静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱野末商店(社長 野末洋介)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2021.9.28
㈱xx商店と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(xx xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱xx商店(社長 xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 9 月 28 日(火)
2.融資金額 3 億円
3.資金使途 運転資金
4.㈱xx商店の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、鉄・非鉄金属を専門とした金属スクラップリサイクル業者で、金属リサイクルの国内循環をめざし、自動車部品メーカーや家電リサイクル工場などから金属スクラップを回収し、再資源化することで資源の有効活用に取り組まれています。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
社会面 | ・安心安全な労働環境の整備(全破砕・粉砕工程において集塵機を設置、スポットクーラーの設置、現場作業員全員に空調服を配布) ・交通安全対策の徹底(金属スクラップ運搬時のルート確認、安全運転講習会の定期開 催、計画的な配車管理) |
|
経済面 | ・高い経済生産性の維持(生産計画実績表による実績の見える化、クラウドサービスを利用した情報の共有化、専務による社内教育講座、資格取得補助、グループ会社間での相互監査体制、ISO9001 や ISO14001 による社内体制の体系化) | |
環境面 | ・資源効率、資源の安全確保(再生資源利用製品の使用、リグルーブタイヤの活用、廃モーターの処理能力向上を見込む新工場の建設) ・サプライチェーン全体の環境負荷低減への取り組み(高純度な再生資源製造によるサ プライチェーン全体での廃棄物削減、省エネ機器等導入による CO2 排出量の削減) |
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】㈱xx商店の概要
所 在 地 | xxxxxxxx 000 | 設 立 | 1977 年(昭和 52 年)4 月 |
資 本 金 | 10 百万円 | 売 上 高 | 9,133 百万円(2020 年 8 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2021 年9月 28 日
一般財団法人 静岡経済研究所
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 株式会社xx商店(以下、xx商店) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、xx商店の企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
(企業概要、経営方針と事業活動)
xx商店は鉄・非鉄金属を専門とした金属スクラップリサイクル業者であり、銅やアルミ、鉄などを中心に取り扱っている。特筆すべきは、「炉前認定」と評される高純度の再生資源であり、納品先の規格を満たした品質は他社との差別化につながるだけでなく、サプライチェーン全体の環境負荷軽減にも貢献している。2021年度中に新工場の建設も予定されており、更なる処理能力の向上、品質の改善に努めている。
(インパクトの特定)
ポジティブなインパクトが期待できる活動としては、各種休暇制度や納得性の高い人事評価制度といった従業員のモチベーションを向上させる取組みなどが、社会面の「働きやすく働きがいのある職場」に、実績の見える化やクラウドサービスによる多様な情報の共有など効率化された生産 体制が、経済面における「高い経済生産性」に想定される。そのほか、鉄・非鉄金属のリサイクル事業や炉前認定品質などが、環境面の「廃棄物の削減や資源の国内循環」や「サプライチェーン全体での環境負荷低減」に資するポジティブなインパクトである。
一方で、ネガティブなインパクトを低減する活動としては、集塵機などの充実した設備の導入や危険箇所の共有などが、社会面における「安心安全な労働環境」や「交通安全対策」のネガティブなインパクトを低減させている。油水分離槽の設置や排水溝の定期清掃は「水質の保全」に、xxx発電システムや照明の LED 化、ハイブリッドカー・電動フォークリフトの導入などは「CO2 排出量の削減」に対するネガティブなインパクトの抑制となっている。
(インパクトレーダーとの関連性)
特定されたインパクトを UNEP FI が掲げるインパクトレーダーに当てはめると、ポジティブ・インパクトについては、働きやすく働きがいのある職場の醸成や高い経済生産性の実現が「雇用」や「経済の収れん」に該当する。金属スクラップのリサイクルやサプライチェーン全体での環境負荷低減は
「資源効率・資源安全確保」や「廃棄物」、「気候変動」への該当が想定される。
一方、安心安全な労働環境の提供や交通安全対策は「健康と衛生」や「移動手段」の、水質の保全や CO2 排出量の削減は「水」や「気候変動」のネガティブ・インパクトを抑制している。
(SDGs との関連性)
モチベーションを向上させる人事評価制度など働きやすく働きがいのある職場の醸成や効率化された生産体制による高い経済生産性の実現が「ターゲット 8.5」や「ターゲット 8.2」への関連性が認められ、金属スクラップのリサイクルは「ターゲット 12.2」や「ターゲット 12.5」にとってプラスの効果を与える。炉前認定と評されるほどの高純度な再生資源の製造によるサプライチェーン全体での環境負荷低減は「ターゲット 11.6」や「ターゲット 12.5」に資する。
一方、安心安全な労働環境や情報の共有などによる交通安全対策、油水分離槽での水質の保全が「ターゲット 8.8」や「ターゲット 3.6」、「ターゲット 6.3」、「ターゲット 12.4」のネガティブなインパクトを低減させている。また、再生可能エネルギーの利用や CO2 排出量の削減が「ターゲット 7.2」や「ターゲット 11.6」に対するネガティブなインパクトの抑制となっている。
(地域課題との関連性)
xx商店では、10 年後に売上高や従業員の増加が見込まれ、これにより静岡県経済全体に年間 317 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
また、日本の貴重な資源をリサイクルすることで国内循環させる自社の取組みを公表し、金属スクラップ処理業界の枠組みを超えてサプライチェーン全体の意識を高めて環境負荷低減に貢献することを目指している。本ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、代表取締役社長のxxxxx
(以下、xx社長)のこうした強い思いを具現化するものである。
(KPI の設定とマネジメント体制)
xx商店は、特定したインパクト(社会面、経済面、環境面)ごとに、KPI(指標と目標)を設定する。推進体制としては、xx社長を最高責任者とした、経営企画室内のプロジェクトチームが中心となる。また、行政や公的機関、支援機関、あるいは同じ思いを持つ全国の金属スクラップ処理業者との連携、協力を模索する。
(モニタリング)
KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とxx商店の担当者が、少なくとも年に1回の会合の場を設け、共有する。静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2021 年9月 28 日~2026 年9月 28 日 |
金額 | 300,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5年0ヵ月 |
企業概要
企業名 | 株式会社xx商店 |
所在地 | xxxxx 000 |
工場 | 本社工場 (xxxxx 000) xx工場 (xxxxxxx 000) |
関連会社 | 株式会社関西メタル (大阪府羽曳野市xx 1377)株式会社中部メタル (xxxxxxx 000) |
従業員数 | 68 名(xxグループ全体) |
資本金 | 10 百万円 |
業種 | 鉄・非鉄金属リサイクル事業 |
許認可 | 産業廃棄物収集運搬業産業廃棄物処分業 |
主要取引先 | (仕入先) (販売先) 豊通マテリアル株式会社 DOWA メタルテック株式会社 トピー実業株式会社 株式会社xxxx所 エコシステムリサイクリング株式会社 豊通マテリアル株式会社xx屋株式会社 xxxx株式会社 株式会社ニッパ 阪和興業株式会社 |
沿革 | 1965 年 xx商店として個人創業 1977 年 株式会社xx商店設立 1987 年 本社社屋落成 2001 年 大阪営業所(現株式会社関西メタル)開設 2004 年 ISO14001 認証取得 2005 年 xx工場開設 2008 年 ISO9001 認証取得 |
(2021 年9月 28 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および強み
xx商店は鉄・非鉄金属を専門とした金属スクラップリサイクル業者である。主な取扱い金属は、銅やアルミ、鉄などであり、特に銅系は売上金額ベースで全体の 73%を占めている。非鉄金属は家電メーカーや建設業者、自動車メーカーなどから、鉄に関しては、静岡県に本社を置く大手四輪・二輪車メーカーであるスズキやヤマハ発動機の Tier1,2,3 からの調達が主となっている。個人からの買い付けにも対応しており、1㎏からの買い取りも行っている。また、取扱量を安定させるために海外からも優良なスクラップを調達している。
<2019 年度 取扱い金属一覧>
(単位:百万円、xxx)
品目 | 銅系 | アルミ系 | 鉄系 | SUS系 | 家電系 | その他 | 合計 |
金額 | 6,690 | 450 | 395 | 150 | 131 | 1,292 | 9,108 |
正味重量 | 1,265 | 461 | 1,684 | 183 | 124 | 823 | 4,540 |
資料:xx商店「取扱い金属別売上・重量」
関連会社として、株式会社関西メタル(以下、関西メタル)と株式会社中部メタル(以下、中部メタル)が存在する。関西メタルは関西の回収窓口機能を、中部メタルは金属含有複合品処理工程の破砕・粉砕や機械選別工程を担っている。
納品
機械選別
破砕・粉砕
バラ
フレコン・
通い箱詰め
プレス
成分分析
目視選別 <要選別>
手選別
<選別不要>
回収
回収
金属スクラップ処理依頼
<金属スクラップ回収から製品納品までのフロー>
金属スクラップ
排出事業者
関西メタル
xx商店
中部メタル
素材メーカー等
xx商店は、静岡県西部地域を中心とした排出事業者および関西メタルから金属スクラップを回収し、作業員による目視・手選別を行う。その中でも金属含有複合物など選別が必要な ものは、隣接した中部メタルに持ち込まれ、シュレッダーや粉砕機などにより細かく破砕・粉砕される。破砕・粉砕された金属含有複合物は、振動式選別機や磁選機、風力選別機、湿式選別機などによる機械選別工程を経て、それぞれの金属に分類・抽出され、xx商店において成分分析が行われる。発光分析機やX線分析機により納品先である素材メーカーの規格を満たしていることが確認された金属は、プレス加工やフレコンバッグ・コンテナ詰め後、もしくはバラで納品先である素材メーカーなどに出荷される。金属スクラップの再生資源化工程のうち、xx商店は問屋として、中部メタルはナゲットメーカーとしての機能を果たしていることになる。
リサイクル業者から納品された金属スクラップは、素材メーカーで電気分解などの精錬工程を経て純度を高めてから溶解されるのが一般的だが、xx商店の一部の再生資源は純度が非常に高いため精錬工程が不要となっている。納品先の素材メーカーは精錬工程を省略することで、時間やコストの削減が図れるため、同業他社との差別化につながっている。
また、xx商店は本社工場、xx工場、関西メタル、中部メタルを合わせて約3万㎡の広大な敷地面積を擁している。その圧倒的なヤードによる保管量は、排出事業者からの安定した受入れを可能にし、素材メーカーの要求する量の再生素材の素早い供給につながり、同社の強みとなっている。
2. 業界・取引先からの要望・ニーズ
近年、電動化や自動化の進展から、モーターを使用した製品や機械が急増している。導入してから 10年ほどが経ち、これらの製品や機械は役目を終え、廃棄されるモーターの増加が見込まれる。モーターには銅をはじめとした多くの金属が含まれており、鉱物資源のほとんどを輸入に頼っている日本にとって、モーターのリサイクル率向上は大きな課題となっている。
xx商店は従前から家電製品などに使われている小型モーターのリサイクルを行っており、選別技術を研究することで、2014 年8月に廃棄モーター等のリサイクル技術について静岡県から経営革新計画を承認されている。さらに、小型モーターもターゲットにした新工場をxx工場の隣地に建設中である。新工場にて電動モーターの選別ノウハウを蓄積し一層の選別技術の向上を図ることで、いずれは小型モーター以外の様々なモーターにも対応していく方針である。
<モーターを使用した次世代自動車(乗用車)の国内新車販売台数と産業用ロボット出荷台数の推移>
2017 年末から始まった中国の廃棄物輸入制限により、これまで中国への輸出に依存していた雑品スクラップの国内回帰が起こっている。雑品スクラップとは、複数種類の金属やプラスチックなどが雑多に含ま れる廃棄物であり、処理工程に多くの労力がかかるため、通常の廃棄物と比べ受け入れている処理業者は少ない。xx商店では、雑品スクラップとして輸出されていた中でも非鉄金属を含む高品位品を受け入れており、その処理能力をさらに拡大すべく、処理工程や人員配置の見直しを行っている。さらに、2021年度中に前述した新工場建設を予定しており、更なる処理能力の拡大を図っている。
3. 経営方針と事業活動
【国内循環宣言】
xx商店は、鉄・非鉄金属問屋として自動車部品メーカーや家電リサイクル工場などから金属スクラップを回収し、再資源化することで限られた資源の有効利用に努めている。同社の理念は
「国内循環宣言」、「日本の大切な資源を原料に」であり、鉱物資源が乏しい日本において資源効率を最大限に高めるべく、金属スクラップを貴重な資源と見做すことで国内金属資源の循環に貢献している。資源の終わりから始まりまでをつなぐ意識が社内に根付いている。
【鉄・非鉄金属リサイクル事業】
xx商店の鉄・非鉄金属リサイクル事業は、主に銅やアルミ、鉄などを扱っており、様々な事業者から受け入れているため取扱品目は非常に多い。しかし、専用工程を持たず作業現場を機能別レイアウトとする、選別機械を組み合わせたり改良したりする、などといった工夫を凝らすことで柔軟に対応できる体制が整っている。その結果、再生資源として素材メーカーへ納品する割合を高い水準で維持している。
再生資源の品質の高さもxx商店の特徴である。通常の再生資源は純度を高めるために素材メーカーにて精錬工程を経るのだが、xx商店で製造された一部の再生資源は納品先素材 メーカーの規格を満たしているため精錬工程が不要とされている。これは素材メーカーから「炉前認定(=炉に入れる直前のように高い品質)」と評されており、一般的なリサイクル業者が「回収した金属スクラップをどのようにして再生させるか」という金属スクラップを基本にした発想をしているの に対して、xx商店は「素材メーカーが求める規格の資源をどのようにしてスクラップ原料から集めるか」という再生資源を基本にした発想をしているため実現した品質である。アルミを扱う素材メーカーでは、精錬工程に大量の電力を必要とするため、xx商店の品質の高さは納品先の素材メーカーでのCO2排出量削減につながっている。高品質なリサイクルは、素材メーカーで使用可能な再生資源が増加するため、資源の国内循環にも貢献している。また、素材メーカーに高品質な 再生資源を供給することが、素材メーカーの製品の品質を高めることにつながり、延いては素材を使用して製造する製品の歩留まりの改善などにも貢献し、廃棄物削減やCO2排出量の削減な どといった、サプライチェーン全体の環境負荷低減に貢献している。
<xx商店の高品質なリサイクルがサプライチェーン全体へ与える影響>
xx商店の高品質なリサイクル
納品先素材メーカーで使用できる程の純度の高い再生資源
納品先素材メーカーや素材から製品を製造するメーカーの歩留まり改❹
資源の有効活用 廃棄物削減 CO2排出量削減
さらに、xx商店の営業部は、金属スクラップの仕入先に対して定期的な訪問を行い、回収量の増加といった営業活動だけでなく、仕入先の製造工程や発生する金属スクラップの内容の変化を把握することで、最適な処理方法を随時提案しており、リサイクル率向上につなげている。磐田市などの行政との情報交換にも積極的に取り組んでおり、地域の環境意識の向上にも貢献している。
【効率化された現場】
xx商店では、生産計画実績表を作成し、社内で共有することで実績の見える化に努めている。計画と実績の乖離をなくすよう従業員全員が意識することで、業務のムラや無駄がなくなり効率化が図られている。そのほか、入出荷状況や在庫表、歩留まり推移、配車状況、積荷状況といった情報もクラウドサービスを利用して共有する体制が構築されている。特に、配車状況や積荷状況を常に把握できることで、営業担当者が運搬車両を確保できるかを訪問先で確認できるようになったり、ドライバーがどのような積荷をいつ、どれくらい積んで帰ってくるのかわかるため受入段 取が円滑にできるようになるなど、業務の効率化につながっている。
このような体制を維持するために、グループ会社間での相互監査も行っている。xx商店と中部メタルでお互いの作業現場において、異常作業はないか、設備に不備はないか、改善点はないかなどを確認している。品質マネジメントシステムISO9001、環境マネジメントシステム14001認証も取得しており、国際規格に沿った体系的な社内体制も整えられている。
また、生産性を高めるために従業員の教育にも注力しており、従来から行われているOJT以外にも作業マニュアルなどを電子化することで、いつでも、どこでも、何度でも作業手順を確認できる環境を整備している。言葉のみで伝えるマニュアルと違い、画像や動画なども活用することで新入社員などの経験の浅い従業員でも理解しやすいよう工夫している。このような社内スキルだけでなく、社会人基礎力の養成にも重点を置いている。専務による社内教育講座を年2回開催し、 PDCAサイクルの考え方など社会人として身に付けておくべきことや心構えなどを教育すること で、土台の形成に努めている。
従業員の免許や資格取得についても全面的にバックアップしており、業務上必要なフォークリフトや大型自動車免許などについては取得費用の全額補助に加えて、勤務時間内に取得できる環境となっている。このような手厚い社員教育により、スキルを身に付けた優秀な従業員が育成されている。
【働きがいのある安心・安全な職場環境】
xx商店は、従業員が仕事とプライベートのバランスを取りやすいよう各種休暇制度を整備している。育休や産休だけでなく、介護休暇などについても社内で周知することで、従業員が法定休暇を取得しやすい職場環境を醸成しており、利用者が増えている。
人事評価制度は、従業員の納得性やxx性が保たれるような制度設計となっている。上席による一方行的評価ではなく、従業員の自己評価と上席の評価との差異をフィードバックする機会
を設け、コミュニケーションを取ることで自身の認められている点、課題となる点などを明確にしてい る。このような場を年に3回設定し、内容を書面に残すことで従業員はいつでも振り返ることができ、成長を促している。フィードバックする際は、従業員の技術を可視化したスキルマップシートなどを活用しており、毎年更新している。さらに、年に1度、同社では従業員一人一人とxx社長との面談を行っている。従業員は自身の想いやビジョンなどを共有することができ、xx社長は従業員の想いを汲み取り、意思を疎通させる場とすることで、双方のモチベーションを向上させている。作業現場環境の改善にも力を入れている。金属スクラップの選別に欠かせない破砕・粉砕工 程で発生する粉塵への対策として、各粉砕機に集塵機を設置することで、従業員に健康被害が起きないよう努めている。労働環境が過酷になる夏場には、全従業員にファン付きの空調服を配付したり、スポットクーラーを設置するなど働きやすい環境を提供している。休憩時間も既定の10
時、昼、15時以外にも柔軟に取るよう奨励することで熱中症の防止にも努めている。
また、労働災害の防止策として、朝礼での呼びかけや労働衛生推進者を本社、xx工場に各1名配置するなど、安全面の向上にも取り組んでいる。
このような働きがいがあり、安心して働ける安全な職場を醸成することで、直近5年間の採用者12人に対して自己都合退職者は3人と低い水準を維持しており、2021年度中の新工場建設に向けた増員計画は順調に進んでいる。
【交通安全対策】
金属スクラップの収集運搬を行う上で注意しなければならないこととして、交通事故の絶無が挙げられる。収集運搬する車両は通常の乗用車よりも大型であり、事故を起こした際の被害が甚 大になる可能性もある。xx商店では、毎朝のアルコールチェックなどといった法令の遵守はもとより、様々な交通安全対策を講じている。
大型車両は幅、高さ共に、乗用車よりも広く高いため、回収・納品時のルートにも気を付けなければならない。死角も発生しやすいため、大型車両の通れない道や危険な箇所などを社内で共有することで、事故を防いでいる。回収先や納品先などの取引先においても、ドライバーが段差のある箇所や天井の低い箇所などといった注意すべき点を覚えておき、レイアウト図を書面に残すことで、社内で共有されている。このようなxx商店独自のレイアウト図の作成を積み重ねることで、初めて訪れる取引先でも安全かつ円滑に作業が行える。
配車管理に関しても徹底しており、県内や愛知県などの近距離先は毎週木曜日に翌週分の配車計画を作成し、定期回収先などの長距離先については1カ月半ほど前から配車計画を作成している。時間に追われる焦燥感や集中力の欠如が事故の元となるため、長時間運転とならないよう余裕を持った配車を心掛けている。
また、安全運転講習会も定期的に開催されており、話を聞くだけでなく実演することで、従業員に一層定着するよう努めている。さらに、フォークリフトでのバケット回収の仕方など具体的な作業 をマニュアルとして文書化し、フォークリフトのツメを何センチ残してサックに差し込むか、といった細かい注意点も確認できるようになっている。
このような安全に対する取組みを継続することで、重大な人身事故などを起こさずに収集運搬を行うことができている。
【環境への配慮】
野末商店は環境への配慮も怠っていない。金属スクラップをリサイクルする過程で油分を含んだ排水が発生するが、吸着マットを利用した3層構造の油水分離槽により油の社外流出を防止している。油水分離層の定期清掃も実施するなど、社内での排水への意識は高く保たれており、水質の改善に努めている。
また、稗原工場の屋根にシステム容量103.5kW、年間予定発電量106,881kWhとなる太陽光発電システムの設置している。磐田市の「2020年全国日照時間ランキング」によると、磐田市の日照時間は年間2,361.4時間と全国2位となっており、効率的な発電が期待される。発 電した電力を自社設備の動力源とすることで事業活動に伴うCO2排出量の削減を見込んでお り、余剰電力については電力会社へ売却することで、一般家庭での再生可能エネルギー利用割合の増加に貢献する。
そのほか、自社の照明設備を全てLED照明に切り替えており、長寿命化、省エネルギー化されている。車両に関しては、11台ある営業車のうち4台がハイブリッドカーであり、電動フォークリフトの導入も始めている。アイドリングストップも徹底しており、業務中のCO2排出を可能な限り削減している。さらに、建設中の新工場では、最新省エネ設備を導入予定であり、さらなる環境負荷低減が見込める。
廃棄物削減の観点では、リグルーブタイヤの活用が挙げられる。リグルーブタイヤとは、摩耗が進んだ大型車両のタイヤに再び溝を刻むことで再生したタイヤであり、走行寿命が来たタイヤの安全性や省燃費性を元に戻すことで、従来よりも長く使用することができる。野末商店では、リグルーブタイヤを使用した大型車両が10台と半数を占めているが、今後も使用車両を増やしていく方針である。
選別作業に使用する革手袋などについても、再生資源を利用したものを積極的に使用するなど環境へ配慮する意識が社内で醸成されている。
【社会貢献活動】
野末商店では、社会貢献の一環として職業体験の受入れにも積極的であり、地元の中学校から毎年数名受け入れている。職業体験の受入れは、単なる社会貢献だけでなく、金属スクラップリサイクル事業を実際に体験してもらうことで、環境問題を考える契機にもつながっている。
また、同業他社からの従業員の受入れにも対応しており、これまでに愛知県や関東地方から 10名ほど受け入れている。これは、野末商店の優れた選別技術を学ぶという意味合いもあるが、同業他社の後継者の修行の場の提供でもあり、同業者を支援する活動でもある。円滑な事業承継を済ませることで、環境問題に取り組む事業者の維持にも貢献している。
4. 企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブ・ネガティブなインパクト
【ポジティブなインパクトが期待できる活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面> 働きやすく働きがいのある職場 | ①休暇制度や人事評価制度などモチベーションを向上させる取組み ・自己評価と上席評価の差異をフィードバック、社長との個別面談 ・育休や産休、介護休暇など各種休暇制度の整備 |
<経済面> 高い経済生産性 | ①効率化された生産体制 ・生産計画実績表による実績の見える化 ・クラウドサービスを利用した情報の共有化 ・専務による社内教育講座、資格取得補助 ・グループ会社間での相互監査体制 ・ISO9001 や ISO14001 による体系化された社内体制 |
<環境面> 廃棄物の削減や資源の国内循環 サプライチェーン全体での環境負荷低減 | ①鉄・非鉄金属のリサイクル事業やリサイクル製品の積極利用 ・資源の国内循環に貢献する高度な鉄・非鉄金属リサイクル事業 ・再生資源利用製品の使用、リグルーブタイヤの活用 ・廃モーターの処理能力向上を見込む新工場の建設 ②精錬不要なほど高純度な再生資源の製造によるサプライチェーン全体での廃棄物削減や CO2 排出量の削減 |
【ネガティブなインパクトを低減する活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面> 安心安全な労働環境 交通安全対策 | ①充実した設備、現場に則した休憩の導入 ・集塵機、スポットクーラーの設置、空調服の導入 ・適時適切な休憩 ②情報共有や社内教育、適切な配車管理などによる交通安全対策 ・金属スクラップ運搬時のルート確認、取引先の危険箇所の共有 ・安全運転講習会の定期開催、計画的な配車管理 |
<環境面>水質の保全 CO2 排出量の削減 | ①油水分離槽の設置による社外への油流出防止や定期的な清掃などにより産業廃棄物処分業許可の基準を満たす水質を維持 ②再生可能エネルギーの利用や省力化施策による CO2 排出量削減 ・太陽光発電システムを設置し、発電した電力を工場内で利用 ・全照明設備の LED 化、11 台ある営業車両のうち4台のハイブリッドカー導入、1台の電動フォークリフトの導入、 アイドリングストップ の実施、最新省エネ設備を備えた新工場 |
(1)UNEP FI が掲げるインパクトレーダーとの関連性
野末商店の介護休暇などの各種休暇制度や上席者、社長との面談など働きやすく働きがい のある職場は従業員のモチベーションの向上および高い定着率の維持に貢献しているため「雇用」に関するポジティブなインパクトが想定される。また、生産計画実績表の活用やグループ会社間の監査体制などにより実現した高い経済生産性は同社の収益力を向上させているため「経済の収れん」に、鉄・非鉄金属のリサイクル事業やリサイクル製品の積極的な利用による廃棄物の削減 や資源の国内循環は「資源効❹・資源安全確保」や「廃棄物」におけるポジティブ・インパクトに該当する。さらに、培ってきたノウハウで実現している高純度な再生資源は素材メーカーでの精錬工程の省略や歩留まりの改善などサプライチェーン全体での環境負荷低減に貢献しているため
「気候変動」や「廃棄物」に資するポジティブなインパクトである。
一方、集塵機や空調服の導入などといった安心安全な労働環境の醸成は「健康と衛生」の、金属スクラップ回収・納品時のルート確認や危険箇所の共有、定期的な安全運転講習会の開催などといった交通安全対策は「移動手段」のネガティブなインパクトを低減させている。油水分離槽の設置やその清掃による水質の保全は「水」に、太陽光発電システムや照明の LED 化、ハイブリッドカー・電動フォークリフトの導入などによる CO2 排出量の削減は「気候変動」に対するネガティブなインパクトの抑制となっている。
利用可能性、アクセス性、価格の手頃さ、品質 | 質(物理的・化学的性質)と有効利用 | 環境の制約内で人のニーズを満たす手段としての、人々・社会の ための経済的価値創出 |
水 食料 住宅 | 大気 | 包摂的で健全な経済 |
水 | 経済の収れん | |
土壌 生物多様性と生態系サービス | ||
健康と衛生 | ||
教育 | 資源効率・資源安全確保気候変動 廃棄物 | |
雇用 | ||
エネルギー | ||
移動手段 | ||
情報 文化・伝統 人格と人の安全保障司法 強固な制度、平和、安定 |
(2)SDGs との関連性
野末商店の企業活動は、モチベーションを向上させる人事評価制度など働きやすく働きがいの ある職場の醸成が「ターゲット 8.5」に、効率化された生産体制による高い経済生産性の実現が「ターゲット 8.2」に関するポジティブなインパクトと想定される。リサイクル加工事業による廃棄物の削減や資源の国内循環は「ターゲット 12.2」や「ターゲット 12.5」に、高純度な再生資源による素材メーカーでの精錬工程の省略や歩留まりの改善といったサプライチェーン全体での環境負荷低減は「ターゲット 11.6」や「ターゲット 12.5」にとってプラスの影響を与える。
一方、充実した設備による安心安全な労働環境や情報の共有などによる交通安全対策、油水分離槽での水質の保全が「ターゲット 8.8」や「ターゲット 3.6」、「ターゲット 6.3」、「ターゲット 12.4」のネガティブなインパクトを低減させている。また、再生可能エネルギーの利用や省力化施策による CO2 排出量の削減が「ターゲット 7.2」や「ターゲット 11.6」に対するネガティブなインパクトの抑制となっている。
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<社会面>働きやすく働きがいのある職場、安心安全な労働環境、交通安全対策 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 育休や産休、介護休暇などの各種休暇制度を整備しており、従業員が働き続けることのできる職場環境が醸成されている。人事評価制度についても、自己評価と上席評価の差異を年3回フィードバックすることで納得性の高い体制となっており、年に1度、全従業員が社長と直接面談する機会を設け、従業員の想いやビジョンを共有するなど、働きがいを向上させる取組みも行っている。 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 金属含有複合物を破砕・粉砕する工程で粉塵が発生するが、野末商店では全破砕・粉砕工程において集塵機を設置しており、従業員に健康被害が出ないよう努めている。また、現場作業員全員に空調服の配付や各所にスポットクーラーを導入するなど快適な労働環境となるよう配慮している。夏場は、通常の 10 時、昼、15 時の休憩に加え、適宜休憩を取るよう奨励することで熱中症を防止するなど柔軟に対応している。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
3.6 2020 年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。 金属スクラップを回収する際は一般道を走行するため、道路交通法の遵守を徹底している。毎朝、アルコールチェッカーでドライバーの呼気を検査し、検査結果は工場長が確認する体制を整えている。回収・納品には大型トラックなどを利用するため、大型車でも走行できるルートを訪問前に確認している。配車管理に関して も、1週間から1カ月前までに管理表を作成しており、長時間運転にならないよう余裕を持ったスケジュールが組まれている。 また、定期訪問先の回収場所の見取り図を野末商店独自で作成し、入口から出口に至るまでの危険箇所を図示することで、接触事故などが起きないよう社内で共有している。そのほか、定期的に安全運転講習会を開催することで、交通事故絶無を図っている。 | |
<経済面>高い経済生産性 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 生産計画実績表を活用し予実管理を徹底することで、常に生産効率の改善を図っている。ISO9001、14001 に沿った管理体制に加え、野末商店および中部メタルの相互監査体制を整えており、業務の改善や設備の点検に注力している。また、専務による教育講座や資格取得補助、電子化された教育ツールなどによって、人間力や技術力の向上が図られており、高い生産性につながっている。 | |
<環境面>廃棄物の削減や資源の国内循環、サプライチェーン全体での環境負荷低減、水質の保全、CO2 排出量の削減 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効❹的な利用を達成する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 野末商店の鉄・非鉄金属収集運搬処分事業は廃棄物の削減に貢献してい る。高品質な再生資源は資源の効率的な活用につながり、歩留まりを改善することで、サプライチェーン全体の廃棄物削減にも貢献している。今後も、廃モーターをターゲットとした新工場建設を計画しており、更なる処理能力拡大を見込む。 また、再生資源を利用した革手袋の積極的利用やリグルーブタイヤの活用など、廃棄物の削減に貢献している。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 稗原工場の屋根に年間発電量が 10 万kWh 以上になる太陽光発電システムを導入しており、発電した電力は自家消費を見込む。火力発電などによらない再生可能エネルギーを利用することで事業活動における CO2 排出量を削減す る。余剰電力については電力会社に売却することで、一般家庭での再生可能エネルギーの利用割合上昇に貢献する。 また、納品先素材メーカーで精錬工程が不要なほど純度の高い再生資源を製造することで、工程の省略や歩留まりの改善が図られ、サプライチェーン全体での CO2 排出量を削減している。 さらに、全照明設備の LED 化やハイブリッドカー・電動フォークリフトの導入、アイドリングストップも徹底しており、2021 年度中に最新省エネ設備を備えた新工場の建設を予定するなど、全社を挙げて環境保全に取り組んでいる。 6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 吸着マットによる油の社外流出防止策を施した3層構造の油水分離槽によ り、事業活動で発生した排水を適切に処理している。また、定期的な排水溝の清掃を行うなど、社内での排水への意識は高く保たれており、水質の改善に努めている。 |
(3)地域課題との関連性
①地域経済に与える波及効果の測定
野末商店は、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 200 億円に、従業員数を 70 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、こ
の目標を達成することによって、野末商店は、静岡県経済全体に年間 317 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
②地域の独自課題への貢献
【東海地震対策】
静岡県は東海地震による甚大な被害が予想されている県であり、様々な防災活動に取り組んでいる。東海地震は、南海トラフ沿いで想定されている大規模地震(以下、南海トラフ地 震)のひとつであり、静岡県を想定震源域とするマグニチュード 8 クラスの地震である。1854 年に発生した安政東海地震から 160 年以上大規模地震が発生しておらず、駿河湾地域では地殻のひずみの蓄積などが確認されていることから、いつ発生してもおかしくないと考えられている。なお、南海トラフ地震は、概ね 100~150 年間隔で繰り返し発生しており、1944 年の昭和東南海地震、1946 年の昭和南海地震の発生から 70 年以上が経過しているため、東海地震だけでなく南海トラフ全域が連動した大規模地震発生の切迫性が高まっている。こうした状況を踏ま え、静岡県は防災先進県として、津波対策や建物等の耐震化、危機管理体制の構築、防災 アプリの開発、防災人材の育成などに取り組んでいる。
野末商店は、遠州灘に面した磐田市の沿岸部に所在しており、東海地震発生時は津波の被害が想定される。そのため、稗原工場の一部を津波避難所として活用できるよう改築し、所属する工業団地の避難所として開放している。避難所には、30 人が2週間生活できるだけの物 資が備蓄されており、有事の際には救助が来るまでの十分な備えがある。そのほかにも、静岡県産業廃棄物協会を通して静岡県と災害時の重機提供の協定を締結しており、災害発生時は災害廃棄物の処理に貢献する体制を整えている。
また、磐田市は地震発生時の津波に備え、高さ 14m、延長 11 ㎞の防潮堤を整備してい る。静岡モデルと呼ばれる既存の防災林のかさ上げや補強等の整備を静岡県と連携して実施しており、野末商店および中部メタルの2社は防潮堤の整備に対して、合計で3百万円の寄付を行っている。地域住民参加型の海岸防災林の植林活動にも参加するなど、沿岸部の企業として地域と一丸となって防災対策に取り組んでいる。
【県内主要産業を支えるリサイクル業】
静岡県は愛知県に次ぐ、自動車産業の集積地である。その中でも、ホンダやスズキ、ヤマハ発動機など国内有数の四輪・二輪車メーカーの創業の地でもある県西部は、各社の Tier1,2 およ
びその取引先が多数存在しており、地域の経済活動の中心となっている。2018 年度の経済活動別県内総生産でも、輸送用機械は全体の 10%以上を占めており、静岡県の主要産業である。3万点にも及ぶと言われている自動車の部品は、その多くが鉄系素材であり、銅やアルミニウム合金なども利用されている。これらの金属資源は有限であり、特に、輸入に依存している日本では自動車産業の持続的な成長のためにも再資源化が強く求められている。
野末商店は、鉄・非鉄金属を専門にリサイクルしており、限られた金属資源の再生に努めている。ノウハウが蓄積された選別技術により、素材メーカーへの納品割合も高く維持しており、素材メーカーへ資源を供給するサプライチェーンの始点として、県内主要産業を支えている。
<2018 年度 経済活動別県内総生産(名目)>
(単位:百万円)
項目 | 2018年度 | 構成比 | ||
1 | 農林水産業 | 148,844 | ||
2 | 鉱業 | 5,586 | ||
3 | 製造業 | 6,963,06 | ||
輸送用機械 | 1,823 |
4 電気・ガス・水道・廃棄物処理業
5 建設業
6 卸売・小売業
7 運輸・郵便業
8 宿泊・飲食サービス業
9 情報通信業
10 金融・保険業
11 不動産業
12 専門・科学技術、業務支
13 公務
14 教育
15 保健衛生・社会
16 その他のサー小計(1+2
輸入品に
(控県内
③野末商店の持続的な成長への貢献度
野末商店が本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組む目的は、日本の貴重な資源をリサイクルすることで国内循環させる自社の取組みを公表し、金属スクラップ処理業界の枠組みを超えてサプライチェーン全体の意識を高めることで環境負荷低減に貢献したいという気持ちを具現化するものである。
また、自社の経営にとっても、社内の業務の棚卸しをし、SDGs の精神や社会・経済・環境に関する目標・KPI を設定することによって、自社の現状や目指すべき方向性を社員と共有し、全社員のベクトルを合わせることで、経営体制をより強固なものにできると考えている。
さらに、取引先や地域など対外的にも、自社の経営理念やミッション、経営者の想い・こだわり
等を周知することで、自社の強みや企業風土の理解を促進し、新規受注や採用などにつながるなど、持続的成長の源泉になることを期待している。
5. インパクトを測定する KPI(指標と目標)
特定されたインパクト | KPI(指標と目標) | 関連する SDGs |
<社会面> | ・年3回のフィードバック面接と年1回の社長面談の実施を継続する ・最新の粉塵機を導入するなどして、各粉砕機周辺の粉塵濃度を逓減させるよう努める ・安全運転講習会を年3回開催し、安全運転意識の向上に努める ・交通事故発生件数を0件に留める | |
雇用 | ||
健康と衛生 | ||
移動手段 | ||
<経済面> 高い経済生産性 | ・スキルマップシートを活用し、従業員の技術を年2回確認することで技術向上に努める ・グループ間監査体制を継続し、高い経済生産性を維持する ・ISO9001 と ISO14001 認証を更新し、国際規格に沿った品質・環境マネジメントシステムの維持に努める | |
<環境面> | ・品質会議を毎月1回開催して、高い品質の維持に努める ・2030 年までに、リグルーブタイヤを使用した大型車両の割合を 2020 年の 50%から 25pt 増加させ、75%を達成する ・2025 年までに、金属含有複合物の処理能力を 2020 年の 600t/月から 200t/月増加させ、800t/月を達成する ・油水分離層の清掃を毎月1回実施する ・太陽光発電システムを設置し、年間 10 万kWh 発電する ・2030 年までに、営業車両用のハイブリッドカーの台数を 2020 年の 4 台から3台増加させ、7台を達成する ・2030 年までに、電動フォークリフトの台数を 2020 年の1台から2台増加させ、3台を達成する | |
資源効率・資源安全確保 | ||
廃棄物 | ||
水 | ||
気候変動 |
6. マネジメント体制
野末商店では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、グループ横断的なプロジェクトチームを結成。野末社長が陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、野末社長を最高責任者として、プロジェクトリーダーやプロジェクトメンバーを中心に、全従業員が一丸となって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。
野末社長が本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組む最大の目的は、限られた資源の国内循環の達成である。中小企業である野末商店だけでは達成できない野心的な目標のために、鉄・非鉄金属を扱う金属スクラップ処理業界全体で取り組むべく、野末商店が先陣を切って取り組む姿勢を示していく。
そのためにも、野末グループを統括する野末社長に加え、野末商店を統括する新貝友通専 務、中部メタルを統括する野末赳夫社長、工場を統括する名倉吉穂工場長をメンバーとした野
末グループ全体で連携を図り、鉄・非鉄金属のリサイクル事業に取り組んでいく。
最高責任者 | 代表取締役社長 野末洋介 |
プロジェクトリーダー | 専務取締役 新貝友通 |
プロジェクトメンバー | 中部メタル代表取締役社長 野末赳夫取締役工場長 名倉吉穂 |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と野末商店の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つ
ネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
以 上
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する野末商店から供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 調査グループ長 森下 泰由紀研究部 研究員 中澤 郁弥
〒420-0853
静岡市葵区追手町 1-13 アゴラ静岡 5 階 TEL:054-250-8750 FAX:054-250-8770
第三者意見書
2021 年 9 月 28 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社野末商店に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナ
ンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が株式会社野末商店(「野末商店」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包摂的 で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体 である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的 とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、野末商店の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、野末商店がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
お客さま | ①PIFの申込み | 当行 | ②PIF評価依頼 | 静岡経済研究所 | レビュー依頼 | JCR |
③インパクトの包括分析・特定 | ||||||
⑤目標・KPI等の協議 | ④インパクトの還元 ⑥目標・KPI等の報告 | コメントバック レビュー依頼 | ||||
⑨融資実行 PIF評価書交付 | ⑧PIF評価書作成 | ⑦目標・KPI等の評価 コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100人以下など。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である野末商店から貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲
で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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