農業分野におけるAI の利用に関する契約ガイドライン検討会(第1回)議事概要
農業分野におけるAI の利用に関する契約ガイドライン検討会(第1回)議事概要
日 時:令和元年7月9日(火)10:00~12:00
場 所:TKP 虎ノ門駅前カンファレンスセンター ホール3A出席者:別紙のとおり
議 事:議事次第に基づき事務局及び関係府省から説明後に全体質疑を行ったところ、主な意見は以下のとおり。
<ガイドラインの対象範囲>
⚫ 資料1-8 中の論点(5)について、弱いAI を対象とすることは同意する。その上で、経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」では Deep Learning 技術を活用したサービスが念頭に置かれているが、農業分野ではDeep Learning 技術に基づくAI サービスに限定されていないため、生産向上を目的とした知的システム/インテリジェントシステム等も本ガイドラインの対象として捉えるべきである。(xx委員)
⚫ 資料1-7 のAI システム・サービスの分類の資料は、AI を機能別に整理した4 つの分類が示されているが、個別事例として紹介されているものはほぼ予測系の事例である。将来的に目指すべきところは予測系である一方、現在の課題は労働力不足で、AI に求められるものは、トラクターやドローン、選果場の自動化等である。分類ごとに事例を提示し整理すれば現場もわかりやすいのではないか。(砂子委員)
<データの取扱い>
⚫ 農業分野の場合には、データ提供者におけるデータの取扱い方法により、データの質には大きな差が見られる。より効果的なAI サービスの創出のためにはデータの質を担保することが重要である。官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)では、(データの質を担保するため)各地の農業試験所に病害虫認識画像データの作成を依頼している。(xx委員)
⚫ 資料1-7 でAI システムの分類がなされているが、データの質についても分類を行うべきではないか。ディープラーニングには膨大な学習用データが必要であり、ウェブからダウンロードする場合が多い。また、写真を撮影した人の権利、撮影された農業者の権利、データの加工の有無等も関連し権利関係が相当複雑となっている。データの質のような分類が必要ではないか。(xx委員)
⇒ データの質に関して「AI 戦略 2019」で議論した経験から申し上げると、本検討会でデータに係る質の詳細を議論のスコープとすると収束しないため、データの質に係る分類においてはある程度の類型化で留めたほうがよいと思われる。また、権利関係にフォーカスした整理がなされていればよいと考える。(xx委員)
⚫ 農業者におけるデータの取扱いが、データ利活用のエコシステムの出発点である。例えば、農業機器等を農業者が購入またはリースする時点から農業者のデータ等の取扱いが始まるが、現状の売買契約等においては、データ等の取扱いに関する取り決めが含まれていないことが多い。「そのデータを誰がどのような条件で利用可能とするのか」を分かりやすく取り決めることが今後求められると考えている。知財、ノウハウ、事実データなどいくつかの取り決めの対象となる要素があるが、実際のサービス利用契約等に反映されることを念頭に、契約ガイドラインにわかりやすく示すべきである。(林委員)
⚫ 農業者におけるデータは、自らに便益が出ない限り勝手に使用されることに抵抗感が生じる
という点で、個人情報と類似の面があるのではないかと考える。その観点から、情報銀行に係る議論が参考になるのではないか。(福岡委員)
⚫ 農業分野におけるAI サービス事例を見る限り、機械学習によるサービスよりも機械学習を前提としないアルゴリズムに近いサービスが多く見られる。この場合、ソフトウェアのソース部分とデータの要素を一体として構成することもあり、両者を切り離した議論を行う必要性はさほど高くないと感じている。(xx委員)
<AI 学習済みモデル等の取扱い>
⚫ 現在発行されている各種ガイドラインでは大手ベンダーなどが自社でモデル開発を完結していることを想定していると見受けられる。大学やベンチャー企業における研究開発では、OSS
(Open Source Software)を含む既存のフレームワーク等が使用されるケースが多いが、これを用いて策定したモデルの場合、どこまで権利を主張できるのかが定かではない。OSS のフレームワークを利用して作成された成果物に対しても、作成者への権利性を示せれば、開発ベンダーへのインセンティブになるのではないか。(xx委員)
⇒ 開発の初期段階において、ライセンスを吟味した上で使用する OSS を選択することが重要である。平成 28 年度に開催した「新たな情報財検討委員会」では、著作権・特許権では人間の寄与があるものと整理している。(林委員)
⇒ OSS からどれだけ改変しているのかが、独立した権利性認定のメルクマールになる。例えばデータの前処理を行うプログラムやユーザインターフェースとしてのプログラムについては著作権がある可能性がある。学習用済みモデルなど OSS のフレームワークが利用された成果物に対して、改変部分がない場合には、著作権の主張をすることは困難である。著作xxなどの法律では守れない以上、契約による保護か技術的な保護を図るしかない。(福岡委員)
<農業者への配慮>
⚫ 農業者がデータ提供をしやすい環境構築のために、ガイドライン策定の際に農業者のノウハウを保護する観点を持つことが非常に重要である。データを提供することでxxxxが流出してしまうのではないかと懸念が広がることでスマート農業の発展が阻害される。全農やxx委員と実施している研究開発プロジェクトでは、農業者を保護する方針のもと知的財産に関わる契約を三者間で締結している。(xx委員)
⚫ 熟練の知見を発信する農業者の保護が非常に重要である。データを利活用する仕組みに熟練農業者がこれまで積み重ねてきた知見等が加わることで、より一層効果的にデータを利活用できる。農業者が持つ技術を評価する仕組みをガイドラインに示すことにより、農業者の知見の発信に対して農業者のインセンティブとなる。農業者の知見を守る仕組みの方向性を示すことで、技術が次の世代へと継承が促されるようになるとよい。(xx委員)
⚫ 農業者への評価について指針が示されるとよい。農業者のデータ提供が保護されるものであるということが示されると、提供者側の安心感にもつながるのではないか。(xx委員)
<経済産業省ガイドラインと農業におけるAI 事情との差異>
⚫ 本ガイドラインで対象とする契約の当事者について、整理が必要である。「(参考1)農業分野でのAI の開発及びサービス等の利用の流れの例」にあるように、AI の開発・利用と言っても、
①農業者 B から研究機関 A がデータの提供を受け、それに行政機関が補助金をつけて、学習用データセットを作成し、それに機械学習をさせて学習済みモデルを開発するという場面、
②その学習済みモデルを自動収穫ロボットのような実装品に実装する場面、③その実装品を
ユーザーに利用させる場面の3つがあり、このうち2以上の当事者における契約を検討しなければならないのは②及び③の場面であるが、②と③の場面では、誰にどのような責任を課すかという点において、利益考慮事情も変わってくるだろう。また、今回のガイドラインの対象とする契約が、②と③の場面なのであれば、それも明確にすべきであると考える。また、②についてはメーカーC との関係では、開発委託にもなるだろうし、学習済みモデルの利用契約という側面もある。このように、異なる契約場面、異なる当事者間で、いかなる契約類型を今回のガイドラインの対象とするのかについては、事務局のほうできちんとした整理が必要になると思われる。(xx委員)
<権利・責任の帰属、利用条件の在り方>
⚫ 特に重要な論点としては、データの取扱い、責任、サービスの品質・性能などが想定される。将来的にはリスクの分担の課題に対して保険や補償制度まで検討されることが望ましい。データの取扱いについてはWAGRI における議論を参考にできると思われる。(福岡委員)
⚫ 国が資金提供した研究開発事業の社会実装にあたっては大きく二つの方向性があると考える。どちらが適切であるか結論は出ていないが念頭に置いた上で議論したほうがよい。一つは、 米国バイドール法のように研究開発の成果物に基づく大学や研究者に特許xxに対して、研 究開発を広く活用できるようにする方向性。もう一つは、英国における遺伝子情報データベ ースのように政府がxx管理する方向性。(福岡委員)
⚫ 一般的に学習用データセットは秘匿することで保護することが多いが、農業分野での指針が示されるべきではないか。一般的には成果物の保護のためにサービス提供者は詳細を秘匿する方針を取る。他方でサービス利用者は利用サービスにおけるモデルの精度の確認などの観点から、データセットを確認したい。一般的な商業分野では個別交渉がなされる。経済産業省の契約ガイドラインでは、データの利用権限の決定は寄与度で判断すると指針が示されているが農業分野ではどうであるか具体化してもよいかもしれない。(福岡委員)
⚫ 今後検討を進めるにあたってはデータの議論の場合、どこかに帰属するといった考え方は必ずしも妥当ではない。誰がどのような条件でデータを使用できるのかとの考え方で契約に関する議論を進めるのが有効である。(福岡委員)
⚫ AI メーカーとしてこれまで農業者等と相対契約を結んできた経験を踏まえると、少なくとも権利や責任など何を協議事項とすべきであるのかが示されていると非常に有意義であると思う。相対の場合には、双方のリソース投入条件(人・xx・xx・情報等)により権利や責任の範囲を決めていくことが多いため、協議すべき権利や責任の内容が明確でないと、契約合意に非常に労力がかかる。また場合によっては、サービス提供内容や今後のサービス展開に支障をきたすことになる。(休坂委員)
⚫ ガイドラインには、責任に関してリスクの重要度と対応方策が示されているとありがたい。農業者や企業として取りうる責任は、保証できるものとできないものがある。例えば、ドローン等により人の生命に及ぶリスクがあるかどうかは、経済的には保険などによってリスクを担保するしかない。このようなリスク評価に関する指針を示すことが重要かもしれない。(休坂委員)
<ガイドラインの普及啓発・実装に当たっての工夫>
⚫ 現場で使われるガイドラインを目指すべきである。昨年度には、「農業分野におけるデータ契約ガイドライン」として詳細なガイドラインが策定されたと理解しているが、一方で実際の現場での活用のし易さの観点で見ると乖離がある。ドローンのリース等によるデータ収集は始まっており、いかに早く現場が使えるものを出すかが重要である。(林委員)
⚫ 既に締結している契約を、ガイドラインで策定する内容で置き換えるのは実務的に難しい。例えばアタッチメント(契約書別紙)などの形で対応するなどが考えられる。(林委員)
⚫ 本検討会では該当場面において、最低限取り決めておくべき項目(例えば第三者による利用条件や、成果物の生成者による利用可否など)について議論をするのはどうか。これらをわかりやすく示す方法なども含めて整理することで、わかりやすさを向上することが期待される。ひな形の冒頭部分でタームシートの形で整理するなどの工夫の在り方もあるのではないか。
(林委員)
⚫ 実務で多く参照してもらうための方策として、資料 1-8 P.3 記載の補助金等の採択要件に盛り込むこと以外に、周知を図るための方策を検討してもらいたい。外資系企業が日本国内で製品・サービスを展開するような場面でも参照できるようなガイドラインであることが望ましい。ガイドラインの活用を進めるための施策が重要である。(xx委員)
⚫ 農業分野に限らずあらゆる分野においてAI 技術に関する社会実装が課題になっている。契約ガイドラインは社会実装における一つの重要なパーツである。社会実装の全体像を提示してもらい、契約ガイドラインの位置づけを明らかにした上で、今後議論ができるとよい。(福岡委員)
⚫ データの取引に関する条項は、提供されるサービスに関する契約書全体の中の一部であり、
弁護士はともかく一般の人が契約書全体を熟読することは考えにくいので、契約書全体のひな形を提供しても読んでもらいにくい。AI 開発・サービスに関する主な論点を踏まえた条項例等を示すことが有意義であると考える。これらを一般的な契約書に追加できるようにすればいいのではないか。(福岡委員)
⚫ 農業者に本ガイドラインのみをインプット情報として本質を理解してもらうことは難しい。情報銀行における議論など周辺情報も合わせて提供できるとありがたい。(xx委員)
⚫ 普及フェーズが最重要であると考える。昨年度の農業分野におけるデータ契約ガイドライン検討会でも申したが、ガイドラインの普及政策について方向性を示していただきたい。日本農業法人協会としても是非協力していきたい。(xx委員)
<事業者等へのヒアリング>
⚫ 本検討業務で実施するヒアリングにおいては、AI システム・サービス事業者だけではなく、農業者へのヒアリングも含めるべきである。農業者が有する次世代に継承すべきノウハウは重要であり、その保護や取扱いに関して、現状の把握や課題の洗い出しも行う必要がある。
(xx委員)
(以上)
(別紙)
「農業分野におけるAI の利用に関する契約ガイドライン検討会」委員名簿
【委員】(敬称略・五十xx)
xx | x | 有限会社サンファーム・オオヤマ 会長 |
xx | xx | xxx大学工学部 教授 |
xx | xx | 公益社団法人日本農業法人協会 経営支援課長 |
xx | xx | 株式会社オプティムインダストリー事業本部 執行役員 |
xx | xx | 全国農業協同組合中央会国際企画部 輸出・知財農業推進室長 |
xx | xx | 慶應義塾大学環境情報学部 教授 |
xx | xx | 富士通株式会社スマートアグリカルチャー事業本部Akisai 事業部 |
エキスパート | ||
xx | xx | xx見富法律事務所 弁護士 |
x xxx 桜坂法律事務所 弁護士
xx xx 全国農業協同組合連合会耕種総合対策部 スマート農業推進室長xx xxx xxxxx法律事務所 弁護士
【オブザーバー】
xx | xx | 内閣府知的財産戦略推進事務x xxx |
xx | xx | 内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)x xxx |
xx | xx | 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略x xxx |
xx | xxx | 経済産業省経済産業政策x x的財産政策室長 |
xx | xx(代理) | 経済産業省情報経済課 課長補佐 |
xx | xx | 農林水産省大臣官房 総括審議官 |
xx | x | 農林水産省食料産業x x的財産課長 |
xx | x(代理) | 農林水産省大臣官房政策課 課長補佐 |
xx | x | 農林水産省生産局 技術普及課長 |
xx | xx(代理) | 農林水産省生産局畜産部畜産振興課 課長補佐 |
xx | xxx | 農林水産省農林水産技術会議事務局 研究統括官(生産技術) |
xx | xx | 農林水産省農林水産技術会議事務局 研究調整官(ゲノム・基礎・基盤) |
【事務局】
株式会社NTTデータ経営研究所