Contract
第三者に及ぼした損害について
1.PFI事業契約の条項例(案)における関連規定
(近隣住民に対する説明及び環境対策)
第十四条 選定事業者は、その責任及び費用負担において、近隣住民に対して、 PFI施設に係る工事に関する説明を行わなければならない。
2 選定事業者は、その責任及び費用負担において、騒音、振動、地盤沈下、地下水の断絶その他のPFI施設に係る工事が近隣住民の生活環境に与える影響を調査し、合理的な範囲で必要な対策を行わなければならない。
3 選定事業者は、第一項の説明又は前項の対策を行おうとするときは、あらかじめ、その概要を管理者等に報告しなければならない。
4 管理者等は、前項の報告で第一項の説明に係るものを受けた場合において必要があると認めるときは、選定事業者が行う説明に協力するものとする。
5 選定事業者は、第一項の説明又は第二項の対策を行ったときは、その結果を管理者等に報告しなければならない。
(注)事業の実施自体に関する近隣住民に対する説明は、管理者等に責任がある。
(PFI施設の建設)
第十七条 選定事業者は、その責任及び費用負担において、施工方法を定め、この契約、関係図書及び第十五条第三項の確認を受けた設計図書に従い、P FI施設の建設を行わなければならない。
2 選定事業者は、業務要求水準書の定めるところにより、建設工事開始前に施工計画書その他必要な書類を管理者等に提出しなければならない。
3 選定事業者は、業務要求水準書の定めるところにより、工事記録を整備しなければならない。
(注)第二項の「その他必要な書類」では、工程表、月間工程表、週間工程xx事業に応じて必要な書類を規定する。
(第三者に及ぼした損害)
第二十五条(A)工事の施工について第三者に損害を及ぼしたとき(工事の施工に伴い通常避けることができない騒音、振動、地盤沈下、地下水の断絶等の理由により第三者に損害を及ぼしたときを含む。)は、選定事業者がその損害を賠償しなければならない。ただし、その損害のうち管理者等の責に帰すべき事由により生じたものについては、管理者等が負担する。
2 前項の場合その他工事の施工について第三者との間に紛争を生じた場合に
おいては、管理者等と選定事業者が協力してその解決に当たるものとする。第二十五条(B)工事の施工について第三者に損害を及ぼしたときは、選定事
業者がその損害を賠償しなければならない。ただし、その損害のうち管理者等の責に帰すべき事由により生じたものについては、管理者等が負担する。
2 前項の規定にかかわらず、工事の施工に伴い通常避けることができない騒音、振動、地盤沈下、地下水の断絶等の理由により第三者に損害を及ぼしたときは、管理者等がその損害を負担しなければならない。ただし、その損害のうち工事の施工につき選定事業者が善良な管理者の注意義務を怠ったことにより生じたものについては、選定事業者が負担する。
3 前二項の場合その他工事の施工について第三者との間に紛争を生じた場合においては、管理者等と選定事業者が協力してその解決に当たるものとする。
(注)(A)(B)いずれの考え方が選定事業にふさわしいかを検討し、適切に規定する。
(第三者に及ぼした損害)
第三十六条 選定事業者が維持管理・運営業務について第三者に損害を及ぼしたときは、選定事業者がその損害を賠償しなければならない。ただし、その損害のうち管理者等の責に帰すべき事由により生じたものについては、管理者等が負担する。
(注)維持管理・運営業務の実施に伴い通常避けることができない騒音等の理由により第三者に損害を及ぼした場合の賠償責任について、適切に規定する。
2.契約に関するガイドラインにおける記述
2-2-8 第三者に与える損害(設計、建設段階)
1.概要
・選定事業者が行う施設の建設工事により第三者に与える損害等については、選定事業者がそれを負担する旨規定される。但し、当該損害のうち管理者等の責めに帰すべき事由により生じた損害等については、管理者等がこれを負担する旨規定される。
2.近隣対策にかかる費用負担
・事業の実施そのものについての近隣調整は管理者等に責任の所在があるものの、近隣調整の不調については、その理由が事業の実施そのものであるのか、若しくは、選定事業者による建設工事の影響であるのか、必ずしも判然としない場合が生じうると想定される。この場合には、責任の所在と費用負担について当事者間で協議を行う必要が生じるものと考えられる。
・なお、管理者等は、当該施設の立地条件、事業内容等の観点から、近隣住民の生活環境に相当な程度の影響を与えることがあらかじめ想定される事項については、その対応にかかる責任の所在と費用負担のあり方を入札説明書等に明記することが望ましい。
3.第三者に対する損害賠償責任
・施設の建設工事により第三者に損害を与えた場合、選定事業者は当該損害を当該第三者に対して賠償する旨規定される。但し、管理者等の責めに帰すべき事由の場合には、管理者等が当該損害を当該第三者に対して賠償する旨規定される。
4.通常避けることのできない理由による損害
・施設の建設工事に伴い通常避けることができない騒音等の事由により第三者に与える損害等の負担については、その他事由による負担とは別に規定が置かれることが通例である。
・建設工事に伴い通常避けることのできない騒音、振動、地盤沈下、地下水の 断絶等の理由により第三者に損害を与えた場合については、その損害賠償責任が選定事業者にあるとする考え方と、管理者等にあるとする考え方がある。 PFI事業契約の締結にあたり、当事者間で、いずれの考え方が当該選定事業に相応しいかを検討し、PFI事業契約において適切に規定することが望ましい。但し、上記の理由が選定事業者の建設工事における善管注意義務違反を原因としている場合には、選定事業者が損害賠償責任を負うことになる。また、これらの問題は、建設工事に伴う各種調査に関する問題とも関連するため、PFI契約上相互の規定の整合性につき留意が必要となる。(関連:2
-2-3 建設工事に伴う各種調査)
・他の民間事業者が実施しても回避することが見込めない事由である場合、選 定事業者にそのリスクを全て負担させることにつき合理的な理由が見いだせないという考え方もある。特に、事業用地を管理者等が事前に指定している場合、そのような事情は強まると思われる。しかしながら、管理者等が損害賠償を負担するとした場合、選定事業者は消極的に善管注意義務を果たすにとどまり、損害防止のために積極的により優れた技術を用いるという経済的動機付けを失う可能性があるという側面にも留意が要する。
・標準約款第28条第2項においては、建設工事に伴い通常避けることのできない騒音、振動、地盤沈下等の理由により第三者に損害を与えた場合、発注者がその損害を負担すると定められている(但し、善管注意義務を怠った場合は請負者がその損害を負担するとされる。)。その理由として、請負者が損 害の負担部分を契約額の中であらかじめ留保することなどから契約金額に転嫁される結果ともなり得ることに加え、公共工事が仕様発注方式をとり、かつ、公共は工事請負契約の発注者の立場になることから、発注者たる公共が負担するとしているものと考えられる。一方、PFI事業においては、性能
発注方式をとり、かつ、管理者等にとっては契約の相手方である選定事業者 が発注者の立場になって、請負人である建設企業の間で施設の工事請負契約等が締結されるため、選定事業者が負担することも考えられる。但し、PF I事業を選定事業者に一括して委ねる者は管理者等であることを理由に、又はVE提案等の仕様発注に近い方法を採用する場合等において、管理者等が負担することも考えられる。
5.関係法令上の責任
・以下は、PFI事業において管理者等が問われる可能性のある法律上の責任を例示したものである。
1)公の営造物又は土地の工作物にかかる責任(国家賠償法第2条第1項又は民法第717条第1項):国家賠償法第2条第1項において「公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責めに任ずる。」と規定されている。また、民法第717条第1項は、土地の工作物の設置又は保存の瑕疵により第三者に損害を与えた場合、かかる工作物の占有者がその損害について責任を負うとし、同項但し書は、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意をなしていたときは、占有者は免責されて、所有者が責任を負うと定めている。
2)共同不法行為者の責任(民法第719条):建設工事に関し、管理者等と選定事業者の双方が共同して第三者に損害を与えた場合、管理者等と選定事業者の行為は民法第719条に規定される共同不法行為となり、被害者は、管理者等と選定事業者の各自に対して生じた損害の全額の賠償を求めることが可能である。そして、共同不法行為者の一人が被害者に全部の賠償をした場合には、他の者に対して本来負担すべき責任の割合に応じて求償権を持つことになるが、かかる損害の分担方法についてあらかじめ当事者間で合意しておくことも可能である。したがって、PFI事業契約においても、事業の委託者である管理者等と受託者である選定事業者の間における損害の分担方法についてあらかじめ合意しておくことが考えられる。
6.第三者賠償責任保険のxx義務
・第三者に対する損害賠償については、保険による填補が経済的に合理的なリスク軽減等の手段になる選定事業が多いことから、選定事業者にかかるxxを義務付け、PFI事業契約の別紙としてxx内容の明細を記載し、その内容及び基本条件につき規定することが通例である。また、被保険者として選定事業者、選定事業者と契約する建設企業、建設企業の下請企業等を含めることが可能である。(関連:6―5 保険加入義務)
3-5 第三者に与える損害(維持・管理、運営段階)
1.概要
・選定事業者が行う施設の維持・管理、運営に伴い第三者に与える損害等の負担について規定される。但し、当該損害等のうち管理者等の責めに帰すべき事由により生じたものについては、管理者等がその損害を負担する旨規定される。
2.近隣対策にかかる費用負担
・事業の実施そのものについての近隣調整は管理者等の責任となるものの、近隣調整の不調については、その理由が事業の実施そのものであるのか、若しくは、選定事業者による施設の維持・管理、運営業務の影響であるのか、必ずしも判然としないことも想定される。この場合には、責任の所在及び費用分担について当事者間で協議を行う必要が生じるものと考えられる。
・なお、管理者等は、当該施設の立地条件、事業内容等の観点から、近隣住民の生活環境に相当な程度の影響を与えることがあらかじめ想定される事項については、その対応にかかる責任の所在と費用分担のあり方を入札説明書等に明記することが望ましい。
3.第三者に対する損害賠償責任
・施設の維持・管理、運営業務の実施に伴い第三者に損害を与えた場合、選定 事業者はその損害を当該第三者に対して賠償する旨規定される。管理者等の責めに帰すべき事由の場合には、管理者等がその損害を賠償する旨規定される場合がある。
・施設の運営に伴い通常避けることができない騒音等の理由により第三者に損 害を与えた場合の賠償責任についても規定される。
4.第三者損害賠償保険への加入義務
・第三者に与えた損害を填補する第三者賠償責任保険に選定事業者(第三者に委託した場合は当該第三者が契約者となる場合もある)が加入する義務が規定されることが通例である。当該保険の内容及び基本条件等詳細につき選定事業者と管理者等との間での合意を必要とする場合もある。また、被保険者の範囲に選定事業者、受託・請負企業維持・管理、運営企業及びそれらの下請企業等を含めることの可否について定められる。
5.関係法令上の責任
・「2-2-8 第三者に与える損害(設計、建設段階)」に解説のとおり。
3.公共工事標準請負契約約款における関連規定
(第三者に及ぼした損害)
第二十八条 工事の施工について第三者に損害を及ぼしたときは、乙がその損害を賠償しなければならない。ただし、その損害(第五十一条第一項の規定により付された保険等によりてん補された部分を除く。以下本条において同じ。)のうち甲の責に帰すべき事由により生じたものについては、xが負担する。
2 前項の規定にかかわらず、工事の施工に伴い通常避けることができない騒音、振動、地盤沈下、地下水の断絶等の理由により第三者に損害を及ぼしたときは、甲がその損害を負担しなければならない。ただし、その損害のうち工事の施工につき乙が善良な管理者の注意義務を怠ったことにより生じたものについては、乙が負担する。
3 前二項の場合その他工事の施工について第三者との間に紛争を生じた場合においては、甲乙協力してその処理解決に当たるものとする。
注)「公共工事標準請負契約約款の解説」では、この条項に関して以下のように解説されている。
5.通常不可避な第三者損害の負担
上記のように第三者に及ぼした損害についての大原則は、請負者負担であるが、工事 の施工に伴い通常避けることのできないものによって生じた損害についてまで請負者に負担させることは、請負者に過度の負担を強いることとなり適当でない。仮設、施行方法等は原則的には請負者の任意に委ねられていることと関連して、騒音、振動等により第三者に与えた損害は請負者の負担とすべきであるとの考え方もあるが、通常避けることができずかつ受忍の範囲を超えるものについてまで請負者の負担とすることは、ひいては、請負者側が保険等のあるものには保険等をかけ、保険等のないものについては自ら損害の負担部分を契約額の中で予め留保しておく必要が出てくるなど、入札額にはねかえって発注者に負担が転嫁してくることとなる。このため、第2項では、第1項の大原則に特則を設け、通常避けることができない騒音、振動、地盤沈下、地下水の断絶等の理由による損害については、原則として、発注者が負担することとしている。
ここで「通常避けることができない」というのは、発注者の設計する工事目的物が当然に損害の原因となるもの及び工事の施工が通常の技術的又は経済的尺度で判断して妥当な場合においても避けえないものと考えるべきであり、特殊な又は一般的でない施工方法をとれば避けることができる場合でも、その旨が設計図書等に指定されていない場合には、通常避けることができない場合に該当することとなろう。また、工事を施工する地域の特殊性に応じて、発注者が特にこれらの損害の防止のため特別の施工工法等を考慮した場合においては、予定価格の積算においても配慮し、むしろその特別の施工工法等に従うことを設計図書で明らかにし、請負者に義務付けるべきであり、そのようにしてもなお防止し得ないものについて本項を適用すべきである。
(以下略)
(参考)土木工事共通仕様書(国土交通省関東地方整備局)
1-1-35 官公庁等への手続等
1.請負者は、工事期間中、関係官公庁及びその他の関係機関との連絡を保たなければならない。
2.請負者は、工事施工にあたり請負者の行うべき関係官公庁及びその他の関係機関への届出等を、法令、条例又は設計図書の定めにより実施しなければならない。
3.請負者は、前項に規定する届出等の実施に当たっては、その内容を記載した文書により事前に監督職員に報告しなければならない。
4.請負者は、諸手続にかかる許可、承諾等を得たときは、その写しを監督職員に提出しなければならない。
5.請負者は、手続きに許可承諾条件がある場合これを遵守しなければならない。なお、請負者は、許可承諾内容が設計図書に定める事項と異なる場合、監督職員に報告し、その指示を受けなければならない。
6.請負者は、工事の施工に当たり、地域住民との間に紛争が生じないように努めなけれ ばならない。
7.請負者は、地元関係者等から工事の施工に関して苦情があり、請負者が対応すべき場合は誠意をもってその解決に当たらなければならない。
8.請負者は、地方公共団体、地域住民等と工事の施工上必要な交渉を、自らの責任にお いて行うものとする。請負者は、交渉に先立ち、監督職員に事前報告の上、これらの交渉に当たっては誠意をもって対応しなければならない。
9.請負者は、前項までの交渉等の内容は、後日紛争とならないよう文書で確認する等明確にしておくとともに、状況を随時監督職員に報告し、指示があればそれに従うものと する。
4.実際の契約例における規定
○ 第三者に及ぼした損害については、原則として選定事業者の負担とすることを規定した上で、工事の施工に伴い通常避けることができない理由により第三者に損害を及ぼしたときについては、事業契約書毎に異なっている。
①管理者負担となっているもの
・公立学校耐震化PFIマニュアル(文部科学省)
・東京国際空港国際線地区エプロン等整備等事業(国土交通省関東地方整備局)
例:東京国際空港国際線地区エプロン等整備等事業 事業契約書(案)(抜粋)
(本件工事中に事業者が第三者に及ぼした損害)
第 47 条 事業者が本件工事の施工に際し第三者に損害を及ぼした場合は、直ちにその状況を国に通知しなければならない。
2 前項の場合、事業者が当該第三者に対し当該損害を賠償しなければならない。ただし、当該損害(ただし、第 30 条第1項の規定により事業者又は施工企業が加入した保険等によりてん補された部分を除く。)が国の責めに帰すべき事由又は本件工事の実施に伴い、通常避けることができない騒音、振動、地盤沈下、地下水の断絶等(事業者が善良なる管理者の注意義務を尽くしても避けられなかった場合に限る。)により生じたものである場合は、国がその損害を賠償しなければならない。
②選定事業者負担となっているもの
・PFI事業における事業契約書例(国土交通省)
・東京税関xx出張所(仮称)整備等事業(国土交通省関東地方整備局)
・xx市新港学校給食センター整備事業(xx市)
・xx浄水場再整備事業(横浜市)
例:xx市新港学校給食センター整備事業 特定事業契約書(案)(抜粋)
(建設工事中に乙が第三者に及ぼした損害)
第30条 「本件施設」の建設工事の施工により第三者に損害を及ぼした場合、乙は、当 該損害を当該第三者に対して賠償しなければならない。ただし、甲の責めに帰すべき事由による場合はこの限りではない。
2 「本件施設」の建設工事の施工に伴い通常避けることができない騒音、振動、地盤沈 下、地下水の断絶その他の理由により、乙が第三者に対して損害を及ぼした場合も、乙が当該損害を当該第三者に対して賠償しなければならない。
③明確な規定がないもの(明確な規定がない場合には、原則に従い選定事業者の負担となると考えられる。)
・公務員宿舎朝霞住宅(仮称)整備事業(財務省関東財務局)
・島根xxx社会復帰促進センター整備・運営事業(法務省)
・(仮称)仙台市新xx学校給食センター整備事業(仙台市)
・西部地域振興ふれあい拠点施設(仮称)整備事業(埼玉県・xx市)
第 30 条 (本件工事中に第三者に生じた損害)
1 事業者が本件工事を実施する過程で、又は実施した結果、第三者に損害が発生したときは、事業者がその損害を賠償しなければならない。ただし、その損害のうち、市の責めに帰すべき事由により生じたものについては、市が合理的な範囲で負担する。
例:(仮称)仙台市新xx学校給食センター整備事業 施設の設計、建設、維持管理及び運営等に関する契約書(抜粋)
管理者等と選定事業者の協議が整わない場合の措置について
1.PFI事業契約の条項例(案)における関連規定
(維持管理・運営期間中の不可抗力)
第三十七条 第二十九条第五項に規定する完工確認書の交付後に、不可抗力により、この契約に従った維持管理・運営業務の全部若しくは一部の履行ができなくなったとき又は損害が生じたときは、選定事業者は、その事実の発生後直ちに履行不能の内容及び理由並びに損害の状況を管理者等に通知しなければならない。
2 選定事業者は、第一項の通知を行った日以降、履行不能の状況が継続する期間中、履行不能となった業務における履行義務を免れる。
3 管理者等は、前項に基づき履行義務を免れた期間に対応するサービス対価の支払いにおいて、選定事業者が履行義務を免れたことにより支出又は負担を免れた費用を控除することができる。
4 管理者等は、選定事業者から第一項の通知を受けたときは、速やかに選定事業者と事業の継続又は損害の負担に関する協議を行わなければならない。当該協議において不可抗力事由発生の日から○日を経過しても協議が整わな いときは、管理者等は不可抗力の対応方法を選定事業者に通知し、選定事業者はこれに従うものとする。
(関係者協議会等)
第六十二条 第十三条第一項、第二十一条第四項、第二十三条第六項、第三十 七条第四項、第三十九条第五項、第四十九条第一項又は第五十条第三項の規定に基づく協議は、関係者協議会により行う。
2 関係者協議会の構成及び運営に関して必要な事項は、別に定めるところによる。
3 管理者等又は選定事業者は、第一項に定めるところによるほか、この契約の解釈について疑義が生じた場合その他紛争の予防又は解決を図るため必要があると認められるときは、理由を示して関係者協議会の開催を請求することができる。
4 管理者等又は選定事業者は、前項の規定による請求があったときは、これに応じなければならない。
5 この契約の各条項において管理者等と選定事業者が協議して定めるものに つき協議が整わなかった場合に管理者等が定めたものに選定事業者が不服があるときその他関係者協議会の協議が整わなかったときは、別に定めるところにより選任される調停人の調停により紛争の解決を図る。
(注)第五項の規定については、調停手続の利用を義務付けない(管理者等又は選定事業者は、別に定めるところにより選任される調停人の調停により紛争の解決を図ることができる。)形としたり、あらかじめ調停手続の対象事項を特定したりすることも考えられる。
(注1)第十三条第三項(業務要求水準書の変更)、第二十一条第四項(工事の中止)、第二十三条第六項(引渡予定日の変更)、第三十七条第四項(維持管理・運営期間中の不可抗力)、第三十九条第五項(法令変更)、第四十九条第一項(サービス対価の変更)、第五十条第三項(サービス対価の変更等に代える業務要求水準書の変更)に同趣旨の規定がある。
(注2)資料1の第六十二条第一項の条文には誤りがあるため引用に際して修正している。
2.契約に関するガイドラインにおける記述
5-3 不可抗力等による解除xx(抜粋)
2.不可抗力又は法令変更による解除権の行使
・不可抗力の定義の考え方については「2-2-9 不可抗力による損害(設計、建設段階)」参照。
・不可抗力又は法令変更により、PFI事業契約等に従った建設工事業務、維持・管理業務又は運営業務の履行が不能になった場合、あらかじめ設定された業務要求水準を満たすために必要な人員若しくは器具等を追加する費用負担、業務要求水準若しくはPFI事業契約等の変更が必要な事項について、当事者間で一定の協議期間を設けて協議を行うことが規定される。
・一定の協議期間以内に、かかる協議について合意が成立しない場合、管理者 等は不可抗力又は法令変更に対する対応方法を選定事業者に対して通知し、選定事業者がこれに従い選定事業を継続させるものとする。但し、選定事業の履行不能が永続的なものと判断される場合、又は選定事業の継続に過分の費用を要する場合など、選定事業の継続に経済合理性のない事態も想定されることから、こうした場合には管理者等は、相手方当事者の選定事業者と協議の上、PFI事業契約の一部又は全部を解除することが可能である旨規定される。
・なお、不可抗力等によるPFI事業契約の一部又は全部解除権を、一方の当事者たる管理者等のみが有する契約構成とするか、当事者双方が有する契約構成とするか、については検討を要する点である。(関連:2-2-9 不可抗力による損害(設計、建設段階)、3-6 不可抗力による損害(維持・管理、運営段階)
・不可抗力によるPFI事業契約の解除の効力については、管理者等が施設を買い受けることとし、かかる対価とその他選定事業者に生じる合理的費用を負担することが考えられる。その他合理的費用については、選定事業者が開業に要した費用及び解散に要した費用があげられる。
・事業用地の瑕疵及び埋蔵文化財の発見等により選定事業者の業務の履行が不能となった場合についても不可抗力等により業務の履行が不能となった場合と同様の措置がとられることと規定する場合が多い。
4.不可抗力による損害等の分担
・選定事業者により不可抗力の発生による履行不能通知の発出後、管理者等が 選定事業を継続することを判断し、かつ、一定の期間以内において、当該不可抗力による損害又は増加費用の負担等対応方法について上述の当事者間協議が合意に達しない場合、あらかじめ定められた損害等の負担割合等対応方法によることを管理者等が選定事業者に通知し、選定事業者はこれに従う旨規定される。(関連:2-2-9 不可抗力による損害(設計・建設段階)及び3-6 不可抗力による損害(維持・管理、運営段階))
3.公共工事標準請負契約約款における関連規定
(工期の変更方法)
第二十三条 工期の変更については、甲乙協議して定める。ただし、協議開始の日から〇日以内に協議が整わない場合には、甲が定め、乙に通知する。 注 〇の部分には、工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう
留意して数字を記入する。
2 (略)
(注)第二十四条第一項(請負代金額の変更)、第二十五条第三項及び第七項(物価変動等に伴う請負代金額の変更)、第三十条第一項(請負代金額の変更に代える設計図書の変更)、第三十四条第五項(前金払)、第三十八条第二項(部分引渡し)に同趣旨の規定がある。
「公共工事標準請負契約約款の解説」では、この条項に関して以下のように解説されている。
2 甲乙協議
平成 7 年の改正以前には、工期の変更は、単に「甲乙協議して定める」との 規定があるのみで、どのようにして協議するのか不明確である。協議が整わない場合には暫定的な工期の変更決定も何もないまま紛争処理手続(調停、あっせん等)に移行せざるを得ない等の問題点があった。このため、本条第 1 項は、
工期の変更については、発注者と請負者が協議して定めるが、一定期間、協議 を続けても合意に至らない場合には、発注者が工期の変更決定を行い、請負者に通知することとしている。
協議を続けるべき一定の期間については、公共約款では○日という形にしているが、これは、例えば、1年の工事と1月の工事では、協議期間も自ずと差があるはずであり、一律に定めることが不可能なためである。実際には、個々の契約において○に数字を記入することとなるが、協議機関が十分にとられないと発注者と請負者の対等性の確保という公共約款の主目的の1つが達せられなくなるので、本条に(注)として記載してあるように、個々の契約の工期及び請負代金額を勘案して十分な協議が行えるよう留意して数字を記入しなければならない。この点については、厳に注意すべきものであり、数ヶ月を超える工期の契約については、最低でも2、3週間の期間がとられる必要があろう。
なお、協議が整わなかった場合には、発注者が工期の変更を決定するが、請負者は、この決定に不服がある場合には、第 52 条に定める調停、あっせんといった紛争処理手続きに進むことができる。