6,309 業者(H16)
【受注者向け】
建設業法令遵守について
令和4年11月 長崎県土木部監理課
はじめに
建設業法の目的
建設業法第1条
この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図る
ことによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって、公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
○第一の目的 建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護
○第二の目的 建設業の健全な発達の促進
建設生産物の特性
①受注産業
→一品ごとの注文生産であり、あらかじめ品質を確認できない。
②移動産業
→機械や労働力の能率的な使用が難しい。
③屋外産業
→気象天候の影響を大きく受ける。
④総合産業
→他の各産業と密接に結びついている。
→長期間、不特定多数の業者が施工に関与する(下請が多く重層的)。
目 次
3.下請代金等未払認定制度 21
Ⅰ 建設業を取り巻く現状 1.建設投資、許可業者数及び就業者数の推移 ------------------------------ 2.下請取引等実態調査結果 Ⅱ 請負契約上の法令遵守事項 1.見積条件の提示 2.書面による契約締結 2-1.当初契約 2-2.追加工事等に伴う追加・変更契約 ---------------------------------- 2-3.著しく短い工期の禁止 2-4.工期変更に伴う変更契約 3.不当に低い請負代金 4.指値発注 5.不当な使用材料等の購入強制 6.やり直し工事 7.請負代金の支払い Ⅲ 工事現場における法令遵守事項 1.工事現場へのxx技術者・監理技術者の配置 ---------------------------- 2.xx技術者・監理技術者の専任が必要な工事 ---------------------------- 3.専門技術者の配置が必要な工事 4.工事現場の技術者の配置要件に関する規制の合理化 ---------------------- 5.JV工事における技術者配置 6.一括下請負の禁止 7.無許可業者に下請負する場合の制限 ------------------------------------ 8.監理技術者資格者証 9.施工体制台帳・施工体系図の作成が必要となる工事 ---------------------- 10.特定建設業者に課せられる下請負人に対する指導義務 -------------------- Ⅳ 建設業法に違反すると 1.建設業法の目的 2.違法行為発生の3要因 3.不利益取扱いの禁止 4.監督処分 Ⅴ 関係法令等 1.独占禁止法との関係 2.労働者派遣法 | 3 4 5 6 6 7 7 8 8 8 9 9 10 11 12 12 13 14 15 16 16 17 18 18 19 19 19 20 20 |
Ⅰ 建設業を取り巻く現状
1. 建設投資、許可業者数及び就業者数の推移長崎県の現状
・ 建設投資額はピーク時から約 39%の減(昨年:約33%減)
・ 許可業者数はピーク時から約 20%の減(昨年:約 22%減)
・ 就業者数は、ピーク時から約 33%の減(昨年:約 33%減)
長崎県の建設投資額・許可業者数・建設業就業者数
建設投資額 (令和3年度) | 約 5,592 億円 | 対前年比 -9.7% | ピーク時(6 年度)約 9,180 億円から 約 39%減 |
許可業者数 (令和3年度末) | 4,991 業者 | 対前年比 +1.0% | ピーク時(16 年度末)6,309 業者から 約 20%減 |
建設業就業者数 (令和元年度) | 56,721 人 | 対前年比 +0.3% | ピーク時(7 年度)84,581 人から 約 33%減 |
出所:国土交通省「建設総合統計年度報」・「建設業許可業者数調査の結果について」長崎県「県民経済計算」
長崎県内の建設投資額・建設業許可者数・就業者数の推移
認可業者数のピーク
6,309 業者(H16)
就業者数のピーク
84,581 人(H7)
建設投資額のピーク
9,180 億円(H6)
長崎県の傾向
・ 建設投資額はH23 を底値に回復基調が続いているものの、ほぼ横ばいで推移している。R2比は減少となった。
・ 許可業者数、就業者数は、減少傾向にあるがR2比は若干の増加。
全国の建設投資額・許可業者数・建設業就業者数
建設投資額 (令和 3 年度) | 約 52 兆円 | 対前年比 -5.7% | ピーク時(4年度)約 84 兆円から 約 38%減 |
許可業者数 (令和 3 年度末) | 約47 万業者 | 対前年比 +0.3% | ピーク時(11 年度末)約 60 万業者から 約 22%減 |
建設業就業者数 (令和 3 年度) | 約 482 万人 | 対前年比 -2.0% | ピーク時(9年平均)約 685 万人から 約 29%減 |
出所:国土交通省「建設総合統計年度報」・「建設業許可業者数調査の結果について」総務省「労働力調査」
2. 下請取引等実態調査結果
令和4年1月13日に国土交通省から公表されました。全国の建設業者 18,000 業者を対象とした下請取引等実態調査の集計結果は次のとおりです。
・ 下請発注における代金支払や契約締結について、建設業法に基づく指導を行う必要があると認められる建設業者は全体の 89.2%(R2 調査時は 89.1%)
(R1 調査から R3 調査の不適正回答率)
調 査 項 目 | R1 | R2 | R3 |
見積を依頼する際に提示している内容 | 80.5% | 78.1% | 78.8% |
契約書で定めている条項 | 51.4% | 48.0% | 52.4% |
施工体制台帳の添付書類(民間工事) | 50.9% | 48.8% | 46.4% |
下請契約の締結方法 | 37.8% | 35.9% | 36.6% |
施工体制台帳の添付書類(公共工事) | 36.2% | 36.0% | 33.1% |
・ 元請負人から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した建設業者は全体の 1.2%(R2 調査時も 1.2%)
(具体的なしわ寄せの内容)
しわ寄せの内容 | R1 | R2 | R3 |
下請代金の不払い | 15.3% | 10.9% | 11.0% |
工事着手後に締結 | 7.9% | 9.7% | 6.7% |
指値による契約 | 10.3% | 10.1% | 12.5% |
見積を全く考慮されなかった | 9.9% | 13.9% | 9.8% |
・ 発注者から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した建設業者は全体の 0.6%(R2 調査時は 0.7%)
(具体的なしわ寄せの内容)
しわ寄せの内容 | R1 | R2 | R3 |
発注者側の設計図面不備・不明確、設計積算ミス | 19.8% | 18.7% | 16.9% |
請負代金の不払い | 7.9% | 8.4% | 13.5% |
追加・変更契約の締結を拒否 | 10.7% | 13.5% | 8.8% |
Ⅱ 請負契約上の法令遵守事項
1. 見積条件の提示
見積依頼は、工事内容・工期等の契約内容をできる限り具体的に提示して行わなければなりません
建設業法 第20条第1項、第4項
・ 契約書に記載することを義務付けられている事項(15項目)のうち請負代金の額を除くすべての事項についての提示が必要です。
・ 工事内容について、最低限明示すべき事項は次のとおりです。
① | 工事名称 | ⑥ 見積条件及び他工種との関係部 位、特殊部分に関する事項 |
② | 施工場所 | |
③ | 設計図書(数量等を含む) | ⑦ 施工環境、施工制約に関する事項 |
④ | 下請工事の責任施工範囲 | ⑧ 材料費、労働災害防止対策、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項 |
⑤ | 下請工事の工程及び下請工事を含 む工事の全体工程 |
・見積条件の提示の際、適正な法定福利費を内訳明示した見積書(特段の理由により、これを作成することが困難な場合にあっては、適正な法定福利費を含んだ見積書)を 提出するよう明示すること。
・見積りは、工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにすること。
見積りをするために必要な一定の期間を設けなければなりません
建設業法 第20条第3項、建設業法施行令 第6条
下請工事の予定価格の額 | 見積期間 | |
① 500万円に満たない工事 | 中 | 1日以上 |
② 500万円以上5,000万円に満たない工事 | 中 | 10日以上 |
③ 5,000万円以上の工事 | 中 | 15日以上 |
※ 予定価格が②、③の工事については、やむを得ない事情があるときに限り、見積期間をそれぞれ、5日以内に限り短縮することができます。
2. 書面による契約締結
2-1 当初契約
請負契約の締結に当たっては、契約の内容を明示した書面を作成し、着工前に相互に交付しなければなりません
建設業法 第19条第1項
契約書には建設業法で定める一定の事項(15項目)を記載することが必要です
建設業法 第19条第1項
契約書に記載しておかなければならない重要事項15項目
① 工事内容(○○工事一式といった曖昧な記載は避けましょう。) |
② 請負代金の額 |
③ 工事着手の時期及び工事完成の時期 |
④ 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容 |
⑤ 請負代金の全部又は一部の前払金又は出来高部分に対する支払の定めをする ときは、その支払時期及び方法 |
⑥ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又 は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め |
⑦ 天災その他の不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方 法に関する定め |
⑧ 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更 |
➃ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する 定め |
⑩ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与す るときは、その内容及び方法に関する定め |
⑪ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法 並びに引渡しの時期 |
⑫ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法 |
⑬ 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき 保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容 |
⑭ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金 その他の損害金 |
⑮ 契約に関する紛争の解決方法 |
一定規模以上の解体工事等、建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)対象工事は、さらに以下の事項の記載が必要です。
① 分別解体等の方法 |
② 解体工事に要する費用 |
③ 再資源化等をするための施設の名称及び所在地 |
④ 再資源化等に要する費用 |
2-2 追加工事等に伴う追加・変更契約
追加工事等の発生により、当初の請負契約書に掲げる事項を変更するときは、着工前に書面による契約変更が必要です
建設業法 第19条第2項
・ 追加工事又は変更工事の発生により、当初の請負契約書に掲げる事項を変更するときは、その変更内容を書面に記載し、署名及び記名押印して相互に交付しなければなりません。
・ これは、当初の請負契約書において契約内容を明定しても、その後の変更契約が口約束で行われれば、当該変更契約の明確性及び正確性が担保されず、紛争を防止する観点からも望ましくないためであり、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として追加工事等の着工前に契約変更を行うことが必要です。
・ 追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
工事状況により、直ちに確定できない場合は、以下の①~③のすべての事項を記載した書面を追加工事等の着工前に受注者と取り交わすこととし、契約変更等の手続きについては、追加工事等の全体数量等の内容が確定した時点で遅滞なく行いましょう。
① 追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
② 当該追加工事等が契約変更等の対象となること及び契約変更等を行う時期
③ 追加工事等に係る契約単価の額
2-3 工期変更に伴う変更契約
工期変更により、当初の請負契約書に掲げる事項を変更するときは、着工前に書面による契約変更が必要です
建設業法 第19条第2項
2-4 著しく短い工期の禁止
(著しく短い工期の禁止)
工事の注文者に対して、著しく短い工期による請負契約の締結を禁止し、これに違反した発注者に対して、国土交通大臣等は、必要があると認められるときは、勧告等ができることとする。
建設業法 第19条第5項 令第5条の8関係
・著しく短い工期と疑われる場合の対応については、「工期に関する基準」令和2年 7月20日 中央建設業審議会決定の基準等を踏まえて、著しく短い工期に該当すると考えられる場合には、発注者、受注者、元請負人、下請負人問わず、許可行政庁へ適宜相談することが可能。
(工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供)
工事の注文者は、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものなど省令を定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、契約締結するまでに、建設業者に対して、必要な情報を提供しなければならない。
建設業法 第20条の2
3. 不当に低い請負代金
自己の取引上の地位を不当に利用し、通常必要と認められる原価に満たない金額で請負契約を締結してはなりません
建設業法 第19条の3
(法令違反のおそれがある事例)
・ 自らの予算額のみを基準として、受注者との協議を行うことなく、受注者による見積額を大幅に下回る額で請負契約を締結した。
・ 契約を締結しない場合には今後の取引において不利な取扱いをする可能性がある旨を示唆して、受注者との従来の取引価格を大幅に下回る額で、請負契約を締結した。
・ 請負代金の増額に応じることなく、受注者に対し追加工事を施工させた。
・ 発注者の責めに帰すべき事由により工期が変更になり、工事費用が増加したにもかかわらず、発注者が請負代金の増額に応じない。
・ 契約後に、取り決めた請負代金を一方的に減額した。
4. 指値発注
一方的に決めた請負代金の額を提示(指値)し、その額で請負契約を締結してはいけません
建設業法 第19条第1項、第19条の3、第20条第3項
(法令違反のおそれがある事例)
・ 自らの予算額のみを基準として、受注者との協議を行うことなく、一方的に請負代金の額を決定し、その額で請負契約を締結した。
・ 合理的証拠がないのにもかかわらず、受注者の見積額を著しく下回る額で請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した。
・ 複数の建設業者から提出された見積金額のうち最も低い額を一方的に請負代金の額として決定し、当該見積りの提出者以外の者とその額で請負契約を締結した。
(法令違反となる事例)
・ 発注者と受注者の間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、受注者に工事を着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に受注者との協議に応じることなく請負代金の額を一方的に決定し、その額で請負契約を締結した。
・ 受注者が見積りを行うための期間を設けることなく、自らの予算額を受注者に提示し、請負契約締結の判断をその場で行わせ、その額で請負契約を締結した。
5. 不当な使用材料等の購入強制
請負契約の締結後に、自己の取引上の地位を不当に利用して、使用資材等又はこれらの購入先を指定して受注者の利益を害してはなりません
建設業法 第19条の4
(法令違反のおそれがある事例)
・ 請負契約の締結後に、受注者に対して、工事に使用する資材又は機械器具等を指定し、あるいは、その購入先を指定した結果、受注者が予定していた購入価格より高い価格で資材等を購入することとなった。
・ 請負契約の締結後、当該契約に基づかない発注者が指定した資材等を購入させたことにより、受注者が既に購入していた資材等を返却せざるを得なくなり金銭面及び信用面における損害を受け、その結果、従来から継続的取引関係にあった販売店との取引関係が悪化した
6. やり直し工事
工事の施工後に、発注者が受注者に対して工事のやり直しを依頼する場合にあっては、発注者・受注者間で十分な協議を行う必要があります
建設業法 第19条第2項、第19条の3
(法令違反のおそれがある事例)
・ 受注者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、やり直し工事を行わせ、必要な変更契約を締結せずにその費用を一方的に受注者に負担させた。
7. 請負代金の支払い
請負契約に基づく目的物の引渡しを受けた場合、受注者に対し、請負契約において取り決められた請負代金の額を、できる限り速やかに支払いましょう。
(望ましくない行為事例)
・ 請負契約に基づく工事目的物が完成し、引渡し終了後、受注者に対し、速やかに請負代金を支払わない。
【上位注文者から出来高払・竣工払の支払を受けた場合】
元請負人
発注者
出来高払い竣工払い
一次下請負人
1ヶ月以内に支払う
出来高払い竣工払い
1ヶ月以内に支払う
ニ次下請負人
・下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適正な配慮を しなければならい。
(現金として扱われるもの 現金、銀行振り込み、銀行振出小切手)
建設業法 第24条の3
※赤伝処理
赤伝処理をする場合は、その内容を見積条件・契約書面に明示することが必要(建設廃棄物の処理費用、下請代金振込手数料、協力会費等)
※支払保留
正当な理由がない長期支払い保留は建設業法違反
下請け人の施工が完了し、検査引き渡しが終了したにも関わらず、元請人の全体工程が終了するまで支払いを保留した場合など
望ましくは、下請代金をできるだけ早期に支払うこと
工事目的物の引き渡しの申出
下請工事に対する完成検査
下請人からの工事完成通知
下請代金の支払は、下請負人が引渡しの申し出をした日から 50日以内で、できる限り短い期間内で行う
(特定建設業者が注文者から代金を受け取っている場合は、その日から1ヶ月以内のどちらか早いほうで支払う)
検査は完成通知を受けてから 20日以内でできるだけ短い期間内で行う
【特定建設業者が資本金4,000万円未満の一般建設業者に下請負させた場合】
下請工事完成
下請代金の支払
下請負人からの代金請求
工事目的物の引渡しを受ける
Ⅲ 工事現場における法令遵守事項
1. 工事現場へのxx技術者・監理技術者の配置
建設業法 第24条の6
工事現場にはxx技術者又は監理技術者を配置しなければなりません
xx技術者
建設業法 第26条第1項、第2項
建設業者は、請け負った建設工事を施工する場合には、請負金額の大小、元請・下請に関わらず、必ず工事現場に施工上の管理をつかさどるxx技術者を置かなければなりません。
監理技術者
発注者から直接工事を請負い、そのうち4,000万円(建築一式工事の場合は 6,000万円)以上を下請契約して施工する場合は、xx技術者にかえて監理技術者を置かなければなりません。
※ xx技術者及び監理技術者については、工事を請け負った建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。
2. xx技術者・監理技術者の専任が必要な工事
個人住宅を除くほとんどの工事では、請負代金が3,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の工事に係るxx技術者又は監理技術者は、その工事現場に専任しなければなりません
建設業法 第26条第3項、建設業法施行令 第27条
「xx技術者又は監理技術者の専任が求められる工事」とは
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で、工事1件の請負代金の額が3,500万円(建築一式
工事は7,000万円)以上のものと定められています。発注者が公共機関でない、いわゆる民間工事が含まれており、個人住宅を除くほとんどの工事がその対象となっています。なお、注文者が材料を提供する場合には、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の額に加えた額で判断します。
「営業所の専任技術者」は、専任を要する現場のxx技術者又は監理技術者になることはできません
「営業所の専任技術者」は、請負契約の締結にあたり技術的なサポート(工法の検討、注文者への技術的な説明、見積り等)を行うことがその職務ですから、所属営業所に常勤していることが原則です。
例外的に、所属営業所の近隣工事のxx技術者等との兼務が前述の職務を適正に遂行できる範囲で可能な場合には現場の技術者となることもできますが、近隣工事であっても工事現場への専任を要する工事のxx技術者等と兼務することはできません。
3. 専門技術者の配置が必要な工事
「一式工事に含まれる専門工事」又は「附帯工事」を自ら施工する場合には「専門技術者」を配置しなければなりません
※ 一式工事における「専門技術者」
建設業法 第26条の2、第4条
土木一式工事又は建築一式工事を施工する場合、これらの一式工事の内容である他の建設工事(例えば、住宅建築工事を施工する場合の屋根工事、電気工事等の一式工事の内容となる専門工事)を自ら施工しようとするときは、当該工事に関しxx技術者の資格を有する者(専門技術者)を工事現場に置かなければなりません。
はい
いいえ
当該専門工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に工事を施工させる
一式工事の内容である他の建設工事(500万円以上)を自ら施工するか?
土木一式工事又は建築一式工事の施工
当該専門工事に関しxx技術者の資格を有する者を置く
※「附帯工事」における専門技術者
建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する他の建設工事(例えば、建築物の電気配線の改修に伴い、必要が生じた内装仕上工事等)を自ら施工しようとするときは、当該附帯工事の専門技術者を工事現場に置かなければなりません。
許可を受けた建設業に係る建設工事に附帯する建設工事を施工
はい
いいえ
当該附帯工事に係る建設業の許可を受けた建設業者に工事を施工させる
当該附帯工事(500万円以上)を自ら施工するか?
当該附帯工事に関しxx技術者の資格を有する者を置く
4. 工事現場の技術者の配置要件に関する規制の合理化
(監理技術者の専任義務の緩和)
元請の監理技術者に関し、これを補佐する者を置く場合は、元請の監理技術者の複数現場の兼任を容認することとする
建設業法 第26条第3項
・監理技術者の職務を補佐する者として政令で定める者を専任で置いた場合には、監理技術者の兼務を認める。
(その場合、監理技術者は「特例監理技術者」という。監理技術者を補佐するものは、「監理技術者補佐」という。)
(監理技術者制度運用マニュアル)(R2年9月30日改正))
(下請負人のxx技術者の配置が免除される特定専門工事)
専門工事のうち、施工技術が画一的である等として政令で定めるもの
(以下、「特定専門工事」という。)については、元請のxx技術者が、下請のxx技術者が行うべき施工管理を併せて行うことがきることと する
建設業法 第26条の3
・特定専門工事は、下請代金の合計額が3,500万円未満の鉄筋工事及び型枠工事
・元請負人が置くxx技術者の要件は、当該特定専門工事と同一の種類の建設工事に関し一年以上指導監督的な実務の経験を有すること。
当該特定専門工事の工事現場に専任で置かれること。
5. JV工事における技術者配置
JV(建設工事共同企業体)工事では、すべての構成員が技術者を現場に配置しなければなりません
建設業法 第26条第1項、第2項及び第3項、監理技術者制度運用マニュアル
共同企業体運用準則
建設工事は、一つの企業が発注者から請け負うのが通常ですが、複数の企業が共同企業体を結成して請け負う場合もあります。
共同企業体による建設工事の施工が円滑かつ効率的に実施されるためには、すべての構成員が施工しようとする工事にふさわしい技術者を工事現場に適正に設置し、共同施工の体制を確保しなければなりません。
上記のことから、複数の企業が共同企業体を結成して建設工事を請け負った工事
(建設工事共同企業体工事)を施工する場合には、共同企業体のすべての構成員が、施工方式や下請金額に応じてxx技術者等の技術者を工事現場に配置しなければ
ならないこととしているのです。
共同企業体の方式 | |
特定建設共同企業体 | 経常建設共同企業体 |
・特定工事の施工を目的として工事毎に結成 ・工事完成後又は工事を受注できなか った場合は解散 | ・中小・中堅建設業者が継続的な協議関係を確保することにより、その経営力・施工力を強化する目的で結成 |
・大規模かつ技術難度の高い工事が対象 | ・発注機関の入札参加資格審査申請時に経常JVとして結成し、単体企業と同時に一定期間、有資格業者とし て登録 |
共同企業体における代表者の選定方法とその出資比率 | |
特定建設共同企業体 | 経常建設共同企業体 |
・代表者は、施工能力の大きい者で、 | ・代表者及び出資比率は構成員が自主 |
出資比率は、構成員中最大 | 的に決定 |
共同企業体の施工方式と配置技術者 | |
甲型共同企業体(共同施工方式) | 乙型共同企業体(分担施工方式) |
・全構成員が各々あらかじめ定めた出資の割合に応じて、資金、人員、機械等を拠出して一体となって工事を施工する方式 | ・各構成員で共同企業体の請け負った工事をあらかじめ工区に分割し、各構成員はそれぞれの分担した工事について責任を持って施工する方式 |
・下請契約の額が4、000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となる場合には、特定建設業者である構成員1社以上が監理技術者を設置 | ・共同企業体工事全体の取り扱いに加えて、分担工事に係る下請契約の額が4、000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となる場合には、当該分担工事を施工する特定建設業者は監理技術者を設置 |
6. 一括下請負の禁止
一括下請負はしない、させない
建設業法 第22条
一括下請負の禁止
・ 発注者からの信頼の裏切り
・ 中間搾取、工事の質の低下、労働条件の悪化、実際の工事施工の責任の不明確化
・ 商業ブローカー的不良業者の輩出
「下請工事への実質的な関与」が認められるためには
・ 自社の技術者が下請工事の
① 施工計画の作成 ② 工程管理 ③ 出来型・品質管理 | ④完成検査 ⑤安全管理 ⑥下請業者への指導監督 |
等について、主体的な役割を現場で果たしていることが必要
・ 発注者から工事を直接請け負った者については、加えて
⑦発注者との協議 ⑧住民への説明 | ➃官公庁等への届出等 ⑩近隣工事との調整 |
等について、主体的な役割を果たすことが必要
一括下請負は、公共工事については全面禁止、民間工事も原則禁止
・ 一括下請負は、公共工事については全面禁止されています。
・ 民間工事は、発注者の書面による事前承諾がある場合を除き、禁止されています。なお、平成18年の法改正により、一定の民間工事(多数の者が利用する一定の重要な施設の工事)についても一括下請負が全面禁止されることとなりました。
「一括下請負の責任」は注文者も請負者も問われます
・ 一括下請負の禁止に違反した場合には、当該下請工事の注文者(元請)だけでなく請負人(下請)も監督処分の対象となります。下請間でも一括下請負は禁止されています。
7. 無許可業者に下請負する場合の制限
無許可業者に下請代金が500万円以上の建設工事を下請負してはなりません(建築一式工事の場合は1,500万円以上)
建設業法 第3条、28条第1項第6号、建設業法施行令 第1条の2
・ 建設業を営む者は、「軽微な建設工事」を請け負うことのみを営業とする者を除き、建設業の許可を受けなければなりません。このことは、発注者から直接請け負う場合でも、他の建設業者から請け負う場合でも変わりはありません。
【軽微な建設工事】とは、工事1件の請負代金の額が
●建築一式工事の場合⇒1,500万円に満たない工事又は延べ面積が150㎡に満たない木造住宅工事
● その他の建設工事の場合⇒500万円に満たない工事
※ 注文者が材料を支給する場合には、請負代金に支給材料の市場価格(運送賃含む。)を加えた額で判断します。請負代金の額には、消費税や地方消費税を含みます。
なお、同一の無許可業者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負った場合には、各契約の請負代金の額の合計額で判断します。
8. 監理技術者資格者証
監理技術者は、発注者から請求があればその監理技術者資格者証を提示しなければなりません。
建設業法 第26条第4項、第5項、監理技術者制度マニュアル
・ 元請業者が当該工事現場に専任で配置する監理技術者は、元請業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者で「監理技術者資格者証」の交付を受けており、かつ監理技術者講習を受けている者の中から選任しなければなりません。
・ 上記により選任された監理技術者は、発注者から請求があったときは、監理技術者証を提示しなければなりません。
公共工事は、代金額にかかわらず作成が必要です。
9. 施工体制台帳・施工体系図の作成が必要となる工事
特定建設業者は、発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請代金の総額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となる場合には、施工体制台帳・施工体系図を作成し、適切な現場管理を行わなければなりません
建設業法 第24条の8、建設業法施行令 第7条の4
建設業法施行規則 第14条の2~7
・ 「施工体制台帳・施工体系図」を整備しなければならない工事
施工体制台帳等は、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者と一次下請業者との間で締結した「建設工事の請負代金(税込み)」の総額が4,000万円(ただし、建築一式工事は6,000万円)以上となった場合に公共工事、民間工事を問わず必ず作成しなければなりません。
※ 一次下請業者への下請代金の総額が4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上となる工事を発注者から直接請け負うためには特定建設業の許可が必要 です。
・ 「施工体制台帳・施工体系図」を活用した現場管理を行いましょう
施工体制台帳作成工事においては、発注者から直接工事を請け負った特定建設 業者は、当該台帳の作成等を通じて施工体制を的確に把握しなければなりません。
施工体制台帳を機械的に作るだけでなく、下請負人から報告される内容に不備があれば確認を行い、末端に至るまでの下請契約を当該下請工事の着工前までに書面で締結させる等、下請負人に対する適切な指導を行うことで、適正な施工体制の確立に努める必要があります。
・ 施工体制台帳の記載内容と添付書類
① 工事内容と建設業許可
② 配置技術者の氏名と資格
③ 請負契約関係
④健康保険等の加入状況
(添付書類) ① 発注者との請負契約書の写し 作成特定建設業者が請け負った建設工事の契約書の写し ② 下請契約書の写し 1次下請との契約書の写し及び2次下請以下の下請負人が締結したすべての請負契約書の写し |
③ 元請監理技術者(専門技術者)関係 ・ 監理技術者が監理技術者資格を有することを証する書面(監理技術者資格者証の写し) ・ 監理技術者が所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることを証明するものの写し(健康保険証等の写し) ・ 専門技術者(置いた場合に限る)の資格及び雇用関係を証する書面 |
10.特定建設業者に課せられる下請負人に対する指導義務
建設工事の下請負人の法令遵守を徹底するため、特定建設業者は、末端までのすべての下請負人に対する指導業務を適切に行うよう努めなければなりません
建設業法第24条の7、建設業法施行令第7条の3
・ 特定建設業者が発注者から直接工事を請け負い、元請となった場合には、下請業者が建設業法、建築基準法、労働基準法、労働安全衛生法などの法令に違反しないよう指導に努めなければなりません。
① 下請業者に法令遵守指導の実施 |
② 下請業者の法令違反については是正指導の実施 |
③ 下請業者が是正しないときの許可行政庁への通報 |
※ 直接下請業者だけでなく、工事に携わるすべての下請業者が対象となります。特定建設業者の責務とは
Ⅳ 建設業法に違反すると
1. 建設業法の目的
建設業法は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的に定められたものです。
(建設業法第1条)
1. 建設業を営む者の資質の向上
2. 建設工事の請負契約の適正化
1. 建設工事の適正な施工を確保
2. 発注者の保護
3. 建設業の健全な発達を促進
公共の福祉の増進
2. 違法行為発生の 3 要因
1.ルールを守る意識(遵法意識)の欠如
2.従業員にルールを守らせる取り組み(内部統制)の欠如
3.ルールを知らない(法令の不知)
3. 不利益取扱いの禁止
建設業法第 24 条の5
・違反する行為があるとして下請負人が国土交通省等、xx取引委員会又は中小企業庁長官にその事実を通報したことを理由として、当該下請負人に対して取引の停止その他の不利益な取り扱いをしてはならない。
4. 監督処分
建設業を営む者(無許可業者を含む)が建設業法や入札契約適正化法に違反すると、建設業法上の監督処分の対象となります。
指示処分(建設業法第28条第1項、第2項)
建設業法に違反すると、監督行政庁(国土交通大臣(地方整備局等)又は都道府県知事)による指示処分の対象になります。
指示処分とは、法令違反や不適正な事実を是正するために、企業がどのようなことをしなければならないか、監督行政庁が命令するものです。
営業停止処分(建設業法第28条第3項)
指示処分に従わないときには、監督行政庁による営業停止処分の対象となります。一括下請負の禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他法令に違反した場合など、その事実において、情状が重く、指示処分のみでは十分でない場合や指示処分に従
わない場合には、営業停止処分となります。
営業の停止期間は1年以内で監督行政庁が判断して決定します。
許可取消処分(建設業法第29条)
不正手段で建設業の許可を受けたり、営業停止処分に違反して営業したりすると監督行政庁によって、建設業の許可の取消しが行われます。
一括下請負の禁止規定の違反や独占禁止法、刑法などの他法令に違反した場合などで、情状が特に重いと判断されると指示処分や営業停止処分なしで、即、許可取消しとなります。
Ⅴ 関係法令等
1. 独占禁止法との関係
建設業法の規定のうち、不xxな取引方法として独占禁止法違反となるものについては、xx取引委員会が排除措置といった処分を行います。
・ 不当に低い請負代金での契約強制 ・ 不当な使用資材等の購入強制 ・ 下請代金の未払い ・ 完成検査、目的物引渡しの未了 ・ 特定建設業者の割引困難手形の交付 ・ 特定建設業者の下請代金の未払い | 建設業法第19条の3 〃 第19条の4 〃 第24条の3第1項 〃 第24条の4 〃 第24条の6第3項 〃 第24条の6第4項 |
建設業法の監督行政庁である国土交通大臣(地方整備局等)又は都道府県知事は、xx取引委員会に対し措置請求ができる(建設業法第42条)
2. 労働者派遣法
労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)第4条において、建設業務については、労働者派遣事業を行ってはならないと規定されています。
このため、建設業を営む者が自社従業員を建設現場に派遣し、派遣先の指揮命令の下に従事させることは、この規定に違反する可能性があります。
3. 下請代金等未払認定制度
下請業者等より未払いの申立等があり、県工事の入札参加資格を有している建設業者が、公共工事等において下請代金等の未払いの事実があると認定された場合、県工事への入札参加を規制する制度を平成21年 11月より設けています。
申立件数 14件(うち解決件数 7件)入札参加規制(実績) 3件
【参考】
「よくわかる建設業法」 長崎県庁ホームページ掲載箇所
①右上「組織で探す」
②「土木部監理課」
③業務内容の「建設業関係」
④「建設業の許可」
⑤「10.関連リンク」の国土交通省よくわかる建設業法をクリック