清水銀行(頭取 岩山 靖宏)は、お客様の SDG s の達成をご支援するため、各種サステナブルファイナンスの提供に努めており、その一環としてこのたび、株式会社アオノ(代表取締役 土屋 智昭)と「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約を締結いたしました。
令和 5 年2月 28 日株式会社 xx銀行
株式会社アオノ との
「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
xx銀行(頭取 xx xx)は、お客様の SDG s の達成をご支援するため、各種サステナブルファイナンスの提供に努めており、その一環としてこのたび、株式会社アオノ(代表取締役 xx xx)と「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約を締結いたしました。
本件の取組みにあたっては、関連会社の株式会社xx地域経済研究センター(代表取締役 xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所(代表取締役社長 xx xx)がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。
xx銀行では、2021 年 12 月に「環境方針」「責任ある投融資方針」からなる「xx銀行サステナビリティ方針」を策定し、持続可能な社会の実現や社会的課題の解決に向けた取り組みを加速させてまいりました。今後も社会・環境問題の解決に資する取り組みを一層推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
1.契約概要 2.借入人概要
契 約 日 : 令和 5 年2月 28 日(火) 企 業 名 : 株式会社アオノ
融資金額 : 1億円 所 在 地 : xxxxxxxx 0000 xxx0
資金使途 : 運転資金 事業内容 : 管工事業・土木建築工事業
3.借入人の主な取組み(詳細は「ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書」をご参照ください)
(1)特定されたインパクト
ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項 | ・管工事施工管理技士等の有資格者が行う一般住宅向け水道工事施工による安心安全な水道飲料水の提供 ・公共管工事業による災害時の断水懸念の低減 ・一般住宅の水道給排水工事、リフォームの実施による安心安全な住居環境の提供 ・1・2 級管工事施工管理技士等業務に必要な資格試験費用の会社負担及び資格取得者に対する技術手当の支給 ・ダイバーシティ経営による現場職、営業職を主体とした女性管理者の登用、高齢者の嘱 託雇用、外国人の積極的雇用 |
ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項 | ・就業規則の「安全衛生」「災害補償」条項による、年 1 回の健康診断実施、作業環境の改善、安全衛生教育の実施と労働災害発生の低減(重大事故7年間ゼロ) ・時間外労働の低減、離職率の抑制、有給休暇取得の促進 ・県内外 16 市町の指定水道工事業に取り組むことによる住民の生活環境改善、河川・海の水質保全貢献 ・事務所内の古紙再利用、再資源ゴミ分別、混合廃棄物 BOX の設置などの資源効率化 ・建設廃棄物の分別とリサイクル利用、混合廃棄物排出量の削減、COBRIS使用による混合廃棄物の再資源化徹底 ・節電、空調温度管理の徹底 ・エコドライブ、アイドリングストップ推進、過負荷・過積載禁止 |
(2)測定する KPI
社会面 | ・2028 年までに一般住宅の給排水工事を過去の年平均 100 件から 150件以上へ増加させる ・2028 年までに業務に必要な資格(土木施工管理技士、建築施工管理技士、管工事施工管理技士、電気工事士、消防設備士)の全項目取得者を 2 名以上とする ・2028 年までに女性管理者を 2 名以上登用する ・2028 年までに高齢者従業員を5名以上、外国人正社員を 2 名以上毎年採用する ・2028 年まで安全衛生教育の継続的な実施と労働災害の重大事故発生ゼロを継続する ・2028 年までに残業時間を月 14 時間以内に低減する ・2028 年まで離職率を 10%以下に低減する ・2028 年までに有給休暇取得率を 60%以上とする |
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環境面 | ・2028 年まで社内で使用する水の使用量を年間6m3/従業員数以下とする。(2021 年度実績 402m3/63 名=6.38m3) ・2028 年までに建設廃棄物排出量を 2021 年度実績比 5%以上削減する ・2028 年までに CO2 排出量を 2021 年度実績比毎年 5%以上削減する ・2028 年までに工事車両 14 台中 5 台から 7 台以上を低公害車に、社 用車 28 台中 6 台から 14 台以上を HV・EV に移行する |
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経済面 | ・2028 年までに女性管理者を 2 名以上登用する ・2028 年までに高齢者従業員を5名以上、外国人正社員を 2 名以上毎年採用する |
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以 上
<ニュースリリースに関するお問い合せ> xx銀行 支店営業部 xx 054-366-9990
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2023 年 2 月 28 日
株式会社xx地域経済研究センター
目次 | |
1.評価の概要••••••••••••••••••••••••••• | 1 |
2.PIF の概要••••••••••••••••••••••••••• | 2 |
3.企業概要•••••••••••••••••••••••••••• | 2 |
4.包括的分析••••••••••••••••••••••••••• | 4 |
5.サステナビリティ経営体制•••••••••••••••••••• | 11 |
6.インパクトの特定•••••••••••••••••••••••• | 17 |
7.KPI の決定••••••••••••••••••••••••••• | 21 |
8.モニタリング•••••••••••••••••••••••••• | 25 |
xx地域経済研究センターは、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が公表している「ポジティブ•インパクト•ファイナンス金融原則」に則り、株式会社アオノ(以下、アオノという)の包括的なインパクト分析を行いました。
xx銀行は、本評価書で特定されたポジティブ•インパクトの拡大とネガティブ•インパクトの低減に向けた取り組みを支援するため、アオノに対してポジティブ•インパクト•ファイナンス(以下、PIF という)を実行します。
1.評価の概要
(企業概要)
アオノは静岡県富士市にある 1978 年創業の上下水道設備の管工事業者及び土木建築工事
業者である。業歴 44 年を数え、主に静岡県東部地域を中心に一般住宅から公共施設を含む大型施設まで、上下水道設備工事、空調設備工事、各種設備修理、リフォーム、関連土木建築等を行っている。静岡県内外の 16 市町より指定水道工事業者の許可を得て公共上下水道工事を通して地域社会に貢献している。また、CO2 削減や省エネに対する社会的要請、廃棄物規制が厳格になる中、環境保全、再資源化を強く意識した取り組みを行いつつ、事業規模の拡大を図っている。同社はグループ企業として㈱レイダン、㈱ツチヤ、㈱テーラ•テール、㈱アメニティハウス、双葉建設㈱の 5 社を擁し、管工事から土木建築工事まで連携した業務運営をしている。
(インパクト特定)
管工事業におけるポジティブ•インパクトとして特定した項目は「水(入手可能性)」「住居」「健康•衛生」「教育」「雇用」「文化•伝統」「包括的で健全な経済」「経済収束」とし、ネガティブ•インパクトとして特定した項目は「健康•衛生」「雇用」「水(質)」
「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」とした。
また、土木建築工事業におけるポジティブ•インパクト及びネガティブ•インパクトは管工事と同じ項目を特定した。
(KPI の決定)
ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項として、社会面において、「水(入手可能性)」「住居」ではテーマを「安心•安全な給排水環境の提供」とし KPI は「一般住宅の給排水工事を過去の年平均 100 件から 150 件以上へ増加させる」とした。「教育」ではテーマを「人材育成の取り組み」とし KPI は「業務に必要な資格の全項目取得者を 2 名以上とする」とした。社会面•経済面において、「雇用」「包括的で健全な経済」ではテーマを
「ダイバーシティ経営の推進」とし KPI は「女性管理者を 2 名以上登用する」「高齢者従業員は5名以上、外国人正社員は毎年 2 名以上採用する」とした。
ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項として、社会面において、「健康•衛生」ではテーマを「健康管理促進と労働災害抑制の取り組み」とし KPI は「安全衛生教育の継続的な実施と労働災害の重大事故発生ゼロを継続する」とした。「雇用」ではテーマを「労働環境の整備」とし KPI は「残業時間を月 14 時間以内に低減する」「離職率を 10%以下に低減する」「有給休暇取得率を 60%以上とする」とした。環境面において、「水(質)」ではテーマを「エコアクション 21 による水使用量の削減」とし KPI は「社内で使用する水の使用量を年間 6m3/従業員数以下とする」とした。「資源効率•安全性」「廃棄物」ではテーマを「エコアクション 21 による廃棄物排出量削減」とし KPI は「建設廃棄物排出量を 2021 年度実績比 5%以上削減する」とした。「気候」ではテーマを「エコアクション 21 による CO2 排出量削減」とし KPI は「CO2 排出量を 2021 年度実績比毎年5%以上削減する」「工事車両 14 台中 5 台から 7 台以上を低公害車に、社用車 28 台中 6 台から 14 台以上を HV•EV に移行する」とした。
(モニタリング)
モニタリング体制として、統括責任者をxxxx社長、プロジェクトリーダーをxxx取締役とし、プロジェクトチームとして総務部内に SDGs 推進チームを組成した。今後少なくとも年 1 回はモニタリングする体制を構築し、進捗状況を確認する。
2.PIF の概要
今回実施予定の融資概要
契約日及び返済期限 | 2023 年 2 月 28 日~2028 年 2 月 28 日 |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5 年 |
川xx事業所
3.企業概要
企業名 | 株式会社アオノ xx事業所 川成事業所 |
本社所在地 | xxxxxxxx 0000-0(xx事業所) |
営業所 | 川成事業所 xxxxxxxxxx 00 xx事業所 xxxxxxxx 0000-0 |
海外拠点 | 無 |
従業員 | 68 名 |
資本金 | 20 百万円 |
業種 | 管工事業•土木建築工事業 |
事業の内容 2021 年度 売上高比率 | 管工事業 95% 土木建築工事業 5% |
グループ企業 | 会社名 業種 所在地 ㈱レイダン 管工事業 xxxxxxxxxxxx 0000-0 ㈱ツチヤ 不動産賃貸業 xxxxxxxxxx 00 ㈱テーラ•テール 不動産賃貸業 xxxxxxxxxx 00 ㈱アメニティハウス 建設業 xxxxxxxxx 000-00双葉建設㈱ 不動産建設業 xxxxxxxx 0000-0 |
主要取引先 | <主要仕入先> ㈱xx東海、㈱xx商店、㈱トーエネック、イシグロ㈱、富士機材㈱ 他 <主要受注先> 静岡県、静岡県内外 16 市町、鈴与建設㈱、五光建設㈱、xx建設㈱ 他 |
沿革 | 1978 年 富士市xxにて水道管工事業として株式会社アオノ設立 2008 年 xxxxxが代表取締役に就任 2012 年 エコアクション 21 認証登録 2014 年 川成事業所を開設 2017 年 xx事業所を開設 |
企業理念 | •お客様の立場になって考えるところからはじめます。 •修理は「される側」であるお客様のご要望を叶えることと認識しています。 •すべての優れた施工は、相談•納得•安心から生まれます。 |
組織図 | (本社) |
許認可等 | 静岡県知事(特-28)第 15200 号 土木工事業•管工事業 静岡県知事(般-28)第 15200 号 とび•土木工事業、電気工事業、水道施設工事業、消防施設工事業 静岡県知事(般-30)第 15200 号 建築工事業 |
4.包括的分析
(1)業種別インパクトの状況
アオノの事業として国際標準産業分類における管工事業におけるインパクトレーダーの標準値において、ポジティブなインパクトとして発現した項目は「水(入手可能性)」
「住居」「健康•衛生」「雇用」、ネガティブなインパクトとして発現した項目は「雇用」「大気」「廃棄物」となった。
また、土木建築工事業におけるインパクトレーダーの標準値において、ポジティブなインパクトとして発現した項目は「雇用」「包括的で健全な経済」「経済収束」、ネガティブなインパクトとして発現した項目は「健康•衛生」「雇用」「文化•伝統」「水
(質)」「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」となった。
(2)サプライチェーン全体におけるインパクトの状況
ⅰ管工事業の業界動向
日本における管工事1業の動向は、国土交通省「建設工事受注動態統計調査」によると、 2021 年度における設備工事業の完成工事高は 31 兆 4,137 億 97 百万円であり、う
ち管工事業は 8 兆 3,605 億 50 百万円と 26.6%の割合を占めている。2021 年度における管工事業者数は、2021 年度で全国計 24,013 社が存在している。
業種別完成工事高 (単位:百万円、数、%)
2020 年度 | 構成比 | 2021 年度 | 構成比 | 増減率 | |
設備工事業 | 31,967,787 | - | 31,413,797 | - | ▲1.7 |
うち管工事業 | 7,997,476 | 25.0 | 8,360,550 | 26.6 | 4.5 |
管工事業者数 | 23,923 | - | 24,013 | - | 0.4 |
(出典:国土交通省「建設工事受注動態統計調査」)
ⅱ静岡県における公共工事動向
静岡県における公共工事について、2019 年度から 2021 年度までの発注者別請負金額の状況は下表の通りで、直近 3 年間では独立行政法人等•市町村からの発注が 3 年連続で減少している。
発注者別請負状況 (単位:百万円)
項目 発注者 | 2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | |||
件数 | 請負金額 | 件数 | 請負金額 | 件数 | 請負金額 | |
国 | 459 | 58,904 | 405 | 59,978 | 463 | 62,165 |
独立行政法人等 | 121 | 76,253 | 113 | 76,029 | 81 | 46,711 |
県 | 2,840 | 97,127 | 3,096 | 112,742 | 3,094 | 108,539 |
市町村 | 4,130 | 154,387 | 3,876 | 147,494 | 3,737 | 127,477 |
地方公社 | 41 | 1,862 | 17 | 771 | 23 | 1,406 |
その他 | 140 | 18,794 | 121 | 11,164 | 113 | 21,056 |
合計 | 7,731 | 407,329 | 7,628 | 408,181 | 7,511 | 367,358 |
(出典:東日本建設業保証株式会社 HP)
ⅲ静岡県における水道の現況と管工事業の状況
「静岡県における水道の現況」によると、2020 年度の給水人口2は 3,578,154 人で普及率は 99.0%となっている。(全国平均は同時点 98.1%)
1 管工事:管工事とは家屋やその他施設の敷地内の配管工事や、上下水道の給排水管を設置する工事をいう。
2 給水人口:給水区域内に居住し、水道により給水を受けている人口をいう。
こうした状況の中、国土交通省「建設工事受注動態統計調査」によると、静岡県においては 2020 年度の管工事業の施工業者数は 997 社、完成工事高は 1,441 億 33 百万
円、内公共機関からの発注完成工事高が 395 億 38 百万円、内民間からの発注完成工
事高が 1,045 億 95 百万円となっており、民間の発注が 7 割強を占める。
1 社当たりの完成工事高は 1 億 45 百万円であり、アオノは 2020 年度の完成工事高
が 26 億 67 百万円であることから、静岡県内においては中堅クラスの規模である。
ⅳ管工事業及び上下水道の給排水人口の状況
➀給排水人口と普及率
富士市においては、管工事業での統計となるが、2020(令和 2)年経済センサスに よると、業者数は 108 社、従業者数 484 人となっている。また、富士市の上水道給水人口は 2020 年度で 251,374 人、普及率は 99.9%である(全国平均 98.1%、静岡県 99.1%)。下水道排水人口については、同年度で 196,138 人、普及率は 78.0%で静岡県内では高い方である。(全国平均 79.7%、静岡県 63.9%)。
富士市給排水人口と普及率
(単位:人、%)
年 度 | 2016 年 | 2017 年 | 2018 年 | 2019 年 | 2020 年 |
上水道給水人口 | 254,818 | 253,961 | 253,168 | 252,363 | 251,374 |
普及率 | 99.9 | 99.9 | 99.9 | 99.9 | 99.9 |
下水道排水人口 | 191,668 | 192,969 | 194,003 | 195,287 | 196,138 |
普及率 | 75.1 | 75.9 | 76.6 | 77.3 | 78.0 |
(出典:富士市「富士市の水道事業」)
②水道事業の種別
全国の水道事業は給水人口数により下記の通り分類されており、同社は水道用水供給事業以外の事業については水道事業、専用水道事業すべての工事を請け負っている。
水道事業の種別
種別 | 内容 | 事業数 | 現在の給水人口 |
水道事業 | 一般の需要に応じて水道により水を供給する事業 | ||
内上水道事業 | 給水人口が 5,000 人超の水道事業 | 1,312 | 1 億 2,128 万人 |
内簡易水道事業 | 給水人口が 5,000 人以下の水道事業 | 2,507 | 174 万人 |
小 計 | 3,819 | 1 億 2,302 万人 | |
水道用供給事業 | 水道事業者に対し水道用水を 供給する事業 | 88 | ― |
専用水道事業 | 寄宿舎、社宅等の自家用水道等で 100人を超える居住者に給水するもの又は 1 日最大給水量が 20 m3 を超えるもの | 8,288 | 37 万人 |
合 計 | 12,195 | 1 億 2,339 万人 |
(出典:厚生労働省 2020 年度水道統計)
③水道の種類別箇所数
水道の種類別箇所数をみると、静岡県は隣接県(愛知県、神奈川県、山梨県)と比較して簡易水道、専用水道が多く、全体の水道合計数は 4 県のうち最も多い。
水道の種類別箇所数 (2021「令和3」年3月末)
都道府県 | 水道用水供給事業 | 上水道 | 簡易水道 | 専用水道 | 水道合計 | |||||||||||
県営 | 市町村営 | 組合営 | 計 | 県営 | 市営 | 町営 | 村営 | 組合営 | 私営 | 計 | 公営 | その他 | 計 | |||
静岡県 | 3 | 0 | 1 | 4 | 0 | 24 | 10 | 0 | 1 | 2 | 37 | 57 | 59 | 116 | 401 | 558 |
愛知県 | 1 | 0 | 0 | 1 | 32 | 7 | 0 | 4 | 0 | 43 | 4 | 0 | 4 | 259 | 307 | |
神奈川県 | 0 | 1 | 2 | 3 | 2 | 8 | 10 | 0 | 0 | 20 | 13 | 2 | 15 | 488 | 526 | |
山梨県 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 11 | 3 | 1 | 1 | 0 | 16 | 135 | 10 | 145 | 35 | 198 |
全国計 | 37 | 6 | 45 | 88 | 5 | 717 | 480 | 37 | 64 | 9 | 1,312 | 1,866 | 641 | 2,507 | 8,228 | 12,135 |
(出典:2021「令和2」年度水道統計)
(出典:厚生労働省 2020 年度水道統計)
④水道事業の課題
水道事業の各市町村の課題は、水道施設及び水道管の老朽化が進んでいることである。具体的には、耐震化が図られていないものや管の内部が錆びて劣化しているものなどの修理や水道施設及び水道管のメンテナンスが十分行われていないことなどがある。また、人口減少に伴う水道料金収入の減少、水道事業に携わる職員数の減少等に直面しており、水道を取り巻く状況は厳しさを増している。2020(令和 2)年度「静岡県の水道の現況」によると、富士市は全体の 51.7%が高度経済成長期に敷設されたものが多く、水道管の法定耐用年数の 40 年を超過している。静岡県全体では同時期に敷設されたものが 25.4%であるため、富士市の水道管の取り換え修理やメンテナンスの必要性が高くなっている。
ⅴ事業概要
同社は 1978 年富士市で水道設備工事、修理、保全を行う建設業として設立し、静岡県
富士市を中心に県内外 16 市町の水道事業指定工事業者、水道排水設備指定工事業者(上下水道含む)となっている。公共施設や大型施設の給排水工事及び上下水道事業を主業務としており、一般住宅の給排水工事等も取り扱っている。
ⅵグループ会社の事業概要
グループ会社は、次ページのように同社を中心企業として形成されている。
㈱レイダンは静岡県東部地域を主な営業エリアとしており、空調•換気設備•給排水•上下水道•浄化槽工事等を取り扱っている。㈱ツチヤは静岡県沼津市に賃貸マンションを所有し、不動産賃貸業を営んでいる。㈱テーラ•テールは同社グループの不動産管理業務の他、親会社アオノの事業所等を賃貸する不動産賃貸業務を行っている。
㈱アメニティハウスは静岡県熱海市で給排水、内装、外壁塗装、外構工事などのリフォーム事業部門を担当している。営業エリアは熱海市、xx市など静岡県東部となってい
る。双葉建設㈱は富士市で建設、不動産売買、仲介業務、宅地分譲等の開発事業を行っている。
グループ一覧
(単位:百万円)
法人名 | 業 種 | 代表者名 | 資本金 | 設立日 |
㈱アオノ(中心企業) | 管工事業他 | xx xx | 20 | 1978 年 7 月 19 日 |
㈱レイダン | 管工事業 | xx xx | 20 | 1973 年 4 月 23 日 |
㈱ツチヤ | 不動産賃貸業 | xx xx | 1 | 2016 年 3 月 14 日 |
㈱テーラ•テール | 不動産賃貸業 | xx xx | 1 | 2014 年 6 月 23 日 |
㈱アメニティハウス | 建設業 | xxx xx | 10 | 1991 年 3 月 6 日 |
双葉建設㈱ | 不動産建設業 | xx x | 16 | 1978 年 5 月 10 日 |
ⅶサプライチェーンの概要
同社におけるサプライチェーンは、下記の通りである。
<アオノグループ> <受注先>
<仕入先>
㈱xx東海
㈱xx商店
㈱トーエネック他
㈱アオノ
(グループ会社)
㈱レイダン
㈱ツチヤ
㈱テーラ•テール
㈱アメニティハウス双葉建設㈱
静岡県
県内外市町
富士市、富士宮静岡市、沼津市長泉町、裾野市xx市 他 9 市町
<法規制>
水道法、下水道法、浄化槽法建築基準法、騒音規制法 振動規制法、消防法等
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
鈴与建設㈱ 五光建設㈱ xx建設㈱他
ⅷ関連法規制
同社は給排水工事、空調工事等に関わるため、建設業のうち管工事業に分類され、建築基準法が適用される。また、都市インフラに関する法規制も該当し水道法、下水道法、浄化槽法が、公害防止関連では騒音規制法、振動規制法、消防法等が該当する。加えて、管工事業は、公衆衛生や健康に直接関わる設備の施工を受け持つため、それぞれの部門ごとに特殊な技術•技能を必要とする。また機械化が困難な作業が多く、労働集約型であるため、施工業者には次のような資格制度が設けられている。
•一般管工事:管工事施工管理技士、配管技能士
•水道工事:下水道排水設備工事責任技術者
•空調機器工事:機械設備施工管理技士
•防火施設工事:消防設備士
•冷媒瘢痕工事:高圧ガス取扱xx者
5.サステナビリティ経営体制
(1)サステナビリティ経営方針
アオノの企業理念は、「お客様の立場になって考えるところからはじめます。」「修理は『される側』であるお客様のご要望を叶えることと認識しています。」「すべての優れた施工は、相談•納得•安心から生まれます。」としており、顧客の立場に基づいた経営方針を掲げて事業に取り組んでいる。
また同社では、下記の通り環境経営方針を定めている。
•全ての事業活動が環境へ何らかの影響を与えていることを認識し、環境保全活動を推進する。
•CO2排出量を削減するため化石燃料使用量に着目し、使用エネルギーの低減に努める。
•新しい風にも柔軟に応え、IT 化等による作業効率の向上に努める。
•従業員に寄り添うことで環境保全活動への関心意欲を高める。
•分別等の徹底による再資源化を目指し混合廃棄物排出量の削減に努める。
•地域社会の活動に参加し、河川や現場周辺の清掃活動に努める。
•お客様を第一に考え、よりよい提案及び施工を行う。
(2)社会面における対応
〈「水(入手可能性)」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
アオノは、一級•二級管工事施工管理技士など有資格者を配置した給排水工事の実施により安心•安全な水道飲料水の提供に取り組んでいる。また、地域の水道事業というインフラ基盤に携わっているという重要なインパクトを与えている。加えて、公共機関からの管工事受注を通じて、地域の災害発生時の断水復旧にも支援協力する体制を構築している。今後は一般住宅等の水道工事取扱件数を増加させ、地域の給排水インフラ整備に貢献していく方向性を確認した。
〈「住居」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、給排水工事を通じて、住宅の新築•リフォーム•修理を取り扱っており、地域住民の給排水環境向上に取り組んでいる。今後は一般住宅等の水道工事取扱件数を増加させることで、人間が快適に暮らせるための住宅設備や給排水インフラの整備に貢献していく方向性を確認した。
〈「教育」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
インパクトレーダーにおいて、「教育」は標準値として発現していないが、同社は資格取得支援による人材育成に積極的に取り組んでいる。資格取得費用については全額会社負担にしている他、受験資格のある資格取得希望者を積極的に受験させている。また、資格取得者への技術手当の支給などインセンティブ付与も行っており、引き続き資格取得
者の増加を推進していく方向性を確認した。社内研修においては、地域における災害時の断水措置に対する支援の研修を定期的に実施している。
因みに同社の資格保有者状況は以下の通りとなっており、これら 5 種類の全資格を持った人材を多く育成することにより、信頼性ある企業を目指していく方針である。
資格保有者人数
資格名 | 人数 | |
1 | 一級土木施工管理技士 | 3名 |
2 | 二級建築施工管理技士 | 2名 |
3-1 | 一級管工事施工管理技士 | 9名 |
3-2 | 二級管工事施工管理技士 | 3名 |
4 | 第二種電気工事士 | 2名 |
5 | 消防設備士 | 4名 |
〈「健康•衛生」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
従業員の健康管理では、年 1 回の健康診断の他、40 歳以上の従業員については人間ドックを実施している。労働災害では、過去 7 年間に重大な事故は発生していない。社内安全情報アプリを従業員全員に保有させており、メール送受信により現在所在地、健康状態等を本社にて把握し、従業員の安全情報をxx管理できる体制を構築している。
〈「雇用」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
2022 年(1 月~12 月)における従業員 68 名の1人当たり平均残業時間は 18.8 時間/月である。厚生労働省「2021(令和 3)年勤労統計調査」における建設業一般労働者の平均残業時間である 14.6 時間/月に対し、4.2 時間多く、今後残業時間の低減に向けた施策展開の必要性を確認した。
同社は 2014 年より育児介護休業等規程を策定し運用実施している。ただし、有給休暇の取得については未だ十分ではなく、2022 年(1 月~12 月)の有給休暇取得率は 39.4%であり、厚生労働省「2021(令和 3)年就労条件総合調査」における建設業一般労働者一人当たりの平均である 53.2%に対し、13.8 ポイント低いことから、同社の有給休暇の取得率を高めていく必要があることを確認した。また、同社の離職率は過去 2年間平均で 28.6%であり、厚生労働省「2021(令和 3)年雇用動向調査」における建設業一般労働者一人当たりの過去 2 年間平均である 14.1%に対し、14.5 ポイント高いことから、同社の離職理由の分析が必要であることを確認した。
(3)社会面•経済面における対応
種類 | 男性(名) | 女性(名) | 合計(名) |
役員 | 4 | 0 | 4 |
管理者 | 19 | 0 | 19 |
一般 | 21 | 28 | 49 |
(うちパート) | (0) | (7) | (7) |
(うち外国人) | (17) | (0) | (17) |
(うち高齢者) | (4) | (1) | (5) |
合計 | 44 | 28 | 72 |
男女比率 | 61.1% | 38.9% | 100% |
〈「雇用」「包括的で健全な経済」に関して取り組んでいる項目、課題等〉同社役員•従業員の状況は以下の通りである。
(注)外国人は正社員+技能実習生の合計
アオノの全管理者 19 名に対し女性管理者は現在 0 名であるが、今後同社では女性従業員を現場職や営業職で活躍させたい方針を持っており、2028 年までに最低2名以上の管理者を登用する計画である。また、従業員の高齢化に伴い、管工事業における資格やスキルを持った従業員を嘱託として採用し、外部流出させないことも検討している。高齢者(60 歳以上)は、2028 年までに嘱託にて 5 名以上を雇用する計画であり、希望者は全員嘱託採用する。外国人雇用については、積極的に雇用しており、2019 年に 2名、2020 年に 2 名、2021 年に 1 名が入社し、主として溶接業務を担当している。 2022 年には 9 名のインドネシア人がエンジニアとして入社している。エンジニアの業務は工事現場での監督補助や CAD システムによる設計図面の作成などがメインである。また、特定技能実習生は 2022 年に 1 名、技能実習生は同年に 4 名入社しているが、正社員ではないため研修期間を終えれば帰国している。外国人の処遇については、エンジニア•特定技能実習生の給与は同程度の技能を持つ日本人と同一賃金で、日本人従業員と差別のない待遇となっている。また、住居については 1 人1部屋の宿舎を提供し、住みやすい環境の整備に努めている。外国人の正社員は引き続き採用していく方針を確認した。
(4)環境面における対応
〈「水(質)」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
アオノは、静岡県内外 16 市町から指定水道工事業者の許可を得て公共上下水道工事業を行っているが、住民の生活環境を改善すること、浄化槽の設置工事等の普及に関わっていることにより、河川•海の水質保全に取り組んでいる。また、同社はエコアクション 213(以下、ea21 という)により水使用量削減に取り組んでいる。具体的には、2018年度の従業員一人当たりの水使用量実績 10.40 m3 をベースに、毎年 10 m3 以下を目標としている。直近の 2021 年度の実績は水使用量 6.38 m3(402 m3/従業員数 63名)で前年度比削減率は 38.65%であった。今後は新たな目標を設定して取り組む方針であることを確認した。
(アオノ認証•登録証)
〈「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
インパクトレーダーにおいて、「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」が標準値として発現したが、同社は大気、土壌、生物多様性と生態系サービスに影響を及ぼす事業を行っていないことから、「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」に与える影響は限定的である。
〈「資源効率•安全性」「廃棄物」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は管工事に伴う建設廃棄物が常時発生する。ea21 により建設廃棄物排出量の削減の環境経営目標(以下 15 ページの「参考」を参照)を策定しているが、建設廃棄物排出
量は工事種類等によって内容が変動するため目標設定が難しい。よって同社では 2023
年度までに 2018 年度実績比 5%以上の削減目標を設定している。また、再資源化につ
3 エコアクション 21:中小企業等の事業者が、1996 年に環境省の策定した「エコアクション 21 ガイドライン」に基づいて環境活動に取り組み、この取り組みがガイドラインの要求事項を満たしていると第三者が認証した時に「エコアクション 21 認証•登録事業者」として登録できるという制度である。現在の制度は 2004 年 10 月にリニューアルしたもので、数十万円での認証•登録が可能で、「環境レポートの作成•公表」、「CO2、廃棄物、水使用量の削減」が必須とされる。認証•登録されると、サプライチェーン内関係企業同士の一体感あるグリーン化への対応、一般消費者に対する信頼性向上、自治体等の競争入札参加資格での加点などのメリットがある。静岡県は一般社団法人静岡県環境資源協会が事務局となって登録審査等を行っている。
建設廃棄物排出量の削減 | 2018 年度 | 2021 年度 |
目標値(kg/売上高百万円) | - | 23.17 |
排出量(kg) | 54,600 | 51,090 |
実績値(kg/売上高百万円) | 23.89 | 18.78 |
削減率 | - | 21.39% |
いては COBRIS4の活用による混合廃棄物5の削減を目標としている。同社が資源効率•安全性及び廃棄物の削減に今後も取り組んでいく方向性を確認した。
(出典:同社環境経営レポートより)
〈「気候」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、現在 ea21 において CO2 排出量削減に取り組んでおり、2018 年度実績値をベースに 2024 年 6 月末までに「10%以上の削減」を目標として、車両の使用方法と車両ごとの燃費を中心に管理している。具体的には、2019 年には全車両にドライブレコーダーの設置及び燃料カード使用方法の徹底を、2020 年には全車両の走行距離と燃費効率のデータを収集し改善を図っている。現状は工事用車両 14 台中 5 台が低公害
車、社用車 28 台中 6 台がハイブリッド車(以下、HV という)である。今後低公害車、 HV•EV など省エネ車両への更なる移行促進につなげていく必要性を確認した。なお、全事業所の照明は LED 化が完了しており、節電にも取り組んでいる。
参考:【ea21 環境経営計画の概要】(出典:同社 ea21 環境経営レポート)
•実施体制
土屋社長が ea21 の統括責任者となり、環境管理責任者の任命、環境経営方針の策定、全体の見直し•指示を行う。環境管理責任者の山田享樹氏を ea21 の事務局長とし、環境経営システム全体の構築と運用管理を担う。土木部、総務部、営業部、空調部、建築部に 1 名ずつ担当者を置き、久沢•川成•大淵各事業所には責任者を各 1 名配置している。
•教育実施
環境管理責任者は全従業員に ea21 の計画及び目標について周知徹底する。各事業所の責任者は役割分担の割り振りと実施を行う。
ea21 事務局は全従業員の各種教育と環境関連法規の周知徹底を図る。
4 COBRIS:「建設副産物情報交換システム」の通称でコブリスという。「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)により義務づけられている書類の作成を電子上で行うことにより作成者の負担軽減を図れる。コブリスは①工事発注者②排出事業者(施工業者)③処理業者が建設廃棄物の適正処理先と再資源化の搬入先を情報支援システムにより迅速に検索できることから、廃棄物の削減と再資源化につながるメリットがある。
5 混合廃棄物:産業廃棄物は燃え殻•汚泥•廃油•木くず•がれき類など廃棄物処理法に定められた 20種類のゴミである。これらは種類ごとに分別し処理することになっており、複数の種類にまたがって混在し、分別が難しい廃棄物を混合廃棄物と呼んでいる。
現場監督は現場作業員や協力会社等に作業所内の ea21 の考案及び実施の指示を行う。
【現状の環境経営目標の概要】
目標 | 区分 | 実施内容 | 目標 2018 年度基準) |
CO2 排出量の削減 | 電 力 | 消灯、温度管理、電源消 | 2024 年度までに 10%以上削減 |
化石燃料 | エコドライブ、アイドリングストップ、過負荷•過積載 | ||
建設廃棄物 (混合廃棄物含む) 排出量の削減 | 各事業所 | 古紙再利用、再資源ごみ分別 混合廃棄物 BOX 確認 | 2023 年度までに 5%以上削減 |
工事現場 | 廃棄物の分別排出 | ||
水使用量の削減 | 各事業所 | 節水、車両の洗車前清掃 | 常時「10m3/従業員数」 以下 |
•運用方法
期ごとに環境経営目標の達成のための責任者を任命し、各事業所内で周知する。また、 ea21 の目標の各項目の活動予定と活動記録表を事業所ごとに作成し管理する。毎年 7 月 1 日から翌年 6 月 30 日を対象期間とし、毎年 9 月第二土曜日に環境経営レポートを発行する。レポートは電子ファイルで全社員に配布し、HP に掲載する。環境関連法規を遵守するため、各担当者が遵守状況をチェック表で評価している。
(5)経済面における対応
〈「経済収束」に関して取り組んでいる項目、課題等〉
アオノは、公共水道管工事を行っているが、地域の水道管が劣化している状況の中で災害時の断水抑制対策については富士市水道局と連携して水道管の更新•延長事業に取り組んでいる。同社としては積極的に対応しているが、市町村における水道料金の収入減少やメンテナンス費用の増加傾向という理由で予算的に厳しく、思うような公共工事を行えていない現状である。今後も同社が地域社会に対する水道工事については災害時だけではなく、日常的に安心安全な水の提供とインフラ整備に協力していく必要性があることを確認した。
6.インパクトの特定
(1)インパクトの特定分析
UNEP FI のインパクトレーダーにおける標準値を基に、前記の分析を踏まえ、下記のプレ審査シートにて個社別の状況を考慮してインパクトと KPI 設定対象を特定した。
インパクトの特定分析
インパクト領域 | total | UNEP FI 標準値 | 個社分析修正値 | インパクトの詳細具体的取組内容 | KPI 設定対象 | 関連するSDGsターゲット |
入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質(一連の固有の特徴がニーズを満たす程度) | ||||||
水(入手可能性) | ポジティブ | ○ | ○ | •管工事施工管理技士等の有資格者が行う一般住宅向け水道工事施工による安心安全な水道飲料水の提供 •公共管工事業による災害時の断水懸念の低減 | ○ | 6.1、6.6 |
ネガティブ | ||||||
食糧 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
住居 | ポジティブ | ○ | ○ | •一般住宅の水道給排水工事、リフォームの実施による安心安全な給排水環境の提供 | ○ | 9.1 |
ネガティブ | ||||||
健康•衛生 | ポジティブ | ○ | ○ | •一般住宅向け水道工事施工による、住民の安心安全な飲料水の提供 | 3.3、6.1 | |
ネガティブ | ○ | •就業規則の「安全衛生」「災害補償」条項による、年1回の健康診断実施、作業環境の改善、安全衛生教育の実施と労働災害発生の低減(重大事故7年間ゼロ) | ○ | 3.8 | ||
教育 | ポジティブ | ○ | •1•2級管工事施工管理技士等業務に必要な資格試験取得費用の会社負担及び資格取得者に対する技術手当の支給 | ○ | 4.4、4.5 | |
ネガティブ | ||||||
雇用 | ポジティブ | ○ | ○ | •ダイバーシティ経営による現場職、営業職を主体とした女性管理者の登用、高齢者の嘱託雇用、外国人の積極的雇用 | ○ | 4.4、5.5 8.5 |
ネガティブ | ○ | ○ | •育児休業•介護休業制度の導入による休暇取得の促進 •時間外労働の低減、離職率の抑制、有給休暇取得の促進 | ○ | 4.4、8.5 | |
エネルギー | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
移動手段 (モビリティ) | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
情報 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
文化•伝統 | ポジティブ | ○ | •地元富士市を拠点として活動するプロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」の活動費寄付や「清水エスパルス」のスポンサー参加によるスポーツ振興への取り組み | 8.3 | ||
ネガティブ | ||||||
人格と人の安全保障 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
正義 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
強固な制度•平和•安定 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
質(物理的•化学的構成•性質)と有効利用 | ||||||
水(質) | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | •県内外16市町の指定水道工事業に取り組むことによる住民の生活環境改善、河川•海の水質保全貢献 | ○ | 3.3、6.1 | ||
大気 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | |||||
土壌 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
生物多様性と生態系サービス | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
資源効率•安全性 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | •事務所内の古紙再利用、再資源ゴミ分別、混合廃棄物BOXの設置などの資源効率化 •建設廃棄物の分別とリサイクル利用 •混合廃棄物排出量の削減 •COBRIS使用による混合廃棄物の再資源化徹底 | ○ | 12.4、12.5 | ||
気候 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | ○ | •節電、空調温度管理の徹底 •エコドライブ、アイドリングストップ推進、過負荷•過積載禁止 | ○ | 13.3 | |
廃棄物 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | ○ | •混合廃棄物排出量の削減 •COBRIS使用による混合廃棄物の再資源化徹底 | ○ | 12.4、12.5 | |
環境の制約内で人間のニーズを満たす手段としての人と社会の経済的価値創造 | ||||||
包括的で健全な経済 | ポジティブ | ○ | •ダイバーシティ経営による現場職、営業職を主体とした女性管理者の登用、高齢者の嘱託雇用、外国人の積極的雇用 | ○ | 4.4、5.5 8.5 | |
ネガティブ | ||||||
経済収束 | ポジティブ | ○ | •公共管工事業による災害時の断水懸念の低減 | 8.3 | ||
ネガティブ |
(2)インパクト特定
ⅰ管工事業
インパクトレーダーの標準値として発現した項目に、包括的分析を行い、サステナビリティ経営体制において分析した。ポジティブでは資格取得支援を行っており資格取得者へは技術手当の支給を行っていることから「教育」を、地元富士市のプロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」への活動費寄付や「清水エスパルス」のクラブスポンサーに参加していることから「文化•伝統」を、ダイバーシティ経営を積極的に取り組んでいることから「包括的で健全な経済」を、安心安全な水道管工事施工等を通じて地域社会に貢献していることから「経済収束」を追加した。
ネガティブでは従業員の健康管理促進や労働災害抑制に取り組んでいることから「健康•衛生」を、ea21 による水道使用量の削減に取り組んでいることから「水(質)」を、 ea21 による混合廃棄物再資源化及び CO2 排出量の削減に取り組んでいることから「資源効率•安全性」「気候」を追加した。また、大気に及ぼす業務活動は行っていないことから「大気」を削除してインパクトを特定した。
特定したインパクト
ポジティブ:「水(入手可能性)」「住居」「健康•衛生」「教育」「雇用」
「文化•伝統」「包括的で健全な経済」「経済収束」
ネガティブ:「健康•衛生」「雇用」「水(質)」「資源効率•安全性」「気候」
「廃棄物」
ⅱ土木建築工事事業
インパクトレーダーの標準値として発現した項目に、包括的分析を行い、サステナビリティ経営体制において分析した結果、ポジティブでは一般住宅向けに安心安全な水道工事施工を行っていることから「水(入手可能性)」「健康•衛生」を、一般住宅向けに水道修理、リフォームなどを行っていることから「住居」を、資格取得希望者には受験費用、資格取得者へは技術手当の支給を行っていることから「教育」を追加した。また、地元富士市のプロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」への活動費寄付や「清水エスパルス」のクラブスポンサーに参加することで地域スポーツの振興に積極的であることから「文化•伝統」をポジティブに追加した。
ネガティブでは、「文化•伝統」に関してネガティブの低減に資するような業務を行っていないことから、「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」に及ぼす業務活動は行っていないことから、これらを削除してインパクトを特定した。
特定したインパクト
ポジティブ:「水(入手可能性)」「住居」「健康•衛生」「教育」「雇用」
「文化•伝統」「包括的で健全な経済」「経済収束」
ネガティブ:「健康•衛生」「雇用」「水(質)」「資源効率•安全性」「気候」
「廃棄物」
ⅲインパクトを特定するが KPI は設定しない項目
ポジティブ•インパクトについて、「健康•衛生」は、一般住宅向けの水道工事施工により住民の安心安全な生活用水を確保する使命はあるものの、健康•衛生に資する目標計数の設定が難しいことから、KPI は設定しないこととした。また、「文化•伝統」は、富士市プロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」活動資金支援や静岡市の J リーグクラブチーム「清水エスパルス」のスポンサー参加を実施しているが、地域貢献活動として行っているもので、目標設定が難しいことから、KPI は設定しないこととした。
ネガティブ•インパクトについては、「経済収束」のネガティブの低減に資する事業を行っていないことから、KPI は設定しないこととした。
(3)インパクトレーダーにおけるマッピング
特定したインパクトをもとにインパクトレーダーで発現したインパクト•マップは以下の通りとなる。
7.KPI の決定
(1)ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項
ⅰ社会面
テーマ | 安心•安全な給排水環境の提供 |
インパクトレーダー | 水(入手可能性)、住居 |
取組内容 | 管工事施工管理技士等の有資格者が行う一般住宅向け水道工事施工による安心安全な水道飲料水の提供 公共管工事業による災害時の断水懸念の低減 一般住宅の水道給排水工事、リフォームの実施による安心安全な住居環境の提供 |
SDGs との関連性 | 6.1:2030 年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。 6.6:2030 年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。 9.1:全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域•越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。 |
KPI | •2028 年までに一般住宅の給排水工事を過去の年平均 100 件から 150 件以上へ増加させる |
テーマ | 人材育成の取り組み |
インパクトレーダー | 教育 |
取組内容 | 1•2 級管工事施工管理技士等業務に必要な資格試験費用の会 社負担及び資格取得者に対する技術手当の支給 |
SDGs との関連性 | 4.4:2030 年までに、技術的•職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 4.5:2030 年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるよ うにする。 |
KPI | •2028 年までに業務に必要な資格(土木施工管理技士、建築 施工管理技士、管工事施工管理技士、電気工事士、消防設備士)の全項目取得者を 2 名以上とする |
ⅱ社会面•経済面
テーマ | ダイバーシティ経営の推進 |
インパクトレーダー | 雇用、包括的で健全な経済 |
取組内容 | ダイバーシティ経営による現場職、営業職を主体とした女性 管理者の登用、高齢者の嘱託雇用、外国人の積極的雇用 |
SDGs との関連性 | 4.4:2030 年までに、技術的•職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 5.5:政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。 8.5:2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。 |
KPI | •2028 年までに女性管理者を 2 名以上登用する •2028 年までに高齢者従業員を5名以上、外国人正社員を 2 名以上毎年採用する |
(2)ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項
ⅰ社会面
テーマ | 健康管理促進と労働災害抑制の取り組み |
インパクトレーダー | 健康•衛生 |
取組内容 | 就業規則の「安全衛生」「災害補償」条項による、年 1 回の健康診断実施、作業環境の改善、安全衛生教育の実施と労働災害 発生の低減(重大事故7年間ゼロ) |
SDGs との関連性 | 3.8:全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル•ヘルス•カバレッジ(UHC)を達成する。 |
KPI | •2028 年まで安全衛生教育の継続的な実施と労働災害の重 大事故発生ゼロを継続する |
テーマ | 労働環境の整備 |
インパクトレーダー | 雇用 |
取組内容 | 時間外労働の低減、離職率の抑制、有給休暇取得の促進 |
SDGs との関連性 | 4.4:2030 年までに、技術的•職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.5:2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。 |
KPI | •2028 年までに残業時間を月 14 時間以内に低減する •2028 年まで離職率を 10%以下に低減する •2028 年までに有給休暇取得率を 60%以上とする |
ⅱ環境面
テーマ | エコアクション 21 による水使用量の削減 |
インパクトレーダー | 水(質) |
取組内容 | 県内外 16 市町の指定水道工事業に取り組むことによる住民 の生活環境改善、河川•海の水質保全貢献 |
SDGs との関連性 | 3.3:2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。 6.1:2030 年までに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。 |
KPI | •2028 年まで社内で使用する水の使用量を年間6m3/従業員数以下とする。 (2021 年度実績 402m3/63 名=6.38m3) |
テーマ | エコアクション 21 による廃棄物排出量削減 |
インパクトレーダー | 資源効率•安全性、廃棄物 |
取組内容 | 事務所内の古紙再利用、再資源ゴミ分別、混合廃棄物 BOX の設置などの資源効率化 建設廃棄物の分別とリサイクル利用、混合廃棄物排出量の 削減、COBRIS 使用による混合廃棄物の再資源化徹底 |
SDGs との関連性 | 12.4:2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 12.5:2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及 び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
KPI | •2028 年までに建設廃棄物排出量を 2021 年度実績比 5% 以上削減する |
テーマ | エコアクション 21 による CO2 排出量削減 |
インパクトレーダー | 気候 |
取組内容 | 節電、空調温度管理の徹底 エコドライブ、アイドリングストップ推進、過負荷•過積載禁止 |
SDGs との関連性 | 13.3:気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
KPI | •2028 年までに CO2 排出量を 2021 年度実績比毎年 5%以上削減する •2028 年までに工事車両 14 台中 5 台から 7 台以上を低公害車に、社用車 28 台中 6 台から 14 台以上を HV•EV に 移行する |
(3)地域において認識される社会的課題•環境問題への貢献
•アオノは水質汚濁の原因である下水道排水の対策を社会的課題と捉え、必ず「排水設備工事責任技術者」の立会監督の下に工事し地域住民の生活環境改善に貢献している。
•また同社は、創業以来 44 年の実績と信頼により、静岡県内外 16 市町から上下水道事業指定給水装置工事事業者の許可を受け、県全域にわたって公共水道事業設置工事に取り組むことで、地域の河川•海の水質保全に貢献している。
2012 年より ea21 を積極的に推進することで、「環境経営の継続的改善」及び「環境関連法規の遵守」を掲げ、環境負荷低減に配慮した環境経営方針を公表している。
•同社は、公共管工事業を取り扱うことで、地域における災害時の断水措置に積極的に協力支援できるよう、社内研修により従業員育成に注力している。
•同社は、地元富士市を拠点とするプロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」、J リーグに所属する「清水エスパルス」への活動費寄付など静岡県や富士市のスポーツ振興に取り組んでいる。清掃活動も静岡県設備協会が実施する「道路清掃美化活動」に毎年
参加している。
8.モニタリング
(1)モニタリング体制
アオノでは、本 PIF の組成にあたり横断的なプロジェクトチームを組成した。統括責任者を土屋智昭社長、プロジェクトリーダーを土屋靖取締役とし、プロジェクトチームとして総務部内に SDGs 推進チームを組成した。同社の企業理念、経営方針を基に、事業実績、企業活動等の棚卸しを行い、本 PIF のインパクトの特定及び目標と KPI の策定を行った。
本 PIF の実行後においては、決定したインパクトの内容や KPI を営業会議•朝礼等で社員へ周知し、関連するサプライチェーンへも通達し、達成に向けた連携を図り、プロジ
ェクトチームを中心に同社全体で KPI の達成に向けた推進体制を構築していく。
統括責任者
代表取締役社長 土屋智昭氏プロジェクトリーダー
取締役
プロジェクトチーム総務部
土屋靖氏
SDGs 推進チーム
(2)モニタリングの頻度と方法
本 PIF で設定した KPI 及び進捗状況については、同社と清水銀行及び当社の担当者が定期的な場を設け、共有する。会合は少なくとも年に 1 回は実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
本評価に関する説明
1.本評価書は、清水地域経済研究センターが、清水銀行から委託を受けて実施したもので、清水地域経済研究センターが清水銀行に対して提出するものです。
2.清水地域経済研究センターは、依頼者である清水銀行及び清水銀行がポジティブ•インパクト•ファイナンスを実行するアオノから供与された情報や同社へのインタビュー等で収集した情報に基づいて、現時点での状況を評価したものであり、将来における実現可能性、ポジティブな成果•見通し等を保証するものではありません。
3.清水地域経済研究センターが本評価に用いた情報は、信頼できるものと判断したものではあるものの、その正確性等について独自に検証しているわけではありません。清水地域経済研究センターはこれらの情報の正確性、適時性、完全性、適合性その他一切の事項について、何ら表明または保証するものではありません。
4.本評価は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した PIF 原則及び PIF 実施ガイド、ESG 金融ハイレベル•パネルにおいてポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則って行っており
ます。
〈評価書作成者〉
〒424-0941
静岡市清水区富士見町 2 番 1 号
株式会社清水地域経済研究センター
田中 昌一
Tel 054-355-5510、Fax 054-353-6011
第三者意見書
2023 年 2 月 28 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社アオノに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社清水銀行 |
評価者:株式会社清水地域経済研究センター |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、清水銀行が株式会社アオノ(「アオノ」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社清水地域経済研究センターによる分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項
(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた
「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。清水銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、清水地域経済研究センターと共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、清水銀行及び清水地域経済研究センターにそれを提示している。なお、清水銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。 JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則
との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
清水銀行及び清水地域経済研究センターは、本ファイナンスを通じ、アオノの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、アオノがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、清水銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 清水銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:清水銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、清水銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、清水銀行からの委託を受けて、清水地域経済研究センターが分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て清水地域経済研究センターが作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、清水地域経済研究センターが、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるアオノから貸付人である清水銀行及び評価者である清水地域経済研究センターに対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト 担当アナリスト
川越 広志 新井 真太郎
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026