静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、エネジン㈱(社長 藤田 源右衛門)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2021.11.30
エネジン㈱と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、エネジン㈱(社長 xx xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 11 月 30 日(火)
2.融資金額 1 億円
3.資金使途 運転資金
4.エネジン㈱の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、LP ガスの卸売・小売事業者で、主力の「LP ガス事業」のほか、「環境・新エネルギー事業」「ハウジング&ライフサポート事業」を展開しています。また、本業を通じた SDGs 活動の実践や地域と連携した防災活動など、地域に密着した企業活動にも積極的に取り組まれています。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・営業活動、地域活動を通じた環境負荷の低減(創エネ・省エネ機器の普及促進、地域の小学生や住民向けの啓発活動の実施) ・エネルギー使用量の削減(LED 照明、ガスヒートポンプ、LP ガス車への切り替え、xxx発電導入、配送効率向上による CO₂ 削減) ・ガス漏れによる汚染の防止(ガス漏れによる大気、水質、土壌等の汚染防止) |
|
社会面 | ・地域との連携による防災・防犯対策(地元企業や自治会等との協定に基づいた防災対策・啓発活動の実践、警察署と連携した防犯活動の実施) ・保安体制の徹底と BCP 対策(保安・危機管理に関する方針・体制・教育の徹底と、有事の際の BCP の随時見直し) | |
経済面 | ・地元企業との連携による戦略的 CSR の推進(地域の課題解決と自社のブランディングを同時に達成する「CAMS 事業」の促進) ・IT を積極活用した業務効率化と顧客満足度向上(「LP ガス自動検針用通信サービス」の普及などを通じた、労働時間の短縮、業務効率化、品質・顧客満 足度の向上を実現) |
|
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】エネジン㈱の概要
所 在地 | xxxxxxx 0-0-00 | 創 業 | 1950 年(昭和 25 年)10 月 |
資 本金 | 90 百万円 | 売 上高 | 7,029 百万円(2021 年 9 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:エネジン株式会社
2021 年 11 月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
(8)エネルギー使用量の削減、廃棄物の適正処理、ガス漏れによる汚染の防止 27
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 エネジン株式会社(以下、エネジン) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、エネジンの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
エネジンは LP ガスの卸売・小売業者である。静岡県内に 14 カ所の支店・営業所と、関係会社合わせて 3 カ所の充填場を有し、県内全域をカバーしている。また、xxx発電等の創エネ機器、蓄電池や燃料電池、ガスヒートポンプ等の省エネ機器も取り扱い、「地域密着の総合エネルギー企業」として地域に根差している。人口減少や高齢化などエネルギー需要が縮小する中、同業者間の価格競争から回避すべく、地域課題の解決に焦点を当て、地域住民や地域企業とつながることで地域シェアの拡大および業績伸長を実現している。
また、“人”で他社との差別化を図るために、従業員の働きがいの醸成や人材育成に注力するとともに、従業員の安全衛生対策にも最優先で取り組んでいるほか、可燃性のガスを取り扱う企業として、保安や危機管理、BCP 対策も、体制整備や訓練・教育を徹底して平常時から取り組んでい る。こうした防災対策は地域とも連携しており、地域企業や自治会・町内会と協定を結び、日頃の啓発活動や有事の際の資材提供を約束している。
環境面においても、創エネ・省エネ機器の販売、小学生や市民向け環境セミナーの開催等を通じて環境負荷低減に積極的に取り組むとともに、自社においても、xxx発電の設置、LED 照明や LP ガス車の導入、共同充填・共同配送など、CO₂排出量の削減に努めている。
本ファイナンスでは、以下のインパクトが特定され、それぞれに KPI が設定された。
【ポジティブ・インパクトの増大】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
経済 | 地元企業との連携、 | ||||
地元企業と | メディアの活用による | 2026 年 ま で に 、 | |||
の連携による 戦略的 CSR | 地域課題の解決と 自社のブランディング | CAMS 事業売上高を 700 百万円に増加さ | 経済の収れん | ||
の推進 | を同時に達成する | せる。 | |||
CAMS 事業の促進 | |||||
労働時間の短縮や | 2022 年度までに、LPガス自動検針用通信サービスを全顧客の 50 % 以上に設置する。 | ||||
IT を活用し | 業務の効率化と、品 | ||||
た業務効率 化と顧客満 | 質・顧客満足度の 向上を実現するた | 経済の収れん | |||
足度向上 | め、IT 活用を積極 | ||||
的に推進 | |||||
社会 | 地元企業や自治会 | ||||
地域との | 等と協定を結び、有 | エネルギー | |||
連携による | 事の際の防災対策・ | レジリエンス認証を継 | 健康と衛生 | ||
防災・防犯 | 啓発活動を実施 | 続して取得する。 | 教育 | ||
対策 | 警察署と連携した防犯活動の実施 | 包摂的で健全な経済 | |||
2030 年までに、女性 | |||||
勉強会や社内コンテ | 管理職を誕生させる。 | ||||
従業員の | スト等の開催、女性 | 2026 年までに、女性 | 雇用 | ||
働きがいの | の活用・登用、福利 | 役職者を 20 名以上と | 教育 | ||
醸成と | 厚生の充実による、 | する。 | 包摂的で | ||
人材育成 | 人材育成、モチベー | 2030 年までに、平均 | 健全な経済 | ||
ション向上に注力 | 有給休暇取得日数を | ||||
年 15 日以上とする。 | |||||
環境 | 営業活動、地域活動を通じた環境負荷低減 | 創エネ・省エネ機器の普及促進、小学生や市民向け啓発活動の実施 | 2026 年までに、xxx発電、V2H および蓄電池、燃料転換の売上高をそれぞれ5 億円に増加させる。 | エネルギー教育 気候変動 |
【ネガティブ・インパクトの低減】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
社会 | 経営計画書に保安・ | ||||
保安体制の | 保安・危機管理に 関する方針・体制・ | 危機管理・BCP(防 災) に関する方針を | 健康と衛生 | ||
徹底と | 教育の徹底と、有 | 必ず盛り込み、社内に | エネルギー | ||
BCP 対策 | 事の際の BCP の随時見直し | 徹底させる。 自社由来のガス事故 | 包摂的で健全な経済 | ||
ゼロを継続する。 | |||||
従業員の安全衛生対策の徹底 | 安全衛生管理の徹底による現場の事故削減と AI 搭載のドライブレコーダー導入による交通安全対策 | 従業員の事故件数を毎期 3 件以内とする。従業員の交通事故件数を毎期6 件以内とする。 | 雇用 健康と衛生 包摂的で健全な経済 | ||
環境 | LED 照明、ガスヒートポンプ、LP ガス車への切り替え、xxx発電導入、配送効率向上による CO₂削減 ガス漏れによる大気、水質、土壌等の汚染防止 | エネルギー | |||
エネルギー使 用量の削減、廃棄物の適 | 従業員一人当たり CO₂ 排出量を、現状 | 大気水 土壌 生物多様性と | |||
正処理、 | の 3.1t-CO₂を維持す | 生態系サービス | |||
ガス漏れによ | る。 | 資源効率・ | |||
る汚染の防止 | 資源安全確保 気候変動 | ||||
廃棄物 |
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2021 年 11 月 30 日~2026 年 11 月 30 日 |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5年0ヵ月 |
企業概要
企業名 | エネジン株式会社 |
所在地 | xxxxxxx 0-0-00 |
事業所 | 静岡県内に3支店、11 営業所愛知県内に1支店 |
従業員数 | 212 名(男性 165 名、女性 47 名) |
資本金 | 9,000 万円 |
業種 | 〈LP ガス事業〉 ・家庭用 LP ガス供給・ガス器具販売 ・法人向け LP ガス供給・LP ガス供給設備・オートガススタンド ・省エネルギー提案 〈環境・新エネルギー事業〉 ・xxx発電システムの提案・販売・設置 ・空調関連機器の提案・販売・設置 〈ハウジング&ライフサポート事業〉 ・リフォームの提案・施工 ・ミネラルウォーター(アクアクララ)の販売 |
主要取引先 | 〈LP ガス販売先〉 約5万件(個人 94%、法人 6%) 〈LP ガス調達先〉 ENEOS グローブ㈱、ジクシス㈱、伊藤忠エネクス㈱ ほか |
沿革 | 1950 年 浜松燃料㈱創業(後の㈱ハマネン) 1957 年 丸善瓦斯㈱創業(後の丸善ガス㈱) 1997 年 ハマネンと丸善ガスが LP ガス物流部門を分離独立させて、共同で㈱xxエネルギーセンターを設立 2004 年 ハマネンと丸善ガスが共同で新会社エネジン㈱を設立 2005 年 本社をxx町からxxへ移転 2009 年 xxxエネクスホームライフ関東㈱と静岡県エリアの LPガス事業統合。営業範囲が静岡県全域となる |
(2021 年 11 月 30 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および特徴
エネジンは、LP ガスの卸売・小売業者である。2004 年、㈱ハマネンと丸善ガス㈱の静岡県西部地域を代表する2つの LP ガス事業者が統合して誕生した。また 2009 年には、県中東部を営業エリアとするxxxエネクスホームライフ関東㈱の静岡県エリアの LP ガス事業を統合し、県内全域をカバーするサービスネットワークを整備するなど、同業者との効果的な統合によって営業エリアを拡 大させ、静岡県内に安定した事業基盤を構築している。2021 年 6 月には、愛知県xx市に東三河支店をオープン。今後は同県でのシェア拡大も進め、さらなる基盤強化を目指している。
エネジングループ全体の売上高の 70%を超える LP ガス事業は、ENEOS グローブ㈱やジクシス
㈱、xxxxxxx㈱などの元売り業者から仕入れた LP ガスを、県内3カ所に有する充填工場のタンクに保管し、そこを拠点に 31 台の LPG 配送車や 9 台のバルクローリー車にて、エリアごと顧客に配送する。販売先数は約 5 万件(メーター件数)で、うち個人が 94%、法人が6%の割合となっており、県内シェアは7%、本社が立地する浜松市内シェアは 15%を誇る。また、年間販売数量は 32,000 トンで、うち家庭用が 31%、業務用と工業用が 32%、卸売用が 32%、その他が 5%とバランスの取れた構成となっている。
<LP ガスのサプライチェーン>
<販売先数、販売数量の割合>
エネジンの強みは、元売り業者との強固なつながりによる LP ガスの安定的な調達と、約5万件 の顧客網、そしてそれらを維持するための県内 14 カ所の支店・営業所網である。特に、主要顧客となる地域住民や地域企業との信頼関係構築に注力しており、「エネジン ど真面目宣言 ~まかせて安心5カ条のお約束~」の中で、「地域の皆様の当たり前の生活を守り続けます」と明言してい る。
具体的には、①ガスのトラブルに対する 24 時間 365 日の対応や、②給湯器故障時における 予備器の無償貸出など、不具合に対する常時かつ早急な対処を約束しているほか、③国家資格などの有資格者を多数擁し、➃法定点検以上に厳しい自主基準による「これでもか点検」を実施することで安心感を醸成している。また、災害時におけるエネルギー供給や早期復旧に関しては、BCPの徹底や、地域企業・自治会等との防災活動に関するパートナー協定の締結などを積極的に推進することで、⑤2017 年に業界初となる「レジリエンス認証」を取得している。
このように、平常時・有事の差なく、いつでも安定的にエネルギーを供給できる体制を整備し、維持し続け、顧客に伝えていることが、エネジンの最も大きな強みとなっている。
2. 業界の動向
【LP ガスの国内需要は漸減傾向】
LP ガスの国内需要は 1996 年度の 19.7 百万トンをピークに漸減傾向にあり、2019 年度はピーク比▲29.3%の 13.9 百万トンとなっている。全体の4割超を占める主力の家庭業務用は 06年度まで増加傾向にあったが、その後減少に転じ、19 年度は 6.0 百万トンとピーク比▲24.7%にまで落ち込んでいる。こうした状況を受けて日本 LP ガス協会は、「わが国の LP ガス需要は成熟期に達している」としている※1。
また、コロナ禍の影響を受けて、LP ガスは他のエネルギー以上に需要が減少しており、足元でも 厳しい状況に置かれている。コロナ禍前の 2019 年 4~9 月と 2020 年 4~9 月の需要量を比 較すると、LP ガスは▲13.8%と、電力▲3.5%、石油(燃料油)▲10.9%、都市ガス▲9.3%に比べて減少幅が大きい※2。
<LP ガス国内需要>
(百万トン)
19.7
13.9
8.0
6.0
(年度)
国内需要計
うち家庭業務用
資料:日本 LP ガス協会「LP ガス需給の推移」
【日本 LP ガス協会が目指す SDGs の目標】
日本 LP ガス協会では、「LP ガスが果たす SDGs への取り組み」として、LP ガス業界が貢献可能な目標を以下の4点に整理している。
①盤石な安定供給体制とサプライチェーン(ゴール 7)
②最先端技術による高付加価値サービスの創造(ゴール 9)
③分散型エネルギーによる高い災害対応力(ゴール 11)
➃低炭素・脱炭素化を目指した新たな方策(ゴール 13)
この中で、有事に備えて LP ガスの備蓄や電源車の配備、安定供給を確保するための地域間連携、訓練の実施などを盛り込んでいるほか(ゴール 7)、安全機器の普及や保安の確保に努めることで消費者事故を抑制、情報通信技術の活用により顧客サービスの向上と保安・物流の進化
(ゴール 9)、LP ガス災害バルク設置など災害時対応能力の強化、GHP(ガスヒートポンプ)導
入で学校施設の空調化推進(ゴール 11)、LP ガス燃料船の導入、LP ガスの優れた環境性能を生かした新たなイノベーションの構築(ゴール 13)などを将来的な方向性として示している。
【LP ガスの事故発生状況と国が求める保安対策】
経済産業省の産業構造審議会が発表した「液化石油ガス安全高度化計画 2030」によると、一般消費者等に係る LP ガス事故の発生状況は、1979 年に 793 件(死傷者数 888 人)を記録した後、減少に転じ、97 年には 68 件(同 70 人)となった。その後、98 年~2005 年は 75~120 件/年、06 年以降は事故届の徹底指導等により 140~260 件と増加し、19 年は
202 件となっている。事故の主な原因は、末端ガス栓や器具栓の誤開放、風呂釜の点火ミス・立ち消えなど一般消費者等起因の事故が 57 件と全体の 28.2%を占め、供給設備の劣化等や工事ミス・作業ミスなど LP ガス販売事業者等起因の事故は 44 件と 21.8%を占めている。
同計画では、2030 年の死亡事故ゼロを目標に掲げており、消費者起因事故対策、販売事業者起因事故対策、自然災害対策、保安基盤の整備に分けて、それぞれ実行計画(アクションプラン)を設定している。
【LP ガス業界に想定される今後の環境変化】
資源エネルギー庁が発表した「第6次エネルギー基本計画」では、LP ガスについて、約4割の家庭に供給されるなど全国的な供給体制に加えて、緊急時に供給を維持できる備蓄体制を整備しているとし、利点として、最終需要者への供給体制や備蓄制度が整備されていることや、可搬性、貯蔵の容易性を挙げている。そして、平常時のみならず緊急時のエネルギー供給に貢献する重要なエネルギー源とみなしている。また、LP ガスの備蓄については、大規模災害等に備え、現在の国家備蓄・民間備蓄を合わせた備蓄水準を維持するとし、供給体制の確保については、長期的に家庭部門の電化や地方での人口減少、省エネルギー機器の普及等により、国内需要が減少する可能性があるものの、引き続き平常時のみならず緊急時にも対応できるような強靱な供給体制を確保することが重要であるとしている。
また、「液化石油ガス安全高度化計画 2030」では、今後 10 年間に想定される環境変化として、①「過疎化・高齢化」:人口減による LP ガスの需要縮小や過疎化による供給困難地域の拡大、②「人手不足、外国人の増加」:働き手不足による保安の現場を担う人手不足、外国人利用者に対する配慮、③「新たなデジタル技術の導入に伴う変化」:スマートメータやデジタル技術を活用した保安の仕組みの導入、セキュリティ対策、➃「自然災害の多発化、激甚化」:大規模地震や水害等における二次被害対策、災害発生後の早期復旧・復興、顧客情報等の情報保全、
⑤「感染症対策」:人と人との接触機会を減らした保安確保を挙げている。
そうした中、エネジンでは直近の「第 19 期 経営計画書」の中で、自社が置かれている環境変化を次の4点で整理している。
まず、①エネルギー業界における脱炭素である。同社では、脱炭素は地球規模の喫緊の課題であり、業種、地域、規模を問わず、エネルギー業界に属するすべての企業が脱炭素に向けて変革し
なければ生き残ることができないと認識しており、自社においてはこれをピンチではなくチャンスと捉えるとしている。
次に、②人口減少と超高齢化社会である。日本の人口構成が人類史上かつてない超高齢化レベルに達し、人口減少=少産多死社会を確実に迎える一方、世界人口の増加や平均寿命の伸長などを想定し、こうした要因に起因した日本のデフレリスクや国の債務の増加にも言及し、転換の必要性を認識している。
そして、③DX に代表されるデジタル産業革命である。エネジンでは、コロナ禍でオンライン上での 活動が加速し、デジタルの上に社会が成立すると想定している。また、DX が前提となる中で、DX をコスト削減だけでなく、お客様満足につなげられるかが成否を左右すると考えている。AI の進化によって仕事の進め方も一変するが、現場で人が行う作業はなくならず、むしろ現場での解決能力が貴重となり、信用、訪問、対面、解決が圧倒的なお客様満足を実現し得るとしている。一方で、デジ タル技術の進化によって、xxx発電コストの逓減、EV や蓄電池の普及、スマートグリッドにおけるブロックチェーンの活用などによって、電力が CtoC で売買されたり、料金が定額制となることも想定しており、LP ガスはその利点から、特殊用途、高級用途となるとしている。
最後に、➃自然災害リスクである。地球温暖化による集中豪雨等の異常気象リスクの高まりや、南海トラフ地震の発生、感染症など、社会生活や企業経営に与えるリスクを想定し、有事における事業継続の備えが重要と認識している。
※1 資料:日本 LP ガス協会「サステナブルな社会と暮らしを支える LP ガス」
※2 資料:※1に同じ
※3 資料:※1に同じ
3. インパクトの特定および KPI の設定
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>経済
<インパクトレーダーとの関連性>経済の収れん
<SDGs との関連性>
17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
<KPI(指標と目標)>
①2026 年までに、地域企業との連携をさらに深化させ、CAMStrategy の販売促進、会社 SR(ショールーム)化の進展、SDGs パートナー協定締結先の増加などにより、CAMS 事業売上高を現状の 10 百万円から 700 百万円に増加させる。
<インパクトの内容>
エネジンは経営理念として、「保安なくして経営なし」、「お客様なくして会社なし」、「社員の幸せなくして成長なし」、「地域貢献なくして繁栄なし」、「革新なくしてxxなし」の5つを掲げている。この中で、お客様、社員、地域、革新につながる取組みが、地元企業と連携した「戦略的CSR」の推進である。戦略的CSRとは、本業に通ずるSDGs活動を地域に密着して実施することで、地域の課題の解決と自社のブランディングを同時に達成する取組みであり、エネジンではこれまでの8年間で、 300社以上の企業・団体と共同で48企画を実施し、延べ100団体・5,000人以上が参加している。また、こうした活動が新聞・TV・ラジオ・雑誌等のメディアで毎月4~5件発表されることで、ブランディング(自社価値を高める)やマーケティング(自社価値を伝えること)が可能となっている。
エネジンでは、こうした企業の社会的責任(CSR)を活用した自社のブランディングと、地元企業との業務提携や戦略的同盟(Alliance)による相乗効果、そしてマスメディアによる情報発信
(Media)を活用したマーケティングの3つを融合させた戦略(Strategy)を「CAMS」と名付 け、単なるボランティアではない、”戦略的“なCSR活動とし、自社、アライアンス先、顧客、地域などあらゆるステークホルダーがWIN-WINの関係となることを目指している。
同社ではこのCAMSを実践するメリットとして、企業のブランディングが出来る、情報発信力が強くなる、口コミが拡がり新規問合せが増える、新規お客様のご紹介を頂ける、本業以外の接点から本業につなげられる、ビジネスチャンスが増加する、お客様の課題解決で条件勝負とならない、ブランディング・マーケティングが継続できる、社員のスキルアップ・雇用につながる、など事業強化につながることを実感している。業界構造として市場拡大が見込めない中、地域において信頼を獲得し、顧客を
開拓して地域シェアを高める一方、ロイヤリティの高い優秀な人材を確保することが、企業活動として不可欠となっており、その解決策として十分に効果を発揮しているのである。
実際に同社では、このCAMSの効果もあって、アライアンス先と新規にLPガス供給契約を締結したり、イベント参加者からリフォームやxxx発電システムを受注するなど、CAMS事業を本格化した5年前と比較して、顧客件数は、静岡県内のLPガス消費者件数が10%以上減少している中、 13%増加させている。
さらに、エネジンでは、このCAMSを本業の受注につなげるツールとしてだけでなく、CAMSそのものを商品として販売することも模索してい る。同社と同様に、地域で信頼を得ることで戦略的に業績を伸ばしたい中小企業向けに、自社の経験・ノウハウを伝授しようとするものである。すでに、「CAMS観光ツアー」や「環境整備点検ツアー」を企画し て、アライアンス先とのイベントや取材の様子を見学したり、「会社SR
(ショールーム)」と称する自社内の見学ツアーを開催しており、反響
を呼んでいる。なお同社では、こうした取組みを「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」(著者:xxxxxx代表取締役社長)にまとめ、広く周知している。
エネジンの戦略的 CSR活動をまとめた著書
(2020 年2月発刊)
このように、エネジンは、地域の企業や自治体、金融機関、教育・保育機関、医療機関、自治会、市民団体などと連携することで、地域の課題を解決しながら自社および連携先の業績伸長を実現しており、社会課題解決や地域経済活性化に貢献している。
静岡銀行は、エネジンの地域経済への貢献度を確認するために、戦略的CSRの取組み実績をモニタリングするとともに、定量的な指標として、同社がKPIとして設定したCAMS事業の売上高をモニタリングしていく方針である。
<エネジンの戦略的CSR活動の様子>
<エネジンのCAMS事業の主な実績>
活動名 | 参画団体 | 参加対象者 | 内容 |
xxx発電課外 授業 | 小学校、教育委員会 | 小学生 | xxx発電の組み立て、仕組 み、地球環境問題を学習 |
自慢の逸品インス タ応募 親子編&じいじばあば編 | スーパー、料理店、地元農家、 キッチンメーカー | 全国の親子 | コロナ禍で巣ごもりしている家庭 で、親子で料理を楽しむ、優秀作品をプロがアレンジして公開 |
幼稚園合唱コンテ ストと優秀園のテレビCM採用 | 幼稚園、保育園、楽器店、金融機関 | 幼稚園児 | 同社CMソングを幼稚園対抗にて 合唱コンテストを行い、優秀園にはテレビCMとして放映 |
創作パン商品化企画 | ドラッグストア | 幼稚園児 | テーマに沿ったパンの創作案を応 募してもらい、優秀作品は商品化して、店頭販売する |
火育授業開催 | 小学校 | 小学生 | 火起こし体験とエネルギーに関す る授業を開催 |
中学生部活動強化サポート | 中学校、中体連、 プロ野球、フットサル、バレーボールチーム、ドラッグストア、 住宅設備メーカー、 医療機関、トレーナー、製薬会社、食品会社、 スポーツ動画解析企業 | 中学生、保護者 | 中学校の部活動において、正しい指導法、科学的なトレーニン グ、効果的な栄養摂取・休息、最新IT技術を駆使した分析と作戦立案などを専門家が応援 |
警察との防犯宣言・防犯活動 | 警察署・自治会 | 地域住民 | 徘徊老人を保護して表彰、傷害 事件の通報・逮捕へ、地域見守り活動 |
地域防災訓練参加 | 自治会、市役所、建設会社 | 地域住民 | 町内会の防災訓練に参加して、家具の固定方法や危険物の取 扱を指導 |
地域かわら版発行 | 高等学校、信用金庫 | 地元企業、自治体、 地域住民 | 高校生が地元企業や地域の話題を取材して、紙媒体とブログで 情報発信する |
野球ベンチ製作・ 寄贈 | 大学xx団体、 大工 | 高校野球部 | 大学生が野球ベンチをデザインし て、大工が製作 |
SDGsに関連した商品開発、販売 促進 | 信用金庫、 グッズ製作販売会社、授産所、VR制作会社 | 部活動参加者、住宅会社 | 熱中症対策グッズの販促、授産所でのグッズ梱包、コロナ禍のモデ ルルーム来場代替としてVR開発 |
※他社との連携企画のみ抜粋
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>経済
<インパクトレーダーとの関連性>
経済の収れん
<SDGs との関連性>
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
<KPI(指標と目標)>
①2022 年度までに、「LP ガス自動検針用通信サービス」を全顧客の 50%以上に設置し、「認定 LP ガス販売事業者制度」の「第二号認定 LP ガス販売事業者(シルバー認定)」を取 得する。
<インパクトの内容>
エネジンは、品質・顧客満足度の向上や労働時間の短縮を実現するため、積極的にITの活用 を進めている。第19期の経営計画書では、「LPWA配送予測システムの開発」や「Webガス検針明細システムの開発」、「CRM、電子連略帳の拡張」、「GoogleWorkspaceの活用及び支援」 など、対顧客向けサービスのみならず、社内のコミュニケーションツールとしてもIT活用推進を盛り込んでおり、18項目に及ぶ対策を打ち出している。その実施に向けて、IT検討会を月に1回開催し、専門家のアドバイスを受けながら社内のニーズや課題を認識して、実施策や優先順位を決めて実行している。
なかでも、約5万件の顧客のLPガスの利用情報等を効率的に管理する仕組みとして、無線通信技術「LPWA」(Low Power Wide Area)を利用した集中監視システムを導入した。また、中部電力㈱の電力スマートメーターの通信網を活用した「LPガス自動検針用通信サービス」も導入、2021年6月に基本協定を締結した。
現在、同社の伊東支店の顧客1,800件に設置済みであるが、2021年から22年にかけて全顧客の50%、25,000件に設置予定である。これにより、顧客のガス利用量が日々捕捉できるため、配送予測が向上して配送効率を高めることができるほか、検針作業が不要となったり、従業員の宿直が減るなど、大幅な業務効率化や労働負担の軽減が見込まれる。また、異常時には瞬時に通報が入るため、顧客の安全性も高まる。加えて、客先への訪問頻度が減少することでガソリン使用量の削減や紙(検針票)の削減にもつながる。
こうした取組みは国も推奨しており、経済産業省は2016年に「認定LPガス販売事業者制度」を制定、集中監視システムなど高度な保安機器を導入し、保安の高度化に積極的に取り組んでいる LPガス販売事業者を認定している。エネジンでは、2022年度中の「第二号認定LPガス販売事業
者(シルバー認定)」の取得を目指している。
このように、エネジンでは、ITを活用した業務の効率化、顧客満足度の向上を進めており、イノベーションを通じた高いレベルの経済生産性に貢献している。
静岡銀行は、エネジンのIT活用の推進を定量的にモニタリングするために、「LPガス自動検針用通信サービス」の顧客への設置状況をモニタリングしていく方針である。
<エネジンと中部電力が協定を締結した「LPガス自動検針用通信サービス」>
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>
健康と衛生、エネルギー、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
11.5 2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
①「液化石油ガス安全高度化計画 2030」やその他関連法令を遵守し、「エネジン株式会社事業継続計画(BCP)」を必要に応じて見直すとともに、毎年度作成する経営計画書に「保 安に関する方針」、「危機管理に関する方針」、「BCP(防災)に関する方針」を必ず盛り込み、社内に徹底させる。
②自社由来のガス事故ゼロを継続する。
<インパクトの内容>
エネジンは、経営理念の第1番目に「保安なくして経営なし」を掲げ、「“当たり前”をやり続け、信頼のブランドを育てる」ことを徹底している。経営計画書においても、「保安に関する方針」として、
「全ての業務に優先して直ちに対応する」、「安全確保は企業の生命線」と位置づけ、過去の事故事例に対する反省を基に、事故発生時の対応や二次被害対策のみならず、変化に気づく姿勢や発生原因の除外など、事故を起こさないための平常時の意識の持ち方についても細かな方針を打ち出している。
また、「危機管理に関する方針」としては、危機管理を、発生の有無、危機の大小、経過段階に基づき、リスク管理、危機対応、危機広報の3つに分けて管理している。毎期、重点予防策を決定しており、それに従い過去には、水害対策、夜間対策、詐欺メール対策などの訓練を実施したほか、後述する早朝勉強会等を通じて座学による危機対応教育を行っている。
有事の際の BCP 対策にも余念がない。2012 年に策定した「エネジン株式会社事業計画
(BCP)」は1~2年おきに改訂を重ね、現在は第6版となっている。同計画では、主に大地震
(南海トラフ巨大地震のレベル2)を想定しており、発生時の行動基準や事業継続戦略、事前対策・事前準備、平常時も含めたマネジメント体制などを規定しているほか、日常的な教育・訓練
の反復実施とその結果に基づく継続的な見直しが重要との認識から、営業サポート部を中心とした維持・運用体制を構築している。
<エネジンの事業継続(BCP)に関する年間教育・訓練スケジュール>
教育・訓練の種類 | 実施時期 |
総合防災訓練 | 3月 11 日 |
水害対策訓練 | 5月 |
バルクローリー車事故対応訓練、BCP 机上訓練 | 7月 |
三角巾・応急担架訓練、無線機・衛星携帯電話使用訓練、 医療機関の確認、安否確認メール操作 | 9月 |
情報漏洩対応訓練 | 11 月 |
雪害・凍結防止対応訓練 | 1月 |
このように、可燃性のガスを取り扱う企業として最も重要なネガティブ・インパクトと考えられる「保 安」について、エネジンでは企業活動における最も重要な事項と捉えており、その対策も徹底している。保安や危機管理を平常時から徹底することで、自社由来のガス事故を発生させず、従業員や周辺住民を健康被害から守っている。また、有事の際に地域のエネルギーインフラを守るための事業継続に関しても、自社内における日頃の教育・訓練を怠らず、実効性の伴う計画を策定している。これにより、大規模地震等の災害時においても、いち早く LP ガス供給を可能とし、地域住民の生活や経済活動の維持に貢献することを想定している。
静岡銀行は、エネジンの経営計画書や事業継続計画等を確認することで、保安体制や危機管理体制、防災対策を継続して実行していることをモニタリングするとともに、自社由来のガス事故ゼロの継続を確認していく方針である。
<エネジンの防災訓練の様子>
(4)地域との連携による防災・防犯対策
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>
エネルギー、健康と衛生、教育、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
11.5 2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
①レジリエンス認証を2年ごとに更新し、継続して認証を取得する。
<インパクトの内容>
LPガスは容易に液体にすることができ、液体にすると体積が気体時の250分の1にまで圧縮されるという特徴から、可搬性の高い分散型エネルギーとして、災害時のエネルギー需要を担うことが期待されている。エネジンでは、こうしたLPガスの特徴を最大限に発揮するために、前述のような防災対策を自社内にとどめず、地域に広く還元し、地域とともに取り組んでいる。
2017年以降、県内のスーパーや食品卸業者と連携して、県内4つの自治会や町内会と地区防災計画制度の一環として「災害救助に必要な物資等の提供に関する協定」を締結している。これは、地震や風水害、その他の災害等が発生した際に、避難所が開設されるまでの間、食料、飲料水、発電機、照明器具、炊き出し用具等を無償で提供するもので、エネジンはこの中で発電機を稼働させるためのLPガスの提供を約束している。
また、地場大手ドラッグストアの㈱杏林堂薬局とは、2019 年に「防災活動パートナー協定」を締結し、災害時に LPG 災害対策システムを杏林堂薬局の店舗に設置して地域への貢献を行った り、連携して地域住民に対する啓発活動や防災活動などを実施している。
さらに、災害対策への経験を積むために他県の災害地域に社長や従業員がボランティアとして参加したり、県内で開催される防災フェアや防災訓練に参加することで、防災対策に関するノウハウを習得している。一方で、社外の関連機関と連携して顧客向けの防災訓練指導や BCP 簡易講座を開催したり、非常用発電機などの災害対策機器を自治体等に寄贈したり、家庭における防災・ 防疫意識を高めるための「家庭の防災防疫コンテスト」を開催するなど、地域への還元を継続して実施している。
こうした取組みが評価され、内閣官房国土強靱化推進室が制定した「レジリエンス認証」に、事業計画、社会貢献の両部門で認証されている。
エネジンは、地域の防犯活動にも熱心に取り組む。県西部地域の5つの警察署の指揮の下、防犯活動の実施を宣言し、営業車に「パトロール中ステッカー」を貼って地域巡回活動や声掛け、見 守り活動等を実施することで、犯罪の未然防止に取り組んでいるほか、ガス供給の悪質勧誘の排 除や振込詐欺の防止を呼びかけ、犯罪者を寄せ付けない街づくりを目指している。また、安全会議意見交換会を通じて、地域と連携した防犯活動に取り組んでいる。
このように、エネジンは防災・防犯対策に取り組むことで、社内的にはノウハウが蓄積されるととも に、社外的には「防災・防犯に強い会社」としての認知が進み、LP ガス非常用発電機等の防災関連機材の売上増加につながっている。また、地域企業や自治会等との連携による避難所支援協定の締結は、災害時においても最低限のエネルギー供給を可能とし、避難者や被災住民の二次被害を防ぎ、身体的・精神的な健康維持に貢献するとともに、警察署との連携によるパトロール活動は、特に幼い子供や高齢者を交通事故や被害詐欺等から守ることで、地域住民に安心感を与えてい る。
静岡銀行は、エネジンの経営計画書や事業継続計画等によって、地域を巻き込んだ防災・防犯対策を継続して実施していることを確認するとともに、レジリエンス認証を更新し、継続して認証されていることをモニタリングしていく方針である。
<エネジンの防災・防犯活動の様子>
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>
雇用、健康と衛生、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)>
①従業員の業務上の事故件数(業務中過失事故)を、第 18 期の5件から 40%削減し、毎期 3 件以内とする。
②従業員の業務上の交通事故件数(業務中過失事故)を、第 18 期の 8 件から 20%削減し、毎期 6 件以内とする。
<インパクトの内容>
エネジンでは、経営理念に「社員の幸せなくして成長なし」を掲げ、従業員の働きやすさも追求している。なかでも、従業員の安全確保については、経営計画書の「安全衛生管理に関する方針」において、「全従業員、協力会社社員の安全と衛生を最優先とする」とし、安全管理者、衛生管理者、産業医、安全衛生推進者を選任し、安全衛生委員会規定に基づき委員会を組織している。
毎月1回、安全衛生委員会を開催して安全衛生活動をチェックしているほか、産業医によるメンタルヘルス相談や高疲労蓄積者への面談、毎年 1 回のストレスチェック制度、建設現場等への入場該当者に対する職長・安全衛生責任者教育の講習受講など、組織として安全衛生管理に努めている。特に、充填場などの現場においては、夏場の熱中症対策、容器の転倒対策などを徹底しているほか、前述した BCP とも関連して各種訓練を実施している。
交通安全に関しても、営業所ごとに安全運転管理責任者を置き、毎年5、7、9、12 月の交通安全運転期間中は、看板の設置や朝礼時の交通安全 5 原則の唱和、全社員を対象としたアルコールチェックなどを実施して、意識の醸成を図っている。また、安全運転指導講習会の開催、安全運転記録証明書(SD カード)の発行、無事故報奨金の支給など、安全運転へのインセンティブを設けて意識醸成を図っている。2019 年 11 月には、AI 搭載のドライバーセーフティシステム「ナウト」を 150 台の営業車両のほぼすべてに導入したことで、さらに交通安全意識が高まり、交通事故の減少のみならず、運転マナーの向上効果も現れている。
このように、エネジンは、従業員の安全対策を徹底することで、従業員が健康で安心して働ける職場環境を整備しており、2004 年の設立以降、従業員が労務上の事故等で死亡や退職につな
がるような重大な事故は起こしていない。これらは、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境の促進に貢献している。
静岡銀行は、エネジンの従業員が継続的に安全・安心な環境の中で働けるように、経営計画書における安全衛生管理に関する方針や交通安全に関する方針を確認するととともに、事故件数等をモニタリングしていく方針である。
(6)従業員の働きがいの醸成と人材育成
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性> 雇用、教育、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。
<KPI(指標と目標)>
①2030 年までに、女性の管理職を誕生させる。
②2026 年までに、リーダー以上の女性役職者を現状の 9 名から 20 名以上とする。
③2030 年までに、平均有給休暇取得日数を、現状の 8.9 日から 15 日以上とする。
<インパクトの内容>
エネジンは、前述の通り、「社員の幸せなくして成長なし」を経営理念に掲げ、「運命共同体の同志として、全社員の成長と幸福を追求する」と、人材育成やモチベーション向上にも力を注ぐ。会社として教育を実施することで“人”で他社との差別化を図り、ブランドを構築している。
具体的には、全従業員を対象にした経営計画発表会や中間政策勉強会(年1回)、全体朝礼(年 2 回)で、基本的な方針等を浸透させているほか、年に 40 回開催する早朝勉強会や資格試験講習会、あるいは配管コンテスト、アイソメ図勉強会、トークコンテストなどの実地訓練や各種講習会を随時開催している。また入社後 2 年目までの研修スケジュールや、部署ごとに必要 な資格・スキルを見える化し、自身のキャリアアップをイメージしやすくしている。日常的なコミュニケーションも重視しており、意図的・計画的に場を設定しているほか、ボイスメールやグループチャットなど IT機器も活用しながら意思の疎通を図っている。
同社では、女性の活用・登用にも力を入れている。現在女性社員は 47 名と、全社員の2割強を占める。うち役職者(管理職ではないリーダー)が9名おり、こうした人材の管理職育成に向けて社外の研修等への参加を促したり、社内でマネジメント業務を担当させることで経験を積ませてい る。たとえば、同社では、組織横断的な課題解決やコミュニケーション強化を目的に、①環境整備チーム、②リクルートチーム、③教育チーム、➃福利厚生チーム、⑤20 周年事業チームの5つのチームを組成し、全社員がいずれかのチームに所属して活動しているが、このうち、リクルートチームは入
社 1 年目を中心とした若い年代の社員 30 人前後で構成されており、チーム長は入社 3 年目の女性社員が就いている。3年連続で女性がチームリーダーに就いているが、社長直轄で採用に関する全責任を負って、1 年間採用活動を任せることで、チーム業務を通じたマネジメント能力の養成・発揮を目指している。また、SDGs 活動の中心を担う営業企画部は 13 名中 8 名が女性従業員と、女性が活躍している。
福利厚生面においても、従業員のモチベーションを向上させる制度を揃えている。選任手当や単身赴任手当、当番手当などの各種手当が充実しており、なかでも親孝行手当として、昇進した際や中途入社時に、親へ感謝の意を伝えるための食事代や交通費の一部を助成するものもあり、これまでに 33 件の利用実績がある。
休暇の取得も社を挙げて推進しており、振替休日の完全取得や有給休暇の取得を重点経営 方針に掲げている。有給休暇は平均 8.9 日取得しており(2020 年度実績)、年次有給休暇とは別に取得が可能な介護休暇や子の看護休暇制度も設けている。
また、雇用の多様化の一環として、障がい者を4名雇用し、書類のスキャン作業を担当するなど本社において活躍しており、法定雇用率も達成している。
このようなエネジンの人材育成や福利厚生の充実は、従業員の働きがいや能力向上につながり、性別や障がいの有無等に関係なく、地域に優れた雇用の場を創出することに貢献している。
静岡銀行は、エネジンの従業員の働きがいの醸成や人材育成を定量的に確認するために、女性管理者や役職者の人数、従業員の平均有給休暇取得日数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>エネルギー、教育、気候変動
<SDGs との関連性>
7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
<KPI(指標と目標)>
①2026 年までに、xxx発電の売上高を5億円に、V2H および蓄電池の売上高を5億円に、重油から LP ガスへの燃料転換による売上高を5億円に、それぞれ増加させる。
<インパクトの内容>
エネジンでは、家庭向けの省エネ診断サービスや、法人向けのエネルギー総合診断などによって、無駄のないエネルギー提案をしているほか、高効率ガス機器のみならず、xxx発電や蓄電池、燃料電池など新世代のエネルギー活用の提案や、省エネ空調機器、小型エアコン、ガスヒートポンプなど、省エネ効果の高い機器を提案することで、営業活動を通じた創エネ・省エネに貢献している。ま た、2016 年には電力代理店事業にも参入し、電力とガスの両面から“エネルギーベストミックス”の提案が可能となった。
さらに、創エネ・省エネに関するノウハウを広く地域に還元している。小学生を対象としたxxx授業や火育を 2012 年から続けているほか、市民向けにも、環境・省エネ勉強会を開催している。
このように、エネジンは、xxx発電等の営業活動や、環境セミナー等の地域貢献活動を通じて創エネ・省エネの啓発を促進するなど、環境負荷低減に貢献している。
静岡銀行は、エネジンの対外的な環境負荷低減活動を定量的に測るため、xxx発電や V
2H および蓄電池、重油から LP ガスへの燃料転換による売上高をモニタリングしていく方針である。
<エネジンの小学生向けxxx授業の様子>
(8)エネルギー使用量の削減、廃棄物の適正処理、ガス漏れによる汚染の防止
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>
エネルギー、大気、水、土壌、生物多様性と生態系サービス、資源効率・資源安全確保、気候変動、廃棄物
<SDGs との関連性>
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
①従業員一人当たり CO₂排出量を、現状の 3.1t-CO₂を維持する。
<インパクトの内容>
エネジンでは、自社内においても、環境に優しい経営を実践している。まず、省エネに関しては、本社やほぼすべての事業所の照明を LED に切り替えたほか、本社の空調をガスヒートポンプに切り替え、事業所についてもxx導入を進めている。また社用車に、燃費効率の高い LP ガス車を全車両の 40%となる 60 台導入したほか、前述の AI 搭載のドライバーセーフティシステムを導入することでエコ運転への意識も高まり、CO₂排出量の削減に寄与している。第 18 期から、全体のエネルギー使用量を基に CO₂排出量を計測し、定量的な目標を伴った活動に進化している。
一方で創エネについては、本社や支店、営業所等の屋根に合計 300kWh のxxx発電を設置し、一部自社利用しながら、多くは売電して電力の地産地消に貢献している。
また、自社で発生する廃棄物については素材ごとに分別廃棄し、それぞれ廃棄物の収集運搬や処理の資格を有する業者に委託して廃棄している。廃棄物に関しては、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの電子マニフェストを利用し、廃棄物処理法に基づいた処理を実施している。
こうした自社における創エネ・省エネに関する取組みや、前述した地域を巻き込んだ環境負荷低減活動が評価され、2014、2015 年度には、浜松市から「新エネ・省エネ対策トップランナー認定事業者」の最高 S ランクに認定されている。
LP ガスの充填・配送においても、1997 年に設立した㈱xxエネルギーセンターが複数のガス会社との共同充填・共同配送を担うことで、CO₂排出量を従来比▲22%、年間 57 トンの削減効果をもたらした。xxエネルギーセンターでは、エリア配送システムを導入したり、配送ルートの検証・
見直しを常に行うことで、さらなる配送効率の向上と CO₂排出量削減に努めている。また、全自動 16 連回転式充填機や半自動式充填機を用いて、ガス漏れを一切起こさない充填方法が取られているとともに、ガードパイプや荷締めベルト等による容器転倒転落防止対策や、前述した配管コンテスト等による技能向上など、ハード・ソフト両面において、ガス漏れによる大気、水質、土壌の汚染防止や、それに伴う生態系等への影響回避を徹底している。
エネジンの主力事業である LP ガスは、環境汚染が比較的少ないエネルギーである。LP ガスの燃焼時の CO₂排出係数は、原油を1とした場合の指数換算で 0.86 となり、ガソリンや灯油など他の石油製品と比べて約 10%少なくなっている。これは、他の化石燃料の中でも高い環境性能を有しており、高効率機器の普及促進によってさらに削減効果を高めることが可能となる。
このように、エネジンは、自社でも積極的に CO₂排出量の削減や再生可能エネルギーの導入に取り組むとともに、廃棄物の適正処理や、ガス漏れ等による自然環境汚染の回避など、環境負荷低減に寄与している。
静岡銀行は、エネジンの自社内における環境負荷低減への寄与度を定量的に確認するために、従業員一人当たりの CO₂排出量をモニタリングしていく方針である。
<各燃料の燃焼に伴う CO₂排出係数>
炭素排出係数 (t-C/TJ) | 指数 | |
石炭(一般炭) | 24.42 | 1.29 |
A 重油 | 19.32 | 1.02 |
原油 | 19.00 | 1.00 |
ガソリン | 18.72 | 0.99 |
灯油 | 18.71 | 0.98 |
LP ガス | 16.38 | 0.86 |
都市ガス | 13.80 | 0.73 |
資料:日本 LP ガス協会 HP
4. 地域課題との関連性
エネジンは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、5年後の売上高を 170 億円に、従業員数を 410 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この目標を達成することによって、エネジンは、静岡県経済全体に年間 236 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
【南海トラフ巨大地震を想定した地震対策】
エネジンが主要営業エリアとする静岡県は、駿河トラフ・南海トラフおよび相模トラフ沿いで発生する大規模な地震とそれに伴う津波が懸念されている。県は 2013 年に、「静岡県第4次地震被害想定」を発表し、震度分布や津波高、浸水域等の自然現象の想定結果と、人的被害、物的被 害、経済被害などのほか、災害対策を行う上で重要な視点や、タイミングを明らかにした被害・対応シナリオをまとめている。2020 年には、発生頻度と被害規模別にレベル分けをし、「発生頻度が比較的高く、発生すれば大きな被害をもたらす地震・津波」(マグニチュード 8.0~8.7)を「レベル1の地震・津波」に、「発生頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波」(マグニチュード 9 程度)を「レベル2の地震・津波」とした。 なお、エネジンの事業継続計画(BCP)は、被害規模の大きいレベル2を対象に検討されてい る。
駿河トラフ・南海トラフ沿いで発生する地震・津波によるライフライン被害としては、上下水道は発災直後に県内ほぼ全域で断水、下水道は発災1日後にレベル1で5割、レベル2で7割近くが機能支障、電力は発災直後に9割程度が停電、固定電話は発災直後に9割程度が不通、都市ガスは発災直後に7~8割程度が供給停止、LPガスは発災直後に3~4割が機能支障と想定されている。また、避難者は、発災1日後に、レベル1で 83 万人程度、レベル2で 98~ 108 万人程度と見込まれ、直接的経済被害は、予知なしの場合、レベル1で 20.3 兆円程度、レベル2で 21.4~23.8 兆円程度が見込まれる。
推定された被害をできる限り軽減するための行動計画として、県は「地震・津波対策アクションプ ログラム 2013」を取りまとめた。基本目標として「地震・津波から命を守る」、「被災後の県民生活 を守る」、「迅速、かつ着実に復旧、復興を成し遂げる」を掲げ、11 の施策分野と 151 のアクションを設定し、アクションごとに目標指標と数値目標、達成時期を定め、担当局課を明確にして推進している。施策の中では、地域の防災力の強化やライフラインの強化、避難生活の支援体制の充実などを打ち出しており、エネジンの BCP 対策や地域との連携による防災対策などはこうした県の施策に貢献している。
<静岡県第4次地震被害想定/被害・対応シナリオ(LP ガス被害部分を抜粋)>
被害発生期 | 初動期 | 応急復旧期 | 復旧期 | |
被害 | ・建物被害等に伴うボンベの転倒等が発生するが、ガス放出防止器が作動し、ガスの漏洩は少量に止まる。 ・地震を感知したマイコンメーターにより供給が自動遮断される。 ・夜間に発震した場合、施設等で待機している保安要員以外で、自宅等から参集する復旧作業員の参集が遅れる可能性がある。 ・津波浸水域ではガスボ ンベ、バルク容器の流出が予想される。 | ・ガス漏れ通報が寄せられる。 ・ガス供給が停止される場所がある(約 27 万 1 千戸(約 32%)が供給停止) 【最大クラスの場合】 ・約 32 万 8 千戸(約 38%)が供給停止になると想定される。 | ・徐々に機能が回復すると想定される。 | ・通常常態に戻るまでに相当な期間を要する。 【最大クラスの場合】 ・超広域災害や津波被害のため、復旧に要する期間がより長期化する。 |
【SDGs の推進】
静岡県は「SDGs のフロントランナー」を標榜し、2021 年度には、環境ビジネスに取り組んでいる法人を対象に、課題解決に貢献する事業アイデアを表彰する「静岡県 SDGs ビジネスアワード」を創設した。また、県内5市(静岡市、浜松市、富士市、xx市、富士宮市)が内閣府の
「SDGs xx都市」に選定されるなど、県内自治体は SDGs を積極的に推進している。
浜松市は、「森林」、「エネルギー」、「多文化共生」に関する取組みが評価され、最も早い 2018年に「SDGs xx都市」に選定された。なかでも、「エネルギー」では、全国 1 位の規模を持つxxx発電を軸に、再生可能エネルギーによる低炭素社会の実現を目指し「浜松市域“RE100”宣 言」を掲げている。2019 年に、地方創生・SDGs 推進グループを設置し、「浜松市 SDGs 推進プラットフォーム」を立ち上げて、会員同士の交流や情報交換などパートナーシップを促進する場としての土台を構築している。エネジンの地域連携による戦略的 CSR の取組みや防災活動等は、浜松市の目指す SDGs 施策の一環と評価できる。
5. マネジメント体制
エネジンでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xxxxxx代表取締役社長が陣頭指揮を執り、営業サポート部のxxxx取締役常務執行役員と、営業企画部のxxxxxxが中心となって、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者とし、社外に対しては営業企画部が、社内に対しては営業サポート部が中心となって展開していく。具体的には、同社の企業活動の基となる経営計画書に盛り込むことで、経営計画発表会や早朝勉強会等で社内に浸透させ、KPI 達成に向けて、各部署、各チームで実行していく。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxxxxx |
担当部署 | 社外向け:営業企画部 社内向け:営業サポート部 |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とエネジンの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認す る。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行とエネジンが協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するエネジンから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 主席研究員 xx xxx
x000-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x TEL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2021 年 11 月 30 日
株式会社 日本格付研究所
評価対象: エネジン株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナ
ンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行がエネジン株式会社(「エネジン」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包摂的 で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体 である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的 とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、エネジンの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、エネジンがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
お客さま | ①PIFの申込み | 当行 | ②PIF評価依頼 | 静岡経済研究所 | レビュー依頼 | JCR |
③インパクトの包括分析・特定 | ||||||
⑤目標・KPI等の協議 | ④インパクトの還元 ⑥目標・KPI等の報告 | コメントバック レビュー依頼 | ||||
⑨融資実行 PIF評価書交付 | ⑧PIF評価書作成 | ⑦目標・KPI等の評価 コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100人以下など。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるエネジンから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲
で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価本部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx x
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000