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は し が き
本書は、信用金庫の役員の方、あるいは、これから役員に就任される方に向けて、役員や理事会等の役割、そして、役員の権限・責任等をまとめたものです。
信用金庫法は商法・会社法の改正に伴った改正がなされることが多く、信用金庫も株式会社と同じように年々ガバナンスの向上が強く求められるようになっています。もっとも、信用金庫は、金融機関としての業務面では銀行と重なるところは多いのですが、協同組織である信用金庫と株式会社である銀行では、存立目的・存在意義が異なります。そこで、本書では、会社法との相異部分はできるだけその対比を明記するようにしながら、信用金庫役員に関する規定を解説するように心がけました。
信用金庫の役員の方、これから役員になられる方に本書をお手にとっていただいて、役員に関する職務知識を理解するための一助になりましたら幸いです。
最後に、本書の刊行に向けて、ご意見をくださいました湘南信用金庫常務理事 xxxxx、そして本書執筆の機会をくださいました経済法令研究会の地切xxに、この場を借りて厚くお礼申し上げます。
2016年(平成28年)9月
弁 護 士 xx xx
目 次
第1章 理事・監事の権限と義務
Ⅰ 理事・監事の役割と権限
1 信用金庫の役員 2
2 理事の権限等 3
1 理事の役割と権限 3
2 代表理事・業務執行理事 5
3 員内理事・員外理事 7
3 監事の権限等 9
1 監事の役割 9
2 監事の権限 9
4 員外監事・員xxx 16
1 員外監事とは(「員外要件」) 16
2 員外監事の選任義務 16
3 員外監事制度の趣旨(員外理事との違い) 17
4 員xxxとは 18
5 員xxx・員外監事の権限および義務 19
5 常勤監事 19
1 常勤監事 19
2 常勤監事の選定義務 19
3 常勤監事の権限および義務 19
Ⅱ 役員の義務
1 役員と金庫の法的関係 21
2 委任関係から生じる義務 21
1 役員の善管注意義務 21
2 理事のxx義務 22
3 信金法上の具体的義務①―代表理事等の兼職・兼業制限、
監事の兼任禁止義務 23
1 代表理事等の兼職または兼業の制限(法35条1項) 23
2 監事の兼任禁止(法35条3項) 25
4 信金法上の具体的義務②―理事と金庫との取引等の制限
義務 28
1 利益相反取引の規制 28
2 利益相反取引制限の趣旨と承認不要の取引 31
3 監事と金庫との取引 32
5 信金法上の具体的義務③―総(代)会の出席・説明義務 33
1 総(代)会における説明義務 33
2 説明義務違反の場合 33
3 説明義務の免除 33
4 説明内容が守秘義務違反・名誉棄損等に当たる場合 34
6 理事のその他の職務上の義務 34
1 理事会構成メンバーとしての職務 34
2 業務執行者としての職務 36
3 計算書類等の作成、据置きおよび閲覧等 38
7 監事のその他の職務上の義務 39
1 業務監査権 40
2 会計監査権 42
3 監事の地位強化のための権限 43
4 金庫代表権限 44
5 理事の責任免除に関する議案提出の同意権(法39条6項)… 44
第2章 理事の選任・終任、報酬等の決定等
Ⅰ 理事の選任手続等
1 理事の定数 46
1 理事の定数の定め方 46
2「理事の定数」=「選任された理事の員数」 47
3「理事の定数」が問題となり得る場面とその帰結 50
4 選任しなければならない員内理事の員数 54
5 理事の定数を欠いた場合 54
2 資格制限 55
1 法律上の欠格事由 55
2 定款による資格制限 57
3 員外理事の員数制限 57
4 兼職の制限 57
3 理事の任期 58
1 理事の任期 58
2 任期の伸長 59
3 信金法改正による理事の任期 59
4 理事の選任手続 60
1 理事の選任 60
2 創立当初の理事の選任 60
3 常務従事理事の届出 60
Ⅱ 理事の終任
1 理事の終任 61
1 理事の終任事由 61
2 代表理事等の退任届出 61
2 理事の辞任 62
1 理事の辞任できる時期 62
2 辞任の方法 62
3 理事の解任手続 63
1 会員による役員解任請求 63
2 内閣総理大臣による理事の解任命令 66
4 理事欠員の対応 68
1 理事の補充 68
2 欠員を生じた場合の措置 69
3 補欠役員の選任 70
Ⅲ 理事の報酬等の決定手続
1 理事の報酬等の決定 71
2 定款の定めまたは総(代)会の決議による決定 71
3 実際の決定方法 72
4 報酬等を定める際の必要事項 72
5 総(代)会の決議で定める場合 72
Ⅳ 代表理事の選定・解職、その他の手続
1 代表理事の選定・解職手続 74
1 代表理事の選定手続 74
2 代表理事の解職 75
2 代表理事の辞任 76
1 代表理事の辞任できる時期 76
2 辞任の方法 77
3 代表理事の欠員を生じた場合の措置 77
4 代表理事の選任・退任等の登記、届出 78
1 登 記 78
2 届 出 78
第3章 監事の選任・終任、報酬等の決定等
Ⅰ 監事の選任手続等
1 監事の定数 80
1 監事の定数の定め方 80
2「監事の定数」=「選任された監事の員数」 81
3 選任・選定しなければならない監事 81
4 監事の定数を欠いた場合 82
2 資格制限 82
1 法律上の欠格事由 82
2 員外監事の「員外要件」… 84
3 常勤監事の「常勤要件」と兼職または兼業の制限 84
4 兼任の禁止 85
3 監事の任期 85
1 監事の任期 85
2 総(代)会終結時までの伸長 86
3 法改正による任期 86
4 監事の選任手続等 87
1 監事の選任手続 87
2 監事の選任についての意見陳述権 88
3 特定金庫の監事選任の同意権・請求権 88
Ⅱ 監事の終任
1 監事の終任 90
1 監事の終任事由 90
2 員外監事の退任届出 90
2 監事の辞任 91
1 辞任の手続 91
2 辞任監事の総(代)会出席・辞任理由等の陳述権 91
3 監事の辞任についての意見陳述権 92
3 監事の解任手続 92
1 会員による役員解任請求 92
2 内閣総理大臣による監事の解任命令 94
4 監事欠員の対応 95
1 監事の補充 95
2 欠員を生じた場合の措置 96
3 補欠役員の選任 97
Ⅲ 監事の報酬等の決定手続
1 報酬等の決議方法 98
2 定款の定めや総(代)会の決議がない場合 98
3 報酬等についての意見陳述 99
第4章 理 事 会
Ⅰ 理事会の役割
1 理事会 102
2 理事会の権限 102
1 金庫の業務執行の決定 102
2 理事の職務の執行の監督 109
3 代表理事の選定および解職 109
4 理事と金庫間の取引(利益相反取引)の承認 110
5 監事の監査を受けた計算書類等の承認 113
Ⅱ 理事会の手続等
1 理事会の招集手続 114
1 開催頻度 114
2 招集の流れ 114
3 開催日時・場所 116
2 理事会の運営 116
1 定足数 116
2 議事進行 117
3 報告事項 118
4 決議方法 119
5 監事の出席 122
6 議事録の作成・備置き・閲覧請求対応 123
第5章 その他の機関等
Ⅰ 会計監査人
1 会計監査人とは 130
2 会計監査人設置義務 130
3 会計監査人の資格等と選任・終xx 131
1 会計監査人の資格等 131
2 会計監査人の選任 132
3 会計監査人の任期・終任 133
4 会計監査人の報酬決定 135
5 会計監査人の権限および義務 135
1 会計監査人の地位 135
2 計算書類等の監査権限、会計監査報告書作成義務 135
3 会計帳簿等の閲覧謄写・報告請求・財産状況等の調査権限 …136
4 理事の不正報告義務 136
5 総(代)会出席・意見陳述権 137
6 その他、会計監査人の責任 137
1 善管注意義務 137
2 任務懈怠の際の責任 137
3 会計報告の虚偽記載 137
Ⅱ 常務会等の組織
1 常務会制度の意義 139
2 常務会の構成メンバー 140
3 運営について 140
Ⅲ 監 事 会
1 監事会制度 142
2 監事会の構成メンバー 143
3 運営について 143
Ⅳ 執行役員制度
1 執行役員制度の意義 144
1 役員と執行役員との違い 144
2 執行役員制度創設の経緯 144
2 執行役員の選任方法・権限等 145
1 執行役員の選任方法 145
2 執行役員の権限・地位 145
第6章 役員の責任
Ⅰ 役員の権限と責任の関係
Ⅱ 役員が負う可能性のある法的責任の種類
1 民事責任 150
2 刑事責任 151
1 刑事責任 151
2 金庫業務に関連する刑法犯 151
3 有罪になった場合の就業制限 152
3 その他の責任等 153
Ⅲ 理事の責任
1 理事の責任 155
1 責任の類型 155
2 類型ごとの責任が生じる要件 164
3 金庫に対する責任 166
4 第三者に対する責任 167
5 理事の行為の差止請求 168
2 連帯責任 168
Ⅳ 監事の責任
1 金庫に対する責任 170
1 金庫に対する損害賠償責任 170
2 責任消滅期間 170
3 監事に対する責任追及 170
2 第三者に対する責任 171
1 第三者に対する損害賠償責任 171
2 監査報告の虚偽記載等 171
3 責任消滅期間 172
3 連帯責任 172
Ⅴ 役員等の責任限定
1 役員等の責任免除 173
2 総(代)会の決議による責任の一部免除 174
1 責任を一部免除するための手続 174
2 退職慰労金の支払についての総(代)会の承認 178
3 連帯責任を負う役員等の一部の者に対してその免除があっ
た場合に、他の役員等について生じる効果 179
3 金庫による役員賠償責任保険の保険料負担 179
1 普通保険約款部分 180
2 代表訴訟担保特約部分 180
Ⅵ 不祥事発生時の危機管理対応
1 不祥事とは 181
1「不祥事件」の届出義務 181
2 上記以外の不祥事 182
2 不祥事対応の心構え… 183
3 初期対応 184
1 初 動 184
2 方針決定・体制の確立 185
4 本格調査の実施 186
1 客観的証拠の収集 186
2 関係者からの事情聴取 186
3 その他の情報収集方法 187
5 調査委員会の設置の検討・手続 187
6 関与した役職員の責任追及、人事処分 188
7 再発防止策の策定 188
1 意識改革 189
2 業務分掌、職務権限の明確化 189
3 業績評価・人事制度の見直し 189
4 監査体制の強化 190
5 内部通報制度の充実・強化 190
8 公表・広報対応 190
9 個人情報・マイナンバー漏えい対応 192
1 情報漏えい事案 192
2 情報漏えいにおける責任 193
3 個人情報・マイナンバーが漏えいした場合 193
Ⅶ 会員代表訴訟
1 会員代表訴訟制度 197
1 会員代表訴訟の意義 197
2 会員代表訴訟の手続 198
3 代表訴訟の和解 199
4 代表訴訟の判決 200
2 会員から提訴請求を受けた場合の金庫の対応 201
1 提訴請求対応のスケジュールの目安 201
2 提訴請求受領後の具体的な対応 202
3 会員代表訴訟における金庫の関わり 207
1 共同訴訟的当事者参加 207
2 補助参加 208
3 理事会議事録の閲覧・謄写請求等 208
4 提訴された役員の対応 208
1 弁護士の選任 208
2 担保提供の申立 209
Ⅷ 責任が問われる具体的場面とその留意点
1 業務の執行に関する責任 210
1 融資実行における理事の責任 210
2 資金支出についての理事の責任 217
3 融資についての金融機関の責任 219
4 不適切な金融商品の勧誘・販売 221
5 内規違反等の役員の行為 223
6 所管事業の報告・説明の不履行 225
7 信用金庫の破綻 227
2 内部統制上の責任 228
1 反社会的勢力との取引 228
2 顧客情報の漏えい 231
3 労務対応 232
3 監督・監査上の責任 235
1 他の理事の不正行為の監視義務 235
2 監事の任務懈怠 237
第7章 その他の重要事項
Ⅰ 反社会的勢力への対応
1 反社会的勢力対応の流れ 242
1 反社会的勢力対応の法的義務化 242
2 反社会的勢力との関係遮断のための内部統制システム構築 …243
2 反社会的勢力との関係におけるリスク 244
1 反社会的勢力の判断 244
2 反社会的勢力と関係を断つリスク・継続するリスク 244
3 反社会的勢力との関係遮断のための対応策 245
1 反社会的勢力の定義・範囲 245
2 取引の未然防止 249
3 事後チェックと内部管理 254
4 反社会的勢力との取引発覚後の事後対応 255
Ⅱ 金庫子会社に対する監督責任
1 子会社のリスク管理・不祥事防止体制の整備 258
2 金庫の子会社 258
3 理事の子会社に対する監督責任 259
Ⅲ 決算スケジュール等
1 決算後に行わなければならない計算書類等の作成等 261
1 計算書類等の作成 261
2 計算書類等の監査(特定金庫以外の金庫) 261
3 特定金庫の場合の計算書類等の監査 263
4 計算書類等の理事会承認、総(代)会招集通知時の提供 265
5 理事の計算書類等の総(代)会への提出等義務 266
6 計算書類等の総(代)会での承認・報告義務 266
7 業務報告の内容の総(代)会での報告義務 266
8 会計監査人の意見陳述権 267
9 計算書類等の備置き義務 267
10 計算書類等の閲覧請求に応ずる義務 267
2 具体的な決算スケジュール 268
■用語等コラム■
「選定・解職」と「選任・解任」の違い・6監事の業務監査の範囲・11
「業務の執行」と「職務の執行」・20
「常務に従事する役員(常務従事役員)」とは・23
「役員が法人であるときは、その職務を行うべき者」という法35条1項の規定について・24
理事と総代の兼任の適否・26
通常総(代)会が開催できない場合の役員の任期・59総代会制度における解任請求の要件・63
総(代)会決議による理事解任の可否の検討(消極)・66
「規定」と「規程」の違い・117
議事録に異議をとどめない理事・124
信用金庫理事の注意義務と銀行取締役の注意義務・158最低責任限度額の算定式・176
従来の一部責任免除規定とその改正内容・178 金庫の会員の子法人役員に対する責任追及・260
監事監査報告の内容の通知(特定金庫以外の金庫)・262特定理事と特定監事・262
業務報告の監事監査報告の内容通知・263会計監査報告の内容通知・264
計算関係書類の監事監査報告の内容通知・265日数の数え方・273
◆判例索引◆ 274
法令等の略記について
・法 ⇒信用金庫法
・信金法 ⇒信用金庫法
・施行令 ⇒信用金庫法施行令
・規則 ⇒信用金庫法施行規則
・金庫 ⇒信用金庫
Ⅰ
理事・監事の役割と権限
1 信用金庫の役員
信用金庫(以下「金庫」といいます)の役員には、理事と監事がいます(法32条1項)。
⑴ 理 事
理事とは、会員からの委任を受けて金庫の経営を担う、経営の専門家です。
金庫は、原則5名以上の理事を置かなければなりません(法32条2項)。
⑵ 監 事
監事とは、会員からの委任を受けて理事の職務執行の監督等を行う、監査の専門家です。
金庫は、原則2名以上の監事を置かなければなりません(法32
第1章 理事・監事の権限と義務
条2項)。
2 理事の権限等
1 理事の役割と権限
⑴ 理事の役割
理事は、理事会という機関の構成員(メンバー)です。理事自身は、金庫の機関ではありません。
株式会社(取締役会設置会社)の取締役に当たる存在で、信金上も会社法の取締役に関する規定が多く準用されています(法35条の6)。
理事は、理事会の構成メンバーとして、自らの専門的な知見をもって理事会での議論・討論に参加し、金庫の意思を決定、あるいは、代表理事の行為を監督するといった理事会の権限を行使することが期待されています。
⑵ 理事の権限
① 理事会への出席権限
理事には、理事会の構成メンバーとして、理事会に出席できる権限があります。
② 理事会の意思決定への参加権限
法36条5項は、以下の重要な業務執行の決定を理事会の専決事項として定めています。
a 重要な財産の処分および譲受け
b 多額の借財
c 支配人その他の重要なる使用人の選任および解任
d 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更および廃止 e 法令遵守体制の整備
f その他
これらの事項の決定は、理事会から(代表)理事に委任することができません。
したがって、理事は、理事会構成メンバーとして、これらの事項の意思決定に参加する権限を有しているのです。
ただし、一般の理事には、業務執行の権限まではありません。理事が業務執行を行うためには、代表理事もしくは業務を執行する理事として理事会で選定されること、または個別に業務の執行の委任を受けることが必要になります。
③ 他の理事の監督権限
理事は、代表理事や業務執行理事の行為を監督するための以下の権限を有しています。
a 理事会の招集権限(法37条4項、会社法366条。ただし、招集権者が定款または理事会の決議で定められている場合に、招集権者以外の理事が招集できるのは、招集権者に招集を請求しても理事会が招集されないときに限ります)
b 理事会での報告権限(法36条6項・35条の6、会社法357条1項)
c 理事会の決議を通じた代表理事の解職、業務執行理事の管掌変更(解除)
d 業務執行に関する決定の是正
信用金庫役員の職務執行の手引き
〜知っておきたい権限と責任〜
2016年10月30日 初版第1刷発行
著 者 x x x x発 行 者 x x x x発 行 所 ㈱ 経 済 法 令 研 x x
〒162-8421 xxx新宿区xxxx町3─21電話 代表03(3267)4811 制作03(3267)4823
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Ⓒ Xxxxxxxx Xxxxxxxxx 2016 Printed in Japan ISBN978 - 4 - 7668 - 2391- 2
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