発行企業名 株式会社 ワカミヤ商会 所 在 地 岐阜県大垣市高橋町 1 丁目 17 代 表 者 佐藤 有 事業内 容 医療機器製造販売・福祉用具販売レンタル 資 本 金 10 百万円 設 立 昭和 36 年 9 月 28 日 第三者評価機関 株式会社 格付投資情報センター評価リポート:https://www.r-i.co.jp/rating/esg/index.html
2023 年 6 月 26 日
株式会社 ワカミヤ商会との
ポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約締結について
岐阜信用金庫(理事長 好岡 政宏)は、持続可能な社会への貢献を共に実現するため、株式会社 ワカミヤ商会(代表取締役 佐藤 有)と、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結いたしましたのでお知らせします。
当金庫は、引き続き、地域金融機関としての責任を果たし、ポジティブ・インパクト・ファイナンスの普及と持続可能な社会を実現するために、お客さまの目標にあわせたサポートを行い、社会的、環境的、経済的にポジティブなインパクトの実現に積極的に取り組んでい
きます。
記
【契約内容】
融 資 金 額 | 100 百万円 |
期 間 | 7 年 |
資 金 使 途 | 事業資金 |
【企業概要】
発行企業名 | 株式会社 ワカミヤ商会 |
所 在 地 | 岐阜県大垣市高橋町 1 丁目 17 |
代 表 者 | 佐藤 有 |
事業内 容 | 医療機器製造販売・福祉用具販売レンタル |
資 本 金 | 10 百万円 |
設 立 | 昭和 36 年 9 月 28 日 |
第三者評価機関 | 株式会社 格付投資情報センター |
以 上
株式会社ワカミヤ商会
ポジティブインパクトファイナンス評価書
2023 年 6 月 26 日
岐阜信用金庫は、株式会社ワカミヤ商会(以下、「ワカミヤ商会」)に対してポジティブインパク トファイナンス(以下、「PIF」)を実施するにあたって、同社の事業活動が環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブインパクトおよびネガティブインパクト)を分析・評価した。この分析・評価は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した PIF 原則および PIF 実施ガイド(モデル・フレームワーク)、ESG 金融ハイレベル・パネルにおいてポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、岐阜信用金庫
が開発した評価体系に基づいている。
目次
企業名 | 株式会社ワカミヤ商会 |
本社所在地 | 岐阜県大垣市高橋町 1 丁目 17 |
代表者 | 代表取締役社長 佐藤 有 |
資本金 | 1,000 万円 |
売上高 | 7.3 億円(2022 年 5 月期) |
設立 | 昭和 36 年(1961 年)9 月 |
事業内容 | アスモ製品製造販売、医療機器・福祉用具販売レンタル |
従業員数 | 38 名(2023 年 4 月末現在) |
1947 年 3 月 | 大垣市竹島町にて若宮器械店を創業、医療器械販売事業を開始。 |
1961 年 | 樹脂成型品加工業の成満化学工業(株)を設立、のち若宮器械店と成 満化学工業を統合。 |
1961 年 | 株式会社ワカミヤ商会を設立、医療器械店販売業のみに特化。 |
1979 年 | ホームヘルスケアワカミヤを大垣市民病院前に開設(のちに介護保険法施 行により、ワカミヤ商会に移転統合、廃止)。 |
1992 年 | レンタルドクター開設。レンタルベット、車椅子、呼吸器、杖、歩行器、床ずれ 防止マットレスなどのレンタルを開始。大垣市に於ける、ギャチベットなどの貸与事業開始。 |
1995 年 | 株式会社ワカミヤ商会本社 新築。 |
2000 年 | アシストケアワカミヤを開設。介護保険法施行にともない、従来から営業中の医療器、福祉用具レンタルのレンタルドクターを全面廃止し、アシストケアワカミヤに全権、移行。 岐阜県内に於ける介護保険法に基く、福祉用具貸与事業を開始。同施設 内にて営業(事業所番号 2172100352)。 |
2004 年 | 同業他社向けに福祉用具レンタル卸を開始。愛知県、三重県、岐阜県、奈 良県、静岡県などの業者に卸し事業開始。 |
2005 年 | 自社製初のオリジナル商品、尿コップ(商品名アスモ、ハルンカップ 6.5 オンス、7.0 オンス)とその蓋を新発売、意匠権取得、全国展開を開始。 折畳み式尿コップ開発、新発売。 |
2007 年 | ワンタッチ開閉スクリュースピッツを開発(2012.8 特許取得)。 |
2010 年 | 尿コップ生産の内製化を実施。 本社機能を残し大垣市へ移転、大垣南営業所開設。 |
同社は岐阜県大垣市に本社を構える医療用品・介護用品の製造販売・レンタル業である。 医療器械販売事業として創業した同社は、時代の変遷に沿った医療・介護業界の進展にあわ
せて販売に加えて医療機器・福祉用具のレンタル事業などの事業展開を図ってきており、現在では以下の 3 事業を中核事業としている。
「医療用品販売、レンタル事業」
「医療・介護用マットレスレンタル事業」
「紙コップ製造販売事業」
① 医療用品販売、レンタル事業
【特徴】 同社では社内での医療機器・福祉用具のメンテナンス体制の確立により、新品のみでなく中古品を含めた最適な用品提案を可能とし、営業エリアにおける医療・介護コストの低減に貢献している。中古品の 3 年間長期 保証体制も特徴的である。 |
【特徴】 同社ではマットレス洗浄専用工場を保有し、大型洗浄機、乾燥機を中心とした洗浄ラインの活用により、全国でも数少ない高品質なマットレス洗浄サービスを提供しており、受注先よりその洗浄品質に高い評価を得ている。 |
同社独自のメンテナンス体制やアフターサービスにより安全・安心につながる高品質な医療機器・福祉用具を低コストにて提供している。メンテナンスノウハウの確立により、新品のみならず中古品についても取り扱いがある。
② 医療・介護用マットレスレンタル事業
医療・介護用マットレスのレンタル事業に付随するサービスとしてマットレス洗浄サービスを提供している。マットレス洗浄サービスを提供する事業者は同社営業エリアでは唯一となり、同社提供製品に加えて、県外事業者からも受注を獲得している。
③ 紙コップ製造販売事業
採尿紙コップよりスタートした紙コップ製造販売事業。現在では自社ブランド製品に加えて歯科医院向け紙コップの OEM 製造販売、飲料用紙コップの OEM 製造販売へと事業拡大を果たしている。
<.. image(紙コップに入ったコーヒー 自動的に生成された説明) removed ..> | 【特徴】 事業開始当初は海外業務提携先へ生産委託を行っていた紙コップ製造について、近年では組立工程以降の国内内製化を図っている。 2023 年度に新規構築した紙コップ組立専用工場にて、組立、画像検査、梱包までの各工程を自動化した専用製造ラインの活用により高品質な紙コップ 組立を実現している。 |
元来医療向け紙コップ製造よりスタートした同社紙コップ製造技術力への評価に加え、小ロット対応力により飲料に限らず食料品向け紙容器に関する引き合いも増加傾向にあるなど、今後同社事業の新たな柱として成長が期待される事業分野となっている。
これら 3 事業を中核として事業展開を図ってきた同社は、医療・福祉の現場において必要なものを必要な時に、必要な人へ届ける事業展開にて主要営業エリアである岐阜県内の医療業界、福祉業界を中心に高い評価を得ている。
①経営理念
「企業理念」
医療の先進の技術と、最適なヘルスケア用品にて環境を創造しサポートします。
「スローガン」
Independent Living with Dignity As human,for human.尊厳ある自立生活、人として、人のために
「Our Vision」
現在、日本そして世界に目を向けると、著しく高齢化が進む日本。企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化を遂げています。
今、何が必要とされているのか。経営者・社員一人ひとりが自らなすべきことを考え、行動を改革し、事業そのものを変革していきます。
②組織体制
同社においては代表取締役のもと、専務取締役が各事業の統括を行い、「医療用品販売・レンタル事業部」「医療・介護用マットレスレンタル事業部」「紙コップ製造・販売事業部」の 3 事業部にて事業を展開している。
代表取締役
専務取締役
(事業統括)
医療用品販売・
レンタル事業部
医療・介護用
マットレスレンタル事業部
紙コップ製造・
販売事業部
同社では SDGs 宣言を掲げ、「社会貢献」、「人権、雇用」、「社会課題の解決」を中心に持続可能な社会の実現に寄与する事業活動を展開している。
① 社会貢献
ニーズに対応した多様な介護用品の販売・レンタルにより、家族への負担の少ない介護体制の実現に貢献。
② 人権・雇用
多様な人材の活用を通じて、雇用の維持や多様な考え方を取り入れ、会社の成長に寄与。
③ 社会課題の解決
医療用コップの自社開発や介護用品のリユースにより、医療・介護現場の課題解決。
<.. image(テキスト 中程度の精度で自動的に生成された説明) removed ..>
①マットレス洗浄
大型洗浄機や厚型マットレスに対応した同社オリジナル乾燥機を兼ね備えた専用工場を保有 し、マットレス洗浄サービスの提供を通じて介護用マットレスの衛生環境維持・向上に貢献している。同社提供製品のみならず、県内外介護用品レンタル事業者からの受注にも対応している。
②リユース品の長期保証
医療・介護用品レンタルで蓄積されたメンテナンスノウハウを活かし、高品質なリユース品、レンタル品の提供を実現している。リユース品は 3 年間の長期保証により、安心して利用できる体制を構築し、地域における医療コスト、介護コストの軽減につなげている。
①紙コップ製造の小ロット対応
大手メーカーと比較し、小ロットに対応した製造体制を保有している。必要な時に必要な量を提供することで、不使用在庫・廃棄物の発生を抑制している。
②紙コップ製造の内製化
完成品状態での輸送コストの増大、在庫保管コストの増大への対策として、組立工程の内製化を進めている。内製化に伴い、製品の安定供給に加え、輸送時の環境負荷低減に努めている。
①生産ラインの機械化
マットレス洗浄工程や紙コップ製造工程において、積極的に機械化を推進している。機械化すべき工程は機械化しながらの作業標準化、システム活用による進捗管理などにより、多様な人材が高品質なサービスを提供できる基盤を整備している。
②多様な人材の雇用
生産ラインの機械化に伴い、外国籍人材や障がい者、高齢者など、より多くの人が働ける環境整備に努めている。外国籍人材に関しては、通訳の雇用や一時帰国後の復帰制度、求人情報の外国語対応などにより、ブラジル人、中国人、ベトナム人の雇用実績を有している。
インパクトの特定のため、同社既存主力事業である「医療・介護用品販売、レンタル事業(医療・介護用マットレスレンタル事業を含む)」および、今後新たな事業の柱への成長が期待される
「紙コップ製造販売事業」についてそれぞれバリューチェーン分析を実施した。
①「医療・介護用品販売、レンタル事業」
同社の企業理念に基づき主要取扱製品となる車椅子やマットレスをはじめ、医療・福祉の現場に最適な用品の選定、提案、調達提供といった役割を担っており、創業以来医療・福祉の現場に携わり現場と意見交換を交わしてきた経験、ノウハウがこれら最適な用品の選定、提案を可能とする同社の優位性へとつながっている。
また、同事業においては医療・介護用品のメンテナンスについても同社内にて完結させるメンテナンス技術力を保有していることが同業他社との差別化要素となっており、メンテナンス後製品の提供による川下事業者のコスト低減、製品提供の安定化へとつなげている。
②「紙コップ製造販売事業」
印刷・裁断済みの紙コップ原料を仕入れ、同社にて組立・検品工程を担っている。
同事業の特徴として、医療用紙コップの製造から事業を開始したことに起因する高精度紙コップ組立技術に加え、国内同業他社と比較し小ロット製造への対応力の高さが挙げられる。
同事業については今後川下の事業分野を拡大していく方針であり、現在対応している規格サイズ紙コップに加え、特殊形状、サイズへの対応力を強化していくことで提供する付加価値の向上に努めていく方針となっている。
上記 2 事業を中心とする同社の事業の特徴として、機械化、自動化できる工程を機械化推進することによる品質安定化、業務効率化を図っている。さらに標準化した業務は多様な人材での対応が可能であり、同社業務の提供能力の安定化と地域における雇用機会創出の両立を果たしている。
同社のバリューチェーン図(図は同社提供資料をもとに岐阜信用金庫にて作成)
川上の事業
同社の事業
川下の事業
医療・介護用品
製造
医療・介護用品販
売、レンタル
医療・介護用品メ
ンテナンス
医療サービス、
介護サービス
紙コップ原料
医療用・飲料用等紙コップ製造・販売
医療現場等
飲料メーカー等
先述のバリューチェーン分析の結果をもとに、インパクトマッピングを実施する。
同社の事業および川上・川下の事業を国際産業標準分類(ISIC)上の業種カテゴリに適用させた上、UNEP FI が提供するインパクトレーダーを用いて「ポジティブインパクト」(以下 PI)と「ネガティブインパクト」(以下 NI)を想定する。
同社の事業については「その他の家庭用品卸売業(ISIC:4649)」、「段ボール及び板紙並びに紙製・板紙製容器製造業(ISIC:1702)」を、川上の事業については「段ボール及び板紙並びに紙製・板紙製容器製造業(ISIC:1702)」、「自転車及び車椅子製造業(ISIC:3092)」、
「医療及び歯科用機器・備品製造業(ISIC:3250)」を、川下の事業については「病院事業
(ISIC:8610)」、「居住介護施設(ISIC:8710)」、「高齢者/障害者用居住ケアサービス
(ISIC:8730)」をそれぞれ適用し、発生するインパクトの検証を行った。
◎:主要カテゴリ ○:関連カテゴリ
川上の事業 | 同社の事業 | |||||||||
国際産業標準分類 インパクトカテゴリ | 【1702】 段ボール及び板紙並びに紙製・板紙製容器製造業 | 【3092】 自転車及び車椅子製造業 | 【3250】 医療及び歯科用機器・備品製造業 | 【4649】 その他の家庭用品卸売業 | 【1702】 段ボール及び板紙並びに紙製・板紙製容器製造業 | |||||
PI | NI | PI | NI | PI | NI | PI | NI | PI | NI | |
水 | ||||||||||
食糧 | ||||||||||
住居 | ||||||||||
健康・衛生 | ○ | ○ | ◎ | ○ | ||||||
教育 | ||||||||||
雇用 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
エネルギー | ||||||||||
移動手段 | ◎ | |||||||||
情報 | ||||||||||
文化・伝統 | ||||||||||
人格と人の安全保障 | ||||||||||
正義・公正 | ||||||||||
強固な制度・平和・安定 | ||||||||||
水(質) | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | |||||
大気 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
土壌 | ○ | ○ | ||||||||
生物多様性と生態系サービス | ○ | |||||||||
資源効❹・安全性 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
気候 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
廃棄物 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ◎ | |||||
包括的で健全な経済 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
経済収束 | ○ |
◎:主要カテゴリ ○:関連カテゴリ
川下の事業 | ||||||
国際産業標準分類 インパクトカテゴリ | 【8610】病院事業 | 【8710】 居住介護施設 | 【8730】 高齢者/障害者用居住ケアサービス | |||
PI | NI | PI | NI | PI | NI | |
水 | ||||||
食糧 | ||||||
住居 | ○ | ○ | ||||
健康・衛生 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
教育 | ||||||
雇用 | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
エネルギー | ||||||
移動手段 | ||||||
情報 | ||||||
文化・伝統 | ||||||
人格と人の安全保障 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
正義・公正 | ||||||
強固な制度・平和・安定 | ||||||
水(質) | ||||||
大気 | ||||||
土壌 | ||||||
生物多様性と生態系サービス | ||||||
資源効❹・安全性 | ||||||
気候 | ○ | |||||
廃棄物 | ○ | ○ | ○ | |||
包括的で健全な経済 | ○ | |||||
経済収束 |
上表のうち、川上の事業における PI である「経済収束」、NI である「土壌」、川下の事業における PI である「人格と人の安全保障」、NI である「人格と人の安全保障」については、同社事業との関連性が希薄と判断し検証を省略する。
同社の事業
PI | 「健康・衛生」「雇用」「包括的で健全な経済」 |
NI | 「雇用」「水(質)」「大気」「生物多様性と生態系サービス」「資源効率・安全性」 「気候」「廃棄物」 |
【社会面】
◆「健康・衛生」
医療・介護用品の選定、提供において最適な用品の活用により利用者の健康や福祉を増進させるという PI が発現する。
上記は SDG3「すべての人に健康と福祉を」に該当する。
□「3.4:2030 年までに、非感染性疾患による若年層の死亡率を予防や治療により 3 分の 1減らし、心の健康と福祉を推進する」
◆「雇用」
従業員の雇用の創出という PI と、労働形態によっては労働者の健康状態が脅かされるという NI が発現する。
同社では多国籍にわたる労働者の直接採用に加え、地域の障がい者雇用機会の増大を図るなど PI の拡大に努めており、また医療・介護用品メンテナンス作業においても機械化・自動化を進めることで労働形態の改善を通じた NI の低減に努めている。
上記は SDG8「働きがいも経済成長も」に該当する。
□「8.5:2030 年までに、若者や障害者を含むすべての女性と男性にとって、完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい仕事を実現し、同一労働同一賃金を達成する。」
□「8.8:移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある人々を含め、すべての労働者を対象に、労働基本権を保護し安全・安心な労働環境を促進する。」
【環境面】
◆「水(質)」、「大気」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」
医療・介護ベッド用マットレスの洗浄をはじめとした用品メンテナンスや紙コップの製造、各製品の輸送プロセスにおいて水質や大気への汚染が発生する可能性があることに加え、非効率なプロセスによるエネルギーの過剰利用や温室効果ガスの排出量増加が懸念される。また、製造工程での廃棄物や過剰包装による廃棄物増加などにより環境問題が発生する可能性があり、 NI が発現する。
さらに、川上の医療・介護用品製造や紙コップ原料製造においても非効率なプロセスによるエネルギーの過剰利用や温室効果ガスの排出量増加といった NI が発現し、川下の医療・介護の現場においても不必要な新品利用等により廃棄物増加などといった環境問題が発生する可能性があり、NI が発現する。
同社では製造工程の機械化や内製化による輸送プロセスの効率化、リユース事業の展開により同社事業及び川上・川下事業における NI の更なる低減に取り組んでいる。また、同社の紙コップ製造販売事業においては小ロット対応が特徴となり、必要なタイミングで必要最小限の数量での提供を実現することにより、未利用廃棄に至る紙コップ在庫の削減に貢献している。
上記は SDG12「つくる責任つかう責任」、SDG13「気候変動に具体的な対策を」に該当する。
□「12.4:2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクル全体を通して化学物質や廃棄物の環境に配慮した管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小限に抑えるため、大気、水、土壌への化学物質や廃棄物の放出を大幅に減らす。」
□「12.5:2030 年までに、廃棄物の発生を、予防、削減(リデュース)、再生利用(リサイクル)や再利用(リユース)により大幅に減らす。」
◆「生物多様性と生態系サービス」
製品輸送過程において生態系への影響が見込まれ、非効率な輸送は NI が発現する。
同社では内製化により、海外からの完成品輸入量を減少させ輸送プロセスの効率化を図り、 NI の低減に努めている。
上記は SDG12「つくる責任つかう責任」に該当する。
【経済面】
◆「包括的で健全な経済」
事業活動により地域経済が活性化するという PI が発現する。
同社では今後既存主力事業である「医療・介護用品販売、レンタル事業」に加え、新たな事業の柱として「紙コップ製造販売事業」を拡充し、地域経済の活性化を図り、PI 拡大に努めている。
上記は SDG8「働きがいも経済成長も」、SDG9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に該当する。
□「8.8:移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある人々を含め、すべての労働者を対象に、労働基本権を保護し安全・安心な労働環境を促進する。」
□「9.1:経済発展と人間の幸福をサポートするため、すべての人々が容易かつ公平に利用できることに重点を置きながら、地域内および国境を越えたインフラを含む、質が高く信頼性があり持続可能でレジリエントなインフラを開発する。」
□「9.4:2030 年までに、インフラを改良し持続可能な産業につくり変える。そのために、すべての国々が自国の能力に応じた取り組みを行いながら、資源利用効率の向上とクリーンで環境に配慮した技術・産業プロセスの導入を拡大する。」
川上の事業
PI | 「健康・衛生」「雇用」「移動手段」「包括的で健全な経済」「経済収束」 |
NI | 「健康・衛生」「雇用」「水(質)」「大気」「土壌」「資源効率・安全性」「気候」「廃 棄物」 |
【社会面】
◆「移動手段」
車椅子製造において高齢者や障がい者等においても安全・安心な移動手段の普及を増進させるというPI が発現する。
同社では、医療・介護用品販売、レンタル事業の主要取扱製品でもある車椅子の安定提供により PI の拡大に貢献している。
PI | 「住居」「健康・衛生」「雇用」「人格と人の安全保障」 |
NI | 「健康・衛生」「雇用」「人格と人の安全保障」「気候」「廃棄物」「包括的で健全な経 済」 |
上記は SDG3「すべての人に健康と福祉を」に該当する。川下の事業
◆「住居」
医療・介護の現場において住居環境の改善に資することにより、PI が発現する。
同社ではこれまでも最適な用品の選定、提案を独自ノウハウとして蓄積、活用してきており、医療・介護用品の提供という側面より同カテゴリにおける PI 拡大に努めている。
上記は SDG3「すべての人に健康と福祉を」に該当する。
□「3.4:2030 年までに、非感染性疾患による若年層の死亡率を予防や治療により 3 分の 1減らし、心の健康と福祉を推進する」
下図は「バリューチェーン分析」「インパクトマッピング」の結果を踏まえて、同社のバリューチェーンが与えるインパクトを可視化したものである。
保健・衛生体制 雇用創出 地域経済活性化の向上
SDG3
SDG8
SDG9
保健・衛生体制の向上
SDG3
保健・衛生体制
の向上
SDG3
正の影響
川上の事業
同社の事業
川下の事業
医療・介護用品
製造
医療・介護用品販売、
レンタル
医療・介護用品メン
テナンス
医療サービス、介護サービス
紙コップ原料
製造
医療用・飲料用等紙コップ製造・販売
医療現場等
飲料メーカー等
労働負荷
環境負荷
SDG8
SDG12
SDG13
負の影響
以上を踏まえて同社のインパクトを下記の 3 つに特定した。
【重要なインパクト】
「環境に配慮したレンタル・リユース事業の展開」
「小ロット生産体制を特徴とした紙コップ製造販売事業の展開」
「雇用機会の増大を通じた地域社会の発展」
① 環境に配慮したレンタル・リユース事業の展開
同社既存主力事業である「医療・介護用品販売、レンタル事業」については、社内における医療・介護用品メンテナンスノウハウの活用により新品のみでなくリユース品の提案、レンタル利用の提案を可能とし、顧客のコスト低減への貢献、充実した医療・介護体制を整備する用品提供を通じて地域の保健・衛生体制の向上に寄与し、利用者の健康や福祉の増進に貢献しているとともに、安易な新品利用、利用済み製品の廃棄を減少させ環境負荷についても低減させている。
この事業のなかでも医療・介護用マットレスの洗浄サービスは同社主要営業エリアである岐阜県内のみならず、県外事業者からも受注を獲得するに至っているものであり、衛生的に利用できるマットレスの長寿命化に貢献することで利用者の健康や福祉の増進に貢献しているとともに、その洗浄に要する薬剤、エネルギーについても抑制を図ることで環境負荷の低減活動を実施してきている。
現状の同社体制において、このマットレス洗浄サービスについては提供可能サービス量を需要量が上回り、受注を抑制している状況にあり、今後「サービス提供プロセスの見直し、改善を通じて提供可能サービス量を増加させていく」ことが課題となっている。
この課題解決に向け、具体的には現状のボトルネック工程となっている「人的作業に依存した梱包工程の機械化、自動化推進」を図っていく計画であり、この体制整備に加えてサービス提供プロセス全体での継続的改善活動により提供可能サービス量の引き上げを実現していくことで利用者の健康や福祉の増進への貢献を拡大していく。
また、同社においては現在新規事業として事業用廃棄物のリサイクル事業の実施体制整備に取り組んでおり、このリサイクル事業の過程で発生する再生エネルギーをマットレス洗浄サービスで用いるエネルギーへ充当していく方針である。
この循環の実現に向け、「リサイクル事業の早期事業化および再生エネルギーを活用したマットレス洗浄体制の整備」を課題として設定し、課題解決に向けた諸施策を着実に実行していくことで環境負荷の低減活動を強化していく。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「健康・衛生」「資源効率・安全性」
「廃棄物」のカテゴリに該当し、社会的側面の PI を拡大し、環境的側面の NI を緩和すると考えられる。
② 小ロット生産体制を特徴とした紙コップ製造販売事業の展開
同社事業の新たな柱として育成を進めている「紙コップ製造販売事業」については、国内の競合となる大手メーカーが1千万個単位を基本受注ロットとすることと比較し、同社では 50 万個
規模での小ロットでの製造を平均リードタイム 2 週間にて対応可能とする点に特徴を有している。食料品メーカー、飲料メーカー等においては環境負荷軽減に向けてプラスチック容器から紙容
器への移行を進める動きが発生している一方、季節性新製品やキャンペーンの増加などによるマーケティング施策の実施により容器デザインの変更が従来以上に短サイクルにて実施されている。
この短サイクルでの紙容器のデザイン変更の傾向は小ロット対応を特徴とする同社紙コップ製造販売事業において事業機会となるものであり、また同社が必要最小限のロット規模での紙コップ・容器製造を担っていくことで、業界全体では必要以上の大ロット製造による不使用在庫・廃棄物の発生といった環境負荷軽減にも資するものとなる。
医療分野で培ったノウハウを生かし、新分野展開を図ることで、経済活性化に貢献する。
今後、現状の医療用・飲料用紙コップ以外の紙コップ・紙容器の製造を受注していくにあたっては、製造面において「紙容器サイズ・形状の多様化に対応した組立製造体制の構築」が、販路面において「紙コップ製造技術の適用分野拡大に向けた新規販路の開拓」が課題となる。
製造面の課題に対しては、現状規格サイズ・形状の紙コップ製造ラインを確立した段階にあり、今後対応サイズの拡張および形状多様化に向けた試作開発に着手していく方針である。
また、販路面については既存の受注分野以外の食料品向け容器等を重点分野と設定し販路開拓活動を開始しており、試作開発とあわせ早期の受注確保を目指し、同事業の規模拡大を果たしていく方針である。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「資源効率・安全性」「包括的で健全な経済」のカテゴリに該当し、経済的側面の PI を拡大し、環境的側面の NI を緩和すると考えられる。
③ 雇用機会の増大を通じた地域社会の発展
同社では従業員のワーク・ライフ・バランスの推進に取り組み、働きがいのある労働環境の整備に努めている。
外国人従業員の採用にも積極的に取り組んでおり、通訳の雇用や一時帰国後の復帰制度といった就業支援制度に加えて、定年制の廃止による高齢者雇用の促進や社員教育制度の整備を通じて年齢・性別・国籍を問わず活躍、キャリアアップできる環境を整備している。
加えて、同社事業における医療・介護用品メンテナンス作業や紙コップ製造作業においては機械化できる工程の機械化、作業標準化が推進されており、作業品質の安定化、効率化に加えて対応可能要員の拡大にも寄与している。
これにより、地域における健常者・障がい者など多様な人材が分け隔てなく労働を提供できる環境を整備し、地域社会の発展に貢献している。
同社においては今後既存事業であるマットレス洗浄サービスの提供量拡大、紙コップ製造販売事業の事業規模拡大に加えて、新規事業であるリサイクル事業の展開を計画しており、更なる雇用の拡大を実現していく方針である。
これらのインパクトは UNEP FI のインパクトレーダーでは「雇用」のカテゴリに該当し、社会的側面において PI を拡大すると考えられる。
① 日本におけるインパクトニーズ
同社売上高の大半は日本国内におけるものであり、国内における SDG インデックス&ダッシュボードを参照し、そのインパクトニーズと同社のインパクトとの関係性を確認した。
本 PIF において特定したインパクトに対応する SDGs のゴールは、以下の 5 点である。
「 3:すべての人に健康と福祉を」
「 8:働きがいも経済成長も」
「 9:産業と技術革新の基盤をつくろう」
「12:つくる責任、つかう責任」
「13:気候変動に具体的な対策を」
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国内における SDG ダッシュボード上では、「9」に関しては「達成に近づいている」とされているものの、「12」、「13」に関しては「大きな課題が残る」、「3」、「8」に関しては「課題が残る」とされており、同社における医療・介護用品販売・レンタル事業の効率的展開、紙コップ製造販売事業の今後の効率的事業展開や、環境負荷低減の取り組みなどが、日本国内におけるインパクトニーズと一定の関係性があることを確認した。
(出典:SDSN)
② 岐阜県におけるインパクトニーズ
同社の事業活動は立地する岐阜県を中心に行われていることから、「岐阜県 SDGs 未来都市計画」を参照し、岐阜県内における SDGs 達成に向けての課題を確認した。
下記の通り、岐阜県では「<環境>美しい清流とそれを育む豊かな森の保全と活用」、「<経済>「清流の国ぎふ」ブランドと変化に強い地域経済の確立」、「<社会>誰もが活躍し生きがいを感じられる地域社会の構築」を 2030 年のあるべき姿と設定し SDGs 達成に向けた課題を設定しており、同社の環境負荷低減への取り組み、新規事業展開による地域経済の確立、事業連携先における障がい者新規雇用機会の創出といった取り組みが、岐阜県におけるインパクトニーズと一定の関係性があることを確認した。
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(出典:岐阜県第 2 期 SDGs 未来都市計画の概要)
特定したインパクトの発現状況を今後も継続的に測定可能なものとするため、先に特定したインパクトに対し、インパクトの種類、インパクトカテゴリ、関連する SDGs、内容・対応方針および目標と KPI を整理、設定する。
■環境に配慮したレンタル・リユース事業の展開
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 社会的側面においてポジティブインパクトを拡大 環境的側面においてネガティブインパクトを緩和 |
インパクトカテゴリ | 「健康・衛生」「資源効率・安全性」「廃棄物」 |
関連する SDGs |
|
内容・対応方針 | ・マットレス洗浄サービスの提供可能数増加に向けた梱包工程の機械化推進 ・新規リサイクル事業の早期事業化および同事業で創出する再生エネ ルギーを活用したマットレス洗浄体制の構築 |
目標とKPI | ・2030 年 5 月期までにマットレス洗浄サービスについて、提供可能量を 2022 年 5 月期実績値より 200%引き上げる。 ・2030 年 5 月期までに新規リサイクル事業について年間売上高 50,000 千円を達成する。 ・2030 年 5 月期までにマットレス洗浄における再生エネルギー利用率 10%を達成する。 |
■小ロット生産体制を特徴とした紙コップ製造販売事業の展開
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 経済的側面においてポジティブインパクトを拡大 環境的側面においてネガティブインパクトを緩和 |
インパクトカテゴリ | 「資源効率・安全性」「包括的で健全な経済」 |
関連する SDGs |
|
内容・対応方針 | ・紙コップ組立工程の対応パターン拡大に向けた効率的組み立てラインの構築、改善 ・小ロット紙コップ製造受注分野拡大に向けた販路開拓活動の実施 |
目標とKPI | ・2030 年 5 月期までに紙コップ製造販売事業において、形状、サイズの多様化を図り、5 パターンの新規容器パターンの製造環境を整備する。 ・2030 年 5 月期までに小ロット紙コップ製造受注分野について、既存 受注分野以外の新規開拓分野 5 分野からの受注増加を実現する。 |
■雇用機会の増大を通じた地域社会の発展
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | 社会的側面においてポジティブインパクトを拡大 |
インパクトカテゴリ | 「雇用」 |
関連する SDGs | |
内容・対応方針 | ・業務効率化と就労機会創出の両立を果たしていくための業務標準化の推進 ・外国人や障がい者を含めた多様な人材の採用活動の推進 |
目標とKPI | ・2030 年 5 月期までに新規事業展開に伴う雇用者を 2023 年 4 月現在より 10 名増加させる。 |
同社では、佐藤社長と佐藤取締役を中心に自社業務の棚卸を行い、本 PIF におけるインパクトの特定、並びに KPI の設定を行った。
今後については、以下の体制を中心とした同社プロジェクトチームが柱となって SDGs の推進、本 PIF で設定した KPI の進捗管理を行っていく方針である。
【モニタリング体制】
統括責任者 | 代表取締役社長 | 佐藤 有 |
プロジェクトリーダー | 専務取締役 | 佐藤 亮 |
本 PIF で設定した KPI および進捗状況については、同社と岐阜信用金庫の担当者が定期的な場を設けて情報共有する。情報共有については、少なくとも年に 1 回実施することに加え、日々の情報交換や営業活動を通じて実施していく。
下記の通り融資返済期限と同一期間にて定める。
モニタリング期間 (返済期限) | 7 年間 (2030 年 5 月 31 日) |
◆「ぎふしん SDGs 宣言」
以下の 3 項目を SDGs 達成に向けた重点課題としている。
(1)持続可能な地域の経済成長のための活動
(2)持続可能な地域産業の基盤構築のための活動
(3)持続可能なまちづくりのための活動
◆親和性の確認
本 PIF で特定したインパクトは、
「環境に配慮したレンタル・リユース事業の展開」
「小ロット生産体制を特徴とした紙コップ製造販売事業の展開」
「雇用機会の増大を通じた地域社会の発展」の 3 点である。
「環境に配慮したレンタル・リユース事業の展開」については、マットレス洗浄を中心にサービス提供可能数を引き上げていくとともに、再生エネルギーの活用により環境に配慮した持続可能なサービス提供体制の整備に努めていくものである。
「小ロット生産体制を特徴とした紙コップ製造販売事業の展開」については、廃プラスチック削減に資する紙コップの製造について、小ロットでの対応を特徴とし、不使用在庫・廃棄物の削減に貢献しながら適用分野の拡大に努めていくものである。
「雇用機会の増大を通じた地域社会の発展」については、同社における雇用の創出に加えて事業連携先における障がい者新規雇用機会の創出を通じて地域に雇用を創出していくものである。
以上より、本 PIF で特定したインパクトは「ぎふしん SDGs 宣言」における重点課題との親和性があるものと判断する。
【留意事項】
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