Contract
輸入貨物に係る関税評価上の取扱い等に関する照会
賃貸借契約により提供される生産設備に要する費用に係る関税評価上の取扱いについて
照 会 | ||
照会内容等 | ① 輸入貨物の品名 | 機械の部分品(税表分類:第 84 類) |
② 照会の趣旨 | 委託加工先に設備を賃貸し、当該設備で生産された製品を本邦に輸入する場合、当該設備の取得価格を現実支払価格に加算する必要があるか否か照会します。なお、賃借期間は法人税法上の耐用年数 を超えるものです。 | |
③ 取引の概要及びx x評価に関する照会者の見解とその理由 | 別紙1のとおり。 | |
④ 関係する法令条項等 | 関税定率法第4条第1項第3号 | |
⑤ 添付書類 | 照会の趣旨及びその理由等の照会事項に関する参考資料 |
回 答 | |||
回答年月日 | 平成 24 年 9 月 3 日 | 回答者 | 横浜税関業務部首席関税評価官 |
回答内容 | 別紙2のとおり。 ただし、次のことを申し添えます。 (1) 回答内容は、あくまで照会に係る事実関係を前提としたものであり、具体的な事例において異なる事実がある場合や新たな事実が生じた場合には、回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。 (2) 回答内容は、税関としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありませんのでご留意ください。 |
(別紙1)
1.取引形態図
生産設備
輸入者(買手)
設備賃貸料
輸出者(売手)
B社
貨物
S社
(本邦)
貨物代金
(E国)
生産設備
(購入)
生産設備
(購入)
貨物
(国内販売等)
設備メーカー
(E国)
×
×
業務提携基本契約、機械・設備賃貸借契約
設備メーカー
(本邦)
2.取引の概要
(1) 本邦所在の輸入者であるB社(以下「買手」という。)は、特殊関係にないE国所在のS社(以下「売手」という。)と締結した業務提携基本契約に基づき、機械の部分品(以下「貨物」という。)を売手から継続的に輸入します。
(2) 買手は売手に対して、本邦に輸入する貨物を個々に発注し、売手の請書をもって個別契約が成立します。
また、貨物の価格は、買手が売手の製造原価を確認し、売手による見積書を承諾することで決定され、売手から買手にインボイスで請求されています。
(3) 本邦に輸入される貨物は、すべて売手から買手に販売され、買手が本邦の顧客に対して販売しますが、E国の顧客に対しては売手が販売する権利を有します。また、売手又は買手のどちらかが本邦とE国以外の顧客に対して販売する際は、事前にもう一方の承諾を得なければなりません。
なお、業務提携基本契約は、期限前に解除されない限り、3年間存続し、いずれかの当事者から同契約を終了する旨の通知を行わない限り、2年ごとに自動更新されると規定されています。
(4) 一方で、買手は、機械・設備賃貸借契約を売手と締結し、当該貨物を製造するために必要な機械及び設備一式(以下「生産設備」という。)を本邦及びE国の設備メーカーから購入し、有償で売手に貸与しています。
買手が設備メーカーから購入する生産設備の価格及び設置費用、運賃等の総額は、8年を超える期間、売手から定額の賃貸料を毎月受け取ることで回収します。なお、貸与期間は2年ですが両者の申し出がない場合は自動更新されます。
(5) 生産設備のすべては買手の固定資産として管理され、売手の工場内に設置する費用は買手により負担されますが、常時、正常な使用状態を保つために必要な保守、点検、整備、修繕及び保険
の費用は売手により負担されます。
3.関税評価に対する照会者の見解
買手は売手に対して、生産設備を有償で提供しており、買手は耐用年数8年で当該生産設備を資産管理していますが、継続的な取引と認識しているため当該生産設備の投資額を回収できる額を両者合意の上、月賦期間は8年を超える期間に設定しました。よって、売手が発行するインボイス価格には、生産設備の費用が構成されており、適正な貨物代金で取引されています(関税定率法第4条第1項第3号に規定する加算要素には該当しません)。仮に、契約が満了又は解除になった場合、通常の損耗を除き、生産設備は直ちに売手が原状回復をした上で買手に返還されます。
(別紙2)
【回答内容】
買手が売手に賃貸している生産設備について、その賃貸料が、買手により提出された資料又は一般的に認められている会計原則に基づき、当該生産設備に係る費用をあん分した金額に比して低価となる場合、当該差額は、現実支払価格に含まれていないことから、関税定率法第4条第1項第3号ロに規定する値引きして提供された工具等に要した費用に該当します。
【理由】
1.関係法令等
(1) 買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された工具等について
関税定率法(以下「法」という。)第4条第1項において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた時に買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格(以下「現実支払価格」という。)に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格と規定されています。
また、法第4条第1項第3号において、輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により無償で又は値引きをして直接又は間接に提供された物品又は役務に要する費用は、上記の運賃等の一つとして掲げられており、同号ロにおいて、輸入貨物の生産のために使用された工具、鋳型又はこれらに類するもの(以下「工具等」という。)が当該物品の一つとして規定されています。
さらに、法基本通達(以下「通達」という。)4-12(5)イにおいて、法第4条第1項第3号イからハまでに掲げる物品に要する費用の額は、買手が当該物品を自己と特殊関係にない者から取得した場合には、当該物品の当該買手による取得価格によるものとされています。
また、通達 4-12(5)ニにおいて、工具等を提供するため運送費用、保険料等を負担した場合には、当該負担した費用等の額は、工具等の費用の額に含めるとされています。
(2) 個々の輸入貨物に関連する額のあん分について
通達 4-7 において、法第4条第1項各号の規定に基づき、現実支払価格に運賃等を加算する場合の取扱いは、客観的なかつ数値化された資料に基づき、同項各号の運賃等の額で当該現実支払価格に含まれていないものを加算するとし、原則として、個々の輸入貨物に関連する額をあん分して当該輸入貨物の課税価格に算入するとされています。
また、このあん分に関しては、関税評価協定附属書Ⅰ第8条1(b)(ⅱ)の規定に関する注釈において、「状況により適当と認められる合理的な方法により、かつ、一般的に認められている会計原則に従って行うべき」及び「種々の可能性が存在する」と規定されています。
具体的には、以下のようなあん分に係る方法が例示されています。
① 買手が工具等の価額の総額に対する関税を一括して納付することを希望する場合には、工具等の価額の総額を最初に到着した輸入貨物にあん分する方法
② 工具等の価額の総額を最初の輸入貨物の到着の時までに生産された貨物の数量にあん分する方法
③ 貨物の総生産量について契約又は他の確たる約束がある場合には、工具等の価額の総額を当該総生産量にあん分する方法
なお、用いられるあん分の方法は、買手の提供する資料に基づいて決められるとされています。
2.買手が売手に貸与する生産設備の取扱いについて
本件取引では、買手が貨物の生産に使用する生産設備を、買手と特殊関係にない設備メーカーから購入し、機械・設備賃貸借契約により買手から売手に提供されており(設置費用及び売手の工場
までの運賃等は買手の負担。)、当該生産設備の賃貸料が毎月売手から買手に支払われることとされています。
この買手が売手に貸与する生産設備については、法第4条第1項第3号ロの規定により、当該生産設備費用並びにそれを提供するために買手が負担した設置費用及び運賃等の費用が輸入貨物の現実支払価格に含まれていない場合は、その含まれていない限度において現実支払価格に加算する必要があります。
買手は、売手と輸入貨物の価格を決定する際に、予め生産数量を両者で取り決め、製造原価を確認しており、生産設備の賃貸料については売手の販売価格に含まれていると説明していることから、生産設備の賃貸料は、現実支払価格に含まれていると考えられますが、その賃貸料が、買手により提出された資料又は一般的に認められている会計原則に基づき、当該生産設備に要する費用をあん分した金額に比して低価となる場合、その差額は現実支払価格に含まれておらず、生産設備は値引きをして提供されていることになります。
3.生産設備に要する費用をあん分する方法について
本件取引では、買手は、業務提携基本契約に基づき、機械・設備賃貸借契約書により貸与する生産設備を使用し製品を製造することを売手に委託しており、業務提携基本契約の契約期間は、輸出入者のいずれかが終了する旨の通知を行わない限り2年毎に自動的に更新されるものの、3年間とされています。
したがって、買手の提供する資料に基づけば、業務提携基本契約に規定する期間(3年間)に生産される貨物のために、買手が取得した価格(売手の工場までの運賃及び設置費用を含む。)の生産設備を提供していると解されることから、生産設備の総額を3年間における総生産数量にあん分することができます。
また、買手は、自己の資産である生産設備の取得価格を法人税法上の耐用年数である8年間で減価償却していますが、当該減価償却は本邦における一般的に認められている会計原則に従った合理的な方法ですので、生産設備の総額を8年間における総生産数量にあん分することも可能です。
他方、買手は8年を超える期間に支払われる賃貸料で生産設備の総額を売手から回収する予定であると説明していますが、買手から提出された資料には、当該生産設備により8年以上生産が継続されるという契約その他の確たる約束が確認できず、また、法人税法上の耐用年数である8年間を超えてもいますので、当該生産設備の総額を8年を超えて生産される貨物にあん分することが合理的な方法であるとは解されません。
本件取引では、業務提携基本契約の契約期間である3年間又は生産設備の法人税法上の耐用年数である8年間であん分する場合、その期間に配分される費用と買手と売手の両者で合意した8年を超える期間で回収する予定の賃貸料に差額が生じます。
よって、これらの差額は、買手により負担される一方で現実支払価格に含まれていないこととなることから、法第4条第1項第3号ロに規定する値引きして提供された工具等に要する費用に該当し、当該差額(値引き額)を現実支払価格に加算する必要があります。
なお、売手が当該生産設備を使用して生産される貨物の一部について、E国において販売した場合、また、売手又は買手が本邦及びE国以外の第三国の者に対して販売及び輸出した場合、当該生産設備等に係る費用には本邦に輸入されない貨物に係る費用も含まれることから、本邦への販売分と本邦以外での販売分とにあん分して本邦への販売分のみを現実支払価格に加算することになります。