静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、パーパス㈱(社長 髙木裕三)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.3.18
パーパス㈱と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、パーパス㈱(社長 xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 3 月 18 日(金)
2.融資金額 2 億円
3.資金使途 運転資金
4.パーパス㈱の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、住宅設備関連機器や電子制御機器などの製造、販売を手がけており、自然環境との調和を第一に考え、地球にやさしい快適な生活を創造していくことを製品開発の基本コンセプトにしています。
また、xxにわたる高度な開発力と技術力を生かし、多くの省エネルギー・高効率製品の提供を実践するなど、環境にやさしい持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。
〇今回、同社の企業活動が与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・高度な技術力を基盤とした高効率・省エネ製品の提供(日本ではじめて高効率給湯器「エコジョーズ」を発売するとともに、アメリカ市場向け「エコジョーズ」の開発、販売の実施) ・エネルギー事業者へのシステム提供で顧客の業務効率化に貢献(LP ガス<液化石油ガス>事業者向けの管理システムの提供) ・エネルギーや天然資源の使用量削減(ISO14001 の認証取得による環境マネジメン トシステムの運用、エネルギー使用量・温室効果ガスの排出量削減への取り組み) |
|
社会面 | ・防災対策への取り組み(非常用 LP ガス発電機の製造・販売、最高レベルの安全性を備えたデータセンターの設置、生産拠点の分散) ・品質管理の徹底(ISO9001 の認証取得による品質マネジメントシステムの運用品質会議、品質保証会議の開催) ・製品の安全・安心の確保(製品への各種安全装置の装備、あんしん点検などの点検 制度、テクニカルサービスセンターによる万全のサポート体制) |
|
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】パーパス㈱の概要
所 在地 | xxxxxxxx 000 | 創 業 | 1946 年(昭和 21 年)4 月 |
資 本金 | 98 百万円 | 売 上高 | 22,577 百万円(2020 年 12 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:パーパス株式会社
2022 年3月 18 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目次
(1)高度な技術力を基盤とした高効率・省エネ製品の提供 19
(2)エネルギー事業者へのシステム提供で顧客の業務効率化に貢献 22
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 パーパス株式会社(以下、パーパス) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、パーパスの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
パーパスは、「人や生活、環境にやさしく、お客様に安全、安心、快適を提供する」との基本方針のもと、住宅設備関連機器、産業用機械制御装置や医療機器などの電子制御機器、エネルギー事業者向けシステムなどの情報ソフトウェアの開発・製造・販売を行っている。
同社は、住宅設備関連機器や電子制御機器などの製造を手掛ける中で、高度な技術力を培い、多数の省エネルギー・高効率機器を開発し、業界をけん引している。また、LP ガス事業者向けの管理システムを約 4,000 社に提供し、トップシェアを誇る。
さらに、ISO9001、JIS Q9001 の認証を取得し、全社xxとなって品質管理に取り組むほか、自社製品を利用者が安全・安心して使えるよう、様々な対策を講じている。また、安全衛生委員 会の開催や安全教育を通じて、安全・衛生環境の整備に取り組むほか、「グループ・部署間の絆の強化」と「仕事と家庭の両立」を掲げ、従業員が生き生きとやりがいを持って、自己成長を感じながら働ける環境の整備に取り組んでいる。
そして、環境面では、ISO14001、JIS Q14001 の認証を取得し、組織的に環境マネジメントシステムを定着させることで、継続的な発展に不可欠な環境との共生を具現化すべく、全社xxとなって取り組んでいる。
本ファイナンスでは、以下のインパクトが特定され、それぞれに KPI が設定された。
【ポジティブ・インパクトの増大】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI (指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | 高度な技術力を基盤とした高効率・省エネ製品の提供 | 日本で最初にエコジョーズを発売 アメリカ市場向けエコジョーズの開発 ハイブリッド給湯システムの開発 ほか | 機動的かつ高度な製品開発体制を強化するため、2025年までに、社内生産率を現行水準より 8.4%向上させる。 高効率製品・省エネ製品の販売を拡大 し、2025 年までに 売上全体に占める高効率・省エネ製品の割合を 75%に高める。 | エネルギー 資源効率・資源安全確保 | |
エネルギー事業者へのシステム提供で顧客の業務効率化に貢献 | LP ガス事業者向けの管理システムの提供 | 2025 年までに、LPガス事業者向けクラウドサービスの提供において、国内 LP ガス利用者の 50%以上が、クラウドサービス 上で管理・運用されるようシェアを高め、エネルギー事業者の業務効率化を支援す る。 | 資源効率・資源安全確保 |
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI (指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
社会 | 非常用LPガス発電機の製造・販売 最高レベルの安全性を備えたデータセンターの設置 生産拠点の分散 ほか | 必要に応じて災害対 | |||
策規定の見直しを行 | |||||
防災対策の実施 | うとともに、災害対策 規定にもとづき、防災訓練の実施等の防災 | エネルギー 健康と衛生 | |||
対策を継続して実施 | |||||
していく。 | |||||
アクシスプロフィットスク | |||||
ールを始め、若手、中 | |||||
堅、管理職などを対 | |||||
象とした各種研修を | |||||
開催し、社員の能力 | |||||
向上を支援する。 | 雇用 | ||||
働きやすい就労環境の整備 | アクシスプロフィットスクールでの教育 ダイバーシティ対応 | 2030 年までに、x xx技能実習生を受け入れる。 | 教育 包摂的で健 | ||
全な経済 | |||||
地域の特別支援学 | |||||
校などと連携し、引き | |||||
続き、法定雇用率以 | |||||
上の割合で障がい者 | |||||
を雇用する。 |
【ネガティブ・インパクトの低減】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI (指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | ISO14001 の認証 取得による環境マネジメントシステムの運用 省エネ法の特定事業者、エネルギー管理指定工場等としての取組実施 環境共存型の生産拠点としてエコベストファーム稼働 ほか | 省エネ設備機器な | エネルギー | ||
どの導入により、20 | |||||
30 年までに、本 | 大気 | ||||
エネルギー | 社・富士工場とエコ | ||||
や天然資 | ベストファームにおい | 水 | |||
源の使用 | て、エネルギーCO | ||||
量削減 | 2 換算量を年平均 | 資源効率・資 | |||
1%以上(2021 | 源安全確保 | ||||
年基準)削減す | |||||
る。 | 気候変動 | ||||
排出物の分類と再利用 廃棄物の削減と適正処理 カタログの電子化による印刷物の削減 ほか | 2030 年までに、産 | ||||
業廃棄物の排出量 | |||||
を、現行水準より | |||||
3%削減する。 | 資源効率・資 | ||||
廃棄物の 適正処理・ | 2025 年までに、製 | 源安全確保 | |||
削減 | 品カタログのデジタ ル化等により、紙の | 廃棄物 | |||
印刷物を、現行水 | |||||
準より 40%削減す | |||||
る。 |
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI (指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
社会 | 品質管理の徹底 | ISO9001 の 認証取得による品質マネジメントシステムの運用 品質会議、品質保証会議の開催 ほか | ISO9001 に即した品質マネジメントシステムの運用を通じて、引き続き、全社xxとなって、適切な品質管理を実施し、顧客満足度の向上および優れたサービスを提供していく。 各部門長は経営方針、品質強化方針を受けて「品質年度計画」を作成し、目標を決め活動する。活動内容及び進捗状況を四半期毎に品質管理責任者に報告し、必要に応じて目標の見直し変更を行う。 設計、生産、サービスすべてのフェーズで品質意識を高め、品質向上に取り組むことにより、2030 年までに新品故障率「0」を掲げる。 | 健康と衛生 |
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI (指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
社会 | 製品への各種安 | 2025 年までに高齢者施設(介護老人福祉など)市場の 1%に相当する 85,800 戸の施設へ当社の商材を普及させる。 | |||
全装置の装備 | |||||
製品の安 | あんしん点検など | 健康と衛生 | |||
全・安心の | の点検制度 | ||||
確保 | エネルギー | ||||
テクニカルサービス | |||||
センターによる万 | |||||
全のサポート体制 | |||||
労働安全衛生 | |||||
従業員の | 法に沿った適切 | ||||
安全衛生 管理の徹底 | な安全管理 従業員の健康保 | 労働災害の発生件数ゼロを目指す。 | 雇用 健康と衛生 | ||
持対策実施 |
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2022 年3月 18 日~2027 年 2 月 28 日 |
金額 | 200,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5年0ヵ月 |
企業概要
企業名 | パーパス株式会社 |
所在地 | xxxxxxxx 000 |
事業所 | 本社・富士工場、富士宮工場、ホークヒルファクトリー、 首都圏支社、近畿支社、東北エリア、静岡エリア、中部エリア、中四国エリア、九州エリア、北海道・沖縄エリア 他 全国 38 カ所 |
従業員数 | 総計 902 名 |
資本金 | 9,800 万円 |
業種 | 住宅設備関連機器の製造・販売電子制御機器の製造・販売 情報ソフトウェアの製造・販売 産業用ロボット・省力機械・環境機器の製造・販売ウォーターサーバーの製造・販売 |
主要取引先 | 〈仕入先〉 xx産業㈱、日鉄ソリューションズ㈱、シナノケンシ㈱、㈱テージーケー 〈販売先〉 xx産業㈱、日本瓦斯㈱、xxxxxxx㈱ 、 XXXXXX - A. O. Xxxxx Xxxxxxxx Water Heater Company LLC |
沿革 | 1946 年 故xxxxxが髙木プレス工業所を設立 1952 年 髙木プレス工業株式会社設立 1956 年 ガス機器の生産を開始、現在地に本社工場移転 1968 年 髙木産業株式会社に社名変更 1973 年 FRP 工場、電子計測機器工場建設 1982 年 情報システム部を設立、ソフトウェア販売開始 1993 年 富士宮工場「1 号棟」完成、稼働 1995 年 XXXXXX USA 設立 海外市場への展開開始 2000 年 高効率給湯器「エコジョーズ」の販売開始経済産業大臣賞技術大賞受賞 2010 年 A.O.Smith とジョイントベンチャー「XXXXXX - A. O. Xxxxx Xxxxxxxx Water Heater Company LLC」を設立。 |
2011 年 パーパス株式会社に社名変更 2012 年 電子関連部品製造工場 「ホークヒルファクトリー」完成、稼働 2013 年 富士宮工場「2 号棟」「テクニカルセンター」(研究棟) 「通称:エコベストファーム」完成、稼働 2020 年 首都圏機能を Hareza 池袋へ移転 2021 年 富士宮工場「3号棟」完成、稼働 |
(2022 年3月 18 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および特徴
パーパスは、1946 年に創業し、1956 年にガス機器の生産を開始して以来、「人や生活、環境にやさしく、お客様に安全、安心、快適を提供する」との基本方針のもと、住宅設備関連機器、産業用機械制御装置や医療機器などの電子制御機器、エネルギー事業者向けシステムなどの情報ソフトウェアの開発・製造・販売を行っている。売上構成は、住宅設備関連機器が7割強、産業用機器が約1割、情報ソフトウェアが1割強である。
生産拠点は、富士市と富士宮市内に3カ所あり、本社・富士工場(富士市)では給湯設備機器やふろがまなどを、エコベストファーム(富士宮市)では高効率給湯器「エコジョーズ」および産業用機械の制御部の生産を行っている。さらに、ホークヒルファクトリー(富士市)では、給湯器や産業用機械の制御部、給湯器用のリモコンなどを生産し、他の2工場へ供給している。
(1)住宅設備関連機器
パーパスでは、住宅設備関連機器として、ガス給湯機器、温水暖房端末、ウォーターサーバーなどの開発・製造・販売を手掛けており、ガス給湯機器が売上の7割強を占める。
ガス給湯機器は大きく、給湯のみを行う「給湯単能器」、給湯機能に加え追いだきもできる「ふろ給湯器」、給湯や追いだきはもちろん暖房もできる「給湯暖房熱源機」、単機能の「ふろがま」に分類される。用途別では、一般家庭用が8割、飲食店や宿泊施設といった業務用が2割である。
パーパスは社内生産比率が約6割と高いのが特徴で、樹脂やチューブ、ハーネスといった一部の部品を除き、熱交換器やガスの調整弁、コントローラーといわれる制御部分など、ガス給湯機器の主要部品はすべて自社生産し、自社工場で完成品に組み立てる。高い社内生産比率が、高度かつ機動的な製品開発を可能にし、高効率給湯器「エコジョーズ」を日本で初めて開発するなど、これまでに数々の画期的な製品を世に送り出してきた。
製品の販売先は、ガス会社、販売代理店、管材店・建材店・工務店、ハウスメーカーなどであるが、業態別では、都市ガス・LP ガスのガス会社が7割以上と最も多い。また、住宅設備関連機器の販売・施工を行うグルーブ会社の㈱パーパスエコテックへも多くを販売する。ガス給湯機器の施工には専門の資格が必要なため、販売先が自社で行う場合と、専門の施工業者へ外注する場合がある。販売した製品のメンテナンスは、家庭用については、初期対応は販売代理店が行い、代理店で対応が難しい場合には、全国6カ所に設置されたパーパスのテクニカルサービスセンターが対応する。なお、業務用については、顧客と保守契約を締結する直接取引が多いことから、パーパスが直 接アフターメンテナンスを行うことが多い。
また、パーパスのガス給湯機器は、海外へも輸出している。2010 年にアメリカの給湯機器のトップサプライヤーである A.O.Smith 社と合弁会社(XXXXXX - A. O. Xxxxx Xxxxxxxx Water Heater Company LLC)を設立し、日本で生産したガス給湯機器を、XXXXXX - A. O. Xxxxx Xxxxxxxx Water Heater Company LLC が、北米を中心に「XXXXXX」ブランドで販売している。アメリカは「貯湯式」の給湯機器が主力で、パーパスがアメリカへ進出した 1995 年当時
は、日本の「瞬間式」給湯機器は認知度が低く、苦戦を強いられた。その後、瞬間式の使い勝手の良さやエネルギー効率の高さが徐々に知られるようになり、現在、アメリカの給湯機器市場における 瞬間式給湯機器のシェアは、15%程度まで増加しているとされる。さらに、瞬間式の給湯機器の市場はほぼ毎年 10%以上の伸び率で成長しており、パーパスおいても、海外売上のほとんどを北米が占め、北米向け輸出は好調に推移している。
そして、ウォーターサーバー事業では、LP ガス事業者など自社で水事業を展開する事業者へ、
「AQUAWING」ブランドで、ディスペンサーを提供している。ディスペンサーはパーパスの富士宮エコベストファームで生産する国内生産品であり、給湯機器の製造で培った電子制御による温度管理技術を活用し、xxから熱湯まで4段階の温度の水を提供することができるほか、未使用時に自動で高温殺菌するなど、高い機能性を特徴とする。パーパスのグループ会社である富士山リファインセンター㈱が、ウォーターサーバーを回収して再生処理を行い、顧客に提供している。
業務用給湯器に関しては、1990 年に初めて業務用給湯器を複数台連結した商品を開発、1台が故障しても他の給湯器が使用できるため、湯切れするリスクを回避するなど、業務用のニーズに対応をした商品を提供する。さらに 2007 年にマルチ給湯器遠隔監視システㇺ(Cloud Remote Monitoring System)を立ち上げ、自社クラウドシステムを利用することで、全国各地のマルチ給湯器の集中監視を可能にしている。近年では、業務用ハイブリッド給湯システムなど、カーボンニュートラルを視野に入れた商品開発も行っている。
(2)電子制御機器
パーパスは、創業者のxxxxxによる「やがてコンピューター制御の時代が来る」との予測のも と、1952 年に電子制御の専門家を大学から招へいしてアナログ計算器を開発し、1959 年には電器部を設立して、電子計測器や自動制御機器の製造販売を開始した。以来、60 年以上にわた り培った技術を活用し、電子制御機器を製造している。
具体的には、プラスチックの射出成形機や半導体製造装置を作動させる基板などを、工作機械メーカーや半導体製造装置メーカーへ提供している。受注生産が基本であり、顧客からの相談を受けて、製品の企画、構想、技術提案を行った上で、製品の仕様を決定し、回路・基板設計を行う。そして、製作した試作品を顧客の製品に装備して作動を確認した上で、資材を調達し、量産して 顧客に提供するほか、環境対応や信頼性試験、調査解析なども行う。実際に、パーパスが提供する電子制御機器は、樹脂成形機の操作パネルや電装基板のチップ実装機の制御部、真空乾燥機などに採用され、半導体、ロボット、成形機、食品業界など、様々な分野で活用されている。
なお、同部門で培った高度な電子制御技術は、住宅設備関連機器など他部門でも活かされて いる。とりわけ、大量の湯量を要求され常に過酷な条件で使用される業務用給湯器においては、複数の給湯器の運転を制御して負荷を均一化するといった高度な運転制御が必要となる。パーパス が、給湯器分野で画期的な製品を次々に世に送り出してきた背景には、xxにわたる電子制御技術の蓄積がある。
(3)産業用機器
パーパスは産業用機器として、真空乾燥機、非常用 LP ガス発電機、生ごみ処理機を生産・販売している。
真空乾燥機は、プラスチックの成形機で使用する樹脂を真空で乾燥させる機械である。真空式以外の乾燥機は、樹脂ペレットを溶かした時に、汚れ成分が金型の表面に付着し、金型のメンテナンス性を悪くするが、真空乾燥機は、金型に汚れの膜がつきにくく、成型の精度がアップするとともに、金型のメンテナンス回数を削減でき、加工精度が高まるとともに生産性の向上にもつながる。また、パーパスの乾燥機は、除湿式に比べ乾燥時間を3分の1に短縮したほか、新開発の電熱ヒーター構造の採用などにより、高い省エネ性能を有するとともに、ランニングコストを削減できる点も支持さ れ、現在、プラスチックの成型を行う多くの製造業者に採用されている。
非常用 LP ガス発電機は、劣化に強い LP ガスを燃料に使用し、いざという時にもボタン一つで簡単に起動できる発電機である。定格出力 9.8kVA/8.0kVA(60Hz/50Hz)で、企業や自治 体、小中学校などで採用されている。
生ごみ処理機は、生ごみを投入して運転ボタンを押すだけで、含水率 80 %の 100kg の生ごみを約 17 時間で乾燥処理できる。給湯器生産で培った温度制御技術を応用し、生ごみを 80℃以上になるまで高温で加熱乾燥することで、約 5 分の 1 に減量できる。また、マイコン制御によ り、乾燥状態に応じて最適な処理を行い、終了すると自動で停止する機能も有する。使い勝手の良さが評価され、現在、全国の保育園や小学校、社員食堂などで使用されている。
(4)情報ソフトウェア
パーパスは、1968 年に静岡県内で初めて IBM システム 360 を採用し、1982 年に情報システム部門を設立して、LP ガス事業者向けの総合管理システムを発売。その後着実に顧客を増やし、現在は、パーパスのシステムを利用する LP ガス事業者は 4,000 社以上に上り、LP ガス事業者向けの管理システムでは業界トップシェアを有する。
その中で、現在主力となっているのが、2009 年に提供を開始した「クラウド AZ タワー」である。これは、同社が 30 年以上にわたり培ってきた LP ガス業務のノウハウを反映させた、クラウド型の管理システムである。LP ガス事業者の、顧客管理、販売管理、検針・配送管理、購買・在庫管理、保安管理といった基幹システムに加えて、コールセンターなどの営業支援、スケジュールやメールなどの業務ポータルの仕組みを備える。さらに、代金決済やポイントサービスなどの Web 会員サービスなど、B to C サービスの拡張も可能にし、規制緩和や自由化で事業者間の競争が激しくなる中、顧客が 総合エネルギー事業者として勝ち抜くための支援ツールとして位置づける。
開発は基本的に内製だが、IT の技術者は慢性的な不足状態にあるため、一部、ベトナムでオフショア開発をしている。販売面は、パーパスの IT ソリューション本部にて、提案、導入、アフターフォローまですべてを担当する。販売先の LP ガス事業者は、小規模から大規模まで多岐にわたるため、顧客の事業規模に合わせ、適切なサービスを組み合わせて提供している。LP ガスの大手事業者や大手販売事業者が、自社のシステムとして利用するほか、販売代理店としてパーパスのシステムを
販売するケースもある。
パーパスの強みは、xxの事業を通じてガス業界の実情に精通していることに加えて、自社開発によって、そこで把握した顧客のニーズを的確にシステムに反映させ、提案できる点にある。現在は、ク ラウド AZ タワーをさらに進化させた「AZ スカイプラットフォーム」の構築を進めている。これは、クラウド AZ タワーの有する基幹系の機能に、様々なシステムやアプリを横断的につなげるもので、配送物 流、決済、コンテンツ、SNS、AI、BCP 支援など、他社の優れたプラットフォームを連携させることで、エネルギー事業者と顧客をつなぐ“場”となることを目指す考えである。
2. 業界の動向
ガス機器の国内出荷額は減少傾向だが輸出は増加
一般社団法人日本ガス石油機器工業会によると、ガス瞬間湯沸器、ガス温水給湯暖房機、ガスふろがまの国内出荷額は、2016 年の 1,686 億円から、2021 年には 1,585 億円へ減少する予測となっている。品目別では、ガス瞬間湯沸器、ガス温水給湯暖房機、ガスふろがまのすべてで減少する予想となっている。国内では、ガス機器は成熟市場であり、定期的に買い替えが発生するなど安定的な需要が見込めるものの、長期的には、人口減少により国内市場は縮小するとみられ る。
一方、ガス瞬間湯沸器の輸出状況を見ると、2010 年の 236 億円から、2020 年の 457 億円へと、輸出金額は 10 年間で倍増している。国別では、アメリカが 2010 年の 123 億円から 2020年の 239 億円と倍増しており、輸出額の半分以上を占める。次いで、オーストラリア 82 億円、メキシコ 62 億円、中国 26 億円が続き、中国は 2010 年比 10 倍以上の伸びを示している。
パーパスでは、将来的に国内市場の縮小が予想される中、好調なアメリカを筆頭に、今後、成長の見込める海外市場の開拓も進めていく方針である。
2050 年カーボンニュートラルに向けて求められる環境対策
2015 年にパリ協定が採択され、2030 年までに、すべての国が二酸化炭素を含む温室効果ガスの削減目標を定めることとなり、世界各国で温暖化対策が積極的に進められている。日本でも、 2020 年 10 月に政府が、2050 年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しており、産業界においても、脱炭素社会の実現に向け温暖化対策の実施が強く求められている。
ガス業界は、主要なエネルギー産業として脱炭素社会の実現に向けて重要な役割を担うこととなる。都市ガス事業者で構成される一般社団法人日本ガス協会は、カーボンニュートラル化を目指す姿勢を明確にすべく、「カーボンニュートラルチャレンジ 2050」を策定している。この中で、ガスのカーボンニュートラル化に向けたシナリオとして、石油や石炭からの燃料転換や機器の高効率化等、需要 側の「徹底した天然ガスシフトと天然ガスの高度利用」、メタネーション※1や水素利用等※2の供給者側の「ガス自体の脱炭素化」、「CCUS(二酸化炭素の地中での貯蓄)や海外貢献等」を掲げている。
また、LP ガスの輸入・生産事業者等によって構成される一般社団法人日本 LP ガス協会は、災害に強く、分散型でサステナブルな LP ガスが、2050 年以降も国民生活を支える存在であり続け るためにも、LP ガスのカーボンニュートラルは不可欠であるとする。そして、プロパネーションやブタネー ション※3、バイオ LP ガス※4といった LP ガスのグリーン化、LP ガス消費機器の低炭素化、モビリティの低炭素化を三位一体で進めることで、2050 年の脱炭素が可能となるとする。そして、LP ガス自体のグリーン化は、日本 LP ガス協会が最優先事項として技術開発から社会実装に向けた取組を重点的に行うが、卸・小売段階での積極的な取組も不可欠な要件としている。
さらに、経済産業省では、2050 年カーボンニュートラルに向けた移行の方向性を示すため、産業別のロードマップをとりまとめている。都市ガス分野では、都市ガスの製造工程での省エネ、天然ガス供給網の整備、天然ガスの高度利用などを挙げるほか、2030~40 年代の社会実装を目指す取組としてメタネーションを挙げている。また、LP ガス分野では、高効率ガス給湯機などの省エネルギーの推進・燃料転換、スマートメーターの普及といった配送合理化を挙げるほか、2030 年代の社会実装を目指す取組として、合成 LP ガスの製造を掲げている。
パーパスは、日本で初めてエコジョーズを世に送出した省エネ型高効率給湯器のパイオニアとし て、数多くの高効率機器を開発・製造するほか、LP ガス事業者向けのシステム提供により、LP ガス事業者の業務効率化にも貢献している。加えて、自社の生産工程で省エネ性能に優れた機器を 導入したり、植樹活動を行うなど、カーボンニュートラルに向けた取組を積極的に進める。今後は、一次エネルギーの変化を見据えた製品開発も視野に、ガス機器メーカーの枠を超えた総合エネルギーメーカーとして、自然エネルギーから電気、ガスまで、全体で省エネ化できる製品を届けることを使命と考え、事業を展開していく考えである。
※1 水素と CO2 から人工的に都市ガスの原料となる合成メタンを生成する技術。設備の大型化や水素供給コスト低減等が課題。
※2 水素を都市ガスのガス管に混入して低炭素化を進める方法。
※3 水素と CO2 から人工的に合成プロパンガスや合成ブタンガスを生成する技術。プロパネーションの触媒は未開発かつ副生成物の抑制等が課題。
※4 植物資源や生ごみなどの有機性廃棄物を原料として製造された LP ガス。技術開発で欧州が先行。
エネルギー自由化への対応
電力分野では、2016 年 4 月に電力の小売が全面自由化され、個人との接点を持つ、都市ガス会社、LP ガス会社、通信会社などが電気事業に参入し、2021 年3月時点の新電力のシェアは 19.5%、小売事業者の登録数は 713 者と、徐々に自由化が進んでいる。
また、都市ガス分野では、2017 年 4 月に都市ガスの小売が全面自由化され、2022 年から大手3社のガス導管事業の法的分離が義務付けられた。都市ガス事業は、調達・輸送・貯蓄面で 参入障壁が高く、電力に比べて参入者は少ない。実際に、現段階での主要な参入者は、火力発電所の燃料として多量の天然ガスを輸入する、東京電力、中部電力など旧一般電気事業者となっている。その他に、LP ガス事業者などがあるが、その多くが旧一般電力会社の販売代理店として参入している。2021 年7月時点のガス小売事業の登録者数は 91 者、総販売量における新規小売の割合は、2021 年 3 月末時点で 14.9%となっている。
このように、電力・ガスの小売の全面自由化により、すでにガス会社が電気を売り、電力会社がガ スを売るといった相互参入が進んでおり、エネルギー事業者は、従来の電力会社、ガス会社という枠組を超え、総合エネルギー事業者へと変化していくことが予想される。すなわち、消費者はこれまで、電気、ガス、水道、通信などを個別に契約して使用してきたが、今後は、総合エネルギー事業者が、消費者にとって最も適切な配分で、これらをワンストップで提供するようになる。そして、その実現に は、エネルギーの使用状況、各種機器の制御などのデータ処理が、さらに重要になる。
パーパスでは、電力自由化に伴い、2015 年 11 月に電力事業に参入するLPガス事業者向けに、「クラウド AZ タワーfor 電力」の提供を開始。これは、広域機関にも連動する「顧客契約スイッチング」、送配電事業者と需要家間で不可欠な「需要家料金計算」まで対応できる電気の管理システムである。さらに、2016 年6月には、グループ会社のパーパススマートパワー㈱が小売電気事業者に登録し、「パーパスでんき」のブランド名で電力の供給を開始した。パーパスでんきは、「クラウド AZ タワーfor 電力」とセットで提供することで、売上・請求・回収などの基本機能や営業ツールなど、電力業務に必要なシステムやサービスを、ワンストップで受けることを可能にした。このようにパーパス は、自由化進展後のエネルギー業界の変化に対応し、顧客の求めるサービスをいち早く提供するほか、情報ソフトウェア部門を有する強みを生かし、総合エネルギー事業者としての進化の歩みを着実に進めている。
3. インパクトの特定および KPI の設定
(1)高度な技術力を基盤としたxx❹・省エネ製品の提供
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>
エネルギー、資源効率・資源安全確保
<SDGs との関連性>
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
9.1 全ての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
<KPI(指標と目標)>
• 機動的かつ高度な製品開発体制を強化するため、2025 年までに、社内生産率を現行水準より 8.4%向上させる。
• 高効率製品・省エネ製品の販売を拡大し、2025 年までに売上全体に占める高効率・省エネ製品の割合を 75%に高める。(高効率給湯器比率 国内出荷分 40% 海外出荷分 65%)
<インパクトの内容>
パーパスは、「自然環境との調和を第一に考え、地球に優しい快適な生活を創造していく」との企業理念を製品開発の基本コンセプトに据え、住宅設備関連機器や電子制御機器などの製造を手掛ける中で培った高度な技術力を生かし、多数の省エネルギー・高効率機器を開発し、業界をけん引している。
日本で最初に「エコジョーズ」を開発
環境負荷低減効果で存在感を示す製品の一つが、潜熱回収型の高効率給湯器「エコジョー ズ」である。かねてより省エネルギー化の必要性を感じていた同社では、1990年代中頃に潜熱回収型の給湯器の開発に着手し、2000年9月に日本で初めて、家庭用給湯暖房機として潜熱回収型の高効率給湯器を発売した。これが、現在「エコジョーズ」として広く普及している給湯器であり、従来捨てられていた排熱を再利用することで、熱エネルギーを95%まで有効活用できる。さらに、ガ
スの使用量を減らすことでCO2排出量を約16%削減できるほか、ガス代を年間約13,600円節約する効果がある※1。この、パーパスが切り開いた潜熱回収型の高効率給湯器市場へは、その後、 他メーカーも続々と参入し、現在ではエコジョーズが国内給湯器市場の約半分を占めるまでに成長し、ガス給湯機器のスタンダードとしての地位を確立している。
さらに、パーパスでは2005年に、日本のメーカーとして初めてアメリカでエコジョーズの販売を開始している。給湯器の種類や使い方は国によって異なり、アメリカではエコジョーズを屋内に設置することが多く、その際は煙突の施工が必要となる。従来の給湯器は排気温度が200度にも達するため、煙突を金属製にする必要があったが、エコジョーズは排気温度を低くできるため、より安価な樹脂製の煙突の設置が可能になる。そこでパーパスでは、熱効率を高めて排熱を抑えるための試作を繰り返 し、ついに、樹脂製煙突を備えたエコジョーズの製品化に成功。その後、着実にアメリカの消費者の 支持を得て、アメリカ市場で現在、エコジョーズが瞬間式給湯器の6割を占めるまでになっている。
パーパスではその他にも、高い技術力を生かし、優れた環境性能を備えた製品を多数生み出している。たとえば、業務用ハイブリッド給湯ステムは、電気を使うヒートポンプ給湯機とガス給湯機器を 備え、最も効率的なエネルギーの使い方を常に学習しながら給湯するシステムである。高効率のヒートポンプ給湯機をメインで稼働させるため、42℃のお湯を一般的な業務用厨房で使用した場合、年間約47%のランニングコストを低減できる。また、利用条件に合った効率の良いエネルギーを利用するため、従来のガス給湯機器に比べ、一次エネルギーの使用量を35%も削減し、大幅な省エネを実現している。
機動的な開発体制
パーパスがこれまでに世に送り出した業界初の製品は実に40品目以上に上る。同社が、給湯器メーカーのパイオニアとして、革新的な製品を世に送りだすことができた背景には、高度な技術力による社内生産率の高さがある。給湯器メーカーは、様々な部品を調達して組み立てるのが一般的だ が、パーパスでは、熱交換器や制御基盤など、給湯器の性能を左右する重要部品を社内生産することで、ブラックボックス化を防ぐとともに、技術力に磨きをかけ、短期間での革新的な製品の開発を 可能にしている。実際、エコジョーズの開発においては、潜熱を回収するための耐食性に優れた二次熱交換器の開発が関門だったことから、設計や製作担当者が何度も試作をし、数えきれないほどの試験と評価を繰り返すなど、全社xxとなって開発に取り組んだ結果、製品化を果たすことができ た。
また、パーパスは、競合する大手給湯器メーカーに比べ企業規模がコンパクト であることに加え、社内の風通しが良く自由闊達に意見を言い合える雰囲気が醸成されている。これにより、社員間の意思疎通や意思決定を迅速に行うとともに、全社員が目標に向かって一致団結して取り組めることも、革新的な製品をスピーディーに世に送り出す一因となっている。
以上のように、パーパスでは、高い社内生産率によって培った高度な技術力によって、高効率・省エネ製品の提供を可能にし、経済性の向上に貢献している。
静岡銀行は、パーパスの高効率・省エネ製品の提供をモニタリングするために、社内生産率等をモニタリングしていく方針である。
<従来品とエコジョーズ製品との違い>
※1
(2)エネルギー事業者へのシステム提供で顧客の業務効❹化に貢献
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>資源効率・資源安全確保
<SDGs との関連性>
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
9.1 全ての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
<KPI(指標と目標)>
• 2025 年までに、LP ガス事業者向けクラウドサービスの提供において、国内 LP ガス利用者の 50%以上が、クラウドサービス上で管理・運用されるようシェアを高め、エネルギー事業者の業務効率化を支援する。
<インパクトの内容>
パーパスは、1982 年から LP ガス事業者向けの管理システムを提供し、現在の導入実績は約 4,000 社と、LP ガス事業者向けのシステム市場において、トップシェアを有する。「クラウド AZ タワ ー」は、同社が 30 年にわたり培ってきた LP ガス業務のノウハウを生かし、ユーザーの業務の標準 化・合理化を図るとともに、従来までの顧客対応機能や販売支援機能の強化に加え、Web サービスを利用し、顧客接点チャネルの拡大など、新しい視点でサービスを提供するシステムである。
クラウド AZ タワーは、顧客管理、販売管理、検針・配送管理、購買・在庫管理、保安管理といった基幹システムに加え、コールセンター業務などの営業支援、スケジュール管理や日報などの業務支援システム、さらに B to C の Web 会員サービスを連携させる機能を有する。
たとえば、基幹システムの中の配送管理システムは、xxの LP ガス業界の経験を生かした独自のアルゴリズムの運用により、配送効率の向上、配送コストの削減を可能にする。また、配送担当者ごとに、配送件数や持ち帰り残ガス量を分析・評価したり、配送担当者や地区、販売店別に、配 送に関するコスト項目を多角的に分析し、問題点や改善の発見につなげることもできる。さらに、担当者の担当地区の変更、配送ルートの見直し等により、配送効率がどのように変化するかシミュレーションを行うことができ、それらの結果を踏まえ、作業の平準化や効率化を図ることができる。
また、保安管理システムは、点検業務が計画通り行われているか、未完了の業務は無いかなど、保安・点検業務の進捗状況を確認することができ、集計データは、月次で、支店・担当者ごとに抽出し、必要な情報を素早く取り出すことができる。また、保安確保機器の交換予定や作業結果について、年月ごとに必要な作業の件数を表示し、数年先までの作業量を簡単に確認することもでき る。
業務支援システムにおいては、たとえば「コールセンター業務システム」は、電話の着信と同時に画面上に顧客情報を表示することで、迅速な対応を可能にするほか、受付専用画面で作業担当者の空き状況や作業量を確認でき、仕事を効率的に配分することができる。また、「CRM 日報」は、訪問履歴や対応履歴を日報形式で収集し、顧客のニーズや関心の高い項目について、頻出するフレーズやポジティブ・ネガティブ要素を過去に遡って洗い出すことで、課題や提案のヒントとして利用することができる。
また、B to C のサービスとして、消費者向けの Web 会員サービスも提供している。これは、消費者がスマートフォンやパソコンで専用ページにログインすれば、請求書の確認やポイントの交換などを行えるシステムであり、毎月の請求書発行の人件費や設備等のコストを大幅に削減できるほか、ポイント制度による顧客の囲い込みや定着化に繋げることができる。
さらに、クラウド AZ タワーは、LP ガス業界で導入が進む LPWA(Low Power Wide Area)にも対応している。LPWA は、低消費電力ながら広範囲での通信が可能な無線通信技術であり、 LP ガス機器に設置することでガスの検針の自動化が可能になり、検針員や配送員の不足に悩む LP ガス業界において、近年導入が進んでいる技術である。パーパスのクラウド AZ タワーは、LPWAにいち早く対応し、通信事業者などが LPWA によって取得したデータを同社のデータセンターで集約し、顧客であるガス事業者ごとに自動更新し提供することができる。また、検針データを毎日取得することで、LP ガスの消費者ごとの残ガス量が指定の数値を下回った場合に、配送指示伝票を発行することで、最適なタイミングでの LP ガス容器の交換を可能にしている。LPWA は、これまで人が行っていた検針の自動化、ガスボンベの配送業務の効率化、キャッシュレス決済への移行など、LP ガス事業者の大幅な業務効率化を可能にする画期的な技術であり、パーパスにおいても、クラウド AZ タワーにおける LPWA への対応をさらに拡充していく方針である。
そして、顧客が、システムをオンプレミス※1からクラウド AZ タワーへ移行することで、電力使用量を削減できるという利点もある。同社のデータセンターは、ソーラー発電、壁面緑化、LED 照明、雨水利用などの省電力対策を実施することで、PUE 値※2を 1.4 以下に抑えており、オンプレミスに比べ格段に電力使用効率が優れているほか、データセンターであればバックアップもxx管理される。そのため、顧客は、クラウド AZ タワーを利用することで、電力使用量の削減と業務効率化が同時に可能になるのである。
このように、パーパスはクラウド AZ タワーに代表される各種システムの提供により、LP ガス事業者などエネルギー事業者の業務効率化やサービスの高付加価値化に多大な貢献をしている。
静岡銀行は、パーパスのLPガス事業者向けシステムの提供の継続を確認するとともに、国内LP
ガス利用者のクラウドサービスの利用状況をモニタリングしていく方針である。
※1 サーバーやソフトウェア、ネットワーク機器などを、使用者の施設内に設置して運用するシステムの利用形態。
※2 Power Usage Effectiveness。データセンターやサーバー室のエネルギー効率を示す指標。PUE1.0 に近いほど効率が高いとされる。
(3)品質管理の徹底
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>健康と衛生
<SDGs との関連性>
11.1 2030 年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
• ISO9001 に即した品質マネジメントシステムの運用を通じて、引き続き、全社xxとなって、適切な品質管理を実施し、顧客満足度の向上および優れたサービスを提供していく。
• 各部門長は経営方針、品質強化方針を受けて「品質年度計画」を作成し、目標を決め活動する。活動内容及び進捗状況を四半期毎に品質管理責任者に報告し、必要に応じて目標の見直し変更を行う。
• 設計、生産、サービスすべてのフェーズで品質意識を高め、品質向上に取り組むことにより、 2030 年までに新品故障率「0」を掲げる。
<インパクトの内容>
パーパスは、全工場や流通センターなどを対象に、1996 年に ISO9001、JIS Q9001 の認証を取得して以来、2000 年版、2008 年版、2015 年版と認証を継続し、15 年以上にわたって品質マネジメントシステムの枠組みを活用し、全社xxとなって品質管理に取り組んでいる。
具体的には、品質方針として「顧客が満足する製品をつくる」、「不適合製品を市場に出さない」の2点を掲げ、各部の事務所や掲示板などに掲示するとともに、教育訓練や内部監査などを通じ て、全社員へ周知徹底している。「顧客が満足する製品をつくる」とは、地球規模で環境問題が深刻化する中で、人、環境、製品が調和した世界づくりへの挑戦を続けることを意味し、「不適合製品を市場に出さない」とは、品質不良ゼロを基本に、不良は必ず発生源まで究明し、その対策を実施して、常に品質の良い製品をつくりだし、不良品は絶対に出荷しないことを目標にしている。
そして、品質方針に沿う形で、年度ごとの目標として「年度品質強化方針」を設定し、これを基に各部署が「品質年度計画」を策定して実行している。2021 年度は、「信頼回復のためのパーパス品質の構築」を品質強化方針に定め、「一人一人が何を変えるべきか考え実行しよう」、「真の原 因を追究して根絶しよう」を、具体的な強化項目として掲げている。
実際に、各種機器の基板の組み立てを行う基板組立課では、2021 年度の品質年度計画として、検査工程内の不良低減、市場クレームの削減などの課題を設定し、それぞれの課題に対し、四半期ごとの数値目標、達成の手段、必要な資源、結果の評価方法までを定めている。具体的に は、作業台を増設したり作業場のレイアウトを変更するなど、全体で 17 にわたる改善項目を推進している。各部署では、四半期ごとに所属長が進捗状況を確認するだけでなく、品質管理責任者が必ず進捗をチェックしてコメントする体制を構築し、継続的な改善に取り組んでいる。
さらに、製品の品質向上を目的として、パーパスが独自に行っている取組として、毎日の「品質会 議」、毎月の「品質保証会議」の開催がある。同社では、製品に関するクレームを受け付けた場合、迅速に発生原因を調査し、2週間以内に指摘事項の解決方法を品質不具合問題提議者に提示して問題を解決するよう、社内ルールに定めている。また、2週間以内に完全に解決するのが難しい場合には、発生原因の調査と解決策の検討状況を、品質不具合問題提議者に必ず報告するようにしている。そのための体制として、技術本部、テクニカルサービス部、品質本部、製造本部の担当者が出席する「品質会議」を毎日開催し、寄せられたクレームの原因を究明するとともに、解決策を実施し、再発防止に向けた取組を日々行っている。さらに、品質会議だけでは解決が難しい課題については、全部門の品質責任者が参加する「品質保証会議」を毎月開催し、抜本的な解決策を討議し実行することで、全社xxとなって製品の品質向上に取り組んでいる。
このように、パーパスでは、日々の業務活動において、品質マネジメントシステムを適切に運用するとともに、品質会議・品質保証会議の開催を通じて品質改善を図り、顧客の期待を満足させる高品質な製品やサービスを継続的に提供し、いつでも安心してお湯を使える快適な生活基盤を提供することで、健康と衛生に貢献している。
静岡銀行は、パーパスの年度品質強化方針や品質年度計画の策定や実施によって、品質管理を継続して実行していることを確認するとともに、新品故障率等をモニタリングしていく方針である。
(4)製品の安全・安心の確保
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>健康と衛生、エネルギー
<SDGs との関連性>
11.1 2030 年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
• 2025 年までに高齢者施設(介護老人福祉など)市場の 1%に相当する 85,800 戸の施設へ当社の商材を普及させる。
<インパクトの内容>
パーパスでは、自社製品を利用者が安全・安心して使えるよう、様々な対策を講じている。
自己診断機能、自己排気リサイクル検知機能など安全装置の装備
パーパスでは、家庭用の給湯器すべてに、自己診断機能、自己排気リサイクル検知機能を標準搭載している。自己診断機能とは、燃焼部の炎の状態をセンサーで監視し、異常燃焼を検知した際には、送風機の風量をあげるなど改善操作を実施するものである。また、自己排気リサイクル検知機能とは、燃焼部の炎の状態をセンサーで監視し、危険な状態になる前に給湯器の運転を停止させる機能である。これは、機器の設置条件などにより排気の処理が不完全な場合、機器本体が排出する排気ガスを給湯器が吸い込むことで、燃焼状態が悪化することがあるためである。給湯器はxx使用していると、ホコリ等の侵入により燃焼性能が悪化する可能性があるが、自己診断機能を付けることで、燃焼性能の低下を改善し、可能な限り長く安全に使用できるようにしている。また、家の改修や外壁塗装の際、給湯器の排気部が覆われた状態で使用した場合、燃焼異常を素早く察知して機器を停止させることができる。
さらに、屋内設置型の給湯器は、給湯器排気ガス中の CO 濃度を測定するセンサーを付けて機器の燃焼状態を常時監視し、一定以上の濃度になる前に燃焼を停止する機能を搭載している。ガス機器メーカーでは、70kW以下の業務用の屋内式排気筒付給湯器については、CO センサーが標準装備となっているが、パーパスでは安全性を重視し、70kW超の機器にも搭載している。
また、パーパスは東京ガス㈱と共同で、IoT・デジタル技術を活用し、各種センサーの検知によっ て、近年増加傾向にあるヒートショックなどの入浴事故の早期発見を促す「安心入浴サポート機能」
を搭載した給湯器リモコンを開発している。これは、東京ガス㈱と九州工業大学が行った共同研究 をもとに新たに開発した人感センサーと、ドアセンサー、水位センサーを組み合わせて、浴室への入退室や入浴者の状況を検知するシステムである。各種センサーが入浴者の動きを一定時間検知できない場合には、入浴者の安全を確認するため浴室リモコンからチャイムと音声による声掛けを行うとともに、声掛けに反応がない場合は、台所リモコンへ異常を知らせる機能を搭載することで、浴室事故の防止につなげたい考えである。
あんしん点検などの点検制度
経済産業省では「長期使用製品安全点検制度」として、所有者自身による保守が難しい設置型の製品で、経年劣化によって火災や死亡事故などの重大事故を起こすおそれがある製品(特定保守製品)について、メーカーなどが製品を購入した所有者に点検時期を知らせ、点検を受けることで事故を防止する制度を設けている。パーパスでは、石油給湯器・石油ふろがまなどの特定保守製品について、法令の定めどおり、点検時期の到来時に法定点検を実施している。
また、法定点検の対象以外の製品についても、設計上の標準使用期間である家庭用 10 年、業務用 3 年を超えて継続使用する場合は、「あんしん点検」をするよう勧めている。パーパスでは製品販売時に「所有者票」によって所有者情報を登録し、点検時期が近付くと、所有者へ点検の案内を行っている。
さらに、業務用給湯器では、一刻でもお湯が出なくなってしまうと、商売に多大な影響が出ることから、製品の保証期間である2年目以降、使用頻度に合わせて年1~2回の点検を行う「業務用給湯器保守点検制度」を設け、利用者の営業リスクの低減を図っている。
テクニカルサービスセンターによる万全のサポート体制
そして、同社製品のサポートを担うのが、テクニカルサービス部である。パーパスでは、首都圏、仙 台、名古屋、大阪、福岡など全国6カ所にテクニカルサービスセンターを設置するとともに、センターエリア内の都道府県ごとにサービス代行店を設けている。これらのサービス代行店では、屋号にパーパスの名称を使用するほか、パーパス本社で研修を受けたサービスマンを配置し、全国各地でメンテナンスが行える体制を敷いている。サービスマンは、パーパスのテクニカルサービスセンターでの OJT に加えて、パーパス本社のプロフィットスクールにおいて、各種給湯器の構造に関する講義や、実機を使った分解・組立の実技など、約4週間の研修を受け、サービスマンに必要な技術を習得する。その上 で、パーパスの社名入りの制服を着用し、パーパスの証明書を常時携帯することで、パーパスのサービスマンとして顧客の信頼を得られるようにしている。
また、業務用給湯器の「マルチ給湯器遠隔監視システム」(参照 次頁構成図)は、インターネットを介して導入先の給湯システムの運転状態を 24 時間遠隔監視し、故障発生時にはテクニカルサービスセンターなどへ自動通報し、迅速に修理対応できるシステムである。同システムは、テクニカルサービスセンターが出動前にあらかじめ故障内容を把握して修理内容を予測できるため、修理時間を短縮できるメリットもある。
また、パーパスでは、顧客から不具合等の連絡を受けた場合には、原則午前中の連絡は当日中に、午後の連絡は当日または翌日に、担当者が現地へ出向くことができる体制を整えている。これを可能にしたのが、同社が独自に開発した顧客管理システム「パーパスメンテナンスシステムエボリュー ション」である。全国のテクニカルサービスセンターやサービス代行店に同システムを導入し、サービスマンは同システムと連携した端末を常時携帯する。そして、顧客から不具合等の連絡を受け、オペレーターが受電内容を同システムに入力すると、該当する全国のテクニカルサービスセンターまたはサービ ス代行店にメールで通知され、担当者は原則として受電後 30 分以内に顧客に連絡し、現状把握や訪問日程の調整等を行うことができるのである。
パーパスでは、様々な安全装置を装備することで製品の安全性を高めているほか、製品種類に 応じて各種保守・点検サービスを提供している。さらに、確かな技術を習得したサービスマンを全国に配置し万全のサービス網を敷くとともに、独自開発のシステムを導入して迅速な対応を可能にすることで、パーパスの顧客がいつでも安心して製品を使えるよう、保全体制を構築している。
静岡銀行は、パーパスの、製品の安全・安心確保のための取組の継続を確認するととともに、高齢者施設への当社の商材の普及状況をモニタリングしていく方針である。
マルチ給湯器遠隔監視システム サービス構成図
(5)従業員の安全衛生管理の徹底
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>雇用、健康と衛生
<SDGs との関連性>
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)>
• 労働災害の発生件数ゼロを目指す。
<インパクトの内容>
パーパスでは、労働安全衛生法に沿った適切な安全衛生管理を徹底している。本社・富士工 場、エコベストファーム、ホークヒルファクトリーの各工場において、安全衛生委員会規定に基づき、統括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者を選任し、毎月、産業医同席のもとに安全衛生委員会を開催するとともに、各部署の巡視や安全教育を行い、安全・衛生環境の整備に取り組んでいる。
たとえば、安全衛生委員による巡回では、工場のエリア別に複数の班を組織し、毎月、班ごとに 工場内を巡回し、避難誘導灯の電球の交換、脚立のチェーンでの固定、カゴの積み段数の低減といった改善事項を指摘し、関連部署が即座に対策を講じるようにしている。さらに、「危険予知活 動」として、各班が作業上の危険なポイントを抽出して対策を施すほか、メンタルヘルス、長時間労働の状況などについても、毎月の安全衛生委員会において漏れなく確認している。そして、各工場の安全衛生委員会の討議内容は、メール配信と現場への掲示によって全従業員に共有し、常にx x衛生に関する意識の醸成を図っている。
また、従業員の健康保持については、健康診断を年1回受診するようにし、未受診者は必ず実施するよう通知するとともに、40 歳以上の社員には会社独自の健診補助金を付与し、人間ドック・脳ドッグの受診を奨励するなど、自己健康管理ができるよう体制を整えている。さらに、静岡県東部機械工業健康保険組合が提供する加入者向け Web サービス「Pep Up(ペップアップ)」の利用を従業員に奨励している。これは、スマートフォンと連動して毎日の体重、歩数などを管理し、自身の健康年齢を測定できるほか、Web 上でいつでも、最大 10 年分の健康診断結果や毎月の医療 費の実績などを確認できるサービスである。また、健康記事の閲覧や健康づくりイベントへの参加によってポイントが貯まるポイントサービスも備えており、パーパスでは、同サービスの利用を通じた従業員の健康増進を支援している。さらに、2016 年から全工場で構内全面禁煙を実施しているほか、毎年4月に子供も参加できるマラソン大会を開催するなど、従業員の健康保持や増進に向けた様々
な活動を実施している。
メンタルヘルスに関しても、全社員に対しストレスチェックを実施し、高ストレスによる不調を未然に把握し、より働きやすく健康な職場への改善活動を行っている。また、ハラスメント相談窓口を設け、いつでも社員が不安を相談できる就業環境を整備することで、従業員の体だけではなく、心の健康も保持できるようにしている。
こうした取組の結果、パーパスでは、従業員が健康で安心して働ける職場環境が整備されてい る。静岡銀行は、安全衛生管理に関する取組の継続を確認するととともに、労働災害の発生状況をモニタリングしていく方針である。
(6)防災対策の実施
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>エネルギー、健康と衛生
<SDGs との関連性>
11.5 2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
• 必要に応じて災害対策規定の見直しを行うとともに、災害対策規定にもとづき、防災訓練の実施等の防災対策を継続して実施していく。
<インパクトの内容>
近年、全国各地で大規模な洪水など自然災害が多発しているほか、静岡県では将来的に南海トラフ地震の発生も予想されることから、パーパスにおいても、有事に備えて様々な対策を講じてい る。
非常用LPガス発電機の製造・販売
第一に、非常用LPガス発電機の製造・販売である。これは、備蓄が容易で劣化の少ないLPガスを燃料に使用し、災害などで電力が遮断された場合に、発電機を起動し、電力を供給することができる機械である。電力供給が停止した際、運転ボタンを押すだけの簡単な操作で電力供給を開始できるほか、自動切替機能を設定しておけば、電源が遮断されることがないため、サーバーや放送設備などへの致命的な中断リスクを回避できる。この非常用LPガス発電機は、パーパスの全工場に設置しているほか、全国の小中学校や自治体などの公共機関を始め大手企業の工場など、40カ所以上で導入されている。
自社の防災対策
パーパスでは、災害対策の一つとして最高レベルの安全性を備えたデータセンターと業務提携している。同社のITソリューション部門は、全国のLPガス事業者に管理システムを提供しており、社会の重要なライフラインを支えていることから、高い安全性が求められる。データセンターは、都心から1時間以内、震災時も徒歩圏内の安全な場所に立地し、最新の免震システムを採用し、予想最大損失率※10.2%と国内最高レベルを有する。電力の供給が止まった際も、自家発電で72時間対応可能なほか、燃料供給元との災害時優先契約を締結し、電力供給の中断リスクを最小限に抑え
ている。さらに、最新の排熱コントロール技術を導入し、停電時に冷却システムが稼働することで、データを保護する機能も備える。また、西日本の別のデータセンターで毎日データのバックアップを取得し、万一の事態を想定し、データの復旧機能も装備している。
さらに、生産拠点を、富士市内2カ所、富士宮市内1カ所の3工場に分散させ、被災時のリスク低減を図っている。本社・富士工場(富士市)は海抜が低いため、南海トラフ発生時の津波に備え、2012年に標高の高い富士市鷹岡にホークヒルファクトリーを稼働させている。これにより、ホークヒルファクトリーへ自社のサーバーを移管するとともに、従来本社・富士工場で生産していた給湯器や産業用機械の制御部、浴室や台所のリモコンなどの電子制御機器の生産を移管し、ホークヒルファクトリーから本社・富士工場とエコベストファームへ部品を供給する体制を敷いている。
そして、2013年に稼働したエコベストファームは、地震発生時の揺れを制御する制振装置を設 置するほか、自然災害や緊急事態の発生時に飲料製品を無償で提供できる災害対応自動販売機を構内に5台以上設置している。さらに、エコベストファームと本社・富士工場には社員食堂を設置していることから、非常時に3日分の炊き出しができる食糧を常時備蓄しているほか、パーパスの全拠点において、帰宅困難者の人数を算定し、2日分の食料と水を備蓄して有事に備えている。さらに、首都圏、仙台、大阪、福岡など全国6カ所に展開するテクニカルサービスセンターは、製 品の修理対応など顧客をサポートする重要な拠点であることから、どこかのセンターが被災してインフ ラが機能しなくなった場合に、他の拠点が代替機能を果たせるような体制を構築している。具体的に
は、品質管理の年度計画に盛り込んで定期的に訓練を行っており、実際の地震発生時に、他拠点で代替運用が可能であることも実証済みである。
そして、ソフト面の災害対策としては、環境マネジメントシステムの緊急事態対応規定に則って、年1回自主防災訓練を実施している。防災訓練では、消火班、救出救護班、通信連絡班などの担当を決め、各班が主体となり、様々な訓練を行っている。具体的には、消火班は、工場内の消 火器や消防ポンプといった消火設備の動かし方を学び、火災発生時にすぐに初期消火ができるよう訓練するほか、救出救護班は、AEDの使い方をはじめ、救急車が来るまでの負傷者の応急処置ができるよう訓練を行い、災害発生時に対応できるよう備えている。
静岡銀行は、パーパスが防災対策を継続して実施していることを確認するとともに、防災訓練の実施状況等をモニタリングしていく方針である。
※1 地震により損害が発生した際、元の資産価額に対して元の状態に戻すために必要な費用の割合を数値で示し、評価するための指標。数値が低いほど、地震による被害が少ないという評価。
(7)働きやすい就労環境の整備
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性> 雇用、教育、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
4.4 2030 年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。
<KPI(指標と目標)>
• アクシスプロフィットスクールを始め、若手、中堅、管理職などを対象とした各種研修を開催し、社員の能力向上を支援する。
• 2030 年までに、外国人技能実習生を受け入れる。
• 地域の特別支援学校などと連携し、引き続き、法定雇用率以上の割合で障がい者を雇用する。
<インパクトの内容>
パーパスは、2020年度からの6カ年計画「XT6 パーパスクロスターゲット6」に、「グループ・部署間の絆の強化」と「仕事と家庭の両立」を掲げ、従業員が生き生きとやりがいを持って、自己成長を感じながら働ける環境の整備に取り組んでいる。
その象徴的な存在が、2020年に設置した「アクシスプロフィットスクール」である。本社・富士工場内に設置した同スクールは、主に営業部員が技術・技能面でのスキルアップを図るための研修所で、製造機器や試験機、測定機器等を備えることで、ガス給湯機器の基本的な構造を学んだり、製造や検査工程の実務トレーニングを積む場として、年間約15回の講座や研修が実施されている。同 社では、このほかにも、入社5年目までの社員を対象とした全員参加型の「あしたか研修会」や、6年目以降の社員を対象とした海外研修、管理職向け勉強会など、業務能力の向上と部署間の交流促進を目的とした研修制度を充実させている。
パーパスでは、ダイバーシティ(雇用の多様化)にxxにわたって積極的に取り組んでおり、年 齢、性別、障がいの有無等の区別なく、能力のある人材を雇用・登用し、同一労働同一賃金によって処遇することで優秀な人材の確保に努めている。たとえば、パートタイマーやグループ派遣社員の正社員登用制度を設けているほか、子育て中の社員が働きやすいよう、社員の子供への入学お祝
い金制度や長期的な育児休暇期間を設定したり、時短勤務制度も整備している。さらに、女性が工場で作業をしやすいように工程や設備配置等を見直すことで、身体的な負担の軽減に努めている。また、ジェンダーレスも推進しており、それまで男女で青とピンクに分けていた作業着を、男女の区別のない統一色に変更した。
また、定年後も継続して就業したいというニーズに対応するため、退職した社員の再雇用も積極的に進めている。2011年には、人材派遣会社としてタカギグッドウェイ㈱を設立し、多くのOB人材がグループ全体に派遣され、貴重な労働力として業務を支えている。
さらに、障がい者雇用に関しては、現在、法定雇用率を超える18名を雇用している。特別支援学校の生徒を現場実習生として受け入れ、適性を見極めた上で採用し、組立作業などの部署に 配属している。原則として毎年採用を続けており、2016年には静岡県より知事褒章を授与された。
そして、従業員の就業に対する価値観が多様化する中、パーパスでは働き方改革を推進しているほか、社員の健康やワーク・ライフ・バランスの実現にも注力している。2013 年に竣工したエコベストファームは、富士山の眺望を最大限に活用し、休憩スペースに設けたウッドデッキテラスや社員食 堂から、xxな富士山を眺めながら業務の疲れを癒すことができる。また、2020 年には、首都圏の拠点を、Hareza 池袋内のオフィス棟「HarezaTower」に集約させ、フリーアドレスを導入することで、部内のコミュニケーションの向上や業務に応じた柔軟な作業環境を目指すとともに、テレワークなど新型コロナウイルス感染症への対応もしやすい環境を整えている。
このように、パーパスは、地域の雇用の受け皿として、多様な人材を属性による区別なく受け入れるとともに、そうした人材が自己成長を図り、職業人としての能力を身に付けられる人材育成制度と研修の場を有している。加えて、価値観や生活様式の異なる人材が健康的にかつ安心して働ける職場環境を整備している。
静岡銀行は、パーパスが今後も、地域に雇用の場を創出し、従業員が自信を持って生き生きと働ける環境を維持していくことを確認するために、同社がKPIとして設定した各種研修の開催状況等をモニタリングしていく方針である。
(8)エネルギーや天然資源の使用量削減
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>
エネルギー、大気、水、資源効率・資源安全確保、気候変動
<SDGs との関連性>
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
• 省エネ設備機器などの導入により、2030 年までに、本社・富士工場とエコベストファームにおいて、エネルギーCO2 換算量を年平均1%以上(2021 年基準)削減する。
(2023 年 5%削減・2025 年 10%削減・2027 年 15%削減)
<インパクトの内容>
パーパスが掲げる「スマイルエコモーション」は、自然環境との調和を第一に考え、地球に優しい快適な生活を創造していく、という企業理念であり、製品開発の基本コンセプトである。温暖化防止、大気汚染防止、省エネ、リサイクルなど地球規模の環境問題がクローズアップされる時代にあって、パーパスは、xx培ってきた技術力をベースに、人、環境、製品が調和した世界づくりへの挑戦を続けることを目指している。
ISO14001 の認証取得による環境マネジメントシステムの運用
パーパスでは、取引先やステークホルダーからの要請もあり、全工場や流通センターなどを対象に、 2006 年に ISO14001、JIS Q14001 を取得。以降も、2018 年に 2015 年版を認証取得 し、15 年以上にわたって環境保全活動に取り組んでいる。環境基本方針としては、「省資源、省エネルギー、リサイクル等を考慮した製品及び サービスの提供」、「汚染防止、資源やエネルギーの有効利用、及び廃棄物の削減」、 「環境マネジメントシステムの構築運用」などを定め、ホームページ上で公開している(参照 パーパスの環境基本方針)。
そして、この環境方針に基づき、毎年度「環境強化方針」を設定しており、2021 年度の環境強化方針に「環境に関する法令、社内ルールに対する意識を高めよう」を定めるとともに、強化項目として、「廃棄物の廃棄・分別ルールを守ろう」、「地球環境や作業環境に有害な物質について認識し、活動しよう」の2点を掲げている。さらに、環境強化方針を基に、各部署が「環境年度計画」を策定し、計画達成に向けて取り組んでいる。たとえば、ホークヒルファクトリーでは、2021 年度環境
実行計画として、「環境負荷の高い第 2 種有機溶剤使用量の4%削減」を目標に設定し、第1四半期に使用量の調査を、第2四半期に作業の見直しと改善を行うといった具体的な計画を立 て、四半期ごとに所属長が進捗状況を確認するとともに、環境管理責任者が進捗をチェックすることで、目標達成に向け取り組んでいる。
このようにパーパスでは、ISO14001 の枠組を活用し、組織的に環境マネジメントシステムを定着させることで、継続的な発展に不可欠な環境との共生を具現化すべく、全社xxとなって取り組んでいる。
<パーパスの環境基本方針>
1. 環境への影響を低減する為に、省資源、省エネルギー、リサイクル等を考慮した製品及び サービスを提供いたします。生産活動に関わる設備の開発、稼動にあたっても、 環境への影響を把握し、汚染防止、資源やエネルギーの有効利用、及び廃棄物の削減等に努めます。
2. 事業活動と調和した環境マネジメントシステムを構築し、運用して、 適宜見直しをし、継続的な改善に努めます。
3. 環境関連法規及び当社が同意するその他の順守義務を守り、 環境汚染の予防に努めます。
4. 環境保全する為の目的、目標を技術的、経済的に可能な範囲で設定し、 その活動進捗を確認することにより、活動と目的、目標の見直しをし、 環境保全活動に取り組みます。
5. 当社、及び当社のために働く全ての人に、環境方針を周知する為、 これを文書化し、サイトに掲示すると共に、環境教育を行い、 一人ひとりが自ら責任を持って環境保全活動ができる様にいたします。
6. 環境方針は、ホームページ等に掲載し、利害関係者や一般にも公開いたします。
エネルギー使用量、温室効果ガス排出量の削減
パーパスは、エネルギーの使用の合理化等に関する法律※1(以下、省エネ法)に定める特定事業者の指定を受けているほか、本社・富士工場とエコベストファームが、エネルギー管理指定工場等の指定を受けている。そのため、パーパスは特定事業者として、エネルギー管理統括者とエネルギー管理企画推進者を選任し、毎年度、定期報告書や中長期計画書を国に提出しているほか、本社・富士工場、エコベストファームは、エネルギー管理指定工場等として、エネルギー管理員を選任し、毎年度定期報告書を提出している。
定期報告書には、エネルギー使用量やエネルギー消費原単位、エネルギーを消費する設備の状況、事業者のエネルギー使用に伴って発生する二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量などを記載することとなっており、現在のパーパスのエネルギー使用量は、原油換算で約 5,000kl、エネルギーの使用に伴って発生する二酸化炭素の温室効果ガス算定排出量は、約 9,000t-CO2 と算定されている。
省エネ法は特定事業者に対し、年平均1%以上のエネルギー消費原単位または電気需要平準化原単位の低減の目標を課しており、パーパスにおいても、独自に原単位を決めて、会社全体でエネルギー使用量1%以上の削減を目標に掲げ、様々な方策を実施している。
パーパスは今後も、2050 年のカーボンニュートラルを見据え、全事業所におけるエネルギーの使用量と温室効果ガスの削減に向けた具体的施策を検討していく方針である。
※1 国は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」において、事業者全体のエネルギー使用量(原油換算値)が合計して 1,500kl/年度以上である場合は、そのエネルギー使用 量を国に届け出て、特定事業者の指定を受ける必要があると定めている。また、エネルギー管理指定工場等に指定された工場・事業場等については、個別に定期報告等の義務が課せられる。
環境共存型の生産拠点としてエコベストファームを開設
パーパスでは、2013 年に、従来の富士宮工場敷地内に、新工場と研究開発棟を備えた「エコベストファーム」を稼働している。エコベストファームは、富士山麓の自然豊かな周辺環境と調和するよう、グリーンの外観色を採用するとともに、省エネルギー・環境負荷の少ない資材を使用するなど、最大限環境に配慮した工場となっている。
具体的には、2 重ガラスのダブルスキンを採用して開口部の断熱効果を高めるとともに、自然通 風やライトシェルフ(日差しの遮へいと自然光の活用を両立した庇)を採用するほか、屋根にxxx発電システムを設置して年間 15 万kWh を発電するなど、自然エネルギーを最大限活用している。また、従来は、溶接時の冷却に使用した地下水をそのまま排水していたが、新規にチラー(冷 却装置)を導入して水を再利用することで、地下水の有効活用につなげている。また、LED 照明を採用し、高効率空調機を導入してエネルギーの使用量を削減しているほか、ビル・エネルギー管理システム(BEMS)を導入し、エネルギー消費量を計測し、効率的に制御・管理している。
こうした取組により、エコベストファームは、静岡県独自のフォーマットを追加した建築環境総合性能評価システム「CASBEE 静岡」において、A ランク認証を取得しており、世界文化遺産である富士山麓に立地するにふさわしい、環境共存型の生産拠点として稼働している。
設備更新時の高効率・省エネ機器の積極導入
パーパスでは、新規に施設や設備を導入する際には、自社で作成した「施設・設備アセスメントチェックリスト」に基づいて、環境に配慮した適切な設備導入や施工をするよう取り決めている。たとえ ば、「環境面への配慮がなされているか」、「従来の同等品と比較して省エネ・省資源への配慮がなされているか」、「大気放出や排水や廃棄物として出る物質とその処理方法が明確化されているか」といった 12 にわたる項目をチェックした上で、高効率機器を積極的に採用するようにしている。
また、既存の設備を解体する際には、「廃棄物が発生する場合、処理方法は明確化されているか」、「工事場所周辺への配慮がなされているか」などもチェックするほか、施工時には、工事場周辺への配慮はもちろん、建物建材・照明機器・空調設備は省エネに配慮しているかといった点までチェ
ックした上で、工事を行っている。実際に、昨年、ある工場でエアコンプレッサーを更新する必要が生じた際に、施設・設備アセスメントチェックリストに基づいて検討した結果、省電力モーターを使ったコンプレッサーを選定・導入することとなり、今後も、全工場のエアコンプレッサーを段階的に更新していく予定である。
さらに、将来的には、各工場に設置している変電設備の更新による消費電力の削減も計画している。現在の変電設備は旧式で、最新式に比べて電気の使用効率が劣る。そのため、まずは、全工場の生産設備ごとに電力使用量を計測するシステムを導入し、電力の使用状況を見える化した上で、最新のインバーターを導入して電圧と周波数をきめ細かに制御することで、工場全体として消費電力を削減し、効率的な生産体制を構築していく考えである。
国内外での植樹活動
パーパスは、一般財団法人ベターリビングが展開する環境保全活動「ブルー&グリーンプロジェクト」へ参加する形で、2006 年から 2014 年までに、ベトナムで植樹活動を行った。これは、CO2 削減に有効な高効率ガス給湯・暖房機の普及に合わせて、「ガスで森をつくる」をキャッチフレーズに、 2006 年に植樹活動を開始したもので、8年間で 390 万本の植樹を実施し、ベトナム政府から感謝状をもらっている。
また、国内でも、1971 年から、富士市、富士宮市、沼津市など県東部地域において、国道沿いや海岸などへ約3万本の桜の植樹活動を行い、地域の環境改善に貢献している。さらに、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前xx市のxxxxの植樹活動も支援しており、 2015 年からの試験植樹を経て、2017 年度の市民主催の本植樹活動では、パーパスの社員が現地で植樹活動に参加するなど、植樹による復興支援にも取り組んでいる。
このように、パーパスは、全社をあげてエネルギー使用量の削減などに積極的に取り組むことで、環境負荷低減に寄与している。静岡銀行は、パーパスの自社内の環境負荷低減への寄与度を定量的に確認するために、エネルギーCO2 換算量の削減状況をモニタリングしていく方針である。
(9)廃棄物の適正処理・削減
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性> 資源効率・資源安全確保、廃棄物
<SDGs との関連性>
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
• 2030 年までに、産業廃棄物の排出量を、現行水準より 3%削減する。
• 2025 年までに、製品カタログのデジタル化等により、紙の印刷物を、現行水準より 40%削減する。
<インパクトの内容>
パーパスでは、ISO14001 に則り、環境基本方針として「汚染防止、資源やエネルギーの有効利用、及び廃棄物の削減」を定めるとともに、2021 年度の環境強化方針の強化項目として、「廃棄物の廃棄・分別ルールを守ろう」、「地球環境や作業環境に有害な物質について認識し、活動しよう」の2点を掲げ、廃棄物の削減に向けて、様々な取組を進めている。
事業活動を通じて排出される再生可能な物については、紙、金属、プラスチック、ビニールなど素材ごとにすべて分別し、それぞれ、専門のリサイクル事業者へ引き渡し、再利用している。たとえば、金属については、銅、アルミ、ステンレス、真鍮など、種類別に細かく分別して回収業者へ引き渡すようにしているが、特に、銅は高価なこともあり、含有率の異なる種類別に細かく分別するほか、細かな金属屑も可能な限り回収し、資源の有効活用に繋げている。
また、再生できない廃棄物については、運搬・処理の資格を有する専門の処理業者へ引き渡し、適切に処理している。引き渡した産業廃棄物は、廃棄物処理法に基づき、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの電子マニフェストを利用し、適切に管理されていることを確認してい る。そして、パーパスでは可能な限り廃棄物の量を削減するよう努めており、たとえば、塗装工程で排出する汚泥は水分を多く含むため、一度乾燥させて重量を減らして回収業者へ引き渡すなど、様々な取組を行っている。
さらに、同社は製品種類が多岐にわたり、年間 20 万部近くの紙の製品カタログを作成していることから、カタログのデジタル化を推進するとともに、顧客との商談の際に、商品の紹介動画やデジタル
カタログを優先的に利用することで、紙の使用量削減に努めている。また、製品の梱包材は、再生可能なスチロールや段ボールのほか、古紙を主原料とするパルプモールドの緩衝材を採用するととも に、部分的なスケルトン梱包にすることで、梱包材の使用量を最小限に抑えている。また、使用後のパルプモールドは回収し、基準を満たす物は再利用するほか、基準以下の物は古紙として溶解し、パルプモールドとして再生している。さらに、製品を運ぶパレットは、破損した物からxx、耐久性が 高く繰り返し利用できる樹脂製パレットへ変更しているほか、工場排水については、排出量を常時 監視して排出量が大きく増加しないよう管理しており、今後は、排出量の削減につながる管理シス テムの導入も検討する予定である。
静岡銀行は、パーパスの廃棄物削減への寄与度を定量的に確認するために、産業廃棄物の排出量の削減状況等をモニタリングしていく方針である。
4. 地域課題との関連性
(1)地域経済に与える波及効果の測定
パーパスは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、目標とする 3 年後の売上高、従業員数を確認した。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この目標を達成することによって、パーパスは、静岡県経済全体に年間 508 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
(2)地域の独自課題への貢献
【静岡県および富士市の環境施策】
〈静岡県〉
静岡県では、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「改定版 第3次静岡県環境基本計画」(2016~21 年度)を策定している。本計画は、「環境の理想郷“ふじのくに”の創造」を基本目標に掲げ、自然環境や生活環境、地球環境等の保全に取り組むとしている。計画は、①ライフスタイル・ビジネススタイルの変革、②低炭素社会に向けた取組、
③循環型社会に向けた取組、➃自然共生社会に向けた取組の4つの柱で、具体的な施策を示している。
①ライフスタイル・ビジネススタイルの変革としては、環境に配慮した事業活動の促進、環境配慮型製品の普及促進、環境・エネルギー分野への参入・技術支援などを挙げる。②低炭素社会に向けた取組としては、都市と交通の低炭素化、新エネルギー等の導入促進、二酸化炭素の吸収源 対策、フロン類対策の推進等を掲げるほか、ビジネススタイルの変革、事業所の省エネ化、環境産業の創出なども挙げている。③循環型社会に向けた取組としては、良質なリサイクルの推進のほか、廃棄物適正処理推進体制の充実、有害物質を含む廃棄物等の適正処理の推進等を挙げてい る。➃自然共生社会に向けた取組としては、森・川・海の保全と復元、富士山の自然環境保全に向けた取組、美しい景観づくり、森林の多面的機能の発揮等を挙げている。また、水・大気・土壌等の環境の保全、化学物質の適正管理、花と緑のうるおいある魅力的なまちづくりの推進等を掲げる。
さらに、県は「改訂版 ふじのくに地球温暖化対策実行計画」(2015~2021 年度)を策定 し、2005 年度を基準に、21 年度の県内温室効果ガス排出量を△21.0%削減する目標を掲げている。このうち、「産業部門」では、事業所の自主的削減の促進や ESG 金融の普及促進などによって△23.6%、「業務部門」では、業務用建築物の省エネ化促進によって△12.1%、「家庭部門」では、電化製品や給湯器の高効率機器への買い換えやエネルギー使用量の「見える化」、住宅の断熱化などによって△10.3%と、事業分野に対する削減の期待は大きい。
2021 年2月には、静岡県のxxxx知事が、県全域での脱炭素社会の実現を目指すため「2050 年温室効果ガス排出量実質ゼロ」を表明したほか、2021 年度に新たな「静岡県地
球温暖化対策実行計画(区域施策偏)」の策定を行い、脱炭素社会の実現に向けた新たな取組等について検討し、県民や事業者、市町と協力して推進していくとしている。
〈富士市〉
富士市では、環境への負荷を低減し、将来の世代に継承できる環境を守り、育てていくために、
「第三次富士市環境基本計画」(2021~30 年度)を策定している。基本目標として、①いきものと深くつながり xxxあふれるまち、②気候変動に対応し 脱炭素を目指すまち、③環境負荷の少ない 快適に過ごせるまち、➃資源を有効に活用する ごみのない美しいまち、⑤富士・愛鷹山麓からの恵みを 大切にするまち、⑥協働の和を広げ 環境を考え行動するまち、の6つを掲げ、それぞれの環境目標や、個別分野の取組指標や環境施策を設定している。
環境目標としては、生物多様性の言葉の認知度(2030 年 70%)、温室効果ガス排出削減量(2030 年度に 13 年度比△19%削減)、ごみの総排出量(2030 年度に 70,200 トンに削減)、森林の創造面積(2030 年度に 23.2ha)などを掲げ、市民・事業者・市がそれぞれの役割を認識し、一体となって取り組むとしている。
そして、市民・事業者が実践すべき具体的な取組を「市民・事業者の環境配慮指針」として示しており、事業者に対しては、①森林の適正な管理、事業排水の適切な処理と管理の徹底、化学 物質の適切な低減、②ヒートポンプ給湯器や潜熱回収型給湯器などの活用、電気機器の省エネルギー製品への変更、環境マネジメントシステムの構築、計測制御システムの導入、敷地内の緑 化、壁面緑化・屋上緑化、③集じん装置・排煙脱硫・排煙脱硝装置などの導入、地下水・工業 用水・水道水の利用削減、雨水の利用、有害化学物質を含まない建材の使用、➃資源物の分別の徹底、生ごみ処理機などでのごみの減量化、リサイクルの推進、簡易包装の推進、産業廃棄物の適正処理、⑤富士・愛鷹山麓の環境保全、⑥従業員への環境教育、環境保全や公害防止に関する国際的な技術協力等を挙げている。
パーパスの環境負荷低減への取組は、静岡県や富士市が示す施策に沿ったものとなっており、地域の環境保全に真摯に取り組んでいると評価できる。
【SDGs の推進】
静岡県は「SDGs のフロントランナー」を標榜し、2021 年度には、環境ビジネスに取り組んでいる法人を対象に、課題解決に貢献する事業アイデアを表彰する「静岡県 SDGs ビジネスアワード」を創設した。また、県内5市(静岡市、浜松市、富士市、xx市、富士宮市)が内閣府の
「SDGs xx都市」に選定されるなど、県内自治体は SDGs を積極的に推進している。
その中で富士市は、2020 年7月に「SDGs xx都市」に選定され、同年9月に「富士市 SDGs xx都市計画」を策定している。本計画で今後取り組むべき課題として、経済面では、ものづくりのまちとして、これまでに培った人材・技術の集積や、魅力ある地域資源などの強みを活かし、高付加価値産品の開発、生産性の向上や販路拡大に繋げるとともに、多彩な産業の振興を図
り、地域全体の成長を推進するとしている。社会面では、年齢や性別、障がい等の有無に関わら ず、誰もが健康で元気に活躍できる機会を拡大するとともに、防災・減災対策の一層の充実と、災害に備えた地域防災力の強化、広域的な防災連携を推進するとしている。環境面では、富士・愛鷹山麓の貴重な自然環境を保全し、生物多様性を守り、森林資源を有効活用するとともに、深刻化する気候変動への積極的な対策や、限りある資源及びエネルギーの適正かつ有効な活用など、循環型社会形成の取組を進めるとしている。
パーパスは、SDGs の理念と連関する 2020 年度からの6カ年計画「XT6 パーパスクロスターゲット6」を策定し、グループ・部署間の絆の強化、仕事と家庭の両立などの様々な取組を進めている。これは、富士市の SDGs xx都市計画が目指す施策の一環と評価でき、パーパスの取組が地域に波及し、地域全体の SDGs が進むことが期待される。
5. マネジメント体制
パーパスでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xxxx代表取締役社長が陣頭指揮を執り、次期中期計画の策定も視野に入れ、全部署の責任者と複数回にわたって討議を重ね、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、髙木社長を最高責任者とし、設置されたプロジェクトチームを中心として、各部署、全従業員がxxとなって、KPI 達成に向けた活動を実施していく。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxxx |
xx責任者 | 常務執行役員 xxxx |
担当部署 | 経営企画部 |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とパーパスの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認す る。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行とパーパスが協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するパーパスから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>一般財団法人静岡経済研究所 企画調査部 xx研究員 xxxxx
〒400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x XXX:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 3 月 18 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: パーパス株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行がパーパス株式会社(「パーパス」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、パーパスの持ちうるインパクトを、UEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、パーパスがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるパーパスから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で
対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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