8 | △0.1 |
15.福島 | 7.3 | △5.5 | 31.神奈川 | 7.9 | △0.7 | 47 沖縄 | 11.6 | 3.4 |
15.茨城 | 7.3 | △3.7 | 31.福井 | 7.9 | △4.0 |
(出所)厚生労働省「平成 28 年(2016)人口動態統計(確定数)の概況」「人口動態総覧(率)、都道府県(21 大都市再掲)別」をもとに、今回の監査で出生率が低い順に並び替えている。
(3)秋田県及び各市町村の人口推移の状況
表 5 は、平成 27 年と平成 22 年の国勢調査の結果をもとに、秋田県及び各市町村の人口増減率と世帯増減率を示したものである。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
表 5 平成 27 年の人口及び世帯数(平成 22 年との増減率比較を含む)
市町村 | 人口(人) | 人口増減率(%) | 世帯数(戸) | 世帯増減率(%) |
平成 27 年 | (H27/H22-1)×100 | 平成 27 年 | (H27/H22-1)×100 | |
秋田県 | 1,023,119 | △5.8 | 388,560 | △0.4 |
秋田市 | 315,814 | △2.4 | 135,318 | 3.0 |
能代市 | 54,730 | △7.4 | 22,371 | △1.9 |
横手市 | 92,197 | △6.3 | 31,463 | △1.1 |
大館市 | 74,175 | △6.0 | 28,242 | △1.1 |
男鹿市 | 28,375 | △12.1 | 11,147 | △4.1 |
湯沢市 | 46,613 | △8.3 | 16,384 | △2.8 |
鹿角市 | 32,038 | △7.1 | 11,508 | △3.0 |
由利本荘市 | 79,927 | △6.2 | 28,349 | △1.0 |
潟上市 | 33,083 | △3.9 | 12,023 | 0.7 |
大仙市 | 82,783 | △6.2 | 28,198 | △0.6 |
北秋田市 | 33,224 | △8.7 | 12,222 | △4.8 |
にかほ市 | 25,324 | △8.1 | 8,804 | △4.3 |
仙北市 | 27,523 | △6.9 | 9,594 | △2.7 |
小坂町 | 5,339 | △11.8 | 2,168 | △9.3 |
上小阿仁村 | 2,381 | △12.7 | 918 | △8.9 |
藤里町 | 3,359 | △12.7 | 1,215 | △8.1 |
三種町 | 17,078 | △9.6 | 6,010 | △4.5 |
八峰町 | 7,309 | △11.1 | 2,706 | △5.7 |
五城目町 | 9,463 | △10.0 | 3,573 | △4.3 |
八郎潟町 | 6,080 | △8.2 | 2,220 | △3.6 |
井川町 | 4,986 | △9.2 | 1,563 | △2.6 |
大潟村 | 3,110 | △3.4 | 796 | △1.0 |
美郷町 | 20,279 | △6.4 | 6,152 | △2.2 |
羽後町 | 15,319 | △8.8 | 4,807 | △3.2 |
東成瀬村 | 2,610 | △9.1 | 809 | △7.5 |
(出所)平成 22 年、平成 27 年の国勢調査結果をもとに、監査人が作成。
秋田県では人口減少の流れが昭和31 年をピークに既に始まっているのであるが、平成22 年から平成27 年の間で、秋田県全体で人口は5.79%、世帯数は0.40%それぞれ減少している。人口減少は秋田県の全基礎自治体で生じており、世帯数の減少も秋田市と潟上市以外の全基礎自治体にも及んでいる。秋田市と潟上市においても、世帯数は増加しても、人口自体は減少していることから、核家族化の進展等別の要因が影響していると考えられる。さらに、男鹿市の 12.14%等 6
自治体ではこの 5 年間で 1 割以上の人口が減少している。
次に、将来推計として、「社人研資料」の秋田県の部分について、2010 年から 2040 年にかけての人口予測及び若年女性(20 歳から 39 歳)の人口の変化を示す。「社人研資料」では、将来人口が、外部からの一定の流入も考慮して、人口移動が収束すると仮定して試算している点に特徴が ある。
これによれば、大潟村の若年女性の増加以外は、全基礎自治体で総人口、若年女性人口とも
第 3 外部監査対象の概要
に大幅に減少し、ほとんどが半減するという試算がなされている。
表 6 人口の将来推計(2010 年~2040 年)(人口移動が収束するケース)
市町村 | 2010 年 | 2010 年 | 2040 年 | 2040 年 | 若年女性人口 変化率 | 総人口変化率 |
総人口 | 20-39 歳女性 | 総人口 | 20-39 歳女性 | (2010→2040) | ||
秋田市 | 323,600 | 37,753 | 235,500 | 19,251 | △49.00% | △27.22% |
能代市 | 59,084 | 5,043 | 34,739 | 2,531 | △49.80% | △41.20% |
横手市 | 98,367 | 8,642 | 63,466 | 4,886 | △43.50% | △35.48% |
大館市 | 78,946 | 7,023 | 51,183 | 3,870 | △44.90% | △35.17% |
男鹿市 | 32,294 | 2,671 | 16,328 | 959 | △64.10% | △49.44% |
湯沢市 | 50,849 | 4,051 | 28,396 | 1,864 | △54.00% | △44.16% |
鹿角市 | 34,473 | 2,786 | 21,140 | 1,685 | △39.50% | △38.68% |
由利本荘市 | 85,229 | 7,755 | 56,462 | 4,196 | △45.90% | △33.75% |
潟上市 | 34,442 | 3,583 | 23,548 | 1,747 | △51.20% | △31.63% |
大仙市 | 88,301 | 7,878 | 55,357 | 4,304 | △45.40% | △37.31% |
北秋田市 | 36,387 | 2,527 | 18,630 | 1,214 | △52.00% | △48.80% |
にかほ市 | 27,544 | 2,396 | 18,008 | 1,338 | △44.20% | △34.62% |
仙北市 | 29,568 | 2,483 | 16,743 | 1,202 | △51.60% | △43.37% |
小坂町 | 6,054 | 417 | 3,014 | 191 | △54.20% | △50.21% |
上小阿仁村 | 2,727 | 130 | 1,246 | 68 | △47.70% | △54.31% |
藤里町 | 3,848 | 252 | 1,820 | 118 | △53.20% | △52.70% |
三種町 | 18,876 | 1,452 | 10,006 | 574 | △60.50% | △46.99% |
八峰町 | 8,220 | 567 | 4,179 | 248 | △56.30% | △49.16% |
五城目町 | 10,516 | 791 | 4,991 | 288 | △63.60% | △52.54% |
八郎潟町 | 6,623 | 549 | 4,069 | 256 | △53.40% | △38.56% |
井川町 | 5,493 | 468 | 3,389 | 237 | △49.40% | △38.30% |
大潟村 | 3,218 | 311 | 2,895 | 336 | 8.00% | △10.04% |
美郷町 | 21,674 | 1,879 | 13,363 | 973 | △48.20% | △38.35% |
羽後町 | 16,792 | 1,364 | 9,623 | 658 | △51.80% | △42.69% |
東成瀬村 | 2,872 | 225 | 1,719 | 122 | △45.80% | △40.15% |
(出所)「社人研資料」による。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
一方、「日本創成会議」の資料は、現在と同程度の人口流出が今後も続くという独自の仮定のもとに各地の将来推計人口を公表しており、秋田県の状況は以下に示すようになる。人口移動が収束するケースに比べて、さらに悪化する一方で、大潟村の若年女性の人口変化率は逆に高くなっている。いずれにしても、全基礎自治体で大幅な減少が生じることには変わりはない。
表 7 人口の将来推計(2010 年~2040 年)(人口移動が収束しないケース)
市町村 | 2010 年 | 2010 年 | 2040 年 | 2040 年 | 若年女性 人口変化率 | 総人口変化率 |
総人口 | 20-39 歳女性 | 総人口 | 20-39 歳女性 | (2010→2040) | ||
秋田市 | 323,600 | 37,753 | 225,596 | 17,236 | △54.30% | △30.29% |
能代市 | 59,084 | 5,043 | 31,860 | 1,875 | △62.80% | △46.08% |
横手市 | 98,367 | 8,642 | 59,519 | 3,803 | △56.00% | △39.49% |
大館市 | 78,946 | 7,023 | 48,620 | 3,123 | △55.50% | △38.41% |
男鹿市 | 32,294 | 2,671 | 14,635 | 679 | △74.60% | △54.68% |
湯沢市 | 50,849 | 4,051 | 25,500 | 1,235 | △69.50% | △49.85% |
鹿角市 | 34,473 | 2,786 | 19,327 | 1,272 | △54.30% | △43.94% |
由利本荘市 | 85,229 | 7,755 | 52,899 | 3,246 | △58.10% | △37.93% |
潟上市 | 34,442 | 3,583 | 22,335 | 1,439 | △59.80% | △35.15% |
大仙市 | 88,301 | 7,878 | 51,943 | 3,487 | △55.70% | △41.18% |
北秋田市 | 36,387 | 2,527 | 16,578 | 800 | △68.40% | △54.44% |
にかほ市 | 27,544 | 2,396 | 16,789 | 1,020 | △57.40% | △39.05% |
仙北市 | 29,568 | 2,483 | 15,106 | 842 | △66.10% | △48.91% |
小坂町 | 6,054 | 417 | 2,589 | 113 | △72.90% | △57.23% |
上小阿仁村 | 2,727 | 130 | 1,164 | 47 | △63.80% | △57.32% |
藤里町 | 3,848 | 252 | 1,577 | 73 | △71.00% | △59.02% |
三種町 | 18,876 | 1,452 | 9,229 | 392 | △73.00% | △51.11% |
八峰町 | 8,220 | 567 | 3,840 | 155 | △72.60% | △53.28% |
五城目町 | 10,516 | 791 | 4,444 | 202 | △74.50% | △57.74% |
八郎潟町 | 6,623 | 549 | 3,793 | 172 | △68.70% | △42.73% |
井川町 | 5,493 | 468 | 3,205 | 176 | △62.40% | △41.65% |
大潟村 | 3,218 | 311 | 2,868 | 358 | 15.20% | △10.88% |
美郷町 | 21,674 | 1,879 | 12,531 | 754 | △59.90% | △42.18% |
羽後町 | 16,792 | 1,364 | 8,730 | 476 | △65.10% | △48.01% |
東成瀬村 | 2,872 | 225 | 1,603 | 92 | △59.10% | △44.19% |
(出所)「日本創成会議の資料」による。
第 3 外部監査対象の概要
平成 29 年 7 月 1 日現在、秋田県の高齢化率(65 歳以上の高齢者人口が総人口に占める
割合)は 35.5%となっている。これは、次表が示すとおり、平成 28 年 7 月 1 日時点と比べて
0.9 ポイント上昇しており、このトレンドが続くと平成 42 年には 40%を超える見込みとなっている。
表 8 平成29年度高齢者数・高齢化率の前年度比較
区分 | 総人口(a) | 左のうち65歳以上の人口・割合 | ||
人口(b) | 割合(b÷a) | |||
平成 28 年度 | 男 | 475,215 | 142,873 | 30.1% |
女 | 536,901 | 207,154 | 38.6% | |
計 | 1,012,116 | 350,027 | 34.6% | |
平成 29 年度 | 男 | 468,647 | 145,040 | 30.9% |
女 | 529,071 | 208,746 | 39.5% | |
計 | 997,718 | 353,786 | 35.5% | |
前年度比 | △14,398 | 3,759 | プラス 0.9 ポイント |
(出所)秋田県作成「平成 29 年度老人月間関係資料」より抜粋。
下の表は、平成 28 年 10 月 1 日現在の全国の高齢化率と秋田県の高齢化率を比較したものである。日本は高齢化が進んでいるといわれているが、秋田県の高齢化率(34.7%)は、全国の高齢化率(27.3%)と比べても高い。実は、秋田県は、出生率が最も低いだけではなく、高齢化率も全都道府県の中で最も高く( つまり全国一)、次いで高知県 33.6%、島根県 33.1%となっているのである。
つまり、秋田県は、全国で最も少子化及び高齢化が進んでいる都道府県なのである。
表 9 平成 28 年における全国と秋田県の高齢化率の比較
(単位:千人)
区 分 | 総人口① | 65 歳以上人口② | 割合②÷① |
全 国 | 126,933 | 34,591 | 27.3% |
秋 田 | 1,010 | 351 | 34.7% |
(出所)秋田県作成「平成 29 年度老人月間関係資料」より抜粋。
図 2 は、昭和 57 年から平成 29 年までの秋田県の高齢化率の推移をグラフにしたものである。昭和 57 年度の秋田県の高齢化率は 11.3%、平成 29 年度は前述のとおり 35.5%であり、 35 年間に 24.2 ポイント上昇したことになり、しかもその期間では常に上昇していたことがわかる。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
図 2 秋田県の高齢化率の推移
図 3 は、高齢化率の内容を、65 歳以上 75 歳未満と、75 歳以上(後期高齢者)に分けて示したものである。昭和57 年の高齢化率(11.3%)の内訳は、65 歳以上75 歳未満が7.5%、75歳以上が 3.8%であったのに対し、平成 19 年に 65 歳以上 75 歳未満(13.9%)、75 歳以上
(14.0%)と高齢化率(28.0%)の内訳が初めて逆転し、平成 29 年度の高齢化率(35.5%)の内訳は、65 歳以上 75 歳未満(16.3%)、75 歳以上(19.2%)となっている。
最近数年の特徴としては、75 歳以上の率が上昇するとともに、団塊世代が 65 歳を迎えるこ とにより、一時期 14%前後で安定していた 65 歳以上 75 歳未満の高齢化率も再上昇しており、全体として高齢化率の上昇をもたらしていることがわかる。
図 3 秋田県の高齢化率の推移(65 歳以上 75 歳未満、75 歳以上)
第 3 外部監査対象の概要
高齢化の問題は、労働人口の相対的な減少による経済規模の縮小の問題だけではなく、秋田県にとっては社会保障費の増大として県の財政に直接影響を与えることになる。高齢化率が全国一であり、しかも今後も高齢化率は進むことが予想されている秋田県にとって、今まで以上に健康寿命の延伸を図ることにより健康長寿社会の実現に向けた努力を行うなど、他のどの都道府県よりも、限られた予算の中で高齢化対策を進めることが求められているのである。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
秋田県では、平成 26 年 3 月に、平成 26 年度から 4 年間を計画期間とする「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」を作成している。当該プランにおいては、4 年間に取り組むべき施策を 6 つの重点戦略として整理している。特に、少子高齢化対策としては、「【戦略 4】元気な長寿社会を実現する健康・医療・福祉戦略」及び「【戦略 6】人口減少社会における地域力創造戦略」の中で体系化して推進するとしている。
1.「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」の概要
秋田県では、平成 22 年度から 4 年間、県の有する可能性を最大限に伸ばし、幅広い分野で秋田の元気を創り上げるため、「ふるさと秋田元気創造プラン」を県政運営指針として策定し、それに基づく施策・事業に取り組んできた。
しかしながら、その後も日本は新たな課題が生じており、秋田県においても少子高齢化の進行が速く、労働力人口が減少していくと見込まれており、地域活力の低下や経済規模の縮小など、社会的・経済的影響が懸念される状況にある。日本全国が人口減少局面にある中、秋田県のみでその減少に歯止めをかけることは難しい状況ではあるが、今後も秋田県が持続的に発展していくためには、若者の県内定着や少子化対策、子育て支援策等の直接的な歯止め策に加え、産業経済活動の維持・成長や働く場の確保のほか、人口減少社会を踏まえた新たな社会システムの構築など、どの都道府県よりも先んじて、先駆的な取り組みを進める必要がある。
このような考えのもと、県が抱える基本問題を克服するとともに元気な秋田を創り上げるため、平成 26 年度からの新たな県政運営指針として、「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」を策定している。
「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」の戦略の1つとして、「人口減少社会における地域力創造戦略」がある。この戦略は、秋田県の人口の趨勢を踏まえ、社会減対策、少子化対策、地域支え合いの社会づくり、地域の自立・活性化に向けた取組、協働による地域課題解決の促進、住民サービス水準の確保が課題であるとの認識のもと、「官民一体となった少子化対策の促進」、「子どもを産み・育てる環境の充実強化」等 8 つの施策を行うというものである。
今年度の監査対象事業に関連する施策としては、8 つの施策の内、「子どもを産み・育てる
環境の充実強化」があるが、この施策は、安心ゆとりを持って子どもを産み、子育てできる環境を充実強化するために、1)福祉医療費・保育料助成による子育て家庭への経済的支援、2)子育て家庭の多様なニーズに対応した保育機能の充実、3)放課後児童クラブ等の子どもが安心できる居場所づくりの促進、4)不妊治療への支援、5)企業による仕事と育児・家庭の両立支援の促進などを行うものである。そして、表 10 に示す 4 つの施策の方向性・取組みを提
第 3 外部監査対象の概要
示している。
表 10 「(施策)子どもを産み・育てる環境の充実強化」の方向性及び取組み
方向性 | 取組み | 主な取組み内容 |
子育て家庭の経済的負担の軽減 | ① 福祉医療費及び保育料の負担に対する支援 | 小学生以下の児童に対する医療費の支援 |
未就学児に対する保育料の支援 | ||
② ゆとりのある住宅確保等の支援 | 住宅取得等に係る支援 | |
県分譲宅地減額譲渡による土地取得への支援 | ||
子育て世帯等が入居しやすい公営住宅優遇入 居制度の継続 | ||
地域の子育てサポート体制の充実 | ① 子育て支援活動団体や企業等による子育て支援の強化 | 子育てサークル等子育て支援活動団体のネッ トワーク交流会の開催 |
子育てサポーターの養成・組織化及び活用促進 | ||
子育て家庭優遇サービスの利用促進 | ||
② 子育て支援拠点の充実 | 地域子育て支援拠点の運営等に係る支援 | |
地域子育て支援拠点等の職員の資質向上に向 けた研修 | ||
③ 子どもたちが安心できる居 場所づくりの促進 | 放課後児童クラブの運営等に係る支援 | |
④ 就学前の教育・保育の充実 | 病児・病後児保育や延長保育など特別保育事 業の実施体制の強化 | |
認定こども園の普及拡大及び幼稚園・保育所 等への訪問指導などの支援 | ||
安心して出産できる環境づくり | ① 妊娠や出産に対する支援 | 特定不妊治療(体外受精(IVF)及び顕微授精 (ICSI))に要した治療費に対する支援 |
「不妊とこころの相談センター」による電話 や面接での相談対応 | ||
② 周産期母子医療センター等の周産期医療の機能強化 | 24 時間受入可能な周産期救急体制の構築支援 | |
分娩取扱施設が少ない地域における中核的な 病院への運営支援 | ||
企業による仕事と子育てを両立できる環境づくり | ① 企業に対するきめ細かな働きかけの実施 | 商工団体等との連携による企業への働きかけ |
「子ども職場参観日」等による子育てしやす い職場づくりの促進 | ||
両立支援取組事例の PR や子育て後援企業等 の表彰等による啓発 | ||
② 両立支援に取り組む企業へのサポート強化 | アドバイザーの派遣等による一般事業主行動 計画の策定支援 | |
仕事と家庭の両立支援への理解を深めるため の研修会の開催 | ||
少子化対策応援ファンドの助成による両立支 援の取組促進 | ||
③ 男性の育児参加促進に向けた啓発等の推進 | 男性の育児参加促進に向けたイクメンネット ワークの拡大 | |
男性従業員が育児のための休暇等を取得しや すい職場環境づくりの支援 |
(出所)「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」より抜粋。
(注) 表の 4 つの方向性の内、「企業による仕事と子育てを両立できる環境づくり」以外( 部分)は、今年度監査の対象事業に関連する方向性・取組みとなる。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」では、高齢化対策に関する戦略として、「元気な長寿社会を実現する健康・医療・福祉戦略」が掲げられている。この戦略は、秋田県にとって、特に生活習慣病、がん対策、医療提供体制、高齢者福祉・障害者福祉等、自殺防止が課題であるとの認識のもと、4 つの施策を行うというものである。
今年度の監査対象事業に関連する施策としては、4 つの施策の内「高齢者や障害者等を地域で支える体制づくり」があるが、この施策は、高齢者が充実して過ごせる社会の実現に向けて、高齢者の社会参加や健康づくりを進めるとともに、要介護者や認知症患者、障害者、ひきこもりなど、誰もが安心して暮らせる体制を構築するというものである。そして、次の 6 つの施策の方向性・取組みを提示している。
表 11 「(施策)高齢者や障害者等を地域で支える体制づくり」の方向性及び取組み
方向性 | 取組み | 主な取組み内容 |
高齢者の生きがい・健康づくりの促進 | ① 高齢者の社会参加・生きがいづくりと健康づくりを通した介護予防の充実 | 老人クラブや長寿社会振興財団が取組む高齢 者の社会参加等に向けた活動への支援 |
高齢者を対象とした生きがいづくりや交流サ ロンへの支援 | ||
「元気にとしょる十ケ条」の普及啓発 | ||
市町村が行う介護予防事業への支援 | ||
第 30 回(平成 29 年)全国健康福祉祭(ねんりん ピック)の開催 | ||
医療・介護・福祉の連携強化による地域包括ケアシステムの構築 | ① 医療・介護・福祉の連携強化 | 秋田県医療・介護・福祉連携促進協議会を中 心に、各地域における連携体制の構築を促進 |
市町村や関係団体による連携強化に向けた取 組の支援 | ||
② 地域包括支援センターの機能強化 | 地域包括ケアシステム構築のための市町村職 員に対する研修会の開催 | |
地域ケア会議等の機能向上と活動支援 | ||
地域包括ケアシステムに関する県民の理解の 促進 | ||
③ 在宅医療提供体制の整備と普及啓発 | 在宅医療拠点の整備の促進 | |
在宅医療を担う多職種に対する研修の実施 | ||
多職種によるチーム医療の促進と病診連携の 促進 | ||
訪問看護ステーションのサービス体制の強化 | ||
フォーラムの開催等による在宅医療やかかり つけ医等についての普及啓発 | ||
④ 介護施設の計画的な整備促進 | 介護保険事業線計画及び老人福祉計画の策定 | |
市町村介護保険事業計画に基づく施設整備に 対する支援 | ||
認知症対策の促進 | ① 地域において認知症患者を支える体制づくり | 認知症疾患医療センターを認知症サポート 医・かかりつけ医や介護関連機関等との連携 体制の構築 |
県民に対する認知症についての普及啓発と認 知症サポーターの養成 |
第 3 外部監査対象の概要
表 11 「(施策)高齢者や障害者等を地域で支える体制づくり」の方向性及び取組み(続き)
方向性 | 取組み | 主な取組み内容 |
障害者の地域生活支援体制の強化 | ① 障害者の地域生活支援体制の強化 | 障害者の地域生活を支える人材育成や相談体 制の整備など、地域生活支援体制の強化 |
グループホームの整備促進等の障害福祉サー ビスの充実 | ||
障害者の就労支援の強化と工賃水準の向上 | ||
医療療育センターを拠点とした地域における 教育支援体制の充実と発達障害者等に対する総合相談体制等の充実 | ||
ひきこもり対策の促進 | ① ひきこもりに関する相談支援体制の整備 | 相談業務(電話、来所、家庭訪問)の充実 |
市町村や保健所、民間団体等の関係機関との 連携体制の強化 | ||
ひきこもりに関する普及啓発 | ||
市町村や保健所、民間団体等の職員に対する 研修会の実施 | ||
ひきこもりの当事者及び家族会の開催 | ||
② ひきこもり等の若者に対す る就業支援 | 就職に関する相談や職業体験、スキルアップ等の就業支援の実施 | |
介護・福祉人材の確保・育成 | ① 介護・福祉人材の確保 | 施設・事業所と求職者との雇用マッチングの 強化 |
潜在的有資格者や他分野で活躍している人材 の活用、高齢者の参入や参画の促進 | ||
介護、福祉の業務についての理解の促進 | ||
② 職場定着の促進と人材の資質向上 | 職場定着の促進に向けた、専門的な指導を行 うアドバイザーの派遣 | |
人材の定着に向けたセミナーや相談会の開催 | ||
新任職員、中堅職員、指導者等の階層別研修 の実施 | ||
民間事業者による実践的な研修の実施 |
(出所)「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」より抜粋。
(注) 表の 6 つの方向性の内、「障害者の地域生活支援体制の強化」及び「ひきこもり対策の促進」以外( 部分)は、今年度監査の対象事業に関連する方向性・取組みとなる。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
第 4 外部監査の結論-総括-
監査の対象は、少子高齢化に関連する事業の内、平成 28 年度に健康福祉部が所管した
事業とした。監査の対象年度である平成 28 年度の健康福祉部の組織は以下のとおりである。
健康福祉部
福祉政策課
(班:総務、企画、地域福祉・監査、保護、援護)
福祉事務所(北、山本、中央、南)
保健所(大館、北秋田、能代、秋田中央、由利本荘、大仙、横手、湯沢)
福祉相談センター
長寿社会課
(班:調整・長寿福祉・施設、介護保険、医療指導・国保)
ねんりんピック推進室
(班:調整・大会企画、式典・事業、競技・宿泊、輸送)
障害福祉課
(班:調整・障害福祉、地域生活支援)
精神保健福祉センター
子育て支援課
(班:調整・子ども育成、家庭福祉)
児童相談所(北、中央、南)千秋学園
女性相談所
健康推進課
(班:調整・母子・自殺対策、健康づくり推進、健康危機管理・疾病対策)
がん対策室
(がん対策)
医務薬事課
(班:調整・医療計画、看護・地域医療、医務・薬務)
衛生看護学院
医師確保対策室
(班:医師確保対策)
図 4 平成 28 年度健康福祉部組織図
第 4 外部監査の結論-総括-
平成 28 年度健康福祉部の課室の内、監査対象とした事業を所管している課室は、福祉政策課、長寿社会課、子育て支援課及び健康推進課である(組織図の )。
なお、健康福祉部は、平成 29 年度に組織改正が行われている。組織改正による監査対象事業の所管課の変更の状況は以下のとおりである。
平成 28 年度
平成 29 年度
総務班
企画班
地域福祉・監査班保護班
援護班
総務班
企画班
監査・援護班
地域・家庭福祉課
調整・子ども育成班
家庭福祉班
調整・地域福祉班
家庭福祉班保護班
結婚・子育て支援班
調整・長寿福祉・施設班
介護保険班
医療指導・国保班
調整・長寿福祉・施設班
介護保険班
国保改革準備・医療指導班
(注)監査の対象は、少子高齢化に関連する事業の内、平成 28 年度に健康福祉部が所管した事業である。ただし、上図のとおり、組織改正により現在「あきた未来創造部」(太字部分)が所管している事業があるため、監査対象部局(1 ページ)は、健康福祉部、あきた未来創造部としている。
図 5 平成 28 年度と平成 29 年度の健康福祉部
福祉政策課
福祉政策課
地域福祉を地域・家庭福祉課へ
子育て支援課
保護を地域・家庭福祉課へ
子ども育成を次世代・女性活躍支援課へ
次世代・女性活躍支援課
(他部:あきた未来創造部)
長寿社会課
長寿社会課
室を設置
長寿社会課国保改革準備・医療指導室
健康推進課
健康推進課
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
監査対象とした事業及び平成 28 年度の決算額は以下のとおりである。
(1)高齢化に関連する事業
(重点戦略) 元気な長寿社会を実現する健康・医療・福祉政策
(施 策) 高齢者や障害者等を地域で支える体制づくり
施策の方向性 | 平成 28 年度所管課 (カッコ内は29 年度) | 事業名 | 平成 28 年度決算額 (千円) |
高齢者の生きがい・健康づくりの推進 | 長寿社会課 | 元気で明るい長寿社会づくり事業 | 41,139 |
高齢者の社会参加促進事業 | 4,739 | ||
老人クラブ助成事業 | 28,375 | ||
地域支援事業交付金 | 401,566 | ||
医療・介護・福祉の連携強化による地域包括ケア システムの構築 | 福祉政策課 | 医療・介護・福祉連携促進事業 | 1,731 |
在宅医療介護 ICT 連携推進事業 | 13,268 | ||
認知症対策の推進 | 長寿社会課 | 地域で支える認知症施策推進事業 | 31,923 |
介護・福祉人材の確保・育成 | 福祉政策課 (地域・家庭福祉課) | 福祉保健研修・人材センター運営事業 | 45,261 |
長寿社会課 | 介護人材確保対策事業 | 43,973 | |
外国人介護福祉士候補者支援事業 | 1,125 | ||
その他施策関連事業 | 福祉政策課 | 補聴器相談事業 | 18,149 |
福祉政策課 (地域・家庭福祉課) | (新)子どもの未来応援地域ネット ワーク形成支援事業 | 6,299 | |
長寿社会課 | 社会福祉施設職員退職手当共済費 補助金 | 352,887 | |
老人福祉施設等環境整備事業 | 352,500 | ||
地域介護福祉施設等整備事業 | 1,049,309 | ||
民間社会福祉施設振興費補助金 | 25,796 |
第 4 外部監査の結論-総括-
(重点戦略) 元気な長寿社会を実現する健康・医療・福祉政策
(施 策) その他施策
施策の方向性 | 平成 28 年度所管課 (カッコ内は29 年度) | 事業名 | 平成 28 年度決算額 (千円) |
その他施策関連事業 | 福祉政策課 (地域・家庭福祉課) | 秋田県社会福祉協議会助成費 | 43,698 |
福祉サービス利用支援事業 | 48,021 | ||
地域福祉サポート事業 | 2,000 | ||
民生委員費 | 156,344 | ||
地域生活定着支援事業 | 22,414 | ||
社会福祉会館管理運営費 | 63,299 | ||
社会福祉会館大規模修繕事業 | 2,618 | ||
福祉政策課 (一部、地域・家庭福祉課) | 福祉施設経営指導事業 | 3,936 | |
福祉政策課 (地域・家庭福祉課) | 生活福祉資金等貸付事業 | 18,121 | |
長寿社会課 | 北部老人福祉総合エリア運営費 | 111,305 | |
中央地区老人福祉総合エリア運営費 | 115,695 | ||
南部老人福祉総合エリア運営費 | 168,815 | ||
施設入所者援護費 | 1,209 | ||
軽費老人ホーム減免利用料補助金 | 233,938 | ||
長寿社会課 (国保改革準備・医療指導室) | 福祉医療費等助成事業(乳幼児・小学生分医療費分を除く) | 2,700,113 |
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
(2)少子化に関連する事業
(重点戦略) 人口減少社会における地域力創造戦略
(施 策) 子どもを産み・育てる環境の充実強化
施策の方向性 | 平成 28 年度所管課 (カッコ内は 29 年度) | 事業名 | 平成 28 年度決算額 (千円) |
子育て家庭の経済的負担の軽減 | 長寿社会課 (国保改革準備・医療指導室) | 福祉医療費等助成事業(乳幼児・小中学生医療費分) | 946,295 |
子育て支援課 (次世代・女性活躍支援課) | すこやか子育て支援事業 | 878,137 | |
子育て支援課 (地域・家庭福祉課) | 児童手当県負担金 | 1,932,046 | |
児童扶養手当支給事業費 | 355,720 | ||
地域の子育てサポート体制の充実 | 子育て支援課 (次世代・女性活躍支援課) | 地域の子育て力向上事業 | 6,775 |
児童福祉諸費 | 33,314 | ||
児童会館費 | 59,446 | ||
子どもの居場所づくり促進事業 | 357,194 | ||
市町村子ども・子育て支援事業 | 144,365 | ||
(新)子ども・子育て支援人材育成事業 | 3,793 | ||
市町村子ども・子育て支援事業(子育て包括支援センター事業) | 144,365 | ||
安心して出産できる環境づくり | 健康推進課 | 「あきた健やか親子21」計画推進事業 | 21,208 |
妊婦・出産への健康づくり支援事 業 | 104,861 |
第 4 外部監査の結論-総括-
指摘事項は、福祉政策課 11、長寿社会課 4、子育て支援課 1、健康増進課 0 の計 16 となっている。
意見は、福祉政策課 10、長寿社会課 26、子育て支援課 6、健康推進課 2 の計 44 となっている。
【第 5 Ⅰ 福祉政策課】
事業名 | 指摘事項、意見 | 頁 | |
1 在宅医療・介護ICT連携推進事業 | 指摘事項1 | 二者以上のものからの見積書徴取の必要性 について | |
意見1 | 単独随意契約の理由の文書化について | ||
2 福祉保健研修・人材セ ンター運営事業 | 意見 2 | 委託業務の内容について | |
意見 3 | センターが行う無料職業紹介について | ||
3 補聴器相談事業 | 指摘事項 2 | 現金出納日計表について | |
指摘事項 3 | 利用者満足度及びニーズ調査の不足について | ||
意見 4 | 事業の必要性の評価について | ||
意見 5 | 補聴器業者の公表について | ||
意見 6 | 補聴器業者の公募について | ||
4 子どもの未来応援地域ネットワーク形成 支援事業 | 意見 7 | アンケートのニーズ分析について | |
5 福祉サービス利用支 援事業 | 指摘事項 4 | 補助先の旅費規程に反する支出について | |
6 地域生活定着支援事業 | 意見 8 | 業務実施完了報告書の充実について | |
7 社会福祉会館管理運営費 | 指摘事項 5 | 用水路管理業務の契約方法について | |
指摘事項 6 | 樹木管理業務委託の契約事務について | ||
指摘事項 7 | 備品管理の不備について | ||
8 社会福祉会館大規模 修繕事業 | 指摘事項 8 | 委託先からの資料の返却確認について | |
9 福祉施設経営指導事業 | 指摘事項 9 | 経営指導センターにおける非常勤職員への報酬形態について(福祉施設経営指導事業費 補助金事業) | |
指摘事項 10 | 福祉施設経営相談受付及び指導記録表の誤記載について(福祉施設経営指導事業費補助 金事業) | ||
意見 9 | 経営指導センターのインターネット広報に ついて(福祉施設経営指導事業費補助金事業) | ||
意見 10 | 福祉サービス第三者評価制度の普及啓発に ついて(福祉サービス第三者評価事業) | ||
10 生活福祉資金貸付事業 | 指摘事項 11 | 徴収不能引当金の計上誤りについて | |
計 | 指摘事項11、意見10、計21 |
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
【第 5 Ⅱ 長寿社会課】
事業名 | 指摘事項、意見 | 頁 | |
1 元気で明るい長寿社会づくり事業 | 意見 11 | 補助対象範囲の明確化と適切な収支報告の 入手について | |
意見 12 | 新しい総合事業取組支援事業のより効率 的・効果的な実施について | ||
意見 13 | 委託料の適正な積算について | ||
意見 14 | 委託契約時の見積書の徴取について | ||
2 高齢者の社会参加促進事業 | 指摘事項 12 | 補助金算出根拠の老人クラブ数について | 85 |
意見 15 | 市町村補助額の根拠資料について | 86 | |
意見 16 | より効果的な補助事業に向けた見直しにつ いて | 87 | |
3 老人クラブ助成事業 | 指摘事項13 | 補助金算出根拠の老人クラブ数や会員数に ついて | 89 |
意見 17 | 市町村補助額の根拠資料について | 91 | |
意見 18 | 老人クラブ助成の見直しについて | 91 | |
4 地域で支える認知症施策推進事業 | 意見 19 | 委託契約時の見積書の徴取について | 95 |
意見 20 | 補助金の実施計画・実績報告について | 96 | |
意見 21 | 認知症施策の推進について | 97 | |
5 介護人材確保対策事業 | 意見 22 | 介護の職場体験事業の開始時期について | 101 |
意見 23 | 介護の職場体験事業における大学生への対 応について | 103 | |
6 社会福祉施設職員退 職手当共済費補助金 | 意見 24 | 請求額の根拠データの確認について | 105 |
7 老人福祉施設等環境 整備事業 | 意見 25 | 補助単価の算定方法について | 107 |
意見 26 | 補助金の交付条件について | 108 | |
8 地域介護福祉施設等整備事業 | 指摘事項 14 | 消費税等に係る仕入控除税額の報告につい て | 111 |
意見 27 | 補助対象事業における入札の実施について | 112 | |
9 老人福祉総合エリア運営費(北部、中央地区、南部) | 指摘事項 15 | 指定管理者の公募期間中の個別交渉につい て | 114 |
意見 28 | 指定管理者選定委員会の独立性の確保につ いて | 115 | |
意見 29 | 施設の利用促進について | 116 | |
意見 30 | 指定管理業務の収支の分析・評価について | 118 | |
意見 31 | 指定管理者選定委員会等の役割について | 121 | |
意見 32 | 過去の包括外部監査に対する措置状況につ いて | 121 | |
10 施設入所者援護費 | 意見 33 | 日用品費支給の請求資料について | 124 |
意見 34 | 事業の見直しについて | 125 | |
11 軽費老人ホーム減免 利用料補助金 | 意見 35 | 実績報告の誤りについて | 127 |
12 福祉医療費等助成事業 | 意見 36 | 照合結果の明確化について | 131 |
計 | 指摘事項4、意見26、計30 |
第 4 外部監査の結論-総括-
【第 5 Ⅲ 子育て支援課】
事業名 | 指摘事項、意見 | 頁 | |
1 すこやか子育て支援 事業 | 意見 37 | 待機児童への対応について | 134 |
3 地域の子育て力向上事業 | 意見 38 | 地域子育て家庭優待事業等の広報活動につ いて | 143 |
意見 39 | 祖父母手帳の発行等について | 143 | |
4 児童福祉諸費 | 意見 40 | 読み聞かせの効果と今後の課題について | 147 |
5 児童会館費 | 指摘事項 16 | 指定管理者へのモニタリングのあり方につ いて | 152 |
7 市町村子ども・子育て支援事業 | 意見 41 | ファミリー・サポート・センター事業の課題 とシェアリング・エコノミーについて | 162 |
意見 42 | 児童虐待への対応について | 164 | |
計 | 指摘事項1、意見6、計7 |
【第 5 Ⅳ 健康推進課】
事業名 | 指摘事項、意見 | 頁 | |
1 妊婦・出産への健康づくり支援事業 | 意見 43 | 思春期からの健康づくり支援事業について | 170 |
意見 44 | 女性健康支援センター事業に関する委託契 約について | 170 | |
計 | 指摘事項0、意見2、計2 |
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
(1)「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」のこれまでの成果について
① これまでの成果と今後の推進方針
「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」は、平成 26 年度から平成 29 年度までの 4 年間を計
画期間として、平成 26 年 3 月に策定された計画であるが、平成 28 年 11 月に、これまでの成
果と最終年度(平成 29 年度)に向けた推進方針について、中間総括(注1)を取りまとめている。
(注 1)「『第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン』~これまでの成果と最終年度に向けた推進方針について~」(平成
28 年 11 月)(以下、「中間総括」という。)
表 12 第 2 期ふるさと秋田元気創造プランとこれまでの成果(その1)
「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」 | 中間総括 | ||
方向性 | 取組み | これまでの取組、成果 (定性的成果) | 取組の達成状況 (定量的成果) |
子育て家庭の経済的負担の軽減 | ① 福祉医療費及び保育料の 負担に対する支援 | 全国トップレベルの子育て支援策のさらなる充実 | - |
② ゆとりのある住宅確保等 の支援 | - | ||
地域の子育てサポート体制の充実 | ① 子育て支援活動団体や企業等による子育て支援の強化 | - | ・ファミリー・サポート・センターの提供会員登録 (H27)1,242 人 【目標(H29)1260 人】 |
② 子育て支援拠点の充実 | - | - | |
③ 子どもたちが安心できる 居場所づくりの促進 | - | - | |
④ 就学前の教育・保育の充実 | - | ・認定こども園数 (H27)53 箇所(達成) 【目標(H29)53 箇所】 | |
安心して出産できる環境づくり | ① 妊娠や出産に対する支援 | 特定不妊治療費の助成等 による安心して出産できる環境の充実 | - |
② 周産期母子医療センター等の周産期医療の機能強化 | - | ・周産期死亡率 (H27)累積 2.9(千対) 【目標(H29)4.0(千対)】 | |
企業による仕事と子育てを両立できる環境づくり | ① 企業に対するきめ細かな 働きかけの実施 | - | - |
② 両立支援に取り組む企業へのサポート強化 | - | ・次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定件数(従業員 100 人以下の企業) (H27)724 件(達成) 【目標(H29)630 件】 | |
③ 男性の育児参加促進に向 けた啓発等の推進 | - | - |
(出所)「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」及び中間総括に基づいて監査人が作成。
第 4 外部監査の結論-総括-
表 13 第 2 期ふるさと秋田元気創造プランとこれまでの成果(その2)
「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」 | 中間総括(平成 28 年 11 月) | ||
方向性 | 取組み | これまでの取組、成果 (定性的成果) | 取組の達成状況 (定量的成果) |
高齢者の生きが い・健康づくりの促進 | ① 高齢者の社会参加・生き がいづくりと健康づくりを通した介護予防の充実 | - | - |
医療・介護・福祉の連携強化による地域包括ケアシステムの構築 | ① 医療・介護・福祉の連携 強化 | 医療・介護・福祉の連携強化による地域包括ケアシステムの構築 | - |
② 地域包括支援センター の機能強化 | - | ||
③ 在宅医療提供体制の整備と普及啓発 | - | ・在宅療養支援診療所数 (H27)累積 76 箇所 【目標(H29)累積 111】 ・訪問介護ステーション施設数 (H27)累積 44 【目標(H29)累積 63】 | |
④ 介護施設の計画的な整 備促進 | - | - | |
認知症対策の促進 | ① 地域において認知症患者を支える体制づくり | 認知症対策の充実強化 | ・認知症サポーター数 (H27)累積 64,264 人(達成) 【目標(H29)累積 50,000 人】 |
障害者の地域生活支援体制の強化 | ① 障害者の地域生活支援体制の強化 | 障害者の地域生活支援体制の強化 | ・居住系・日中活動系サービス利用人数 (H27)累積 10,498 人 【目標(H29)累積 11,640 人】 |
ひきこもり対策の促進 | ① ひきこもりに関する相談支援体制の整備 | ひきこもり対策の充実強化 | ・ひきこもり相談支援センターにおける相談件数 (H27)累計 235 件 【目標(H29)累計 435 件】 |
② ひきこもり等の若者に 対する就業支援 | - | ||
介護・福祉人材の確保・育成 | ① 介護・福祉人材の確保 | 介護・福祉人材の確保・育成 | - |
② 職場定着の促進と人材 の資質向上 | - |
(出所)「第 2 期ふるさと秋田元気創造プラン」及び中間総括に基づいて監査人が作成。
② 中間総括の評価
(指摘事項又は意見ではないが、県に対して期待する事項)
監査の対象とした「(施策)子どもを産み・育てる環境の充実強化」と「(施策)高齢者や障害者等を地域で支える体制づくり」に関する事業の中間総括における定性的及び定量的な成果を示したものが、表 12 及び表 13 である。中間総括の時点では、定量的な目標を達成していない事業もあるが、おおむね順調に施策が進められているものと思料される。
ただし、「(施策)子どもを産み・育てる環境の充実強化」において代表指標として示された
「出生数の平成 29 年度の目標値 6,100 人及び合計特殊出生率の平成 29 年度の目標値
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
1.45 は、いずれも現状では達成されていない。たとえば、出生数は、目標値6,100 人であるのに対し、秋田県公表の数値(「平成 29 年 秋田県の人口と人口動態[速報]」(平成 29 年11月 秋田県企画振興部調査統計課))では、平成27 年に6,000 人を割り込み5,988 人となり、その後平成 28 年が 5,739 人、平成 29 年が 5,461 人と、出生数の減少に歯止めがかかっていない。
また、「(施策)高齢者や障害者等を地域で支える体制づくり」において代表指標として示された健康寿命(平均寿命の伸びを上回る健康寿命の延伸)は、中間総括(「『第2 期ふるさと秋田元気創造プラン』~これまでの成果と最終年度に向けた推進方針について~」「第Ⅱ章 数値目標の達成状況」では記載されていない。出生数は表 3(8 ページ)で示したとおり人口の減少を食い止めるためには重要な数値である。また、健康寿命は、高齢化が進行する中限られた県予算の中で高齢化対策を着実に進めるためには重要な数値である。したがって、いずれの数値も重要であり、今後さらなる達成に向けた努力は必要であろう。
さらに、中間総括では触れられていない取組み又は「その他の主な施策」で簡単に触れられている程度で、具体的な進捗状況が触れられていない取組み、たとえば「高齢者の社会参加・生きがいづくりと健康づくりを通した介護予防の充実」などもあり、今後さらなる取組みの充実を行い、具体的な成果(定性的成果、定量的成果)の発現を期待するところである。
第 4 外部監査の結論-総括-
(2)少子高齢化に対するこれまでの施策とその評価について
① 秋田県の少子高齢化に対するこれまでの主な施策とその検証
㋐ 第 3 子以降の出生数向上の取組とその検証
平成 3 年度からスタートした「秋田県新総合発展計画」において人口減少問題が重要課題
として位置づけられ、その解決に向けて「第 3 子以降を対象とした保育料の助成及び奨学金制度」が実施された。
具体的には、少子化対策として、第 3 子以降の乳幼児(0~6 歳)の保育料に対して助成する「すこやか子育て支援事業(保育料助成)」及び、子育て家庭の経済的負担の軽減を図るため、奨学金を貸与する「すこやか奨学金基金・すこやか奨学金貸与事業」が実施された。
2 つの施策のうち、「すこやか子育て支援事業」は、補助率や対象範囲、所得制限などの事業の見直しを行いながら、現在も継続している。一方、「すこやか奨学金基金・すこやか奨学金貸与事業」は、平成 20 年度で新規採用は終了し、平成 21 年度からは秋田育英奨学金に統合され、多子世帯に限定した新規貸与者枠を廃止している。
当該施策に対する県の検証は以下のとおりであった。
図 6 第 3 子以降の出生数向上の取組に対する検証
平成 2 年まで全国平均より低い状況が続いていた第 3 子以降の出生割合は、平成 5~12
年頃までの期間は全国平均並みの割合を維持しており、また、合計特殊出生率も事業開始後の平成 3~18 年の間全国平均を上回っている。
全国的に第 3 子の出生割合及び合計特殊出生率が低下している中で、一定期間にわたり、秋田県の数値が持ち直していた状況を鑑みると、保育料の無料化や奨学金制度は、第 3 子以
降の出生に関し一定程度寄与したものと考えられる。
(出所)「秋田の人口問題レポート」(平成 27 年 3 月、人口問題対策プロジェクトチーム)。
(注) 太字や下線は、監査人が記載。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
図 7 第 3 子以降の出生数(秋田県)及び第 3 子以降の出生割合(秋田県・全国)
(人)
(出所)総務省「人口動態推計」及び秋田県「衛生統計年鑑」。
図 8 合計特殊出生率
(出所)総務省「人口動態推計」及び秋田県「衛生統計年鑑」。
このような検証に対し、後述する政府の施策を説明している「少子化社会対策白書(少子化の状況及び少子化に対処するために講じた施策の概要に関する報告書)」(平成 29 年度版、
内閣府)(注1)においても、「第3 節 3 人以上子供が持てる環境の整備」において、多子世帯
の経済的負担の軽減、多子世帯又は第 3 子以降を対象とする保育所等の優先利用、及び住宅政策における多子世帯への配慮・優遇措置が示されており、当該施策としては有効であった時期もあり、一定の評価をすることはできると考えられる。
(注 1)当該白書は、少子化対策基本法(平成 15 年法律第 133 号)第 9 条に規定する「少子化の状況及び少子化に対処するために講じた施策の概況に関する報告書」であり、政府が毎年国会に提出しなければならない。
第 4 外部監査の結論-総括-
㋑ A ターン就職支援の取組とその検証
A ターンとは、秋田県への UIJ ターンに対する総称で、秋田(Akita)へのオールターンの願いを込めて名付けられたものであるが、平成 3 年度以降、秋田への就職をさらに促進するため、以下の施策を実施している。
図 9 実施内容の推移
平成 3 年度 | 【体制支援】 財団法人秋田県ふるさと定住機構の設立、ふるさと定住基金の造 成、住宅・教育等生活関連情報を提供、ふるさと就職相談会(東京・ 県内)、家族見学会の実施 |
【動向把握】 A ターン希望者動向調査の実施、希望者登録制度の充実 | |
平成 4 年度 | 【体制支援】「A ターンプラザ秋田」の開設(東京:有楽町)、相談員の配置(2 名)、A ターン情報システムの運用開始 |
平成 5 年度 | 【情報提供】 首都圏において TV スポット CM 放映 |
平成 18 年度 | 【体制支援】「A ターンプラザ秋田」移転(東京:有楽町から都道府県会館内に 移転) |
平成 19 年度 【体制支援】 A ターン登録者に対し就職面接交通費の助成、相談員の配置(3 名) | |
平成 20 年度 | 【体制支援】 A ターンプラザ内に無料職業紹介所開設、本庁及び秋田を除く各地 域振興局に雇用労働アドバイザーを配置(8 名) |
平成 24 年度 | 【体制支援】 就職面接会参加企業への参加経費助成を開始(平成 25 年度実績: 36 件) |
平成 25 年度 | 【動向把握】 新規登録者入力用フォームの新設(ふるさと定住機構の HP に入力 フォームを表示) |
(出所)「秋田の人口問題レポート」(平成 27 年 3 月、人口問題対策プロジェクトチーム)。
これに対して、県の検証結果は以下のとおりであった。
図 10 A ターン就職支援に対する県の検証結果
県外から県内就職した人数(Aターン就職者数)は、「A ターン就職促進事業」を開始した平成 3 年度より、県内外の景気状況等にかかわらず毎年千人前後で推移している。
これは、平成3 年のバブル崩壊や平成20 年のリーマンショック以降の景気後退局面において、大都市圏の景気後退の影響が地方よりも大きかったことや、「財団法人秋田県ふるさと定住機構」の設立やきめ細かな情報(求人、住宅、教育等生活関連)提供、テレビ CM による PR、A ターンプラザ内への無料紹介所開設などにより、A ターン登録者数を安定して(毎年 2 千人前後)確保できたことによるものと考えられる。
しかしながら、戦後一貫して続いている社会減の歯止めとしては十分ではなく、「A ターン」事業
の尚一層の取組の強化が求められている。
(出所)「秋田の人口問題レポート」(平成 27 年 3 月、人口問題対策プロジェクトチーム)。
(注) 太字や下線は、監査人が記載。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
㋒ 企業誘致の取組とその検証
上記に示すように、当該事業については過去の施策として一定の評価はできるが、「A ターン」事業の推進のためには、さらに何らかの新たな取組が必要とされよう。これに対する、事例の紹介は後述する。
他県も同様であるが、昭和 30 年代の若年労働力の県外流出や県外の出稼ぎへの対応として、県内に雇用の場を拡大するため、既存工業の育成拡大・成長性のある企業の誘致が求められたのがきっかけであった。当該施策の主な流れは以下のとおりである。
図 11 実施内容の推移
昭和 36 年度から平成 25 年度までの実績は、延べ誘致件数 647 件、うち撤退・廃止等 317
件で、平成 26 年 3 月末現在 330 の企業が県内で活動を継続している。
工業団地の整備としては、18 の工業団地を整備しており、造成面積は 572.9ha で、うち分譲している団地は 11 団地、分譲・貸付済みは 380.6ha
昭和 36 年 「豊富な労働力と広大かつ、低廉な工業用地」をキャッチフレーズに、「一町村一工場」を基本方針として、企業誘致を始める。
昭和 37 年 秋田県工業化促進条例(昭和 38 年以降の税の減免等の優遇措置)
昭和 40 年 秋田県工業施設整備基金条例(機械等の整備をする市町村への資金の貸付)昭和 45 年 「9 ブロック 10 団地構想」
昭和 47 年 工業再配置促進法に基づく補助金等の開始
昭和 56 年 企業立地促進基金条例(新設事業への低利融資)昭和 56 年 秋田空港開港
昭和 56 年 臨空港型工業団地(秋田市御所野地区、河辺町七曲地区)整備
昭和 58 年 これまでの資金を統合し「秋田県企業立地促進資金貸付金」を創設平成 3 年 秋田湾新産業拠点(A-BIZ)を整備(現在空きがほとんど)
平成 4 年 テクノサテライト企業育成事業補助金創設平成 5 年 海外シフト等対策支援事業補助金創設 平成 7 年 コスト削減対策支援事業補助金創設
平成 8 年 基盤業種導入促進事業費創設
平成 9 年 秋田県企業誘致推進協議会設置平成 19 年 企業立地促進法施行
(出所)「秋田の人口問題レポート」(平成 27 年 3 月、人口問題対策プロジェクトチーム)。
第 4 外部監査の結論-総括-
これに対する評価としては、県内に一定の雇用機会を提供したが、戦後一貫して続く人口の社会現象を解消するまでには至っておらず、今後も、産業集積に向けた取組の継続が求められるとしている。
㋓ 昭和 40 年代の集落移転の取組と検証
過疎問題に対応して、田代町(現:大館市)が昭和 41 年全国で初めての「辺地小集落解消促進条例」を制定したのを契機として、集落移転事業が始まり、以下のように現在に至っている。
図 12 実施内容の推移
最大で 96 集落、430 戸程度が移転したとされる。
昭和 44 年 秋田県集落再編成事業推進要綱(市町村が行う集落再編事業に対する助成)昭和 45 年 12 月までに、集落再編に関する条例を 12 町村が策定
昭和 46 年 集落再編事業による移転に関する不動産取得税の免除昭和 48 年 1 戸当たりの移転費の補助限度額を倍額に引き上げ
これらに、国土庁による過疎地域集落再編事業が加わる。
(出所)「秋田の人口問題レポート」(平成 27 年 3 月、人口問題対策プロジェクトチーム)。
当該施策について数値的評価を行うことは困難であるが、意識調査によると、移転住民の8割が「移転してよかった」と回答しているとされる。
ただし、「移転には経済的な負担が発生する(新たな家屋の建築、旧家屋の解体)」、「移転等を選択するか否かを決定するのは、集落に暮らす住民自身であることが大原則である」点や、平成 12 年の総務省の意識調査では、約7割が引き続き今の集落に居住する意向であるとした点、集落移転による地域(里山等)の荒廃により、安全・安心な食料や水、エネルギーの供給、国土の保全など、国民全体の安全・安心な生活を支える重要な公益的機能が失われるこ ともあるという点等の課題が残されているとされる。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
② 秋田県の少子高齢化対策に対する評価
(指摘事項又は意見ではないが、県に対して期待する事項)
㋐ 建設工事入札における参加資格の男女共同参画の取組の評価について
秋田県においては、県内の企業の男女が共に働きやすい職場環境づくりの取組を促進させるために、当該取組を実施している団体については、県の入札参加資格審査制度の活用を通じて、一定の評点を付与することでその促進を後押しする仕組みを導入している。
具体的には、建設工事入札において、入札参加資格の面談審査日までに、男女共同参画課に所定の調査票等を提出することで、評点 10 点が付与されるとしている。当該政策は非常に評価できるものと言える。ただし、当該類似の試みをしている自治体は横浜市等まだ少ないものの、国においては既に以下に示す機能が制度化されている。
つまり、国においては、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章(平成 22 年 6 月
29 日仕事と生活の調和推進官民トップ会議)」(明日への投資)において仕事と生活の調和の
実現に向けた取組を宣言し、「女性活躍加速のための重点方針 2015(平成 27 年 6 月 26 日すべての女性が輝く社会づくり本部決定)」を経て、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成 27 年法律第 64 号)」(女性活躍推進法)が定められている。
女性活躍推進法第 20 条(国等からの受注機会の増大)においては、国は当該法に従うことを義務付けられているが、地方公共団体については、「国の施策に準じて、認定一般事業主等の受注の機会の増大その他の必要な施策を実施するように努めるものとする。」として努力目標にとどまっている。
これを受けて「女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取扱指針」が示され、
〇 総合評価落札方式、規格競争方式において、ワーク・ライフ・バランス等推進企業(女性活躍推進法、次世代法、若者雇用促進法に基づく認定(えるぼし認定等)の取得企業や女性活躍推進法に基づく計画策定中小企業)を加点評価。
〇 取組の実施に当たっては、不正な手段を使った企業が採用されることのないよう、適切な基準を設定し、公正かつ客観的な評価や取扱いを行う。
〇 実施の際には、憲法の平等原則との関係を踏まえつつ、公正性及び経済性の確保等、対象となる公共調達及び補助金の各制度が本来達成すべき目的が阻害されないよ
う配慮する必要がある。
とし、さらに、
〇 男女共同参画等に取り組む企業、ワーク・ライフ・バランス等推進企業等に対し、調達
案件の把握方法を知らせる等の啓蒙活動を行う。
第 4 外部監査の結論-総括-
〇 指名競争入札による調達を行う際、指名基準に該当する企業にワーク・ライフ・バランス等推進企業等がある場合には、指名先に含める。
〇 少額随意契約の際、ワーク・ライフ・バランス等推進企業等を見積先に含める。
としている。具体的には、ワーク・ライフ・バランス等の推進に関する指標として、「女性活躍推進法に基づく認定(えるぼし認定企業)」、「次世代法に基づく認定(くるみん認定企業・プラチナくるみん認定企業)」及び「若者雇用促進法に基づく認定(ユースエール認定企業)」については、総合評価落札方式等において総配点の 3%、5%及び 10%分を設定することとしている。
このため、女性活躍推進法第 20 条の趣旨からすると、秋田県における現在の施策を一歩進め、ワーク・ライフ・バランス等の推進に関する指標の認定企業についてもさらなる優遇措置を行うことが求められることが望ましいと考える。
㋑ CCRC と秋田県のあり方
政府が掲げる地方創生の主要施策のひとつとして、「日本版 CCRC(Continuing Care Retirement Community)」(注 1)の構想がある。これは、東京圏をはじめとする地域の中高年齢者が、希望に応じて、地方やまちなかに移り住み、多世代の地域住民と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくりを目指すもので、この構想の意義としては、①中高年齢者の希望の実現、②地方へのひとの流れの推進、③東京圏の高齢化問題への対応、の 3 つの点が挙げられている。(注 2)
このため、各地方において導入可能性に向けた検討がはじまっており、秋田県においても実現に向けて勉強会等が開催されている。
しかし、日本国内での動きは、一般的に CCRC の持つ本来のソフト面の機能ではなく、ハード面にばかり目が向きがちである点には注意を要する。今から 20 年ほど前、日本で最初に開発された CCRC とされる福岡県朝倉市の「CCRC 美奈宜の杜」では、そのハード面ばかり強調されソフト面が追い付かず、当初の計画どおりには進んでいない。
このため、県が参考とすべきは CCRC の形にとらわれず、高齢者が地域において多世代とともにコミュニティを形成して住み続けられるために本来必要とされるソフト面の機能についてであろう。ハード面はできるだけ既存のものを活用しつつ、秋田県らしい特徴を兼ね備えたものが望ましいと考える。例えハード面の開発が優れていても、高齢者だけが一定の地域に隔離され、お仕着せのサービスや食事を提供されても、誰も求めないであろう。
(注 1) 定年後の高齢者を対象とするアメリカの医療・介護制度で、自立生活が可能なうちに入居し、必要に応じて介護・看護・医療などのサービスを受けながら共同生活を送ることができる仕組みで、これをベースに 2015年 12 月に政府は、「生涯活躍のまち」を目指す「日本版 CCRC 構想(最終報告)」を取りまとめた。
(注 2) 「生涯活躍のまち」構想に関する手引き(第 3 版)。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
ここでソフト面の対応として、むしろ参考となるのが、近時注目されているアメリカの「ビーコンヒル・モデル」(注 3)である。ビーコン・ヒル(Beacon Hill)自体は、アメリカのマサチューセッツ州ボストン市内にある富裕層の住宅地であるが、重要なことはそこでのハード面の優位性ではなく、高齢者がその街に住み続けられる仕組みである。
当該モデルの特徴は、①ビレッジ・コンシェルジュという充実した生活支援サービス、②コミュニティ・サービスの充実(地域住民との様々な交流の仕組)、③コミュニティ会員向けの割引サービス等であるとされる。(注 4)
具体的には、以下に示す 15 のケア(サービス)からなる仕組である。
(注 3) http://www.retirementconcepts.com/locations/beacon-hill-villa/ https://www.citylab.com/life/2015/09/why-seniors-are-forming-villages-to-age-in-place/405583/ https://www.senioradvisor.com/blog/2014/07/stay-at-home-retirement-villages-the-basics-of-th e- beacon-hill-model/
(注 4) http://www.nikkeibp.co.jp/article/gdn/20121119/331103/
〇 24 時間医療介護
〇 多機能化粧室
〇 主治医
〇 スパ施設
〇 緊急時通報システム
〇 火災報知
〇 庭園・中庭
〇 ハウス・キーピング
〇 洗濯サービス
〇 図書室
〇 娯楽室
〇 身の回りの世話のサービス
〇 セキュリティシステム
〇 工作室等趣味のスペース
〇 ワイファイ
(出所)http://www.retirementconcepts.com/locations/beacon-hill-villa/。
どれをとっても本来そう難しくないものではあるが、すべてを完備しつつ、それを一定のコミュニティの領域内で実現させることは簡単なことではないかもしれない。
秋田県のように、冬場において積雪を前提とする地域においては、高齢者がコミュニティ内を自由に歩き回れる環境を構築することは困難な部分もあろうが、その一方で、温泉などの自然環境資源を十分に利用できるというメリットも享受しうると考えられる。
第 4 外部監査の結論-総括-
コンパクトで、かつ秋田県の独自性を生かした高齢者を中心とするコミュニティの実現に向けて、今後の努力が期待される。
この場合重要となるのは、各種サービスが会員組織でなされる点で、何らかの協同組合の存在と、それを支える資金的裏付け、さらには後方支援としてのボランティア(有償であってもよい)の存在であろう。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
第 5 外部監査の結論-事業別-
(1)事業の概要
① 事業内容
秋田県は急速に少子高齢化が進んでおり、平成 29 年 10 月 1 日現在の人口は 995,374
人で、一方、平成 29 年 7 月 1 日現在の 65 歳以上の高齢者数は 353,786 人、高齢化率は
35.5%と県民の約 3 人に1 人以上は高齢者であり、今後も高齢者の人口割合は増加し続けることが予想される。そのような状況で、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもと、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築の推進が望まれている。
地域包括ケアシステムでは在宅療養者を中心に医療・介護に関わる病院、薬局、介護事業者などの関係者が連携し、包括的に在宅医療・介護サービスを提供する必要がある。そのためのツールとしてICT(注 1)がある。医療・介護に関わる関係各者がICTを活用した情報共有を行うことで、在宅療養者の日常の様子や状態の変化をタイムリーに把握するとともに、それぞれの職種が有する情報の一元化と情報共有にかかる作業の効率化を図ることを通じて、地域の在宅医療・介護サービスの質の向上を図ることが可能となる。
当該事業は、由利本荘・にかほ地域をモデルとして、在宅医療と介護に携わる関係者間の情報共有を図るため、ICTを活用した連携システム構築を推進するための経費に対して補助金交付を行うものである。詳細は以下の表 14 のとおりである。
(注 1). ICT・・・ Information and Communication Technology の略。「IT(Information Technology)」とほぼ同義であるが、情報通信技術を利用した情報や知識の共有・伝達といったコミュニケーションの重要性を伝える意味で「Communication」が加えられている。
表 14 事業の詳細
実施主体(補助先) | 一般社団法人 由利本荘医師会 |
補助金名称 | 秋田県在宅医療・介護ICT連携推進事業補助金 |
補助金対象経費 | 連携システム構築費及びシステム運営費など |
補助金の財源 | 地域医療介護総合確保基金(国 2/3、県 1/3) |
事業期間 | 平成 27 年度~平成 29 年度 |
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
補助金実績額 | 平成 27 年度 5,333,000 円 平成 28 年度 13,268,000 円 |
平成30 年度以降の展 望 | 由利本荘医師会におけるモデル事業の実施を踏まえ、県内他 地域で同様の事業展開を行う予定 |
これまでの 主な事業実績 | 1)ICTシステムの構築・運用 ICTシステム「ナラティブブック秋田」の構築・運用の実施。ナラティブブック秋田は、インターネットコミュニケーションツールを活用して、本人が主体となって管理する情報を、医療福祉介護従事者と本人及び家族が共有できるクラウドサービスであり、情報は、本人、家族そして医療福祉介護従事者がモバイル端末(パソコンやタブレットなど)を使い入力することでタイムリーに共有をすることが可能となる。 登録利用施設数は、平成 28 年 3 月末:9 施設、平成 29 年 3 月末:42 施設と順調に拡大傾向にある。 2)利用促進普及活動 在宅医療・介護ICT連携システム参加者(患者、家族、医療従事者等)への広報活動や説明会(平成 28 年度の開催 は 7 回)の実施 3)運営委員会の開催 運営委員会を組織し、システムの運用を効果的に実施するため、機能及び運用方法等を決定するとともに、システムの操作性等について検討した(平成 28 年度の開催は 5 回)。 4)参加者との連絡調整 在宅医療・介護ICT連携システム参加者からの問い合わせ、施設登録、利用者登録に関する業務を行った。 |
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
予算額 | 5,333 | 13,450 |
決算額 | 5,333 | 13,268 |
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
負担金補助及び交付金 | 13,268 | 由利本荘医師会への補助 |
その他 | - | |
合計 | 13,268 |
国 | - | -% |
県一般財源 | - | -% |
その他(地域医療介護総合確保基金) | 13,268 千円 | 100% |
(2)監査の結果
【指摘事項1】 二者以上のものからの見積書徴取の必要性について
「秋田県在宅医療・介護ICT連携推進事業補助金交付要綱」にて、補助先が行う契約事務について「県が行う契約手続の取扱に準拠」することが求められている(下記囲み参照)。しかし、監査を行った結果、補助先において「県が行う契約手続の取扱に準拠」しているとはいえない契約事務が存在した。
秋田県在宅医療・介護ICT連携推進事業補助金交付要綱 抜粋
第6 (7) 補助事業を行うために締結する契約については、一般競争入札に付
するなど、県が行う契約手続の取扱に準拠しなければならない。
平成 27 年度において、補助先は地域企業よりノートパソコン 1 台 169,020 円を購入してい
る。契約形態は、地域企業 1 社から見積書を徴取後、随意契約を行った。
県が同様の契約(随意契約)を行う場合には、競争性確保の観点から、二者以上のものから見積書を徴取し、最も安価かつ予定価格以内の業者とすることが求められているところである
(秋田県財務規則 172 条)。
補助先が秋田県財務規則に反し一者のみの見積書の徴取とした理由は「同機種の市場価格等を担当者が調査・比較し、地域企業 1 社の見積額が妥当な額であるとの判断から、購入したものである」とのことであった。このような契約事務では、たとえ価格の妥当性は確認できたとしても見積合わせにて、より低額で調達できた可能性も否定できないことから競争性は認められず、県が行う契約手続の取扱に準拠しているとはいえない。
また、県は補助事業完成検査において、当時の担当者が電話やメールでヒアリングを行い、当該パソコンの機能や必要性、価格の妥当性等についても確認しており一定のチェック機能
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
は働いていたものと説明しているが、補助事業完成検査において特段ヒアリング・調査等行った形跡は検査調書等からは見えない。今後県として、補助先へ要綱遵守の徹底を求めるとともに、深度ある補助先の契約事務の検査を行うことを求める。
(3)監査対象事業に対する意見
【意見1】 単独随意契約の理由の文書化について
補助先は、ICTシステムの構築・運用を県外のシステムベンダーX 社へ委託しており、平成 27 年度 3,700,000 円、平成 28 年度 12,500,000 円を支払っている。契約は入札や見積合わせを行うことなく単独で X 社となされた。この理由は「ナラティブブックは、既成の連携システムとは異なり、オランダのビュートゾルフという取組をヒントにした富山県の医師の発案を踏まえ、利用者(患者)主体の独自のシステムとして同社が開発したものであり、同社以外では事業目的を達成することができないため、単独随意契約とした」と口頭で説明を受けた。
県が同様の契約を行う場合は、原則的には地方自治法の求めるところにより一般競争入札が求められるが、その契約の性質又は目的が競争入札に適しないものである場合は例外的に随意契約が可能となり(地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項第 2 号)、さらに二者以
上の見積り合わせの省略も可能(秋田県財務規則 172 条)となるため、前段に記載した当該システムの特殊性をもって単独随意契約を行うことも相当程度合理的であるものと判断される。
問題は、X 社以外の大手システムベンダーの医療連携ICTシステムも数多くある市場環境において、X 社への単独随意契約に至った理由が、監査における県から補助先への照会及び回答を根拠に説明されており、補助先から受け入れた報告書及び県の検査調書から読み取れないことである。この点について県は、委託先が同社となることも含め、事業内容を十分に確認した上でモデル事業として実施することになったものであるため、改めて単独随意契約の合理性や妥当性等を確認・検証する必要はないと判断したとのことであった。
補助先による調達活動は間接的に公金の支出であり、厳格な公共性と競争性が求められるため、補助金交付要綱上「県が行う契約手続の取扱に準拠」という文言が付されているものと解される。公金における調達活動における単独随意契約の利用は限定的であるべきであって、例外的に単独随意契約を行った場合には、理由を明確に契約関連書類に記録及び保存する必要があり、県の契約事務では同様の取り扱いがなされているところである。そうすることで単独随意契約の合理性が容易に疎明可能となり、契約の公共性・透明性・説明責任が確保されることとなる。今後、県は単独随意契約に至った理由の文書化、文書の県への提出を補助先へ求めることが望まれる。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
(1)事業の概要
① 事業内容
県内の介護・福祉事業について、サービスが県民に適切に提供されるよう研修を行い、従事者の資質の向上を図るとともに、無料職業紹介事業所として求職者への就労支援を行うものである。
事業内容は次のとおりである。
表 15 福祉保健研修・人材センター運営事業の内容
項目 | 内容 |
⑴実施主体 | 秋田県 |
⑵委託先 | 社会福祉法人秋田県社会福祉協議会 |
⑶事業内容 | ①研修部門 17 コース ⅰ.行政職員研修 3 コース ⅱ.施設等職員年数・職域別研修 12 コース ⅲ.専門研修(課題別研修等) 2 コース ②人材部門 ⅰ.福祉人材情報システムの運営による求人求職の相談対応、登録、職業紹介業務の推進 ⅱ.福祉の就職フェア、福祉の仕事セミナーなど、広く県民を対象としたイベントの開催 ⅲ.人材確保に関する実態調査等、県内事業者を対象とした調査活動 ⅳ.人材センターホームページの運用等による各種情報の提供 |
⑷負担区分 | ①研修部門 県 10/10 (行政職員研修は国 1/2) ②人材部門 国 1/2(人件費は除く) 県 1/2 |
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 26 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | 47,010 | 46,447 | 45,261 |
決算額 | 47,010 | 46,447 | 45,261 |
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
委託料 | 45,261 | 秋田県福祉保健研修・人材確保業務委託契約 |
合計 | 45,261 |
国 | 2,592 千円 | 5.7% |
県一般財源 | 36,629 千円 | 80.9% |
その他(諸収入) | 6,040 千円 | 13.4% |
④ 都道府県福祉人材センターについて
社会福祉法第93 条第1 項により、都道府県知事は、社会福祉事業に関する連絡及び援助を行うこと等により社会福祉事業従事者の確保を図ることを目的として設立された社会福祉法人であって、同法第94 条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、都道府県ごとに一個に限り、都道府県福祉人材センター(以下、「都道府県センター」という。)として指定することができる。この都道府県センターについて秋田県では、秋田県社会福祉協議会(以下、「県社協」という。)が 「秋田県福祉保健人材・研修センター」
(以下、「センター」という。)と称して運営している。
県は、県社協と平成 18 年 3 月 24 日に秋田県福祉保健研修・人材確保業務委託契約(以下、「委託契約」という。)を締結しており、その契約が現在まで引き継がれている。
委託契約書は委託事業について次のように定めている。
(1)社会福祉法第 21 条に定める研修業務
(2)社会福祉法第 94 条に定める都道府県福祉人材センターに関する業務
(3)他の福祉保健関連研修及び人材確保実施機関等との連絡調整
(4)その他、福祉保健に関する研修及び人材確保の実施に当たり必要な業務
また県は、県社協と毎年度、秋田県福祉保健研修・人材確保業務に関する協定書(以下、
「協定書」という。)を締結しており、各年度の委託料などは協定書に定められている。
※社会福祉法第 21 条
この法律、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法の施行に関する事務に従事する職員の素質を向上するため、都道府県知事はその所部の職員及び市町村の職員に対し、指定都市及び中核市の長はその所部の職員に対し、それぞれ必要な訓練を行わなければならない。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
※社会福祉法第 94 条で定める都道府県センターが行う業務。
(1)社会福祉事業に関する啓発活動を行うこと。
(2)社会福祉事業従事者の確保に関する調査研究を行うこと。
(3)社会福祉事業を経営する者に対し、第 89 条第 2 項第 2 号に規定する措置の内容に即した措置の実施に関する技術的事項について相談その他の援助を行うこと。
(4)社会福祉事業の業務に関し、社会福祉事業従事者及び社会福祉事業に従事しようとする者に対して研修を行うこと。
(5)社会福祉事業従事者の確保に関する連絡を行うこと。
(6)社会福祉事業に従事しようとする者に対し、就業の援助を行うこと。
(7)そのほか社会福祉事業従事者の確保を図るために必要な業務を行うこと。
(2)監査対象事業に対する意見
【意見2】 委託業務の内容について
センターは、社会福祉法第 93 条第 1 項に基づき、秋田県知事の指定を受けて県社協に設置されている福祉分野の無料職業紹介所である。職業安定法に基づき、厚生労働大臣の許可を得て無料職業紹介を実施しており、また、福祉保健事業従事者を対象とした研修事業を実施している。
県は、センターの業務を県社協に委託している。県社協とは毎年度、協定書を締結しており、協定書には委託料が明記されている。
協定書に記載されている平成 28 年度の委託料は次のとおりである。
⑴人材確保事業 20,407 千円
⑵研修事業 24,209 千円
⑶福祉事務所職員研修事業 644 千円
合計 45,261 千円
協定書に含まれている平成 28 年度秋田県福祉保健人材・研修センター事業計画(以下、
「事業計画」という。)は、センターが行う業務を表 16(次ページ)のように規定している。
この表に示した事業計画に記載されている項目について、協定書に示されている⑴人材確保事業、⑵研修事業、⑶福祉事務所職員研修事業とのつながりが明確となっていない。このため、事業計画に示されている各項目と委託料の関係が明確となっておらず、委託料の妥当性を十分に把握できない状況となっている。
協定書に示されている委託業務の区分と事業計画の記載内容のつながりを明確にしておく必要がある。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
表 16 センターの事業計画
番号 | 項目 | 時期等 |
1 | 無料職業紹介機能、相談・斡旋体制の強化 | 随時 |
2 | 福祉の仕事セミナーの開催 | 月 1 回 |
3 | 高校生のための福祉の進路ガイダンスの開催 | 年 1 回(3 地区) |
4 | 福祉の就職フェアの開催 | 年 2 回(8 月、2 月) |
5 | 福祉人材確保セミナーの開催 | 10 月 |
6 | 福祉事業所等における人材確保・人材育成に関する実態調査の実施 | 年 1 回 |
7 | 求職者アンケートの実施 | 随時 |
8 | 関係機関、大学・短大等との情報交換、協力関係の強化 | 随時 |
9 | 情報提供機能の強化 | 随時 |
10 | 秋田県福祉保健人材・研修センター運営委員会の開催 | 年 1 回 |
11 | 社会福祉事業従事者を対象とした研修の実施 | 4~12 月 |
12 | 職場研修への協力・支援 | 随時 |
13 | 研修ニーズの把握とカリキュラムの件等 | 随時 |
14 | 研修有料化及び研修受付システム導入の円滑な実施 | 随時 |
【意見3】 センターが行う無料職業紹介について
平成 28 年度の委託事業について、研修事業(講習会等の開催)などは実施する研修が協定書(事業計画)で明確となっているが、研修以外の事業の中には、事業計画で実施内容は定められていても、それをどの程度実施するのかという業務量が明確となっていないものが見受けられる。
たとえば、無料職業紹介機能、相談・斡旋体制の強化(以下、「無料職業紹介」という。)は、事業計画では次のように規定されている。
項目 | 時期等 | 概要 |
無料職業紹介機能 相談・斡旋体制の強化 | 随時 | センターの普及を図りながら、県やハローワーク等が主催する就職相談会などへ出張相談を展開し、 求職者支援の強化と採用人数の増を目指す。 |
無料職業紹介機能に関して、事業計画では県やハローワーク等が主催する就職相談会などへ出張相談を展開するとしているが、年間何回程度実施するのかが明記されておらず、また、事業計画以外でもこのことを規定した文書は確認できなかった。
平成 29 年 4 月 14 日付で県社協が県に提出している「求人・求職状況の月次推移等につ
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
いて」によると、平成 28 年 11 月 7 日にハローワーク湯沢で開催された介護入門セミナーなどで出張相談を実施していることは確認できるが、このような出張相談に関して、当初どの程度予定していたのかが明確となっておらず、したがって、実績との対比も難しい状況となっている。
事業計画、協定書は、実施しようとする業務についてより詳細に記載しておく必要がある。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
(1)事業の概要
① 事業内容
1)事業の目的
一般社団法人日本補聴器工業会が行った調査「Japan Trak 2015」によると「難聴又はおそらく難聴だと思っている人」の年齢別割合は、45 歳~54 歳で7.2%、55 歳~64 歳で10.3%、 65~74 歳で 18.0%、75 歳以上で 41.6%(サンプル 14,316 人)と、高齢となるに従い難聴者率が著しく増加していることがわかる。聞こえに不便があると仕事、学習、コミュニケーション、運動、移動、家庭生活、対人関係等に支障が生じ、社会的孤立や精神的不健康などの悪影響が懸念される。
少子高齢化が急速に進んでいる秋田県において、高齢者の健康と生きがいづくり推進を主目的として、当事業では難聴等により日常生活に支障をきたしている者を対象に補聴器に関する専門的な相談受付を行っている。事業の副次的な効果として、高齢の難聴者が業者から高額な補聴器を売りつけられるケースや、購入後の検査や指導も不十分なケース等の補聴器普及の妨げとなる状況を改善する狙いもある。
2)事業の内容
秋田県福祉相談センター内に補聴器相談室を開設するとともに、補聴器診療車で県内各地の医療機関で巡回相談を実施し、予約により各種聴力検査、補聴器装用のためのフィッティング、補聴器購入後のフォローを行っている。補聴器相談室は月~金の 10:00~16:00、巡回相談は月~金(水は休診)が相談日となる。
相談体制としては、日本耳鼻咽喉科学会秋田県地方部会と連携し担当医師の派遣を受けるとともに、看護師などの非常勤職員 4 名を相談員として配置している。相談員による相談等は無料にて行われるが、保険診療については通常の医療機関と同様に診療費が発生する。
3)事業の沿革
当事業の開始年度は平成27 年度である。平成 26 年度以前は一般財団法人秋田県成人
病医療センターが同事業を行っていたが、平成 27 年 3 月 31 日の解散に伴い県が事業を引き継ぎ現在に至っている。
4)事業の目標・実績
当事業における相談者数の月別推移は、表 17 のとおりである。平成28 年度における相談
者数実績は 1,704 人と目標 2,868 人を大きく下回っている。
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表 17 平成 28 年度 相談数目標実積対比
(単位:人)
区分 | 4 月 | 5 月 | 6 月 | 7 月 | 8 月 | 9 月 | |
新患 | 実績(a) | 16 | 18 | 33 | 29 | 26 | 37 |
目標(b) | 25 | 32 | 56 | 50 | 32 | 52 | |
(a)-(b) | △ 9 | △ 14 | △ 23 | △ 21 | △ 6 | △ 15 | |
相談 | 実績(a) | 65 | 105 | 136 | 111 | 106 | 108 |
目標(b) | 125 | 160 | 280 | 250 | 160 | 260 | |
(a)-(b) | △ 60 | △ 55 | △ 144 | △ 139 | △ 54 | △ 152 | |
合計 | 実績(a) | 81 | 123 | 169 | 140 | 132 | 145 |
目標(b) | 150 | 192 | 336 | 300 | 192 | 312 | |
(a)-(b) | △ 69 | △ 69 | △ 167 | △ 160 | △ 60 | △ 167 |
区分 | 10 月 | 11 月 | 12 月 | 1 月 | 2 月 | 3 月 | 計 | |
新患 | 実績(a) | 25 | 37 | 26 | 17 | 18 | 24 | 306 |
目標(b) | 51 | 50 | 32 | 30 | 33 | 35 | 478 | |
(a)-(b) | △ 26 | △ 13 | △ 6 | △ 13 | △ 15 | △ 11 | △ 172 | |
相談 | 実績(a) | 108 | 153 | 152 | 119 | 100 | 135 | 1,398 |
目標(b) | 255 | 250 | 160 | 150 | 165 | 175 | 2,390 | |
(a)-(b) | △ 147 | △ 97 | △ 8 | △ 31 | △ 65 | △ 40 | △ 992 | |
合計 | 実績(a) | 133 | 190 | 178 | 136 | 118 | 159 | 1,704 |
目標(b) | 306 | 300 | 192 | 180 | 198 | 210 | 2,868 | |
(a)-(b) | △ 173 | △ 110 | △14 | △ 44 | △ 80 | △ 51 | △ 1,164 |
(出所)県資料「平成 28 年度 相談者数及び診療報酬の目標」より監査人作成。
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | (5 月補正)13,768 | 20,304 |
決算額 | 11,119 | 18,149 |
(注)当事業は平成 27 年度より開始。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
報酬/非常勤職員報酬 | 9,144 | 補聴器相談員報酬 |
共済費 | 1,504 | 補聴器相談員社会保険料 |
報償費 | 1,208 | 派遣医師報酬 |
旅費 | 309 | |
需用費 | 1,491 | 診療車ガソリン代 |
役務費 | 288 | |
委託料 | 200 | |
使用料及び賃貸料 | 3,946 | 医療機器リース料等 |
負担金補助及び交付金 | 55 | |
合計 | 18,149 |
国 | - | -% |
県一般財源 | 12,999 千円 | 72% |
その他(診療収入) | 5,151 千円 | 28% |
(2)監査の結果
【指摘事項2】 現金出納日計表について
平成 29 年 3 月の利用者から受け入れた現金の管理を現金出納日計表(手書)で行っている。現金管理の適切性を要点に監査を行ったところ、以下のとおり重要な問題事項が二点発見された。
県としては、福祉相談センターにおける出納事務については概ね適正に実施しているとのことではあるが、監査において検出された事項を踏まえると、今後さらなる現金管理事務の徹底が求められる。
1)鉛筆書きであること
平成 29 年 3 月の現金出納日計表を閲覧したところ、部分的に鉛筆又はシャープペンシルにて作成されている状況であった。鉛筆等での記録がされてしまうと、消しゴムの使用などで自由に帳簿を操作できることから、正規の会計記録としての要件を満たさない。鉛筆等により会計記録の作成を行わないことは経理の基本であり、公金を扱う地方公共団体の出納事務として不適切である。
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2)記載誤りが散見されたこと
現金出納日計表上「H29/3/3 受入額 6,520 円 払出額 0 円 残額 0 円」(正しくは、残額
6,520 円)のような記載誤りが散見された。
【指摘事項3】 利用者満足度及びニーズ調査の不足について
県は、平成 27 年度(事業開始初年度)において利用者アンケートを実施していない。平成
28 年度は 2 月 6 日~3 月 10 日の約 1 ヵ月限定でのアンケート実施にとどまっている。また、
平成 28 年度のアンケートは県から利用者へアンケート記入を依頼する方式で行われており、
平成 27 年度から現在まで利用者の要望・苦情を吸い上げるための意見箱等の設置は行っていない。
平成27 年度にアンケートを実施しなかった理由は、事業開始初年度であることからスピード
感をもって事業を行いたかったためとのことであり、平成 28 年度において1 ヵ月限定での実施にとどまった理由は、1 ヵ月限定のアンケートであっても、結果が年間の実施業務を推計する結果となるとの内部判断に基づくものとのことであった。
アンケートは事業の評価・改善に重要な意義を持つ。特に当事業は個人個人に対し直接的にサービスを実施していることから、その利用者満足度は事業評価に直結するところである。また、下記「【意見4】事業の必要性の評価について」に記載するとおり、当事業は全国的にも珍しく行政サービスとして実施されており、公金の支出を伴うため、満足度調査及びニーズ調査はより一層求められるものと解する。
結論として、当事業におけるアンケートはスピード感等以上に重視されるべき項目であり、事業開始初年度の平成 27 年度においては以後の方向性を決定づけるためにも当然にアンケートを実施するべきであったし、ニーズ調査という観点からも意見箱等の設置を行うべきであった。また、平成 28 年度において、県は 1 ヵ月限定でのアンケート実施にて全体の事業評価が可能と判断したとのことだが、そのサンプル期間(サンプル数)が年間の実施業務を推計する有用なサンプル数となるか否かの分析は行っていない。今後、適切なアンケートの計画及び実施、事業へのフィードバックによる県民満足度の向上及び意見箱等の設置による県民ニーズの把握を求める。
(3)監査対象事業に対する意見
【意見4】 事業の必要性の評価について
当事業は適切な民間受託者が見当たらなかったことを受けて、県が事業を引き継いだ経緯があるものの、行政サービスとしてではなく民間団体による実施も可能とも推測される。根拠としては、県担当者へのヒアリングや監査人インターネット調査から、他の地方自治体において同事業を実施している事例が発見されず、他の地方自治体においては民間にて実施されている実態が認められることである。そこで、監査にて公費 12,999 千円を負担し行政サービスと
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
して当事業を行う必要性があるのかを要点に検証を行った。
今回の監査においては、県が当事業を行う積極的な理由を監査資料から読み取れない状況であった。具体的には、事業開始の平成 27 年度において、民間の事業実施者は本当にいないのか、県民(難聴者以外も含む)は行政が補聴器相談を実施することを望んでいるのか、他の都道府県では同様の行政サービスはないがどのように対応しているのか、事業の費用対効果は認められるか、他の効果的・効率的な事業実施方法はないのか等について県の分析結果や文書はみられない。
また、事業の有効性の測定を行うためには、事業実施後に課題を抽出、改善し、次年度の実施につなげていくという PDCA サイクルの徹底が望まれるところであるが、前述「【指摘事項
3】利用者満足度及びニーズ調査の不足について」に記載したように、利用者の満足度及びニーズの把握等が不足しているため事業有効性の測定が行い難い状況といえる。たとえ事業開始時は情報が不足しているため事業の有効性について評価困難であったとしても、開始後 2 年経過する平成 28 年度末以降にはアンケート収集や目標実績比較から事業の有効性、将来の展望について一定の結論を持つべきである。現状では、秋田県として事業有効性を測定することなく事業継続をしているようにも見受けられる。
引継ぎ前の旧事業に携わっていた医師のアンケートでは事業継続を求める声が 88%と多数であったこと、これまでに年間 2,000 人超の安定した診察相談実績があること、医師たちの
県民の手助けへ強い使命感を感じること(派遣医師報償費は 1 日 5,000 円と極めて低額)等から少子高齢化が進んでいる秋田県において、全国に先駆けこのような事業を行うことは相応に有効であるものと想定はされる。だからこそ県として適切な事業評価(事業必要性の評価)を実施し、将来に向け事業を発展させることを望みたい。
【意見5】 補聴器業者の公表について
本事業にて協力してもらっている補聴器業者は 3 社である。補聴器診療車の巡回の際には
補聴器業者 1 社又は 2 社の担当者が補聴器の貸出・調整・販売を行っている。
補聴器業者 3 社が取り扱う補聴器は一部重複するもののメーカー及び価格帯や特徴等もそれぞれ異なるため、新規相談者が自分の意思で販売業者及び補聴器を選択できるよう事前に情報提供を行うことが重要である。実際にアンケートにおいても、他のメーカーの補聴器を試したい等の要望も見られた。
現在の秋田県当事業のホームページに掲載された補聴器相談日程において、該当相談日にどの業者が担当するか、各業者がどのような価格帯や特徴等の補聴器を扱っているかについての情報提供はない。相談者の補聴器選択の幅の拡大、利便性の向上のため、ホームページ上に担当業者及び扱う補聴器の情報提供を行うことが望まれる。
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【意見6】 補聴器業者の公募について
提携業者の 3 社は、県の引継ぎ以前より継続して当事業へ参加している。補聴器業者が当事業へ参加することは、補聴器ニーズに対し直接アプローチができるためメリットがあるものと考えられる。公平性・透明性の確保、競争性の発揮及び補聴器選択の幅の拡大による利用者のサービス向上という観点から、補聴器業者の拡大や公募実施等が望まれる。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
(1)事業の概要
① 事業内容
1)事業の目的
秋田県では平成 27 年度に「秋田県子どもの貧困対策推進計画」を策定し、各市町村とともに子どもの将来が生まれ育った環境に左右されることのない社会の実現に向けて対策を行っている。当事業では対策の一環として、貧困の状態にある子どもや、その保護者を早期に把握し、適切な支援につなげることができる地域体制の整備に向けて「支援ニーズの調査」、地域ネットワークの核となる「人材の育成」にかかる事業を実施している。
以下それぞれの事業内容について説明する。
2)事業の内容
1.「支援ニーズの調査」にかかる事業内容
経済基盤が比較的脆弱とされるひとり親世帯について、各世帯の収入や子どもの生活、子育てに関する事項を把握し、効果的な「子どもの貧困対策」の策定に資することを目的にアンケートを実施する。
調査方法及び回答状況等は表 18 のとおりである。
表 18 アンケート概要
項目 | 概要 |
調査対象 | ひとり親世帯等 11,697 世帯 (内訳) ・ひとり親世帯 11,591 世帯(20 歳未満の子どもを養育している配偶者のない者の世帯及び父母でない者が子どもを養育している世帯) ・ひとり親以外の生活保護受給世帯 106 世帯(18 歳以下の子ども を養育している生活保護受給世帯) |
調査地域 | 全県 25 市町村 |
調査方法 | 往復郵送による無記名アンケート方式 |
調査期間 | 平成 28 年 6 月から 8 月(集計対象は 10 月末日までの回答分) |
回答状況 | 回答世帯数 4,323 世帯(回答率 37.0%) |
質問項目 | ・収入状況、収入に対する実感 ・食事、住宅環境、医療、教育、娯楽などについて子供に十分に与えられているか否か、その理由 ・子育てに関し、どのような面を心配しているか。 (上記は一例) |
アンケートの結果 | アンケート結果より、ひとり親世帯のニーズのうち、平成 29 年度以降、中学生に対する学習支援事業を中心に、その他に家計相談 支援事業等を実施することとした。 |
(出所)県資料及びヒアリングより監査人作成。
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2.「人材の育成」にかかる事業内容
市町村職員等の意識醸成を図り、市町村の支援体制整備に向けた取組を促進するため、体制整備の考え方や先進事例、貧困の現状について情報交換を行う地域ネットワーク形成支援研修会(平成 28 年度は 3 回)を実施している。
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 28 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | - | - | 8,898 |
決算額 | - | - | 6,299 |
(注)当事業は平成 28 年度より開始。
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
共済費 | 241 | アンケート実施臨時職員社会保険料 |
賃金 | 1,314 | アンケート実施臨時職員賃金 |
報償費 | 30 | |
旅費 | 448 | 地域ネットワーク形成支援研修会講師旅費他 |
需用費 | 1,414 | アンケート調査票印刷他 |
役務費 | 2,852 | アンケート発送、返信用郵便後納料他 |
合計 | 6,299 |
(注)決算額 6,299 千円のうち「支援ニーズの調査」5,660 千円、「人材の育成」639 千円となる。
国 | - | -% |
県一般財源 | 6,293 千円 | 100% |
その他(諸収入) | 6 千円 | 0% |
(2)監査対象事業に対する意見
【意見7】 アンケートのニーズ分析について
県は平成 28 年度実施のアンケート結果から、ひとり親世帯の支援ニーズのうち、「子どもの
学習面のケア」について、平成 29 年度から年間 12 百万円の予算にて対象世帯の中学生に対する学習支援事業(集合型、訪問型)を実施している。
アンケート分析から学習支援事業の実施決定に至る県の判断過程についてヒアリングしたところ、「子どもを塾に通わせたいがお金ない」と答えた者が 60.2%と多く、収入が少ない世帯
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第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
ほど「子どもを塾へ行かせたいが家庭の事情で行かせていない」と答えた割合が高かったことや、子どもの将来について学習面の不安が多かったことから、学習支援のニーズが高いと判断したとのことである。
アンケート結果から学習支援のニーズが相応に認められることはわかる。また、学習支援の実施はすべての児童生徒への学習機会の確保という観点から非常に有意義であると考えられる。しかし、他の支援施策と比較し最優先順位として学習支援を行うこととした理由は、明確に文書化されておらず不透明な状況であった。たとえば、アンケート回答中「子どもの経費にかかる困りごと」として「塾にかかる費用が高い」が 34.3%に対し、「教育費が高い」は 50.7%、
「衣食住にかかる費用が高い」は 58.2%、「修学旅行にかかる費用が高い」は 51.1%という状況であり、ここからは学習支援参加機会を設けることよりも、市町村が行う就学金援助制度の拡充や、低額かつ良質な住環境整備(たとえば県営住宅の整備)等の施策が、ひとり親世帯がより望んでいることとも考えられる。この点、県としては県の財政面や施策の実現可能性等を総合的に勘案し、結果として学習支援を実施することにしたとのことであった。
今回のアンケートは、ひとり親世帯が困っている事項、心配している事項より県がニーズを汲み取る方式となっている。このような方式では、ひとり親世帯のニーズの優先順位がわかりにくいし、結論に至る過程でアンケートを分析する担当者の判断が介在するため、実際のニーズと異なる結論が導かれることも想定される。直接的なニーズの調査という観点から、シンプルに県の財政や施策実施可能性を勘案したうえで現実的な支援案をアンケートに列挙し、ひとり親世帯から優先順位を回答してもらう項目を追加することも有効であったのではないだろうか。また、今回県は 5 百万円と相応の支出にてアンケートを実施し、アンケート結果から平成 29 年度以降の学習支援のニーズを汲み取っているが、その判断過程が明確に文書化されていないことも問題である。民間的な発想では、新事業のニーズ分析に相応のコストをかけている以上、その分析から事業開始までの判断過程を詳細に文書化し組織内の各段階で共有することが求められると考える。そうすることで、新事業の合理性・有効性が高い確度で測定され有効かつ効率的な事業選択が可能となるとともに、県民に対する説明責任の強化を果たすこと
ができるものと考える。今後同様の事例については詳細な文書化を求める。
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(1)事業の概要
① 事業内容
判断能力に不安のある高齢者や障害者が、住み慣れた地域で安心に暮らすことができるように福祉サービスの適切な利用や金銭管理を支援するとともに、福祉サービス利用者等の権利の擁護を目的とする事業である。
事業の詳細は表 19 のとおりである。
表 19 事業の詳細
実施主体(補助先) | 社会福祉法人 秋田県社会福祉協議会 ※一部業務を市町村社会福祉協議会へ委託 | |||
補助金名称 | 日常生活自立支援事業費補助金 | |||
補助金対象経費 | 交付目的に合致する経費 | |||
補助金の財源 | 県一般財源及び国庫補助金(国 | 1/2 | 県 | 1/2) |
補助金実績額 | 平成 28 年度 42,708,000 円 | |||
具体的な事業内容 | 1)日常生活自立支援事業 〇援助内容 ・福祉サービスの利用援助 要介護認定の申請手続きの代行など ・日常的金銭管理サービス 預貯金の払い出しの代理など ・書類等の預かりサービス 年金証書、通帳、印鑑などの保管 〇対象者 認知症高齢者、知的障害者及び精神障害者等で、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な者 〇利用料 サービス 1 回(2 時間まで)につき 1,500 円、生活保護受給者は無料 |
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
2)運営適正化委員会設置運営事業 日常生活自立支援事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため運営適正化委員会を設置する事業である。具体的な事業内容としては、福祉サービスに関する苦情相談の受付、助言、必要に応じて事情調査や斡旋を行う苦情解決業務、日常生活自立支援事業の透明性、公平性を担保し、事業の適正な運営を確保するため業務の監視を行う運営監視 業務がある。 |
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 26 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | 51,770 | 50,360 | 48,021 |
決算額 | 51,700 | 48,115 | 48,021 |
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
負担金補助及び交付金 | 48,021 | 秋田県社会福祉協議会への補助 |
その他 | - | |
合計 | 48,021 |
国 | 24,009 千円 | 50% |
県一般財源 | 24,012 千円 | 50% |
その他(地域医療介護総合確 保基金) | - | -% |
(2)監査の結果
【指摘事項4】 補助先の旅費規程に反する支出について
平成 28 年度、補助先の担当者は東京都で開催された「都道府県・指定都市社会福祉協議会日常生活自立支援事業所長会議」に出席している。秋田県から東京都への移動手段は飛行機であったが、この航空費について補助先の旅費規程に反する取扱いがなされていた。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
旅費規程上の航空費の定めは以下、「補助先旅費規程 抜粋」のとおりである。航空費は実費額での支給が要求されており、他の交通手段における定額支給(領収書等の添付を求めずに定額の正規運賃を支給する方式)とは異なる取扱いとなる。この趣旨は、航空機での移動は他の交通手段との比較で高額であり利用が限定されること、予約方法・時期により運賃に大幅な変動があるため定額での支給になじまないこと等が考えられる。この定めは、秋田県職員等の旅費に関する条例と同様となっており、秋田県から多額の補助金を受入れて公的な福祉サービスを行っている秋田県社会福祉協議会においても遵守されて然るべきものである。
補助先旅費規程 抜粋
第 12 条 航空運賃の額は、現に支払った旅客運賃による。
旅費規程「現に支払った旅客運賃による」という文言から、本来航空費の支給を受けるためには、領収書等の支給額を確認する資料及び当該領収書が実際に搭乗した航空機に係るものであることが確認できる資料(搭乗半券・搭乗レシート等)の添付が必須である。しかし、当出張においては、確認資料の添付はなく、支出命令書において「往復通常料金を適用」と記載し同額の運賃を支給していた。このような運用では、現に支払った実費額が旅行者に支給されているか、搭乗の事実があるか等についての実効性をもった確認ができず、旅行者が正規の航空費を受領したうえで割引航空券や他の廉価な交通手段を利用していることも可能性として認められるため問題がある。
補助先は今回の事案について、航空機での出張はレアなケースであり領収書・半券等の不添付は事務手順が確立していないために発生したものと説明している。しかし、レアケース(かつ他の交通手段と比較して高額)であるからこそ旅費規程はこのような運用を定めていると解され、補助先は旅費規程に則り、通常業務において当然に疎明資料まで確認を行うべきである。県は、旅費規程に則した事務実施を補助先に対し、徹底する必要がある。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
(1)事業の概要
① 事業内容
矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所又は少年院。以下同じ。)の入所者について、退所後本県への帰住を希望しているが、高齢又は障害を有することなどによって自立した生活を営むことが困難と認められる者に対して、保護観察所等と協働して、退所後直ちに福祉サービス等を利用できるようにするための支援を行うことなどにより、その有する能力に応じて地域の中で自立した日常生活又は社会生活を営むことを助け、福祉の増進を図るための事業である。事業は社会福祉法人A への委託により行われており、平成28 年度の事業実績は表
20 のとおりである。
表 20 平成 28 年度事業実績
区分 | 開始件数 | 終了件数 |
コーディネート業務(注 1) | 11 件 | 7 件 |
フォローアップ業務(注 2) | 2 件 | 6 件 |
相談支援業務(注 3) | 7 件 | 9 件 |
(出所)社会福祉法人 A 作成 地域生活定着支援事業実施状況報告書より。
(注 1) コーディネート業務とは、矯正施設の入所者を対象とした、福祉サービス等に係るニーズの把握、受入れ先施設等のあっせん又は福祉サービス等に係る申請支援等業務である。
(注 2) フォローアップ業務とは、コーディネート業務により矯正施設から退所した後に社会福祉施設等を利用している者に関する、本人を受入れた施設等に対する必要な助言業務である。
(注 3) 相談支援業務とは、懲役若しくは禁固の刑の執行を受け、又は保護処分を受けた後、矯正施設から退所した者及びその他センターが福祉的な支援を必要とすると認める者の福祉サービス等の利用に関して本人又はその関係者からの相談を受けた場合の助言その他必要な支援業務である。
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 26 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | 21,201 | 22,414 | 22,414 |
決算額 | 21,201 | 22,414 | 22,414 |
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
委託料 | 22,414 | 社会福祉法人 A への委託料 |
その他 | - | |
合計 | 22,414 |
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
国 | 15,300 千円 | 68% |
県一般財源 | 7,114 千円 | 32% |
その他(諸収入) | - | -% |
(2)監査対象事業に対する意見
【意見8】 業務実施完了報告書の充実について
秋田県と社会福祉法人A の間で締結した業務委託契約書において「乙(社会福祉法人 A)は、委託事業が完了したときは、遅滞なく、業務完了報告書を提出しなければならない。」とあり、県は平成 29 年 3 月 31 日に平成 28 年度実績報告書を入手している。
実績報告書の内容は当事業の決算明細にとどまり、具体的な業務内容(たとえば、どのような者に対し、どのような事業運営を行ったのか等)は全く記載されていない。その他、年度の実績報告のほかに月次状況報告も入手しているが、支援開始案件について簡易な記載はあるものの継続中の案件や終了案件などの顛末の記載はなく、基本的に業務件数の報告にとどまっている。
本事業は社会福祉法人 A へ委託しているとはいえ、実施主体はあくまでも県である。県は自らが事業実施主体であることを強く自覚し、自らが事業実施をしている場合と同程度の情報を入手することが望まれる。そうすることで、適切な委託先の管理監督が可能となるとともに、事業の評価や事業課題の把握等も可能となり、適切な PDCA サイクルを構築できるものと考える。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
(1)事業の概要
① 事業内容
1)事業の目的
秋田県社会福祉会館は条例に基づき県が設置した施設であり、この管理運営を行うことが当事業の目的である。社会福祉推進の拠点として県民福祉の向上に関わる社会福祉団体等に利用されており、概要は表 21 のとおりとなる。
表 21 秋田県社会福祉会館の概要
施設名称 | 社会福祉会館 |
所在地 | 秋田市旭北栄町 |
建設年 | 昭和 61 年 |
台帳価格 | 1,521,619,000 円 |
構造・階数等 | 鉄筋コンクリート造地上10 階、地下1 階 ※一部3 階建(心身障害者総合福祉センター部分) 以下、秋田県社会福祉協議会ホームページより抜粋 (施設紹介)本館(A 棟)と秋田県心身障害者総合福祉センター(C棟)があります。本館(A 棟)は、会議や研修会・講演会などの他、企業PR・商品発表会など販売促進活動の場としてもご利用いただけます。また、秋田県心身障害者総合福祉センター(C 棟)は、心身障 害者の社会参加を促進する拠点として設置された施設です。 |
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2)管理運営方法
社会福祉会館の管理運営は、指定管理者である秋田県社会福祉協議会が行っており、詳細は表 22 のとおりである。
項目 | H26 年度 | H27 年度 | H28 年度 |
利用者数 | 76,461 | 83,851 | 80,818 |
項目 | H26 年度 | H27 年度 | H28 年度 | |
収入 | 利用料収入 | 10,994 | 11,616 | 12,095 |
指定管理料 | 63,474 | 63,474 | 63,299 | |
その他収入 | 1 | 2 | 2 | |
収入計 | 74,469 | 75,092 | 75,396 | |
支 出 | 人件費 | 16,882 | 17,025 | 16,929 |
人件費以外 | 56,637 | 57,768 | 57,402 | |
支出計 | 73,516 | 74,793 | 74,331 | |
差引 | 950 | 299 | 1,065 |
表 22 指定管理の概要
指定管理者 | 社会福祉法人 秋田県社会福祉協議会 |
指定期間 | 平成 28 年度~平成 32 年度(前回は平成 23 年度~平成 27 年度) |
選定方法 | 公募 |
指定管理料、 利用料金制等 | 指定管理料と利用料金制の併用 |
指定管理業務の内容 | 1. 使用の許可、取消、制限、停止に関する業務 2. 施設及び設備の維持管理に関する業務 3. 社会福祉団体及び社会奉仕活動を行う者の活動に対する支援 4. 身体に障害のある者の健康の増進及びレクリエーションのための便宜の供与並びに相談 5. その他、社会福祉会館の管理に関し必要と認める業務 |
自主事業の実施状況 | 会館入居団体等PRフェスティバル、体操教室(太極拳、ヨガ&ピラティス、キッズダンス)、高齢者向け思い出の映画鑑賞会、障害者施設生産物等の出店販売、特別支援学校生徒や近隣保育所園児の作品及び県 障害者福祉展入賞作品等の展示 |
直近 3 年利用者数 | 社会福祉会館利用者数 (単位:人) (出所)県作成 管理運営状況評価票 |
直近 3 年収支決算 | 指定管理収支決算 (単位:千円) (出所)県作成 管理運営状況評価票 |
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 26 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | 66,717 | 63,474 | 63,299 |
決算額 | 63,474 | 63,474 | 63,299 |
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
委託料 | 63,299 | 秋田県社会福祉協議会への指定管理料 |
その他 | - | |
合計 | 63,299 |
国 | 212 千円 | 0% |
県一般財源 | 36,630 千円 | 58% |
その他(諸収入) | 20,791 千円 | 33% |
その他(使用料・手数料) | 5,665 千円 | 9% |
(2)監査の結果
【指摘事項5】 用水路管理業務の契約方法について
指定管理者は用水路管理業務を県内のY 社へ委託している(平成 28 年度契約額 58,320円)。契約は単独随意契約で行われており、監査の結果、競争性及び経済効率性が失われているものと判断された。
単独随意契約を行った理由は「秋田県社会福祉会館の指定管理業務委託に係る再委託一覧」にて「設備管理業務委託の受託先である Y 社と契約」と記載されている。つまり、Y 社は一般競争入札にて設備管理業務を請け負っており、併せて関連する用水路管理業務も Y 社に委託することが合理的と指定管理者が判断したものである。なお、両者の契約期間は平成 28 年 4 月~平成 29 年 3 月であり一致している。
ここで問題と考える事項は、設備管理業務と用水路管理業務を同一業者に委託することが合理的と考えているにもかかわらず、設備管理業務は一般競争入札、用水路管理業務は単独随意契約にて行われていることである。
設備管理業務を一般競争入札にて受託した者へ、用水路管理業務を随意契約にて依頼する結果となるならば、契約をあえて二つに分割し用水路管理業務を単独随意契約で行う必要性は認められない。設備管理業務に用水路管理業務も含め、包括的な設備管理業務とし
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て一般競争入札を行うことで、競争性が発揮され経済効率的な契約を行い得たものと解する。県として、契約の競争性及び経済合理性が確保されるよう指定管理者への指導徹底を図るべきである。
【指摘事項6】 樹木管理業務委託の契約事務について
指定管理者は、社会福祉会館敷地内の樹木管理業務を県内の業者 Z 社へ委託している
(平成 28 年度 契約額 264,600 円)。この Z 社との契約において以下二点の問題事項が発見された。県として指定管理者へ適切な契約事務を指導すべきである。
1)契約書に金額単位がないこと
Z 社との契約書を閲覧したところ金額単位の記載がなかった。現状では円貨か外貨か、千単位なのか一単位なのか不明な状況であり不適切な契約事務である。
2)業務範囲の不透明性
Z 社との契約における業務範囲が不透明であり、不適切な契約事務であると判断された。契約書には業務範囲について以下囲みのとおりの定めがある。
(契約書 抜粋)
第 1 条 1 乙(監査人注 Z 社)は、別冊設計図書に基づき、頭書の業務委託料(以下 業務委託料)をもって、頭書の履行期限(以下 履行期限)までに頭書の委託業務(以下 委託業務)を履行しなければならない。
契約書を閲覧したところ、業務範囲を規定している別冊設計図書は契約書には綴られていなかった。また、別冊設計図書として明確なものは存在せず、見積依頼時の指示書及び Z 社から受領した見積書がそれに該当するとのことであった。
本来であれば契約時に、指定管理者とZ 社との合意により別冊設計図書を作成、契約書末尾に綴りこみ、製本・割り印を付すことが求められる。そうすることで業務範囲が明確となり契約の安定性が保たれるものと解する。
【指摘事項7】 備品管理の不備について
社会福祉会館に存する備品についての実査を行ったところ、秋田県財務規則に反する取扱いが発見された。秋田県財務規則では備品管理について以下の定めがある。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
(秋田県財務規則 抜粋)
第 363 条 現金出納機関は、備品を受け入れたときは、当該備品に記号及び番号を表示
しておかなければならない。ただし、表示が困難な備品については、この限りではない。
当規則に基づき、備品へ管理シールを付し備品台帳と現物を一対一で整合させることで、備品の横領を防止することも含め効率的かつ効果的な備品管理が可能となる。この取り扱いは、秋田県での備品管理実務として通常は行われているところである。しかし、今回社会福祉会館の備品をサンプリング(「表 23 サンプリング備品一覧」)参照)にて実査したところ、その大部分に管理シールの添付がない状況であった。このことは備品の実地照合を困難とし、併せて現場担当者等に対して備品横領の「機会」を認めることとなり、極めて重大な問題である。県は、監査実施後直ちに備品シールを発行・添付したとのことだが、他の指定管理業務も含め全庁における徹底を求める。
また、実査においてテレビ等の備品台帳記録のない所有権不明の備品の実在も散見された。今後、県有の備品を明確に特定することが望まれる。
表 23 サンプリング備品一覧
(単位:円)
品名 | 取得価額 |
バドミントン支柱 | 35,000 |
バドミントン用得点表示機 | 66,950 |
ウォールプロテクター | 46,300 |
ファール回数表示機 | 31,200 |
ファール回数表示機 | 35,000 |
自動走行運動負荷機 | 237,600 |
下肢訓練用機器 | 97,200 |
自転車運動練習器 | 183,600 |
冷凍冷蔵庫 | 45,990 |
ガス台 | 333,720 |
作業台 | 84,400 |
教師用調理台 | 688,400 |
電子レンジ | 114,536 |
ホワイトボード | 45,320 |
パンフレットスタンド | 94,250 |
雑誌架 | 50,400 |
特注品 プラントボックス兼用ベンチ | 690,000 |
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(1)事業の概要
① 事業内容
秋田県社会福祉会館(施設の概要は、「表 21 秋田県社会福祉会館の概要」(63 ページ)を参照)は、開設から 30 年超が経過し施設設備の経年劣化が著しいことから、今後年次計画により効率的な修繕が実施できるよう、劣化度診断調査を行うことが当事業の目的である。
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 28 年度 | |
当初予算額 | 4,000 |
決算額 | 2,617 |
(注)当事業は平成 28 年度より実施。
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
委託料 | 2,617 | 建築設計 A 社への劣化度診断調査委託 |
その他 | - | |
合計 | 2,617 |
(2)監査の結果
【指摘事項8】 委託先からの資料の返却確認について
劣化度診断調査開始時、県から受託者 A 社へ社会福祉会館建設時の完成図書等の貸与がなされている。貸与品は業務完了後速やかに返却がなされるべきであり、秋田県と A 社の間で締結した仕様書上でも「受注者は、貸与資料の必要がなくなった場合は直ちに調査職員に返却するものとする」と明記されている。
貸与品返還書を閲覧したところ、資料返却日は平成 29 年 1 月 26 日であり、劣化度診断調
査の完了日(完成検査日)平成 28 年 11 月 24 日から 2 ヶ月超経過しており、仕様書の「直ちに調査職員に返却」とする内容と矛盾していた。また、県が契約書にて定めた様式の貸与品返還書において、各物品の返還を確認したときに県が受領確認印を付すことが求められているが、この受領印が漏れている状況であり、紛失等が発生した場合における貸与品管理責任の所在が曖昧になる等の問題も認められた。契約書・仕様書等内容に基づく業務実施の徹底を求めたい。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
(1)事業の概要
① 事業内容
当事業は、「福祉施設経営指導事業費補助金」と「福祉サービス第三者評価事業」の二つの細事業から構成される。
1)福祉施設経営指導事業費補助金
社会福祉法人及び社会福祉施設に対し、施設経営や処遇、法律等の専門家による指導・援助を行い、健全かつ安定的な運営と施設利用者の処遇向上を図ることを目的とする事業である。事業の実施主体は社会福祉法人秋田県社会福祉協議会であり、秋田県から交付を受けた福祉施設経営指導事業費補助金を財源に事業を行っている。事業詳細は以下のとおりである。
1.相談・指導業務
〇相談受付体制
秋田県社会福祉協議会内に専任職員 1 名、非常勤指導員 7 名(弁護士 3 名、公
認会計士 3 名、社会保険労務士 2 名)の計 8 名からなる福祉施設経営指導センターを設置し、専任職員が平日 9:00~17:00 の来所相談に応じるとともに、電話や文書での相談も随時受け付けている。資格を有する非常勤指導員 7 名への相談は、
原則月 1 回、各資格保持者 1 名がセンターに来所し相談に応じている。相談料金は無料である。
〇相談受付実績
平成 27 年度及び平成 28 年度における、相談受付実績は下表のとおりである。
表 24 職員区分別相談件数
(単位:件)
職員区分 | 平成27 年度 | 平成28 年度 | 増減数 |
専任職員 | 37 | 46 | +9 |
弁護士 | 1 | 1 | ±0 |
公認会計士 | 19 | 13 | △ 6 |
社会保険労務士 | 14 | 12 | △ 2 |
合計 | 71 | 72 | +1 |
(出所)「平成 28 年度福祉施設経営指導事業実績報告」より監査人作成。
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2.その他の業務
福祉施設経営指導事業として研修会、集団指導、講習会等を実施しており主な開催は下表のとおりである。
表 25 実施研修会等の一覧
研修・講習会名 | 開催日時 | 参加人数 |
労務管理セミナー | H28/7/1 | 46 名 |
会計担当者研修会 | H28/7/21 | 131 名 |
社会福祉法人制度改革対応セミナー | H28/8/31 | 273 名 |
北海道・東北ブロックセミナー | H28/10/18 ~H28/10/19 | 189 名 |
社会福祉法人制度改革対応セミナーⅡ | H28/11/21 | 236 名 |
決算研修会 | H29/2/1 | 267 名 |
(出所)「平成 28 年度福祉施設経営指導事業実績報告」より監査人作成。
2)福祉サービス第三者評価事業
㋐ 福祉サービス第三者評価制度の概要
福祉サービス第三者評価制度は、福祉サービス提供事業者の各種サービスの品質につき、都道府県の認証を受けた公正・中立な民間の第三者機関が専門的・客観的な立場から評価を行う仕組みであり、行政が実施する法規準拠性に重きをおいた財務監査とは趣旨が異なる制度である。第三者評価制度の根拠法令は、社会福祉法第 78 条第 1 項「社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。」とする努力義務規定にとどまり、福祉サービス提供事業者の受審義務化まではなされていない(ただし、社会的養護施設(児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設・情緒障害児短期治療施設・児童自立支援施設)は厚労省発表指針を根拠に平成 24
年度から 3 年に 1 度の受審が義務化となっている)。
第三者評価を受けることによる福祉サービス提供事業者にとってのメリットは、利用者の安全、権利擁護、職員の質の向上等、健全な事業経営の新たな指針を得るきっかけとなるとともに、利用者へサービスの質の向上に積極的に取り組んでいることをアピールすることができることである。利用者にとってのメリットは、評価結果を全国社会福祉協議会のホームページ及びワムネット等から評価閲覧することができるため、福祉サービス提供事業者選択の際の目安となること等があげられる。
㋑ 福祉サービス第三者評価制度における県の役割
秋田県の役割は、評価を実施する第三者機関の適格性を認定すること、及び制度自体の普及啓発を行うことであり、下記委員会の運営等を当事業で行っている。なお、秋田県におけ
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第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
る民間の第三者機関数は平成 21 年 3 月以降増減なく三団体で推移している。
〇「秋田県福祉サービス第三者評価推進委員会」
・・・9 名で構成、主に第三者評価機関の認証・評価基準の総合的な検討を実施。
〇「第三者評価機関認証委員会」
・・・5 名で構成、主に第三者評価機関の認証・取り消し、制度自体の普及・啓発を実施。
〇「第三者評価基準等委員会」
・・・5 名で構成、主に第三者評価機関の評価の基準、評価の手法の作成等を実施。
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 26 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | 4,779 | 4,518 | 4,292 |
決算額 | 4,265 | 4,280 | 3,936 |
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
報償費 | 36 | |
旅費 | 99 | |
負担金補助及び交付金 | 3,786 | 福祉施設経営指導事業費補助金 |
その他 | 15 | |
合計 | 3,936 |
(注) 決算額 3,936 千円中、福祉施設経営指導事業費補助金事業にかかる決算額が 3,786 千円、福祉サービス
第三者評価事業にかかる決算額が 150 千円である。
(2)監査の結果
【指摘事項9】 経営指導センターにおける非常勤職員への報酬形態について(福祉施設経営指導事業費補助金事業)
弁護士、公認会計士、社会保険労務士の各資格 1 名の計 3 名は、月一回経営指導センタ
ーに来所し二時間の相談対応を行っている。報酬は一回当たり弁護士 17,000 円、会計士
17,000 円、社会保険労務士 11,000 円であり、相談がない月も窓口待機報酬として一律に支給がなされている。
問題だと考えることは、相談件数があまりに少ない現状において報酬支給の大部分が窓口
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
待機に対する報酬として支払われている実態であり、効率性の観点から好ましくない。下表
「職員区分毎の相談件数等(H28 年度)」を見てほしい。例として平成 28 年度において最も相談数が少ない弁護士は、年間の相談件数1 件とほぼ相談案件がないにもかかわらず、待機報
酬 11 ヵ月分 187,000 円の支給を受けている。
平成 27 年度も弁護士に対する相談件数が 1 件のみであったことから、平成 28 年度の相談状況も相当程度は予想できたことが想定される。今後、非常勤職員の資格ごとに利用者のニーズ調査・分析を行い、たとえば四半期又は半期ごとの非常勤職員の来所とすること、事前の電話連絡等で専門家の知見が求められる相談案件があった場合のみセンターへの来所を要請すること等により、待機のみに支払われる報酬を削減し、事業効果に見合ったより効率的な報酬形態とすべきである。
県として今後、非常勤職員の来所頻度のあり方を検討していきたいとのことであり効率的な運用を期待したい。
表 26 職員区分ごとの相談件数等(H28 年度)
職員区分 | 相談件数 | 年間 12 ヵ月のうち 相談案件がなかった月数 |
弁護士 | 1 件 | 11 ヵ月 |
会計士 | 19 件 | 6 ヵ月 |
社労士 | 14 件 | 4 ヵ月 |
(出所)「平成 28 年度福祉施設経営指導事業実績報告」「福祉施設経営相談受付及び指導記録票」より監査人作成。
【指摘事項10】 福祉施設経営相談受付及び指導記録表の誤記載について(福祉施設経営指導事業費補助金事業)
個々の相談事項を記録した「福祉施設経営相談受付及び指導記録表」から監査人が集計した職員区分別相談件数(源泉【A】)と、「平成 28 年度福祉施設経営指導事業実績報告書」に記載されていた職員区分別相談件数(源泉【B】)の間で下表のように不整合が見られた。
表 27 データ源泉別 平成 28 年職員区分別相談件数
(単位:件)
職員区分 | 源泉【A】 (誤) | 源泉【B】 (正) | 【A】-【B】 (差異) |
専任職員 | 48 | 46 | △2 |
弁護士 | 1 | 1 | ±0 |
会計士 | 12 | 13 | +1 |
社労士 | 11 | 12 | +1 |
(出所)「平成 28 年度福祉施設経営指導事業実績報告」「福祉施設経営相談受付及び指導記録票」より監査人作成。
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
この理由を県の担当者に調査依頼したところ「福祉施設経営相談受付及び指導記録表」の記載が誤りであるとの説明を受けた。実態として「会計士」「社労士」が相談を受けたにもかかわらず、「福祉施設経営相談受付及び指導記録票」へ「専任職員」の名前を記載してしまったとのことである。「福祉施設経営相談受付及び指導記録表」は相談ごとに作成され、詳細な相談内容及び回答内容が記録されており、相談を受けた職員の回答の妥当性を事後に疎明する重要な資料である。実際の相談回答者と記録上の回答者が異なる今回の事案は、責任区分の観点から重大な問題であり、今後同様の事態がないよう厳格な対応を求める。
なお、指摘した平成 28 年度福祉施設経営指導事業実績報告の誤謬は、監査期間中に適切に修正されていることを確認した。
(3)監査対象事業に対する意見
【意見9】 経営指導センターのインターネット広報について(福祉施設経営指導事業費補助金事業)
【指摘事項9】において、非常勤職員に対する相談件数が少ないことに触れているが、この要因として経営指導センターのインターネット広報の不足が一因と考えられる。秋田県社会福祉協議会経営指導センターを紹介するホームページは下部のとおりであるが、情報提供内容は簡素な内容にとどまり「わかりやすさ」「ユーザビリティ(使いやすさ)」「訪問目的への到達可能性」などの利用者視点が欠けていると言わざるを得ない。
図 13 秋田県社会福祉協議会経営指導センターの紹介内容
(出所)平成 30 年 3 月.時点の秋田県社会福祉協議会ホームページより。
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以下に他自治体同事業のホームページと比較した「経営指導センターHP の他自治体比較」を作成したが、秋田県経営指導支援センターのホームページは、実際にコンタクトをするための連絡先の記載がないなど提供情報が著しく不足していることがわかる。
今後県として秋田県社会福祉協議会に対し、少なくとも他の自治体レベルでの情報提供を行いうるホームページ内容への早急な改善を指導すべきである。
表 28 経営指導センターHP の他自治体比較
項目 | 秋田県 | 他自治体 | ||
どのような相談が可能か、相談事例について具体的な記載はあるか | × | なし。「福祉施設経営全般についての相談」と記載にとどまっている。 | 〇 | あり。法律問題、施設の運営や経営に関すること、利用者処遇に関すること等の大項目別に、具体的な相談 事例を記載している。 |
利用者要件は明示されているか | × | なし。 | 〇 | あり。県内のすべての社会福祉法人、施設が対象である旨明示されている。 |
弁護士、公認会計士等の専門家の相談日程の記載はあるか | × | なし。 (ただし、トップページの施設全体の行事予定では確認可能) | 〇 | あり。 |
相談料が無料であることは明示されているか | × | なし。 | 〇 | あり。 |
センターに守秘義務が課されることは明示されているか | × | なし。 | 〇 | あり。 |
経営指導センターへコンタクトするための情報があるか | × | なし。 | 〇 | ページ内に、電話番号、 FAX 番号、相談事項フォーマットファイルと共にe- mailアドレスが記載されており、コンタクトが容 易である。 |
社会福祉協議会トップページから経営指導センターへのアクセスは容易か | × | 困難。 「トップページ>サイトマップ>福祉施設経営指導センター」と全体サイトマップ経由のみで到達可能な状況であった。通常経路では「トップページ>相談支援>福祉施設経営指導センター」となるべきと考えられるが、相談支援タブから福祉施設経営指導センターへの アクセス不能。 | 〇 | 容易。 「トップページ>福祉関係者の皆様へ>福祉施設経営指導事業」等 |
(出所)インターネット情報より監査人作成。
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Ⅰ 福祉政策課
【意見10】 福祉サービス第三者評価制度の普及啓発について(福祉サービス第三者評価事業)
県の資料「施設種類別の受審状況」によると、平成28 年3 月末現在の福祉サービス第三者
評価制度の対象施設 477 件に対し、第三者評価を受けたことのある施設は 40 件、受審率 8.3%と非常に低い状況である。第三者評価を受けることによる福祉施設のメリットとして、事業経営の新たな指針を得られること、サービスの質の向上に意欲的であることを外部にアピールできること等があげられる一方、原則として受審が義務化されていないこと、受審に約 20 万~
30 万円程度のコストがかかることから、受審を躊躇している状況と想定される。
福祉サービス第三者評価制度の最終的な目的は、福祉施設利用者が高品質なサービスを受けられる環境の整備や、利用者の福祉サービス提供事業者選択の際の情報提供など利用者の利便性向上を目的としており、第三者評価実施率を高めていくことは秋田県としての重大な責務である。そのためには、第三者評価を受けることによって事業経営の新たな指針を得られること、サービスの質の向上に意欲的であることを外部にアピールできること、さらにはこれらのメリットは受審コスト約 20 万~30 万円以上の価値があることを、県は今以上に各事業所に理解させる必要がある。
また一方で、各事業所が外部にアピールすることの効果をより高めるため、第三者評価制度そのものの知名度を高めることが有効であるが、そのために県は、市町村や関連団体と一体となり積極的に県民へ情報提供をしていくことが望まれる。具体的施策としては、評価結果の公表は事業者の同意を得たうえでワムネットを利用して公表することとしているため、市町村ホームページの福祉施設一覧にワムネットへのリンクを県から依頼することや、福祉施設のうちの保育園を対象として市町村が行う未就学児検診において制度概要を記載したパンフレットを配布することなどが考えられる。
テーマ:秋田県の高齢者福祉を中心とした少子高齢化対策に関する事務について
10.生活福祉資金貸付事業
(1)事業の概要
① 事業内容
生活福祉資金は秋田県社会福祉協議会(以下、「県社協」という。)が実施主体となり、高齢者世帯、障害者世帯及び低所得世帯を対象に、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金及び不動産担保型生活資金を貸し付ける制度である。貸付・償還等の事務が円滑に行われるよう、当事業にて県社協へ貸付原資及び人件費等の事務費の補助が行われている。
今回の監査では社会福祉協議会の行う資金貸付業務の一部も監査対象とした。
② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 26 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | 17,149 | 16,766 | 16,534 |
決算額 | 17,149 | 16,766 | 17,528 |
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
負担金補助及び交付金 | 17,528 | 秋田県社会福祉協議会への補助金 |
その他 | - | |
合計 | 17,528 |
国 | 8,763 千円 | 50% |
県一般財源 | 8,765 千円 | 50% |
その他(諸収入) | - | -% |
(2)監査の結果
【指摘事項11】 徴収不能引当金の計上誤りについて
補助先である県社協の徴収不能引当金の計上方法及び計上額が誤っていた。徴収不能引当金とは、期末時点の貸付金のうち将来に徴収不能となる額を合理的に見積り、貸付金のマイナス項目として貸借対照表に計上される勘定科目である。
県社協の生活福祉資金会計における平成 28 年度末の貸付金及び徴収不能引当金の貸
借対照表計上額は表 29 のとおりであり、徴収不能引当金の算出過程は表 30 のとおりである。
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第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅰ 福祉政策課
表 29 県社協貸借対照表
(単位:百万円)
貸付金合計 | 1,941 |
貸付金計 | 1,007 |
長期滞留債権計 | 933 |
徴収不能引当金 | △155 |
(出所)平成 28 年度 社会福祉法人秋田県社会福祉協議会生活福祉資金会計貸借対照表 抜粋。
表 30 徴収不能引当金の算出過程
(単位:百万円)
債権分類 | 貸付金額(A) | 引当率(B) | 引当額(A×B) |
ⅰ健全な債権 | 1,007 | 0.0055 | 5 |
ⅱ徴収不能のおそれのある債権(注 1) | 933 | 0.0148 | 13 |
ⅲ徴収不能の可能性が極めて高い債権(注 2) | 136 | 1.0000 | 136 |
合計 | 2,077 | - | 155 |
(出所)県社協決算資料 抜粋。
(注 1)ⅱ徴収不能のおそれのある債権………自己破産の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な
問題が生じているか生じる可能性が高い債権。生活福祉資 金会計準則では 1 年以上延滞している債権と定義している。
(注 2)ⅲ徴収不能の可能性が極めて高い債権…償還免除には至っていないが、「生活福祉資金貸付金償還
免除規程」第1に定める償還免除の適格要件に合致する債権。具体的には、借受人・連帯借受人等の死亡・行方不明等により回収がほぼ見込まれないが、申請がない等で償還免除に至っていない債権。
上二つの表の太字部分を見る限り、貸借対照表の貸付金合計は 1,941 百万円であるが、
徴収不能引当金の算定基礎となった貸付金額は 2,077 百万と 136 百万円過大である。この
理由は、表における下線部「ⅱ徴収不能のおそれのある債権」について誤って 933 百万円として引当金を計上してしまっていることにある。正しくは「ⅱ徴収不能のおそれのある債権」797百万円(BS 長期滞留債権 933 百万円-ⅲ徴収不能の可能性が極めて高い債権 136 百万円)であり、「ⅱ徴収不能のおそれのある債権」に対する引当金の算出基礎金額に「ⅲ徴収不能の可能性が極めて高い債権 136 百万円」が二重に計上されていた。
生活福祉資金会計準則では、貸付金を「健全な債権」「徴収不能のおそれのある債権」「徴収不能の可能性が極めて高い債権」の三つへ区分し、それぞれの区分に応じ徴収不能引当金を算出することを求めている(下記「(参考)生活福祉資金会計準則 抜粋」参照)。したがって「ⅲ徴収不能の可能性が極めて高い債権」に対して引当金を計上すると同時に、別区分の債権である「ⅱ徴収不能のおそれのある債権」へ「ⅲ徴収不能の可能性が極めて高い債権」を含めたうえで引当金を計上するという県社協の経理処理は合理的ではない。県は、県社協に対し会計基準に則した経理処理の指導徹底を求める。
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(参考)生活福祉資金会計準則 抜粋
4(1)①債権の分類
都道府県社協は、貸付制度に基づいて資金の貸付を行った場合には、資金名を付した
「貸付金」として貸借対照表に計上しなければならない。
また、貸付金の額のうち、次の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する事実が発生した場合には、その事実が発生した事業年度末において当該貸付金の額を「長期滞留債権」に振替え、「健全な債権」(長期滞留債権以外の債権をいう。)と区別しなければならない。
(ⅰ) 徴収不能のおそれのある債権
自己破産の状態には至ってはいないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権をいう。
(ⅱ) 徴収不能の可能性が極めて高い債権
償還免除には至っていないが、「生活福祉資金の貸付金償還免除の取扱いについて」の別紙「生活福祉資金貸付償還免除規程」第1に定める償還免除の適格要件に合致する等、貸付金の回収が極めて困難と認められる債権をいう。
4(1)②貸付金の表示
貸付金の額は次の3区分に分類され、それぞれ次に掲げる勘定科目により表示するものとする。
ア 健全な債権・・・「〇〇資金貸付金」
イ 徴収不能のおそれのある債権・・・「〇〇資金長期滞留債権」
ウ 徴収不能の可能性が極めて高い債権・・・「〇〇資金長期滞留債権」
(別紙)徴収不能引当金の算定方法について
2 徴収不能見込額の算定に当たっては、次のそれぞれの債権区分ごとの徴収不能見込額の合算により算定する。
徴収不能見込額
=健全な債権に係る徴収不能見込額(A’)+徴収不能のおそれのある債権に係る徴収不能見込額(B‘)+徴収不能の可能性が極めて高い債権にかかる徴収不能見込額(C’)
3 債権区分ごとの徴収不能見込額の算定は、以下によることとする。
(1)健全な債権に係る徴収不能見込額(A’)・・・健全な当年度末債権額(A)×過去の徴収不能発生割合(a)
(2)徴収不能のおそれのある債権に係る徴収不能見込額(B’)・・・徴収不能のおそれのある当年度末債権額(B)×過去の徴収不能発生割合(b)
(3)徴収不能の可能性が極めて高い債権に係る徴収不能見込額(C‘)・・・徴収不能の可能性が極めて高い当年度末債権額(C)-回収が確実に見込まれる額
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅱ 長寿社会課
(1)事業の概要
① 事業内容
本事業は、高齢者が元気で充実した生活ができる社会の実現に向け、「生きがいづくりと健康づくり」を進めるとともに、すべての市町村が介護保険法の改正に伴う新しい総合事業に円滑に取り組めるよう支援を行うものである。具体的な事業内容は次のとおりである。
1)高齢者元気アップ支援事業(平成 28 年度決算額 16,542 千円)
公益財団法人秋田県長寿社会振興財団(以下、「LL 財団」という。)が行う次の取組に対して助成を行っている。なお、LL 財団は平成 29 年度末に解散し、廃止する事業を除くすべての事業を社会福祉法人秋田県社会福祉事業団に譲渡する予定である。
・全国健康福祉祭(以下、「全国ねんりんピック」という。)長崎大会への選手派遣
・「いきいき長寿あきた 2016 ねんりんピック」スポーツ交流会(以下、「県版ねんりんピック」という。)の開催
2)新しい総合事業の取組支援事業(同 8,151 千円)
市町村が速やかに新しい総合事業に取り組めるよう、LL 財団に委託して次の事業を行っている。
・新しい総合事業研修
・包括的支援事業推進事業(専門相談会、困難事例検討会、虐待研修会)
・生活支援コーディネーター指導者養成研修(養成研修、タウンミーティング)
・地域支援事業における支えあい活動推進事業(モデル市町村支援、連絡協議会等)
・地域ケア・マネジメント支援機能強化事業(広域支援員派遣、セミナー、講演会)
・地域包括ケア構築のための住環境整備事業
3)高齢者ほっと安心相談事業(同 16,446 千円)
LL 財団に委託して相談業務などを行っている。高齢者総合相談・生活支援センターへの相談件数は平成 24 年度の 1,533 件(平成 26 年度以前は他事業の中で実施)から平成 28
年度の 1,858 件と増えてきている。
・高齢者総合相談・生活支援センターの運営事業(相談業務、県民介護講座)
・相談業務スーパーバイズ事業(相談機関の支援・指導)
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② 事業費の推移
(単位:千円)
平成 26 年度 | 平成 27 年度 | 平成 28 年度 | |
当初予算額 | - | 39,555 | 34,715 |
決算額 | - | 41,748 | 41,138 |
③ 事業費の主な内訳
(単位:千円)
節 | 平成 28 年度 決算額 | 主な内容 |
旅費 | 54 | 研修受講旅費 |
委託料 | 24,543 | 新しい総合事業の取組支援事業委託、地域包括ケア構築のための住環境整備事業委託、高齢者総合相談・生活支援センター運営事業委託、相 談業務スーパーバイズ事業委託 |
負担金補助及び交付金 | 16,542 | 高齢者元気アップ推進事業費補助金 |
合計 | 41,138 |
国 | 760 千円 | 1.8% |
県一般財源 | 54 千円 | 0.1% |
繰入金 | 19,066 千円 | 46.3% |
その他(諸収入) | 21,258 千円 | 51.7% |
(2)監査対象事業に対する意見
【意見11】 補助対象範囲の明確化と適切な収支報告の入手について
高齢者元気アップ推進事業費補助金は、健康で活力に満ちた長寿社会の実現に不可欠なスポーツに親しむ機会を提供することで高齢者の生きがいづくりと健康づくりを推進し、「元気アップ」を図ることを目的として LL 財団に交付されている。
平成28 年度の実績報告としてLL 財団から提出された収支計算書によると、収入は本補助金 16,542 千円と LL 財団の自主財源を合わせて 22,289 千円である。支出は LL 財団の職員の人件費をはじめとして、全国ねんりんピックや県版ねんりんピックへの参加旅費や競技団体助成、その他会議費や賃借料などからなり、収入と同額となっている。
ただし、県によると、報告された支出全体が補助対象経費ではなく、全国ねんりんピックや県版ねんりんピックに直接関わる経費のみが対象とのことである。いきいきシルバー美術展開催や秋田 LL 大学園開設事業、あるいは会議費などは対象外である。支出合計 22,289 千円のうち補助対象経費は補助金と同額の16,542 千円(支出合計の74.2%)であるが、収支決算書の支出項目には補助対象経費であることが明記されておらず、補助対象経費の実績と補助
第 5 外部監査の結論-事業別-
Ⅱ 長寿社会課
金が整合していることを確認できない状況である。また、老人福祉・介護保険関係補助金等交付要綱(以下、「交付要綱」という。)によると、予算時から経費相互間の 20%を超える変更がある場合はあらかじめ知事の承認を受けることとされているが、該当する変更があったかどうかの判断も難しい。平成 28 年度に変更の承認は行われていない。
事業費全体を対象としつつ一定の補助率をかけて経費の一部を補助する場合は今回のような収支報告となるが、対象経費を特定してその 100%を補助する場合の収支報告は対象経費が明確になるように収支計算書に記載する必要がある。それによって県は交付した補助金が適切に使われたことを確認できるとともに、補助によって達成できた実績や成果を正しく評価できることになる。
県は交付要綱等において補助対象経費を明記するとともに、収支計算書の支出項目には補助対象経費であることを明記するなど、補助事業者から適切な収支報告を提出させる必要がある。
【意見12】 新しい総合事業取組支援事業のより効率的・効果的な実施について
平成 26 年度の介護保険法の改正により、市町村は平成 29 年 4 月 1 日までに「新しい介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、「新しい総合事業」という。)を実施することとなっている。要支援者に対する訪問介護・通所介護が全国一律の予防給付から生活支援サービスを含めた市町村事業へ移行するとともに、既存のサービス事業所によるサービスに加え、地域資源を活用した多様な主体による生活支援サービスの提供が可能となるなど、各市町村に地域の実情に応じた主体的な取り組みが求められている。
新しい総合事業の取組支援事業では、LL 財団に委託して相談会やセミナー、研修会の開催、あるいは情報誌の発行などを行い、市町村や関係事業者、県民に対して新しい総合事業に関する情報を提供することにより、各市町村が新しい総合事業を円滑に実施できるように支援している。
表 31(次ページ)は実施項目ごとの平成 28 年度の開催回数や参加者数、LL 財団への委託料、参加者一人当たりの委託料を示している。対象者を特定し、手段を工夫しつつ様々な機会を提供することにより、延べ2,565 人の参加者に情報を提供できている。一方で参加者一人当たりの委託料をみると、実施項目により差があるのも事実である。平均すると参加者一人に対して 2,147 円の委託料を支出して情報提供しているが、実施項目によって 212 円/人か
ら 34,731 円/人の幅がある。
そもそも新しい総合事業の取組支援事業の最終的な成果は研修会の開催回数や参加者数の多寡ではなく、いかに市町村の円滑な取り組みにつながったかである。また、参加者数についても講義形式の研修と演習形式の研修を単純に比較することはできず、参加者一人当たりのコストが異なるのは当然である。
しかし、参加者一人当たりの委託料などのデータは、それぞれの内容を検討することにより一層効率的かつ効果的な情報提供の方法を検討する際に参考となる。たとえば、困難事例検
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討会は 264,710 円の委託料で 3 回開催し、延 25 人の参加を得ており、参加者一人当たり
10,588 円である。他の実施項目に比べて一人当たりの委託料が高めであるが、もっと参加者を増やせなかったか、コストを削減できなかったか、他の効果的な代替手段はなかったか、さらには当該検討会の成果を別途、関係者間で広く共有することにより実質的に一人当たりの委託料を低減することはできなかったかなど、検討の端緒になると考えられる。
今後も新しい総合事業の取組支援事業を継続して取り組んでいく必要はあるが、その際、実績を十分に分析し、より効率的かつ効果的な情報提供や支援となるように工夫することが求められる。
表 31 平成 28 年度の新しい総合事業の取組支援事業の参加者一人当たり委託料
新しい総合事業の取組支援事業の実施項目 | 開催回数 (回) | 参加者数 (人) | 委託料 (円、税込) | 参加者 1 人当たり委託料 (円/人、税込) | |
新しい総合事業研修の実施 | |||||
・市町村職員、介護予防事業所職員等を対象とする研修 | 2 | 181 | 373,615 | 2,064 | |
包括的支援事業推進事業の実施 | |||||
・弁護士、司法書士及び社会福祉士による専門相談会 | - | - | 678,732 | - | |
・困難事例検討会 | 3 | 25 | 264,710 | 10,588 | |
・高齢者虐待防止セミナー(居宅編、施設編) | 2 | 233 | 203,558 | 874 | |
生活支援コーディネーター養成研修の実施 | |||||
・生活支援コーディネーター養成研修 | 1 | 86 | 503,666 | 5,857 | |
・タウンミーティング | 11 | 902 | 191,577 | 212 | |
地域支援事業における支えあい活動推進事業の実施 | |||||
・モデル市町村支援 | 12 | 742 | 2,316,331 | 3,122 | |
・連絡協議会(こまち助け合い推進研究会) | 2 | 22 | 764,092 | 34,731 | |
・生活支援コーディネーター情報交換会 | 1 | 65 | 138,650 | 2,133 | |
・生活支援コーディネーター関連情報誌発行 | - | - | 1,212,558 | - | |
地域ケア・マネジメント支援機能強化事業の実施 | |||||
・地域ケア会議機能強化支援事業広域支援員派遣 | 3 | 48 | 290,691 | 6,056 | |
・地域包括ケアシステム構築セミナー(市町村向け) | 1 | 42 | 227,137 | 5,408 | |
・地域包括ケアシステム構築講演会(一般県民向け) | 1 | 90 | 495,789 | 5,509 | |
地域包括ケア構築のための住環境整備事業 | |||||
・地域包括ケアシステム構築に向けた住宅改修研修会 | 1 | 129 | 436,071 | 3,380 | |
合計 | 40 | 2,565 | 8,097,177 | 2,147 |
(出所) 県資料及びLL 財団 H28 事業報告書より包括外部監査人が作成。
(注 1) 実施項目ごとの開催回数、参加者数は LL 財団の事業報告書、実施項目ごとの委託料は委託契約の実績報告の数値。ただし、委託料は実施項目に共通して関わる人件費や経費を各実施項目の金額割合で配分して加算。
(注 2) 弁護士、司法書士及び社会福祉士による専門相談会と生活支援コーディネーター関連情報誌発行は研修会や講習会とは性格が異なるため委託料のみ記載している。
(注 3) 数値の端数は四捨五入により処理している。
【意見13】 委託料の適正な積算について
高齢者ほっと安心相談事業では、LL 財団に対して高齢者総合相談・生活支援センター運営事業を委託している。高齢者及びその家族等の抱える保健、医療、福祉等に係る各種の心
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Ⅱ 長寿社会課
配事、悩みごとに関する相談に応じるとともに、県民への介護知識・技術の普及を図ることにより、高齢者及びその家族等の福祉の増進に資することを目的としている。平成 28 年度の委託
料は 15,015 千円である。
平成 28 年度の委託事業実施計画書では、県民の介護知識・技術の普及を図る取組として、家族介護者を中心とした県民介護講座を 10 回開催することとなっている。実際、10 回開催されているが、それに係る経費が網羅的に積算されていない。県民介護講座の講師謝金と講師旅費の計78,031 円についてLL 財団の委託料精算書等への計上が漏れていたとして監査時に追加されたが、そもそも県の予算積算段階で県民介護講座の講師謝金と講師旅費は含まれていないため、県の委託料積算及び委託先への指示の問題であると考えられる。
県は、委託料の積算に当たって、実施計画の内容を踏まえた適正な見積もりを行うとともに、委託先からそれを踏まえた委託料精算書等を提出させる必要がある。
【意見14】 委託契約時の見積書の徴取について
平成 28 年度の新しい総合事業の取組支援事業及び高齢者ほっと安心相談事業において、県は LL 財団と 5 件の委託契約を締結している。いずれも単独随意契約であり、かつ見積書の徴取を省略している。
見積書徴取の省略は県財務規則第172 条第2 項第4 号の「役務の提供を受ける場合又は事務若しくは事業を委託する場合で、その性質又は目的により見積書を徴取し難い契約をするとき。」を根拠としている。県によると、見積書を徴取することは可能であるが、契約予定先が
1者に限定され、委託料の決定には価格競争の視点ではなく、価格の合理性や妥当性が重要な要素となることから、事業が効果的、効率的に行えるよう事業内容と必要経費、予算状況等を踏まえ、必要かつ妥当な額を積算するとともに契約予定先との事前の調整を行っているため、契約時に改めて見積書を徴取する必要がないとのことである。
この場合、まず県が業務内容の仕様及び積算金額及びその内訳を契約予定先に提示した上で、契約予定先は見積書に換えその積算金額で受託する意思を確認した受託書を県に通知している。ただし、契約根拠資料を見る限り、契約金額の決定過程が一方的である。実際には両者間で事前調整があった上で受託書を入手したとしても、契約根拠資料だけを見る限り、事前調整の過程が明確ではないので、受託書ではなく見積書を徴すれば、積算金額よりも安価な価額の見積書が提示された可能性は否定できない。
見積書を徴取しない単独随意契約は一般競争入札、指名競争入札、随意契約(複数見積徴取)、単独随意契約(1 者見積徴取)などの契約方法の中で最も競争性や透明性に欠けるものであるが、担当課の委託契約の多くがこの形式である。今後の委託契約に際しては、県財務規則の上記条文を適用する妥当性をその都度、より一層慎重に確認することが重要であり、その結果、できるだけ見積書を徴取することにより、双方向での事前調整の過程を明確にした上で、契約するように努める必要がある。
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