Contract
かながわ労働センター
フリーランスで働くときは
労働問題対処ノウハウ集 60
・業務委託で働いていたところ、業務量が減ってきたとの理由で、予告なく契約解除された。
・業務委託で働いていたが、辞めようとしたところ、報酬と違約金を相殺すると言われた。
・下請業者として建設現場で働いていたが、月末締めで払われていた下請代金の支払がない。
・今まで雇用契約で働いていたが、事業主から業務委託契約に切り替えてくれと言われた。
基本のきほん
◎フリーランスとは
近年、個人の働き方が多様化しており、その一つに、個人事業主として働く、いわゆる「フリーランス」があります。一般的には、自分で事業等を営んでおり、従業員を雇用していない、などの働き方を指すことが多いようです。
労働者として事業主に雇用されて働く場合と異なり、労働基準法(以下「労基法」という。)などの保護が無いため、もしものときに備えておくことが大切です。
また、事業主が、労基法などの法令適用を免れたい、保険料の事業主負担を免れたい…等の意図で、労働契約ではなく業務委託契約等の形式を選択するケースがありますが、次の基準により労働者性が認められれば、労基法等が適用されます。
◎労働者性の有無(労働基準法・労働契約法)
労基法第 37 条に基づいて残業代の支払を求める、労働
契約法(以下「労xx」という。)第 16 条に基づいて解雇の無効を争う等の場合には、労基法や労xxにおける
「労働者」であることが必要です。
労基法第9条では、「労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」としており、労働者性については、契約の名称にかかわらず、その実態によって判断されます。
事業主が、請負契約等の形式を選択する場合であっても、労働関係の実態について、
・仕事の依頼、業務の指示に対する諾否の自由があるか
・業務遂行にあたり具体的な指揮命令があるか
・勤務時間や勤務場所が指定されているか
・報酬が賃金なのか
・機械や器具を負担しているか
・他社の業務に従事することを制約されているか
等を総合的に勘案し、労働者性を個別具体的に判断します。(昭和 60 年厚生労働省労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」)
厚生労働省の通達でも、請負(民法第 632 条)、委任(民
法第 643 条)、その他の契約形式で労務を提供している 場合であっても、実態として使用従属関係が認められる 場合には、「労働者」に該当するものとしています(「労 働契約法の施行について」基発0810 第2 号(平24.8.10))。契約上生じたトラブルに関連して、労基法が適用できる かなど、具体的に労働者性を明確にしたい場合には、労 働基準監督署にお問い合わせください。
◎労働組合法の適用
労働組合法(以下「労組法」という。)第 3 条では、「労働者とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう」としており、労基法上の労働者より広い概念とされています。業務委託契約等によって労働に従事する者であっても、
・事業組織への組み入れがあるか
・契約内容が一方的・定型的に決まっているか
・報酬に労働対価性があるか
・広い意味での指揮監督下での労務提供か
・一定の時間的場所的拘束はあるか
等により労働者性が総合判断されます。(平成 23 年厚生労働省労使関係法研究会報告書「労働組合法上の労働者性の判断基準について」)
そのため、労基法上の労働者でなくても、労組法上の労働者であれば、労働組合を結成して団体交渉をしたり、個人で入れる労働組合に加入することもできます。
◎労働保険・社会保険の適用
①労災保険
業務上の負傷や疾病等については、労働者災害補償保険法に基づく保険給付がありますが、この保険給付の対象は「労働者」とされているため、個人事業主は保険給付を受けることができません。(国民健康保険を使って治療等を受けることは可能です。)
しかし、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生 状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが 適当であると認められる一定の人については、「特別加 入制度」により労災保険の適用を受けることができます。特別加入することができる人(いわゆる「一人親方」等) については、対象となる事業が、自動車による旅客・貨 物運送、土木・建築等、漁業、林業、医薬品配置販売業、 再生利用廃棄物収集運搬処理業、船員とされています。特別加入の手続きは、一人親方等の団体(特別加入団体)を通じて行います。
特別加入の詳細については、労働基準監督署にお尋ねください(「特別加入団体」のリストもあります)。
②雇用保険
個人事業主については、失業の状態になった場合に給付を受けることができる公的保険制度はありません。
③健康保険
原則として、国民健康保険に加入することになります(窓口は市町村)。協会けんぽ等の健康保険と異なり、自治体で運営している国民健康保険では、原則として傷病手当金が支給されない等の違いがありますので、ご注意ください。
なお、特定の業種については、業種ごとに設立された国民健康保険組合に加入することができる場合があります。
④年金
20 歳以上 60 歳未満の方の場合、原則として、国民年金の第1号被保険者となります(加入関係の窓口は市町村)。
なお、年金保険料を支払わない、いわゆる「未納」の状態が続いた場合には、将来受給できる老齢年金受給額が減少するだけでなく、傷病により障害状態になった場合に受給できる障害年金の受給権が得られないおそれがあります。
◎損害賠償
労基法上の労働者の場合は、仕事を行っている時にミスを犯すなど、労働契約上の債務不履行があった場合に、実際の損害発生の有無や損害額にかかわらず、一定の違約金を定めることや、賠償額を予め定めておくことは、労基法第 16 条で禁止されています。また、労働者のミスによって具体的に会社に損害を与えた場合であっても、労働者が業務を遂行する過程で通常発生する事が予測されるミス(軽微な過失)の場合は「損害のxxな分担」というxxx上の基本理念から、損害賠償責任を認めることは難しいとされています。賃金と損害賠償額の相殺も、労基法第 24 条により禁止されています。
しかしながら、業務委託契約等においては、違約金や賠償額について予め契約書で規定されていた場合は、その契約書に基づいて損害賠償請求されることになります。また、業務委託等の代金を損害賠償額と相殺することも禁じられていません。そのため、事前に契約書の内容をチェックして、リスクの程度を確認しておく必要があります。
こんな対処法があります!
○「下請かけこみ寺」(中小企業庁委託事業)では、中小企業・小規模事業者の取引上の悩み相談を広く受け付けています。
下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の対象となる下請取引(原則として、資本金 1,000 万円超の事業者が発注者となる①製造委託、②修理委託、③情報成果物作成委託、④役務提供委託)に該当するかどうかの確認もできます。
・下請かけこみ寺 フリーダイヤル 0000-000-000
○(公財)神奈川産業振興センターでは、
・契約内容の事前チェック
・債権回収 等
について相談できる、法律相談を実施しています(毎週水曜日午後、事前予約制)。
・(公財)神奈川産業振興センター 045-633-5200
○下請法違反があった場合には、下請Gメン(中小企業庁 取引調査員)のヒアリングを受け、親事業者による買い たたきなど不当な行為が把握されれば、下請法に基づき、厳正に対処されます。
・関東経済産業局 産業部適正取引推進課下請ヒアリング担当 048-600-0324
○建設業の場合、下請法の適用はありませんが、元請業者と下請業者の間の請負契約について建設業法違反が疑われる場合には、国土交通省の「駆け込みホットライン」に通報ができます。
また、「建設業取引適正センター」((公財)建設業適正取引推進機構)でも相談できます。
・駆け込みホットライン 0000-000-000
・建設業取引適正センター東京 00-0000-0000
◎業務委託で働いていたところ、業務量が減ってきたとの理由で、予告なく契約解除された。
◎業務委託で働いていたが、辞めようとしたところ、報酬と違約金を相殺すると言われた。
いずれも、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)が疑われる場合があります。
xx取引委員会に相談することが考えられます。
・xx取引委員会企業取引課 00-0000-0000
また、独占禁止法違反が疑われる案件について、インターネットによる申告もxx取引委員会で受け付けています。 xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxxxxxxxxxx/xxx ex.html
◎下請業者として建設現場で働いていたが、月末締めで払われていた下請代金の支払がない。
請負代金の請求については、相手方が応じない場合については裁判手続で行うことになりますが、請負代金が少額の場合、裁判費用を考慮すると、弁護士に依頼せず本人訴訟によって行うことも考えられます。手続きについては、(公財)神奈川産業振興センターで実施している弁護士相談で相談できます。
◎今まで雇用契約で働いていたが、事業主から業務委託契約に切り替えてくれと言われた。
業務委託契約は、自分の裁量によって業務、時間や場所などを選択することができるなど、働き方の自由度が高いことがメリットとして挙げられます。一方、労基法等による労働者保護を受けられない、失業したときの所得補償がない、所得税・住民税の申告・納付を自分で行わなければない、といったデメリットもあります。事業主から契約変更の申し入れに対しては、こうしたメリット・デメリットをよく考慮し、慎重に判断する必要があります。
なお、業務委託契約となった場合、既存の雇用契約は終了しますが、契約変更に同意しないときは、解雇・雇止めの無効を争うことになります。解雇には、社会常識からみて、「なるほどもっともだ」といえる「合理的理由」が必要であり、雇止めにも、一定の場合には解雇の関する考え方が適用されます。詳しくは、労働問題対処ノウハウ集 26『納得できない、こんな解雇』、同 28『期間満了で更新されない』をご参照ください。
お問合せ、ご相談は、下記の労働センターの労働相談窓口まで。 URL xxxx://xxx.xxxx.xxxxxxxx.xx/xxxx/x0x/xxx/x0000/xxxxx.xxxx かながわ労働センター (045)633-6110(代)/xx支所(044)833-3141/ 発行 神奈川県かながわ労働センターxx支所(046)296-7311/湘南支所(0463)22-2711(代) xxxxxxx0-0 x231-8583
令和2年 11 月発行