Contract
日本における不動産取引に関連する法律
日本の民法では、契約関係にある当事者同士が対等・xxであることが原則とされている
一方、土地や建物などの不動産を売買するときや賃貸借するときは、事業者と消費者との間に交渉力や情報量などに差が生じる
こうしたことがトラブルにつながることを防ぐために、不動産取引の様々な場面で、それに関連する法律や規制が数多く存在する
代表的な法律や規制は次ページのとおり
① ②
不動産市場全体(土地・建物)
③
不動産会社
広告
④
分譲
仲介
仲介
⑤
売 主
契約
または
貸 主
買 主
または
借 主
権利関係
⑥
登記記録
⑦
維持管理 ⑧
欠陥 ➃
①土地の利用に関する法律 | 都市計画法 国土利用計画法 |
②建物の建築に関する法律 | 建築基準法(新築・改築の場合) 長期優良住宅の普及の促進に関する法律(マンションの場合)都市の低炭素化の促進に関する法律 |
③不動産会社を規制する法律 | 宅地建物取引業法 マンションの管理の適正化の推進に関する法律 |
④広告に関する法律や規制 | 宅地建物取引業法 不動産の表示に関するxx競争規約 |
⑤売買や賃貸借契約などの契約に関する法律 | 民法 借地借家法 宅地建物取引業法 消費者契約法 |
⑥権利関係に関する法律 | 民法 マンションの建替えの円滑化等に区分所有法(マンションの場合) 関する法律(マンションの場合) 借地借家法(賃借の場合) |
⑦不動産登記に関する法律 | 不動産登記法 |
⑧マンション管理に関する法律 | 区分所有法 マンションの管理の適正化の推進に関する法律 |
⑨住宅の瑕疵(欠陥)などに関する法律 | 民法 宅地建物取引業法 住宅の品質確保の促進等に 特定住宅瑕疵担保責任の履行の関する法律 確保等に関する法律 |
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」
●土地の利用に関する法律●
土地の利用に関しては様々な法律がある。
土地の利用(用途)や開発、その取引を規制する主な法律は次の通り。
都市計画法(国土交通省) | |
都市計画法では、街が無秩序に開発されて、住みにくくなることなどを防止するために、市街化区域、市街化調整区域などの都市計画区域を定めるほか、市街化区域における土地の利用用途等を定めている。 市街化区域については、土地の利用用途のほか、建物の建ぺい率や容積率など、建物の建築に影響する規制がある。 |
国土利用計画法(国土交通省) | |
国土利用計画法は、土地の投機的取引や乱開発などを未然に防ぐために、総合的かつ計画的に国土の利用を図ることを目的とした法律である。 不動産取引に関しては、一定規模以上の土地の売買や交換などの取引に関する届出義務などを規定している。 |
●建物の建築に関する法律●
都市計画に従って適切に建物が建築されるとともに、建物の安全性などを確保することなどを目的として、建物の建築には、法律などにより様々な制限が設けられている。
建築基準法は、建物の建築について最低限の基準を定めることにより、建物の安全性や居住性などを確保することを目的とする法律である。
例えば、都市計画法で定められた「用途地域」ごとに、建物の具体的な用途(住宅や商業施設、工場など)や、その高さ、面積などを定めている。
また、建物の安全確保に関する基準、防火・避難に関する基準などについても規定されている。
建築基準法(国土交通省)
長期優良住宅の普及の促進に関する法律(国土交通省) | |
この法律は住宅を長期にわたり使用することにより、住宅の解体などによる廃棄物の排出を抑制し、環境への負荷を低減するとともに、建て替えに伴う費用の削減によって負担を軽減し、より豊かでより優しい暮らしへの転換を図ることを目的としている。 長期優良住宅の認定基準として、劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性、居住環境、住戸面積、維持保全計画などの性能項目を定めている。 |
都市の低炭素化の促進に関する法律(国土交通省、環境省、経済産業省) | |
この法律は、社会経済活動その他の活動に伴って発生する二酸化炭素は、その相当部分が都市において発生しているものであることから、都市の低炭素化の促進を図り、都市の健全な発展に寄与することを目的としている。都市の低炭素化の促進に関する基本的な方針の策定、市町村による低炭素まちづくり計画の作成やこれに基づく特別の措置、低炭素建築物の普及の促進のための措置を講じることが定められている。 |
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」
●不動産会社を規制する法律●
不動産会社には様々な業種がある。
その中でも、消費者保護等を図る観点から、不動産の流通業(売買や仲介)や分譲マンションの管理業については、不動産会社を規制する法律がある。
ただし、すべての業種が法律で規制されているわけではないので注意が必要。例えば不動産の賃貸業や賃貸物件の管理業を規制する法律はない。
宅地建物取引業法は、不動産取引における消費者保護と流通の円滑化などを図ることを目的として、
(1)自らが行う宅地や建物の売買や交換
(2)売買や交換、貸借をするときの代理や媒介(仲介)を営む不動産会社を規制する法律である。
具体的には、広告規制、買い主や借り主に対する重要事項の説明義務(物件や取引条件などを説明)、契約内容を記載した書面の交付義務、自ら売り主となる場合の契約内容の規制など、不動産会社の業務に様々な規制を定めている。
宅地建物取引業法(国土交通省)
マンションの管理の適正化の推進に関する法律(国土交通省) | |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律は、マンションの良好な居住環境の確保を図るために、マンション管理業者への規制などを設けている。 具体的には、マンション管理業者に対して、管理業務に関する重要事項の説明や財産の分別管理などの義務を課すとともに、宅地建物取引業者には、分譲時における管理組合への設計図書の交付義務を課すなど、適正な管理が行われるための規制をしている。 また、管理組合に対して専門的な助言を行うマンション管理士の制度や管理組合の支援団体であるマンション管理適正化推進センターの創設なども定められている。 |
●広告に関する法律や規制●
個人が不動産を探すときには、広告を情報源とすることが一般的である。
そのため、消費者が物件の状態、法令による規制、購入の条件などについて適正な情報を入手して、取引を行うかどうかの判断を適切に行うことができるよう、不動産広告には次のような法律や規制がある。
宅地建物取引業法(国土交通省) | |
宅地建物取引業法では、誇大広告の禁止、未完成物件の広告開始時期の制限など、不動産広告に関する基本的な規制が定められている。 |
不動産の表示に関するxx競争規約は、消費者保護を目的として、不動産業界が自主的に定めた不動産広告のルールで、不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づきxx取引委員会の認定を受けている。
具体的には、消費者が正しく広告内容を理解できるよう、広告表示の開始時期の制限や広告表示の詳細な基準等を定めている。
不動産の表示に関するxx競争規約(不動産xx取引協議会連合会)
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」
●売買や賃貸借などの契約に関する法律●
民法は契約の基礎となる法律で、「売買」や「賃貸借」の契約についても基本的な考え方が規定されている。
民法では、契約関係にある当事者同士が対等・xxであることが原則とされているが、土地や住宅など、不動産を売買するときや賃貸借するときには、事業者と消費者の間に交渉力や情報量等に差がある。
そのため、消費者に不利な取引にならないよう、民法とは別に消費者を保護するための法律も定められている。
民法では、契約の成立要件や手付け、瑕疵担保責任など、契約の基本的な考え方が規定されている。
契約内容について、当事者間で争いがあった場合や取り決めがない場合には、原則として民法に基づき解決することになる。
民法(法務省)
宅地建物取引業法(国土交通省) | |
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が自ら売り主となる売買契約について、消費者保護の観点から、民法の規定にかかわらず、契約内容の一部に制限を加えるなどの規制がある。 具体的には、手付金や違約金等の金額の制限、瑕疵担保責任に関する制限が設けられており、これらの制限に違反する契約条項は無効となる。 一方、賃貸借契約の内容に関しては、宅地建物取引業法に特別な規制はない。原則として、借地借家法、民法、消費者契約法などに基づいて取り扱われる。 |
借地借家法(法務省) | |
賃借人保護等の観点から、土地(建物の所有を目的とするもの)及び建物の賃貸借契約に関して、民法の規定に優先して適用される法律である。 例えば、土地の賃借権の存続期間や更新、建物の賃貸借契約の期間や更新・終了などについて定められている。あわせて、定期借地や定期借家などについても規定されている。 また、借地借家法には、当事者で法の規定と異なる合意をしても、借地借家法の規定が適用される条項(このような規定を「強行規定」という)も含まれている。 |
消費者契約法(内閣府) | |
消費者契約法は、事業者と消費者には交渉力や情報量等に差があることから、事業者と消費者との間で締結された契約(これを「消費者契約」という)を対象として、消費者保護の観点から、民法に優先する規定を設けている。 具体的には、事業者の不適切な行為の結果、消費者が誤認、困惑したまま契約を締結した場合は、その契約を取り消すことができる。 また、契約内容に消費者の権利を不当に害する条項がある場合には、その契約条項を無効とすることなどが規定されている。 |
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」
●権利関係に関する法律●
不動産の権利には、土地に対する権利(主に所有権と借地権)、建物に対する権利(主に所有権と借家権)などがある。
利害関係者とのトラブルを回避するためには、こうした権利を正しく理解する必要がある。不動産の権利関係については、主に次のような法律が定められている。
民法(法務省) | |
民法では、不動産に関する権利を大きく物権(所有権や地上権、抵当権など)と債権(賃借権など)に分け、権利の内容やその効力など、基本的な権利関係を定めている。例えば、自らの権利を第三者に主張するための要件(一般的に「第三者対抗要件」といわれる)などが規定されている。 |
建物の区分所有等に関する法律(法務省) | |
建物の区分所有等に関する法律は、分譲マンションなどの区分所有建物に関する権利や義務のほか、管理に関する事項などを規定した法律である。 例えば、専有部分・共用部分・敷地に関する権利関係のほか、区分所有者の集会における議決権に関する事項などが定められている。 |
賃借人保護等の観点から、借地権や建物賃貸借の権利関係に関して、民法の規定に優先して適用される法律である。
例えば、自らの借地権や建物賃貸借を第三者に主張するための要件(一般的に「第三者対抗要件」といわれる)、その他借地人や借家人に認められた権利などが定められている。
また、借地借家法には、当事者で法の規定と異なる合意をしても、借地借家法の規定が適用される条項(このような規定を「強行規定」という)も含まれている。
借地借家法(法務省)
マンションの建替えの円滑化等に関する法律(国土交通省) | |
多くのマンションが今後老朽化することへの対応策として、マンションの良好な居住環境の確保や生活の安定向上、経済の健全な発展のために、マンションの建て替えを円滑に行うための法律である。 マンションの建て替えの円滑化等を図るために、マンション建替組合の設立、権利変換手続による関係権利の円滑な移行等の措置を定めている。 |
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」
●不動産登記に関する法律●
土地や住宅の所有xxを第三者に主張(対抗)するためには、不動産の登記をする必要がある。
登記により、不動産の現況や、権利関係を公示し、不動産の所有権などの権利者とその内容を、第三者に明らかにすることができる。
不動産登記の手続きなどは法律で定められている。
不動産登記法(法務省) | |
不動産登記法は、不動産登記に関する手続きを定めることで、不動産に関する権利の保全と取引の円滑化を図るための法律である。 例えば、登記の対象となる権利や登記の内容、必要な書類と手続き、その他登記に関する義務などについて規定している。なお、不動産登記法は平成16(2004)年に大幅な改正が行われ(施行は平成17(2005)年3月7日か ら)、オンライン登記が可能になるなど、登記手続きも大きく変更されている。 |
●マンション管理に関する法律●
マンションでの共同生活を円滑にし、所有者の共同の財産を守るために、マンション管理に関する法律が整備されている。
建物の区分所有等に関する法律(法務省) | |
建物の区分所有等に関する法律は、分譲マンションなどの区分所有建物の管理に関する事項のほか、権利や義務権利関係などを規定した法律である。 例えば、管理組合の規約や運営、建物の修繕や建て替えなどについて定められている。 |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律(国土交通省) | |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律は、マンションの良好な居住環境の確保を図るために、マンション管理業者への規制などを設けている。 具体的には、マンション管理業者に対して、管理業務に関する重要事項の説明や財産の分別管理などの義務を課すとともに、宅地建物取引業者には、分譲時における管理組合への設計図書の交付義務を課すなど、適正な管理が行われるための規制をしている。 また、管理組合に対して専門的な助言を行うマンション管理士の制度や管理組合の支援団体であるマンション管理適正化推進センターの創設なども定められている。 |
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」
●住宅の瑕疵(欠陥など)に関する法律●
購入した住宅に、買い主が知り得なかった瑕疵(かし)があることを発見したときに、売り主がその瑕疵について責任を負うことを瑕疵担保責任という。
瑕疵担保責任については、次のような法律で定められている。
民法(法務省) | |
民法では、売買における売り主の瑕疵担保責任について、買い主は契約の解除または損害賠償の請求ができるものと定めている。(ただし、契約の解除は、瑕疵があるために売買の目的を達成することができない場合に限る)なお、民法では、売り主が瑕疵担保責任を負うのは、買い主が隠れた瑕疵があることを知った日から1年以内と定めている。 |
宅地建物取引業法(国土交通省) | |
宅地建物取引業法の規制により、宅地建物取引業者は、自ら売り主となる契約においては、瑕疵担保責任を2年以上負わなければならない。 この規定は民法の規定に優先するため、この制限に違反する契約条項は無効となる。 |
住宅の品質確保の促進等に関する法律(国土交通省) | |
住宅の品質確保の促進等に関する法律は、住宅の品質確保の促進や、住宅購入者等の利益の保護、住宅にかかわる紛争の迅速かつ適正な解決を図ることなどを目的として定められた法律である。 具体的には、新築住宅の売り主などに10年間の瑕疵担保責任を負うことを義務づけるとともに、住宅の性能の表示基準や、住宅性能評価を受けた住宅にかかわる紛争処理を円滑に行うための体制についても規定している。略して「品確法」と呼ばれることがある。 |
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律は、新築住宅の売り主などが、住宅の品質確保の促進等に関する法律で規定されている10年間の瑕疵担保責任を確実に履行するための規制が設けられている。
具体的には、平成21(2009)年10月1日以降に引き渡す新築住宅の売り主などに対して、保険加入または保証金の供託(積み立て)を義務づけている。
これによって、新築住宅の売り主が、倒産などにより瑕疵担保責任を負うことができない場合でも、瑕疵の補修などの費用について、保険会社に請求または供託金の還付請求を行うことができる。
特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(国土交通省)
出所:公益財団法人不動産流通近代化センター「不動産ジャパン」