オープンイノベーションを 促進するための技術分野別契約ガイドライン(AI等)について
令和2年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究
オープンイノベーションを 促進するための技術分野別契約ガイドライン(AI等)について
産業財産権制度問題調査研究について
◼ 産業財産権制度に関しての企画立案に資するように、法制面や運用面について改正を行う際の基礎資料となる報告書を取りまとめることが目的。
◼ 調査研究テーマ毎に専門家を交えた研究委員会の開催・国内外公開情報調査・国内外ヒアリング調査・国内外アンケート調査等、調査研究テーマに応じた調査・分析を行う。
特 許 庁
産業財産権制度に関する多種多様なニーズ
国際的な制度調和
調査研究機関
関係者(産、学、官)及び有識者
(弁護士、弁理士等)による調査研究委員会にて検討
調査研究報告書の
取りまとめ
<調査イメージ>
国内外ヒアリング調査
国内外公開情報調査
<詳細について>
国内外アンケート
調査
各国の制度調査
本調査の詳細については、特許庁HP(以下
研究テーマ一覧「オープンイノベーションを
URL記載)に掲載しております。令和元年度
(AI等)に関する調査研究報告書」をご参照
促進するための技術分野別契約ガイドラインください。
<お問い合わせ先>
URL:xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xx port/sonota/zaisanken-seidomondai.html
委員会の検討結果や研究報告書等を制度改正
の検討に活用
x000-0000 xxxxxxxxxx0-0-0
経済産業省 特許庁 総務部 企画調査課
TEL:00-0000-0000(内2156)
FAX:00-0000-0000
背景
日本発イノベーションを実現する手段のひとつとして、オープンイノベーション(OI)への期待が高まり、多様な機関がOIに取り組んでいるが、未だ十分な成果を得られていない。
OIを阻害する問題として、企業連携契約に関する知財リスクがある。法務や知財に関する見識を欠いたスタートアップが事業会社と不適切な内容の契約を結ぶことで、イノベーションが阻害される事案が多数報告されている。
目的
「研究開発型スタートアップと事業会社によるOI(新素材およびAIの二分野を対象)」「大学と大学発ベンチャーによるOI」をメインターゲットとして、円滑なオープンイノベーションを可能とするモデル契約書とガイダンスを作成する。
■委員会による検討
計6回の委員会+ワーキンググループを組成して検討を進め
た。
・委員長:xxxx
(xx・xx法律事務所 代表パートナー)
・委員:7名
■公開情報調査
4つの分野について、公開情報調査を実施した。
■ヒアリング調査
大学、大学発ベンチャー等(計20法人)に対して実施した。
まとめ
新素材、AI、大学の3分野でモデル契約書およびタームシートの作成を行った(合計10本を作成)。作成に当たっては、委員会で検討を行った。なお、全てのモデル契約書には、読者がポイントについて理解を深められるよう逐条解説も組み込んだ。加えて、「研究開発型スタートアップと事業会社によるOI(新素材分野)」のモデル契約書の読み方やOIに必要な考え方の理解を促進するための資料としてガイダンスを作成した。
1. 本調査研究の背景・目的
2. 本調査研究の実施方法
2.1. 委員会による検討
2.2. 公開情報調査
2.3. ヒアリング調査
3. 調査結果
3.1. モデル契約書
3.2. ガイダンス
4. まとめ
背景 | • 日本発イノベーションを実現する手段のひとつとして、オープンイノベーション(以下、「OI」という。)への期待が高まり、多様な機関がOIに取り組んでいるが、未だ十分な成果を得られていない。その原因のひとつに、大企業等の事業会社による中小ベンチャー企業に対する知財搾取の問題が指摘されている。この事業会社によるイノベーション搾取の構造を作り出す主要因が、技術取引契約(秘密保持契約、共同研究、ライセンス契約)である。さらにその背景として、xxxxx等の知財法務の知識不足、また事業会社のベンチャー等への無理解であることは従来から指摘されているところである。 • 以上の問題意識を背景に、単なる普及啓発に留まらない、対ベンチャーには知財法務の知見を提供しつつ具体の解決策を提示するための手引きとして、対事業会社にはベンチャーと中長期にわたり良好な関係を築き、ひいては持続的なイノベーションを実現するための手引きとして、「オープンイノベーションのための契約ガイドライン」の策定に取り組んできたところである。 • 令和元年度事業では、革新的な新規素材を開発したベンチャーを想定して、当該ベンチャー が自動車部品メーカーである大企業と締結すべきモデル契約書(素材)を検討した。しかし、 ①令和元年度事業では、調査ターゲットを研究開発型ベンチャーと大企業の連携に限定したが、大学や国立研究所等とそれらと連携する企業の技術契約にも課題があること、②モデル契約書の仮想ベンチャーの技術分野を素材としたが、データの取扱いが重要となるAIxxxの論点が残されている。 |
目的 | • 上記背景を踏まえ、本調査研究では、次の調査研究事項を実施することを目的とする。 ① 大学及び大学等と連携した実績のある事業者へのヒアリング調査を実施して、その取引実態を踏まえ、OIの成功確度を高めるための手法とその啓発方法について検討する。 ② AI関連企業へのヒアリング調査等を実施して、その取引実態を踏まえ、OIの成功確度を 高めるための手法とその啓発方法について検討する。 |
• 計6回の委員会を開催し、モデル契約書とガイダンスの検討を行った。
委員会メンバー
xxx x
一般社団法人未踏 執行理事CSO /株式会社マクニカ Senior Advisor(顧問)
xx xx
森・xxxx法律事務所 パートナー
属性 所属 氏名
法律事務所
内田・xx法律事務所 代表パートナー
xx xx (委員長)
会計事務所
江戸川公認会計士事務所 代表パートナー
xxx xx
大学/TLO
東京大学TLO 取締役
xx xx
OIプラットフォーム
eiicon company 代表/founder
xx xxx
ベンチャー
ピクシーダストテクノロジーズ 代表取締役 COO
xx xxx
大企業
アステラス ベンチャー マネジメント プレジデント
xx xx
• 本事業の委員会の下部組織としてワーキンググループを設置して、モデル契約書の作成・編集等を依頼した。ワーキンググループでは、以下の先生方に主にご尽力を頂いた。
所属・氏名 | モデル契約書(案)作成時の役割 | ||
新素材 | AI | 大学 | |
日比谷パーク法律事務所 アソシエイト/弁護士・弁理士 xxx | 副担当 | 副担当(PoC契約書) | 副担当(ライセンス契約書) |
STORIA法律事務所 代表パート ナー/弁護士 xxxx | 副担当 | 主担当 | 副担当(ライセン ス契約書) |
xxxxx・xxxxx・パートナーズ キャピタリスト/弁護士 xxxx | x担当 | 副担当(秘密保 持契約書) | 副担当(共同研 究開発契約書) |
xxxxx法律事務所 パートナー/ 弁護士 xxxxx | 副担当 | 副担当(共同研 究開発契約書) | 副担当(共同研 究開発契約書) |
xx合同特許法律事務所 アソシエ イト 弁護士・弁理士 xxxx | 主担当 | 副担当(利用契 約書) | 主担当 |
• なお、xxxx先生には、ワーキンググループの取りまとめ役を担って頂いた。ワーキンググループで特にご尽力頂いた先生方
• 「AI」「ロボティクス」「大学」「国研」の4分野について、契約上の問題点とその事例、現場で実践されている解決手法を整理した。
調査結果イメージ(「AI」の調査結果の一部を抜粋)
問題点及びその事例 | 解決手法 | |
知財帰属と利用x | xデータの特異性が高いこと等により、知財の帰属の判断基準や知財の範囲が実務上ケースバイケースとなることがある。 | 契約の中で、権利の帰属について定めるだけではなく、成果物やデータに対する利用条件をきめ細やかに設定していくことで、当事者の目的に応じた枠組みを提示することが望ましい |
ベンチャーが元々知財を有するベースモデルと、それをベースに共同開発で作られたカスタマイズモデルの切り分けが難しく、知財の帰属・利用の整理が困難である。 | 契約の当事者の求めていることを理解した上で、契約を結ぶことが重要である。たとえば、学習済みモデルの権利を連携事業者に帰属させた上で、開発後、一定期間の目的外利用や競業的利用を相手に禁止する等の対応をすることによって、当事者双方の利益に合致する契約を締結できる場 合もある。 | |
権利関係並びに責任関係の定義 | プログラムのソースコード部分は、著作物として扱われる可能性があるが、学習済みモデルを構成する、学習済みのパラメータに対して、著作権の対象となる範囲がどの程度か 明瞭に決まっていない。 | 学習済みモデルという定義の中に、どの程度まで含まれているのかの認識のすり合わせを契約交渉前に実施・整理したうえで、契約を締結するのがよい。特にその利用目的や範囲に一定の制限を設けるか否かについて、希望がある場合には、 契約書上で明記するのが望ましい。 |
あるデータを学習したAIソフトウェアが、第3者に損害を与えた場合に、その損害がデータに起因するのか、ソフトウェアに起因するのか、現状の不法行為法(生じた結果に寄与した者が責任を負担)では明確な結論 を得難い。 | 当事者の合意のもと、事業に即した責任の分配方法を明瞭なルールとして定めることが望ましい。また、その交渉に際し対価の額や支払条件等の設定を交渉ツールとして利用することが有効である。 |
• 大学7者、大学関連機関(大学系ベンチャーキャピタルおよびTLO)5社、ベンチャーキャピタル
2社、大学発ベンチャー3社、大学や大学発ベンチャーとのOIに知見を有する事業会社1社に対してヒアリングを実施した。加えて、AI分野および大学分野におけるモデル契約書作成の方向性について、有識者へのヒアリングをそれぞれ1回に対して実施した。
ヒアリング先
分類 | 組織 |
大学 | A大学 |
B大学 | |
C大学 | |
D大学 | |
E大学 | |
F大学 | |
G大学 | |
大学関連機関 | 大学関連機関H |
大学関連機関I | |
大学関連機関J | |
大学関連機関K | |
大学関連機関L | |
ベンチャーキャピタル | ベンチャーキャピタルM |
ベンチャーキャピタルN | |
大学発ベンチャー | 大学発ベンチャーO |
大学発ベンチャーP | |
大学発ベンチャーQ | |
事業会社 | 事業会社R |
弁護士・公認会計士 | 弁護士事務所S |
公認会計士事務所T |
• 新素材分野における契約(秘密保持、PoC、共同研究開発、ライセンス)、AI分野における契約
(秘密保持、PoC、共同研究開発、利用)、大学分野における契約(ライセンス、共同研究開発)における計10本のモデル契約書を作成した。
• なお、対象とする分野については、委員会等での議論を踏まえ、新素材、AI、大学とすることとした。このうち、新素材分野におけるモデル契約書においては、xx取引委員会による「スタートアップの取引慣行に関する実態調査」を踏まえ、昨年度業務にて作成した契約書を更新している。また、大学のモデル契約書については次年度以降にも継続して検討したうえで公表すべきとの委員会座長判断が下されている。
作成したモデル契約書の種類
分野 | モデル契約書 |
新素材 | ① 秘密保持契約書 ② PoC契約書 ③ 共同研究開発契約書 ➃ ライセンス契約書 |
AI | ⑤ 秘密保持契約書 ⑥ PoC契約書 ⑦ 共同研究開発契約書 Ⓑ 利用契約書 |
大学 | ⑨ ライセンス契約書 ⑩ 共同研究開発契約書 |
• 「研究開発型スタートアップと事業会社によるOI(新素材分野)」のモデル契約書の読み方や OIに必要な考え方の理解を促進するための資料としてガイダンス(仮称)を作成した。なお、ガイダンス(仮称)は読みやすさの観点からデザインを工夫し、表紙デザインおよび全体レイアウトを
2案作成した。
• ガイダンス(仮称)は、事業会社(知財・法務担当など)、スタートアップ(特に、新規性のあるコア技術を基に事業を興そうとするスタートアップ)、スタートアップ支援者(VCなど)を主な想定読者として作成した。内容については、想定読者がOIに取り組む際に重要となるポイントについて理解できるように簡潔かつ具体的なものとした。なお、ガイダンス(仮称)に加えて、セミナー等での発表資料を想定した資料を作成した。
ガイダンスのコンテンツ
本資料のターゲット(想定読者) |
本資料を読むにあたって |
改めて「オープンイノベーション」で大事なこととは |
モデル契約書を利用する際に留意すべきこと(モデル契約書はゴールデンスタンダードではなく、選択肢) |
対価交渉のケーススタディ |
4.まとめ
• モデル契約書の作成方針としては、昨年度と同様に、「一般的なひな形ではなく、特定の協業ケースを想定したモデル契約を作成する」方針とした。
• したがって、モデル契約書はゴールデンスタンダードではなく、従来の常識とされていた交渉の落とし
所ではない新たな選択肢を提示したものであるということを強調したい(モデル契約書は「想定
シーン」の設定があるが故に、各条文において具体度の高い実践的な考え方の解説が可能となっている。反面、実際には前提条件が異なる様々なケースがあり、それらのケースではモデル契約書が必ずしも最適な契約内容とならない可能性がある)。
• また、モデル契約書の読み方ガイダンスを新たに整備したことで、「研究開発型スタートアップと事業会社によるOI(新素材分野)」のモデル契約書の読み方やOIに必要な考え方の理解を促進するための情報整備を行うことができた。
禁 無 断 転 載
令和2年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究オープンイノベーションを
促進するための技術分野別契約ガイドライン(AI等)について
(要約版)令和3年2月
請負先
株式会社xx総合研究所
x000-0000 xxxxxxxxxx0-0-0 xxxxxxxxxx
xxx xxxxxxx