Contract
案件概要書
2022 年 12 月 20 日
1.基本情報
(1) 国名:カンボジア王国(以下、「カンボジア」という。)
(2) プロジェクトサイト/対象地域名:首都プノンペン(人口約 228 万人)
(3) 案件名:ニロート上水道拡張計画(Niroth Water Supply Expansion Project) (4) 計画の要約:本計画は、水需給がひっ迫する首都プノンペンにおいて、上水道
2.計画の背景と必要性
施設を拡張することにより、安全かつ安定的な給水サービスの向上を図り、もって首都プノンペンの住民の生活環境の改善に寄与することを目的とする。
(1) 本計画を実施する外交的意義
メコン地域の中心部に位置するカンボジアは、地域の連結性と域内の格差是正の鍵を握る国として重要であり、我が国は、同国内戦後の和平・復興・開発への貢献や活発な要人往来、国際社会における協力等を通じ、同国との関係を強化してきた。1991年のパリ和平合意以降は、我が国初の本格的な PKO を派遣するなど、同国の復興・開発に積極的に関与しており、2013 年 12 月には、両国関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げされるなど良好な二国間関係を築いてきている。
我が国は、同国の内戦終了直後の 1993 年から首都プノンペンの上水道支援を開始し、地方自治体と連携した協力によって、2006 年には給水率 90%、24 時間給水の実現等を達成し、「プノンペンの奇跡」と呼ばれるなど、同国の給水事情の改善に大きく貢献してきた。現在もプノンペンでの成果を地方都市に横展開するため、技術協力と資金協力を組み合わせ、上水道施設の運用技術向上、施設拡張、経営改善などに継続的に取り組んでおり、同国の水分野における我が国による支援への期待は大きい。
我が国の対カンボジア国別開発協力方針(2017 年7月)では、重点分野「生活の質向上」において上水道の整備を支援するとしており、本計画は我が国の協力方針に合致する。また、本計画は、2022 年4月に第4回アジア・太平洋水サミットで岸田総理大臣が発表した、日本政府による「熊本水イニシアティブ」に寄与するほか、同国からの支援の期待も大きい同分野を実施することは、更なる二国間関係の強化の観点からも重要である外交的意義は大きい。
(2) 当該国における上水セクターの現状・課題及び本計画の位置付け
カンボジア政府は国家戦略開発計画により、2025 年までに都市部人口の 100%に対して安全な水へのアクセスを確保するという目標を掲げ、上水道施設の整備に取り組んでいる。首都プノンペンでは、1993 年以降、我が国及び他ドナーが連携して、浄水場や送配水管網の建設・改修、運転維持管理にかかる技術支援等が実施され、24時間給水を実現し、給水率は 90%以上に達している。一方、近年の経済成長に伴い、市街地の拡大や商業施設が急増し、2022 年には日平均給水需要は 64.2 万 m3/日となり、給水能力 59.2 万m3/日を上回る見込みである。また、プノンペン水道公社(Phnom Penh Water Supply Authority: PPWSA)が 2022 年に更新した第三次マスタープラン
(以下、「M/P」という。)によると、プノンペンは人口の増加が継続し、2030 年には 300 万人近くまで増加することが見込まれており、日平均給水需要は 157.8 万 m3/日まで増加することが予測されていることから、給水能力の増強が喫緊の課題となっている。
加えて、プノンペン都の一部の配水区域ではビルや大規模商業施設の建設などに伴う集中的な水需要の発生等により、朝晩の水需要のピーク時を中心に水圧低下が発生している。そのため、利用者が建物に吸引ポンプを設置して配水管の水の吸引を行っており、配水管内の水圧が更に低下する状況が生じている。水圧の低下は水質悪化を引き起こす要因となるため、給水能力の増強により水圧を安定させることも課題となっている。
都市化が進むプノンペン都中心部では、新たに浄水場用地を確保することが困難であるため、PPWSA はM/P に基づき、中心部近隣(市中心部より南東約 8km)に位置し、十分な敷地を有する二ロート浄水場の拡張を優先事業の一つと位置付けている。
3.計画概要 *協力準備調査の結果変更されることがあります。
本計画は、二ロート浄水場の拡張を実施することにより、プノンペンにおける水需給が逼迫している状況の改善を図るものであり、安定的な水供給が実現され、住民の生活環境を向上するものである。
(1) 計画概要
① 計画内容
ア)ニロート浄水場の拡張(現在 26 万 m3/日の浄水供給能力を 13 万 m3/日分増強)イ)送配水管の新設(約 135 km)
ウ)コンサルティング・サービス(詳細設計、入札補助、施工監理等)
② 期待される開発効果:ニロート浄水場の給水量を 260,000m3/日から 390,000m3/日に増加させ、合わせてプノンペン市内の配水枝管における給水圧を増加させることで、PPWSA 給水区域内住民の生活環境の改善が期待される。
③ 借入人:カンボジア王国政府
④ 計画実施機関/実施体制:プノンペン水道公社(Phnom Penh Water Supply Authority:PPWSA)
⑤ 他機関との連携・役割分担:フランス開発庁がプノンペン都内北部で浄水場の新設を支援中。
⑥ 運営/維持管理体制:PPWSA が運営・維持管理を行う。PPWSA の運営・維持管理能力は、これまでの JICA の技術協力を通じて強化され、これまで建設された施設も適切に維持管理されている。また、PPWSA は株式上場した 2012 年以降継続的に一定の収益を確保しており、PPWSA の経営財務状況は健全であり、本事業の維持管理にも必要な予算は確保される見込みである。
(2) その他特記事項
・環境社会配慮カテゴリ分類:B
・ジェンダー分類: GI(ジェンダー主流化ニーズ調査・分析案件)
4. 過去の類似案件の教訓と本計画への適用
タイ王国向け円借款「第 8 次バンコク上水道整備事業」の事後評価結果(2020 年度実施)では、拡張された浄水場について、運営・維持管理の効率性・安全性に影響する設計上の課題が一部の施設が散見されたと指摘されている。既存施設の拡張を行う事業においては、既存施設の運用・維持管理を行う技術者の意見を聴取する機会を十分に設けた上で、既存施設のスペックや能力、運営・維持管理上の様々な経験を十分に参照した設計を行う事が重要であるとの教訓を得ている。
本計画においては、協力準備調査の段階から実施機関である PPWSA の技術者の意見を聴取する機会を設けるとともに、既存施設の能力を踏まえた上で拡張施設の設計を行い、円滑な効果発現を目指す。
以 上
[別添資料]ニロート上水道拡張計画 地図
別添
ニロート上水道拡張計画 地図
ニロート浄水場
出典:Google Map