静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱リースサンキュー(社長 國武賢一)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.9.30
㈱リースサンキューと「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱リースサンキュー(社長 xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 9 月 30 日(金)
2.融資金額 152,700,000 円
3.資金使途 設備資金
4.㈱リースサンキューの取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社はおしぼりやシーツ、タオルをはじめとするリネン品を貸し出しするリネンサプライ事業者であり、繰り返し使えるリネン品を提供することで、循環型ビジネスの構築に貢献しています。また、従業員の約 40%となる 24 名の障がい者を雇用するなど、障がい者雇用にも積極的に取り組んでいます。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ∙ 循環型ビジネスの構築(リネンサプライ事業による循環型社会への貢献) ∙ 気候変動対策(最新の低炭素機器であるガス乾燥機の導入、重油からガスへの燃料の切替や配送効率化による CO2 排出量の削減) ∙ 廃棄物の削減、資源の有効活用(消耗・劣化したリネン品の別用途販売、ごみの分別、廃棄物の適正な処理、ペーパーレスの取り組み) |
|
社会面 | ∙ 障がい者雇用の促進(障がい者が安心して働ける環境整備、障がい者の積極的な雇用) ∙ 人材育成(マニュアルを活用した教育、ルートスタッフの育成、資格取得や研修体制の整備) ∙ 衛生的なリネン品の提供(衛生基準への対応、衛生マークの取得、クレーム対策と再発防止に向けた取り組み) ∙ 労働環境の整備(有給休暇取得の促進、労災対策に向けた取り組み、交通x x啓発活動) |
|
経済面 | ∙ 高付加価値なサービス(さまざまなリネン品の対応、バーコード管理システムによる誤納入や誤返却の防止 |
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】㈱リースサンキューの概要
所 在 地 | xxxxxxxxx 0000-00 | 創 業 | 1964 年(昭和 39 年) |
資 本 金 | 41 百万円 | 売 上 高 | 576 百万円(2022 年 3 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:株式会社リースサンキュー
2022 年 9 月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
3
4
6
13
21
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析 21
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性 22
23
28
28
28
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 株式会社リースサンキュー(以下、リースサンキュー) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、リースサンキューの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響及びネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及び ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
リースサンキューは、おしぼりやシーツ、タオルをはじめとするリネン品を貸し出しするリネンサプライ事業者であり、繰り返し使えるリネン品を提供することで、循環型ビジネスの構築に貢献している。リネン品の種類や汚れの状態に応じた洗浄等で、リネン品の寿命を延ばして使用サイクルの向上を図っているほか、消耗や劣化したリネン品はウエス(雑巾)として再利用することで、資源の有効活用にも取り組んでいる。衛生基準に定められたクリーニング処理で、清潔衛生的なリネン品を供給し、処理工程で発生する CO2 排出や洗濯排水に対しては、省エネ設備や排水処理設備等を導入することで環境負荷の低減に努めている。
また、従業員の約 40%となる 24 名の障がい者を雇用するなど、障がい者雇用にも積極的に取り組んでいる。専門的な知識を有する障害者職業生活相談員(以下、相談員)が 2 名在籍して、働きやすい職場環境を整備し、「重度障害者多数雇用事業所」の認定を取得している。
さらに、一般消費者向け、病院や介護福祉施設向けといった、さまざまなリネン品に対応できる体制を整えているほか、独自システムであるバーコード管理システムを導入することで、作業効率を改善し、取引先の利便性向上につながるサービスも提供している。
リースサンキューのサステナビリティ活動等を分析した結果、ポジティブ面では「健康・衛生」、「教 育」、「雇用」、「資源効率・安全性」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」が、ネガティブ面で は、「健康・衛生」、「雇用」、「水(質)」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」がインパクト領域として特定され、そのうち環境・社会・経済に対して一定の影響が想定され、リースサンキューの持続可能性を高める8つの項目について KPI が設定された。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
金額 | 152,700,000 円 |
資金使途 | 設備資金 |
モニタリング期間 | 10 年 |
企業名 | 株式会社リースサンキュー |
所在地 | xxxxxxxxx 0000 xx 00 |
事業所 | 本社工場 xxxxxxxx 0000 xx 0大xx工場 xxxxxx 000 xx 0 静岡営業所 xxxxxxxx 0 xx0xx0‐000 浜松営業所 xxxxxxxxx 00 xx 0 |
従業員数 | 61 名(男性 44 名、女性 17 名) うち障がい者 24 名 |
資本金 | 4,100 万円 |
業種 | リネンサプライ事業雑貨販売事業 障がい者就労支援事業 |
取扱品目 | <リネンサプライ> 高級貸おしぼり、ロールタオル、玄関マット、香料(xx剤)、ユニフォームレンタル <雑貨販売> 料理道具、消耗雑貨、厨房機器、各種紙製品、各種業務用洗剤 |
グループ会社 | 特定非営利活動法人静岡県障がい者自立支援センター就労継続支援 A 型事業所「アイサンキュー」 |
認定・表彰 | 重度障害者多数雇用事業所 厚生労働大臣表彰(障害者雇用優良事業所等全国表彰式) |
主要取引先 | 〈飲食店〉 株式会社xx、株式会社コメダ、株式会社ヨシックス、株式会社xx japan、株式会社セント・リングス 〈ホテル・旅館・式場関連〉 xxx館、あせび野、xx北の丸、富士山xx東急ホテル、沼津リバーサイドホテル 〈病院・介護福祉施設関連〉 医療法人社団 R&O xxリハビリテーション病院、 医療法人社団xx会山の上病院、藤枝市立総合病院、社会福祉法人天竜厚生会 〈レジャー施設関連〉 太平洋クラブ御殿場コース、xxゴルフ倶楽部、 東名カントリークラブ、グランフィールズカントリークラブ、株式会社 ABC 〈一般企業〉 芝浦機械株式会社、創輝株式会社、ワタキューセイモア株式会社、株式会社レンティック中部、株式会社ヤマシタ |
沿革 | 1964 年 個人事業としてロールタオルのリネンサプライ事業を創業 1967 年 貸おしぼり事業を開始し、リースサンキューに改名 1984 年 リースサンキューの仕入販売部門を独立し㈱🖃武を設立 1985 年 ㈱🖃武が個人事業部門のリースサンキューを吸収 ㈱リースサンキューに改名 1995 年 本社工場を新設 1998 年 静岡営業所を開設 1999 年 浜松営業所を開設 2006 年 重度障害者多数雇用事業所の認定取得 2009 年 大xx工場を新設 2010 年 障害者雇用優良事業所等全国表彰式で厚生労働大臣賞を受賞 2011 年 特定非営利活動法人静岡県障がい者自立支援センターを設立 2012 年 就労継続支援 A 型事業所「アイサンキュー」を開所 |
(2022 年9月 30 日現在)
1. 事業概要
(1) 事業内容
リースサンキューは、おしぼりやシーツ、タオルをはじめとするリネン品を貸し出しするリネンサプライ事業者であり、清潔で衛生的なリネン品を供給することで、取引先の事業運営を支えている。リネンサプライ事業は、売上全体の約 80%を占めるメイン事業であり、飲食店を中心にホテルや病院、介護福祉施設、一般企業等の取引先に供給している。それ以外の事業は、消耗品を販売・配達する雑貨販売事業と、障がい者へ就労場所を提供する障がい者就労支援事業から構成されている。
売上構成 リネンサプライ事業の売上構成
区分 | 割合 | |
リネンサプライ 事業 | おしぼり | 35% |
その他(タオル等) | 45% | |
雑貨販売事業 | 15% | |
障がい者就労支援事業 | 5% | |
合計 | 100% |
業種 | 割合 |
飲食店 | 50% |
ホテル、旅館、式場 | 15% |
病院、介護福祉施設 | 15% |
レジャー施設 | 10% |
一般企業 | 10% |
合計 | 100% |
(2) リネンサプライ事業
リネンサプライ事業は、事業者が保有するリネン品を取引先へ貸し出し、使用済みのものを定期的に回収し、洗濯と仕上げを施して再び貸し出すといったサイクルを繰り返す。取引先は、リネンサプライを利用することでリネン品や洗濯機器などの初期投資が不要になり、補充や交換等の管理作業も軽減できることから、資金や人員を本業へ集中させることが可能になる。
リースサンキューは、先代社長であるxxxxxがロールタオルのリネンサプライ事業を始めたこと をきっかけに 1964 年に創業した。その後、おしぼりや飲食店の厨房用リネンなど品目を増やし、現在では高級おしぼりやロールタオル、玄関マット、ユニフォーム等を取り扱っている。沼津市に 3 つの洗濯工場と配送センターを、静岡市と浜松市に営業拠点を保有することで、迅速かつ効率的に供給ができる体制を整えている。また近年は、病院や介護向けのリネンサプライにも注力しており、介護施設向けに私物クリーニングも展開している。このように、さまざまなリネン品を迅速かつ安価に提供できることが、同社の強みになっている。
クリーニング工程は、主に「回収・仕分け」、「洗浄・脱水」、「乾燥」、「仕上げ・検品」、「包装」、
「配送」の6つに分けられる。まず、使用済みのリネン品は、種類や汚れに応じて仕分け、適切な温度管理と溶剤管理のもとで洗浄及び脱水し、乾燥処理がなされる。次に、プレス加工などの仕上げを施し、作業員による目視で一つひとつのリネン品に汚れや異物がないか検品する。最後に、おしぼり等の包装が必要なものは包装したうえで配送センターへ集約し、取引先へ出荷される。
(3) 雑貨販売事業
リネン品の供給先に対して、料理道具や業務用洗剤等の雑貨を販売している。取引先の利便性向上につながるサービスを提供したいという想いから、本事業を開始した。当初は、洗剤の販売が中心であったが、取引先の要望を聞くなかで、商品ラインナップを拡大し、多様な商品を取り揃えるようになった。「ラップ1本でも配達する」といった、きめ細やかなサービスで取引先と信頼関係を築き、リ ネンサプライ事業との相乗効果につなげている。
取扱商品 | 主なラインナップ |
料理道具 | 鍋、まな板 |
消耗雑貨 | 串、楊枝、エプロン、紙コップ、卓上用品、会計伝票、感熱レジロール、 スポンジ、タワシ、ふきん、ダスター、グローブ、ゴミ袋、ポリ袋、箸、箸袋 |
厨房機器 | 燃料類、厨房消耗品、シューズ |
各種紙製品 | トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ペーパータオル |
各種業務用洗剤 | 漂白除菌剤、食器用洗剤、設備用洗剤、手指・洗濯用洗剤 |
(4) 障がい者就労支援事業
障がいをもつ人たちの自立と社会参加を支援するために、就労場所を提供している。グループ会社である静岡県障がい者自立支援センター就労継続支援 A 型事業所「アイサンキュー」から一般就労を目指す障がい者を同社で受け入れている。
(1) 社是・品質方針
リースサンキューは、「我社は業界の発展に奉仕する為、一心同体、誠実本位、優れた製品を生産供給する」を社是として掲げている。優れた製品を供給するために、「社員全員の力で品質の向上を図り、お客さまに信頼と満足される体制づくりをします」という品質方針を設けている。
(2)おもてなし文化の体現
リネンサプライ事業は、日本人の客人をもてなすという「おもてなしの文化」が生み出したビジネスといわれている。例えば、貸おしぼりの需要の根底には、単に手指を拭く道具というだけではなく、布おしぼりがもつ「清潔感」、「安心感」、「くつろぎ感」の提供が存在している。清潔で衛生的なおしぼりを提供することは、日本を象徴するおもてなし文化のひとつとして捉えられており、「おもてなしの心」を 体現するために、一つひとつのリネン品に心をこめながら作業に当たっている。
(1) 市場特性
リネンサプライ市場は、リネン品の使用回数と連動するため、取引先の業界動向に左右される特性をもつ。経済産業省が公開している第三次産業活動指数をみても、リネンサプライ業は、取引量の大きい飲食業や宿泊業と連動しており、現在は新型コロナウイルス発生以前の生産活動までは回復していないことが確認できる。
一方で、さまざまな業界の企業と取引機会がある業種であり、市場トレンドに応じた供給体制を整えることが重要になる。とくに、介護向けリネンサプライ市場は、高齢化を背景に需要が高まることが想定されている。例えば、在宅の要介護者に対して入浴の介護を行う訪問入浴介護では、入浴に合わせて交換するシーツ等を事業所内で洗濯する負担が大きく、外部委託するケースが多い。また、介護福祉施設では、施設内でのリネン品や私物などの洗濯処理は、施設スタッフにとっても業務負担が大きく、外部委託するケースが多い。コロナ禍による面会自粛で面会者の持ち帰りによる洗濯が減少したことで、そうしたニーズが更に高まっている。
このように、リネンサプライ業者は市場トレンドによる需要の変動に対して、柔軟に対応できる体制を整えることで、経営の安定化につながると考えられる。
リースサンキューでは、介護福祉施設向けのリネンサプライや私物クリーニングの展開を強化することで、さまざまな業種に供給できる体制を整えている。また、今後は訪問入浴介護や介護老人保健施設向けにリネン品を提供していくことを検討している。
(2) 環境意識の高まり
リネンサプライ業においても環境に配慮した経営が求められている。クリーニング工程においては、洗濯するために多くの水を使用し、温水や乾燥に必要な熱を創出するために多くのエネルギーや燃料を
使用するほか、クリーニング溶剤などの化学物質も使用する。そのため、環境負荷を低減するための取組みを強化していく必要がある。
また、繰り返し利用ができる布おしぼりやリネン品は、引き合いが増えていくことが想定される。全国おしぼり協同組合連合会によると、使い捨ての紙おしぼりは年間で 29 億枚近く、外袋とともに廃棄されている。循環型社会を目指すなかで、リネン品の提供は、資源の有効活用につながる取組みであり、環境意識が高まるなかで、リネン品に対する注目は今後ますます高まる。
リースサンキューでは、水の再利用、省エネ設備の導入、重油からガスへの燃料の切替、溶剤の適正管理やリネン品の提供を行い、環境への負荷を低減している。
(3)衛生意識の高まり
リネン品は多くの人が触れるものであることから、クリーニング所における衛生管理要領や業界団体が定める衛生基準に基づいた洗浄を行い、衛生管理を徹底することが求められる。新型コロナウイルスをきっかけに、人々の衛生意識は高まっている。内閣府の「第 5 回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、手洗いやアルコール消毒等の衛生管理について、感染症収束後も継続したいと回答した割合は 77.1%と高く、今後も高い衛生意識が続いていくと見られる。そのため、衛生におけるさまざまなニーズに対応することが求められる。
リースサンキューでは、衛生マークの取得、取引先への衛生管理指導を行い、高い衛生水準を維持している。
(4)原材料価格の高騰
リネンサプライ市場は、燃料費の高騰による配送コストの上昇やエネルギー価格の高騰による生産コストの上昇、綿花価格の高騰による資材コストの上昇など、さまざまな課題に直面している。業務見直しや生産性向上を進め、コスト削減に取り組むことが求められる。また、付加価値の提供や適性な価格交渉による収益性の改善も求められる。
リースサンキューでは、配送の効率化や省エネ設備の導入を行い、効率性を向上しているほか、さまざまなリネン品の対応、雑貨販売や私物クリーニングの展開で付加価値の提供に努めている。
(1) 障がい者雇用
静岡県では、都道府県ごとに策定が義務付けられる障害福祉計画等として、「ふじのくに障害者しあわせプラン」を策定し、県内企業の障がい者雇用を推進している。静岡労働局によると、2022年 6 月 1 日現在、民間企業の雇用障がい者数は 13,686.5 人と過去最高を更新している。
一方で、障害者雇用促進法で雇用が義務付けられている企業 3,152 社のうち、法定雇用率を達成していない割合は 48.1%に上る。県内企業における達成企業割合(51.9%)は、全国平均である 47.0%を上回っているものの、順位でみれば全国 31 位にとどまっている。雇用が進まない企業側の課題には「障害者を雇用するイメージやノウハウがない」、「従業員が障害特性につい
て理解することができるか」、「採用時に適性・能力を十分把握できるか」、「会社内に適当な仕事があるか」等が挙げられる。さらに、就職後の定着率にも問題を抱えている。独立行政法人高齢・障 害者・求職者雇用支援機構によると、入社 1 年後には知的障がい者で約 30%、精神障がい者で約 50%が離職してしまっており、障がい者雇用の促進に向けては、さまざまな課題が存在する。
リースサンキューは、採用、教育、働く意欲の向上、社内交流といった面で、さまざまな取組みを 行うことで法定雇用率を達成するだけでなく、2006 年には重度障害者多数雇用事業所の認定を取得している。重度障害者多数雇用事業所とは、「障害者の雇用者数が 5 人以上」、「障害者の割合が従業員の 20%以上」、「雇用障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が 30%以上」といった要件があり、障がい者を多数継続して雇用し、安定した雇用を 継続することができると認められた事業者のみが取得できる認定である。人手不足が深刻化していくなか、障がい者を含めた多様な人材を雇用していくことは、企業の社会的責任や持続的社会の実
現に向けた取組みとしても意義が大きく、同社は、障がい者雇用における先進企業として、地域課題の解決に貢献している。
(2)沼津市環境基本計画
沼津市は、2021 年度から 2030 年度を計画期間とした「第 2 次沼津市環境基本計画」を策定している。この計画は「脱炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」、「環境教育」の4つの目指す社会と、「低炭素社会で暮らしやすいまち」、「気候変動に適応するまち」、「資源が循環するまち」、「自然や豊かな生態系が持続するまち」、「快適な生活環境のまち」、「環境を大切にする人づくり」の6つの環境目標を設定し、沼津市の自然・社会的条件を考慮した環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としている。また、市・市民・事業者・滞在者が一体となって取組みを進めていく上での指針となるなど、重要な役割を果たしている。
リースサンキューが取り組む活動のうち、省エネ設備の導入や配送ルートの効率化は「脱炭素社 会」に、リネン品の使用サイクル向上や消耗・劣化したリネン品の別用途販売は「循環型社会」に、適切な排水処理は「自然共生社会」に資する活動であり、地元である沼津市の抱える課題解決に貢献している。
目指す社会 | 環境目標 | 取組みの方向 |
脱炭素社会 | 低炭素社会で暮らしやすいまち | ・総合的な地球温暖化対策 ・低炭素な交通の普及とまちづくり ・省エネルギーの推進と再生可能エネルギーの普及 ・二酸化炭素の吸収促進 |
気候変動に適応するまち | ・健康、産業・経済活動、市民社会・都市生活に関する適応 ・農業・林業・水産業に関する適応 ・水環境・水資源に関する適応 ・自然生態系に関する適応 ・自然災害・沿岸域に関する適応 | |
循環型社会 | 資源が循環するまち | ・ごみ減量化・資源化 ・適正なごみの収集・処理 ・不法投棄・ポイ捨て対策 ・漂流ごみ対策 |
自然共生社会 | 自然や豊かな生態系が持続するまち | ・自然環境調査の実施と生物の保全・管理 ・自然とのふれあいの促進 ・美しい自然景観の保全 ・生態系の保全 |
快適な生活環境のまち | ・水環境の保全 ・大気環境の保全 ・騒音・振動・悪臭への対策 ・公害への対応と化学物質処理 | |
環境教育 | 環境を大切にする人づくり | ・環境教育の推進 ・環境保全活動の促進 ・環境情報の発信・活用 ・協働による計画推進 |
資料:第 2 次沼津市環境基本計画をもとに当所作成
2. サステナビリティ活動
(1) 循環型ビジネスの構築
リースサンキューが営むリネンサプライ事業は、供給するリネン品を使い捨てにせず、繰り返し使うことから循環型ビジネスの構築につながっている。また、リネン品の使用サイクルを高めるために、「適切な洗浄」、「正しい利用方法の教育」、「回収率の向上」の3つの側面で工夫している。
まず、「適切な洗浄」では、選別工程による汚れの見極めと、汚れの種類に適した洗浄をしてい る。集配担当者であるルートスタッフが、回収時にリネン品の状態を確認し、汚れのひどいものは別のケースに分別したうえで工場に運搬している。また、汚れ具合に応じて積み下ろし場所を定めてお り、工場スタッフが汚れの種類に適した洗浄ができる体制になっている。こうした取組みで、検品工程で不備が見つかり、再度洗浄し直すといった事象を防ぎ、リネン品の寿命を延ばしている。
次に、「正しい利用方法の教育」では、ルートスタッフが取引先に対して、リネン品の劣化を防ぐための指導を行っている。例えば、回収時に汚れやニオイを確認し、本来手を拭くためのものであるおしぼりが、掃除等に使用された形跡が見られる場合は注意を呼び掛けている。このような目的以外の使用は、リネン品の寿命を縮めてしまうことから、継続的な指導を心がけている。また、リネン品が不正に使われないために、用途に合わせてウエスなどの代替品を提案するといったフォローも行っている。
そして、「回収率の向上」では、ルートスタッフが回収時に、リネン品が入った籠の重さで数量を把握できるように訓練をしているほか、回収率が低い取引先に対しては、納入した数と回収した数を把握して紛失請求を行うとともに、原因を追究して改善に向けた指導や提案を行っている。こうした取組みの結果、回収率が約 95%と高い水準になっている。
このような取組みを継続することで、リネン品の寿命を延ばすことができ、資源の有効活用につながっている。
(2) 気候変動対策
リースサンキューの事業活動では、洗濯や乾燥、アイロニングによる仕上げといったクリーニング工程とリネン品を集配する配送工程で CO2 が多く排出されている。クリーニング工程では、温水製造や乾燥に必要な熱を創出するために多くのエネルギーを使用し、配送工程では、リネン品を沼津市の 工場から静岡県内全域に配送するため多くの燃料を使用する。同社は、CO2 の排出を抑制するために、各工程において対策を講じている。
まず、クリーニング工程で使用する設備については、従来は重油式で、使用燃料も多いものを使用していたが、2018 年までに洗濯機や乾燥機といった全ての設備をガス式に切り替えている。さら に、2022 年 11 月には最新の低炭素機器であるガス直結式乾燥機も導入することで、乾燥時間を半分に短縮、1 回当たりの洗濯重量も増加させ、大幅に生産能力を向上させる。また、排気の再利用も可能になるため、従来と比較して約 40%の使用燃料の削減も見込まれている。このような燃料の転換や生産能力向上に向けた同社の取組みは、CO2 排出量の削減に寄与している。
次に、配送においては配送歴 20 年以上の社長が営業時間内に効率的に配送できるルートを作成のうえ、そのルートに従ってルートスタッフが配送している。ルートスタッフは、取引先への配送が完了した都度、所定の端末に時刻を記録することで、「いつ、どこで、誰に」に配送したかを把握できる仕組みになっている。実際の時刻と想定時刻に乖離がある場合は、ルートスタッフとともに原因を追 究し、配送ルートの改善を図っている。このように PDCA サイクルを回し効率的な配送ルートを策定することで、配送時の CO2 排出量削減に努めている。また、浜松営業所が回収したリネン品を、沼津市の洗濯工場へ輸送する際には、営業所内で集約して、10t トラックで運ぶことで燃料使用量を削減している。
(3) 環境汚染リスクの低減
リースサンキューは、環境汚染リスクの低減に向け、さまざま対策に取り組んでいる。排水処理設備を導入することで、洗濯で使用した排水をスクリーンに通してリント(糸くず)を除去し、pH 調整制御装置を使用して中性にしたうえで排出している。定期的な水質点検も行い、行政で定められた基準値内に管理されている。
また、洗いゾーンとすすぎゾーンに区分された計 9 槽(予洗 1 槽、温洗 4 槽、すすぎ4槽)か ら構成され、決められたサイクルで洗濯物を移転することで洗濯工程が連続化できる連続洗濯機を導入し、水の再利用を図っている。すすぎ槽から排出される洗濯水は、連続洗濯機の内部できれいにリサイクルされ、予洗槽に供給する予洗水として再利用される。さらに、洗濯槽の温度を上げるための蒸気投入口には、サイレンサーを設定して騒音にも配慮している。
(4) 廃棄物の削減、資源の有効活用
リースサンキューは、消耗や劣化により、リネン品としての役割を終えたものを、ウエス等の別用途で再販売することで、資源の有効活用に取り組んでいる。おしぼりについては、新品の重量と比較して 20%減少することを転用基準とし、検品工程のなかで目視確認や触感確認で選別を行い、乾燥処理を加えた後、飲食店向けに再販売している。おしぼり以外のリネン品についても、専門の取扱
業者へ販売して、加工した後に再販売されている。このような取組みで、消耗や劣化したリネン品の別用途への転換率は 100%であり、廃棄物の削減と資源の有効活用を図っている。
また、一部のおしぼりの包装には、複数本をまとめて包装するエコパック包装を施すことで、包装フィルムの削減に取り組んでいる。事業所などで発生するごみの分別を行い、資格を有する廃棄物処理業者に委託して適正処理をしているほか、FAX を受信するときにコピー用紙の裏紙を利用するなど、社内のペーパーレス化も推進している。
(1) 障がい者雇用
リースサンキューは、障がい者の雇用促進に積極的に取り組んでいる。障がい者が自立できる場を提供したいという想いから、1987 年に雇用を開始した。教えたことに対して一生懸命に取り組む姿に感銘を受け、2001 年頃から受け入れを増やし、現在では全従業員の約 40%となる 24 名
(身体障がい者 1 名、知的障がい者 23 名)を雇用している。障がい者の特性を理解し、苦手とされる複雑な作業を、機械によって簡素化することで、おしぼりの包装工程、リネン品を乾燥機やアイロニング設備に投入する工程等、さまざまな工程を担えるようになっている。同社には、専門的な 知識を有する相談員が社長を含め 2 名在籍しており、働きやすい職場環境を整備するために、
「採用」、「教育」、「働く意欲の向上」、「社内交流」といった 4 つの側面で工夫している。
まず、「採用」では、丁寧な面接で個人の資質を確認し、能力に応じた支援を展開している。ハローワーク等を通じて一般就労の相談があった障がい者に対しては、相談員と人事担当者等が保護者を交えて面接を実施し、資質を見極めたうえで配置を決め、3カ月間の試行雇用期間を設けたトライアル雇用を開始している。トライアル期間中に、本人の適正や意思を確認し、正式な入社につなげている。
次に、「教育」では、生活面での行動を含めて、さまざまな指導を行っている。とくに社会的ルールやxxxは、将来的に自立を目指すに当たって重要になるため、日常の挨拶から、人との関わり方まで会社内でも指導している。業務面では、「汚れや破れがあるものは、所定の籠に入れる」といった 分かりやすい指導で、知的障がいのある従業員が混乱せずに業務を遂行できるようにしている。このような指導をした後は、本人の様子を細かく観察し、良い兆候が見られたときには褒めることで、成 長を促している。また、相談員は日々の業務を観察しながら、メンタル的な面で問題を抱えていそうな兆候が見られる場合には面談して心のケアを行い、技術的な面であれば、援助者にマンツーマンで指導を依頼している。場合によっては配置転換も行い、一人ひとりの能力を最大限に発揮できるようにサポートしている。最終目標である自立を目指して、本人の自立意識を向上させつつ、毎日 少しずつ成長していける環境を整えている。
そして、「働く意欲の向上」では、おしぼりの包装作業において、包装した枚数を計測するカウンターを機械に取り付け、業務の成果や個人の生産性を見える化できる仕組みを構築することで、モチベーション向上が図られている。目標枚数に対する結果と反省点を記載して、相談員からフィードバ
ックを受けることで、自身の取組みを反省する力も育成している。自身が、家族に対して日々の結果を報告して、褒められることで、さらなるモチベーション向上が図られている。
最後に、「社内交流」では、ボウリング大会やバス旅行といった社内レクリエーションを年 4 回実施しており、障がい者同士の交流を増やすことで、一体感を醸成している。障がい者が多数在籍する同社は、日々の業務やレクリエーションを通して、仲間同士のコミュニケーションが盛んに行われてお り、「会社=交流の場」となることで、会社に来ることが楽しくなるような環境が築けている。
このように、障がいのある従業員が安心して充実感のある仕事を行える工夫をすることで、障がい者の勤続年数は平均 17 年(最長 35 年)と、長期雇用を実現している。こうした取組みが評価され、2002 年に静岡県知事より褒状を、2006 年には重度障害者多数雇用事業所の認定を、 2010 年には障害者雇用優良事業所等全国表彰式で厚生労働大臣表彰を受賞している。
(2) 衛生的なリネン品の提供
リースサンキューは、全国おしぼり協同組合連合会が制定する「衛生マーク」を取得している。衛生マークとは、厚生労働省が定める衛生基準に沿った処理が施された製品を意味しており、厳しい
衛生検査をクリアした事業者のみ使用が許可されている。検査は、衛生面の要注意時期である 5月、6 月、7 月、9 月の年 4 回実施され、おしぼりの色や臭い、形状等を調べる官能検査と細菌の数を生物学的に調べる細菌検査が行われる。そのため、xxxxxは清潔で衛生的なおしぼりである証とされている。
同社は、こうした衛生基準で定められた処理基準に従い、リネン品の種類や汚れの程度に応じたクリーニング処理を行っている。同社が導入している洗濯機は、機械による温度管理システムが搭載されており、衛生基準に定められた温度と時間で洗浄できる仕組みになっている。
また、使用する設備は定期的な泡洗浄などの清掃やメンテナンスが行われており、衛生的なリネン品を継続して提供できる体制になっている。リネン品を配送するケースについても使用する都度、洗浄と消毒を施している。
資料:全国おしぼり協同組合連合会
また、同社は取引先での保管方法にも配慮して衛生管理を行っている。取引先の保管状態によっては、未使用のリネン品であっても衛生面の問題が発生するケースがある。例えば、おしぼりの品質維持のためには、「貸与後 4 日過ぎた製品は、客に提供しないこと」や「未使用の製品は、客に提
供する前に加温する場合を除き、4℃以下に保存することが望ましいこと」等の条件が存在する。そのため、ルートスタッフは取引先での保管管理まで確認を行い、不十分な場合は指導することや、保管用機器の導入提案等も行っている。
さらに、クレームの適切な事後対応と社内共有を徹底することで、品質向上に向けた体制を整えている。事後対応では、クレームの内容ごとに想定できる要因、取引先への確認事項、対処・予防方法を一覧にまとめて従業員が適切に対応できるよう努めている。クレームは社内システムで共有され、全員が閲覧できる環境を整備しており、要因として特定された工程を担当する従業員に対し て、同じミスを繰り返さないように注意を呼びかけるほか、クレームを受けた取引先に対しても、再発防止策をまとめた書面を提示し、安心感を与えている。
(3) 労働環境の整備
リースサンキューは、安心で安全な労働環境を整備している。作業現場へのクーラーや扇風機の設置や、アイロニング設備であるシーツ投入機にファンを設置することで熱をもった空気を外部へ直接排出するなど、工場内の暑さ防止に努めている。
また、あらゆる世代の社員が働きやすい職場環境にするために、年間で最大 30 日の有給休暇制度や育児・出産休暇制度を設けている。有給休暇取得に当たっては希望日の3日前に申請すれば、誰でも取得できる体制にしている。
労働安全対策としては、設備の修理や不具合時に、必ず機械を停止してから修繕作業を行うことや荷台を引いて運ぶことで死角を減らすことなどを徹底している。また毎年、保険会社の社員を招き、交通安全に関する研修を社員全員に対して実施して、交通事故防止に取り組んでいる。こうした取組みにより、一般社団法人静岡県安全運転管理協会から、令和 4 年度の「優良安全運転管理事業所」として表彰されている。このような取組みを通して労働災害件数は 10 年以上の間、
0件を継続している。
(4)人材育成
リースサンキューは、全国おしぼり協同組合連合会が主催する研修に、毎年社員を参加させ、おしぼりアドバイザー資格の取得支援を行っている。おしぼりアドバイザー資格とは、集配管理、在庫管理、取引先への衛生教育、クレーム対応など多岐の業務をこなすルートスタッフ向けの資格であり、基礎知識に加え、具体的な対応方法や管理方法を学べることから、他社と差別化できる人材育 成につながっている。同社では、これまでに計 13 人が資格を取得している。
また、同社の代表である🖃xxxxは、全国おしぼり協同組合連合会で上記の研修運営やテキストの作成にも取り組んでいる。作成に関わったテキストは社内の従業員教育に活用されており、正しい知識を身につけたことで、取引先に対して正しい提案や使用方法を案内できるようになった従業員が増加し、リネン品の寿命延長にもつながっている。
(1) 高付加価値なサービス
リースサンキューは、ホテルリネンと病院リネンの双方を迅速に供給できる体制を整えている。ホテルリネンとは飲食店やホテル等の一般消費者向けのリネン品であり、病院リネンとは病院や介護福祉施設等の福祉関連向けのリネン品を指す。病院リネンは、洗浄温度の違いなどから、処理ラインをホテルリネンと区分することが必要であり、高い衛生水準が求められるため、どちらか一方に対応する事業者が多いとされている。同社は、介護福祉施設向けのリネンサプライや私物クリーニングの展開を強化することで、双方のリネンに対応できる体制を整えており、取引先の利便性向上につながっている。
独自のシステムであるバーコード管理システムも導入しており、作業効率の改善とミスの削減を実現している。バーコード管理システムとは、私物と洗濯ネットに独自のバーコードを取り付け、入荷及び出荷の際にバーコードリーダーで読み取ることで、コンピュータ上で各私物の情報を管理できるシステムである。介護施設等から預かる私物のクリーニングにおいては、洗浄工程のなかで複数の顧客の私物が混在してしまうことが多い。一般的には、取り違い防止のために私物に所有者の名前を記載し、乾燥後に所有者ごとの仕分けを行うため、仕分けに時間を要するうえ、人為的なミスが発生してしまうことが課題になっている。同社は、7年前よりバーコード管理システムを導入しており、私物と個人を結びつけて返却ミスを防いでいるほか、各私物ごとの納期がデータ上で管理されていることで納期厳守もなされている。また、各私物が「いつ入荷され、いつ出荷したのか」を把握することができるため、顧客から問い合わせがあった際にも適切な対応が可能になっている。さらに、利用回数や量に応じて、個人毎に請求データを作成することもできるので、介護施設スタッフ等の利用者の管理負担を
軽減する付加価値の高いサービスを提供している。
そのほか、布おしぼりの衛生面における特徴を訴求することで、紙おしぼりとの差別化を図ってい る。衛生マークのついたおしぼりは、次亜塩素酸ナトリウムを使用した消毒処理がなされていることから、一定の殺菌効果があることが全国おしぼり協同組合連合会で実証されており、布おしぼりでしっかり拭うと 99.9%の減菌効果があることが証明されている。また、アルコール剤を使用する前に布おしぼりで手指の汚れを拭き取ると減菌効果が上昇することが証明されている。全国おしぼり協同組合連合会では、こうした効果を記載したチラシを作成し、おしぼりに対する正しい理解の啓発に取り組んでおり、同社においても、このようなチラシを活用して取引先に案内することで、紙おしぼりとの差別化を図っている。
資料:全国おしぼり協同組合連合会
3. 包括的分析
UNEP FI のインパクト分析ツールを用いて、リースサンキューのリネンサプライ業を中心に、網羅的なインパクト分析を実施した。その結果、ポジティブ・インパクトとして「健康・衛生」、「雇用」、「資源効率・安全性」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」が、ネガティブ・インパクトとして「雇用」、
「廃棄物」が抽出された。
リースサンキューの個別要因を加味して、同社のインパクト領域を特定した。同社のサスティナビリティ活動に関連のあるポジティブ・インパクトとして「教育」を、ネガティブ・インパクトとして「健康・衛 生」、「水(質)」、「資源効率・安全性」、「気候」を追加した。
【特定されたインパクト領域】
UNEP FI のインパクト分析ツールにより抽出されたインパクト領域 | |||
ポジティブ | ネガティブ | ||
入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 (一連の固有の特徴がニーズを満たす程度) | |||
水 | |||
食糧 | |||
住居 | |||
健康・衛生 | |||
教育 | |||
雇用 | |||
エネルギー | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
文化・伝統 | |||
人格と人の安全保障 | |||
xx | |||
強固な制度・平和・安定 | |||
質(物理的・化学的構成・性質)の有効利用 | |||
水 | |||
大気 | |||
土壌 | |||
生物多様性と生態系サービス | |||
資源効率・安全性 | |||
気候 | |||
廃棄物 | |||
人と社会のための経済的価値創造 | |||
包括的で健全な経済 | |||
経済収束 |
個別要因を加味し 特定されたインパクト領域 | |
ポジティブ | ネガティブ |
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性
リースサンキューのサステナビリティ活動のうち、ポジティブ面のインパクト領域としては、リネンサプライ事業による循環型ビジネスの構築が、「資源効❹・安全性」に該当するほか、障がい者雇用の促進や従業員への人材育成が、「教育」、「雇用」、「包括的で健全な経済」に資する取組みと評価 される。また、さまざまなリネン品への対応やバーコード管理システムの導入による高付加価値なサービスの提供が、「健康・衛生」、「経済収束」に該当する。
一方、ネガティブ面においては、適切な排水処理による環境汚染リスクの低減が、「水(質)」に該当する。消耗・劣化したリネン品の別用途販売、ごみの分別が「資源効❹・安全性」、「廃棄 物」への貢献が認められるほか、気候変動対策やエネルギー使用量の削減が「気候」に資する取組みと評価される。また、衛生的なリネン品の提供や労働環境の整備が「健康・衛生」、「雇用」に該当する。
UNEP FI のインパクト評価ツールを用いたインパクト分析結果を参考に、リースサンキューのサステナビリティに関する活動を同社の HP、提供資料、ヒアリング等から網羅的に分析するとともに、同社を取り巻く外部環境や地域特性等を勘案し、同社が環境・社会・経済に対して最も強いインパクトを与える活動について検討した。そして、同社の活動が、対象とするエリアやサプライチェーンにおける環境・社会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に最も貢献 すべき活動を、インパクト領域として特定した。
4. KPI の設定
特定されたインパクト領域のうち、環境・社会・経済に対して一定の影響が想定され、リースサンキューの経営の持続可能性を高める項目について、以下の通り KPI が設定された。
インパクトレーダーとの関連性 | 資源効率・安全性 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 循環型ビジネスの構築 |
取組内容 | リネンサプライ事業による循環型社会への貢献 |
SDGs との関連性 | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 |
KPI(指標と目標) | ① 2027 年までに、リネンサプライ事業の売上高を、現状の 481 百万円から 17%増加させ、563 百万円を達成する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 気候 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 気候変動対策 |
取組内容 | 最新の低炭素機器であるガス乾燥機の導入、重油からガスへの燃料の切替や配送効率化による CO2 排出量の削減 |
SDGs との関連性 | 13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 |
KPI(指標と目標) | ① 2025 年までに、CO2 排出量の測定を開始し、削減目標を設定する。 ② 2032 年までに、ガス直結式の乾燥機を、現状の2台から 6台増加させ、8台を達成する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 資源効率・安全性、廃棄物 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 廃棄物の削減、資源の有効活用 |
取組内容 | 消耗・劣化したリネン品の別用途販売、ごみの分別、廃棄物の適正な処理、ペーパーレスの取組み |
SDGs との関連性 | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削 減、再生利用及び再利用により、廃棄物の 発生を大幅に削減する。 |
KPI(指標と目標) | ① 消耗・劣化したリネン品について、ウエス等への転換率 100%を維持する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 教育、雇用、包括的で健全な経済 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 障がい者雇用の促進 |
取組内容 | 障がい者が安心して働ける環境整備、障がい者の積極的な雇用 |
SDGs との関連性 | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 4.5 2030 年までに、教育におけるジェンダー格差 を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての 男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及 |
び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。 8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を 促進する。 | |
KPI(指標と目標) | ① 「重度障害者多数雇用事業所」の認定を維持する。 ② 2032 年までに、障がい者雇用者数を現状の 24 人から、 10 人増加させ、34 人を達成する。 ③ 障がい者雇用の促進につながる勉強会や情報発信を年 3件実施し、他社へノウハウを提供する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 教育 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 人材育成 |
取組内容 | マニュアルを活用した教育、ルートスタッフの育成、資格取得や研修体制の整備 |
SDGs との関連性 | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルな ど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の 割合を大幅に増加させる。 |
KPI(指標と目標) | ① 2032 年までに、おしぼりアドバイザー資格者数を、現状の 13 人から 10 人増加させ、23 人を達成する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 衛生的なリネン品の提供 |
取組内容 | 衛生基準への対応、衛生マークの取得、クレーム対策と再発防止に向けた取組み |
SDGs との関連性 | 3.3 2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の 感染症に対処する。 |
KPI(指標と目標) | ① 厚生労働省の指導基準に沿った処理を行い、全国おしぼり協同組合連合会で制定されている「衛生マーク」を維持 する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生、雇用 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 労働環境の整備 |
取組内容 | 有給休暇取得の促進、労災対策に向けた取組み、交通安全啓発活動 |
SDGs との関連性 | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働 環境を促進する。 |
KPI(指標と目標) | ① 労働災害の発生件数を 0 件で維持する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生、経済収束 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 高付加価値なサービス |
取組内容 | さまざまなリネン品の対応、バーコード管理システムによる誤納入や誤返却の防止 |
SDGs との関連性 | 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経 済生産性を達成する。 |
KPI(指標と目標) | ① 2027 年までに、リネンサプライ事業の訪問入浴介護及び介護老人保健施設向けの売上高を 93 百万円にする。 |
5. 地域経済に与える波及効果の測定
リースサンキューが本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、目標とする 10 年後の売上高を 8 億円に、従業員数を 80 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この
目標を達成することによって、リースサンキューは、静岡県経済全体に年間 14 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
6. マネジメント体制
リースサンキューでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むに当たり、🖃xxx代表取締役が陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーやSDGsとの関連性、KPIの設定について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、🖃xxx代表取締役を最高責任者として陣頭指揮を執るとともに、常務取締役や営業課長が中心となって、達成に向けた課題の抽出、対策の検討、施策の実行を行うものとする。また、全体会議などを開催して社内へ浸透させるとともに、相談員を通じて障がいをもった従業員にも浸透させることで KPI の達成に向けて全従業員がxxとなって活動を実施していく。
最高責任者 | 代表取締役 🖃x xx |
責任者 | 常務取締役 xx xx |
補佐 | 営業課長 xx xx |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成及び進捗状況については、静岡銀行とリースサンキューの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実 施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金及びその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認す る。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行とリースサンキューが協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行及び静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するリースサンキューから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者及び本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
調査部 研究員 xx xx調査部 研究員 xx xx
x000-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x TEL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 9 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社リースサンキューに対する ポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が株式会社リースサンキュー(「リースサンキュー」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、リースサンキューの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、リースサンキューがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しなが
ら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるリースサンキューから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000