Social transformation framework
本資料は(一財)社会変革推進財団との業務委託契約に基づき、SIMIの責任において制作されました。原著の著作権は当該資料を作成した作者にあり、日本語化された資料の著作権は(一財)社会変革推進財団及び(一財)社会的インパクト・マネジメント・イニチアチブにあります。(xxxxx://xxxx.xx.xx/xxx)
ソーシャル・トランスフォーメーション・フレームワーク
企業が誰一人取り残さないために
Social transformation framework
To measure and incentivize companies to leave no one behind
ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)
2021年1月
xxxx 抄訳・まとめ
• 新型コロナウイルスの世界的流行によって、今の経済モデルは多くの人々を取り残していることが改めて浮き彫りになり、2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための、今後10年の道のりがいかに険しいかが明らかになりました。
• ワールド・ベンチマーク・アライアンス(WBA)は、SDGsの各目標に個別に取り組むのではなく、7つの特定領域におけるトランスフォーメーション(構造的変革)を促すベンチマークを制定することで、社会、地球と経済を持続可能なものに変革していくことを目指しています。
• WBAはSDGs達成における民間企業の重要な役割を認識し、企業の貢献を評価し、促すことを目的に「人」を中心に据えた(「ソーシャル」)ベンチマークを定めました。この資料は、WBAのソーシャル・トランスフォメーションへのアプローチをまとめたものです。
• WBAはそのベンチマークを用いて、最も影響力のある世界の2000社(SDG2000:17-18
ページ参照)によるSDGsへの貢献を評価、比較しています。
• ソーシャル・トランスフォメーションは人権尊重、平等の実現、人々のエンパ ワーメントを通じて、普遍的な人間開発の達成を目指すものです。右の図にあるように、ソーシャル・トランスフォメーションは他の6つの領域(食料と農業、
脱炭素とエネルギー、資源循環、デジタル、都市、金融システム)の中心にあり、それらを支え、促進します。
(抄訳注)WBAが定める7つの構造的変革の領域についての詳しい説明は、GRC掲載の「企業のSDGs貢献評価新ランキングに向けて」をご参照ください。
STフレームワークは3つの要素によって構成されます:
● 企業に期待される行動目標
● その目標への到達度を計る18の社会的指標
● ソーシャル・トランスフォメーションを適用する3つの作業の流れ
• ソーシャル・トランスフォメーション(ST)フレームワークは企業が「誰一人取り残さない」ために社会が期待する行動を定めるものです。人権の尊重、ディーセント・ワーク(収入と社会保護が適切な、働きがいのある生産的な仕事)の
提供、倫理的な行動によって企業は
SDGs達成に貢献できます。
• WBAのSTフレームワークは、この領域における企業のパフォーマンスの評価と企業同士の比較を可能にし、企業の SDGsへの貢献を促すことを目指しています。
企業に期待される行動目標:人権の尊重
国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)に基づく、以下の期待目標を設定します。
(1)人権尊重へのコミットメントを企業方針として明文化しているか?
(2)企業の直接的な行動、または商業取引による間接的な行動によって発生する人権侵害を認識し、いかに回避・対処し、予防していくのかを説明する、人権保護のデューデリジェンス(注意義務)を実践しているか?
(3)人権尊重へのコミットメントを企業文化と経営手法に反映させているか?
(4)直接・間接的な人権侵害に対して救済措置を提供するか、提供に協力しているか?
企業に期待される行動目標:人権の尊重
企業が尊重すべき人権を有する人たちは多岐にわたりますが、特に労働者・従業員の人権に関しては、国際労働機関(ILO)が定める「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に則する以下の原則の順守が最低限、実践されていることが期待目標として期待されます。
(1)結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認
(2)あらゆる形態の強制労働の禁止
(3)児童労働の実効的な廃止
(4)雇用及び職業における差別の排除
ただし、強制労働と児童労働に関しては特定の産業セクターに顕著なため、STフレームワークでは個別に評価しないこととしています。
企業に期待される行動目標:ディーセント・ワーク(収入と社会保護が適切な、働きがいのある生産的な仕事)の提供
• 企業によるディーセント・ワークに関する取り組みはSDG目標8「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する」(具体的には目標8.5、8.7、8.8)への貢献に寄与します。
• WBAは以下の4つのトピックを、産業セクターや地域をまたぐ課題と捉え、評価の中心に据えています:生活賃金、ダイバーシティとバランス、健康で安全な職場、労
働者・従業員のエンパワーメント
• ディーセント・ワークには差別、児童労働、強制労働、労働者抑圧の撤廃が内包されており、STフレームワークではこれらを個別に評価することはせず、問題がより顕著な他のトランスフォメーション領域で取り上げます。
企業に期待される行動目標:ディーセント・ワーク(収入と社会保護が適切な、働きがいのある生産的な仕事)の提供
ディーセント・ワークに関する期待目標には以下の4つがあります。
(5) 自社の労働者・従業員に健康(身体とメンタル)で安全(あらゆる暴力、ハラスメント、脅迫からの自由を含む)な職場を提供し、バリューチェーン上においても健康で安全な職場を保証する支援を行っているか?
(6) 自社の労働者・従業員に生活賃金を保証し、バリューチェーン上の労働者・従業員に生活賃金が支払われるよう支援しているか?
(7) 自社の労働者・従業員のエンパワーメントによって、労働者・従業員自身もしくは代表者が自らの利益を主張できるか? 自社のみならずバリューチェーン上における労働者のエンパワーメントも支援しているか?
(8) 自社の経営管理の全レベルにおいて、妥当な多様性(性別、人種・民族など)の
「バランス」を達成しているか?バリューチェーン上においてもその取り組みを支援して
8
いるか?
企業に期待される行動目標:倫理的な行動
• 英国にあるInstitute of Business Ethicsは、「倫理とは法的拘束を超えたものであり、企業の価値観にもとづく裁量的な決定と行動に反映されるもの」と説明しています。
• 倫理的な行動への期待目標として、WBAはSDG達成への貢献度が高 く、国際条約などで基準が合意されていない、以下の4つの分野を設定しました:データのプライバシー保護、xxな法人税課税、贈収賄と汚職、ロビイングと政治活動。
企業に期待される行動目標:倫理的な行動
倫理的な行動への期待目標には以下があります。
(9) 従業員や労働者、ユーザー、顧客、その他企業活動が影響を 与えうるあらゆる個人のプライバシーの権利を尊重しているか? (10) 社会的責任に即した法人税納税をしているか?経営トップによる適切な監督、管理と透明性に基づき、事業拠点国の法律の文言と精神の両方を遵守し、価値を創出している国において、適切な時期に適切な税額を支払っているか?
企業に期待される行動目標:倫理的な行動
(11) バリューチェーンを含む自社の活動に関して、あらゆる形態の贈収賄と汚職を排除しているか?また、贈収賄と汚職防止に対して、経営トップが監督し、適切な管理体制と情報開示に支えられた組織的なアプローチをとっているか?
(12) 直接および間接のロビー活動や政治的関与に対して、経営 トップが監督し、適切な管理体制と透明性に基づき、少なくともSDGsや国際的な人権の枠組みに則った社会的責任のあるアプローチをしているか?
主要ソーシャル指標(Core Social Indicators: CSI)
• WBAは、各企業のソーシャル・トランスフォメーションにおける期待目標への進捗を評価するために、既存のツールやフレームワークに基づく主要なソーシャル指標
(CSI)を設定しました。CSIは上記の期待を反映し、企業がこれらの期待に応えているかどうかを評価するものです。CSIはソーシャル・トランスフォメーションの「道しるべ」といえます。
• CSIは企業による最低限の社会的責任を示しています。すべての企業がCSIの要求事項を満たす必要があり、言い換えれば、どの企業もこの最低ラインを下回ることがあってはならない、と言えます。
• CSIは多岐にわたるステークホルダーが参画するプロセスと、多くの既存の国際的に合意された基準との整合性を確保したうえで設定されました。CSIの詳しい説明は原文の資料37~60ページに記載されています。
以下の表は、企業に期待される目標と主要ソーシャル指標をまとめたものです。
人権尊重
ディーセント・ワークの提供
倫理的な行動
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ソーシャル・トランスフォメーションを適用する3つの作業
• 「誰一人取り残さない」という原則を、他の6つの領域のトランスフォメー ションに反映させること。STフレームワークは、CSIがどのように他の領域 におけるトランスフォメーションに組み入れられ、その領域に特化した指標を補完するかを説明しています。CSIへのコミットメントがないと、どの領域でも企業の評価が下がることになります。
• セクター横断的かつSDGs達成への相乗効果が期待される分野の「スポットライト・ベンチマーク」を選定し、活用すること。
• 他の重要な変革分野におけるSDGsインパクトに取り組む既存のイニシアティブやWBAのパートナーの活動を支援すること。特に、分野を横断し、他の構造的変革を促す課題に注力すること。
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ソーシャル・トランスフォメーションのスコープ:産業と企業の選定
産業
7領域
WBAは、それぞれの領域での構造的変革に最も影響のある産業を選定しました。産業によっては一つ以上の領域で影響を持つことがある一方、すべての産業においてソーシャル・トランスフォメーションは必須です。
WBAは、あるシステムの中で特に影響力が大きいプレーヤーを「キーストーン(要石)・アクター」と呼ぶコンセプトに倣い、ある産業において他と比較して大きな影響を持つ「キーストーン企業」を 選定し、ベンチマークを用いた評価とランキングを行っています。「キーストーン企業」は、その行動によって変革が起こり、構造的変革を左右しうる重要不可欠な企業群です。
グローバルに活動を展開しており、特に途上国での存在が大きい
グローバルなガバナンスのプロセスや体制に影響を与えている
子会社やサプライチェーンによってグローバルなエコシステムを構築している
影響のあるレベルのグローバルな製造シェアかサービス提供、もしくは両方
その産業において、圧倒的なグローバルレベルの製造規模、もしくはサービスの収益と売り上げ数がある
これらの「キーストーン企業」は右の5つの原則を基に選定しています。
ソーシャル・トランスフォーメーションのフレームワーク
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「キーストーン企業」は「SDG2000」と称し、最初のリストは2020年1月に発表され、今後毎年更新される予定です。「SDG2000」には日本企業が150社入っています。
SDG2000と称する「キーストーン企業」
ソーシャル・トランスフォーメーションのフレームワーク
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SDG2000企業の評価
• WBAは、SDG2000企業のSDG貢献度をそれぞれの領域のベンチマークを用いて評価します。その際、すべての領域においてソーシャル・トランスフォメーションのCSIが用いられ、CSIが全体評価を決める上で最低でも20%の重みを持ちます。
• 2022年までに、SDG2000社全社のソーシャル・トランスフォメーション評価を実施しています。
• スポットライト・ベンチマークとして、WBAはこれまで「企業と人権」と「ジェン ダー」を取り上げていますが、次のスポットライト・ベンチマークは「生活賃金」を取り上げます。
日本企業のランキング例
※本ページは日本語まとめの際に独自につけたものです。
日本企業150社を含む SDG2000社の評価・ランキングはこちらから検索できます。
SDG2000 | World Benchmarking Alliance
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