静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、社会福祉法人駿府葵会(理事長 佐々木至忠)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.9.30
(福)xxx会と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、社会福祉法人xxx会(理事長 xxxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
なお、社会福祉法人とのポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約は初となります。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 9 月 30 日(金)
2.融資金額 1 億円
3.資金使途 運転資金
4.(福)xxx会の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同法人は、高齢者介護事業や障がい者支援事業を行う社会福祉法人で、理念に「尊厳のxxxを持って社会福祉に貢献し、奉仕の価値観を共有し、介護福祉サービス日本一を目指します。」を掲げています。
〇特別養護老人ホームの運営、デイサービスやショートステイといった在宅介護サービスなど、多様な介護サービスの提供を通じて、高齢者や障がい者が住みなれた地域で生活を送れるよう支援に取り組んでいます。
〇今回、同法人の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
社会面 | ・人材育成、就労継続支援(介護技能を有する人材の育成、資格取得支援、技能実習生の受入れ、障がい者の雇用及び就労支援) ・安全・安心なサービスの提供(障がい児への安全・安心な教育サービス提供、高齢者への安全・安心な介護サービス提供) ・地域貢献活動(地域の高齢者の健康増進、地元小中学生への福祉教育活動への協力、高齢者の買い物支援) ・従業員の負担軽減(介護機器の積極的な導入、従業員の労働環境を整備) | |
社会 ・経済面 | ・幅広いサービスの提供及びxxx会グループでの連携(ニーズに応じた介護サービスの提供、グループでのノウハウ共有) |
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】(福)xxx会の概要
所 在 地 | xxxxxxxxx 000-0 | 創 業 | 2001 年(平成 13 年) |
従 業 員 | 284 人 | 売 上 高 | 1,609 百万円(2022 年 3 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象法人:社会福祉法人xxx会
2022 年9月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
<要約> 3
法人概要 4
1. 事業概要 6
1-1 事業概況 6
1-2 経営理念 8
1-3 業界動向 9
1-4 地域課題との関連性 12
サステナビリティ活動 14
2-1 環境面での活動 14
2-2 社会面での活動 15
2-3 社会・経済面での活動 20
2. 包括的分析 22
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析 22
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定 22
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性 23
3-4 インパクト領域の特定方法 23
3. KPI の設定 24
4-1 社会面 24
4-2 社会・経済面 28
4. 地域経済に与える波及効果の測定 29
5. マネジメント体制 29
6. モニタリングの頻度と方法 29
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 社会福祉法人xxx会(以下、xxx会) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、xxx会の活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響及びネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及び ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小法人※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小法人基本法の定義する中小法人、会社法の定義する大会社以外の法人
<要約>
xxx会は静岡市にて、高齢者介護事業や障がい者支援事業を行う社会福祉法人である。主力の高齢者向けサービスには、まず、施設サービスとして特別養護老人ホームがあり、利用者の日常生活をサポートしている。そのほか、自宅に住み続けながら受けられる居宅介護サービスとしてデイサービスやショートステイなどを提供するほか、地域密着サービスとしてグループホームや小規模多機能ホームを運営することで、地域の高齢者が住み慣れた地域で可能な限り生活ができるようサポートしている。
xxx会のサステナビリティ活動等を分析した結果、ポジティブ面では「住居」、「健康・衛生」、
「教育」、「雇用」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」が、ネガティブ面では「健康・衛生」、「雇用」、「人格と人の安全保障」、「気候」、「廃棄物」、「包括的で健全な経済」がインパクト領域として特定され、そのうち、環境・社会・経済に対して一定の影響が想定され、xxx会の経営の持続可能性を高める5つのインパクト領域について、KPI が設定された。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 7年 0 ヵ月 |
法人概要
法人名 | 社会福祉法人xxx会 |
所在地 | xxxxxxxxxxxx 000-0 |
事業所 | xxの里(静岡市駿河区) 蜂ヶxx(静岡市xx区) おきつのつどい(静岡市xx区)おきつの家(静岡市xx区) まつばらの家(静岡市xx区)xxxの家(静岡市xx区) xx、青葉(静岡市葵区) ケアホームかのん(静岡市葵区)xxxxxx(静岡市葵区) xxxx地域包括支援センター(静岡市駿河区) 城北地域包括支援センター(静岡市葵区) |
従業員数 | 284 名(男性 95 名、女性 189 名) |
事業内容 | 高齢者介護事業 障がい者支援事業児童発達支援事業 |
グループ会社 | 株式会社ワムタック(介護付き有料老人ホーム)有限会社xx(グループホーム) 医療法人xx会(xxx齒科醫院) 一般社団法人 Mirai Assist(介護施設運営サポート事業、保証人事業) 協同組合 Mirai Man Power(技能実習生向けサポート業務)日漢堂鍼灸院(針治療) 日漢堂整骨院(整体) |
沿革 | 2001 年 社会福祉法人xxx会を設立 2002 年 特別養護老人ホーム xxの里を開設 2006 年 xxxx地域包括支援センターを開設 2007 年 xxxxx地域包括支援センター (現:城北地域包括支援センター)を開設小規模多機能ホーム xxxの家を開設 2013 年 デイサービスセンター xx、 ケアプランセンター xxを開設 2014 年 グループホーム まつばらの家を開設 2015 年 ケアサービス 青葉を開設 2017 年 特別養護老人ホーム 蜂ヶxx、グループホーム おきつの家、 小規模多機能ホーム おきつのつどいを開設 2020 年 児童発達支援・放課後等デイサービス事業所 xxxxxxを開設 2022 年 ケアホームかのんを開設 |
(2022 年9月末現在)
1. 事業概要
1-1 事業概況
xxx会は、現在静岡市において、高齢者介護事業や障がい者支援事業を行っている。運営施設には、特別養護老人ホーム「xxの里」、「蜂ヶxx」のほかに、地域密着型サービスを提供する場として、グループホーム「おきつの家」や「まつばらの家」、小規模多機能ホーム「おきつのつどい」や
「xxxの家」、「かのん」がある。また、それらの施設に加え、居宅介護サービスを提供する事業所として「ケアサービス青葉」、「デイサービスセンターxx」がある。また、「xxxxxx」で児童発達支援・放課後等デイサービスを行い、障がいを持つ児童の支援をしている。
さらに、xxの里や蜂ヶxx、xxに居宅介護支援センターを設けているほか、行政から委託を受け、xxの里で「xxxx地域包括支援センター」、xxで「城北地域包括支援センター」を運営しており、地域住民の介護に関する総合的な窓口も担っている。
そして、xxx会グループとしてさらに多様なサービスを展開している。志太地域などで地域密着サービスを展開し、静岡市で介護付有料老人ホーム事業を行う㈱ワムタックや、歯科治療を行う(医)xx会を始め、xxx会グループの事業を支援する㈳Mirai Assist、外国人技能実習生向けサポート業務を担う㈿Mirai Man Power がある。このように、グループで多様なサービスを取り揃えることで、高齢者や障がい者が豊かで人間らしい生活を送れるよう支援している。
<xxx会の運営する施設と提供サービス>
xx भ里 | 蜂 ⑇xx | उ ऌ ण भ ण न ः | उ ऌ ण भ家 | ऽ ण य ै भ家 | ा न ॉ भ家 | xx 、青葉 | ॣ ॔ ␗ ऊ भ ॒ | ँ उ ःxxx | 城北地域包括支援 ७ থ ॱ ␗ | xxxx地域包括支援 ७ থ ॱ ␗ | ||
施設 | 特別養護老人ホーム | ○ | ○ | |||||||||
居宅 | デイサービス | ○ | ○ | ○ | ||||||||
ショートステイ | ○ | ○ | ||||||||||
ホームヘルプ | ○ | |||||||||||
居宅介護支援センター | ○ | ○ | ○ | |||||||||
地域密着 | グループホーム | ○ | ○ | |||||||||
小規模多機能ホーム | ○ | ○ | ○ | |||||||||
ज भ他 | 住宅型有料老人ホーム | ○ | ||||||||||
地域包括支援センター | ○ | ○ | ||||||||||
児童発達支援 | ○ | |||||||||||
放課後等デイサービス | ○ |
<サービス概要>
名称 | 内容 | 対象者 |
特別養護老人ホーム (介護老人福祉施設) | 入所して、食事、排せつ、入浴などの日常生活上の介護、健康管理、機能訓練などを受けるサービス。 | 要介護 3~5対象 |
デイサービス (通所介護) | 通所介護事業所に通い、食事、入浴などの日常生活上の介護やレクリエーションなどを利用するサービス。 | 要支援・要介護認定者 |
ショートステイ (短期入所生活介護) | 短期入所施設などに短期間入所し、食事、排せつ、入浴などの日常生活上の介護や機能訓練を受けるサービ ス。 | 要支援・要介護認定者 |
ホームヘルプ (訪問介護) | ホームヘルパー(訪問介護員)が自宅に訪問し、介護や家事などの日常生活上のケアをするサービス。 | 要支援・要介護認定者 |
グループホーム (認知症対応型共同生活介護) | 入所定員 5~9 名の施設で、認知症の人が共同で生活し食事、排せつ、入浴などの日常生活上の介護や機 能訓練を受けるサービス。 | 要支援 2、 要介護 1~5 対象 |
小規模多機能ホーム (小規模多機能型居宅介護) | 通いを中心に、利用者の状態や希望に応じて、宿泊、訪問サービスを組み合わせて行うサービス。 | 要支援・要介護認定者 |
住宅型有料老人ホーム | 生活支援サービスが付いた高齢者向け施設。介護サービ スが必要な場合は、外部の介護事業者を利用する。 | おおむね 60 歳 以上の人 |
居宅介護支援センター | 介護保険サービスの利用相談窓口。ケアマネジャー(介護支援専門員)がおり、要支援・要介護認定申請などの申請代行やケアプラン(介護サービス計画)の作成、サービス利用の連絡調整を行う。そのほか介護保険制度 の相談も行う。 | ケアプラン作成は要介護 1~5 が対象(場合により要支援も含 む) |
地域包括支援センター | 市区町村が行う高齢者やその家族の総合相談窓口。xxxxxxxxx(xx介護支援専門員)や保健師、社会福祉士などがおり、生活や介護の総合相談のほか、介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画)の作成、サービス利用の連絡調整を担う。また介護予防・日常生 活支援総合事業の利用支援なども行う。 | 介護予防ケアプラン作成は要支援 1,2 が対象 |
児童発達支援 | 就学前の障がいのある児童が、日常生活の基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練、必要な療育を受け るためのサービス。 | 療育が必要と認められる未就学 児 |
放課後等デイサービス | 就学中の障がいのある児童が、授業の終了後または学 校の休業日に生活能力向上のために必要な訓練、社会 との交流、そのほか必要な療育を受けるためのサービス。 | 療育が必要と認められる小学生 ~高校生 |
各種資料をもとに当所にて作成
1-2 経営理念
xxx会は、「尊厳のxxxを持って社会福祉に貢献し、奉仕の価値観を共有し、介護福祉サービス日本一を目指します。」を理念とし、「使命」「貢献」「奉仕」「感謝」「努力」を5つの行動指針に掲げている。
“尊厳のxxx”とは、xxx会の姿勢そのものであり、利用者に接する際にはすべからく尊敬の念を持って、相手を尊重し行動することである。この姿勢がなければ、伝わる気持ちも伝わらず、介護職員とサービス利用者との間で信頼関係が構築されず、介護に支障をきたしてしまう。また、従業員に対しても同様であり、従業員満足度を高めていくことで確かなサービス提供が可能となる。そのためxxx会では、第一に理念で“尊厳のxxx”を掲げている。
こうした理念を掲げるに至った背景には、xxxx忠理事⾧の地域への熱い思いがある。佐々木理事⾧は、1979 年より日漢堂鍼灸院を開設し、⾧年にわたり地域の人々と接する中で、急速な高齢化や施設不足といった地域の課題に接するようになった。そこで、地域の要望に応える形で 2001 年 12 月に社会福祉法人を立ち上げ、特別養護老人ホームxxの里を設立するに至った。このようにxxx会は、「地域住民にあまねく貢献したい」との佐々木理事⾧の強い思いから出発
しており、現在も地域に根差した活動を旨とし、日々事業に邁進している。
1-3 業界動向
【地域包括ケアシステム】
地域包括ケアシステムとは、地域の実情に応じて高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制のことである。
厚生労働省は団塊の世代がすべて 75 歳以上を迎える 2025 年を目途に、社会構造の変化や高齢者ニーズに応えるため、地域包括ケアシステムの構築を推進している。高齢化の進展スピードは地域差があり、急激に高齢者人口が増える大都市部、高齢化自体は緩やかだが人口が減少する町村部など、地域において状況は異なる。加えて、医療施設や交通インフラなど地域資源も異なるため、保険者である都道府県や市町村が、それぞれの地域の実情に応じた包括的な支援・サービス提供体制を、地域の自主性や主体性に基づき、作り上げていくことが必要である。
xxx会は、静岡市において介護分野のケアサービスを担っており、特別養護老人ホームやグル ープホームなどの施設住居系サービスのほか、ホームヘルプやデイサービス、小規模多機能ホームなど の在宅系サービスを提供している。また、高齢者の介護の相談窓口となる居宅介護支援センターや地域包括支援センターなどを運営しており、静岡市の地域包括ケアシステムの構築に貢献している。
資料:厚生労働省ホームページ
【介護人材不足】
厚生労働省では、各都道府県が推計した第8期介護保健事業計画の介護サービス量等に基 づき必要な介護職員数を集計しており、全国では、2019 年度の介護職員数約 211 万人に対し、 2023 年度は約 233 万人、2025 年度は約 243 万人、2040 年度は約 280 万人の介護職員が必要になると予想している。また、静岡県では、2019 年度の介護職員数約 54,310 人に対 し、2023 年度は 59,449 人、2025 年度は 62,988 人が必要になるとし、将来は深刻な介護人材不足が予想される。
(単位:人)
2019 年度の 介護職員数 | 2023 年度 | 2025 年度 | 2040 年度 | |
必要数 | 必要数 | 必要数 | ||
全国 | 約 211 万 | 約 233 万 | 約 243 万 | 約 280 万 |
静岡県 | 54,310 | 59,449 | 62,988 | 71,817 |
資料:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について 別紙」
介護人材不足の背景には、第一に高齢者人口の急激な増加がある。日本は、他国に類を見ない速さで高齢化が進行しており、2020 年の 65 歳以上の高齢者数は全国で約 3,533 万人(高齢化率 28.0%)、静岡県で約 108 万人(同 29.8%)となっている。さらに、団塊ジュニア世代が 65 歳以上となる 2040 年には、全国で約 3,920 万人(同 35.3%)、静岡県で約 116 万人(同 37.5%)と、高齢者数がピークを迎えると見込まれている。
区分 | 2020 年 | 2025 年 | 2040 年 | 2045 年 | ||
全国 | 総人口(人) | 126,146,099 | 122,544,103 | 110,918,555 | 106,421,185 | |
65 歳以上人口(人) | 35,335,805 | 36,770,848 | 39,205,715 | 39,192,276 | ||
高齢化率(%) | 28.0 | 30.0 | 35.3 | 36.8 | ||
75 歳以上人口(人) | 18,248,742 | 21,799,724 | 22,391,805 | 22,766,642 | ||
高齢化率(%) | 14.5 | 17.8 | 20.2 | 21.4 | ||
静岡x | x人口(人) | 3,633,202 | 3,506,064 | 3,094,264 | 2,942,865 | |
65 歳以上人口(人) | 1,084,282 | 1,118,938 | 1,160,801 | 1,143,423 | ||
高齢化率(%) | 29.8 | 31.9 | 37.5 | 38.9 | ||
75 歳以上人口(人) | 561,807 | 666,318 | 681,130 | 683,123 | ||
高齢化率(%) | 15.5 | 19.0 | 22.0 | 23.2 |
資料:総務省統計局「国勢調査」(2005 年~2020 年)
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2025~2045 年)
介護人材不足のもう一つの理由に、介護人材が定着しないことが挙げられる。介護職は他業種に比べ、離職率が高くなっており、継続的な人材の確保が大きな課題となっている。第9次静岡県
⾧寿社会保健福祉計画によると、介護職員の仕事を選んだ理由は、「働きがいのある仕事だと思った」が5割を超える。一方、離職時には「職場の人間関係に問題があった」や「法人・事業所の理
念や運営方針に不満」が収入面の理由よりも多かったとしている。さらに、就職後3年未満の職員が離職者の約6割を占めており、新人職員の離職防止が大きな課題となっている。
区分 | 採用率(A) | 離職率(B) | 増加率 (A-B) | 離職者のうち 3年未満の職員の割合 |
静岡県 | 19.5% | 14.6% | 5.0% | 56.5% |
全国 | 19.3% | 16.0% | 3.3% | 66.1% |
全産業 | 16.7% | 15.6% | 1.1% | 65.8% |
資料:令和元年度介護労働実態調査、令和元年雇用動向調査、新規学卒就職者の離職状況
介護業界は、介護福祉士等専門職の育成支援や外国人介護人材の受入れにより、職員数は増加傾向にあるものの、急激に増える需要に対応しきれていない。そのため厚生労働省では、人材確保に向け様々な対策を行っている。同省は、①介護職員の処遇改善、②多様な人材確保、③離職防止・定着促進・生産性向上、➃介護の魅力向上、⑤外国人材の受入れ環境整備を強化していく方針を掲げている。
xxx会においても、従業員の処遇改善や従業員の状況に応じた働き方への対応、教育を通じた介護人材の定着化、技能実習生の受入れ体制整備を進めるとともに、法人の理念を職員に示し共感してもらうことで、人材の継続的な確保を試みている。
1-4 地域課題との関連性
【第9次静岡県⾧寿社会保健福祉計画】
静岡県は、高齢になり医療、介護、福祉生活における支援などを必要とする人が増加する中、誰もが住み慣れた地域で最期まで自分らしく暮らし続けることのできる社会づくりを課題としている。そのため、団塊の世代が 75 歳以上になる 2025 年に向けて、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が総括的に確保される地域包括ケアシステムを実現するため、「第9次静岡県⾧寿社会保健福祉計画」(2021~2023 年度の 3 年間)を策定している。
計画では、「地域で支え合い、健やかに、安心して最期まで暮らせる⾧寿社会の実現」を理念に、
①誰もが暮らしやすい地域共生社会の実現、②健康づくりと介護予防・重症化防止の推進、③在宅生活を支える医療・介護の一体的な提供、➃認知症とともに暮らす地域づくり、⑤自立と尊厳を守る介護サービスの充実、⑥地域包括ケアを支える人材の確保・育成、の6つの柱を立て施策を推進する。
また、介護サービス基盤の整備や高齢者の保健・福祉サービスを効率的かつ効果的に進めるために、市町の区域を越えた広域的な観点からの調整が重要であることから、高齢者保健福祉圏域として県内を8圏域に区分している。
本計画によると、xxx会が事業活動を行う静岡圏域は、総人口 691 千人、高齢者人口 209 千人で、どちらも圏域中 2 番目に多い。高齢化率は 30.5%と県平均の 29.9%よりも 0.6%高い。要支援・要介護認定者数は 39 千人、認定率は 18.3%と圏域の中で最高水準である。
同圏域では、2023 年に在宅サービスの利用者が 25,720 人、施設・居住系サービスの利用者が 9,256 人と、2020 年からそれぞれ在宅サービスが 2,856 人、施設・居住系サービスが 462 人増加する見込みである。また、要介護認定者に占める在宅サービス利用者の割合は、2019 年の 57.6%から 2023 年は 59.9%と、在宅で介護サービスを利用しながら暮らす高齢者の割合が増える見込みである。こうした介護需要の増加に対応するには、将来にわたり質の高い介護サービスを提供できる人材の確保・育成が課題となる。そのためには、新規就労の促進や介護の仕事に興味を持ってもらうための仕組みづくりが必要となる。
xxx会の事業活動は、施設サービスに加えて在宅サービスを拡充しており、静岡圏域の地域包括ケアシステム構築に大いに貢献している。
【静岡市 SDGsxx都市】
静岡市は、2018 年6月に「SDGs xx都市」に選出されており、総合計画で掲げる「『世界に輝く静岡』の実現」に資することを目的に、「市政への組み込み」「普及啓発」「情報発信」を3本柱として、SDGs の達成に向け積極的な取組みを推進してきた。
まず、SDGs が目指す国際社会の姿が、静岡市が目指す静岡“市民の安心や幸せ”を実現しようとする都市の姿と親和性が高いとして、総合計画の5大構想①歴史文化の拠点づくり、②海洋文化の拠点づくり、③教育文化の拠点づくり、➃「健康⾧寿のまち」の推進、⑤「まちは劇場」の推進、に事業の立案時から、環境・経済・社会の3側面の好循環が起こるよう SDGs を組み込んだ。
また、情報発信では、国際会議への参加による継続的なアピールのほか、官民連携で国内外のステークホルダーを招いたフォーラムを開催するなど、世界における存在感を強め、SDGs を推進している。さらに、啓発・普及については、行政だけでなく市民や企業などあらゆる主体が SDGs を自分事として捉え、行動していくことが不可欠であるとして、「知る・理解する」から「行動」に繋がるような機会を提供し、普及活動に取り組んできた。
今後は SDGs を推進することで、まちに賑わいをもたらす「交流人口」や、国が新たに提唱する
「関係人口」の概念を取り入れながら、人口減少を克服し、地域を活性化させていくことを目標に掲げ、静岡市の SDGs をより認知してもらうことで、多くの市民が行動する状況に繋げていく。
xxx会においても、SDGs を自分事として捉えることで、より利用者や従業員、地域住民に対して安心や幸せを提供できるよう行動していく方針である。
サステナビリティ活動
2-1 環境面での活動
(1) 廃棄物の適正処理
xxx会では、事業活動の中でさまざまな廃棄物が発生するため、専門の処理業者と契約を締結し、法律に則ってそれらの廃棄物をマニュフェスト処理するなど適切に管理・処理している。
排出される廃棄物には、事務関係の紙、厨房から出る食品残渣、使用済み紙おむつといった一般廃棄物や産業廃棄物などがあり、それぞれに収集・運搬・処分を行う専門業者へ委託し、適切に処理している。たとえば、xxx会では、特別養護老人ホームやグループホームといった居宅施設を筆頭に、ショートステイやデイサービスでも必要に応じておむつ交換をするため、グループ全体で毎月約 3 万7千枚の使用済み紙おむつが発生する。これらの使用済み紙おむつは、衛生面に配慮して生活空間と隔離した一時保管場所で保管後、一般廃棄物として適切に処理している。
▲施設で出た使用済み紙おむつの保管場所 ▲ゴミの分別を徹底し、適切に処理している
さらに、xxx会では、使用済み紙おむつの再資源化に向けた取組みを支援する予定である。現在、わが国では大量の使用済み紙おむつが発生し、その多くが焼却または埋め立て処理されている。今後、高齢者人口の増加で排出量はさらに増加する見込みであり、減量化・再資源化が今や喫緊の課題となっている。xxx会でも SDGs の観点から紙おむつの廃棄問題に取り組む必要性を感じていたところ、紙おむつの処理装置の開発を目指す機器メーカーから相談を受け、データの提供などを通じて開発を支援する予定となっている。同メーカーでは、紙おむつの再資源化を目指しており、xxx会でもこうした取組みを通じて環境負荷低減に貢献していく考えである。
また、医療的な措置を行った際に排出するガーゼや針、新型コロナ対応関連などの感染性廃棄物も日常的に排出される。感染性廃棄物は、安全面から厳格な管理が求められるため、指定の保管場所で保管した後、資格を有する専門業者へ委託し、適切に処理している。
さらに、特別養護老人ホームでは、常時約 100 名が居住しており多量の廃水が出るため排水処理は非常に重要である。そのため、専門の業者に依頼して、浄化槽の清掃を毎週実施することで、処理能力を維持するとともに異臭の発生などのトラブルを未然に防止し、適切に管理している。
加えて、特別養護老人ホームやグループホームの各部屋には生活に必要な電化製品が設置されているため、故障して使えなくなった製品は業者を通じてリサイクルしているほか、再利用が可能な製品は下取りに出すことでリユースを行い適切に処理している。
(2) 省エネルギー
介護施設は、利用者の生活空間となっているため 24 時間体制で運営しており、快適な生活空間を維持しつつ、可能な部分で省エネルギーに取り組んでいる。
たとえは、ロビーや応接スペースなどは、使用時以外の消灯や空調オフを徹底するほか、空調機器は、毎年夏前に故障が無いか試運転をするとともに、フィルターの清掃を実施している。フィルターの付いた室内機は多い施設で 100 機近くあり、稼働が本格化する前に清掃することで、エネルギー消費を抑制している。また、夏場の設定温度は原則 28℃とし、送風機などを併用することで必要なスペースに十分な冷風を送りつつ、冷房効率を高めている。
このほか、施設の LED 照明化を進めており、昨年はxxの里デイサービスで LED 化を完了し、今後は他施設でもxx進めていく方針である。さらに、設備更新時は省エネ性能の高い機器を導入できるよう、選定基準や省エネ設備リストの作成にも取り組んでいる。
さらに、入浴の際の湯の使用量削減にも取り組んでいる。介護施設の浴槽は、介護職員が入浴を介助しやすいよう大きめに設計されており、お湯張りには時間がかかる。しかし、職員は複数の業務を並行して進めるため、従来は、職員がお湯張りが終わったことに気づかず、湯を無駄に使用してしまうことがあった。そこで、xxx会ではすべての施設で湯張りアラームを導入することで、湯の使用量を適切に管理するとともに、職員の作業効率の向上も可能にしている。
また、営業で使用する自動車は、HV車などの燃費性能のよい省エネ車両を選好し、全車両の
9割近くを省エネ車両にしている。さらに、近隣への訪問の際はできる限り自転車で行けるよう、施設に常時自転車を設置しているほか、デイサービスなどの送迎の際には、ルート設定や時間を考慮し、ガソリンや送迎時間の無駄が生じないよう管理している。
2-2 社会面での活動
(1) 人材育成、就労継続支援
介護業界は、サービスを必要とする高齢者が年々増えており、サービスを提供する事業者側の人手不足に拍車が掛かっている。業界内では、職員教育を行う余裕がない、業務負担が大きく離職率が高いといった人材面の課題が浮上しており、xxx会ではこうした課題を解決すべく、人材育成に関するさまざまな方策を実施している。
① 法人内教育体制の拡充
xxx会では、人材育成を最優先課題に位置付け、職員教育体制の拡充を図っている。たとえば、年間の研修計画を策定し、職種ごとに必要なカリキュラムを指定して研修を実施している。事務職や訪問介護のスタッフ向けに、接遇やコンプライアンス、ハラスメントに関する基礎知識などの講座
を、現場スタッフ向けには、認知症ケア、プライバシー、感染症予防などの講座を設けるほか、介護度が重い入居者をケアする特別養護老人ホームのスタッフには、ターミナルケア、医療的ケアなど、職務内容に応じて約 20 種類の研修を用意している。また、新入職員の採用時には、虐待防止、身体拘束排除に関する研修を必ず行うほか、現場職員には、事故発生防止、感染症や食中毒防止、身体拘束適正化に関する研修を年2回以上行うなど、職員が継続的に学習できる環境を整えている。
さらに、新入職員を指導するトレーナー人材の育成も進めている。xxx会ではこれまでの経験から、職員教育においては、一定のスキルを有する職員の養成が不可欠であり、とりわけ、介護に初めて携わる新入職員は、モチベーションの低下が早期離職に繋がりやすく、適切な指導者による教育が欠かせないと感じていた。そこで、教育担当専門の部署を立ち上げ、各施設に教育担当者を複数名配置できるよう、テキストの作成、研修項目や手法の確立、トレーナーの人選や養成などを進めており、現在1名がトレーナーとして新入職員の指導を始めている。今後は指導者の数を増やして役割を明確化し、新入職員の成⾧を実感できるように教育体制を強化していく考えである。
また、xxx会では、意欲高く業務に取り組めるよう、パート職員についても表彰制度を設けている。各拠点の拠点⾧が、シフトへの協力、改善提案の実施、まごころを込めたサービス提供などの観点から、該当者を毎月推薦し、対象者には表彰状と賞品を贈呈し、法人内刊行物で紹介する。法人として、職員の日ごろの頑張りを評価して感謝の気持ちを伝えることで、モチベーションを維持し
⾧く就労してもらえるよう努めている。
② 資格取得支援
職員自身のキャリアアップとサービス向上のため、介護福祉士や介護支援専門員、xx介護支援専門員などの外部資格取得も推奨している。たとえば、介護福祉士や介護支援専門員などの資格取得にあたっては、⾧時間の研修受講が要件となっていることから、これらの研修を業務時間内に受講することを認め、取得を支援している。さらに、資格保有者に対し手当の付与も行っている。介護サービスの提供には、看護師、介護福祉士、管理栄養士、理学療法士など、さまざまな専門人材が欠かせない。xxx会では、専門的なスキルを有する人材に対し適切な報酬を支給するこ とで、人材の定着と新規資格取得に繋げている。こうした取組みの結果、現在、延べ 160 名以上 が専門資格を取得し、日々スキル向上に励みつつ業務に当たっている。
③ 技能実習生の受入れ
xxx会では、2019 年度から中国人技能実習生を受け入れ、国内だけにとどまらない介護人材の育成を図っている。技能実習生は来日する際、日本語能力試験において N4(基本的な日本語を理解することができる)の認定が条件となるが、「介護」職種では、一年後の在留資格更新の際に、N3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる)の認定が必要となる。また、介護職種の技能実習生は、専門的な介護用語の理解も必須となり、実習を進める上で日本語の習得がとりわけ重要となる。そこでxxx会では、日本語が堪能な中国人職員をトレーナーとして配置するほか、来日後およそ1カ月近くを集中的に日本語教育に費やすことで、介護技
能を着実に身につけられるようにしている。そのほか中国人の管理職が、日本特有のマナーや地域での決まり事、買い物の仕方など机上で学びにくいことも教えることで、生活面の支援もしている。今後は、ベトナムやインドネシア、ミャンマーなどからの実習生の受入れも検討している。
なお、現在は監理団体を通して技能実習生を採用しているが、技能実習制度での介護職追加が 2017 年と日が浅く、製造業が盛んな静岡県では介護職の受入れノウハウが手薄という課題がある。介護職は専門用語も多く、既存の監理団体も対応に苦慮していることから、xxx会では、介護を主業とする監理団体を独自に設立すべく、㈿Mirai Man Power を立ち上げ、準備を進めている。
また、静岡県は中国の浙江省と友好提携を結んでおり、xxx会でも、役員を中国に1年間出向させており、現地の介護制度整備に助力するなど、日本の進んだ介護技能や制度を伝えるため積極的に人材交流を行っている。こうした取組みは、近隣諸国の介護人材増加や技能の向上に繋がり、将来的には日本へも人材交流や技能の還流が期待される。
▲施設で高齢者とコミュニケーションを取る技能実習生
➃ 障がい者雇用
xxx会は、障がいのある児童の発達支援・放課後等デイサービス事業などに携わる中で、障がい者の人生のステージに合わせた支援が必要であるとの信念のもと、積極的に障がい者雇用に取り組んでいる。現在、xxx会として法定雇用率を上回る5名を採用し、施設内の清掃や緑化、レクリエーションの補助などの業務を任せている。さらに、以前は一般企業に委託していた特別養護老人ホーム「xxの里」の清掃業務を、就労継続支援 A 型の事業所への委託に切り替え、毎日
4~5人のスタッフが清掃業務を行っている。加えて、施設の屋上の補修、施設内のワックスがけなど、臨時の業務が発生した際には、早めに就労継続支援事業所の担当者に連絡することで、可能な限り障がい者に就労の機会を提供し、就労を通じた成⾧に繋げられるよう支援している。
(2) 安全・安心なサービスの提供
① 障がい児の支援
xxx会では、障がいを持った児童の健やかな成⾧を支援するため、「xxx西xx」において、児童発達支援事業と放課後等デイサービス事業を行っている。児童発達支援事業では、支援の必要な就学前の児童に対し、日常生活における基本的な動作、集団生活への適応、ことばやコミュニケーション能力などの支援を通所で提供する。また、放課後等デイサービスでは、支援を必要とする小学生・中学生・高校生が放課後や⾧期休暇・学校休業日に通い、自立に向けた日常生活支援、コミュニケーション能力の向上、学習支援を提供している。現在、児童発達支援に2名、放課後等デイサービスに 29 名の児童が通っており、学校を卒業してからの自立や就労を意識した支援も行うなど、未就学児から高校卒業まで⾧期にわたるサポートを行っている。現在は、葵区のxxxxxxだけだが、今後は駿河区やxx区でも拠点を増やしていく方針である。
こうした障がい児の支援サービスを始めた背景には、介護サービスでの経験がある。xxx会では、高齢となった障がい者を支援施設から受け入れることがあるが、障がい者にとって転居は身体的精神的に大きな負担となる。そこで、xxx会の中で、児童期には教育を、青年期には就労機会を、高齢期には居住施設を提供すれば、障がい者を⾧期にわたり継続して支援できると考え、児童の支援サービスを開始したのである。
② 安全な介護サービスの提供
介護施設では、従来から事故防止の指針の整備、研修の実施などが求められており、2021 年 の介護報酬改定でリスクマネジメントの項目が盛り込まれるなど、安全対策が強化される方向にある。そうした中、xxx会においても、利用者の安全確保に関するさまざまな対策を実施している。
たとえば、現場の全職員を対象に、事故防止に関する研修を定期的に行うほか、各拠点に事故防止委員会を設置して月1回会議を開催し、発生したアクシデント・インシデント内容の把握や、過去の事例の勉強会などを行うことで、事故防止に努めている。また、事故が発生した場合は、提携医療機関や各利用者の主治医に連絡して治療できる体制を整備しているほか、ただちに事故報告を作成し、理事⾧も含めすべての関係部署で情報共有するとともに、法人内システムで公開している。その際は、事故の発生場所、時間帯などを細かく分析し、再発防止策を検討・実施することで、利用者の安全確保に努めている。また、特別養護老人ホーム、グループホームの 3 カ所に見守りカメラを設置し、遠隔で利用者の状態を確認できる体制をとっている。
さらに、創業以来の理念を念頭に、利用者の尊厳を守りサービスを提供するよう徹底している。たとえば、入浴の際には男女が一緒になることがないよう時間帯を分けるほか、居室でのおむつ交換の際はベッドの周囲に必ずカーテンを引き、外部から見えないよう配慮している。また、倫理や法令遵守、虐待防止関連法を含む虐待防止に関する研修を通じて、基本的人権や人間の尊厳について繰り返し学習することで、介護者に欠かせない倫理観の醸成を図っている。
そして、xxx会では、自然災害などの発生時に利用者を守れるよう、事業継続計画(BCP)を策定している。地震や洪水など自然災害発生時に、地震の震度、液状化の可能性、津波による
浸水など、各拠点でどのような被害が想定されるかを示したハザードマップを作成するほか、非常時の連絡体制、利用者の安否確認と安全確保の方法、避難先や避難方法、備蓄食料等の内容を示し、非常時の被害を最小限に食い止められるよう、平常時から備えをしている。
(3) 安心して働ける労働環境の整備
xxx会では、職員が安心して働けるよう、さまざまな環境整備を行っている。
具体的には、育休産休など各種休暇制度を整備しているほか、シングル家庭への手当を支給し ており、従業員が自身のライフステージや家庭状況に合わせ、安心して働けるよう配慮している。また、子育て支援としてxx保育所と提携することで、復職がしやすい環境を整備している。
さらに、独自の「限定正職員」という制度を設けている。週の就労時間 40 時間以上、転勤可能、夜勤可能であることを正職員の条件としているが、家庭の都合で就業時間を短縮したい場合や転勤ができない場合でも、退職せずに継続して就労できるよう同制度を設け、現在 13 名が利用して いる。また、非xx職員の正職員への登用制度も設けており、毎年5名ほど登用している。現場で一定の評価を受けている人について、本人が正職員への転換を希望する場合は正職員として登用 することで、意欲ある職員に対し、一層の活躍の場を提供している。
また、高齢者雇用については、定年の 65 歳以降も希望に応じて再雇用をしている。再雇用者は 70~75 歳くらいまで働く従業員が多く、現在 46 名が同制度を利用し就労を継続している。高齢者は高いスキルを有するものの体力に限界があることから、高齢者と若手を組み合わせてバランスよく配置することで、高齢者の身体的負担を軽減するとともに、若手人材がベテランの介護技術を学び技術力向上が図れるといった相乗効果も出ている。
そして、こうした就労環境整備の根幹を支えるのが、全職員を対象にした個別面談である。これは、3カ月に一度、所属とは別の部署の幹部職員クラスが、全職員に対し個別に実施するものであり、現在の仕事の状況、抱えている課題、今後目指したいキャリア像、直属の上司には言えない要望などを丁寧に聴取する。その上で、成⾧に必要なアドバイスを行い、必要な場合は組織として対策を行うなど、徹底して職員が働きやすい環境整備に取り組んでいる。
(4) 従業員の負担軽減
介護サービスでは人を持ち上げる動作が非常に多く、介護従事者の職業病と言われるほど腰痛 が多い。そこでxxx会では、持ち上げる動作を軽減するため、すべてのベッドにリクライニング機能 を付けているほか、ベッドから車椅子への移乗時にはスライドボードを利用することで、抱える動作を削減している。今後は、リフト機器や介護ロボットを導入すべく、現在、複数機種の試用を開始して いる。また、特別養護老人ホームでは、入浴の介助の負担を軽減するため、「特浴」を導入している。これは、専用の浴槽を設置することで、利用者が座ったままの姿勢や横たわった姿勢で入浴ができる ものであり、安定した姿勢を維持することで利用者の安全性が高まるとともに、介助者の負担を軽減する効果もある。
また、特別養護老人ホーム、グループホームなど、宿泊を伴う事業所に見守りカメラを設置し、遠隔で多くの利用者を同時に観察できるようにすることで、夜間見回り回数の削減など、職員の負担軽減に繋げている。さらに、見守りや話し相手、環境整備などを行う介護補助業務者を配置し、介護福祉士や介護支援専門員などが専門的な業務に専念できるよう、環境を整備している。
(5) 地域貢献活動
xxx会は、創業以来の信念に基づき、さまざまな地域支援に積極的に取り組んでいる。たとえば、施設内に多目的に利用できる地域交流室を設けるほか、地元小中学校の福祉教育活動に協力して地域住民との繋がりを深め、介護サービスの理解促進を図っている。また、xxの里を津波避難ビル、xxの里と蜂ヶxxを福祉避難所とする協定を地元自治会と結び、地域の安全性向上に貢献している。
そのほか、xx地区において、社会福祉協議会とともに高齢者を対象とした買い物支援事業を開始している。デイサービスで利用するワゴン車を、毎週火曜に買い物支援のために運行し、地域の住民が継続して住み続けられるよう支援している。また、地域行事に機能訓練士や管理栄養士を派遣するほか、xxx会で「でんでん青空体操教室」を開催するなど、地域住民の健康増進にも寄与している。
2-3 社会・経済面での活動
(1) 地域社会との連携
xxx会では、行政から委託を受け、xxの里で「xxxx地域包括支援センター」を、xx で「城北地域包括支援センター」を運営している。これらは、地域住民が介護サービスを受ける際に、利用者を適切なサービスへ繋げるパイプ役としての重要な役割を担っている。また、xx委員ととも に区域内の高齢者を支援する「みまもり隊」という活動を行っている。高齢者宅でポストの新聞が溜 まっていないか、洗濯物が放置されていないかなど、異変が生じていないかを地域で見守り、高齢者 を支えている。
さらに、葵区、駿河区、xx区の3区で居宅介護支援センターを運営する。居宅介護支援センターは、介護支援専門員が、高齢者の心身の状態や環境、本人と家族の希望を考慮して、一人ひとりに合ったケアプランを作成するとともに、各サービス事業者等との連絡調整などを行っている。さらに、定期的に利用者を訪問し、必要なサービスが提供されているか、新たなニーズが発生していないかを確認するなど、地域の高齢者が適切に介護サービスを利用できるよう支援している。
(2) 幅広いサービスの提供及びグループ内での連携
xxx会は、介護施設・介護居宅サービスから障がい者支援まで、多様なサービスを提供することで、地域の人々を支えている。
特別養護老人ホームやグループホームなどの施設介護では、日常生活で介護を要する高齢者が安心して健康的に生活できるよう支援するほか、デイサービス、ショートステイ、ホームヘルプなどの居
宅介護では、介護が必要なものの住み慣れた家で過ごしたい高齢者を、訪問や通所サービスでサポートしている。また、訪問・通所・宿泊の各サービスを利用者の希望に応じて提供できる小規模多機能ホームも運営している。同サービスは、利用頻度によらず費用負担が定額であるため、xxx会では、利用者の費用負担にも配慮し、居宅介護サービスを頻繁に利用する介護度の高い利用者に対して、利用を提案している。
また、業務に必要なノウハウや技術を法人内で共有することで職員の能力向上を図り、必要な技術を有する職員を適切に配置することで、こうした多様なサービスを安定的に提供できる体制を整備している。
そして、グループの法人とも連携することで、サービス範囲をさらに拡大している。xxx会グループの一つである(医)xx会は「xxx齒科醫院」を運営しているため、利用者に対して訪問歯科診療を提供し、高齢者の口腔ケアを行っている。健全な口腔状態を維持することは、誤嚥や栄養不足の予防に繋がり、健康衛生においても非常に重要となる。また、㈱ワムタックでは介護付き有料老人ホームを運営しており、より豊かな生活を希望する高齢者向けに、周辺環境や施設内の設備を充実させることで、地域の高齢者に対し、居住での多様な選択肢を提供している。
そのほか、グループ法人の用品仕入や業務管理などをサポートする㈳Mirai Assist があり、ここでは、高齢者の身元保証人事業も行う。介護施設に入居するには保証人が必要だが、保証人がおらず入居に手間取るケースが多々ある。そこで、保証人事業をグループ法人が担うことで、高齢者がスムーズに入居できるよう支援している。
このように、xxx会では、法人内のみならず、法人外のグループ内で密接に連携することで、地域の人々が安心して生活できるよう複合的なサービスを提供している。
(3) 能力や働き方に見合った適正な処遇
xxx会では、職員が意識的に自身のキャリア形成を図れるよう、キャリアパス制度を整備して いる。キャリア形成のステップを、初任、現任、監督(xx、リーダー、副主任)、管理(部署⾧)、経営(施設⾧、部⾧)といった5段階に区分し、各段階で必要な能力や介護技能、資格、研修等を明示することで、自身がどの段階にいるかを認識するとともに、さらなるキャリアアップのために取り組むべきことが一目でわかるようにしている。たとえば、経験年数3~5年程度の職員は、xx、リ ーダー、副主任といった役職が期待されており、「職員をまとめる」「部下に正しい指導ができる」「他部署と連携する」といった社会的な能力のほか、「介護業務でチームケアができる」「人材育成ができ る」といった介護での実務能力も求められる。さらに、リーダー研修、介護技術者指導者研修、認知症対応型サービス事業管理者などの研修受講も必須とされる。
このように、職員は制度を参考に自身に必要な能力やスキルの習得に努め、試験または面接などの評価を経て、キャリアアップを図ることができる。xxx会では、段階によって求められる能力や役割などの基準を明確化することで、性別や年齢、国籍などに左右されない適正な評価と処遇が可能となっている。
2. 包括的分析
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析
UNEP FI のインパクト分析ツールを用いて、xxx会の高齢者介護事業を中心に、網羅的なインパクト分析を実施した。その結果、ポジティブ・インパクトとして「住居」、「健康・衛生」、「雇用」、
「人格と人の安全保障」が、ネガティブ・インパクトとして「健康・衛生」、「雇用」、「人格と人の安全保障」、「廃棄物」、「包括的で健全な経済」が抽出された。
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定
xxx会の個別要因を加味して、同法人のインパクト領域を特定した。その結果、強制労働自体がなく防止する取組みが必要ないことから、ポジティブ・インパクトのうち「人格と人の安全保障」を削除した。一方で、同法人のサスティナビリティ活動に関連のあるポジティブ・インパクトとして「教育」、
「包括的で健全な経済」、「経済収束」を、ネガティブ・インパクトとして「気候」を追加した。
【特定されたインパクト領域】
UNEP FI のインパクト分析ツールにより抽出されたインパクト領域 | |||
ポジティブ | ネガティブ | ||
入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 (一連の固有の特徴がニーズを満たす程度) | |||
水 | |||
食糧 | |||
住居 | |||
健康・衛生 | |||
教育 | |||
雇用 | |||
エネルギー | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
文化・伝統 | |||
人格と人の安全保障 | |||
xx | |||
強固な制度・平和・安定 | |||
質(物理的・化学的構成・性質)の有効利用 | |||
水 | |||
大気 | |||
土壌 | |||
生物多様性と生態系サービス | |||
資源効率・安全性 | |||
気候 | |||
廃棄物 | |||
人と社会のための経済的価値創造 | |||
包括的で健全な経済 | |||
経済収束 |
個別要因を加味し 特定されたインパクト領域 | |
ポジティブ | ネガティブ |
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性
xxx会のサステナビリティ活動のうち、ポジティブ面のインパクト領域としては、人材育成や就労支援が「教育」、「雇用」、「包括的で健全な経済」に、安全・安心なサービスの提供が「健康・衛生」や「教育」に該当し、安心して働ける労働環境の整備が「健康・衛生」や「雇用」、「包括的で健全な経済」に資する取組みと評価される。また、地域貢献活動が「健康・衛生」や「教育」に、地域社会との連携が「健康・衛生」や「経済収束」に、xxx会グループでの連携体制が「住居」や「健康・衛生」、「経済収束」に該当する。
一方、ネガティブ面においては、廃棄物の適正処理が「廃棄物」に該当し、省エネルギーが「気候」に該当する。また、従業員の負担軽減は「健康・衛生」や「雇用」への貢献が認められるほか、サービス利用者への安全衛生が「人格と人の安全保障」に資する取組みと評価できる。さらに、能力や働き方に見合った適正な処遇などは「包括的で健全な経済」への寄与が認められる。
3-4 インパクト領域の特定方法
UNEP FI のインパクト評価ツールを用いたインパクト分析結果を参考に、xxx会のサステナビリティに関する活動を同法人の HP、提供資料、ヒアリング等から網羅的に分析するとともに、同法人を取り巻く外部環境や地域特性等を勘案し、同法人が環境・社会・経済に対して最も強いインパクトを与える活動について検討した。そして、同法人の活動が、対象とするエリアやサプライチェーンにおける環境・社会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に最も貢献すべき活動を、インパクト領域として特定した。
3. KPI の設定
特定されたインパクト領域のうち、環境・社会・経済に対して一定の影響が想定され、xxx会の経営の持続可能性を高める項目について、以下の通り KPI が設定された。
4-1 社会面
インパクトレーダーとの関連性 | 教育、雇用、包括的で健全な経済 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 人材育成、就労継続支援 |
取組内容 | 介護技術を有する人材の育成、資格取得支援、技能実習生 の受入れ、障がい者の雇用及び就労支援 |
SDGs との関連性 | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 4.5 2030 年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を 促進する。 |
KPI(指標と目標) | 2029 年までに、新規に介護福祉士の資格取得者を 15 名輩出する |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生、教育 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 安全・安心なサービスの提供 |
取組内容 | 障がい児への安全・安心な教育サービス提供、高齢者へのx x・安心な介護サービス提供 |
SDGs との関連性 | 4.a 子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。 4.5 2030 年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を 促進する。 |
KPI(指標と目標) | 2029 年までに、児童発達支援・放課後等デイサービスを行う施設を、現状の1施設から3施設に増やす |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生、教育 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 地域貢献活動 |
取組内容 | 地域の高齢者の健康増進、地元小中学生への福祉教育活 動への協力、高齢者の買い物支援 |
SDGs との関連性 | 3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 11.5 2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。 11.7 2030 年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦 略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。 |
KPI(指標と目標) | 2029 年までに、地域で体操教室などの介護予防策となる行事を毎月 2 回開催できる体制を整える |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生、雇用 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 従業員の負担軽減 |
取組内容 | 介護機器の積極的な導入、従業員の労働環境を整備 |
SDGs との関連性 | 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境 を促進する。 |
KPI(指標と目標) | ①2029 年までに、介助を行う全7拠点に見守りカメラを設置する ②2029 年までに、泊まり機能を有する全 5 拠点で見守りセンサーを設置する ③2029 年までに、介助を行う全7拠点で介護ロボットを導入する ➃2029 年までに、泊まり機能を有する全 5 拠点で特浴もしく はリフト機器を設置する |
4-2 社会・経済面
インパクトレーダーとの関連性 | 住居、健康・衛生、経済収束 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 幅広いサービスの提供及びグループ内での連携 |
取組内容 | ニーズに応じた介護サービスの提供、グループでのノウハウ共有 |
SDGs との関連性 | 2.2 5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを 2025年までに達成するなど、2030 年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対 処を行う。 3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 9.1 全ての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。 11.1 2030 年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 11.3 2030 年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能 力を強化する。 |
KPI(指標と目標) | ①現状の介護サービスのラインナップを維持する ②2029 年までに、新たに定期巡回型訪問介護・看護事業所を開設する |
4. 地域経済に与える波及効果の測定
xxx会が本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、5年後の売上高を 22 億円に、従業者数を 379 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この
目標を達成することによって、xxx会は、静岡県経済全体に年間 42 億円の波及効果を与える法人となることが期待される。
5. マネジメント体制
xxx会では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xxxxx理事⾧が陣頭指揮を執り、法人内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーやSDGsとの関連性、KPIの設定について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xxxxx⾧を最高責任者、xxx執行理事を実行責任者とし、法人事務局が中心となって KPI の達成を目指していく。実施にあたっては、法人全体の係⾧以上が出席する管理者会議を通じて法人内へ浸透させるとともに、法人内刊行物や社内のインターネット掲示板にて全従業員へ周知し、全従業員がxxとなって SDGsの実現に取り組んでいく考えである。
最高責任者 | 理事⾧ xxx xx |
x行責任者 | 執行理事 xxx x |
プロジェクトリーダー | 法人本部理事⾧補佐 xx xx |
担当部署 | 法人事務局 |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成及び進捗状況については、静岡銀行とxxx会の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金及びその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行とxxx会が協議 の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行及び静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するxxx会から供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
一般財団法人静岡経済研究所
調査部 研究員 xx xx
〒400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x XXX:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 9 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 社会福祉法人xxx会に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が社会福祉法人xxx会(「xxx会」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、xxx会の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、xxx会がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しなが
ら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるxxx会から貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000