Contract
[事案 29-282]転換無効請求
・平成 30 年 6 月 19 日 裁定不調
<事案の概要>
転換時の募集人の説明が不十分であったことを理由に、転換の無効を求めて申立てがあったもの。
<申立人の主張>
平成 25 年 3 月に契約した終身保険を、平成 28 年 10 月に別の終身保険に転換したが、以下のとおり、募集人の不十分な説明により契約内容を誤解していたので、転換前契約を無効として転換後契約に戻したうえで、既払込保険料と転換価格相当額を返還してほしい。
(1)貯蓄となる年金型保険を希望していたが、転換後契約は年金受取回数が毎年 1 回ずつ減っていく保険であった。
(2)契約前および申込時に、ご契約のxxx(定款・約款)および設計書は交付されず、転換制度や転換価格の説明もなかったので、転換であることを知らなかった。
(3)募集人に、誕生日月の 1 月前であり転換前契約の保険料が上がる直前であると判断を急かされたので、十分考える時間がなかった。
<保険会社の主張>
以下のとおり、転換に際しての募集人の説明に問題はなく、申立人の意思表示に誤解はなかったか、仮に誤解があったとしても申立人の重大な過失によるので、申立人の請求に応じることはできない。
(1)転換に際して、募集人は申立人から、現在申立人が主張しているような希望は聞いていない。
(2)募集人は転換制度および転換価格について申立人に説明しているし、ご契約のxxx(定款・約款)および設計書を交付したことは、受領書兼確認書に署名があることから明らかである。
(3)募集人は、転換前契約ではなく転換後契約の保険料が上がる直前であったので早く契約するように案内したが、むしろ、十分に説明を聞かずに手続きをしようとする申立人に対し、よく説明を聞くよう促している。
<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理のほか、転換前後の状況等を確認するため、申立人、募集人および募集人の上司に対して事情聴取を行った。
2.裁定結果
上記手続の結果、転換の無効は認められないが、以下の理由および紛争の早期解決の観点から、本件は和解により解決を図ることが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、申立人から和解案を受諾しないとの回答があったため、手続を終了した。
(1)説明は、運送業に従事する申立人が集荷のための荷物の積替え作業を行う合間に、積替え現場である道路脇の駐車可能スペースで行われ、申立人の休憩時間中ですらなかったので、申立人は落ち着いて説明を聞くことができる状況ではなかった。しかも、募集人の軽自動
車の車中で、運転席に募集人、助手席に申立人が座った状態で説明が行われているので、余裕を持って説明資料を広げ、説明することはできなかった。
(2)説明時間は 20 分程度であり、申立人はこの状況の説明を 1 回受けただけで転換手続きをしているが、転換後契約の契約内容および転換制度そのものを説明するには、いかに募集人が要領よくポイントを絞り効率的な説明をしたとしても、申立人が被転換契約の保障内容を振り返り、転換後契約の内容と十分に比較検討し、申立人が十分に転換の内容を理解するために足りる時間ではない。
説明の機会・場所・時間ともに申立人同意のもとで行われたが、保険の素人である申込者は、多くの場合、契約内容を理解するのに十分な説明を受けたかどうかの判断ができないものであり、意向に合致しない契約を締結するトラブルに発展する場合がある。
募集人としては、客観的に見て十分な説明の機会を確保するため、別の機会に改めて手続きするよう提案するなど、トラブル防止に努めることが望ましい。