Case 13-01
2016年度民法第4部「債権各論」第13回 組合契約等
第13回 委任・準委任契約と組合契約等
【委任契約・準委任契約】( 258-263頁・微修正して再掲載)
2016/11/28
xx xx
Case 13-01
①Xは交通事故の後始末をYに一任した。Yは、A進物店で1万円の見舞用盛りかごを買ってZを訪れ、「X はZに対し解決金100万円を払い、Xは一切の請求を放棄する」との示談をしてきた。Xは、100万円が被害者の怪我の程度などから見て高すぎると不満である。Xは示談契約に従ってZに100万円を支払う必要があるか。盛りかご代1万円はどうなるか。また、XはYの責任を追及できるか。
②上記の委任については、XY間では報酬について何も定めていなかったところ、Yが10万円の報酬を請求してきた。Xは支払う義務があるか。Yが弁護士かそうでないかで結論が異なるか(xxx=xxxx『ワークブック民法』136頁〔xx〕から)。
③Yが弁護士であるとして、YがZとの示談交渉を継続している間に、XがZとの間で直接話をつけてしまった場合、YはXから報酬を請求できるか。
1 委任契約の法的性質など
・片務・無償・諾成契約。報酬は特約による(643条)←沿革的理由
・委任と準委任の違い(委任事務が法律行為か事実行為か)と同質性
2 委任契約の成立
参考判例
最判昭38・6・13民集17巻5号744頁(弁護士法72条違反は無効)
3 委任契約の効力
(1) 受任者の義務 ←高度の人的信頼関係の特殊性
①事務処理義務(程度は善管注意義務。644条)
例外
判例
最判昭53・7・10民集32巻5号868頁( 売主の移転登記手続の委任契約は買主のためにも必要書類を保管する義務を生じ、売主から任意に解除することはできない)
原則
・ 履行の代行は不可(自己執行義務)
104条・105条類推による復委任
改正法
105条を削除。復xxにつき新644条の2を新設
・重いxx義務・誠実義務? ←信認関係 fiduciary relation
②重い付随的義務と責任(645条-647条、654条・655条)
(2) 委任者の義務
①委任事務処理費用の負担と損害賠償責任(649条・650条)
②特約による報酬支払義務(648条)
・黙示の合意・慣習や商512条等によっても特約認定がありうる
判例
最判昭37・2・1民集16巻2号157頁(弁護士報酬の合意が認定できない場合)
・請負的要素の強い不動産仲介契約の場合、仲介による契約締結が必要
判例
改正法
最判昭45・10・22民集24巻11号1599頁(故意の条件成就妨害。約定報酬額)
履行割合型・成果完成型の割合報酬の規定を新設(新647条3項・648条)
(3) 委任契約と代理権の関係
・立法者は同視していたが、両者にはズレがある
4 委任契約の終了
(1) 任意解除権(+損害賠償義務。651条)
判例
P246-248(変遷後、受任者の利益をも目的とする委任も解除可能に帰着)
改正法 新648条はこの判例法理を明文化
判例
(2) 特別の終了原因(653条)
・死後も存続する契約の可否
最判平4・9・22金法1358号55頁
【組合契約】(267-274頁)
1 組合契約の意義と機能
・共同事業目的の出資:双務・有償・諾成契約(667条); ただし、合同行為
改正法
⇒双務的債務の牽連性を前提にする一般原則は不適用新667条の2、667条の3はこの趣旨を明記
法による法人格付与例
・組合と法人との関係及び権利能力なき社団の位置づけ
法人格のない組合の例
合名会社( 会2条1号・3条)、建物区分所有者の管理組合( 建物区分3条)、建替組合( 建替円滑化6条1項)、労働組合( 労組11条)、農業協同組合及び連合会(農協5条)、弁護士法人(弁30条の2以下)
JV( 共同企業体。最大判昭45・11・11民集24巻12号1854頁)、会社
の発起人組合(大判大7・7・10民録24輯1480頁)
2 組合の設立
・黙示の契約でも可能
判例
東京高判昭51・5・27判時827号58頁(269頁コラム○87 )
・共同事業の営利性、継続性は不問
・出資は労働力の提供でもよい(667条2項)
・金銭出資の履行遅滞の場合、法定利率を超える損害賠償責任(669条)
3 組合の業務執行
・原則は組合員(または業務執行者)の過半数議決・各組合員の執行(670条1項・2項)
改正法
業務執行者への決定・執行の委任を明記し整理(新670条1~3項)
業務執行者に委任していても総組合員の同意による決定・執行が可能(同4項)
・常務は単独執行・相互代理(670条3項=新5項)
・組合規約等による業務執行者の代理権限制限
判例
P258( 内部的な権限制限は善意・無過失の第三者に対抗できない: 組合側に立証責任)
・組合名や肩書付個人名による行為は代理行為
判例
P259(組合代表が振り出した手形については組合員が共同振出人として責任を負う)
改正法
改正法 組合代理を新設(新670条の2:常務を除き業務執行者の代理が優先・過半数要件)
・業務執行者と組合員の関係(671条-673条
・訴訟担当能力(民訴29条)
業務の執行⇒業務の決定又は執行)
判例
最判昭37・12・18民集16巻12号2422頁(組合の当事者能力を肯定)
最大判昭45・11・11民集24巻12号1854頁( 業務執行組合員に対する訴訟追行権授与)
4 組合の財産関係
Case 13-02 ABら10名がY組合を作るに際しては、組合の本件財産の獲得につき次のような方法を採った。いったAがBから本件財産を買い受け、その後成立したY組合に右財産を譲渡し、同時にAのBに対する代金債務100万円をY 組合が引き受けた。 Bからの債権の譲受人XがY組合に代金全額の支払を求めたところ、Y組合( 業務執行組合員A) は、代金債権はBの負担部分10万円については混同消滅しているので、その分を控除して90万円だけを支払えばよいと主張する。この主張は認められるか。
・組合財産の帰属(668条・676条。P256←→合有説-団体的制約)
・組合の名前で負った債務の二重性(675条←→会104条・580条)
判例
P257(ケースと類似の場合に混同消滅を実質的な利益較量で否定)
改正法
・利益分配( 674条・675条 新675条は組合債権者の選択権を明記)
改正法
・組合財産の充実・維持(676条1項・677条 新676条2項新設、新677条持分処分に拡張)
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2016年度民法第4部「債権各論」第13回 組合契約等
×
組合員B 組合員B △
組合 組合の債務者 組合 組合の債権者組合員A 組合員A
5 組合員の変動と組合の解散
・任意脱退( 678条) やむをえない事情があれば常に脱退は可能
存続期間の定めがないか不定のときは、組合に不利な時期以外随時脱退可能
・法定脱退( 679条。680条の除名を含む)
改正法
→脱退の効果(681条) 新680条の2で脱退組合員の責任を明記
判例
P260(7人のヨットクラブ事件:任意脱退を許さない約定は無効)
改正法
・新規加入や組合員の地位の譲渡
・組合の解散(682-684条)と清算( 685条以下)
※一人組合の扱いは引き続き解釈に委ねられる
新677条の2で加入と加入者の責任を明記
改正法
新682条で解散事由を追加
【組合と法人・整理と対照】(273頁 表13- 1)
Y1~3の3名( からなる団体)が土地を買ったり借金をした場合を想定する。
単純共有 | 組 合 | 権利能力なき社団 | 法 人 | ||
団体による拘束 | 団体性はきわめて希薄で, 結合関係は一時的で拘束も弱い。 | 団体性は弱いが,各人の権利は結合関係が続く限り,共同の目的に拘束される。 | 団体性が強く構成員の権利はむしろ団体所有の実質の反射でしかない。 | 団体自体の権利が構成員の権利と完全に分離独立している。 | |
土 地 | 所有形態 | Yらの共有。 | Yらの合有。 | Yらのxx。 | 法人の単独所有。 |
持分x | x。 | 有( ただし潜在的)。 | なし( 構成員としての利用権のみ)。 | なし。 | |
持分権の譲渡 | できる。 | できるが, 対抗できない。 | できない。 | できない。 | |
分割請求 | 原則としていつでも可能。 | 脱退による清算のみ可能。 | できない。 | できない。 | |
借 金 | 連帯特約なければ Yらの分割債務。 | 組合の全額債務と Yらの分割責任が併存。 | 社団自身の全額債務。Yらの責任の併存については説が分かれる。 | 法人自身の全額債務。 構成員が責任を負う場合も補充的。 |
表13-2 組合員の脱退
やむを 得ない事由 | 存続期間 | 確定有期 | 定めがないかある組合員の生存中とされた場合 | |
有 | 脱退可能(678条2項) | 脱退可能(678条1項本文) | ||
な | し | 脱退不可能 | 組合に不利な時期 脱退不可能 (678条1項ただし書) それ以外の時期 脱退可能 |
【組織型の要素を持つ契約】
1 フランチャイズ契約(特定連鎖型事業契約)
・特徴:商標・ノウハウの提供と権利金(ロイヤルティ)・売上歩合の支払い
・問題点:不当勧誘・高額の違約金・競業避止義務
2 会員権契約
・預託金会員型・法人型・共有型( ゴルフ会員権の場合、「ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律」(平4年法53号)の規制がある)
・マルチ商法(連鎖販売契約-特定商取引法で実質的に禁圧)