建築基準法との関係では、国土交通省通知国住指第4936号(H23.3.25)により、建物の屋上や屋根に太陽光発電設備を設置する場合には、原則として建築確認は不 要であるとの運用がなされています。一方、同通知第3には、「建築物の屋上に設置する太陽光発電設備等の建築設備については、当該建築設備を建築物の高さに算入しても当 該建築物が建築基準関係規定に適合する場合にあっては、令第2条第1項第6号ロに規定する「階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部...
xxx発電「屋根貸し」契約書モデル:ガイドライン
平成25年11月
xxx
公益財団法人xxx環境公社
委託先:特定非営利活動法人 再エネ事業を支援する法律実務の会
本ガイドラインは、契約事項の検討に際し参考としていただくもので、xxx及び公益財団法人xxx環境公社(委託先を含む)が契約内容を保証するものではありません。
目次
Ⅰ | はじめに | ・・・・・2頁 |
Ⅱ | 「屋根貸し」において留意すべきポイント | ・・・・・3頁 |
Ⅲ | 「契約書モデル」条項の解説第 1 条 (目 的) | ・・・・・5頁 |
第 2 条 (賃貸借の合意)第 3 条 (契約期間)
第 4 条 (賃料の支払い)第 5 条 (保証金)
第 6 条 (遅延損害金)
第 7 条 (設備の設置と各種事務手続の実施)第 8 条 (本件設備の帰属と租税の負担)
第 9 条 (電気料金) 第 10 条(保険の加入)
第 11 条(本件建物の安全性)
第 12 条(契約期間中の修繕・補修等)
第 13 条(本物件・本件設備の維持管理)
第 14 条(xxx第三者に対する損害賠償義務)
第 15 条(使用・立入方法)
第 16 条(非常用電源としての使用)
第 17 条(禁止事項)
第 18 条(権利義務の譲渡)
第 19 条(不可抗力)
第 20 条(契約の解除)
第 21 条(本契約終了時の本件設備の扱い)
第 22 条(表明保証条項)
第 23 条(暴力団排除条項)
第 24 条(意思表示の方法)
第 25 条(守秘義務)
第 26 条(合意管轄)
第 27 条(契約に定めのない事項)
Ⅳ | その他法令との関係 | ・・・・・26頁 |
Ⅴ | 終わりに | ・・・・・27頁 |
Ⅰ はじめに
1.「屋根貸し」とは
「屋根貸し」とは、発電事業者が一定の面積を有する屋根を借りてxxx発電設備を設置し、建物所有者が屋根を貸すことの対価として賃料やサービス(非常用電源として活用できるようにする、屋根の防水工事を行う等)を得るビジネスモデルです。
<発電事業者の役割>
○ 建物所有者から賃貸契約に基づき屋根を借受けてxxx発電設備を設置(費用負担は発電事業者)
○ 設置したxxx発電設備のメンテナンスを実施
○ 設置したxxx発電設備からの電気を固定価格買取制度のもと電力会社に売電
○ 売電収入の中から建物所有者に賃料やその他サービス(非常用電源として活用できるようにする、屋根の防水工事を行う 等)を提供
<建物所有者の役割>
○ 発電事業者に賃貸契約に基づき屋根を貸し出し、賃料やその他サービスを得る
2.本ガイドラインについて
本ガイドラインは、民間が所有する建物の屋根を、発電事業者が借りることで、固定価格買取制度によるxxx発電事業を実施しようとする際に活用されることを想定して、「契約書モデル」と併せて作成しました。
xxx発電事業者、及びxxx発電事業者に屋根を貸そうとする建物所有者等の双方が、屋根賃貸借契約の締結上のポイント、留意点等を整理し、適切な契約を締結していただけることを目的としています。
個別の契約内容は、当事者間の合意によって決まりますから、必ずしも契約書モデルとは一致しないと考えますが、各条項の考え方や位置づけを本ガイドラインによって確認し、契約内容の検討に活かしていただければと思います。
Ⅱ 「屋根貸し」において留意すべきポイント
○賃借権を第三者に対抗できない(発電事業者が注意)
発電事業者の多くは、「屋根貸し」において、固定価格買取制度の買取期間である20年間屋根を借りることを想定しています。「屋根貸し」は発電事業者と建物所有者との屋根を対象物件とする賃貸借契約により行われますが、現状の登記制度では、屋根のみを対象として賃借権を設定できません。また、屋根は、それ自体が建物ではなく、建物と非建物の境界という位置づけであるため、借地借家法に定める「建物」には当たらないと解釈され、借地借家法の適用は受けない可能性が高いと考えられます。そのため、
(1) 建物所有者が第三者に当該建物を譲渡・売却してしまった場合、発電事業者は当該第三者(新所有者)に賃借権を対抗することができない(当該第三者(新所有者)からxxx発電設備の撤去を請求されたら断ることができない)
(2) さらに、建物所有者が倒産するなどして建物に設定された担保権が実行され第三者が建物の所有権を取得した場合も、発電事業者は当該第三者に賃借権を対抗することができない
という問題があります。(1)の場合については、賃貸借契約書において、事前に譲渡・売却時の承諾を必要としたり、事前の承諾なく譲渡・売却した場合の損害賠償規定を定めておくといった対応が可能ですが、(2)は建物所有者の信用力を見極めることが重要となります。(第18条参照)
○20年間以上にわたる長期間契約であること(発電事業者と建物所有者が注意)
1.「屋根貸し」の契約においては、買取期間が20年間であることから、設備設置や撤去等の期間を加えれば、20年間以上に亘って屋根を借り受ける必要があります。しかし、民法上では20年間までしか賃貸借契約を結ぶことができないこと、前述のとおり「屋根貸し」は借地借家法の適用を受けないと考えられることから、契約方法について工夫する必要があります。(第3条参照)
2.また、20年を越える期間中に契約主体が変動することも考えられます。自然人であれば、相続が発生することがあり得ますし、企業などの法人であれば買収や合併などが起こることが考えられます。当初の賃貸借契約が、当事者間の話し合いによって極めて円満に進んだとしても、契約当事者が変わった場合には、口頭の合意や暗黙の了解が通用しなくなってしまいます。そのため、合意内容は確実に契約書面に残しておくことが必要です。
3.さらに、20年の間には、建物の大規模修繕等が発生する可能性があります。こうした修繕により、xxx発電事業に影響を及ぼす可能性は十分に想
定されるため、これを契約上どのように位置づけておくか考慮しなければなりません。(第12条参照)
○これまであまり想定されなかったリスクが存在すること
屋根にxxxパネルを設置した際に、屋根を傷つけて雨漏りをしてしまうリスクや、xxxパネル反射光によるリスクなど、これまであまり考えられてこなかったリスクがあります。これまでの通常の建物賃貸借の契約書モデルでは対応しきれない点に注意が必要です。(第11,14条参照)
Ⅲ 「契約書モデル」条項の解説
<第1条>
(目 的)
第1条 甲と乙は、建物屋根を活用した再生可能エネルギーの普及に向け、甲の所有する本件建物の屋根において乙がxxx発電事業を行うことに合意し本契約を締結する。
2 甲は、前項の目的のため、乙が実施するxxx発電事業が円滑に進行するよう、屋根の賃貸人として必要な協力を行うものとする。
3 乙は、第1項の目的を適切に実行するため、乙の役割であるxxx発電設備の設置、稼動、撤去その他の過程において本件建物及びその敷地の所有者、管理者及び他の利用者を害することのないよう、xxx発電事業者として必要
となる注意義務を果たすものとする。
○目的規定
第1条は、目的として宣言規定を置いています。この規定は、絶対に必要というわけではありませんが、特に、再生可能エネルギー普及という社会的な意義を掲げて屋根を借りる際などに置くとよいでしょう。
<第2条>
(賃貸借の合意)
第2条 甲は、乙に対し、本物件を、下記(2)記載の使用目的(以下「本件目的」という。)のために賃貸し、乙は、本物件を賃借し、下記(3)記載の賃料(以下「賃料」という。)を甲に支払う。
記
(1) 屋根の表示 別紙物件目録2参照
(2) 使用目的 別紙物件目録3記載のxxx発電設備(以下「本件設備」という。)を設置しxxx発電事業を行うこと
(3) 賃料 年額●円(年額:●円/㎡)(税別)
※【賃料を変動額にする場合】別紙賃料算出表記載のとおり
(4) 保証金 ●万円
(5) 契約期間 第3条第1項に記載のとおり
2 乙は、甲の事前の了解を得た上で、本件設備の設置工事及び本件設備の使用・保守等に必要な範囲において、本物件のみならず本件建物及びその敷地内に立ち入り、使用することができる。
※ 「本物件」とは、賃貸借の対象となる屋根等を指します。
「本件建物」とは、賃貸借の対象となる屋根等を含む建物を指します。
○賃料設定(貸主が特に注意)
賃料設定については、面積あたりの価格を設定する方法と、売電収入の一定割合とする方法が考えられます。
面積当たりの場合には、平米あたり年間100円程度から300円程度までの設定が多いようです。売電収入割合で設定する場合は、売電収入の5%から10%程度が一般的です。ただし、これらは立地や発電条件、契約面積の定め方(屋根全体か、パネル設置部分か)などによって大きく変わってきますので、個別の合
意によります。例えば、賃貸部分がパネル設置部分となる場合には、平米あたりの単価は高くなります。
売電収入割合で設定する場合には、賃料が変動費になります。これは、借主である事業者にとってはメリットがある一方、貸主にとっては賃料が安定しないことを意味します。一方、想定よりも発電量が多くなった場合には、貸主にとっての賃料収入も増加することになるため、貸主に有利になる場面もあります。通常、賃料収入が変動することは貸主にとってリスクと考えられるので、一般に売電収入割合で賃料を設定する場合には、賃料変動によるリスク分を加味して、賃料の設定水準を高くしておくことになります。
○賃料と消費税(貸主が特に注意)
今後、消費税が増税になることが予想されることから、賃借料に関しては、外税にしておくことが貸主にとっては重要です。
○保証金(貸主が特に注意)
保証金は、通常の建物賃貸借における敷金と類似した意味合いを持ちます。通常の建物賃貸借(ビルテナント契約)では、6ヶ月~12か月分の保証金を差し入れておくことが一般的であるため、屋根貸しの場合でも同様の水準とすることが考えられます。
ただし、賃貸借終了後のxxxパネル撤去費用についても担保したいと考える場合には、予想される撤去費用が12か月分の賃料を超えると思われるため、借主が倒産した場合などを想定し、増額した保証金を設定しておくことも考えられます。
<第3条>
(契約期間)
第3条 本契約に基づく賃貸借(以下「本件賃貸借」という。)の期間は、乙によるxxx発電事業による売電開始日又は平成●年●月●日のいずれか早い日(以下「本件賃貸開始日」という。)から20年間とする。乙は、売電開始日が決定後速やかに甲に通知するものとする。
2 甲と乙とは、本契約締結日から本件賃貸借開始日までの期間、本契約の趣旨に従い別紙使用許可申入書のとおり使
用貸借契約を締結するものとする。
○契約期間(両者が特に注意)
民法604条においては、賃貸借の期間は20年間を超えられないという規定があります。また、通常の建物賃貸借(ビルテナント契約)と異なり借地借家法の適用を受けないと考えられるため、20年間を超える契約期間を設定しても、
20年間を超える部分については無効になってしまいます。そのため、20年を超える契約を締結するための方法として、下記の契約方法が考えられます。
○20年を超える契約を締結するための方法
考えられる方法としては大きく以下3つが挙げられます。
①地上権設定契約を用いる
屋根上の空間について地上権設定を行う方法では、20年以上の長期間の契約を実現できますが、地上権は物権であり、地上権者が所有者の同意なく地上権に担保権を設定できるなど、極めて強い権利であるため、屋根のオーナーが承諾しないケースが考えられます。
②売電準備期間に賃貸借を行う別主体を用意し、売電開始後の賃貸借契約と切り替える
別主体を準備して賃貸借を切り替えるというのは、例えば、実際に発電事業を行おうとする事業体-Aに加え、パネル設置等の発電準備期間に屋根賃貸借の主体となる事業体-Bを設立し、売電開始までの借主をB、開始後の借主を Aとして契約を切り替えるという方法です。大規模なxxx発電プロジェクトを複数実施するといった場合には有力な方法ですが、小規模事業者にとっては手間と費用が余計にかかるという問題があります。
③使用貸借と賃貸借を組みあわせる
使用貸借契約と組み合わせる方法は、使用貸借契約が賃貸借契約と異なり、無償が前提となることに加え、当事者が死亡(個人の場合)や合併等(法人の場合)した場合に契約関係が必ずしも承継されないなど、準備期間中の権利がやや弱いという問題があります。ただし、契約書モデルが想定する比較的小規模の屋根貸しxxx発電では、使用貸借期間が短く、こうしたリスクが顕在化する可能性は低いと考えられるため、本契約書モデルでは使用貸借と賃貸借を組み合わせる方法を採っています。
手間と費用をかけてでもリスクを極小化する必要があるケースでは、②の方法が適していると考えられますが、事業規模に応じて手法を検討してください。
○本契約書モデルは使用貸借併用型
本契約書モデルでは、売電開始日から20年間の契約期間を確保するために、契約期間を売電開始日から始まる規定としています。ただし、いつまでも発電が開始されないことにより賃料が発生しないという貸主の不利益を避けるために、売電を開始しなければならない期限を設定しています。
なお、この契約書モデルでは、売電準備期間中の賃料は発生しないことになりますので留意してください。
<第4条>
(賃料の支払い)
第4条 本物件の賃料は第2条第1項(3)に定めるとおりとする。但し、1年未満の場合はその年の日数を基に日割り計算するものとし、1円未満の端数は切り捨てる。
2 乙は、甲に対し、本件賃貸借開始日に、当初1年分の賃料を甲の指定する銀行口座に振込送金する方法により支払うものとする。振込手数料は乙の負担とする。次年度分以降の賃料については、前年度末日(但し、銀行休業日の場合はその前営業日とする)までに同様に支払うものとする。
3 甲及び乙は、公租公課の増減額その他著しい経済事情の変動が生じたと認める場合には、賃料の改定について相手方に申し入れることができるものとし、相手方は誠意をもって協議に応じるものとする。
4 本契約締結後に乙と一般電気事業者との協議の不調その他のやむを得ない事情により本契約締結時に想定していたxxx発電設備の一部を設置することができなくなった場合には、甲及び乙は、乙の請求により、当該設置不能となった設備の割合に応じて契約面積を減じ、第2条第1項(3)にて定める単価に応じて賃料の減額を協議するもの
とする。なお、当該設置不能割合が著しい場合、甲及び乙は本契約を解約することができる。
○賃料の支払い
賃料の支払い単位は1年ごとの前払いが一般的です。
賃料の設定を売電収入割合とする場合には2項を以下の2項と3項に分ける形の規定となります。
2 乙は、甲に対し、本件賃貸借開始日に、当初1年分の賃料(別紙●記載の想定賃料額とする)を甲の指定する銀行座高に振込先口座に振込送金する方法による支払うものとする。振込手数料は乙の負担とする。
3 乙は、甲に対し、次年度分以降の賃料について、前年度末日(但し、休業日の場合はその前日とする)までに前項
同様に賃料を支払うものとする。なお、別紙●記載の想定賃料と実際の賃料の差額は、乙が甲に対し次年度の賃料を支払う際に清算するものとし、以後同様とする。
○賃料の見直し規定(貸主が特に注意)
設備認定は、送電網への接続が可能であることを前提としていないため、経済 産業省が設備認定をした場合であっても、一般電気事業者との間の調整において 接続容量との関係などによりxxxパネルの設置面積が減る場合が考えられます。
屋根部分を一括して貸し出す以上は、貸主としては賃料の減額に応じることはできないとも思われます。
しかしながら、設置面積に対応して賃料を決めている場合、接続容量が小さくなれば設置面積が小さくなりますし、当初の予定通りの賃料を支払うことを借主に要求すると、借主の経営に深刻な影響を与え事業継続が困難となることも考えられます。借主の事業が頓挫すれば、貸主にも悪影響があります。そこで、接続容量の限界から発電規模が縮小した場合に、設置面積の縮小と賃料の減額権を定めた条項を用意しました。
また、完全に接続ができなくなってしまった場合や、事業継続が事実上困難な規模で接続不能となった場合など設置不能割合が著しい場合については、いずれの当事者からも解約申し入れができる規定にもしてあります。
<第5条>
(保証金)
第5条 乙は、第2条第1項(4)に定める保証金を本契約締結時に甲に預託するものとする。なお、保証金には利息は付さないものとする。
2 乙は、賃料が増額された場合、これに伴う保証金増額分として、賃料増加額の●ヶ月分相当額の金員を、甲の請求を受けた日から●日以内に甲に対して預託する。なお、賃料が減額となった場合は、保証金の額は減額しないものとする。
3 乙に賃料の延滞又は損害賠償その他の本契約に基づく甲に対する債務の不履行があるときは、甲は、保証金を乙の債務の弁済に充当することができる。
4 前項に基づき保証金が乙の債務の弁済に充当された場合、乙は、甲から保証金を債務の弁済に充当した旨の通知を受領後●日以内に、債務の弁済に充当されたために生じた保証金の不足額を甲に対して補填する。
5 乙は、本件賃貸借が終了し第21条の定めに基づき本物件を甲に完全に明け渡すまでの間、保証金をもって賃料その他の甲に対する一切の債務の弁済に充当することができない。
6 甲は、本件賃貸借が終了し、乙が第21条の定めに基づき本物件を甲に完全に明け渡した場合、保証金から乙の甲
に対する一切の債務額を控除し、差引残額があるときは当該金額を乙に対して返還する。
○保証金の性質
保証金は、一般の不動産賃貸借における敷金と同様です。ですから、貸主の側は、借主の賃料不払いやその他の債務の弁済に充当することができます(第3項)。一方で、借主側は、契約終了まで保証金を返還して欲しいとは要求できませんし
(第6項)、保証金を減らすような行為もできません(第5項)。
貸主が、借主の債務の弁済のために保証金を充当した場合には、保証金が減ってしまうため、補填が必要となり(第4項)、一般的には7日から14日以内には補填するよう定められます。
<第6条>
(遅延損害金)
第6条 乙は、本契約に基づく甲に対する金銭債務の支払いを遅延したときは、その履行するまでの間、年●パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
○遅延損害金
遅延損害金の割合は、消費者契約法第9条第2号に上限が14.6%とされ、それを超える部分は無効であると規定されています。本契約に消費者契約法が必ず適用されるわけではありませんが、多くの契約でもこの利率が採用されることが多い状況にあります。もっとも、これよりも低い率でも、当事者間の合意で定めることができます。現状のxxxxを前提にすれば、10%程度でも遅延損害金としての意義は認められると考えられます。
<第7条>
(設備の設置と各種事務手続きの実施)
第7条 甲及び乙は、両者立会いの下に本件設備の設置場所を確定する。
2 乙は、本契約締結後、関係諸法令、規則及びガイドライン等を遵守のうえ、乙の費用と責任により、xxx発電事業実施のために必要な事務手続の一切を行い、本物件に本件設備を設置してxxx発電事業を行うものとする。
3 甲は、前項に定める乙によるxxx発電事業実施のために必要な事務手続について協力するものとする。
○各種手続きの実施
借りた屋根の上でxxx発電事業を実施する全ての事務手続きは、乙の責任で行われることになります。ただし、パネル設置の場面や事務手続きにおいて貸主の協力が必要となる場合が想定されることから、この場合の協力義務を規定しています。
<第8条>
(本件設備の帰属と租税の負担)
第8条 甲と乙とは、本件設備は本件建物に付合することのない独立の動産であることを確認し、本件設備の所有権が乙に帰属し続けることを確認する。
2 乙は、本件設備に課税される固定資産税その他の公租公課を負担し、期限どおりに支払うものとする。
○本件設備が建物に付合していないことの確認(両者が特に注意)
付合とは、建物のような不動産と動産が一体のものとなった場合に、動産の所有権を含め、不動産所有者のものとなることを言います(民法第242条)。
屋根貸しxxx発電事業者である借主は、賃借権に基づいてパネルを設置しているので、付合は発生しないはずですが、そのことを契約上も確認しておく必要があります。
また、貸主の側にとっても、もしも付合が生じていることになると、xxx発電設備により第三者に損害を与えたといった場合に、所有者としての賠償責任を負う可能性があるため、付合が生じていないことを明確に確認しておく意味があります。ですから、このような付合が生じていないことの確認規定は、必ず入れておく必要があります。
<第9条>
(電気料金)
第9条 本件設備及びそれに付随する設備(パワーコンディショナーを含み、これに限らない)を稼動させる際に消費する電力の電気料金の負担及び精算方法については、その使用実態等に応じて甲乙協議の上定めるものとする。
○電気料金
パワーコンディショナー等の設備が使用する電気は、一般電気事業者から購入し、xxxパネルで発電した電気は全量売電するということが想定されるため、
電気料金の負担について予め定めておくことが必要です。借主側が独立して一般電気事業者から電気を購入できる場合は問題ないですが、そうではない場合に本条項のような規定が必要になります。
通常は、借主の側が電気料金を負担することが一般的ですが、貸主と借主の各々が使用する電気を区分計算できない場合には、貸主が電気料金を負担するとしたうえで、屋根の賃料で調整しておくという方法も考えられます。
<第10条>
(保険の加入)
第10条 乙は、本契約期間中、本件設備の設置、運営又は保守の工事、自然災害その他の事態に起因する甲又は第三者への損害賠償に備え、必要十分な保険へ加入するものとし、当該保険証券の写しを甲に提出するものとする。
○保険の加入とその内容(両者が特に注意)
借主であるxxx発電事業者は、一般的には任意に保険に加入していますが、 賃貸人としてもリスク実現時の賠償が確実に行われることは重要であることから、本契約書モデルの条項上も借主の保険加入を義務付けています。その内容につい ては、保証の範囲を含めて様々であるため、建物所有者としても確認しておくべ きでしょう。
特に留意すべきポイントは、第三者損害についての補償がきちんとつけられていること、雨漏りなどの工事における瑕疵の賠償保険がついているかという点です。
特に借主の財政的基盤が強くない場合には、保険によって担保されていなければ、賠償が行われない可能性があります。
工事の際の雨漏りなどについては、それが建物の老朽化によるものなのか、借主側の工事の瑕疵によるのかを確定するための調査が必要となることが考えられますが、その場合の調査費の負担や保険適用についても確認しておくと良いでしょう。もしも保険適用の範囲外である場合には、調査費用の負担割合についても合意が必要になると考えられます。
<第11条>
(本件建物の安全性)
第11条 乙は、本契約に基づき本件設備を本物件に設置することの安全性について、甲より開示を受けた資料に基づき事前に確認のうえ本契約を締結するものとする。
2 本物件に本件設備を設置したことを原因として本件建物の安全性に問題が生じたときは、次項の場合を除き、乙が乙の費用と責任に基づき必要な対策をとるものとし、その問題により甲に生じた損害を賠償するものとする。
3 本物件に本件設備を設置したことを原因として本件建物の安全性に問題が生じ、その問題が甲の開示した資料の重大な誤りに起因する場合は、甲が甲の費用と責任に基づき必要な対策をとるものとし、その問題により乙に生じた損
害を賠償するものとする。
○建物構造上の問題(貸主が特に注意)
xxxパネルは1枚のモジュールあたり15kg強の物が多いようです。3キロワット程度の発電容量を得ようとすれば、300kgから400kgのパネルを屋根の上に載せることになります。
建物がこうした荷重に耐えうるかどうかは、貸主、借主がそれぞれ安全性を確認するべきですが、本契約書モデルではxxx発電事業に詳しくない貸主が多く存在することを前提に、借主の側がその責任で判断し、万一xxxパネルを設置したことにより建物に構造上の問題が生じた場合には、原則として借主の責任で対応されるという契約条項としています。
実務上、新耐震基準(※)の建物については、そこまで心配することなく契約が締結される例が多いようです。
ただし、貸主の提示した資料等に重大な誤りがあった場合には、貸主に責任が認められるべきでしょう。屋根のオーナーとしては、提供する情報に誤りが無いかについては、十分に確認しておく必要があります。
なお、貸主の側が資料を十分に開示することができず、建築図面や構造設計書等を借主が閲覧できない場合には、当事者間で確認の方法について十分に協議する必要があります。一般には、借主が自らの責任で確認することになるでしょう。いずれにせよ、借主が納得して契約を締結した場合には、開示資料が十分でな
い場合であっても借主が責任をもって対処すべきことになります。
※現在の耐震基準は1981年にできたものです。以前の耐震基準と区別するために「新耐震基準」と呼ばれ、現在建物はこの新耐震基準に沿って建てられています。建物の倒壊等を防ぐために基準が厳格化されているため、この基準を満たしている建物は、倒壊や大規模損壊のリスクが比較的小さいと考えられています。
○経年劣化等のリスク
建物の経年劣化等に伴い、20年間にわたるxxxパネルの設置が不可能とな る場合の事業リスクを、貸主と借主のどちらが負うべきかという問題があります。本契約書モデルでは、借主の側がどの建物の屋根でxxx発電事業を行うべき
かを検討し、その事業性を判断する責任があると考え、建物構造上の問題同様、借主側に事前の確認を求めています。
ただし、貸主が借主の事業性判断のために提供した資料に重大な誤りがあった場合にまで借主の負担とすることはバランスを失することは建物構造上の問題と同様で、この場合には貸主に責任が生じることになります。貸主としては、借主に対して正確な情報を提供することが重要です。
貸主としては、正確な情報が提示できない場合には、借主にその旨を説明し、借主自らで確認し、借主の責任により判断するように求めることになります。
<第12条>
(契約期間中の修繕・補修等)
第12条 甲及び乙は、本契約期間中に本物件の補修工事等の実施のために本件設備の使用ができない(又は発電量が減少する)期間が最長で●ヶ月間存することを相互に確認する。乙は、当該本件設備の使用ができない(又は発電量が減少する)期間中の本物件の賃料を発生させない(発電量が減少する場合には、減少割合に応じて賃料を減額する)ことを条件に、逸失利益その他の本件設備の使用に支障が生じることにより発生する損害の一切の賠償を甲に請求しないものとする。
2 前項に定める期間を超えて、甲の事情(防水工事等を含む)により甲が本件建物又は本物件の補修工事等を実施す
るため、本件設備の使用ができない(又は発電量が減少する)期間が生じた場合、甲は当該補修により乙に生じた損害を賠償するものとする。
○建物修繕実施と発電不能期間(両者が特に注意)
商用ビルであってもマンション等の区分所有建物であっても、20年間の屋根賃貸借期間においては、多くの場合、修繕計画に基づく大規模修繕が予定されています。
ブルーシートなどで建物全体が覆われるような大規模修繕や、屋根の防水工事などの場合には、一定期間xxx発電事業が行えなくなる可能性がありますし、仮にxxx発電事業が行える場合でも発電量が減少することがあります。そのため、それを見越した契約を締結しておかなければなりません。
本契約モデルでは、予め一定期間にわたり、発電できないことを見越した規定を置いています。修繕計画が完全に明確であれば、契約書にそれを添付し、その計画書に記載された修繕に限って認めるといった方法も考えられますが、20年の間には突発的な修繕が必要となる可能性もあり、マンションなどでは長期修繕計画自体が完全に定まっていない場合も多いため、一定期間の発電不能期間の確認という規定にしています。借主としては、予めこの期間については発電できないことを前提に事業キャッシュフロー等を作成することになります。
○発電不能期間が長期化した場合の売電収入の補償(貸主が特に注意)
事前に取り決めた発電不能期間を超える長期間にわたり、建物修繕など貸主に起因する事情で借主の発電事業が不能となる場合には、貸主から借主に対して、借主が被ることとなる損害を賠償することを規定しています。これは、貸主にとってリスクにもなりますが、借主にとっても貸主の事情で長期間にわたり発電できなくなってしまうと事業が頓挫してしまうため、こうした規定は必要となると思われます。
貸主側としては、屋根賃貸の実施に先立って、長期修繕計画に無理がないかを再確認し、また予め合意する発電不能期間についてもある程度の余裕を持たせておくことが重要でしょう。
○中途解約(両者が特に注意)
賃貸借契約においては、一定のペナルティーを負担することを条件に中途解約について取り決めをすることが多くあります(但しその場合でも、中途解約ができる場合は大きく制限されています)。しかし、契約書モデルでは、借主側の事業継続の点から中途解約条項を設けておりません。
ただし、貸主と借主との協議によっては重いペナルティーを設定することで中途解約条項を設ける場合もありますので、この点は貸主・借主間にて十分に協議をする必要があります。
<第13条>
(本物件・本件設備の維持管理)
第13条 乙は、善良なる管理者としての注意をもって本物件を使用し、本物件の使用に際し甲の業務に支障の生じないように配慮するものとする。
2 乙は、本件設備を正常に運用できるように定期点検等を行う等の保守及び保全の一切を行い、本件設備が故障した場合、技術者を派遣し、本件設備を正常な状態に回復させるものとする。なお、乙は、本件建物及びその敷地内で作業を行う場合には安全確保のための措置を取り安全確保に努めなければならない。
3 本件設備に関する保守、保全及び補修に関する費用その他一切の費用は全て乙が負担するものとし、想定外の事情により本件設備の発電量が低下した場合の修理費についても乙が負担するものとする。なお、本件設備の保守及び保全のために本件建物の電気等を使用する場合は、乙は当該費用を負担するものとする。
4 甲は、前2項に定める乙による本件設備の保守及び保全に協力するものとし、これを阻害する行為を行ってはなら
ない。
○物件の維持管理
物件の管理については、借主の側が、借主の費用と責任で実施することになります。
ただし、貸主の側が借主の維持管理に協力しなければ、借主は適切なメンテナ ンスを進めることができないため、貸主の側に最低限の協力義務を課しています。なお、本件設備の毀損等については借主よりも貸主が先に知ることが通常であ
ることから、一般的な連絡・情報提供義務は存在していると思われます。ただし、これは善管注意義務を伴うような強い義務ではないため、敢えて契約書上には規定していません。
<第14条>
(甲又は第三者に対する損害賠償義務)
第14条 乙は、本件設備の運用上の問題(反射光の問題を含むが、これに限られない。以下同じ。)、事故その他の事情により甲又は第三者に対して損害を被らせるおそれが生じた場合、速やかに甲に報告するものとする。
2 乙は、本件設備の運用上の問題、事故その他の事情により甲又は第三者に対して損害を被らせたときは、その責任
と費用負担において、当該損害の補償その他の必要な措置を講ずるものとする。
○借主の貸主への損害賠償義務(両者が特に注意)
借主の側が貸主に損害を与えるケースとしては、工事の際に屋根の一部に穴をあけるなどして雨漏りが発生するような、直接的な損害のケースと、xxxパネルが第三者に損害を与え、その賠償を連帯して負うように求められるケースがあります。
そのうち、後者については、xxxパネルが建物に付合しておらず、所有権はあくまで借主にあり続けることを確認し、一切の賠償については借主と第三者との間で、借主の責任と費用にて対応することを、規定しています。
貸主自身の損害については、雨漏りのケース、パネルやパワーコンディショナーの不良により停電が発生したケースなど、具体的に想定する事情ごとに賠償義務を規定したり、雨漏りが発生した場合に、その雨漏りの原因が借主側にあるのか否かを調査する費用の負担をどちらがするかといった規定をしておくということも考えられます。
しかし、本契約書モデルでは、こうしたリスクの全てを予め予想しておくことは不可能であるため、包括的な借主の損害賠償義務を規定する方法をとっています。特に貸主の側が詳細な個別の規定を望む場合には、当事者の合意により適宜規定を加えてください。
<第15条>
(使用・立入方法)
第15条 甲は、乙に対し、本物件の使用方法に関して、本件建物及び本物件の安全確保、災害の防止、環境整備等の適切な管理を図るために必要な事項を申し入れることができ、乙は、当該申し入れについて甲と真摯に協議をするものとする。
2 甲は、本物件の保全その他管理上必要があるときは、本物件に立ち入ることができるものとする。ただし、甲は、乙によるxxx発電設備の発電に支障が生じないように配慮するとともに、本物件出入口の施錠と安全確保に留意し、立入り時に事故が生じた場合には、本件設備に起因する場合を除き、甲の責任と費用により対処するものとする。なお、xは、事前又は事後に本物件に立ち入ったことを乙に報告するものとする。
3 乙は、本物件に立ち入るため又は本件建物内の本件設備の保守・保全のために本件建物内に立ち入る必要がある場
合、甲の事前の承諾を得て、必要な範囲で本件建物に立ち入ることができるものとする。
○貸主の賃貸対象部分への立入に事前承諾を得ることを必要とするか否か
貸主が借主による事前承諾がないと屋根に入れないということになると、貸主による建物の管理実務上問題が生じる恐れがあります。たとえば、台風で屋根が破損し雨漏りの危険がある場合に、借主の事前承諾がなければ屋根の補修ができないのでは、不合理に損害が拡大しかねません。
そのため、本契約書モデルでは、貸主は、借主の事前承諾なく屋根に立ち入ることができるとしています。
ただし、屋根の一部又は全部を他者に貸している以上、施錠の管理等にあたっては、自己単独使用の場合を超えた配慮が必要となるため、その旨を規定しています。
○借主の側の建物立ち入り
第3項は、借主の側の建物立ち入りを規定しています。この場合には、貸主の事前承諾を必要としています。
ただし、やはり緊急時には、借主の側が貸主の事前承諾なく建物に入ることが必要となる場合が考えられます。そのため、「甲と乙とは、本件設備の故障時など
緊急時の本件建物への立ち入り許可に関する包括的な承諾について別途協議のうえ取り決めるものとする」という趣旨の条項を入れることも有益です。
なお、貸主の側が借主を信頼して屋上への鍵を預けておくといった運用も実務的にはあり得るようです。
<第16条>
(非常用電源としての使用)
第16条 甲と乙とは、本件建物の停電時、本件設備から発電される電気を本件建物の非常用電源として甲が無償で使用することにつき合意する。
○非常用電源としての使用(両者が特に注意)
貸主の多くが非常時の電源確保の手段としてxxxパネルに期待しています。停電時の非常電源使用への期待感から、特にマンション管理組合などが屋根貸しに前向きになる例は多いようです。
借主としても、停電時には売電ができませんから、その際の非常用電源として、借主が設置したxxxパネルで発電した電気を貸主の建物で利用することについて、通常は問題ないと考えるようです。ただし、借主の側が非常用電源としての使用を貸主に認めない場合もありますので、この点は必ず事前に当事者間で確認し合っておくことが必要です。たとえば、大規模災害による停電の場合だけ使用を認めるというケースも考えられます。
一方、一定期間以上(例えば2週間以上)の停電の場合には、通常の電気料金の範囲で貸主が電気を買うという規定にすることも考えられますが、特に借主の側が、停電期間中はいずれにせよ売電は不能である以上、停電期間中は無償で発電した電気を提供して良いとも考えられ、非常時の非常用電源としての無償提供は貸主に対する賃料以外のサービスとして有効と考えられることから、契約書モデルでは特に有償の規定にはしていません。
また、非常時に、いくつの電源から何ワットの電力を利用できるかについても、予め明確にしておくべきです。屋根貸しの契約書とは別に、「停電時の電力提供に関するガイドライン」という形で、非常時の電力利用の方法や想定発電量と想定利用可能量等を共有しておくことをお勧めします。
<第17条>
(禁止事項)
第17条 乙は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。ただし、事前に甲の書面による承諾を受けた場合は、この限りではない。
(1)本件建物又は本物件の現状を変更すること。
(2)本物件の上に本件設備以外の物を設置すること。
(3)本物件において、甲に迷惑を及ぼすおそれのある行為をすること。
(4)本物件を本件目的以外の用途に使用し、又は、本物件を公序良俗に反しもしくは甲が不適当と認める目的に使用すること。
2 甲は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。ただし、事前に乙の書面による承諾を受けた場合は、この限りではない。
(1)本件建物又は本物件に本件設備に対して影となる障害物を設置する等、乙によるxxx発電事業の売電量減につながることが想定される行為を行うこと。
(2)本物件に第三者を立ち入らせること。
○禁止事項
禁止事項の内容は、当事者間での話し合いの中で増えていく可能性があります。例えば、大規模災害等の緊急時以外には、予め借主が承諾した修繕計画によるものを除き、修繕等のために建物をブルーシートで覆うなどの行為を禁止するといった規定も考えられます。また、貸主の側には「借主に承諾を得ることなく建物を第三者に売却しない」という義務を課しておく必要がありますが、この点は次条に規定しています。
<第18条>
(権利義務の譲渡)
第18条 甲及び乙は、事前の相手方の書面による承諾を得ることなく、本契約によって生じる権利、義務の全部又は一部(以下「本権利義務」という。)を、第三者に譲渡し、又は承継させ、あるいは担保に供し、又は本件建物・本物件を売却してはならない。
2 甲及び乙が本権利義務を第三者に譲渡する場合又は本件建物・本物件を売却する場合、甲及び乙は相手方の事業に影響を与えないよう十分な水準を満たす譲渡先を選定し、本契約の承継につき同意を得たうえで、当該譲渡又は売却の先の信頼性等に関する情報とともに書面にて申し入れをし、相手方の書面による承諾を得たうえで、当該譲渡又は売却先に本権利義務を承継させなければならない。
3 第1項にかかわらず、甲は、乙によるxxx発電事業実施のための金融機関からの借入に関連する本契約の契約上
の地位の移転についての事前承諾は、正当な理由のない限り拒絶しないものとする。
○屋根賃貸借に対抗要件を具備できないこととの関係(両者が特に注意)
屋根貸しの賃貸借では、現状の実務運用では借地借家法の適用が無いため借主が屋根を占有するだけでは第三者対抗要件を得ることができず、屋根のみの登記制度も存在しないため民法上の対抗要件具備の手段がありません。すなわち、法律上、屋根の賃借権に第三者対抗要件を具備する方法がありません。
そのため、貸主の側が、借主に承諾を得ることなく建物を売却してしまうこと
を防ぐために、これを禁止する旨の規定が必要になります。賃貸借契約にこうした規定が存在しない場合、借主が金融機関から融資を受ける際にも悪影響が生じる恐れがあるため、必ず本契約書モデルのような禁止規定を定めてください。禁止規定に違反をすれば、損害賠償の問題となることもありえます。
なお、相続の場合は、相続人は被相続人の権利義務を包括的に承継することになるので、ここで言う第三者には当たりません。
一方、貸主の破産などにより建物が競売にかけられるような場合については、こうした規定があってもなお、借主は十分な対抗ができません。ですから、借主としては、貸主の破産によるリスクが十分に小さいことを確認したうえで屋根を借りることを決める必要があります。
また、建物売却の禁止規定の実効性を高めるために損害賠償額の予定条項を規定することも考えられますが、こうした規定を入れた場合でも、建物の貸主が倒産してしまった場合には、現実に損害賠償を貸主に要求することは困難ですから、やはり借主としては貸主の破産によるリスクには十分に気を付けておく必要があります。
○金融機関の担保設定との関係
借主の側も、貸主に承諾を得ることなく賃貸借契約上の地位を移転できないのが原則ですが、例外として、金融機関への担保目的で、屋根賃貸借の借主たる地位を金融機関が指定する第三者に移転させることについての承諾を与えておく必要があります。
<第19条>
(不可抗力)
第19条 本契約期間中に天災地変その他の不可抗力により本契約の全部又は一部の履行の不能又は遅延が生じた場合は、当該不可抗力事由により乙がxxx発電事業を行うことができない合理的な期間に限って甲及び乙は本契約に基づく義務の免除を受けることができるものとする。また、甲又は乙は、当該期間が長期間に及び本契約の継続が困難となった場合は本契約を解除することができる。
2 前項にかかわらず、前項の事情により本件設備が毀損し、これにより本件建物が毀損又は倒壊した場合、又は、本件設備ないしはその付帯設備が転倒・落下するなど本件設備を原因として甲又は第三者に損害を被らせた場合、乙はその費用と責任をもって賠償にあたるものとする。
3 第1項の事情により乙が所有する設備が毀損又は滅失した場合、甲は、その賠償の一切の責を免れるものとし、乙
が逸した売電収入を補償する義務を負わないものとする。
○自然災害などの不可抗力(両者が特に注意)
大規模な地震などにより建物が毀損・倒壊したり、xxxパネルが壊れてしまった場合などについては、本条で3つのルールを設定しています。
① 合理的な期間は両当事者間の契約上の義務(屋根を貸す義務、賃料を支払う義務)を免除し、また発電継続が困難な場合には、両当事者から賃貸借契約を解除できること
② 本件設備毀損に伴う損害賠償(建物を毀損した、第三者に損害を与えた場合)については、乙の費用と責任によること
③ 貸主の側が借主の発電設備の賠償や発電収入の補償することはないこと
②の損害賠償については、借主が損害保険で対応することが通常と思われるため、借主の責任としています。
③については、不可抗力により建物が毀損・滅失し、それにより発電ができなくなったり、発電量が減ってしまった場合の貸主の免責を規定しています。こうした免責規定が無い場合には、貸主が屋根を貸すことを躊躇すると思われることから、このような規定は必要と思われます。
<第20条>
(契約の解除)
第20条 甲又は乙が次の各号の一に該当し(本条第1項ないし第3項の各号の一の事由に該当する者を「該当者」と
いう。)、相手方(該当者以外の当事者をいう。以下本条において同じ。)からの催告後10営業日以内に是正されな
いときは、相手方は本契約を解除することができる。
(1)本契約の全部又は一部に違反したとき。
(2)相手方に損害を与え、又はその信頼を失墜させるような何らかの行為をしたとき。
2 甲又は乙が次の各号の一に該当したときは、相手方は何らの催告等を行うことなく、直ちに本契約を解除すること
ができる。
(1)手形又は小切手を不渡としたとき、その他支払を停止したとき。
(2)差押、仮差押、仮処分、競売、租税滞納処分、その他公権力の処分を受けたとき。
(3)破産手続、特別清算手続、会社更生手続もしくは民事再生手続その他の法的倒産手続(本契約締結後に制定され
たものを含む。)開始の申立があったとき、私的整理手続の開始があったとき。
(4)監督官庁より営業停止、又は営業免許もしくは営業登録の取消処分を受けたとき。
(5)資本減少、営業の廃止もしくは変更、又は解散の決議(法令にもとづく解散も含む)をしたとき、あるいは清算
又は私的整理の手続きに入ったとき。
(6)法令違反又は不xxな営業等の行為により著しく社会的信用を失墜したとき。
3 乙が次の各号の一に該当したときは、甲は何らの催告等を行うことなく、直ちに本契約を解除することができる
(1)賃料その他の甲に対する債務の支払いを2ヶ月以上延滞したとき。
(2)甲の承諾を得ずに、合理的理由なく本物件を継続して2ヶ月以上使用しないとき。
(3)乙が個人の場合には、死亡、後見、保佐もしくは補助開始の審判又は任意後見監督人の選任のあったとき。
(4)乙と一般電気事業者との間の売電に関する契約が終了したとき。
(5)本項各号に準ずる事由により、本契約を継続することが認めがたいとき
4 該当者は、本契約を解除されたとき、相手方に対し、賃料の●ヶ月分相当額を違約金として支払う。ただし、相手
方が当該解除により被った損害が当該違約金を超過する場合には当該超過額に関する該当者に対する損害賠償の請求
を妨げない。
5 相手方は、該当者に対し、本契約を解除しない場合においても、該当者により被った損害を賠償請求することがで
きるものとし、該当者は、相手方に対し、速やかに賠償に応じるものとする。
○契約解除(両者が特に注意)
解除条項としては、催告の上で解除できる場合、無催告解除を認める場合、貸主の方からの一方的解除の場合の3つについて区別して規定しています。
また、第4項に解除の場合の違約金の予定を入れています。これは、損害賠償金の上限(損害賠償の予約)ではない形で定めているため、実際の損害金が違約金を上回る場合には、損害を立証することで別途賠償請求をすることができます。
契約解除時の条項として、貸主側が一定金額で本件設備を買い取れるという条項を入れておくことが考えられます。これは、特に借主の側の倒産等によって契約が解除された場合に、貸主が本件設備を継続して使用できるようにするための規定です。ただし、金融機関による譲渡担保等には劣後する形にしておく必要があります。
<第21条>
(本契約終了時の本件設備の扱い)
第21条 乙は、本契約終了(解除による契約終了を含む。)後1ヶ月以内(以下「明渡期間」という。)に本物件から本件設備の一切を撤去し、本物件を原状に回復したうえで甲に明渡すものとする。仮に、乙が、本項に定める明渡期間の末日(以下「明渡期日」という。)までに甲への明渡しを完了できない場合、乙は、甲に対し、明渡期日の翌日から明渡し完了までの期間の賃料相当額の倍額の損害金を支払うものとする。
2 乙は、本物件の明渡しに際し、甲に対し、移転料、立退料等の名目の如何を問わず、金銭その他の財産上の請求を行わないものとする。また、乙は、甲に対し、本件設備の買取請求も行わないものとする。
3 前項にかかわらず、甲と乙とが本件契約期間満了時までに、本契約が契約期間満了により終了した場合の本件設備の取扱いについて次の各号のいずれかとする旨を合意したときは、かかる合意に従い本件設備を取り扱うものとする。甲及び乙は、本設備が優れた公共性を有したものであることに鑑み、設備による発電とその電力の有効利用が継続するよう最大限の配慮をし、取扱いを決めるものとする。
(1) 本物件に設置した本件設備の甲への無償譲渡
(2) 乙が本件設備を所有するまま、契約条件を見直して新規の賃貸借契約締結
(3) 技術革新や電力の経済性の劇的な変化があった場合等は、新たな設備による新規の長期契約の締結
4 前項第1号に基づき本件設備の譲渡が行われた場合、乙は甲に対し、本件設備の設計図面、機器の仕様一覧、過去
1年分以上の発電量データ、機器のメンテナンス履歴等の必要書類を引き渡すものとする。
5 本条第1項ないし第4項にかかわらず、乙が倒産した場合等の本件設備の取扱いについては、乙の債権者たる金融機関との間の担保権の定めに従うものとする。
○契約終了時(両者が特に注意)
本契約書モデルにおける契約終了時の取り決めとしては、原則として撤去するものとし、別段の合意がある場合には借主から貸主への無償譲渡又は契約継続となる旨規定しています。
撤去費用を考えた場合、借主にとっては貸主にパネルを無償譲渡するほうが合理的とも思われるため、貸主の側にも異論がない場合には、予め無償譲渡とする旨を原則として規定しておくことも考えられます。
<第22条>
(表明保証条項)
第22条 【法人の場合】xは、乙に対し、本契約締結日において、以下の事項がxxかつ正確であることを表明し保証する。
(1)甲は、日本法に基づいて適法に設立され、有効に存続する【株式会社その他の法人形態を記載】であり、本契約を締結し、本契約の締結及び履行に関して必要な一切の能力と権限を有し、社内手続を完了していること。
(2)甲は、本件建物について単独の所有権を有し、本件建物に付随する一切の権利は、甲のみに帰属し、甲のみが本件建物に関する一切の処分能力、権利及び権限を有していること。
(3)甲が乙に対して提出した書類が、甲の知る範囲において適正で誤りのないこと。
(4)本物件に、本件設備の設置の障害となる物が置かれていないこと。
(5)本物件について、本件賃貸借の支障となる権利の設定(担保権及び賃貸借を含み、これに限らない)がされていないこと。
2 乙は、甲に対し、本契約締結日において、以下の事項がxxかつ正確であることを表明し保証する。
(1)乙は、日本法に基づいて適法に設立され、有効に存続する【株式会社その他の法人形態を記載】であり、本契約を締結し、本契約の締結及び履行に関して必要な一切の能力と権限を有し、社内手続を完了していること。
(2)乙が甲に対して提出した提出書類が、乙の知る範囲において適正で誤りのないこと。
3 甲及び乙は、商号、住所、代表者、営業目的、親会社の異動、主要株主の異動、会社の合併、重要な営業の譲渡又は譲り受け等重要な事項に変更があったときは、直ちに相手方に書面により通知しなければならない。
○契約当事者双方による表明保証
本条第1項で貸主の借主に対する表明保証条項を、第2項で借主の貸主に対する表明保証条項をそれぞれ規定しています。
表明保証条項とは、契約締結の前提となる両当事者の情報、物件情報、契約関連情報等が正確である旨を保証するものであり、これに反することも契約違反として解除事由となり損害賠償の対象となります。
一般的な賃貸借契約では、重要事項の変更告知義務について、借主側だけが負う規定になっている場合もありますが、本契約書モデルでは、屋根貸賃貸借契約が属人的な信頼関係を重視するものとして、両当事者にこの義務を課す規定にしています。
○提出資料
表明保証において、当事者が相手方に提出すべき資料については、契約書モデルには細かく規定していませんが、例えば借主について、金融機関の融資証明を提出させる場合や、貸主がマンションの場合にマンション管理規約や修繕積立金の内容を示す通帳等を提出させることなどが考えられます。契約規模が小さい場合には、あまり厳密に考えられない場合も多いですが、当事者間でどこまでを要求するか確認してください。
○法人以外の場合
貸主がマンション管理組合や個人である場合には、表明保証の書き方が変わり
ます。その場合は以下の記載例を参考にして変更してください。
<記載例1 マンション管理組合の場合>
第22条 【マンション管理組合の場合】甲は、乙に対し、本契約締結日において、以下の事項がxxかつ正確であることを表明し保証する。
(1)甲は、本件建物の区分所有者全員により適法に構成された建物の区分所有等に関する法律(昭和37年4月4日法律第69号)第3条に規定される建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体として有効に存続しており、本契約を締結し、本契約の締結及び履行に関して必要な一切の能力と権限を有し、団体内の手続を完了していること。
(2)甲は、本件建物のうち共用部を賃貸することに関する一切の処分能力、権利及び権限を有していること。
(3)甲が乙に対して提出した書類が、甲の知る範囲において適正で誤りのないこと
(4)本物件の上に、本件設備の設置の障害となる物が置かれていないこと
(5)本物件について、本件賃貸借の支障となる権利の設定(担保権及び賃貸借を含み、これに限らない)がされていないこと
<記載例2 個人の場合>
第22条 【個人の場合】甲は、乙に対し、本契約締結日において、以下の事項がxxかつ正確であることを表明し保証する。
(1)甲は、本件建物について単独の所有権を有し、本件建物に付随する一切の権利は、甲のみに帰属し、甲のみが本件建物に関する一切の処分能力、権利及び権限を有していること。
(2)甲が乙に対して提出した書類が、甲の知る範囲において適正で誤りのないこと
(3)本物件の上に、本件設備の設置の障害となる物が置かれていないこと
(4)本物件について、本件賃貸借の支障となる権利の設定(担保権及び賃貸借を含み、これに限らない)がされていないこと
<第23条>
(暴力団排除条項)
第23条 甲及び乙は、相手方に対し、自己又は自社が、現在、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力団等、その他これらに準ずる者(以下これらを「暴力団員等」という。)に該当しないこと、及び次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
(1)暴力団員等が経営に実質的に関与又は支配していること。
(2)甲又は乙、もしくは第三者の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的等のために、暴力団員等を利用していること。
(3)暴力団員等に対して資金等を提供し、又は便宜を供与する等の関与をしていること。
(4)甲又は乙(役員もしくは経営に実質的に関与している者を含む)が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること。
2 甲又は乙が前項に違反した場合、相手方は、何ら通知催告の手続きを要しないで、即時本契約を解除することができる。また、甲又は乙が第1項に違反して本契約が解除された場合、当該違反者は、違約金として本件契約期間満了日までに支払う予定であった賃料の合計額に相当する金額を支払うものとし、さらに、相手方が当該解除により被っ
た損害が当該違約金を超過する場合には当該超過額についても支払うものとする。
○当然解除と違約金(両者が特に注意)
暴力団排除条項は当然に契約内容とし、万一この条項に反した場合には当然に契約解除がなされるべきです。
その場合に相手方に生じた損害賠償金は、当然違反した者が賠償しなければなりません。
そこで、第1項に違反して契約が解除された場合の後、期間満了日までの賃料相当金額を、違約金として規定しつつ、違約金を超えた損害が発生している場合には、当該超過損害分についても請求できる条項にしています。
<第24条>
(意思表示の方法)
第24条 本契約に関し当事者間で行う申込み、承諾その他の意思表示は、すべて書面により行うものとする。
○書面でのやり取り
契約書モデルでは、全ての意思表示は書面で行うものとしています。
両当事者ともに法人である場合には、双方の担当者を決めて、担当者間でやりとりをすると取り決めることもあり得ますが、書面化したほうが後の紛争を避けるためには有益ですので、書面化をお勧めします。
<第25条>
(守秘義務)
第25条 甲及び乙は、本契約の締結及び履行の過程で相手方より知り得た一切の公開されていない情報(個人情報を含む)を第三者に漏洩してはならない。また、本契約の終了後といえどもxxの守秘義務を遵守するものとする。
○守秘義務を負う期間(両者が特に注意)
守秘義務については、本契約終了後にも残るものとしています。また、マンションの屋根貸しのような場合、一定の個人情報を借主が取得することも考えられるため、守秘義務の期間についても敢えて規定せず、無期限の守秘義務を負わせています。
<第26条>
(合意管轄)
第26条 本契約に関する訴訟の専属的合意管轄裁判所は、本契約書に記載の本件建物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所とする。
○管轄地
当事者間で何らかの紛争が発生し、訴訟を起こす場合の管轄地の定めです。 東京地裁などと明示してしまう方法も有力ですが、ここでは物件所在地として
います。
<第27条>
(契約に定めのない事項)
第27条 本契約に定めのない事項については、甲と乙が協議して定める。
○協議条項
一般的な協議条項です。「屋根貸し」はまだ新しいビジネスモデルであり、事業リスク等もすべてが明確に認識されているわけではないため、不測の事態等が生じた場合の協議条項は重要です。「甲及び乙は、事業をなるべく継続していけるように努力し、互いに誠意をもって協議する」といった一歩踏み込んだ規定も考えられます。
1 契約条件に関する合意事項 | |||
2 運用段階における合意事項 | |||
3 リスクと権利、賠償等に関する合意事項 | |||
4 その他の合意事項 | |||
(参考)契約書モデルの全体構造モデル契約の全体構造
<代表的な条項>
第 2 条(賃貸借の合意)、第 3 条(契約期間)、第 4 条(賃料の支払い)、第 5 条(保証金)、第 21
条(本契約終了時の本件設備の扱い)
<代表的な条項>
第 7 条(設備の設置と各種事務手続の実施)、第 8 条(本件設備の帰属と租税の負担)、第 9 条(電
気料金)、第 10 条(保険の加入)、第 13 条(本物件・本件設備の維持管理)、第 15 条(使用・立入方
法)、第 16 条(非常用電源としての使用)、第 17 条(禁止事項)
<代表的な条項>
第 6 条(遅延損害金)、第 11 条(本件建物の安全性)、第 12 条(契約期間中の修繕・補修等)、第 14
条(xxx第三者に対する損害賠償義務)、第 18 条(権利義務の譲渡)、第 19 条(不可抗力)、第 20
条(契約の解除)、第 22 条(表明保証条項)、第 23 条(暴力団排除条項)
<代表的な条項>
第 1 条(目的)、第 24 条(意思表示の方法)、第 25 条(守秘義務)、第 26 条(合意管轄)、
第 27 条(契約に定めのない事項)
Ⅳ その他法令との関係
契約書モデルにおいては、関係諸法令への適用は、借主であるxxx発電事業者側の負担と責任によるものと規定しています(第7条第2項)。
1.建築基準法関係
建築基準法との関係では、国土交通省通知国住指第4936号(H23.3.25)により、建物の屋上や屋根にxxx発電設備を設置する場合には、原則として建築確認は不要であるとの運用がなされています。一方、同通知第3には、「建築物の屋上に設置するxxx発電設備等の建築設備については、当該建築設備を建築物の高さに算入しても当該建築物が建築基準関係規定に適合する場合にあっては、令第2条第1項第6号ロに規定する「階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分」以外の建築物の部分として取り扱うものとする。」と規定され、日照上の高さ制限規制自体は特に緩和されていないと思われることから、屋根上にパネルを設置した状態では当該制限を超えてしまうことがないかは確認する必要があります。
2.医療法関係
医療法人の所有する病院等の屋根を借りて事業をしようとする場合には、厚生労働省から「医療法人におけるxxx発電の取扱いについて」(H25.1.10 厚生労働省)という事務連絡が出されています。
これによれば、医療法人が自ら全量買取制度における売電事業を行うことは、医療法に照らし許されないとされています。(なお、余剰電力の売電については基本的に医療法の趣旨には反しないとされています。)
また、全量買取制度を実施している事業者に対して、医療法人が所有する不動産(屋根を含むと思われます)を貸与することについても、医療法人が不動産賃貸業を行うことになるため認められないとされています。
無償の使用貸借である場合には、今まで利用価値の無かったものを有効に活用でき、xxな契約に基づき医療法人の運営として著しく適性を欠くものではないと認められる場合には、認められうるとされています。ただし、使用状況等が著しく適性を欠く場合には医療法第64条1項に基づき使用貸借の取りやめなど必要な命令等を行う可能性があるとされています。
このような状況に鑑みれば、借主であるxxx発電事業者にとって、医療法人の所有する病院等の屋根を借りて事業を行うことは、無視できないリスクがあると評価せざるを得ませんが、使用貸借の方法をとったうえで一定量の無償電力提供や停電時の電力提供等を約束することで契約が可能なのであれば、検討の余地があるでしょう。
Ⅴ おわりに
契約書モデル及びガイドラインは、多くの契約において共通に必要となると考えられる条項を検討し、両当事者間にxxな規定となるように配慮して作成しました。
実際の契約締結に当たっては、当事者同士の個別事情、交渉の結果などが契約条項に反映されていくことになり、著しく不xx・不平等な規定でない限り、こうした契約条項は有効です。
したがって、本ガイドラインは、あくまで参考情報として活用していただくべきものですが、契約の際に各当事者が留意すべきポイントや、一定の標準的な合意内容を記載していますので、契約に向けた検討の際に活用いただければと思います。