Contract
各 位
株式会社八十二銀行
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」第 1 号案件について
八十二銀行(頭取 xx xx)と一般財団法人長野経済研究所(理事長 xx xx)は、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(注)」の第 1 号案件となる融資契約を長野電鉄株式会社(代表取締役社長 xx xx)と締結しましたので、以下のとおりお知らせします。
(注)企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面に与えるインパクトを包括的に分析し、特定され たポジティブインパクトの増大とネガティブインパクトの減少に向けた取組みを支援する融資手法。企業による SDGs 達成への貢献度合いを評価指標とし、その過程を開示します。
1. 概要
x | 約 | 日 | 2022 年 2 月 25 日(金) |
契約先 | 名 称 | 長野電鉄株式会社 | |
所在地 | xxxxxx 0000 | ||
設立年月日 | 1920 年 5 月 30 日 | ||
資本金 | 495 百万円 | ||
金 | 額 | 150 百万円 | |
資 金 使 途 | 運転資金 | ||
モニタリング | 八十二銀行および一般財団法人xx経済研究所は、ポジティブインパクト金融原則に基づき構築した実施態勢に従い、インパクト評価を踏まえ“長野電鉄グループ”が設定した KPI を、融資期間中におけるパフォーマンスとしてモニタリングします | ||
評価の対象 | 長野電鉄グループ(長野電鉄株式会社を含む 12 社) |
2. 長野電鉄グループの取組み(※ 詳細は別紙をご参照ください。)
(1) 長野電鉄グループは「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に地域社会の進歩発展に貢献する」を経営理念に掲げ、主に北信地域において、旅客鉄道事業・生活関連事業・不動産事業・観光事業等、地域住民の生活に欠かせないサービスを提供されています。
(2) インパクト評価では、ポジティブインパクトが期待できる主な活動として、公共交通への容易なアクセスや乗降客・沿線住民に対する利便性の高い商業施設の提供といった「持続可能なまちづくり」、 ICT リハビリシステムによる質の高いデイサービスの提供を通じた「健康的生活の確保と福祉の推進」が挙げられました。
(3) ネガティブインパクトを低減する活動としては、公共交通への移行促進や省電力車両の導入による温室効果ガス排出量の抑制、ISO14001 認証規格に基づく廃棄物のリサイクル促進と削減のほか、安全・安心な労働環境の確保に取り組まれます。
以 上
評価対象
xx電鉄グループ
借入人
xx電鉄株式会社
貸付人
株式会社八十二銀行
評価書作成者 一般財団法人長野経済研究所
評価基準日
2022 年2月 25 日
目次
1. はじめに 1
2. ながでんグループ構成 2
3. 長野電鉄(株)の企業概要 3
(1) 法人概要 3
(2) 沿革 3
(3) 事業内容 3
4. グループ事業セグメント 4
5. 各事業群の活動内容 5
6. グループの経営理念等 6
(1) 経営理念 6
(2) グループのSDGs 宣言(目標) 6
(3) 環境への取り組み 7
(4) 安全への取り組み 7
(5) 地域社会への取り組み 7
7. ながでんグループの包括的インパクト分析 8
(1)事業活動が環境・社会・経済面に与えるポジティブならびにネガティブなインパクト 8
(2)UNEP FI インパクトカテゴリーとの関連 10
(3)事業活動とUNEP FI インパクトカテゴリーとの整合性 10
8. 特定したインパクトと設定した KPI 11
(1)ポジティブ・インパクトの拡大 11
(2)ネガティブ・インパクトの緩和 14
9. インパクト管理体制 18
10.モニタリング方法 18
一般財団法人長野経済研究所は、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI )が策定した「ポジティブ・インパクト金融原則」に則り、長野電鉄グループ(以下、
「ながでんグループ」という)の包括的なインパクト分析を行った。
八十二銀行は、本評価書で特定されたポジティブ・インパクトの拡大とネガティブ・インパクトの緩和に向けた取り組みを支援するため、長野電鉄株式会社に対し、ポジティブ・インパクト・ファイナンス(以下、
「本ファイナンス」という)を実行する。
ながでんグループは、鉄道事業等を運営する長野電鉄(株)を筆頭に、連結対象となる子会社がバス・ タクシー事業、建設・不動産事業、観光事業、介護事業等を運営する企業グループである。これらグループ各社は事業戦略上、各々が密接・不可分に連携し、地域社会・経済に深く関与している。このため、インパクト分析の評価は、ながでんグループを対象とした。
本ファイナンスの概要
契約期間 | 2022 年2月 25 日~2029 年1月 31 日 |
金額 | 150,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 7年間 |
2. ながでんグループ構成
名称 | 本社所在地 | 事業種類 | 設立年月 | 資本金 (千円) |
長野電鉄(株) | xx市 | 鉄道業等 | 大正 9年 (1920 年)5月 | 495,000 |
xxバス(株) | xx市 | 旅客自動車運送業 | 平成 7 年 (1995 年)5月 | 100,000 |
xxタクシー(株) | xx市 | 旅客自動車運送業 | 昭和 52 年 (1977 年)12 月 | 15,000 |
xxテクニカルサービス(株) | xx市 | 車両整備業 | 平成9年 (1997 年)7 月 | 50,000 |
長野三菱自動車販売(株) | xx市 | 自動車販売業 | 昭和 35 年 (1960 年)2月 | 40,000 |
xxx油(株) | xx市 | 石油製品・ガス販売業 | 昭和 24 年 (1949 年)8月 | 11,600 |
(株)ながでんウェルネス | xx市 | スポーツクラブ・介護サービス業 | 平成 16 年 (2004 年)1月 | 10,000 |
xx建設(株) | xx市 | 建設業 | 昭和 33 年 (1958 年)10 月 | 20,000 |
(株)エアフォルク | xx市 | 不動産仲介業 | 平成 12 年 (2000 年)10 月 | 3,000 |
(株)xxホテルズ | 下高井郡xxx町 | ホテル業 | 平成 29 年 (2017 年)7 月 | 10,000 |
(株)xxxハイウェイオアシス | 上xx郡xxx町 | ハイウェイオアシス業 | 平成7年 (1995 年)4月 | 60,000 |
(株)地獄谷xxx苑 | 下高井郡xxx町 | 観光施設業 | 昭和 39 年 (1964 年)6月 | 10,000 |
グループは長野電鉄(株)を中核企業とした全 12 社で構成し、下表のxxバス以下 11 社が全て長野電鉄(株)の連結対象子会社である。
3. 長野電鉄(株)の企業概要
グループの中核企業である長野電鉄(株)の概要は以下のとおり。
(1)法人概要
会社名 | 長野電鉄株式会社 |
本社所在地 | x000-0000 xxxxxx 0000 |
代表取締役社長 | xx xx |
設立 | 大正9年(1920 年)5月 30 日 |
資本金 | 495 百万円(2021 年3月期) |
単体売上高 | 3,323 百万円(2021 年3月期) |
社員数 | 185 人(2021 年3月期末時点) |
(2)沿革
年月 | 概要 |
大正 9年(1920 年)5月 | xxxx(株)設立 |
11 年(1922 年)6月 | xx線屋代~須坂間(xx線・現在廃線)にて鉄道事業開始 |
12 年(1923 年)3月 | xx線須坂~信州中野(現在のxx線の一部)まで延伸、営業開始 |
14 年(1924 年)7月 | xx線信州xx~xx(xx線・現在廃線)まで延伸、営業開始 |
15 年(1926 年)9月 | 長野電気鉄道(株)(権堂~須坂区間)を合併し長野電鉄(株)へ商号変更 |
昭和 2年(1927 年)4月 | 平穏線信州中野~湯田中間(現在のxx線の一部)営業開始 |
3 年(1928 年)6月 | xx線権堂~長野間営業開始 |
16 年(1941 年)2月 | 営業権譲受により乗合自動車及び貸切自動車営業開始 |
43 年(1968 年)9月 | 不動産営業開始 |
52 年(1977 年)12 月 | 国内旅行業免許取得 |
56 年(1981 年)3月 | 長野線長野~善光寺下間を地下鉄化、営業開始 |
平成 7年(1995 年)10 月 | 乗合旅客自動車運送関連事業をxxバス(株)へ譲渡 |
14 年(2002 年)3月 | xx線信州xx~xx間(xx線)を廃線 |
19 年(2007 年)7月 | 奥志賀地区のホテル・スキー場ほか全施設を売却譲渡 |
20 年(2008 年)11 月 | 丸池スキー場の全施設を売却譲渡 |
24 年(2012 年)3月 | xx線屋代~須坂間(xx線)を廃線 |
(3)事業内容
事業区分 | 内容 |
鉄道事業 | 営業キロ数 xx線(長野~xxx)33.2km/輸送人員 6,044 千人(2021 年3月期) |
不動産事業 | 分譲・仲介部門/長野営業所・須坂営業所、賃貸部門(沿線周辺でのテナントビル経営) |
旅行業 | 国内・海外旅行全般/本店旅行センター・xx・xxx支店 |
広告業 | 屋外広告企画・製作、テレビ・ラジオ広告、交通広告等 |
保険代理業 | 生命保険・損害保険代理店等 |
関連事業 | 物品販売・売店 |
4. グループ事業セグメント
グループ事業は「顧客基盤の共通性」の観点から、以下の事業群にセグメントされている。
事業区分 (2021 年 3 月期末従業員数) | 事業内容 | 会社名 | 2021 年 3 月期 売上高 (百万円) |
ゆ そ う 愉送サービス事業群 (415 人・臨時 160 人) | 鉄道業 | 長野電鉄(株) | 2,948 |
旅客自動車輸送業 | xxバス(株) | ||
xxタクシー(株) | |||
車両整備業 | xxテクニカルサービス(株) | ||
生活サービス事業群 (288 人・臨時 219 人) | 自動車販売業 | 長野三菱自動車販売(株) | 6,297 |
石油製品・ガス販売業 | xxx油(株) | ||
スポーツクラブ・介護サ ービス事業 | (株)ながでんウェルネス | ||
不動産サービス事業群 (81 人・臨時 4 人) | 分譲・仲介・賃貸業 | 長野電鉄(株) | 3,018 |
建設業 | xx建設(株) | ||
仲介業 | (株)エアフォルク | ||
おもてなしサービス事業群 (42 人・臨時 61 人) | ホテル事業 | (株)xxホテルズ | 748 |
ハイウェイオアシス業 | (株)小布施ハイウェイオアシス | ||
観光施設業 | (株)地獄谷xxx苑 | ||
関連サービス事業群 (42 人・臨時 7 人) | 旅行業広告業 保険代理業 | (株)長野電鉄 | 452 |
5. 各事業群の活動内容
ながでんグループはxx県北部において、旅客鉄道事業の他、生活関連事業、不動産事業、観光事業等を運営する企業集団である。
グループ事業の創業は、xxxx(株)(長野電鉄(株)の前身)が産業輸送の近代化を目的に大正 11 年(1922 年)に須坂~屋代間(現在廃線)で開始した旅客・貨物輸送事業にある。
この鉄道事業は、その後、長野電気鉄道(株)の合併、一部路線の延伸・廃線を経て、現在の長野電鉄(株)による長野~須坂~湯田中間での旅客輸送に至っている。
上記の営業路線の変遷と併せて進められたのが、事業の多角化である。不動産事業では、沿線での商業系テナントビル賃貸や宅地開発、観光事業ではスキー場・ホテル経営、生活関連事業ではガソリンスタンド事業等を開始した。これらは、輸送サービスと関連して相乗効果を発揮し、現在のながでんグループ事業基盤を構築している。なお、長野電鉄(株)ではこれら事業の多角化に伴い、11 社の子会社を設立している(2ページ参照)。
おもてなしサービス事業
関連サービス事業群
愉送サービス事業群
グループ統括:長野電鉄(株)
不動産サービス事業
生活サービス事業群
グループ事業展開イメージ
ながでんグループは、自らを「快適生活サポート事業グループ」と位置づけ、グループ各社を「顧客基盤の共通性」の観点から、5事業群(4ページ参照)にセグメント、グループ経営戦略を展開している。 事業群ごとの売上構成は、2021 年3月期で生活関連サービス事業が 46.7%、次いで不動産サービス事業が 22.4%、輸送サービス事業は約 21.8%で、コロナ禍での実績ではあるが、生活関連サービス事業が最も多くの割合を占めている。
6. グループの経営理念等
(1)経営理念
当グループでは、経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に地域社会の進歩発展に貢献する」と制定しており、ステークホルダーごとの取り組み理念として、①「お客様のため」お客様の感動を生む価値の創造、②「地域のため」豊かな社会の実現に向けた地域との共創、③「従業員のため」やりがい・働きがいの創出(全従業員が主役)従業員と家族の幸福の実現を長期経営ビジョンに掲げている。
また、上記を受け、グループ全社の基本戦略に①信頼の創造②社会変化を捉えた改革③一人ひとりがいきいきと活躍できる職場づくり④攻めの戦略と事業のブラッシュアップ⑤事業の再精査を定めている。
(2)グループのSDGs 宣言(目標)
グループ主要課題 | SDGs対応ゴール | |
Environment環境対応 | 脱炭素社会、使用電力量・燃料の低減循環型社会、食品廃棄ロスの削減 環境への意識、公共交通利用促進のPR | |
Social 社会貢献 | 地域の活性化 多様なお客様への対応社会貢献活動 | |
Governance企業統治 | コンプライアンスの実践リスクマネジメント 働きがいの創出 |
SDGsに対する取り組み方針としては、環境・社会・企業の各分野でグループの主要課題を抽出し、これに基づくSDGsに係る経営方針(SDGs宣言)を定めている。
ながでんグループの SDGs宣言(目標) |
全ての従業員が安全・安心に過ごせる豊かな沿線社会の実現に貢献します |
グループ経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に地域社会の進歩発展に貢献する」を基に、地域に根差した企業として安全・安心を提供するとともに、地域の皆様から信頼していただける企業であるため、社員一人ひとりが自覚を持ちSDGs の達成に 向けて取り組んでまいります |
(3)環境への取り組み
⮚ 環境に優しい公共交通機関の利用促進
ガソリン等を燃料とした自動車交通は、温室効果ガス等を排出し環境への負荷があることからこの抑制が世界的課題となっている。当グループの基幹事業である電車・バス事業も直接・間接的には温室効果ガス等を排出しているものの、人々が個々のマイカー使用から乗合交通に移行することで社会全体の温室効果ガス等排出抑制に貢献可能である。これらの考え方は公共交通の環境優位性として欧米では一般的となっている。
このため、当グループでは地域住民のマイカー使用抑制支援を目的に、地域内同業他社と協働し、使用曜日は限られるが割引率の高い回数券の販売、地元商業施設とタイアップした割引切符の販売、子供乗車無料デー等を実施している。
⮚ ノーマイカーデーの設定
グループ内では「先ずは自分たちから」の考えのもと、平成 15 年から毎週水曜日を出勤時の自家用車使用を自粛するノーマイカーデーとして取り組み、長野電鉄(株)で国土交通省関連「公共交通利用推進等マネジメント協会」から「エコ通勤優良事業所」の認証登録を受けた。
なお、これらの取り組み・認証登録は新型コロナ対応のため、やむを得ず、現在一時中断している。
(4) 安全への取り組み
xx電鉄(株)では、平成 18 年度に制定した「鉄道安全管理規程」に合わせて、経営方針の基幹となる安全方針を以下のとおり制定し、安全に対する指針として、安全行動規範と合わせて役職員へ徹底している。
⮚ 安全方針
「お客様の安全の確保は輸送の生命であり、すべてに優先する。その安全は従業員一人ひとりが創るもので、規程を遵守し職務を厳正、xxに遂行することによって支えられている。
私たちは鉄道事業を担う誇りを共に持ち、安全確保のため日頃から危機要素の排除に努め、常に安全意識を高く持ち、お客様の安全、安心確保の責務を誠実に果たし社会に貢献する。」
(5)地域社会への取り組み
⮚ 交通弱者への配慮
電車を始めとした旅客輸送事業では、高齢者等を対象とした割引切符の販売等により、交通弱者への支援サービスを提供している。また、長野電鉄(株)ではサービス介助士有資格者が 86 人在籍(2021 年3月末現在)しており、高齢者や障がい者等が安心して利用できる体制を整えている。
⮚ 旅客施設・設備のバリアフリー化
xx電鉄(株)では、駅施設のバリアフリー化を進めており、今後も駅構内の段差解消や点状ブロックの増設などを計画している。バス・タクシー事業においても一部車両はバリアフリー対応済みである。
7.ながでんグループの包括的インパクト分析
(1)事業活動が環境・社会・経済面に与えるポジティブならびにネガティブなインパクト
⮚ ポジティブなインパクトが期待できる活動
目的 <側面> | 【テーマ】 活動内容 | インパクト領 域 |
包摂的で持続可能なまちづくり <社会> | 【公共交通へのアクセスが容易な住宅地の供給】 ・電車沿線・バス路線周辺での住宅地開発・住宅建築(長野電鉄・xx建設)、賃貸物件仲介(エアフォルク) | 住居 |
健康的生活の確保と福祉の推進 <社会> | 【質の高い健康・福祉サービスの提供】 ・要介護度の維持・改善を目的とするICT リハビリシステムなど質の高いデイサービスの提供(ながでんウェルネス) ・アクティブ・シニア層の健康増進を目的とする質の高いサー ビス・プログラムの提供(ながでんウェルネス) | 保健・衛生 |
包摂的かつxx、質の高い教育の提供 <社会> | 【質の高い教育機会の提供】 ・義務教育における質の高い学習旅行の企画・提案・提供 (長野電鉄) | 教育 |
ディーセントワークの推進 <社会> | 【健康的かつ働きがいのある仕事への就業機会の提供】 ・従業員の子育て支援を目的とした男性従業員の育児休暇取得の促進(グループ全企業) ・輸送サービス事業従事者に対する安全衛生管理の徹底 (長野電鉄・xxバス・xxタクシー) ・時間外労働の削減のための定時退社日(毎週水曜・金曜日)の設定(長野電鉄) | 雇用 |
人格と人の安全保障 | ||
包摂的で持続可能なまちづくり <経済・社会> | 【包摂的公共交通手段の提供】 ・交通弱者を含めた全ての乗降客・沿線居住者に対する利便性の高い沿線商業施設の提供(長野電鉄) ・交通弱者に対する乗車賃優遇サービスの提供(長野電鉄・xxバス) ・交通弱者への配慮を目的とした鉄道駅のバリアフリー化 (段差解消・点状ブロック)対応(長野電鉄) | 包摂的で健全な経済 |
移動手段(モビリティ) |
⮚ ネガティブなインパクトを低減する活動
目的 <側面> | 【テーマ】 活動内容 | インパクト 領域 |
気候変動対策 <環境> | 【温室効果ガス排出抑制】 ・当グループの旅客輸送効率改善、ならびに乗合交通(電 車・バス)への移行促進による社会全体での温室効果ガスの排出抑制(長野電鉄・xxバス) ・二酸化炭素の吸収・蓄積資源である木材を使用した木造建築の積極提案(xx建設) ・上記に併せ、森林活性化・森林資源循環を目的とした間伐・ 植林活動(xxx油)、寄付活動(xx建設) | 気候 |
気候変動対策とエネルギー効率の改善 <環境・経済> | 【温室効果ガス排出抑制とエネルギー使用の効率化】 ・環境負荷軽減、および効率的電力使用を目的とした省電力車両の導入(長野電鉄) ・環境負荷軽減、および化石燃料消費量削減を目的とした省エネ・バス車両の導入(xxバス) ・施設照明の LED 化(グループ各社) ・ZEH(ゼロエネルギー住宅)の積極提案(xx建設) | 気候 |
持続可能な消費と生産体制の構築 <環境> | 【最終処分廃棄物の排出抑制】 ・ISO14001 認証規格に基づく、分別徹底による廃棄物のリサイクル促進、および最終処分廃棄物の低減(xx建設) | 廃棄物 |
安全・安心な労働環境の確保 <社会> | 【事故防止への取り組み】 ・鉄道安全管理規程に基づく、安全マネジメントシステムの運用の徹底 ・事故防止対策会議・現場ヒヤリハット情報共有による事故防止、職場安全パトロールによる環境改善(長野電鉄・xx バス・xxタクシー・xxテクニカルサービス・xx建設)) | 雇用 |
人格と人の安全保障 |
(2)UNEP FI インパクトカテゴリー
UNEP FI のインパクトレーダー(環境、社会、経済の全てを包括する 22 のインパクトカテゴリー)による、ながでんグループ業種固有のインパクト領域は以下のとおり。※網掛けが該当領域
⮚ 入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質(一連の固有の特徴がニーズを満たす程度)
水 | 食糧 | 住居 | 保健・衛生 |
教育 | 雇用 | エネルギー | 移動手段 (モビリティ) |
情報 | 文化・伝統 | 人格と人の安全保障 | xx・xx |
強固な制度、 平和、安定 |
⮚ 質(物理的・化学的構成・性質)と有効利用
水 | 大気 | 土壌 | 生物多様性と 生態系サービス |
資源効率・安全性 | 気候 | 廃棄物 |
⮚ 環境の制約内で人間のニーズを満たす手段としての人と社会の経済的価値創造
包摂的で健全な経済 | 経済収れん |
(3)事業活動とUNEP FI インパクトカテゴリーとの整合性
上記7.(1)(2)のとおり、当グループが環境・社会・経済面に与えるポジティブならびにネガティブなインパクトは、UNEP FI のインパクトレーダーから想定される当グループ業種固有のインパクト領域に整合していることを確認した。なお、該当するネガティブ・インパクトについては、全て当グループの現在の取り組みにより回避または低減されている。
8.特定したインパクトと設定した KPI
(1)ポジティブ・インパクトの拡大
No. | 取り組み | KPI | |
1 | 【テーマ】 | 【公共交通へアクセス容易な住宅地の供給】 | ①2028 年度まで、毎年度 20 区画の供給(長野電鉄・xx建設) |
目的 | 包摂的で持続可能なまちづくり | ||
取り組み内容 | ①電車沿線・バス路線周辺での住宅地開発・ 住宅建築 | ||
<側面> | <社会> | ||
インパクト領域 | 住居 | ||
対応するSDGs(ターゲット) 11.2 2030 年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に 配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 | |||
2 | 【テーマ】 | 【質の高い健康・福祉サービスの提供】 | ①次世代型デイサービス利用者数の増加: 定員の 90 % までへの引き上げ (期限: 2028 年度まで) (ながでんウェルネス) ②健康 ZONE100 の利用者数増加:2028 年度までに 20%増加(2020 年度比) (ながでんウェルネス) ③道の駅「xxxハイウェイオアシス」のトイレ改装:24 時間化、男子トイレへベビーベッド増設(期限:2025 年度)(xxx ハイウェイオアシス) |
目的 | 健康的生活の確保と福祉の推進 | ||
取り組み内容 | ①要介護度の維持・改善を目的とするICT リハビリシステムなど質の高い(次世代型)デイサービスの提供 ②アクティブ・シニア層の健康増進を目的とする質の高いサービス・プログラム( 健康 ZONE100)の提供 ③観光施設の利便性と衛生面の改善 | ||
<側面> | <社会> | ||
インパクト領域 | 保健・衛生 | ||
対応するSDGs(ターゲット) 3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニ バーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 | |||
No. | 取り組み | KPI | |
3 | 【テーマ】 | 【質の高い教育機会の提供】 | ①学習旅行(修学旅行等)の催行件数 20 % 増加 (期限:2028 年度)(長野電鉄) |
目的 | 包摂的かつxx、質の高い教育の提供 | ||
取り組み内容 | ①義務教育における質の高い学習旅行の企 画・提案・提供 | ||
<側面> | <社会> | ||
インパクト領域 | 教育 | ||
対応するSDGs(ターゲット) 4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促 進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 | |||
4 | 【テーマ】 | 【健康的かつ働きがいのある仕事への就業機 会の提供】 | ①育児休暇取得率 10 % (期限:2028 年度)(グループ全社) ②2022 年度以降の定年退職者または再雇用期間満了者のうち、希望者再雇用割合 80 %( 期限: 2028 年度)(グループ全社) |
目的 | ディーセントワークの推進 | ||
取り組み内容 | ①従業員の子育て支援を目的とした男性従業員の育児休暇取得の促進 ②再雇用・再雇用期間の延長により、定年退 職者へ就業機会を提供する | ||
<側面> | <社会> | ||
インパクト領域 | 雇用 | ||
対応する SDGs(ターゲット) 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。 | |||
No. | 取り組み | KPI | |||
5 | 【テーマ】 | 【包摂的公共交通手段の提供】 | ①-1 バリアフリー化対応駅割合 20 % 増加( 期限: 2028 年度)(長野電鉄) ①-2 地獄谷xxx苑のバリアフリー化(期限:2028年度)(地獄谷xxx苑) ②-1 子供乗車無料デー利用 2020 年度比 50%増加 (期限:2025 年度)(長野電鉄) ②‐2 沿線商業施設対象の買物切符商品化(期限: 2025 年度)(長野電鉄) ③ユニバーサルデザインタクシー、車いす対応ハイヤーの導入(期限:2025年度)(xxタクシー) | ||
目的 | 包摂的で持続可能なまちづくり | ||||
取り組み内容 | ①交通弱者への配慮を目的としたバリアフリー化(段差解消・点状ブロック)対応 ②持続可能な移動手段の提供および利用促進 ③多様な利用者への移動手段の提供 | ||||
<側面> | <経済・社会> | ||||
インパクト領域 | 包摂的で健全な経済・移動手段(モビリティ) | ||||
対応する SDGs(ターゲット) 11.2 2030 年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 | |||||
(2)ネガティブ・インパクトの緩和
No. | 取り組み | KPI | ||
1 | 【テーマ】 | 【事故防止への取り組み】 | ①労働災害0件(2028 年度まで継続)(長野電鉄・xx建設・xxテクニカルサービス) | |
目的 | 安全・安心な労働環境の確保 | |||
取り組み内容 | ①「安全マネジメント実行計画とスケジュール」に従い、事故防止対策会議の定期開催・現場事故防止ヒヤリハット情報の共有・職場安全パ トロール・安全大会による環境改善 | |||
<側面> | <社会> | |||
インパクト領域 | 雇用・人格と人の安全保障 | |||
対応する SDGs(ターゲット) 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 9.1 すべての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。 | ||||
2 | 【テーマ】 | 【身体と精神の安全・安心確保】 | ①‐1 体制整備:PDCA 活動に基づくマニュアル改訂・定期研修開催( 原則毎年) ①‐2 運用の定着: 利用者アンケート等による事案のないことの確認 (①‐1、‐2 ともに期限:2028年度まで毎年度実施) (ながでんウェルネス) | |
目的 | 介護施設等利用者の安全保障 | |||
取り組み内容 | ①介護施設等における虐待防止態勢の整備 | |||
<側面> | <社会> | |||
インパクト領域 | 人格と人の安全保障 | |||
対応する SDGs(ターゲット) 3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。 | ||||
No. | 取り組み | KPI | ||
3 | 【テーマ】 | 【温室効果ガス排出抑制とエネルギー使用の効率化】 | ①省電力車両編成割合 50%増加(期限:2028 年度)(長野電鉄) ②環境対策バス車両割合 15%までの引き上げ(期限:2028 年度)(xxバス) ③建築工事に占める ZEH提案割合 90%までへの引き上げ(期限:2028 年度)(xx建設) ④対象事業所 xxテクニカルサービス屋代工場・サ高住ハートネットxx・小布施ハイウェイオアシス建物および駐車場・サ高住ハートネット信州xx・スイミングスクール4校(期限:2025年度) | |
目的 | 気候変動対策とエネルギー効率の改善 | |||
取り組み内容 | ①省電力車両の導入 ②環境対策バス車両(クリーンディーゼルエンジン/HV/EV)の導入 ③ZEH(エネルギーゼロ住宅)の推進 ④グループ内各施設の照明の LED 電灯への切り替え | |||
<側面> | <環境><経済> | |||
インパクト領域 | 気候 | |||
対応する SDGs(ターゲット) 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 9.4 資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大により持続可能性を向上させる 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。 12.4 2030 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 | ||||
No. | 取り組み | KPI | ||
4 | 【テーマ】 | 【森林活性化・森林資源循環促進】 | ①木造建築工事請負割合 2020 年度比 20%増加 (期限:2028 年度)(xx建設) ②仕入れ木材のうち、FM/ CoC 認証取得業者扱いまたは FSC 認証木材の占める割合を 50%までへ引上げる(期限:2028年度)(xx建設) ③間伐・植林活動の開催または参加(2028 年度まで毎年)(グループ従業員) | |
目的 | 気候変動対策・森林資源保護 | |||
取り組み内容 | ①木造建築の積極提案 ②適切に管理された森林資源の使用 ③森林保護活動 | |||
<側面> | <環境> | |||
インパクト領域 | 気候 | |||
対応する SDGs(ターゲット) 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 15.2 2030 年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 | ||||
5 | 【テーマ】 | 【最終処分廃棄物の排出抑制】 | ①ISO 認証機関による毎年の維持審査、3年毎の更新審査において是正措置に該当する不適切な取扱い・管理がない状態の維持( 2028 年度まで) (xx建設) | |
目的 | 持続可能な消費と生産体制の構築 | |||
取り組み内容 | ①ISO14001 運用マニュアルに基づき、建築現場で発生する廃棄物の取扱い・管理を徹底す る | |||
<側面> | <環境> | |||
インパクト領域 | 廃棄物 | |||
対応する SDGs(ターゲット) 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 | ||||
No. | 取り組み | KPI | |
6 | 【テーマ】 | 【持続可能な生産と消費】 | ①食品ロス率の引き下げ△ 8.30%(2020 年度比)(xxx油) ②食品ロス率の引き下げ△ 10.0 % 削減( 2020 年度比)(小布施ハイウェイオアシス) 期限:①②とも 2028 年度 |
目的 | 食品ロスの削減 | ||
取り組み内容 | ①コンビニ店舗での食品廃棄ロス削減 ②xxxハイウェイオアシスでの食品ロス削減 | ||
<側面> | <社会><経済> | ||
インパクト領域 | 廃棄物 | ||
対応する SDGs(ターゲット) 12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 | |||
9.イパクト管理体制
ながでんグループでは、本ファイナンスに取り組むにあたり、長野電鉄(株)のxxxx代表取締役社長が陣頭指揮を執り、企画部のxxxxx専務取締役とxxxx次長が中心となって、グループ内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、グループの事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
最高責任者 | 長野電鉄(株)代表取締役社長 xxxx |
担当部署 | 長野電鉄(株)企画部 |
本ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者とし、長野電鉄(株)の企画部が中心となって展開していく。具体的には、グループの事業活動の基となる経営計画等へ落とし込むことで、役員会議やグループ各社の勉強会等でグループ内に浸透させ、KPI 達成に向けて、各社各部署で実行していく。
10.モタリング方法
本ファイナンスの実行にあたり設定した KPI については、長野電鉄(株)と八十二銀行ならびにxx経済研究所が少なくとも年に1回の頻度でその進捗状況および達成状況を確認・共有する。
八十二銀行は、自行が持つノウハウやネットワークを活用し、ながでんグループの KPI の達成を適宜サポートする予定である。
モニタリング期間中に一度達成した KPI については、その後も引き続き達成水準を維持していることを確認する。なお、ながでんグループの事業環境の変化などにより設定した KPI が実情にそぐわなくなった場合には、長野電鉄(株)と八十二銀行ならびに長野経済研究所が協議し、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1. 本評価書は、長野経済研究所が長野電鉄(株)から委託を受けて作成したもので、長野経済研究所が長野電鉄(株)に対して提出するものです。
2. 長野経済研究所は、依頼者である長野電鉄(株)およびxxグループから供与された情報と、長野経済研究所が独自に収集した情報に基づく、基準日現在での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
<本評価書に関するお問い合わせ先>
x000-0000 xxxxx 000-00 xxxxx0x一般財団法人長野経済研究所
経営相談部 コンサルティンググループ上席コンサルタント xx x
℡:000-000-0000 Fax:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 2 月 25 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 長野電鉄グループに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
借入人:長野電鉄株式会社 |
貸付人:株式会社八十二銀行 |
評価者:一般財団法人長野経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナ
ンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、八十二銀行が長野電鉄株式会社(「長野電鉄」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、xx経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。八十二銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、xx経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、八十二銀行及びxx経済研究所にそれを提示している。なお、八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包摂的 で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体 である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的 とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
八十二銀行及び長野経済研究所は、本ファイナンスを通じ、長野電鉄の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、長野電鉄がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、八十二銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100人以下など。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(1) 八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)評価体制図
<八十二銀行グループ>
株式会社八十二銀行
(PIF契約締結、融資実行)
連携
一般財団法人 長野経済研究所
(評価実施、評価書作成)
モニタリング KPI達成支援
株式会社
日本格付研究所
取引先
(借入人)
第三者意見書の発行
PIF実行
PIF評価書・
第三者意見書の提出
PIF評価書の発行
包括分析の協議 KPIの協議
包括分析 KPI協議
PIF申込
第三者意見書の申込
(出所:八十二銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、八十二銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、八十二銀行からの委託を受けて、xx経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全てxx経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、長野経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である長野電鉄から貸付人である八十二銀行及び評価者であるxx経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価本部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx 丸x xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000