Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
持続可能な建設業に向けた環境整備検討会
第四回検討会 資料
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
令和4年10月26日
1.価格変動に関する契約を巡る課題
2.公共工事における価格変動への対応について
3.民間工事における価格変動への対応について
1-1.価格変動に関する契約を巡る主な論点
公共工事
標準約款に則したスライド条項が設定されているが、次の指摘がある。
スライド適用の際の受注者負担スライド適用の際の手続き
スライド条項の適切な運用
左記の他、予定価格の算定の際に用いる積算単価と、実勢価格との乖離が指摘されている。
契約自由の原則の中で、次の指摘がある。
民間工事
総価一式請負契約では、価格変動への対応が難しい
請負契約には、一定程度将来的な価格変動相当額が織り込まれているため、スライド条項は不適切
総価一式請負契約では、コストが低下した場合であっても、発注者には還元されない
左記の他、資材価格の変動について、請負代金に織り込まれ始めており、見積額の上昇に伴い、事業採算がとれず、事業の縮小や撤退といった状況も一部見られる。
既存契約 新規契約
3
2.公共工事における価格変動への対応について
2-1.工事費の構成
直接工事費
間接工事費
工事目的物の施工に直接必要な経費
①材料費(工事施工に必要な材料の費用)
②労務費(工事施工に必要な労務の費用)
③直接経費(特許使用料、水道光熱電力料、機械経費)
工事原価
施工に共通的に必要な経費
①運搬費、準備費、事業損失防止施設費、安全費、営繕費
②技術管理費
共通仮設費
工事価格
工事を監視するために必要な費用
①労務管理費(賃金以外の食事、通勤等)
②安全訓練等に要する費用
③租税公課、保険料(自動車保険、火災保険等)
④従業員給料手当、退職金、法定福利費、福利厚生費
(現場従業員に係るもの)
⑤外注経費
現場管理費
会社の本支店での必要経費、試験研究費、付加利益
①役員報酬、従業員給料手当、退職金、法定福利費、福利厚生費(本店・支店の従業員に係るもの)
②修繕維持費、事務用品費、通信交通費、動力・用水光熱費、地代家賃
③調査研究費
④広告宣伝費、交際費
⑤減価償却費、試験研究費償却、開発費償却
⑥付加利益(法人税等、株主配当金、役員賞与金、xxxxx等)
一般管理費等
5
予定価格とは、契約担当官等が競争を行うに当たって、事前に予定した競争に係る見積価格をいう。予算の限度内において契約するための最高の予定契約金額としての意味をもつほか、予算をもって最も経済的な調達をするために、適正かつ合理的な価格を積算し、これにより入札価格を評価する基準としての意味もある。
予決令第80条第2項により、予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないこととされている。
参考:会計制度(契約)に関する論点について 会計制度研究会
2-2.予定価格について
直接工事費は、箇所又は工事種類により各工事部門を工種、種別、細別及び名称に区分し、それぞれの区分ごとに材料費、労務費及び直接経費の3要素について積算。
材料費は、工事を施工するために必要な材料の費用。価格は、原則として、入札時(入札書提出期限日)における実 勢価格。設計書に計上する材料の単位あたりの価格を設計単価といい、設計単価は、物価資料等を参考とし、買入価格、買入れに要する費用及び購入場所から現場までの運賃の合計額とする。
労務費は、工事を施工するために必要な労務の費用。労務賃金は、労働者に支払われる賃金であって、直接作業に従事した時間の労務費の基本給をいい、基本給は、「公共工事設計労務単価」等を使用するものとする。
直接経費は、工事を施工するために直接必要とする経費。特許使用料は、契約に基づき使用する特許の使用料及び派出する技術者等に要する費用の合計額。水道光熱電力料は、工事を施工するために必要な電力、電灯使用料、用水使用料及び投棄料等。機械経費は、工事を施工するために必要な機械の使用に要する経費(材料費、労務費を除く。)で、その算定は請負工事機械経費積算要領に基づいて積算。
参考:土木工事工事費積算要領及び基準の運用
積算
予定価格決定
(積算基準等による算定)
実勢価格を反映した積算
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公共工事において、予定価格は「取引の実例価格」等を考慮して定めることとされている (予決令)
→ 発注者が市場の実勢を把握して単価を決定 (民間調査会社が発行する物価資料の活用や、独自に価格調査を実施)
(参考)生コンクリートの物価資料の調査概要
○ 物価資料 : 『建設物価』 ((一財)建設物価調査会)、『積算資料』 ((一財)経済調査会)
○ 掲載価格 : 1㎥ あたり単価
・掲載価格の取引数量条件 : 建設物価 100~1000㎥ (※東京、名古屋、大阪など都市部は 500~2000㎥)積算資料 200~1000㎥ (※東京、名古屋、大阪など都市部は 1000~2000㎥)
○ 調査頻度 : 毎月調査
○ 調査方法 : 調査月における契約価格を調査し、最頻値を採用
・売り手側(生コンは協同組合や販売店等)に対する調査を基本とする
・調査月における契約価格のみを対象とし、出荷ベースでの価格は調査対象としない
・調査では、xx需要渡しのxx取引も含め市場価格の動向を把握
※各社における審査方法の客観性・妥当性の確保 (経済調査会の場合)
・ 調査方法、調査プロセス、調査結果等について、外部有識者を委員とする『評価監視委員会』を社内に設置し監視
・ 外部有識者で構成する『価格審査会』を設置し、掲載価格について、委員が原則として毎月1回、公開前に客観性・妥当性を審査
7
※
(参考)公共工事設計労務単価の概要
公共工事設計労務単価の概要
○性格:公共工事の予定価格の積算用単価
予定価格の積算体系
直接工事費 【歩掛×単価】
労務単価
(51職種、都道府県ごとに設定)
工事原価
歩掛(数量) ×
資材単価
機械経費
○法令:予算決算及び会計令第80条第2項
「予定価格は、・・・・取引の実例価格、・・・等を考
慮して適正に定めなければならない。」 請負工事費
工事価格
一般管理費等
間接工事費
共通仮設費
共通仮設費
・現場の安全費 等
現場管理費
・現場労働者の募集等に要する経費
・法定福利費 等
・現場の安全費 等
現場管理費
・現場労働者の募集等 に要する経費
○改訂:毎年10月、国、都道府県、政令市等発注の公共工事に
従事する建設労働者(約11万人)の賃金支払い実態を調査し、年度当初に改訂。
消費税相当額
・会社(本支店)の必要
経費、適正利潤 等
・法定福利費
(事業主負担分) 等
○留意事項:
※土木の積算体系
労働者の雇用に伴う会社負担の諸経費が含まれる
・公共工事設計労務単価は、個々の契約(下請契約における労務単価や雇用契約における労働者への支払い賃金)を拘束するものではない
・法定福利費(事業主負担分)や、労働者の雇用に伴う会社負担の諸経費(労働者の募集・解散に要する費用、作業用具・被服に要する費用、労働者の宿泊・送迎費等)は含まない。(これらは別途、間接工事費にて計上されている)
・時間外・休日・深夜の手当は含まない(必要に応じ発注者が別途積算)
公共工事設計労務単価の構成
○ 予定価格では、1日8時間労働(時間外・休日労働なし)を前提として積算。
○ このため、設計労務単価は、支払い賃金から時間外割増賃金等を除いた上で、1日8時間労働に相当する額に換算し設定。(次の①~④)
基本となる賃金
割増賃金
定期の賃金
諸手当
①基本給相当額
時間外割増賃金、休日割増賃金など
②基準内手当
家族手当、現場手当、役付手当、技能手当など
工具手当(経費に関するもの)、突貫手当など
賃金
実物給与
③実物給与
通勤定期の支給、食事の支給など
臨時の賃金等
④臨時の給与
賞与、退職金など
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(参考)令和4年3月から適用する公共工事設計労務単価について
単価設定のポイント
(1) 最近の労働市場の実勢価格を適切・迅速に反映し、47都道府県・51職種別に単価を設定
(2) 必要な法定福利費相当額や義務化分の有給休暇取得に要する費用のほか、時間外労働時間を短縮するために必要な費用を反映
(3) 新型コロナウイルス感染症の影響下であることを踏まえた特別措置※を適用
全 国
※前年度を下回った単価は、前年度単価に据置
主要12職種※(19,734円)令和3年3月比;+3.0%(平成24年度比;+57.6%)
22,000
全 職 種 (21,084円)令和3年3月比;+2.5%(平成24年度比;+57.4%)
※「主要12職種」とは通常、公共工事において広く一般的に従事されている職種
公共工事設計労務単価 全国全職種平均値の推移
19,121 19,116
18,584
建設投資の減少に伴う労働需給
の緩和により下降
単価算出手法の大幅変更
・必要な法定福利費相当額の反映
・東日本大震災による入札不調状況に応じた被災三県における単価引き上げ措置
等を実施
10年連続の上昇
20,214 20,409
19,392
18,632
18,078
21,084
17,704
16,678
16,263
15,871
16,190
15,394
15,175
14,754
14,166
13,870 13,723 13,577
13,351 13,344 13,154 13,047 13,072
20,000
18,000
16,000
14,000
12,000
10,000
注1)金額は加重平均値にて表示。平成31年までは平成25年度の標本数をもとにラスパイレス式で算出し、令和2年以降は令和2年度の標本数をもとにラスパイレス式で算出した。
注2)平成18年度以前は、交通誘導警備員がA・Bに分かれていないため、交通誘導警備員A・Bを足した人数で加重平均した。 9
◎公共工事標準請負契約約款
2-3.公共工事標準請負契約約款における請負代金額変更の規定 (スライド条項)
第1項 : 「全体スライド」
第5項 : 「単品スライド」
第6項 : 「インフレスライド 」
(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)
第26条 発注者又は受注者は、工期内で請負契約締結の日から12月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動 により請負代金額が不適当となったと認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。
2 発注者又は受注者は、前項の規定による請求があったときは、変動前残工事代金額(請負代金額から当該請求時の出来形部分に相応する請負代金額を控除した額をいう。以下この条において同じ。)と変動後残工事代金額(変動後の賃金又は物価を基礎として算出した変動前残工事代金額に相応する額をいう。以下この条において同じ。)との差額のうち変動前残工事代金額の 1000分の15を超える額につき、請負代金額の変更に応じなければならない。
3 変動前残工事代金額及び変動後残工事代金額は、請求のあった日を基準とし、物価指数等に基づき発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から○日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。
[注]○の部分には、原則として、「14」と記入する。
4 第1項の規定による請求は、この条の規定により請負代金額の変更を行った後再度行うことができる。この場合において、同項中「請負契約締結の日」とあるのは、「直前のこの条に基づく請負代金額変更の基準とした日」とするものとする。
5 特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動を生じ、請負代金額が不適当となったとき は、発注者又は受注者は、前各号の規定によるほか、請負代金額の変更を請求することができる。
6 予期することのできない特別の事情により、工期内に日本国内において急激なインフレーション又はデフレーションを生じ、 請負代金額が著しく不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の定めにかかわらず、請負代金額の変更を請求することができる。
7 前2項の場合において、請負代金額の変更額については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から○日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。
[注]○の部分には、原則として、「14」と記入する。
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2-4.国交省直轄工事におけるスライド条項の取扱いについて
価格変動が・・・
●通常合理的な範囲内である場合には、請負契約であることからリスクは受注者が負担
●通常合理的な範囲を超える場合には、受注者のみのリスク負担は不適切
項目 | 全体スライド (第1~4項) | 単品スライド (第5項) | インフレスライド (第6項) | |
適用対象工事 | 工期が12ヶ月を超える工事 但し、残工期が2ヶ月以上ある工事 (比較的大規模な長期工事) | すべての工事 (運用通達発出日時点で継続中の工事及び新規契約工事) | すべての工事 但し、残工期が2ヶ月以上ある工事 (運用通達発出日時点で継続中の工事及び新規契約工事) | |
条項の趣旨 | 比較的緩やかな価格水準の変動に対応する措置 | 特定の資材価格の急激な変動に対応する措置 | 急激な価格水準の変動に対応する措置 | |
対象 | 請負契約締結の日から12ヶ月経過後の残工事量に対する資材、労務単価等 | 部分払いを行った出来高部分を除く特定の資材(鋼材類、燃料油類等) | 臨時で賃金水準の変更がなされた日以降の残工事量に対する資材、労務単価等 | |
残工事費の1.5% | 対象工事費の1.0% | 残工事費の1.0% | ||
請負額変更の方法 | 受注者の負担 | (但し、全体スライド又はインフレスライドと併用の場合、全体スライド又はインフレスライド適用期間における負担はなし) | (30条「天災不可抗力条項」に準拠し、建設業者の経営上最小限度必要な 利益まで損なわないよう定められた 「1%」を採用。単品スライドと同様の考え) | |
可能 | なし | 可能 | ||
再スライド | (全体スライド又はインフレスライド適用後、12ヶ月経過後に適用可能) | (部分払いを行った出来高部分を除いた工期内全ての特定資材が対象のため、再スライドの必要がない) | (臨時で賃金水準の変更がなされる都度、適用可能) |
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2-5.全体スライド条項に基づく契約額変更
長期にわたる工事期間中の比較的緩やかな資材・労務等の価格変動に対応
工事請負契約書 第25条第1~4項(全体スライド条項)
1 発注者又は受注者は、工期内で請負契約締結の日から12月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当となったと認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を 請求することができる。
2項以下 (略)
全体スライド(工事請負契約書第25条第1項~第4項)
残工事に対する 変動前後の差額(A)
請 負 額
(変動前残工事額:B)
全体スライド変更額 AーB×1.5%
ただし、A>B×1.5%の場合のみ全体スライド
適用可能
x x x 残 工 事
12ヶ月以上 残工期2ヶ月以上
契約日
請求日
14日以内
基準日
工期末
(※請求日を基本として、以降14日の範
囲内で受発注者協議により決定) 12
2-6.インフレスライド条項に基づく契約額変更
物価・賃金水準が著しい変動を生じた場合に適用
工事請負契約書 第25条第6項(インフレスライド条項)
6 予期することのできない特別の事情により、工期内に日本国内において急激なインフレーション又はデフレー ションを生じ、請負代金額が著しく不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の定めにかかわらず、請負代金額の変更を請求することができる。
インフレスライドの概要(工事請負契約書 第25条第6項)
残工事に対する 変動前後の差額(A)
インフレスライド変更額 AーB×1.0%
x x x
請 負 額
(変動前残工事額:B)残 工 事
ただし、A>B×1.0%
の場合のみインフレスライド
を適用可能
契約日
賃金水準の変更
請求日
残工期2ヶ月以上
基準日 工期末
14日以内
次の賃金水準の変更までに請求
(※請求日を基本として、以降14日の範囲内で受発注者協議により決定)
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特定資材の価格が著しい変動を生じた場合に適用
工事請負契約書 第25条第5項(単品スライド条項)
5 特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動を生じ、請負代金額が不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各号の規定によるほか、請負代金額の変更を請求することができる。
単品スライド(工事請負契約書第25条第5項)
2-7.単品スライド条項に基づく契約額変更
主要材料の変動額(A)
(材料費のみを対象)
請 負
額
(変動前対象工事額:C)
単品スライド変更額
=AーC×1%
既済部分(検査済)
対 象 工 事
ただし、A>C×1%の場合のみ、単品スライド
の適用可能
契約日
適用開始日
請求日
工期末
請求日以前も含めて資材高騰へ対応
残工期2ヶ月以上
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○ 都道府県が予定価格※1の積算時に使用する材料単価について、その設定状況を調査。
○ 物価資料を引用している※2材料単価については、15団体が、毎月、最新の物価資料の掲載価格を引用。
材料単価の設定状況 | 都道府県数 | |
Ⅰ | 全ての資材で「毎月、最新の物価資料の掲載価格を引用」 | 15 |
Ⅱ | 主要資材は「毎月、最新の物価資料の掲載価格を引用」 (主要資材以外は、「毎月の変動率を確認し、一定の基準を満たした場合に、最新の物価資料の掲載価格を引用」) | 5 |
Ⅲ | 主要資材は「毎月、最新の物価資料の掲載価格を引用」 (主要資材以外は、年数回更新) | 5 |
Ⅳ | 全ての資材で「毎月の変動率を確認し、一定の基準を満たした場合に、最新の物価資料の掲載価格を引用」 | 10 |
Ⅴ | 主要な資材は「毎月の変動率を確認し、一定の基準を満たした場合に、最新の物価資料の掲載価格を引用」 (主要資材以外は、年数回更新) | 11 |
Ⅵ | 最新の物価資料の掲載価格を引用していない (年数回更新) | 1 |
2-8.都道府県における材料単価の設定状況 -物価資料の引用
令和4年5月20日時点
※1 入札時の当初の予定価格
※2 複数の物価資料の掲載価格の平均値を採用している 又は 一つの物価資料の掲載価格を引用 している 15
3.民間工事における価格変動への対応について
3-1.民間工事請負契約における設計変更等に関する諸制度
建設業法(昭和24年法律第100号)
〇 建設工事の請負契約の原則として、建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いてxxな契約を締結し、xxに従つて誠実にこれを履行しなければならない旨を規定(第18条)。
〇 建設工事の請負契約の内容として記載すべき事項(例:工事内容、請負代金額、工期、設計変更等があった場合における工期や請負代金額の変更等の額の算定方法に関する定めなど)を規定(第19条第1項)。
〇 注文者が、自己の取引上の地位を不当に利用し、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない旨を規定(第19条の3)。
発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(平成23年8月 建設業課)
〇 追加工事等の着工前に書面による契約変更を行うことが必要。
〇 追加工事等に要する費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれ。
〇 工期変更についても書面による契約変更が必要。
〇 工期の変更に伴う費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれ。
〇 不当に低い請負代金の禁止(建設業法第19条の3)は変更契約にも適用。
民間工事標準請負契約約款(甲)(平成22年7月26日中央建設業審議会決定)
〇 発注者は、必要があると認めるときは、工事の追加・変更ができるとともに、受注者に工期の変更を求めることができる(第30条第1項・2項)。
〇 受注者は、発注者に対して、工事内容の変更及び当該変更に伴う請負代金の増減額を提案することができる(第30条第3項)。
〇 受注者は、工事の追加・変更等の正当な理由があるときは、発注者に対して、その理由を明示して、必要と認められる工期の延長を請求することができる(第30条第5項)。
〇 発注者又は受注者は、工事の追加又は変更があったときや工期の変更があったとき等の場合は、相手方に対して、その理由を明示して必要と認められる請負代金額の変更を求めることができる(第31条第1項)。
〇 請負代金額を変更するときは、原則として、工事の減少部分については監理者の確認を受けた請負代金内訳書の単価により、増加部分については時価による(第31条第2項)。
工事請負契約と諸制度の適用関係
発注者
受発注者ガイドライン
民間工事標準請負契約約款
建
業
元請 設
法
元下ガイドライン
建設工事標準下請契約約款
下請
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調査、企画 → 基本設計 → 実施設計 → 施工
発注者
地中調査、設計見積等
設計契約
(技術提案)
ヒア、施工見積、入札、内定等
発注者
地中調査,見積,入札等
見積精査、予算調整
下請(杭、鉄筋、土工、設備等)
設計・施工者(元請)
工事契約
下請(杭、鉄筋、土工、設備等)
施工者(元請)
設計者
設計契約
工事契約
3-2.民間建築工事における設計・施工の契約プロセス
建設工事の請負契約を締結するに際して見積りを行うこととなるが、特に設計施工一貫型の場合には、当初見積もりから工事契約まで数ヶ月から1年程度の期間を要する場合もある。
注文者には工期や請負代金の額に影響を及ぼす事象に関する情報提供義務が課せられているが、受注 者に情報提供義務は課せられていない。
設計施工分離型
設計施工一貫型
※上記プロセスは、簡略化した一例であり、実際は、見積方法や技術提案、予算調整、設計修正等について多種多様な方法がある。
建設業法(昭和二十四年法律第百号)(抄)
(建設工事の見積り等)
第二十条 建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。
2 建設業者は、建設工事の注文者から請求があつたときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付しなければならない。
3・4 略
(工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の提供)
第二十条の二 建設工事の注文者は、当該建設工事について、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、建設業者に対して、その旨及び当該事象の状況の把 握のため必要な情報を提供しなければならない。 18
• 一般に、民間工事の場合、標準的な約款のほかに、設計図書、説明書、質問回答書、特記仕様書等が一体となって工事請負契約を構成する。
• 工事請負契約は、両者の合意により締結されるものであるが、不確定要素がある中で、責任分担が曖昧な規定について理解が不十分なまま契約を締結し、工事開始後に現場不一致等が発生した場合、トラブルの発生や、適正な品質を確保できなくなる可能性がある。
3-3.円滑な工事施工のための適切な請負の枠組み
工事請負契約(発注者-受注者)
○設計図書
・設計図面
・現場説明書(契約条件の説明等)
・質問回答書(発注者からの回答)
・特記仕様書(当該物件に特有の仕様)
○約款
(民間標準約款、民間(七会)連合協定約款等を活用)
その他請負契約とは別に、施工者が作成する主な図書類
・総合図(施工のための基本図面)
・施工図(躯体、鉄筋加工等施工上必要な図面)
・施工計画(工程管理計画、安全衛生計画、仮設計画等)
工事施工後に発現する可能性のあるリスク
・地盤状況
・地中埋設物
・設計、資材の調整
・近隣対応、事故対応 等
・法定手続きの遅延等
これらのリスクについて、請負契約締結に先立ち、予め両者間で協議し、責任範囲や対応方法をできるだけ明確にし
ておくことが工事施工後のリスクを避けるために重要
19
建設工事は着手後に様々なリスクが発現し、工期や費用が変動するおそれがある。
<地盤関連>
杭を打設したが、想定深度で支持地盤に到達し なかったため、再設計と既製杭の再注文が必要となった。
地下水位が想定よりも浅く、水圧が高いため、鋼xxの打設長が変わり、使用するクレーンも変更となった。
軟弱地盤の沈下が想定した期間で収まらなかったため、次工程の着手が遅れた。
<設計、資材関連>
設計図書に示されたxxが所定の空間に入らなかったため、ルート変更が生じた
意匠設計と構造設計の調整が不十分で、修正設計の必要が生じた。 使用予定の資材が必要な時期に必要な数量搬入されなかったため、工期が遅れた。
<地中埋設物関連>
既存地下埋設物の位置が想定と異なっていたため、設置予定の構造物と干渉することが判明し、再設計を余儀なくされ た。
地中から産業廃棄物が発見され、廃掃法に則った処理が必要となった。
<近隣、事故等>
近隣住民から振動や騒音に対するクレームがあり、作業時間を短縮せざるを得なくなった。
作業員が怪我をしたため、関係機関への報告や再発防止策の徹底により工事が一時中断した。掘削残土搬出先の受入条件が変わったため、運搬距離や時期が変更となった。
3-4.工事着手後に発生する様々な施工上のリスク
工事着手後に発生する可能性のある施工上のリスクに円滑に対応するためには、
○予め関係当事者間で情報共有、協議し、各々の役割、責任の分担や協議ルールを明確化しておくことが必要
○合意された責任分担については、契約書等に位置づけることで紛争の発生を防止する効果が期待
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3-5.標準請負契約約款の概要
標準請負契約約款は、請負契約の片務性の是正と契約関係の明確化・適正化のため、当該請負契約に おける当事者間の具体的な権利義務関係の内容を律するものとして、中央建設業審議会がxxな立場から作成し、当事者にその実施を勧告するもの。【建設業法第34条第2項】
建設業法(昭和24年法律第100号)(抄)
(中央建設業審議会の設置等)
第34条 この法律、公共工事の前払金保証事業に関する法律及び入札契約適正化法によりその権限に属させられた事項を処理するため、国土交通省に、中央建設業審議会を設置する。
2 中央建設業審議会は、建設工事の標準請負契約約款、入札の参加者の資格に関する基準並びに予定価格を構成する材料費及び役務費以外の諸経費に関する基準を作成し、並びにその実施を勧告することができる。
種 類
① 公共工事標準請負契約約款(S25作成)
対象:国の機関、地方公共団体、政府関係機関が発注する工事の請負契約
(電力、ガス、鉄道等の民間企業の工事も含む)
② 民間建設工事標準請負契約約款(甲)(S26作成)
対象:民間の比較的大きな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約
③ 民間建設工事標準請負契約約款(乙)(S26作成)
対象:個人住宅等の民間の比較的小さな規模の工事を発注する者と建設業者との請負契約
➃ 建設工事標準下請契約約款(S52作成)
対象:公共工事・民間工事を問わず、建設工事の下請契約全般
※ xx・xx他「重要論点実務民法(債権関係)改正」によれば、定型約款の定義は①不特定多数要件と②合理的画一性要件とされているが、建設工事の請負契約についてはこのいずれにも該当しないことから、定型約款に当たらないものと考えられる。
21
3ー6.民法と契約について
民法と契約
(参考)「民間(七会)連合協定 工事請負契約約款の解説」民間(七会)連合協定 工事請負契約約款委員会
民法は、契約について、「契約自由の原則」という考え方を採用。(民法§521)
・法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
・契約の当事者は、法令の制限内ではあるが、契約の内容を自由に決定することができる。
民法は、契約自由の原則を採用しているため、契約当事者間で意思表示が合致すれば、原則として、 意思どおりの法的拘束力(権利・義務)が生じる。しかし、当事者の意思に任せていては、社会秩序が維持できなかったり、xxの実現が図れない場合がある。そこで民法は、当事者の意思より優先して適用される規定を用意している。これを「強行規定」という(例:賭博契約は公序良俗に反するとして無効(民法§90))。
当事者の意思が明確であれば、当事者間で紛争が生じても、裁判官は、基本的に契約の定めに従って判断すれば足りる。しかし、当事者が決めていない事項に関して紛争が生じた場合、契約の定めだけでは紛争を解決できない。そこでこのような場合に紛争解決の基準となる規定が必要である。このように、当事者の意思が不明の場合に適用される規定を「任意規定」といい、民法の多くの規定は、こ の「任意規定」である(任意規定と違う内容で合意した場合、合意内容の方が民法の任意規定より優先して適用される)。
契約内容をどう定めるかは、契約自由の原則から、当事者が対等の立場で、自由に協議して定めることができる。しかし、多くの取引が予想される場合、取引の都度、契約内容について当事者間で協議して定めるのは生産的とは言いがたい。そこで、取引の様態がある程度予想される場合に、その予想される取引形態に応じた条項をあらかじめ、画一的に用意しておくと大変便宜である。この、あらか じめ、画一的に定めておく条項の総体を「約款」という。
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3ー7.定型約款について
定型約款の定義(民法)
(参考)「民法(債権関係)の改正に関する説明資料
-主な改正事項-」法務省民事局
「約款」という用語は、現在も企業の契約実務やxxにおいて広く用いられているが、その意味につい ての理解は千差万別。約款に関する規定を新設するに当たり、改正の趣旨を踏まえた定義等が必要。
定型約款の定義 【民法§548-2】
① ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で、
② 内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なもの を 「定型取引」と定義した上、 この定型取引において、
③ 契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備された条項の総体
定型約款に該当するもの:鉄道・バスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約 等
定型約款に該当しないもの:一般的な事業者間取引で用いられる一方当事者の準備した契約書のひな型、労働契約のひな形 等
次の場合は、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容と なることを明確化
① 定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
② (取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合
建設工事の請負契約は、定型約款の定義である、①不特定多数要件と②合理的画一性要件のいずれにも該当しないことから、標準請負契約約款は、民法で規定する定型約款に当たらないものと考えられる。
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3ー8.標準請負契約約款の位置づけについて
建設業法上の標準請負契約約款の位置づけ
(参考)「建設業法解説 改訂13版」建設業法研究会 編著 より抜粋
本条(注:建設業法第19条)は、このように請負契約の内容となる重要な事項については、後日の紛争を防ぐとともに、xx平等な契約の締結に資するため、あらかじめ、両当事者の合意に基づき書面に明定しておくべきこととしているが、前条の指導理念にもかかわらず、実際には契約当事者の社会 的、経済的力関係により、当事者の合意は必ずしもxx平等な立場においてなされるとは限らない。そこで、具体的に契約の内容としてどのような定めをするのが妥当であるかということについて、標準的なよりどころとなるべきものを作成することが強く要請され、中央建設業審議会において建設工事の標準請負契約約款を作成し、その実施を勧告することができることとされている。…(中略)…このように標準請負契約約款は、xx平等な立場における契約の締結を制度的に担保しようとするものであるから、建設工事の請負契約の当事者は、この趣旨を踏まえて特別の理由のない限り、これによるのが妥当であると考えられる。
(中央建設業審議会が)標準請負契約約款を定めたり、…(中略)…することは、本来契約当事者、あるいは注文者が自由に判断し、決定すべきものであって、xxx機関がこれを一方的に作成して使用を勧告する性質のものではない。しかし、請負契約を締結する当事者間の力関係が一方的であるならば、たとえば大発注機関と受注者との契約であるならば発注者に有利に、また一般消費者と建設業者との請負契約であるならば受注者に有利に契約内容や請負代金が定められてしまうおそれが強い。実質的な当事者間の平等性を確保するために契約内容を適正なものとし、また契約の履行を確保する ために紛争処理機関を設置するというのが本法(注:建設業法)の基本的な態度であり、そのためには抽象的な規定を設けるより、当事者間の具体的な権利義務の内容を定めることが最も適当であるので、このような見地から標準請負契約約款等を作成することとしたものである。このような約款の作成は発注者、受注者及び学識経験者よりなる中央建設業審議会という一つの機関がその名において発注者であるすべての機関に対して標準請負契約約款の採用を勧告…(中略)…したものである。
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3-9.民間建設工事標準請負契約約款の実施について
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3ー10.建設業法に基づく法定契約記載事項について
価格等の変動等に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
(参考)「建設業法解説 改訂13版」建設業法研究会 編著 より抜粋
請負契約の締結後、その基礎となった価格等が変動し又は変更されたため、当初の契約内容で工事を続行することが妥当でないと認められるような場合に、請負代金の額又は工事内容をどのように変更する かということについての定めである
物価統制令第二条に規定する「価格等」とは、価格、運送費、保管料、保険料、賃貸料、加工賃、修繕料その他給付の対価たる財産的給付をいうが、このような経済事情の変動は一般に企業のリスクとして ある程度見込まれているのが請負契約の例である。しかし、この変動が、請負人の予見することのできない、あるいはその負担の限界を超えると考えられるようなものである場合には、それをすべて請負人の負担とすることは、xxxxの原則に反するばかりでなく、またこれらをすべて請負人のリスクとして請負代金に見込むことは徒に契約の投機性を惹起することとなり好ましいことではない。そこで、この価格等の変動等がある場合に、その負担をどのように扱うか、あるいは工事内容をどのように改めることとするかというようなことを、あらかじめ、定めておくべきこととしたものである。
<契約の締結に際して書面に記載しなければならない事項>
(1)工事内容 (2)請負代金の額 (3)工事着手の時期及び工事完成の時期
(4)工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
(5)請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
(6)当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
(7)天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
(8)価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
(9)工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
(10)注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
(11)注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
(12)工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
(13)工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
(14)各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
(15)契約に関する紛争の解決方法 (16)その他国土交通省令で定める事項 (⇒ 現時点では規定されていない) 26
3-11.発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドラインの概要
Ⅰ.背景・目的
(H23.8策定、最終改訂R4.8)
○建設業法においては、契約適正化のために契約当事者が遵守すべき最低限の義務等を定めているが、これらの規定の趣旨が十分に認識されていない場合等においては、法令遵守が徹底されず、建設業の健全な発展と建設工事の適正な施工を妨げるおそれ。
○これまでにも、「建設業法令遵守ガイドライン」の策定など元請下請間の契約適正化を推進してきたが、発注者と受注者間の契約においても、 不適正な取引実態が存在しており、元xxの不適正な取引を生む一因との指摘。
○発注者・受注者間における請負契約の適正化を図ることは、元請下請間の契約を含め建設業における契約全体の適正化を推進し、建設工 事の適正な施工の確保を通じて、発注者等の利益にもつながるもの。
○このため、公共工事、民間工事にかかわらず、発注者と受注者との間で行われる請負契約の締結やその履行に関し、法律の不知等による法令違反行為を防ぎ、発注者と受注者との対等な関係の構築及びxx・透明な取引の実現を図ることを目的として「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」を策定。
Ⅱ.ガイドラインの概要
発注者と受注者との請負契約について、法令遵守が必要な以下の項目ごとに、「建設業法上違反となる行為事例」、「建設業法上違反となるおそれのある行為事例」等を具体的に明示した。また、あわせて法令の規定の趣旨、留意すべき事項、とるべき望ましい行為などについての解説を加えたほか、関係法令についても解説。
1.見積条件の提示等(建設業法第20条第4項、第20条の2)
2.書面による契約締結
2-1.当初契約(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第1項)
2-2.追加工事等に伴う追加・変更契約
(建設業法第19条第2項、第19条の3)
2-3.工期変更に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
3.著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5)
4.不当に低い発注金額(建設業法第19条の3)
5.原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保
(建設業法第19条第2項、第19条の3、第19条の5)
Ⅲ.周知先
①公共発注者(各府省庁、独法等、地方公共団体、電力・ガス会社 等)
6.指値発注(建設業法第19条第1項、第19条の3、第20条第4項)
7.不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)
8.やり直し工事(建設業法第19条第2項、第19条の3)
9.支払(建設業法第24条の3第2項、第24条の6)
10-1.独占禁止法との関係
( 「優越的地位の濫用に関する独占禁止法の考え方」と建設業法との関係)
10-2.社会保険・労働保険(法定福利費)
(社会保険料等の法定福利費を適正に考慮した積算及び契約)
10-3.建設工事で発生する建設副産物について
②主要民間団体(経団連、商工会議所、小売業関係団体、不動産業関係団体 等)
③建設業者団体、④地方整備局、都道府県の建設業許可部局 27
3-12.建設業法令遵守ガイドラインの概要(H19.6策定、最終改訂R4.8)
1.策定の趣旨
本ガイドラインは、元請負人と下請負人との関係に関して、どのような行為が建設業法に違反するか具体的に示すことにより、法律の不知による法令違反行為を防ぎ、元請負人と下請負人との対等な関係の構築及びxxかつ透明な取引の実現を図ることを目的として策定
2.本ガイドラインの内容
(1)建設業の下請取引における取引の流れに沿った形で、見積条件の提示、契約締結といった以下の13項目について、留意すべき建設業法上の規定を解説するとともに、建設業法に抵触するおそれのある行為事例を提示
1.見積条件の提示等(建設業法第20条第4項、第20条の2)
2.書面による契約締結 (1)当初契約(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20条第1項)
(2)追加工事等に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
3.工期 (1)著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5)
(2)工期変更に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
(3)工期変更に伴う増加費用(建設業法第19条第2項、第19条の3)
4.不当に低い請負代金(建設業法第19条の3)
5.原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保
(建設業法第19条第2項、第19条の3、第19条の5)
6.指値発注(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20条第4項)
7.不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)
8.やり直し工事(建設業法第18条、第19条第2項、第19条の3)
9.赤伝処理(建設業法第18条、第19条、第19条の3、第20条第4項)
10.下請代金の支払 (1)支払保留・支払遅延(建設業法第24条の3、第24条の6)
(2)支払手段(建設業法第24条の3第2項) 11.長期手形(建設業法第24条の6第3項)
12.不利益取扱いの禁止(建設業法第24条の5)
13.帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存(建設業法第40条の3)
(2)関連法令の解説として以下の内容を掲載
14-1 独占禁止法との関係について(建設業の下請取引に関する建設業法との関係)
14-2 社会保険・労働保険等について(法定福利費の確保)
14-3 労働災害防止対策について(実施者と経費の負担の明確化)
14-4 建設工事で発生する建設副産物について
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◎発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第4版)
3ー13.建設業法令遵守ガイドラインにおける契約に関する記述
(6)受注者に過度な義務や負担を課す片務的な内容による契約を行わないことが必要
建設業法第18条においては、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結し、xxに従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定している。建設工事の請負契約の締結に当たっては、同条の趣旨を踏まえ、公共工事については、中央建設業審議会が作成する公共工事標準請負契約約款(以下「公共約款」という。)に沿った契約が締結されている。民間工事においても、同審議会が作成する民間工事標準請負契約約款又はこれに沿った内容の約款※(以下「民間約款等」という。)に沿った内容の契約書による契約を締結することが望ましい。
※ 民間約款に沿った内容の約款として、民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款がある。
民間工事の中には、民間約款等を大幅に修正した契約が締結されており、その修正内容が受注者に過大な義務を課す等、次のような片務的な内容となっている場合がある。
① 発注者の責めに帰すべき事由により生じた損害についても、受注者に負担させること
② 工事の施工に伴い通常避けることができない騒音等の第三者への損害についても、受注者に負担させること
③ 例えば、民法(明治29年法律第89号)や住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)に定める期間を大幅に超えて、長期間の瑕疵担保期間を設けること
➃ 過度なアフターサービス、例えば、経年劣化等に起因する不具合についてのアフターサービスなどを受注者に負担させることまた、契約外の事項である次のような業務を発注者が求めることも片務的な行為に該当すると考えられる。
⑤ 販売促進への協力など、工事請負契約の内容にない業務を受注者に無償で求めること
⑥ 設計図書と工事現場の状況が異なっていた場合に、設計変更の作業を受注者に無償で協力させること
このような、受注者に過度な義務や負担を課すなど、片務的な内容による契約や契約外の行為をさせることは、結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金(19ページ「4.不当に低い発注金額」参照)による契約となる可能性があり、厳に慎むべきである。
◎建設業法令遵守ガイドライン(第8版)- 元請負人と下請負人の関係に係る留意点 -
(5)建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠した内容を持つ契約書による契約が基本
建設業法第18条では、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結し、xxに従って誠実にこれを履行しなければならない」と規定している。建設工事の下請契約の締結に当たっては、同条の趣旨を踏まえ、建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠した内容を持つ契約書による契約を締結することが基本である。
(6)片務的な内容による契約は、建設業法上不適当
元請負人と下請負人の双方の義務であるべきところを下請負人に一方的に義務を課すものや、元請負人の裁量の範囲が大きく、下請負人に過大な負担を課す内容など、建設工事標準下請契約約款に比べて片務的な内容による契約については、結果として建設業法第19条の3により禁止される不当に低い請負代金(18ページ「4.不当に低い請負代金」参照)につながる可能性が高い契約となるので、適当ではない。
また、発注者と元請負人の関係において、例えば、発注者が契約変更に応じないことを理由として、下請負人の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請負人に追加工事等の費用を負担させることは、元請負人としての責任を果たしているとはいえず、元請負人は発注者に
対して発注者が契約変更等、適切な対応をとるよう働きかけを行うことが望ましい。 29
円滑な協議の枠組み
1 事前準備の必要性
<発注者その他>
・地中や地下水の調査
・近隣関係、既存物件の調査
2 専門的知見の活用
<発注者その他>
・地盤調査会社
・地歴情報、公的機関の情報
3 関係者間の協力体制
3-14.民間建設工事の適正な品質を確保するための指針
<発注者、設計者、工事監理者、施工者>
・請負契約までのプロセス
(見積、提案、入札、交渉等)
・情報共有の必要性
(特に、地盤関係、設計との調整)
4 適切な請負契約の履行
<発注者、施工者(受注者)>
・建設業法の趣旨
・請負代金の増額対応等
5 事前の協議項目(下図イメージ参照)
<発注者、設計者、工事監理者、施工者>
・施工上のリスクを種類ごとに分類
・分類ごとに、関係者の負担に関する基本的考え方を整理。
6 設計変更の事例
<発注者、設計者、工事監理者、施工者>
・設計変更が認められた場合や認められるべき具体的なケースについて分類整理
事前の協議項目例
項目 | 基本的な考え方 | 留意点等 |
支持地盤の深度 | 事前にボーリング等の必要な調査を実施し、それに基づいて適切な基礎の設計(くいxx) を実施。現場不一致等が発生した場合の負担の考えについて整理 | 地域の地盤の状況について、詳細に 状況を把握 |
地下水位 | 事前にボーリング調査の実施や地歴、季節変動等を考慮し、適切に地下水位を想定。構造 変更等が生じた場合の負担の考え方について整理 | 詳細な試掘調査等の必要性につい て検討 |
設計図書 | 設計関連図書(特記仕様書、付属書類等)の詳細な内容や不明確な点について、事前に 関係者間で認識を共有。不明確部分の対応方法について整理 | 当初設計の段階で不明確な点につ いて可能な限り明確化 |
資材納入 | 対象物の品質や工期等を勘案して、施工者が協力会社と連携を図り調達。当初想定できな いような急激な市況の変化について負担の考え方を整理 | 市況の変化や災害発生等の影響に ついて考慮 |
近隣対応 | 地域の要望や対応によって、工期の変更や稼働時間の調整が発生する可能性について情 報の共有。追加費用が発生した場合の負担の考え方を整理 | 周辺地域の状況や環境について予 め情報共有 |
騒音、振動 | 具体的な施工方法や工法の選択は、施工者が決定することが通例。周辺にどういう影響が 発生するかについて予め評価、追加費用の負担の考え方を整理 | 工事の施工がどの程度周辺地域に 影響を及ぼすかについて考慮 |
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3-15.民間工事指針の概要 1
1 はじめに
3 事前準備の重要性
• 建設工事は、地中の状況や近隣対応など、工事開始時点では想定されなかった施工上のリスクが常に存在する。
• 施工上のリスクについて事前協議等を行うことなく請負契約を締結して工事を開始し、実際にリスクが発現した場合、工期や金額変更について関係者間の調整が難航し、円滑な工事施工に支障を来す。
• リスクの発現を防ぎ、円滑な工事施工を図るためには、施工上のリスクを関係者が十分理解し、リスク負担の考え方について共通認識を持つことが重要である。
• 施工上のリスクに関する協議項目を整理し、民間工事指針として とりまとめることで、消費者や利用者の建築物等に対する不安が 解消され、安心して住宅購入や施設利用を行うことが期待される。
○事前調査の実施
地中部分の土工事等については、支持地盤の深度や地下水位等、予め予測することが困難な現場不一致が生じたことによる設計変更が必要となる場合があることから、リスクを防ぎ工事を円滑に進めるためには、地歴情報等を基に、必要な事前調査を行うことが求められる。
○専門的知見の活用
ボーリング等の地盤調査を行う調査会社は、これまでの調査実績を基にした情報を蓄積しているため、施工上のリスクを防ぐためには、こうした専門的知見の活用も必要となる。
2 建設工事に携わる関係者の基本的役割
4 関係者間の協力体制の構築
○事前協議の必要性
施工上のリスクの認識について関係者間で隔たりがある場合、建築物等の安全性の確保や事業の進捗に影響を及ぼすおそれがある。
請負契約に先立ち、関係者が情報を共有して施工上のリスクに関する協議を行い、リスク負担と請負代金等の関係について双方が共通認識を持った上で契約を締結することが必要である。
○必要な情報提供
リスクに関する協議を円滑に行うためには、見積等の早い段階から、工事の条件や見積要項等の必要な情報が提供されるなど、円滑な協議を図るための配慮が必要となる。
○施工者の役割
これまでの工事経験を基に、リスクに関する情報提供や適正工期の提示など、発注者との円滑な協議を実施することが求められる。
○設計・施工方式の違い
設計施工が一貫型と分離型で、施工者の決まるタイミングが異なる
ため、協議のタイミングについて配慮することが必要となる。
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○発注者
必要な調査を調査会社等に行わせ、受注者と工事請負契約を締結し、関係者間の調整、指示など事業全体の管理運営を行い、安全な建築物等を提供する。
○設計者、工事監理者
発注者との設計業務委託契約に基づき、目的の建築物等が法的基準に適合するよう設計図書の作成を行い、工事監理者は、設計図書に基づいて工事が実施されるよう必要な調整等を行う。
○受注者(施工者)
発注者との工事請負契約に基づき、設計図書等に基づいて建築物等を完成し、発注者に引き渡すほか、元請は下請と連携協力して工程管理や安全対策を実施し、工事を施工する。
6 適切な工事請負契約の締結、履行
3-16.民間工事指針の概要 2
○基本的考え方
施工上のリスクを防ぐため、具体的に想定されるリスクを種類別に分類し、リスクに関する基本的考え方と留意事項を別表としてとりまとめ。
あらゆるリスクを網羅的に把握することは困難であるが、少なくとも建設工事に共通する協議項目についてリスト化し、関係者が共通認識を持って事業を進め
ることが必要である。
○特に留意が必要な項目の例
<地中関連>
地盤調査のほか、公的機関の保有するデータベース等を活用して適切に調査を実施し、特に急傾斜の地層等については、専門的な知見も活用して適切に
判断する。
5 関係者間の協議項目
○建設業法の趣旨
建設工事は、発注者及び受注者が対等な立場における合意に基づいてxxな契約を締結して誠実に履行しなければならないため、契約締結に際して、工事内容や請負代金の金額、工期等について関係者間で協議する必要がある。
○契約実務における留意事項
◇協議項目リストの構成
・地中関連 (支持地盤の深度/地下水位/地下埋設物/土壌汚染)
・設計関連 (設計図書との調整/設計間の整合)
・資材関連 (資材納入)
・周辺環境 (近隣対応/騒音振動/日照阻害等)
・天災 (地震、台風等)
・経済 (物価変動)
・その他 (法定手続き)
民間工事の契約は、標準的な約款に加え、設計図書や仕様書、説明書等が付属し、これらが一体となって請負契約を構成するのが通例だが、標準的な約款とは異なる形の契約書等で締結する場合、リスクに対する双方の認識が異ならないように協議する必要がある。
○法令遵守の重要性
追加工事の費用等を受注者が一方的に負担させられる場合は、建設業法違反のおそれ(発注者・受注者間の法令遵守ガイドライン参照)。元下関係においても、法律の趣旨が徹底されることが必要であり、不当に低い請負代金や指値発注等、過度のリスク負担を強いることは厳に慎むこととする。
○建設工事に対する消費者、利用者の信頼の確保
本指針の策定により、関係業界において、信頼関係に基づく取り組みが進展し、適切に役割分担しながら工事を進めていることが外から分かる形となることで、住宅購入を行う消費者や施設利用者の建築物に対する不安が解消され、建設工事の品質と安全性に対する国民の信頼を得ることが期待される。
32
3ー17.政府における価格転嫁に向けた取組 1
開催概要
日 時:令和3年12月27日(月)14:00~14:32
出席者:(政府)xxxx、xxxx大臣、xx新しい資本主義担当大臣、経産大臣、厚労大臣、消費者担当大臣 等
(民間団体)xx経団連会長など経済団体5団体トップ、xx日建連会長など事業者団体22団体トップ
【xxxxx発言(抄)】
政府としても、成長と分配の好循環を実現するため、地域経済の雇用を支える中小企業が適切に価格転嫁を行い、適正な利益を得られるよう、環境整備を行ってまいります。
本日、パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージを決定いたします。1月から3月を転嫁対策に向 けた集中取組期間と定めるほか、xx取引委員会と中小企業庁が事業所管省庁と連携して、問題となる事例を幅広く把握し、対応する価格転嫁円滑化スキームを創設いたします。
加えて、下請代金法や独占禁止法の執行強化などにより、立入調査や要請を行い、価格転嫁を行いやすくいたします。
この後、閣議了解を行い、本日御出席の事業者団体を含めて、各事業所管大臣から各団体に対して、取引先とのパートナー シップ構築、取引慣行や商慣行の是正などについて、会員企業に周知されるよう、要請することとしております。
取引は民と民の関係であり、本日お集まりの産業界をリードしている皆様方に御協力いただきますよう、是非ともよろしくお願い申し上げます。
転嫁円滑化施策パッケージ(令和3年12月27日)(抜粋)
5 公共工事品質確保等に基づく対応の強化
(1) 公共工事品質確保法等の趣旨の徹底
・公共工事の発注者(地方整備局、都道府県、市町村、地方公社等)に対し、労務費、原材料費、エネルギーコ スト等の取引価格を反映した適正な請負代金の設定や適正な工期の確保について、契約後の状況に応じた必要な契約変更の実施も含め、公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成17年法律第18号)の趣旨を踏まえて対応を図るよう、周知する。
・公共工事のみでなく、民間発注者に対しても、同様の適正な請負単価の設定や適正な工期の確保を求めるとともに、毎年1月から3月までの「集中取組期間」において、国土交通省が請負代金や工期などの契約締結の状
況についてのモニタリング調査等を実施する。 33
3ー18.政府における価格転嫁に向けた取組 2
コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」 <抜粋>
(令和4年4月26日原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議決定)
Ⅲ.新たな価格体系への適応の円滑化に向けた中小企業対策等
● 賃上げ・価格転嫁対策(内閣官房、経済産業省、xx取引委員会、国土交通省、厚生労働省)
「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」に基づき、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できるようにし、賃金引上げの環境を整備するため、関係省庁や下請事業者から広範囲に情報提供を受け付け、独占禁止法上の「優越的 地位の濫用」や下請代金法上の「買いたたき」などに対する取締りを強化するなど、取引適正化の取組を進める。
建設業・造船業における原材料費等の取引価格を反映した適正な請負代金・船価の設定や 適切な工期の確保が図られるよう、公共・民間発注者等に対して周知徹底を図る。
アスファルト合材について、ストレートアスファルト等の原材料費の上昇分を適切に価格へ 転嫁できるよう、アスファルト合材の取引に関係する事業者等への働きかけを行うとともに、資材価格等の取引価格を反映した適正な請負代金の設定や適正な工期の確保が図られるよう、公共発注者等に対してxxxxを行う。
34
民間工事指針における資材に係るリスク分担の基本的考え方
資材については、対象物の規模や品質、工期等を勘案して、施工者が協力会社や代理店と連携し、調達能力を発揮して必要な購入や搬入を行うべきことから、資材納入に関する施工上のリスクについて は施工者(受注者)が負うことを基本とする。
ただし、工事請負契約時点で想定できないような急激な事態が発生した場合の対応については、予め 受発注者間で確認することとする。
民間建設工事標準請負契約約款における請負代金変更の考え方
長期にわたる契約で契約締結時から1年を経過した後に価格変動によって、又は、予期することので きない経済事情の激変によって、請負代金相当額が適当でないと認められるときには、受発注者双方により、請負代金額の変更を求めることができる。
請負代金を変更するときは、原則として、工事の減少部分については請負代金内訳書の単価により、
増加部分については時価による。
3ー19.民間工事における価格変動に係るリスク分担について
◎民間建設工事標準請負契約約款
(請負代金額の変更)
第31条 発注者又は受注者は、次の各号のいずれかに該当するときは、相手方に対して、その理由を明示して必要と認められる請負代金額 の変更を求めることができる。
一 ~ 四 (略)
五 契約期間内に予期することのできない法令の制定若しくは改廃又は経済事情の激変等によって、請負代金額が明らかに適当でないと 認められるとき。
六 長期にわたる契約で、法令の制定若しくは改廃又は物価、賃金等の変動によって、この契約を締結した時から一年を経過した後の工 事部分に対する請負代金相当額が適当でないと認められるとき。
七 中止した工事又は災害を受けた工事を続行する場合において、請負代金額が明らかに適当でないと認められるとき。
2 請負代金額を変更するときは、原則として、工事の減少部分については監理者の確認を受けた請負代金内訳書の単価により、増加部分に
ついては時価による。 35
3ー20.民間工事の請負契約における事例について
民間工事の請負契約における請負代金変更に係る条項の扱いに係る経緯
早いものでは、2000年代よりも以前から、標準約款で規定する価格変動に伴う請負代金額の変更を 求める条項が削除された契約事例がみられる。
2007年頃、リーマンショック前の時期に資材価格が高騰し、リーマンショックによりいったん落ち着くが、その後は震災復興やオリンピック需要などにより資材価格の高騰が継続する中、徐々に、当 該条項が削除され、あるいは物価高騰を理由とする請負代金の変更を認めない規定が盛り込まれる事例が増えていったとみられる。
民間工事の請負契約における請負代金変更に係る条項の事例
【請負代金額について】
物価高騰による/発注者指示によらない、請負代金の変更は認めない旨を明記。
不可抗力により特段の事情がある場合に、請負代金の変更を求めることができる(物価の明示なし)。
経済事情の激変により、請負代金が明らかに適当でないと認められる場合に、請負代金の変更を求めることができる。
請負代金の変更を求めることができる標準約款の条項から、「経済事情の激変」「物価・賃金」といった価格変動要素を削除。
【追加工事に係る単価について】
追加工事により請負代金を変更する際には、見積時の単価/請負代金内訳書の単価による旨を明記。物価上昇による単価の変更は認めない旨を明記。
(参考)大手建設企業に対する、国土交通省聞き取り調査による 36
3-21.コスト上昇と協議に関する優越的地位の濫用について
コスト上昇と協議に係る優越的地位の濫用について
xx取引委員会によれば、契約書に記載していたとしても独占禁止法における禁止規定に違反する ことは許容されない。契約書において価格変動時における代金変更や協議の実施を認めない旨を記載していたとしても、実際のコスト上昇の程度や契約時に想定していた振れ幅によっては、明示的に協議をしない場合、あるいは、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で回答しない場合には、優越的地位の濫用として問題となるおそれがある。
【参考】「よくある質問コーナー(独占禁止法)」xx取引委員会HPより抜粋
Q20 労務費,原材料費,エネルギーコストが上昇した場合において,その上昇分を取引価格に反映しないことは,独占禁止法上の優越的地位の濫用として問題となりますか。
A.独占禁止法上,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商習慣に照らして不当に,取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定すること(第2条第9項第5号ハ)は,優越的地位の濫用として禁止されています。
このため,取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,一方的に,著しく低い対価での取引を要請する場合に は,優越的地位の濫用として問題となるおそれがあり,具体的には,
1. 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的 に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと
2. 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,取引の相手方が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価 格転嫁をしない理由を書面,電子メール等で取引の相手方に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと
は,優越的地位の濫用として問題となるおそれがあります。
この判断に当たっては,対価の決定に当たり取引の相手方と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法のほか,他の取引の相手方の対価と比べて差別的であるかどうか,取引の相手方の仕入価格を下回るものであるかどうか,通常の購入価格又は販売価格との乖離
(かいり)の状況,取引の対象となる商品又は役務の需給関係等を勘案して総合的に判断することとなります。
優越的地位の濫用と企業規模について
(参考)「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方 」xx取引委員会 より抜粋
(注7)甲が乙に対し,取引上の地位が優越しているかどうかは,次の(1)から(4)までに記載された具体的事実を総合的に考慮して判断するので,大企業と中小企業との取引だけでなく,大企業同士,中小企業同士の取引においても,取引の一方当事者が他方の当事者に対し,
取引上の地位が優越していると認められる場合があることに留意する必要がある。 37
3-22.xx取引委員会における審査事件処理について
xx取引委員会においては、独占禁止法における禁止規定に違反する事実があると認められる場合に 排除措置命令等を行うこととなるが、排除措置命令等を行うに足る証拠が得られない場合であっても、違反の疑いがあるときは、関係事業者等に警告を行い、是正措置をとるよう指導している。さらに、違反行為の存在を疑うに足る証拠は得られなかったが、違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、未然防止を図る観点から注意を行っている。
なお、法的措置及び警告は公表されるが、注意については、競争政策上公表することが望ましいと考 えられる事案であり、かつ、関係事業者から公表する旨の了解を得た場合等に公表される。
第1-1表 審査事件処理状況の推移(不当廉売事案で迅速処理(注)を行ったものを除く。)
第1-2表 不当廉売事案における注意件数
(迅速処理によるもの)の推移
年 度 | 29 | 30 | 元 | 2 | 3 |
不当廉売事案における注意件数 (迅速処理によるもの) | 457 | 227 | 235 | 136 | 244 |
年 | 度 | 29 | 30 | 元 | 2 | 3 | ||
審査件 数 | 前年度からの繰越し | 21 | 25 | 23 | 18 | 10 | ||
年度内新規着手 | 122 | 118 | 76 | 83 | 103 | |||
合 | 計 | 143 | 143 | 99 | 101 | 113 | ||
処理件数 | 法的措置 | 排除措置命令 | 13 | 8 | 11 | 9 | 3 | |
対象事業者等の数 | 41 | 46 | 40 | 20 | 34 | |||
確約計画の認定 | - | 0 | 2 | 6 | 2 | |||
対象事業者の数 | - | 0 | 2 | 6 | 3 | |||
その他 | 終 | 了(違反認定) | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
警 告 | 3 | 3 | 2 | 0 | 0 | |||
注 意 | 88 | 95 | 57 | 73 | 92 | |||
打 切 り | 13 | 14 | 9 | 3 | 3 | |||
小 計 | 105 | 112 | 68 | 76 | 95 | |||
合 | 計 | 118 | 120 | 81 | 91 | 100 | ||
次年度への繰越し | 25 | 23 | 18 | 10 | 13 | |||
課徴xx 付命令 | 対象事業者数 | 32 | 18 | 37 | 4 | 31 | ||
課徴金額(円) | 18億9210万 | 2億6111万 | 692億7560万 | 43億2923万 | 21億8026万 | |||
告 | 発 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 |
(注)申告のあった不当廉売事案に対し可能な限り迅速に処理する(原則2か月以内)という方針に基 38
づいて行う処理をいう。
(参考)「令和3年度xx取引委員会年次報告」より
建設業法において、第19条の3により不当に低い請負代金は禁止されているが、この規定に違反する事実があり、独占禁止法に違反していると認められる場合には、xx取引委員会に対する措置請求が可能
(第42条)。他方で、第19条の3に違反した発注者に対する勧告の対象から、民間事業者は除外されていることから、建設業法に基づく民間事業者に対する勧告権、勧告を行うための報告又は資料の提出請 求権はない(第19条の6)。
3-23.建設業法における優越的地位の濫用について
建設業法(昭和二十四年法律第百号)(抄)
(不当に低い請負代金の禁止)
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満た ない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
(不当な使用資材等の購入強制の禁止)
第十九条の四 注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。
(著しく短い工期の禁止)
第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
(発注者に対する勧告等)
第十九条の六 建設業者と請負契約を締結した発注者(私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第 二条第一項に規定する事業者に該当するものを除く。)が第十九条の三又は第十九条の四の規定に違反した場合において、特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができる。
2 建設業者と請負契約(請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに限る。)を締結した発注者が前条の規定に違反した場合において、特に必要があると認めるときは、当該建設業者の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事は、当該発注者に対して必要な勧告をすることができる。
3 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の勧告を受けた発注者がその勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
4 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項又は第二項の勧告を行うため必要があると認めるときは、当該発注者に対して、報告又は資料 の提出を求めることができる。
(xx取引委員会への措置請求等)
第四十二条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四、第二十四条の五又は第二十四条の六第三項若しくは第四項の規定に違反している事実があり、その事実が私的独占の禁止及びx x取引の確保に関する法律第十九条の規定に違反していると認めるときは、xx取引委員会に対し、同法の規定に従い適当な措置をとるべ
39
きことを求めることができる。
2 略
3-24.オープンブック•コストプラスフィー契約について
工事の実費(コスト)の支出を証明する書類を受注者が開示すること(オープンブック方式)で実費精算
とし、これにあらかじめ合意された報酬(フィー)を加算して支払う方式(コストプラスフィー方式)
ターゲットプライス
受発注者間の協議で決定した工事原価(ターゲットコスト)にフィーを加算した額で、受発注者はこの金額に収まるように協力しながらプロジェクトを管理する
土工事
最大保証価格(GMP)Guaranteed Maximum Price
ターゲットプライスを最終コストの上限金額に設定する場合は最大保証価格(GMP)と呼ぶ
リスク管理費(予備費)
発注者が受け持つリスクについて事業予算の範囲内で設定され、発注者はコスト管理の充実及び不要な増額の回避、受注者は不測の事象等の発現による発注者リスクの受注者への転嫁防止及び発生した場合の円滑な契約変更を目論んだもの
現場管理費
共通仮設費
重力式擁壁 ○○㎥
etc.
擁壁工
作業土工
床掘り ○○㎥
埋戻し ○○㎥場所打擁壁工
…
利益
一般管理費など
間接工事費
直接工事費
フィー
コスト
総 工 事 費
給排水衛生設備工事
電気設備工事
内外装工事
型枠工事
…
イメージ
ターゲットプライス
(又は最大保証価格)
リスク管理費
工事 (予備費)
請負 フィー
リスク管理費
(予備費)
変更増にリスク管理費を充当
リスク
管理費
フィー
工事原価
(変更増)
フィー
工事原価
(変更増)
インセンティブフィー
最終的な工事原価がターゲットコストより下がった場合の差額を受発注者で按分した互いの利益
代金
工事原価
(契約時)
コスト
縮減
フィー
インセンティブフィー
工事原価
(契約時)
工事原価
(契約時)
工事原価
(契約時)
ペナルティ
最終的な工事原価がターゲットコストより上がった
当初契約
コスト減額時
(減額分をインセンティブとして受発注者で分配)
コスト増加時①
(リスク管理費を充当し発注者が負担)
コスト増加時②
(最大保証価格を超過した部分は受注者負担)
場合の差額の受発注者の負担割合
(出典)「CM方式活用ガイドライン」 平成14年2月 国土交通省
40
「コストプラスフィー契約に関する検討報告書」 平成29年12月 土木学会
「現代の建築プロジェクト・マネジメント」 令和4年7月 建設プロジェクト運営方式協議会
3-25.オープンブック•コストプラスフィー契約の事例 1
(参考)「コストプラスフィー契約に関する検討報告書」公益社団法人 土木学会より抜粋
原価開示方式(xx建設工業株式会社)
トータルコストを下げながら安全・品質・建設会社の利益を確保するため導入。大学キャンパス新棟新築工事、愛知県有料道路コンセッション事業、xx県風力発電事業等、10 件程度の実績。
数量、仕様、単価、工期、役務分担等について、発注者と受注者で協議を行い工事原価を決定。これ にマネジメントフィーを加算した額をターゲットプライスとし、当初の契約額とする。コスト(原価)の内訳を開示することで透明性を確保(オープンブック方式)。
ターゲットプライスより減額となった場合は、縮減額を発注者と建設会社で分配。ターゲットプライ スより増額となった場合は、契約時に決定したリスク分担により増額を発注者と建設会社で分配。
受注者は事業リスクに係る予備的予算をゼロとし、発生原価に関する情報を発注者にすべて開示することで、明らかに受注者が負うべきペナルティー以外のリスクを限定。発注者は事業者としてのリス クを負うことでターゲットプライスに関する上限価格を低く設定し、計画時の事業性を向上。
価格開示方式(RM 方式)(一般社団法人日本リノベーション・マネジメント協会)
オープンブック方式により、協会が第三者として監査を行い、工事費用の内訳、施工会社から各工事 専門業者への支払金額と内容を、発注者であるマンション管理組合に開示。コストプラスフィー契約により、発注者支援としてのリノベーション・マネジャーが総金額を実費(工事費)と報酬(利益)に分解する支援を行い、管理組合と施工会社が、精度の高い実費精算契約を締結。
契約時に最高限度額を保証する条項を入れ、工事費がこれを超過した場合は施工会社などが工事費超 過分を負担。工事費縮減が図られた場合は、管理組合に50%還元、施工会社に50%ボーナスが支払われるインセンティブを導入。
施工会社選定過程での不xxxx工事進行過程での不透明さの解消と合わせて、工事費用の最適化と 高い品質の確保が期待され、マンション管理組合や区分所有者等の合意形成に寄与。小規模建築物の新築工事において、価格開示方式を採用している事例がみられる。特に寺社建築など関係者に説明責
任が求められる工事において評価を得ている。 41
3-26.オープンブック•コストプラスフィー契約の事例 2
愛知県国際展示場の事例(愛知県、株式会社日本設計、株式会社xx工務店)
【発注者の狙い】
発注者 DBアドバイザー CMR
2019年秋の開業を目指して短期間での整備が必要となる中、当時、2020年の東京オリンピックに向けた建設発注量増大により施工者主導の選別受注の様相
→ 優良な施工者を確保する方法として「コストプラスフィー契約方式」を検討
公共工事のため透明性・xx性の確保が必要、また適正な価格によるxxな下請契約についても検討
→ 工事費の内容を透明化する支払い方式として「オープンブック方式」を検討
【受注者の取組】
【DB
アドバイザー】日本設計
・発注支援
・設計施工アドバイス
【発注者】 愛知県
過去のオープンブック実績で蓄積したノウハウ等を活用し、透明性と運用のバランスを取ったコストプラスフィー+オープンブックの実施手法を構築することで、同方式で懸念された事務作業増大による生産性低下を抑止
自社内専門部署、及び、社外会計事務所による検査を取り入れてxx性・ 透明性を確保
①専門業者支払の開示についてはゼネコンの経理システムをそのまま開 示(閲覧)する方法で合理化
②原価開示は金額の多寡に関係なく経費も含めてすべてについて実施
③品質確保のため、発注者の事前了解の上、指名競争や総合評価方式等の複数の選定方式を選択可。事務手間の合理化のため、コスト抑制効果の高い1,000万円以上の工種・項目で選定を実施
④生産性を阻害しないために、一定の条件を満たす軽微な変更契約は専門工事業者との変更契約後に発注者への事後報告も可
【CMR】
xx工務店
設計業務
(直接施工)
施工業務
専門工事業者
専門工事業者
専門工事業者
専門工事業者
42
(参考)「愛知xx規模展示場基本構想」 平成28年3月 愛知県
「日本CM協会 2020CM選奨 受賞プロジェクト紹介」(xxxxx://xxx.xxxx.xxx/xxxxxxxxx/xxxx_xxx/xxxxxx/xxx/0000/xxxxxx/0_xxxxxx.xxx)
総価契約方式 | 総価契約単価合意方式 | コストプラスフィー契約・オープンブック方式 | |
概要 | ・工種別の内訳単価を定めず、総額をもって請負金額とする方式 ・各工種の工事費の単価は問わず、明示した各数量と総価が契約事 項となる | ・総価契約方式において、単価等 を前もって協議し合意しておくことにより、設計変更や部分払いに伴う協議の円滑化を図ることを目的として実施する方式 | ・工事の実費(コスト)の支出を証明する書類とともに請求を受けて実費精算とし、これにあらかじめ合意された報酬(フィー)を加算して支払う方式 |
効果等 | ・発注者がコスト管理し易い | ・工事請負契約における受発注者間の双務性の向上や契約変更協 議の円滑化が期待できる | ・契約後の実態に即した支払いに対応 ・支出した費用(コスト)の内訳が明らかとなるため、費用の透明 性の向上が期待できる |
留意点 | ・請負代金額を変更できる事由が 無い限り、実際にかかった費用が請負代金額を超えても増加費用は受注者負担となる | ・工事材料等の購入量が大幅に 増え材料単価が安くなる場合等、合意された単価等を用いること が不適当となる場合は、受発注者間で協議することもある | ・支出した費用の内容を明らかにするため、受注者の提出書類が増 加する ・報酬(フィー)を支出費用に応じた支払いとした場合、支出費用の増加に伴って報酬も増加することから、適正な支出かどうか正し く判断する必要がある ・支出した費用の内容の妥当性が認められない場合の契約上の措置を講じる必要がある |
3-27.契約方式の比較
(出典)「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」 令和4年3月改正 国土交通省 43
3ー28.オープンブック•コストプラスフィー契約に関する課題
現在の到達点
工事価格の透明性の向上を期待する場合等でニーズがあると評価コストプラスフィー契約の構成案(盛り込むべき内容)
【基本ツール】コスト、フィー
【オプションツール】オープンブック方式、最大保証価格(GMP)、インセンティブフィー、リスク管理費
直接工事費
コストとフィーの境界設定の考え方案
コスト(原価)フィー(率)
一般管理費
現場管理費
直接工事費
共通仮設費
一般管理費
現場管理費
直接工事費
共通仮設費
共通仮設費
一般管理費
現場管理費
タイプ1 | タイプ2 | タイプ3 | |
コストの範囲 | 積算基準の積上げ範囲 (直接工事費+共通仮設費(積上)) | 現場管理費の領収書等で原価確認できる主要なものをコストに追加 | 一般管理費以外すべて |
コスト確認方法 | 契約前に単価を設定し、 実施段階でその妥当性を確認 | 賃金台帳及び領収書等で支払い実態を確認 | 全ての項目について領収書等で支払い実態確認 |
建設工事標準請負契約約款をカスタマイズしたものがコストプラスフィー契約書そのものになると考えられた(オープンブック方式の導入により発注者による受注者の支払い確認を追加、等)
今後の検討事項
コストが支払い可能のものかどうかを確認し、出来形に対して妥当であることを検査するための手続きが煩雑になる
原価確認を行うコストの範囲について、工事の特性(求められる透明性の程度、特殊性の度合い等)に応じて、設定方法の考え方を適切に整理する必要がある
(出典)「コストプラスフィー契約に関する検討報告書」 平成29年12月 土木学会 44
3-29.(参考)FIDIC約款における価格調整条項について
FIDICレッドブック1999年版における価格調整条項について
FIDICレッドブック1999年版においては、一般条件に価格調整条項が設けられており、人件費や材料費等の価格指数等が記載された調整データ表が入札付属書類に添付されている場合に適用される。
本条項が適用される場合、受注者に対する支払金額は、本条項に定める公式に基づき決定される金額の追加又は減額によって、労務費、物資費用及びその他の工事に対する投入費用の増減 に対して調整される。
調整額は、基準時価格指数又は基準時参照価格に対する現在価格指数又は現在参照価格の比率等から構成される以下の公式により算出される。
Pn:期間“n”に行われる工事の関連する通貨の見積契約額に適用される調整係数であり、この期間は、入札付属書類に別段の定めが無い限り1ヵ月とする。 a:関連する調整データ表に示された固定係数であり、契約支払い額の非調整部分を表す。
b, c, d:関連する調整データ表に示された工事の実施に関連する各費用要素の推定比率を表す係数。これらxxの費用要素は、労働力、設備及び材料などの資源を示す。
Ln, En, Mn:当該支払い通貨で表された期間“n”の現行の価格指数又は基準価格であり、(該当支払い証明書が関連するところの)期間の最後の日より49日前の当該費用要素にそれぞれ適用できる。 Lo, Eo, Mo :当該支払い通貨で表示された基準価格指数又は基準価格であり、それぞれが基準日における当該費用要素に適用できる。
なお、FIDICレッドブック2017年版においては、当該公式は契約条件書の特記条件作成の指針に含まれている。
FIDICレッドブックにおける価格調整条項の適用イメージ
※基準時から現在までの間に価格が高騰した場合
価格
契約 調整額
価格指数等により調整額を算出
基準時 現在
支払価格
45
建設工事の請負契約をめぐる紛争
(例)・自宅の新築工事に欠陥があり、雨漏りがする(個人施主→請負業者)
3-30.建設工事紛争審査会の概要(1)
○建設工事の請負契約に関する紛争を簡易・迅速に解決するためのADR機関(裁判外紛争処理機関)
○建設業法に基づき、国土交通省(中央審査会)及び各都道府県に設置
○昭和31年設立
○令和3年度の新規申請件数は中央で35件、都道府県で87件
・元請業者が下請業者に工事代金を支払ってくれない(下請→元請)
申請
中央建設工事紛争審査会
委員(15名)及び特別委員(159名)から事件毎に担当委員を指名
(大臣許可業者の場合等)
各都道府県建設工事紛争審査会
(知事許可業者の場合等)
審査会会議
(委員15名)
会長
xxxx
元札幌高等裁判所長官
互選 指名
あっせん委員(1名/事件)調停委員 (3名/事件)仲裁委員 (3名/事件)
法律、建築、土木、設備、電気、行政の専門家
あっせん
・当事者の歩み寄りによる解決を目指す
・技術的・法律的争点が少ない場合
調 停
・当事者の歩み寄りによる解決を目指す
・技術的・法律的争点が多い場合
仲 裁
・裁判に代わる手続で一審制
・当事者間の仲裁合意が必要
・仲裁判断は裁判所の判決と同様の効力
和解成立、仲裁判断、打切り、取下げ
46
3-31.建設工事紛争審査会の概要(2)
出所:国土交通省「建設工事紛争取扱状況について(令和3年度)
※対象は公共工事及び民間工事。
件数
90
80
70
60
50
40
30
20
10
工事種類別の申請件数の推移
年度 0
建築工事土木工事設備工事電気工事
その他
1
40
2
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
38 51 30 35 40 46 46 30 39 35 31 30 36 33 25 21 32 29
0 2 0 2 3 6 4 4 2 6 4 12 5 16 7 15 11 18
6
1
1
1
3
1
4
6
4
14
4
4
15
28
30
18
19
18
13
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 1 2 3
26 35 23 26 30 31 33 26 29 25 22 20 13 24
13 25 12 10 11 7 2 9 1 6 6 10 8 6
5 3 4 2 5 6 4 3 2 2 3 6 5 2
2 5 1 2 2 9 1 1 1 1 8 4 6 3
0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0
90
件数 80
70
60
50
40
30
20
10
年度 0
工事瑕疵工事遅延
紛争類型別の申請件数の推移
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 1 2 3
14 11 16 10 13 26 21 16 10 9 15 14 10 22 23 10 13 5 9 9 18 8 9 12 14 11 11 13 6 6 6 7 9
0 2 8 0 2 0 3 2 2 1 2 0 0 0 0 0 0 2 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0
工事代金の争い 14 14 20 5
契約解除 11 5 6 8
下請代金の争い 5 5 4 6
その他 4 2 0 2
7 9
10 5
7 4
1 0
11 15 10
10 10 4
11 13 12
0 0 0
13 11
9 2
22 15
1 0
9 12 7
6 8 6
10 27 32
0 0 2
2 7 8
5 8 4
47 25 29
2 0 1
9 6 9
13 6 6
29 34 18
3 5 4
8 5
10 4
30 20
1 2
10 8 11
2 5 7
15 20 18
5 5 3
15 11 6
2 0 4
11 15 8
1 2 2
9 8 7
4 4 1
8 13 20
6 8 6
8 8
3 0
10 11
4 47 7