静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱アーバン(社長 織戸卓祥)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2021.9.30
㈱アーバンと「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱アーバン(社長 xxx祥)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 9 月 30 日(木)
2.融資金額 3 億円
3.資金使途 設備資金
4.㈱アーバンの取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、解体工事業および産業廃棄物収集運搬・処分事業者として、一般住宅から特殊建築物まで幅広く手がけるとともに、解体工事から最終処分まで一貫した廃棄物処理を行うことで、建設廃棄物のリサイクルに積極的に取り組んでいます。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
社会面 | ・廃棄物処理サービスの安定した提供(中間処理施設や最終処分場の安定的な運営、アーバングループ間で連携した一貫処理体制の提供) ・地域に根差した活動(地域住民との定期的な意見交換会、工場見学の受入れ、 静岡県との災害発生時の協定締結 など) |
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経済面 | ・立地を生かした安定型最終処分場の運営 ・最新鋭の処理施設(天候に左右されない完全屋内型の中間処理施設による高精度で高効率な処理作業) |
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環境面 | ・リサイクル事業(産業廃棄物 7 品目<廃プラスチック類、金属くず、ガラ陶、がれき類、紙くず、木くず、繊維くず>のリサイクルによる廃棄物の削減および資源の有効活用) ・環境保全対策(環境活動レポートで定めた振動・騒音、臭気、粉塵、排水対策 など) |
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】㈱アーバンの概要
所 在 地 | xxxxxxxxx 0000-0 | 設 立 | 1992 年(平成 4 年)10 月 |
資 本 金 | 20 百万円 | 売 上 高 | 691 百万円(2020 年 9 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2021 年9月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 株式会社アーバン(以下、アーバン) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、アーバンの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
(企業概要、経営方針と事業活動)
アーバンは、解体工事業および産業廃棄物収集運搬・処分業を営む事業者である。一般住宅から特殊建築物まで解体が可能であり、リサイクルセンターにおいて産業廃棄物の中間処理も行われている。2021年9月には新中間処理施設が稼働し始めており、更なる高精度な処理を行うことで、最終処分場への埋立量の低減が見込まれている。
(インパクトの特定)
ポジティブなインパクトが期待できる活動としては、建築物の解体や産業廃棄物処理施設の安定した運営、地域住民との定期的な意見交換会などが、社会面の「解体事業」や「廃棄物処理サービスの安定した提供」、「地域に根差した活動」に、首都圏近郊かつ交通の便も良い最終処分場や新規稼働した中間処理施設が、経済面の「最終処分場の運営」や「最新鋭の処理施 設」に想定される。そのほか、産業廃棄物7品目の中間処理やxxx発電設備の設置が、環境面の「リサイクル事業」や「再生可能エネルギー」として、ポジティブなインパクトに挙げられる。
一方で、ネガティブなインパクトを低減する活動としては、完全屋内型処理施設での作業などといった「労働環境の改善」や振動・騒音、臭気、粉塵、排水対策といった「環境保全対策」、照明設備の LED 化や営業車両のハイブリッドカー化などの「CO2 排出量の削減」が想定される。
(インパクトレーダーとの関連性)
特定されたインパクトを UNEP FI が掲げるインパクトレーダーに当てはめると、ポジティブ・インパクトについては、一般住宅から特殊建築物にまで及ぶ解体事業は「住宅」に、一貫した廃棄物処理サービスの安定した提供や地域住民との定期的な意見交換会などの地域に根差した活動 は、「健康と衛生」や「包摂的で健全な経済」に該当する。また、首都圏近郊で交通の便が良い最終処分場の運営や全天候対応で高精度化・高効率化された最新鋭の処理施設は同社の収益性向上に貢献するため「経済の収れん」への該当が想定される。さらに、産業廃棄物7品 目のリサイクル事業は「資源効率・資源安全確保」や「廃棄物」に、xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出は「気候変動」に資するポジティブなインパクトである。
一方で、完全屋内型処理施設などによる労働環境の改善や環境保全対策は「雇用」や「健康と衛生」、「大気」、「水」、「土壌」のネガティブなインパクトを低減させており、照明設備の LED化や営業用車両や重機のハイブリッド化、運搬車両の低排出ガス・低燃費化などといった事業活動に伴う CO2 排出量の削減は「気候変動」に対するネガティブ・インパクトの抑制となっている。
(SDGs との関連性)
都市の再開発に必要な老朽化した建築物の解体事業やアーバングループ間で連携した産業廃棄物処理サービスの安定した提供、地域に根差した活動が「ターゲット 9.1」や「ターゲット 11.1」、「ターゲット 9.2」に、首都圏近郊で交通の便が良い最終処分場の運営や全天候型で高精度化・高効率化された最新鋭の完全屋内型処理施設が「ターゲット 8.2」にとってプラスの影響を与える。また、産業廃棄物7品目のリサイクル事業は「ターゲット 12.2」や「ターゲット 12.5」、「ターゲット 14.1」に、xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出は「ターゲット
7.2」に資する。
一方、完全屋内型処理施設などによる労働環境の改善や環境保全対策は「ターゲット 8.8」や「ターゲット 6.3」、「ターゲット 11.6」、「ターゲット 12.4」に関するネガティブなインパクトを抑制するものである。また、営業車両のハイブリッドカー化などといった CO2 排出量の削減は「ターゲット 11.6」のネガティブなインパクトを低減させている
(地域課題との関連性)
アーバンでは、10 年後に売上高や雇用の増加が見込まれ、これにより静岡県経済全体に年間 25 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
また、新規稼働した中間処理施設による高精度な中間処理やリサイクル事業を通じた SDGsへの積極的な取組みなど、地域課題の解決に向けた活躍が期待される。
アーバンは、自社の産業廃棄物の削減や適切な処理などといった環境保全に資する活動を公表することで、環境の保全を意識し、環境に配慮した行動に努めるという基本理念を達成する体制をより強固にすることを目指している。本ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、代表取締役社長のxxxxx(以下、xx社長)のこうした強い思いを具現化するものである。
(KPI の設定とマネジメント体制)
アーバンは、特定したインパクト(社会面、経済面、環境面)ごとに、KPI(指標と目標)を設定する。推進体制としては、xx社長を最高責任者とした、総務部内のプロジェクトチームが中心となる。また、行政や公的機関、支援機関、あるいは同じ思いを持つ全国の廃棄物処理業者との連携、協力を模索する。
(モニタリング)
KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とxxxxの担当者が、少なくとも年に1回の会合の場を設け、共有する。静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2021 年9月 30 日~2026 年9月 30 日 |
金額 | 300,000,000 円 |
資金使途 | 設備資金 |
モニタリング期間 | 11 年0ヵ月 |
企業概要
企業名 | 株式会社アーバン |
所在地 | xxxxxx 0000-0 |
事業所 | 御殿場リサイクルセンター三島リサイクルセンター 三島支店 相模原営業所 |
従業員数 | 42 名 |
資本金 | 2,000 万円 |
業種 | 産業廃棄物収集運搬・処分業、解体工事業 |
取得許可 | 産業廃棄物処分業許可(静岡県) 産業廃棄物収集運搬業許可(静岡県、xxx、神奈川県、山梨県、愛知県、兵庫県、埼玉県、xx県、広島県、岡山県) 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(静岡県、神奈川県)建設業許可(とび・土工、土木、石、鋼構造物、舗装、しゅんせつ、塗装、水道施設、解体) |
主要取引先 | <解体工事発注業者> ㈱アーネストワン、㈱一条工務店、xxx託㈱、個人顧客 など <リサイクル処理委託先> ㈱リサイクルクリーン、伊東商店㈱、㈱あおぞら、㈱xxチップ など <リサイクル製品販売先> 臼幸産業㈱、㈱和太組、㈱寿組、㈲棗組、xx道路㈱ など |
沿革 | 1992 年 アーバンの前身企業である㈱ビューコン設立 2006 年 特別管理産業廃棄物(アスベスト)収集運搬業許可 (静岡県・神奈川県)を御殿場・裾野エリアで初めて取得 2012 年 エコアクション 21 認証取得 2013 年 xxx発電事業開始 2017 年 ㈱アーバン環境の 100%子会社となり現在の社名に変更 2021 年 新中間処理プラント完成 |
(2021 年9月 30 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および強み
アーバンは解体工事業および産業廃棄物収集運搬・処分業を営む事業者である。解体する建築物は一般住宅から事業所、学校や病院などといった特殊建築物にまで及び、焼却炉やガソリンスタンドのタンクも手掛ける。解体に伴い排出された建設廃棄物は同社のリサイクルセンターへ持ち込まれ、他社から持ち込まれた産業廃棄物と共に中間処理される。アーバンで中間処理される廃棄物の品目は、木くず、がれき類、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず(以下、ガラ陶)、廃プラスチック類、金属くず、紙くず、繊維くずの7品目となっている。
解体工事は 60%が静岡県東部地域からの受注であり、35%は神奈川県から、5%が県内の東部地域以外からの受注となっている。
他社で解体された産業廃棄物の回収は、40%がアーバンによる運搬であり、その多くが県内東部地域からである。60%を占める直接搬入(他社による持ち込み)も 90%が県内東部地域からとなっており、同社の事業は、県内東部地域における割合が多く、地域に根差した企業と言える。
また、アーバンは 2018 年に産業廃棄物の最終処分場を所有する株式会社アーバン環境
(以下、アーバン環境)の 100%子会社となっており、アーバンが解体工事、収集運搬、中間処理を行い、アーバン環境が最終処分を行うことで解体から最終処分まで一貫して行える体制を整えている。
<解体から最終処分までの流れ>
アーバン、他社 | アーバン | アーバン環境、 外部リサイクル業者 |
解体工事 建築工事 工場産廃 その他 | 中 間 処 理 施 設 重機・人手 コンクリートがら による 破砕 機械選別 以外 簡易選別 収集運搬 ・ 直接搬入 製品検査 出荷 コンクリートがら 破砕 ・ ・品質試験 運搬 コンクリートリサイクル施設 | リサイクル 最終処分 |
アーバンの解体工事は、建設副産物のリサイクルを前提とした分別解体が基本となっている。内装材、屋根材、外装材などをそれぞれ撤去し、建物本体を解体後、基礎・土間コンクリートを撤去する流れとなっている。ショベルカーなどの重機を使用したミンチ解体を行わず、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)に則り、コンクリートやアスファル ト、鉄、木材などの種類ごとに分別しながら解体することでリサイクル率を高めている。
<解体工事の流れ>
アーバンが取り扱う産業廃棄物の約 80%(重量ベース)がコンクリートがらであり、それらはコンクリートリサイクル施設にて破砕され、再生砕石として地元土木建設業者などに販売され る。コンクリートがら以外の産業廃棄物は中間処理施設に持ち込まれ、重機や人の手による簡易選別を行った後に破砕、機械選別工程を経て完全に選別される。廃プラスチック類や金属くずなどの再生資源になるものは外部のリサイクル業者に委託されリサイクルされる。再生資源としての規格を満たさないものはアーバン環境にて最終処分(埋立処理)される。
<2019 年度の処理品目内訳>
品目 | 処理量(t) | 割合(%) |
コンクリートがら | 49,463 | 82.2 |
木くず | 2,753 | 4.6 |
がれき類(コンクリート除き) | 2,572 | 4.3 |
ガラ陶 | 2,159 | 3.6 |
廃プラスチック類 | 1,780 | 3.0 |
金属くず | 1,285 | 2.1 |
紙くず | 148 | 0.2 |
繊維くず | 32 | 0.1 |
資料:アーバン「エコアクション21環境活動レポート(2019年度)」
全国的に最終処分場の残余年数が短くなり、新規処分場の大幅な増加も見込めない中、アーバングループの運営する最終処分場は貴重な存在となっている。特に、広大な土地の取得が困難で周辺へ多くの配慮が必要な首都圏からのニーズは大きく、排出事業者からの受け入れ先となる中間処理施設は東名高速道路の足柄スマートインターチェンジから近いなどの立地の良さも同社の大きな強みとなっている。
2. 業界・取引先からの要望・ニーズ
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)により、産業廃棄物を排出した 事業者の責任が強く問われるようになってから、廃棄物処理業者に確実で安定した処理が求められるようになった。しかし、最終処分場の受け入れ可能な容量が減少していく中、廃棄物の行き場を失い、処理業者が不法投棄などの不適切処理をしてしまう例もある。アーバンでは、自社での解体工事に伴う建設廃棄物はもちろん、他社から持ち込まれた産業廃棄物の適切な処 理を行っている。御殿場市における約 30 年の実績に加え、グループとして最終処分場を所有 しており、最後まで確実に処理できることが排出事業者の安心につながっている。
<全国の不法投棄の件数推移>
(単位:件)
投棄規模 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
50t未満 | 129 | 106 | 103 | 88 | 98 | 83 | 77 | 88 | 97 | 86 |
50t以上100t未満 | 25 | 26 | 28 | 22 | 24 | 22 | 22 | 23 | 13 | 23 |
100t以上200t未満 | 21 | 17 | 15 | 18 | 17 | 16 | 11 | 21 | 17 | 11 |
200t以上600t未満 | 29 | 25 | 24 | 18 | 16 | 14 | 14 | 16 | 12 | 20 |
600t以上1,000t未満 | 4 | 7 | 6 | 5 | 3 | 3 | 1 | 5 | 5 | 2 |
1,000t以上5,000t未満 | 6 | 9 | 11 | 8 | 6 | 2 | 5 | 10 | 7 | 7 |
5,000t以上 | 2 | 2 | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 0 | 4 | 2 |
合計 | 216 | 192 | 187 | 159 | 165 | 143 | 131 | 163 | 155 | 151 |
資料:環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和元年度)」
環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課の産業廃棄物排出・処理状況調査報告書
(令和元年度速報値)によると、日本の産業廃棄物のうち建設廃棄物の割合は 20.0%と大きなウェイトを占めている。さらに、高度経済成長期に建設された建築ストックが続々と寿命を迎え、今後も建設廃棄物排出量の増加が見込まれており、そのリサイクルを推進することが課 題となっている。このような中、xxxxは分別解体を徹底しており、最新鋭の中間処理施設における高精度な選別により、建設廃棄物のリサイクルに積極的に取り組んでいる。
<2019 年度 産業廃棄物の業種別排出量>
3. 経営方針と事業活動
【モットー、環境方針】
xxxxは、「お客様の信頼とともに、堅実なサービスを提供し xxのために、安心の技術を磨く。」をモットーに、解体工事業及び産業廃棄物収集運搬・処分業を営む、地域に根差した企業である。産業廃棄物を取り扱っていることもあり、環境保全意識が高く、環境省が定めた環境経営システムに関する第三者認証・登録制度であるエコアクション21認証を取得している。環境保全への取組みを公表する環境活動レポートの中で環境方針を策定しており、環境保全に対する基本理念及び基本方針を定めている。このように、自社の方針を社内外に浸透させることで従業員の環境保全意識が向上している。
<基本理念>
「株式会社アーバンは、産業廃棄物の中間処理業、収集運搬業として、常に環境の保全を意識し、環境に配慮した行動に努め、社会に貢献します。」
<基本方針>
「当社は、環境理念に基づいた環境経営システムを構築し、環境負荷を軽減すると共に、環境に配慮した継続的な活動を展開します。」
1.受託した廃棄物の再資源化に取組み、リサイクル率の向上に努めます。
2.環境関連法規及び条例等を遵守します。
3.収集運搬車及び営業車のエコドライブを実施し、二酸化炭素排出量の削減・水使用量の節水に努めます。
4.環境に配慮した車両の導入・事務用品を主体とするグリーン購入の推進。
5.排出事業者に対して、廃棄物の分別指導を行い、リサイクル率の向上に努めます。
6.分別解体で廃棄物の再利用を推進し、最終処分の委託処理を減らします。
7.環境活動レポートを社内外に公表し、社会とのコミュニケーションを積極的に行います。
【産業廃棄物処理】
アーバングループでは解体工事から最終処分まで一貫した廃棄物処理を行っている。解体は 後の選別工程の精度を高められるよう、分別解体を基本としており、解体後は速やかに中間処理施設へ運搬される。他社が解体した現場などからも産業廃棄物を回収しており、効率的かつスピーディに回収するために計画的な配車を心掛けている。
回収した廃棄物のリサイクルにも注力しており、同社の取り扱う産業廃棄物全体の89.2%は再生資源化される。特に、がれき類に含まれるコンクリートがらや木くず、金属くず、紙くずのリサイ クル率はほぼ100%となっており、再生資源として活用されている。コンクリートがらは自社コンクリ ートリサイクル施設にて破砕され、再生骨材などとして地元の土木建設業者などに販売されてお り、地域の資源循環に貢献している。製造される再生骨材などは、品質を担保するために外部の
検査機関にて検査を行っており、道路の路盤材など公共工事に使用されるほどの質を維持している。
このように、高いリサイクル率を誇るアーバンであるが、2021年9月には最新鋭の処理施設が稼働し始め、更なるリサイクル率の向上が期待されている。新中間処理施設では、重機や人手による簡易選別を行った後、二軸破砕機を経て、トロンメルやバリオセパレーターにより単品物に選 別される。取り除けなかった残渣物は比重差選別機などにより、「高比重物」、「低比重物」、「細粒物」、「5㎜アンダー」の4種類に選別される。
<新中間処理施設 処理フロー>
<新中間処理施設に使用されている選別機>
設備 | 特徴 |
トロンメル | ・円筒のドラムの中に25㎜の穴が空いており、その穴を通過するものと通過しないものを選別する |
・重量混合廃棄物から容易に軽量物を選別する | |
・最初の段階で選別に厄介な土砂等の撤去を行う | |
・既存設備では荷受け不可能なものも受入可能となる | |
・連続的に処理を行うことができるため、処理能力が高い | |
粉砕機 | ・機械の中に特殊形状のハンマーがついており、任意のスクリーンの穴の大きさに揃えて破砕可能 |
・大きさにバラつきがある混合廃棄物の粒度調整ができる | |
・混合廃棄物の減容化が可能 | |
・粒度が細かくなるため、運搬コストの低下につながる | |
・その後の比重差選別機での選別精度が高くなる | |
バリオ セパレーター | ・8枚のエレメントがついており、前後振動・揺動に反発するものと反発しないものに分けられる |
・重量物、細粒物、軽量物の3種類に選別される | |
・手選別コンベア上の選別の負担を大きく軽減できる | |
・人手だと限界があった重量物、軽量物、細粒物の選別の精度が高くなり処理量も増える | |
・軽量物が容易に分けられることにより、リサイクル率が高くなる | |
比重差選別機 | ・密度の違いを利用して重量物と軽量物に選別する |
・選別精度が高い | |
・処分費が高い管理型混合廃棄物から多くの安定型廃棄物を選別することが可能 | |
・既存設備では対応できなかったミンチ系混合廃棄物にも対応できる | |
・焼却処分にも排出可能となるため、安定型処分場の排出依存度を下げることが可能 |
新中間処理施設の稼働により、受け入れた廃棄物を20%まで減容できることに加え、日量 60㎥の処理能力が日量300㎥と5倍にまで増加し、選別精度が向上するためリサイクルされる廃棄物も増加することで、最終処分場への排出依存度の低下が期待される。これまで受入れが困難だったミンチ系混合廃棄物(分別解体せずに重機などで一斉に解体した建設副産物)の選別も可能となる。この規模・性能の中間処理施設を整え、グループで最終処分場も所有している産業廃棄物処理業者は首都圏近郊では珍しく、東名高速道路の足柄スマートインターチェンジに至近であることも併せて、今後の産業廃棄物受入量の増加が見込まれる。
また、完全屋内型処理施設であるため、廃棄物からの臭気が外部に漏れることはなく、作業が天候に左右されないため一定の処理能力も担保されている。集塵機や防音材も設置されてお り、選別機の振動などによる騒音や廃棄物を破砕した際の粉塵対策も図られている。新中間処理施設で作業をする従業員の労働環境も改善され、最新鋭の選別機械により作業負担も軽減されている。
中間処理施設での排水は全て調整池、沈殿桝、最終桝を通り、異物などを分離した水を排出する構造となっている。最終処分場では、法令で定められている年1回と毎月の検査に加え、基準を満たしているものの数値が0となっていない項目について別途、年3回の自主検査を行って水質の保全に努めている。
【労働環境の改善】
全国の年次有給休暇取得率の全業種平均が56.3%である中、産業廃棄物処理業界の属する「他に分類されないサービス業」は54.2%と全業種平均を下回っている※。アーバンでは、従業員の有給休暇の取得を推進しており、毎月1回、土曜日に有給休暇を取得することで土日休みとなるよう、取得しやすい職場の醸成に努めている。具体的には、産業廃棄物回収の計画的な配車・人繰りによる土曜日出勤者の削減や得意先への毎月1回の有給休暇取得推進の周知などを行うことで、無理なく土曜日に有給休暇を取得できるよう図ろうとしている。
また、定年退職者の再雇用にも積極的である。アーバンでは60歳を迎えると定年退職となる が、従業員が定年退職後も継続的な雇用を希望する場合は、退職を申し出るまで働き続けることができる。アーバンとしても知識や経験が豊富なベテランは貴重な人材であり、高い選別技術の維持や危険予知などに貢献している。現在、アーバングループ全体で5名を再雇用しており、現役従業員として活躍している。
労災対策にも積極的に取り組んでおり、中間処理施設では、毎日の全体朝礼での声掛けはもちろん、作業グループごとの朝礼で前日に気付いた異常音の共有などといった危険予知活動も行っている。そのほか、ヘルメット、手袋、安全靴、防塵マスクなどの着用の徹底や中間処理施設への巻き込み防止カバーの設置、高所への落下防止柵の設置、各工程での停止ボタンや緊急事態用の全工程停止ボタンの設置なども行っている。解体工事現場でも、毎日の朝礼における注意喚起や工程確認などを行う全員参加の打合せの実施、重機周辺などの危険箇所の周知徹底に努めている。
年に1回、全従業員が参加する安全大会を開催しており、1年間に起きた事故について当 事者が発生経緯や改善策などを発表することで、当事者意識の醸成や再発防止意識の向上を促している。このような労災対策に取り組むことで、重大な人身事故などを起こさずに事業を継続できている。
xxxxは従業員の健康面にも配慮しており、中間処理工程に存在する2つの手選別工程は小さな部屋になっており、夏場や冬場でも快適に作業できるよう温度管理が可能となっている。集塵機は破砕機周辺だけでなく、コンベア各所にも設置することで、中間処理施設内の粉塵濃度を低減させている。また、毎年、健康診断やじん肺検査も実施しており、従業員の健康維持に努めている。
以上のような、労働環境の改善に取り組むことで、アーバンの従業員は2016年から約1.7倍の41名となるなど、新中間処理施設による受入廃棄物の増加に向けた人員計画は順調に推移している。
※資料:厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」
【環境保全への取組み】
先述したように、xxxxはエコアクション21認証を取得するなど環境保全活動に積極的に取り組んでいる。毎年発行している環境活動レポートにおいてリサイクル率や二酸化炭素排出量、燃料使用量などの中・短期目標及び実績を公表している。2018年度実績をベースに目標を設定しているため、目標達成項目については次回更新時に、さらに高い目標を設定する方針である。
<アーバンの中・短期目標と実績>
産業廃棄物処理量1t当たり
2018年度
2019年度
2020年度 2021年度 2022年度
実績 | 目標 | 実績 | 目標 | 目標 | 目標 | |
リサイクル率(%) | 93.05 | 90.00 | 89.20 | 90.00 | 90.00 | 90.00 |
二酸化炭素排出量(㎏-CO2/t) | 8.55 | 8.46 | 9.02 | 8.38 | 8.30 | 8.21 |
購入電力量(kWh/t) | 2.13 | 2.11 | 2.18 | 2.09 | 2.07 | 2.05 |
ガソリン使用量(L/t) | 0.13 | 0.12 | 0.11 | 0.11 | 0.10 | 0.10 |
軽油使用量(L/t) | 2.73 | 2.70 | 3.05 | 2.68 | 2.65 | 2.62 |
資料:アーバン「エコアクション21環境活動レポート(2019年度)」
目標と実績の公表だけでなく、目標を達成するために様々な活動にも取り組んでいる。二酸化炭素排出量削減対策として13の購入電力削減策と11の化石燃料削減策に取り組み、1つの排水量削減策、5つの廃棄物削減策、4つの廃棄物リサイクル率向上策に取り組んでいる。
<アーバンが取り組む環境保全活動(抜粋)>
そのほか、中間処理施設の全照明設備のLED化、全営業車両のハイブリッドカー化、9台所有する重機のうち1台のハイブリッド化、運搬車両の7割の低排出ガス・低燃費化に取り組むなど設備面も環境負荷を低減するよう徹底している。
また、中間処理施設の屋根にシステム容量100kWのxxx発電設備を設置しており、年間115,000kWhの再生可能エネルギーを創出している。これらは全て東京電力を通して一般家庭や事業所に供給されており、社会全体の再生可能エネルギーの割合向上に貢献している。
【地域に根差した活動】
アーバンは、環境保全活動だけでなく、地域に根差した活動にも積極的に取り組んでいる。地域住民との意見交換会は年に1回開催されており、アーバンの事業の理解を深めてもらうと同時に、産業廃棄物処理の課題などを共有する重要な機会となっている。地元の小学生などの社会科見学として、中間処理施設の見学も受け入れており、環境保全について学習する機会を提供している。地元漁業協同組合へは、アマゴの稚魚購入資金の援助や各種活動の補助などといった支援を継続的に行っている。
また、公益社団法人静岡県産業廃棄物協会を通して静岡県と「地震等大規模災害時における災害廃棄物の処理等に関する協定」を締結しており、大規模災害時における災害廃棄物の処理等について、被災地域の市町などから支援協力要請があった場合、支援協力を行うこととなっている。災害時以外も協定に関係なく、積雪時の道路の除雪活動を自主的に行うなど、地域貢献活動に積極的に取り組んでいる。
4. 企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブ・ネガティブなインパクト
【ポジティブなインパクトが期待できる活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面>解体事業 廃棄物処理サービス の安定した提供 地域に根差した活動 | ①老朽化した建築物を解体することで都市の再開発を可能にする ・一般住宅や事業所から特殊建築物にまで及ぶ解体事業 ②解体工事から最終処分まで一貫した産業廃棄物処理 ・中間処理施設や最終処分場の安定的な運営 ・アーバングループ間で連携した一貫処理体制の提供 ③本社が所在する地域への活動 ・地域住民との定期的な意見交換会、工場見学の受入れ ・地元漁業協同組合の活動支援 ・静岡県との災害発生時の協定締結 |
<経済面> 最終処分場の運営最新鋭の処理施設 | ①立地の良い安定型最終処分場の運営 ②最新鋭設備を設置した全天候対応の完全屋内型中間処理施設による高精度化・高効率化された処理 |
<環境面> リサイクル事業 再生可能エネルギー | ①産業廃棄物7品目(廃プラスチック類、金属くず、ガラ陶、がれき類、紙くず、木くず、繊維くず)のリサイクルによる廃棄物の削減および資源の有効活用 ②xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出 |
【ネガティブなインパクトを低減する活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面>労働環境の改善 | ①労働環境の改善 ・完全屋内型処理施設での作業、各種労災対策 ・有給休暇の取得推進、定年退職者の積極的な再雇用 |
<環境面> 環境保全対策 CO2 排出量の削減 | ①振動・騒音、臭気、粉塵、排水対策 ・環境活動レポートで定めた各種取組み ・完全屋内型処理施設による処理、充実した水質検査体制 ②事業活動に伴う CO2 排出の抑制への取組み ・処理施設内の全照明設備の LED 化 ・全営業車両のハイブリッドカー化 ・9台ある重機のうち1台にハイブリッド重機を採用 ・運搬車両のうち7割が低排出ガス・低燃費仕様 |
(1)UNEP FI が掲げるインパクトレーダーとの関連性
アーバンの一般住宅や事業所から特殊建築物にまで及ぶ解体事業は新しい住宅や都市開 発を可能にするため「住宅」に、解体工事から最終処分まで一貫した廃棄物処理サービスのx xした提供や地域住民との定期的な意見交換会などの地域に根差した活動は、「健康と衛生」や「包摂的で健全な経済」に関するポジティブなインパクトであると想定される。また、首都圏近郊で高速道路からも近いといった立地の良い最終処分場の運営や全天候対応で高精度化・高効率化された最新鋭の処理施設は同社の収益性向上に貢献するため「経済の収れん」におけるポジティブ・インパクトに該当する。さらに、産業廃棄物7品目のリサイクル事業は「資源効❹・資源安全確保」や「廃棄物」に、xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出は「気候変動」に資するポジティブなインパクトである。
一方で、完全屋内型処理施設などによる労働環境の改善や環境保全対策は「雇用」や「健康と衛生」、「大気」、「水」、「土壌」のネガティブなインパクトを低減させている。また、照明設備の LED 化や営業用車両や重機のハイブリッド化、運搬車両の低排出ガス・低燃費化などといった 事業活動に伴う CO2 排出量の削減は「気候変動」に対するネガティブ・インパクトの抑制となっ ている。
利用可能性、アクセス性、価格の手頃さ、品質 | 質(物理的・化学的性質)と有効利用 | 環境の制約内で人のニーズを満たす手段としての、人々・社会の ための経済的価値創出 |
水 | 大気 | 包摂的で健全な経済 |
食料 | 水 | 経済の収れん |
住宅 | 土壌 | |
健康と衛生 | 生物多様性と生態系サービス | |
教育 | 資源効率・資源安全確保 | |
雇用 | 気候変動 | |
エネルギー | 廃棄物 | |
移動手段 | ||
情報 | ||
文化・伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
司法 | ||
強固な制度、平和、安定 |
(2)SDGs との関連性
アーバンの企業活動は、都市の再開発に必要な解体事業、アーバングループ間で連携した廃 棄物処理サービスの安定した提供、地域住民との定期的な意見交換会などの地域に根差した活動が「ターゲット 9.1」や「ターゲット 11.1」、「ターゲット 9.2」に、首都圏近郊で高速道路からも近いといった立地の良い最終処分場の運営や全天候型で高精度化・高効率化された最新鋭の処理施設が「ターゲット 8.2」に関するポジティブなインパクトと想定される。また、産業廃棄物7品目のリサイクル事業は「ターゲット 12.2」や「ターゲット 12.5」、「ターゲット 14.1」に、xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出は「ターゲット 7.2」に資するポジティブなインパクトである。
一方、完全屋内型処理施設などによる労働環境の改善や環境保全対策は「ターゲット 8.8」や「ターゲット 6.3」、「ターゲット 11.6」、「ターゲット 12.4」に関するネガティブなインパクトを抑制するものである。また、営業車両のハイブリッドカー化などといった CO2 排出量の削減は
「ターゲット 11.6」のネガティブなインパクトを低減させている。
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<社会面>解体事業、廃棄物処理サービスの安定した提供、労働環境の改善 9.1 すべての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。 11.1 2030 年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 アーバンの行っている解体事業は一般住宅から事業所、特殊建築物にまで及び、限られた土地での再開発に資する。老朽化した建築物の解体は都市の新陳代謝を促し、インフラの構築に貢献している。 また、アーバングループで取り組む解体から収集運搬、中間処理、最終処分までの一貫した廃棄物処理体制は安定的に提供されており、営業エリアの住民や事業者の衛生的で安全な生活環境を確保することに貢献している。 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 アーバンでは、完全屋内型の中間処理施設にて廃棄物の処理を行っており、 集塵機などで粉塵の飛散を抑制するなど労働環境を改善している。また、先進的な設備により、機械選別の割合を高めることで作業者の負担を軽減している。 また、毎月1回の有給休暇の取得推進や定年退職者の積極的な再雇用、 各種労災対策など、労働者の権利を適切に保護している。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<経済面>地域に根差した活動、最終処分場の運営、最新鋭の処理施設 9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及び GDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。 年1回の地域住民との意見交換会の開催や工場見学の受入れによる良好な関係の構築、地元漁業協同組合の支援、静岡県との災害発生時の協定締結などといった地域に根差した活動は、企業イメージの向上や地域住民から理解を得ることにもつながり、地元での事業活動を中心にしている企業にとって持続可能性を高めることに貢献している。 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 全国的に最終処分場の残余年数が短くなる中、新規処分場の大幅な増加も見込めず、アーバンの運営する最終処分場は貴重な存在となっている。特に、広大な土地の取得が困難で周辺へ多くの配慮が必要な首都圏からのニーズは大きく、高速道路のインターチェンジから近いなどの立地を生かし、産業廃棄物の回収量増加に努めている。 また、天候に左右されない完全屋内型の中間処理施設による高精度で高効率な作業は同社の生産性向上に大きく貢献している。 | |
<環境面>リサイクル事業、再生可能エネルギー、環境保全対策、 CO2 排出量の削減 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効❹的な利用を達成する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 14.1 2025 年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。 アーバンのリサイクル事業は限られた資源を効率的・有効的に活用しており、廃棄物発生の削減に貢献している。 また、廃プラスチック類の廃棄物を削減することで海洋に流れ込むマイクロプラスチックの削減に貢献している。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 xxx発電設備により再生可能エネルギーを創出している。これらは全て東京電力へ売却することで、一般家庭で利用される再生可能エネルギーの割合を増加させることに貢献している。 6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 アーバンの中間処理施設は、集塵機や防音材をふんだんに使った完全屋内型となっており、最終処分場での水質検査も充実しており、振動・騒音や臭気、粉塵、排水といった悪影響が周囲へ及ばない環境となっている。エコアクション 21 認証も取得しており、購入電力や化石燃料の削減、水使用量の削減、受託廃棄物のリサイクル率向上などに努めている。 また、処理施設内の全照明設備の LED 化や全営業車両のハイブリッドカー 化、1台のハイブリッド重機の導入、7割の運搬車両の低排出ガス・低燃費化などを行い、CO2 排出量の抑制に努めている。 |
(3)地域課題との関連性
①地域経済に与える波及効果の測定
アーバンは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 15 億円に、従業員数を 50 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、こ
の目標を達成することによって、アーバンは、静岡県経済全体に年間 25 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
②地域の独自課題への貢献
【循環型社会の形成】
静岡県は、循環型社会の形成に向けて、県民、事業者、行政の主体的行動を促進するための実践行動計画として、「第3次静岡県循環型社会形成計画(2016 年度~2020 年度、 2020 年 4 月に1年延長)」を策定し、推進している。同計画の中で、2013 年度の産業廃棄物の最終処分率は 1.8%と過去最も低い値となり、全国平均の 3.5%に比べても「非常に高いレベルにある」としている。そのため、2020 年度の目標値を現状維持の 1.8%に設定し(1 年延長後の目標値も 1.8%)、高水準の継続を求めている。また、県は同計画において、「製造業が盛んである県内経済の持続的発展を図りつつ循環型社会の構築を目指すには、経済動向に影響を受けやすい廃棄物排出量のみに着目するのではなく、信頼性の高い処理業者の充実や質の高いリサイクルにより循環が上向くような社会を目指し、資源の有効な活用を促していくことが必要」と、処理業者の役割発揮に期待を寄せている。
静岡県が発表した「令和2年度 静岡県産業廃棄物実態調査報告書(平成 30 年度実績調査)」では、産業廃棄物の最終処分量は 218 千トンと、排出量 10,090 千トンの 2.2%となっており、目標達成にはさらなる再生利用や減量化の推進が求められている。アーバンの精度の高い中間処理は、こうした最終処分率の改善に寄与しており、新中間処理施設の稼働によってさらなる貢献が期待できる。
【SDGs の推進】
御殿場市は、SDGs の推進に積極的に取り組んでおり、2019 年4月に、市長を本部長とする「御殿場市 SDGs 推進本部」を設置、同年5月には第1回推進本部会議が開催され、「御殿場市 SDGs 推進宣言」を発表した。庁内には推進本部の下に、各課の課長クラスから成る
「御殿場市 SDGs 推進幹事会」を置き、SDGs の 169 のターゲットごとに関係課の取組みに関する検証作業を実施し、進捗状況について定期的なフォローアップを行っている。また、総合計画を実現するための具体的な事業計画を策定した「前期基本計画実施計画(2020 年度~ 2022 年度)」においても SDGs の観点が導入されており、事業・施策ごとに該当する目標やターゲットが盛り込まれている。
こうした御殿場市の SDGs 推進の取組み事例の1つに、「エコガーデンシティ構想」がある。この構想は、「世界遺産富士山の麓にふさわしい、優れた環境と景観の形成と産業・経済振興が好循環するまちの実現を目指す取組」であり、重点項目として、「3R の推進など循環型社会の形成」や「地域資源を活用した商品開発やエコツーリズムの推進」など6つを設定している。
アーバンは、地域住民との意見交換会を年に1回開催して産業廃棄物処理の課題などを共有したり、中間処理施設を公開して地元の小学生などの社会科見学を受け入れるなど、環境保全について理解を深めたり、学習する機会を提供している。新中間処理施設も見学者の受け入れを想定した設計にしており、御殿場市が進めるエコツーリズムの推進にも協力する方針である。また、3R のうち、特にリサイクルに関する知見を豊富に有することから、自治体や市民等と共有す
ることで、エコガーデンシティ構想の実現に貢献している。
③アーバンの持続的な成長への貢献度
アーバンが本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組む目的は、自社の産業廃棄物の削減や適切な処理などといった環境保全に資する活動を公表することで、環境の保全を意識し、環境に配慮した行動に努めるという基本理念を達成する体制をより強固にしたいという気持ちを具現化することにある。
また、自社の経営にとっても、社内の業務の棚卸しをし、SDGs の精神や社会・経済・環境に関する目標・KPI を設定することによって、自社の現状や目指すべき方向性を社員と共有し、全社員のベクトルを合わせることで、経営体制をより強固なものにできると考えている。
さらに、取引先や地域など対外的にも、自社の経営理念やミッション、経営者の想い・こだわり等を周知することで、自社の強みや企業風土の理解を促進し、新規受注や採用などにつながる
など、持続的成長の源泉になることを期待している。
5. インパクトを測定する KPI(指標と目標)
特定されたインパクト | KPI(指標と目標) | 関連する SDGs |
<社会面> 健康と衛生雇用 | ・2025 年までに、優良産廃処理業者認定制度の認定を受け、産業廃棄物処理業の持続性を向上させる ・2025 年までに、月1回の土日休みを全従業員が取得できる体制を整える ・地域住民との意見交換会を毎年1回開催する | |
<経済面> | ・2030 年までに、首都圏からの受入れ量を 2019 年度の 1,200tから 20,000t増加させ、21,200tを達成する | |
包摂的で健全な経済 | ・高い生産性を維持するために、最新鋭の中間処理施設の高精度・高効率な処理を継続し、保守・点検活動を毎日実施 | |
経済の収れん | する | |
・2030 年までに、取り扱う産業廃棄物全体のリサイクル率を | ||
2019 年度の 89.2%から 1.8pt 向上させ、91.0pt を達成 | ||
する | ||
<環境面> | ・2030 年までに、取り扱う産業廃棄物の量を 2019 年度の 60,192tから 25,508t増加させ、85,700tを達成する | |
資源効率・資源安全確保 | ・2030 年までに、xxx発電設備で累計 912,000kWh発電する | |
廃棄物 | ・2030 年までに、産業廃棄物処理量1t当たりの | |
気候変動 | CO2 排出量を 2019 年度の 9.02 ㎏-CO2/tから | |
大気 | 0.52 ㎏-CO2/t削減し、8.50 ㎏-CO2 を達成する | |
水 | ・完全屋内型処理施設の振動・騒音、臭気、粉塵、排水対 | |
土壌 | 策を継続することで、産業廃棄物処分業および建設業許可 | |
(解体工事)の基準を満たし、事業に必要な許認可を維 | ||
持する | ||
・最終処分場の年3回の自主検査を継続し、法令で定められ | ||
た基準を満たすよう努める |
6. マネジメント体制
アーバンでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、組織横断的なプロジェクトチームを結成。xx社長が陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者とし、xxxx専務を実行責任者、xxxx部長を実行担当者とした総務部内に設置されたプロジェクトチームを中心として、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。
「株式会社アーバンは、産業廃棄物の中間処理業、収集運搬業として、常に環境の保全を意識し、環境に配慮した行動に努め、社会に貢献します。」という環境に対する基本理念を達成すべく、県内の産業廃棄物業界を牽引する企業を目指す。
最高責任者 | 代表取締役 xxxx |
実行責任者 | 専務取締役 xxxx |
実行担当者 | 総務部長 xxxx |
担当課 | 総務部 |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とアーバンの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つ
ネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するアーバンから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 調査グループ長 xx xxx研究部 研究員 xx xx
〒420-0853
静岡市葵区追手町 1-13 アゴラ静岡 5 階 TEL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2021 年 9 月 30 日 株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社アーバンに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が株式会社アーバン(「アーバン」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包摂的 で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体 である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的 とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、アーバンの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、アーバンがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
お客さま | ①PIFの申込み | 当行 | ②PIF評価依頼 | 静岡経済研究所 | レビュー依頼 | JCR |
③インパクトの包括分析・特定 | ||||||
⑤目標・KPI等の協議 | ④インパクトの還元 ⑥目標・KPI等の報告 | コメントバック レビュー依頼 | ||||
⑨融資実行 PIF評価書交付 | ⑧PIF評価書作成 | ⑦目標・KPI等の評価 コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100人以下など。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるアーバンから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲
で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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