Contract
協定書本文 |
備考 |
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研究機関○○(以下「甲」という。)及び研究機関△△(以下「乙」という。)は、○○○○(以下「丙」という。)との雇用契約について、次のとおり協定する。
※ 在籍型出向をより明確にする場合は、以下の文例 研究機関○○(以下、「甲」という。)と研究機関△△(以下、「乙」という。)は、甲に所属する○○○○(以下、「丙」という。)が、甲及び乙との雇用契約関係の下で、乙の業務を行うに当たり、次のとおり協定(以下「本協定」という。)を締結する。 |
甲又は乙に所属する研究者等が、もう一方の機関に在籍出向する形態のクロスアポイントメントを「在籍型出向」形態のクロスアポイントメントと定義し、本協定書例では、甲に在籍する研究者(丙)が、乙へ「在籍型出向」する形態により甲乙の間でクロスアポイントメントの協定を結ぶ際の一例を示す。
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(目的) 第1条 この協定は、丙が甲及び乙において、○○○・・・を目的とする。
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クロスアポイントメントを実施することにより甲及び乙が達成を目指す目的と、職業安定法第44条により禁止される「業」としての労働者供給事業に該当しないこととして、当該目的が符合する在籍型出向の4類型(①離職者対策を目的とした関係会社における雇用機会の確保、②経営指導、技術指導、③職業能力の開発、④関連企業内の人事交流)のいずれかを明示する。例えば、研究者等が出向先において研究開発業務に携わることは、研究者等の知見やスキルが出向先においても活用されることになるため、②の目的を有するものに該当する。ただし、就業規則において出向目的・類型が明示されており、先方機関との間で出向受入れに係る包括的な協定が締結済みであれば、この限りではない。 なお、実態が記載されたものと異なる場合には職業安定法第44条が禁止する労働者供給事業に該当し得る。 |
(丙の身分) 第2条 丙は、次条に定める期間中、甲乙双方に在籍しているものとする。 2 丙の甲における職名は、○○研究員(○○教授)とし、○○に所属させる。 3 丙の乙における職名は、○○研究員(○○教授)とし、○○に所属させる。
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甲乙双方に常勤職員としての身分を有することを示す。 なお、必要に応じ、就業規則上の兼業規定との整理(兼業緩和の要件、兼業規定の適用除外など)を行っておくこと。
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(協定期間) 第3条 本協定の協定期間は、令和○年○月○日から令和○年○月○日までとする。 2 甲乙双方又はいずれか一方から、業務の都合等により、前項の契約期間を短縮又は延長したい旨の申し出があったときは、甲乙協議の上、これを変更することができるものとする。その場合、当該申し出は、遅くとも期間満了日(契約期間を短縮する場合は、短縮後の満了予定日)の1ヶ月前までに行うものとする。 3 本協定は、前2項の協定期間が満了したときに終了するものとする。 4 次の各号のいずれかに該当するときは、甲及び乙で協議の上、協定期間の満了日前であっても本協定を解約することができるものとする。この場合、甲はあらかじめ丙に対しその旨を通知するものとする。 一 甲の就業規則等に基づき甲が丙を休職とするとき又は乙の就業規則等に基づき乙が丙を休職とするとき。 二 甲又は乙が、本協定を継続することが困難である、又は継続することが適当でないと判断したとき。 三 本協定の解約を必要とする事情が生じたとき。 |
特に協定の解約要件については、出向元との雇用関係が協定解約に伴い即座に解消されるわけではないことに注意。 なお、一方機関における休職については、即時に解約とする例もある。
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(丙の業務及び従事割合) 第4条 丙は、甲において、○○○○の業務に従事するものとし、丙の甲における業務の甲乙双方における業務に占める割合は100分の○とする。 2 丙は、乙において、○○○○の業務に従事するものとし、丙の乙における業務の甲乙双方における業務に占める割合は100分の○とする。
第5条 丙の甲及び乙における勤務日は、別に定める。ただし、甲又は乙が、事前に相手方及び丙にその旨を通知した上で、丙の同意を得た場合は、この限りでない。 (例1)1勤務日においていずれか一方の機関での就業を行わせる場合 2 丙は、1勤務日においては、終日、甲又は乙いずれかの業務のみを行うものとする。 (例2)1勤務日に双方の機関での勤務を認める場合 2 丙は、1勤務日においては、終日、甲又は乙いずれかの業務のみを行うものとする。ただし、甲乙丙が別途の合意をした場合は、この限りでない。
3 丙が同一勤務日に甲及び乙の就業場所を移動するのに要する交通費は、【甲又は乙】の負担とする。 4 丙が同一勤務日に甲及び乙において就業する場合、甲及び乙は、丙に対し各○分の休憩を与えるものとする。
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従事割合を規定。「在籍型出向」形態のクロスアポイントメントにおいては、出向元及び出向先の関係を明らかにし、互いの実施業務について認識の齟齬をきたさないよう、第2条ないしは本条において両機関における業務概要について整理されていることが適当である。研究者等が能力を大いに発揮することを可能にするという観点から、業務内容は高い柔軟性を持って業務ができる内容を簡潔に示すことが適当である。
1勤務日においていずれか一方の機関での就業を行わせる場合は例1のように定めればよいが、1勤務日に双方の機関での勤務を認める場合は例2のような規定を置く必要がある。 |
(労働条件等) 第6条 丙の甲及び乙における労働条件については、甲及び乙それぞれの就業規則、賃金規程その他の規程(以下「就業規則等」という。)の定めるところによる。ただし、甲及び乙の就業規則等のうち、出向労働者又は短時間労働者に適用されない規定についてはこの限りではない。
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双方の機関の定める就業規則等の規定は、それが出向労働者又は短時間労働者に適用されない(と解釈される)規定以外は丙に適用されることとなると考えられるので、その旨を念のため規定するものである。 |
(給与の支給等) 第7条 丙の給与(賞与を含む。)は、甲における丙の就業につき甲の就業規則等の定めに基づいて算定された金額及び乙における丙の就業につき乙の就業規則等の定めに基づいて算定された金額を合算した金額を、甲が支給するものとする。 2 乙は、乙における丙の就業につき乙の就業規則及び給与規程の定めに基づいて算定された金額を甲に支払うものとする。 3 丙に係る源泉所得税の徴収は、甲がこれを行うものとする。
(実労働時間の開示) 第8条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自らにおける丙の当月1日から末日までの実労働時間を、翌月○日までに、~~の方法【注:タイムカード、作業日報等、実労働時間が分かる資料の写しを交付する方法等が考えられる。】により開示するものとする。
(年次有給休暇) 第9条 甲及び乙は、丙に対し、甲【出向元】の就業規則等に基づいて算定される年次有給休暇の日数に、甲及び乙が第4条に定める業務割合に乗じた日数の年次有給休暇をそれぞれ付与するものとする。
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給与の一括支給を規定。 直接本人に給与を支給しない機関においては、必要に応じ、給与を所属機関外から一定の比率において直接支給されることが可能となるよう、就業規則上の整理が必要と考えられる。
労働基準法の労働時間の規制につき、出向元、出向先における各労働時間は通算されるため、出向元と出向先は対象者の実労働時間を相互に共有する必要があり、協定でその具体的運用を定めることが望ましい。
出向元・出向先の各就業規則で、短時間勤務を前提とした有給休暇の日数(労働基準法施行規則第24条の3第3項参照)が定められていれば、それぞれの就業規則に準拠した日数を付与することも考えられる。 |
(社会保険等) 第10条 丙の医療保険、年金保険及び雇用保険については、本協定期間中、甲における加入を継続するものとする。 2 前項に定める各保険の保険料事業主負担分は、甲が支払うものとする。 3 乙は、甲が支払う保険料事業主負担分のうち第4条に定める丙の乙における従事割合に応じた丙に係る保険料事業主負担分に相当する額の金員を甲に支払うものとする。
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給与を一括支給することに伴い、保険料事業主負担についても一括支給先において取り扱うことを規定。
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(労働者災害補償保険) 第11条 丙の本協定期間中における業務災害及び通勤災害に係る労働者災害補償保険の保険関係の成立については、労働保険の保険料の徴収等に関する法律に定めるところにより、甲が行うものとする。 |
労働者災害補償保険については、「在籍型出向」の形態により、出向元又は出向先のいずれかが一括して給与を支払う場合、給与を一括して支払う機関が保険料を納付する。 出向労働者である如何にかかわらず、労働者であれば、業務又は通勤を原因として負傷等した場合には、労災給付を受けることが可能。
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(退職) 第12条 甲の就業規則等に基づき、丙が甲を退職するとき(甲が丙を解雇するときを含む。)は、本協定を解約するものとする。 2 乙の就業規則等に基づき、丙が乙を退職するとき(乙が丙を解雇するときを含む。)は、本協定を解約するものとする。 |
一方機関が解雇するときには、あらかじめ他方機関に協議・相談する旨の規定を入れることも考えられる。
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(懲戒) 第13条 丙の行為が、甲及び/又は乙の就業規則等に基づく懲戒事由に該当する場合は、甲及び/又は乙は、自らの就業規則等に定める手続に基づき、丙に対する懲戒処分を行うことができる。 |
甲及び/又は乙が丙に対して懲戒処分を行うには、対象行為が自らの就業規則における懲戒事由として規定されている必要がある。対象行為が双方の就業規則の懲戒事由に該当する場合は、同一の事由につき出向元と出向先の双方が懲戒処分を課すことは可能である。 |
(守秘義務) 第14条 甲及び乙は、丙が職務上知り得た互いの秘密(甲の職務上知り得た甲の秘密及び乙の職務上知り得た乙の秘密)を、互いに、他当事者及び第三者に漏えいさせてはならず、また、職務上の目的以外の目的で使用させてはならない。 2 甲及び乙は、本協定に関して知り得た相手方の秘密を、第三者に漏えいしてはならず、また、本協定の目的以外の目的で使用してはならない。 3 前二項の規定は、本協定期間満了後も効力を有する。
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違背した場合には就業規則等に基づき、各機関における懲戒事由となり得る。
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(知的財産権) 第15条 甲及び乙は、それぞれ、従業員の職務発明(特許法第35条第1項に定める職務発明をいい、発明の他、考案及び意匠を含む。以下同じ。)を自らが承継することを定めた職務発明規程その他の規程(以下「職務発明規程」という。)を設けていることを互いに確認する。 2 丙が本協定期間中に行った職務発明の帰属等については、甲乙それぞれの職務発明規程に従うものとする。 3 丙が本協定期間中に業務上作成したものにかかる知的財産(著作物、ノウハウ、データ、その他の知的財産)のうち、職務発明以外のものであって、甲又は乙に帰属するものについては、甲の業務上作成されたものについては甲に、乙の業務上作成されたものについては乙に、それぞれ帰属するものとする。 【4 丙は、職務発明又は前項の知的財産が生じたときは、速やかに甲乙双方に書面により通知する。】 |
知的財産の帰属について、具体的に規定している例。職務発明(考案及び意匠を含む)については、法律上の規定に則って帰属、すなわち各法人の職務発明規程に基づいて各法人に帰属することとし(2項、このように規定すれば、甲における職務発明は甲に、乙における職務発明は乙に、それぞれ帰属する。)、その前提として、法人に権利が帰属するための職務発明規程が設けられていることを確認している(1項)。 また、職務発明以外の知的財産については、職務発明の帰属と平仄を合わせるため甲乙いずれの「業務上」作成されたものかを基準としている。 さらに、クロスアポイントメントに関連した業務で知的財産が生じた場合、他方当事者に対してその旨を通知する義務を課す場合は、4項のような条文を設けることが考えられる。 |
(損害賠償) (例1) 第16条 丙が甲の業務に関連して、故意又は過失により甲に損害を与えた場合、甲は乙に対して、その損害の賠償を請求することができないものとする。 2 丙が乙の業務に関連して、故意又は過失により乙に損害を与えた場合、乙は甲に対して、その損害の賠償を請求することができないものとする。 (例2) 第16条 丙が乙の業務に関して、故意又は過失によって乙に損害を与えた場合、乙は丙及び甲にその損害賠償を請求することができる。
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一方機関業務に関連した丙が与えた損害についての丙ないし他方機関への求償については両機関の合意内容に基づく。文例として求償不可とする場合(例1)、求償可とする場合(例2)を示した。
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(その他) 第17条 本協定に定めのない事項が生じたとき又は本協定の内容に疑義若しくは変更の必要が生じたときは、その都度甲及び乙で協議の上、決定する。 |
大学における業務に学生が関与する場合は、学生の安全管理、学位論文等作成時の知的財産権の取扱い、教育課程の履修の優先、適切な報酬額の設定等について、あらかじめ定めておくことが適当である。 なお、これらについて別途覚書を取り交わすことも考えられる。 上記規定のほか、安全衛生、福利厚生、旅費について規定することが考えられる。
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(協定書の保管) 第18条 この協定書は2通作成し、甲乙それぞれ記名捺印の上、各1通を保管するものとする。
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令和○○年○○月○○日 (甲) 住所 ○○○○○○○○○○○○○ 所属 ○○○○○○○○○○○○○ 役職 ○○ 名前 ○○○○ (乙) 住所 ○○○○○○○○○○○○○ 所属 ○○○○○○○○○○○○○ 役職 ○○ 名前 ○○○○ |
協定の締結は、機関長を原則とする。 機関間の協定に伴って、協定内容につき本人の同意を確認する例もあり。 また、それぞれの就業規則の規定により、本人に対し出向命令書及び労働条件通知書の交付を行う。
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