Contract
第1章 債権総説
(2) 売買のような双務契約にあっては,特定により,その物の滅失による危険が債権者たる買主に移転する★ 1 534 条 2 項)。すなわち,特定後に売主の責めに帰することができない事由により,その物が滅失した場合売主の履行義務は消滅するが,買主の代金支払義務は存続する
(3) 債務者は,特定した物を引き渡すまで善管注意義務を負う(400 条)
(4) 特約なき限り 特定と同時に目的物の所有権が債権者に移転する★ 2
176 条の判例解釈)
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4 不特定物債権の特定の時期
不特定物債権の特定が生ずるのは,①物の給付をするのに必要な行為を完了した時,又は,②債権者の同意を得たうえで給付すべき物を指定した時である(401 条 2 項)
①は引渡しに必要なことすべてを債務者の側でなした場合を意味し,債務の発生原因の解釈によって個別的に判断されることになる
一般的には,債務の履行場所との関係で次のように解されている
(1) 持参債務★ 3 484 条後段
目的物を債権者の住所において提供した時に特定を生ずる(現実の提供で特定)
持参債務とは,たとえば,家具屋で机を購入して自宅に届けてもらうような場合で机を自宅まで持参して提供した時に特定する
(2) 取立債務★ 4
債務者が目的物を分離し,引渡しの準備を整えて債権者に通知した時に特定を生ずる★ 5
引き渡すべき物を分離しない場合には,口頭の提供★ 6 とはなりえても特定は生じないと解されている 最判昭 30.10.18)。なぜなら,特定により所有権移転の効果が生じるが,そのためには給付物が外形上分離され 他の物と区別しうる状態にある必要があるからである
(3) 第三地において引き渡すべき債務(送付債務
売主が,好意で第三地において引き渡す場合には,発送の時をもって特定を生ずる。第三地における履行が債務者たる売主の義務のときは,持参債務と同じである
★ 1 危険負担については第 5
第
4編
編第 3 章へ
約のない場合は,契約締結時に所有権が移転します(最判昭 33.6.20 等)
★ 2 所有権の移転時期
特定物売買において,特
★ 3 持参債務
給付の目的物たる物又は金銭を債務者が債権者の住所又は営業所に持参して引渡しをしなければならない債務をいいます
★ 4 取立債務
債権者が債務者の住所又は営業所において目的物たる物又は金銭を取り立てて履行を受けなければならない債務をいいます
★ 5 取立債務とは,たとえば肉屋に電話で牛肉1キロを注文し,後で取りに行くといったような場合です 肉屋が牛肉を1キロ切り分けて(分離)包装し(準備)客に電話で「用意ができたからいつでもどうぞ」と言った(通知)ときに特定します
★ 6 口頭の提供は,弁済の提供の方法の一つです。弁済の提供については,第4 編第6 章第2 節へ
司法書士試験 ブレークスルー 民法Ⅲ [債権]