p.342>
<p.342>
第 3 節 特定の種類の財産に対する担保権の設定
Ⅸ.-2:301 条 金銭債権に設定される担保
(1) 金銭債権に設定される担保は、次の特則にも服する。
(2) 第Ⅲ編第 5 章の規定は、適切な補正を加えた上で、適用する。ただし、Ⅲ.-5:108 条(債権の譲渡性と契約による譲渡禁止の効果)2 項及び 3 項並びにⅢ.-5:121 条(複数の譲受人の競合)の規定は、適用しない。
(3) 担保提供者は、自らが担保権者に対して有する金銭債権を、当該担保権者のための担保に供することができる。
(4) 金銭債権に設定された担保権は、この金銭債権を担保するすべての人的又は物的な担保権に及ぶ。
コメント
A.総説
この第 2 章の第 1 節が担保権の設定に、第 2 節が所有権留保一般に適用されるのに対し
て、本第 3 節の規定は、特定の財産における担保の設定に適用される特則を定める。すなわ
ち、これらの規定は、前 2 節の規定を補うものである。
B.適用範囲
本条は、金銭債権が担保対象として使われる場合のすべてに適用される。金銭債権を目的とする最も典型的な担保は、担保権、すなわち、金銭債権を担保対象とする供与による制限物権ということになろう。しかし、▇条は、両当事者が担保目的で金銭債権を譲渡することを意図している場合にも適用される。そのような取引は、本節の規定により、担保権を設定するにすぎないものとみなされる(Ⅸ.-1:102 条(動産担保権)3 項を参照)。金銭債権が所有権留保に服するとする合意にはほとんど実際的な必要はないだろう。所有と占有の分離は ──それが[所有権留保という]この担保類型の特徴を示し、その存在理由となるが ── 、金銭債権には適用できない。さらに、金銭債権の所有権留保は、[所有権留保という]この担保技術の承認の背後にある経済的合理性と矛盾する。というのは、金銭債権の取引は、有体財産を取得するのと同じようには推奨できないからである。
☆訳メモ:最後の文章の意味は、分割払いにより直ちに使用できる物を購入できる買主の機会の拡大及び売主の販路の拡大という経済的要請に基づかないということのように思われる。
C.債権譲渡の規定の適用
Ⅲ編 5 章における金銭債権の譲渡に関する規定は、「適切な補正を加えた上で」適用されると明確に定められている(2 項)。たんに「補正を加えた上で」適用されるとされる理由
は、<p.343>金銭債権を目的とする担保権の場合には、金銭債権はたんに担保の負担を負うだけで、[真正な]譲渡の場合のように移転するわけではないからである。他方で、Ⅲ編 5 章の規定を適用することは、権利に担保の負担を課することが制限的な(担保の)権利の担保権者への一部移転であるという一般規定と調和する。
Ⅲ編 5 章の一定の規定は明確に適用されない。この適用除外は、とりわけⅢ編 5 章 108 条
(債権の譲渡性と契約による譲渡禁止の効果)2 項及び 3 項について妥当する。この両項は、担保権設定の可能性を阻害又は制限する限りで、あらゆる譲渡制限を無視するという本編の政策と反するからである ── Ⅸ編 2 章 104 条(譲渡性、発生及び特定性に関する特有の問題)を参照
[訳注:原文のⅨ.-2:201 条は所有権留保の設定の規定であり、Bで述べられたように金銭債権には妥当しないうえ、譲渡性とは無関係であり、Ⅸ.-2:104 条の誤記と思われる]。ただし、債権譲渡の禁止又は制限の違反を理由とする債務者に対しての譲渡人の責任については、Ⅲ編 5 章 108 条 4 項
は、本条の場合にも適用され、十分な制裁である。
Ⅲ編 5 章 121 条(複数の譲受人の場合)は適用されない。この条項は、優先順位に関する規定に反し、Ⅸ編の登記に関する規定とも調和しないからである。
D.担保権者に対する担保提供者の権利の上への担保設定
3 項は、一定の国において疑いが生じた点を明らかにしている。担保権者に対する担保提供者の金銭債権も担保権者のための担保に供することができる、ということが明らかにされている。債権譲渡との類比が、この命題を認めるのに役立つ。たしかに、担保提供者は、担保権者に対して有する金銭債権を担保権者に譲渡することができる。債権譲渡がいくぶん技巧的に見えるかもしれないのに対して、一時的にすぎないかもしれないたんなる担保の設定には十分な意味がある。
E.担保権への担保の[効力の]拡張
4 項は一般的な規律を明確にしている。付従的な人的及び物的な担保権は、その付従性ゆえに、金銭債権に対する物的担保の[効力が及ぶ]範囲に含まれる。すなわち、担保権者は、債務不履行の場合において、金銭債権を目的とする担保権を実行できるだけでなく、担保された権利の満足を得るためにこの金銭債権を担保する担保権をも行使することができる。すくなくとも部分的には、この結論は、債権譲渡に関する規定の適用からすでに導かれている。Ⅲ編 5 章 115 条(譲受人に移転する権利)1 項は、債権譲渡の効果を、明示的に、すべ
ての「付属的な権利及び移転可能で従属的な担保権」に拡張している。本条 4 項は、Ⅸ編 7
章 214 条(金銭債権又は流通性のある証券を目的とする担保の実行)4 項によって確認されている
[訳注:表題の realisation の訳として「換価」は狭いので「実行」に置き換えた]。
<p.344>
各国法ノート
Ⅰ. 総説
1. ほとんどすべての構成国において、金銭債権は担保として利用することができる。金銭債権(技術的には「受取勘定 receivables」という)上の担保権はとりわけ価値がある。というのはその実現は金銭の支払だからである。これは明らかに最も魅力的な担保の種類である。
2. 実務的には金銭債権上に担保を設定する方法には 2 つのものがある。質権設定によって金銭債権に負担を課す伝統的な方法又は担保目的での債権譲渡による方法である ──構造と機能において、有体動産所有権の担保的譲渡に対応する。この 2 つの方法の主な違いは、金銭債権質がどこの国においても担保対象債権の債務者に通知しなければならないのに対して、債権譲渡は通知を要しないとする構成国があることである。他方で、担保目的の債権譲渡は認められない構成国もある。とくに通知の問題についての参照は、後記Ⅸ.-3:301 条の各国法ノートⅤの 4-16 を参照。
Ⅱ. 金銭債権質
1. a) 総説 金銭債権の経済上の非常な重要性にもかかわらず、全領域に及ぶ現代の立法は不十分である。
2. b) ベルギー、フランス及びルクセンブルク
aa) 序 ベルギー、フランス及びルクセンブルクというフランス語圏の 3 か国は、
1804 年のフランス民法において、金銭債権の譲渡と質権を扱う 20 か条以上の統一的な
規定を共有していた(フランス民法 1689 条から 1701 条まで及び 2071 条から 2084 条まで)。しか
しながら、この 3 国のすべてにおいて、こうした基盤は、最近 50 年間で修正され、現代の立法によって不足を補われている。すなわち、
ルクセンブルクにおいては、1994 年 12 月 21 日法による民法 1689 条から 1701 条までの微修正がされ、
フランスにおいては、現代化され民法 2355 条から 2366 条に再統合された 1981 年のダイイ法、商人間におけるその特別版が通貨金融法L313-23 条からL313-29-2 条において立法され、
ベルギーにおいては、民法の従前の規定を置き換える 2013 年 7 月 11 日法の 60 条から
68 条による改正が行われているのである。
3. 「フランス語圏」の共通基盤 完全な見取り図を得るためには、多様な現代の展開(後述 bb)-dd))を超えて、共有されている元の特徴を見なければならない。共通の奇妙な特徴は、普通ではない立法技術である。すなわち、それは有体担保という基本的な概念を採用している。有体財産か無体財産かに影響するか否かにかかわらず、おそらく、担保権のすべての目的を統合することを強調するためであろう。
4. 質権の設定に本質的な要素は、民法 2073 条から 2076 条までにみられる。有体財産の質
権のために起草されたにもかかわらず、これらの規定は金銭債権の質権にも適用される
(2081 条を参照)。効力要件として、2074 条は、適式に登記された証書を必要とする。債務者に対する効力には、通知がされなければならない(2075 条 2 項)。通知前に債務者が原債権者に弁済したときは、この弁済は有効で債務者は免責される(2075 条 2 項並びに 3
項、1690 条 2 項から 4 項及び 1691 条 1 項)。一般的な特徴と多くの詳細な点が、とりわけフ
ランスとルクセンブルクでは、本質的に維持されている。それにもかかわらず、最近 20
年間の現代の展開によって、3 国のいずれについても別々の要約が必要である。
5. bb) ベルギー 2013 年 7 月 11 日法は、現代的な展開を考慮に入れたむしろ徹底した法改正を行った。
<p.345>
6. 質権に関する民法の規定には、金銭債権の質権をも扱うものがある。2075 条 1 項によると、質権契約の締結により、債権者は、入質された金銭債権の保有者[文字通りには「占有者 possessor」]となる。しかし、債務者は、通知を受けるか承諾をする前は、拘束されない(同条 2 項)。民法 1690 条 3 項並びに 4 項及び 1691 条が適用される(1690 条 3 項)。債務者が支払わないときでも、担保権者は、質権[の対象となる金銭債権]を処分することができず、専門家によるその価値の評価の後に、質権[の対象となる金銭債権]を自らに帰属させる裁判所の命令[訳注:転付命令のようなものか?]を求めることができる(2078 条 1項)。
7. 2013 年 7 月 11 日法は、これを基礎として制度を構築し、それを補則的規定によって現代化した。金銭債権の譲渡禁止や質入れ禁止を定める条項は、債権者が故意にこの条項に違反しない限り、債権者に対して対抗することができない(64 条)。しかし、形式よりむしろ実質を見れば、非常に現代的な問題解決方法が明らかとなる。同法 60 条 1 項によれば、質権者は、金銭債権の処分権限を有し、かつ、質権[の設定]を債務者に通知すれば、その債権の「占有」を取得する。通知又は承諾がされた場合にのみ、債務者は拘束を受ける(60 条 2 項)。債務者は、通知を受ける前に善意で従来の債権者に弁済し、又は、その他の方法で行為をした場合に保護を受ける(1690 条以下と合わせた 60 条 3 項)。債権譲渡は書面でのみ立証することができる(61 条)。
8. 重要な規定が 62 条に定められている。金銭債権の担保的譲渡は、債権質の効果のみを有するというものである。他方、将来の金銭債権も、特定性があれば、質入れすることができる(63 条)。金銭債務者と質権設定者[訳注:pledgee は pledgor の誤記と思われる]の間の譲渡や担保権設定を禁止する特約は、第三者がその条項の違反に加功していない限り、第三者に対して効力を有しない。
9. 65 条以下が質権の及ぶ範囲を明記している。質入れされた金銭債権に加えて、利息、違約金その他の付随的なものに効力が及ぶ。債権が分割可能であれば、その一部の質入れもできる(66 条)。最後に、67 条 1 項は、必要な場合には、質入れされた金銭債権とそれに付随するものを実現する[取り立てる?]ため、裁判所の行為を求める権利を質権者
に与えている。被担保債権への弁済後の余剰金はすべて、質権設定者に返還しなければならない(67 条 2 項)。
10. cc) ルクセンブルクは、1994 年 12 月 21 日法による民法 1689 条から 1691 条の微修正を除き、フランス民法 1689 条から 1701 条の元々の版[1804 年のナポレオン民法]になお▇▇に依拠している。原則規定によれば、債権譲渡は両当事者の合意により生じる(1689 条)。しかし、第三者に対しては、債務者に書面による通知がされるまでは効力が生じない(1690条 1 項及び 3 項)。債務者が通知を受ける前に譲渡人に弁済したときは、債務者が債権譲渡を知っている場合を除いて、この弁済は有効である(1691 条)。
11. 金銭債権の売買又は譲渡は、譲渡された債権のための人的担保又は物的担保をもすべて含む(1692 条)。別段の合意がなければ、譲渡人は譲渡した債権の存在を保証するが(1693条)、債務者の弁済能力は保証しない(1694 条)。
12. dd) フランスは、金銭債権の質権について 3 種の規律を有している。古いものは、歴史的な選択肢であり、フランス語圏の他の 2 国における類似の規律とほぼ同じである。基本的なものは、民法 1689 条から 1701 条の「旧」規定である。この伝統的な規律は、一部は民法において、一部は商法において、補足され、現代化されている。金銭債権の質入れは書面で行わなければならず、違反すれば無効である(民法 2356 条 1 項)。将来債権については、とりわけ債務者、弁済場所、債権額及び適用できるのであれば弁済期などを可能な限り正確に記載しなければならない(民法 2356 条 3 項)。将来債権が質入れされたときは、質権者が質権を取得するのはその債権の「発生 birth」時点である(2357 条)。金銭債権質には特別規定がある(民法 2360 条)。質権設定の通知を受けた後は、債務者は質権者にのみ弁済をすることができる(民法 2363 条 1 項)。債務者が弁済をしなければ、質権者は、質入れされた債権額を ── 裁判所の決定又は合意された条件に従って ──取得することができる[訳注:これはおそらく権利の帰属清算だろう]。ただし、<p.346>弁済期が到来するまで質権者が待つことを望む場合はこの限りでない(民法 2365 条[これはおそらく債権を取得しないで行う取立てだろう])。[質入れされた債権の]弁済額が被担保債権額より多い場合には、差額は債務者に返還しなければならない(民法 2366 条)。
13. 職業的金銭債権の質権設定には特則があり、通貨金融法 L.313-23 条から 313-29 条までに定められている。適用対象は、公共団体及び職業人である自然人の私人への信用付与である。こうした特別の債権の質入れまたは譲渡は、当該与信債権が債権者の職業活動の実行によって取得されるのであれば、その明細表を交付することによって行うことができる(L.313-23 条 1 項)。当該債権は、すでに弁済期が到来するか、または後に到来するものでなければならない(同条 2 項。[この表現は不可解で疑問])。同条は、さらに遵守するべき詳細を定めている。明細表作成に不備があれば、その文書は無効となり、質権の設定や担保的譲渡の効力も生じない(同上 6 項)。明細表は金融機関に対してのみ譲渡することができる(L.313-26 条)。質入れされた債権に外国法が適用されたり、債務者が海外に居住している場合であっても、これらの規定は適用される(L.313-27 条 1 項▇▇[L.が
脱落し 327 は誤記])。金銭債権の明細表の譲渡は、質入れ又は譲渡された債権のすべての担保権の譲渡をも含む。これらの権利は第三者に対しても対抗できる(L.313-27 条 3 項)。
14. 2006 年の改正は、金銭債権の質入れの規定を単純化した(民法 2356 条から 2366 条まで。 Aynés and Crocq no. 525 ss.)。担保目的財産は、特定可能であれば、将来債権でもよい(民法 2356 条 3 項)。分割可能であれば債権の一部の質入れもできる(民法 2358 条)。質入れが目的債権の債務者に対して有効となるためには、同人に対して通知をしなければならない
(民法 2362 条。Aynés and Crocq no. 527)。ただし、職業上の債権の質入れには、その債権に適用される法が何であるかにかかわらず、通知は不要である(通貨金融法 L.313-27 条 1 項)。譲渡された金銭債権のための担保権は、自動的に譲受人に移転する(同条 3 項)。
15. c) オーストリアでは、現在及び将来の金銭債権は、いずれも質入れすることができる
(民法 427 条。Koziol and Welser 381)。もっとも、金銭債権の債務者には通知をしなければならない(▇▇▇▇▇▇ and Welser 381)。
16. d) ブルガリアも、金銭債権の質入れについては似た規定を有する。金銭債権は譲渡可能な限り、質入れもできる。もっとも、質入れの通知が債務者に対してされない限り、質権は第三者に対して効力を有しない(1950 年の債務・契約法 162 条)。5000 レバ[約 36 万円]を超える金銭債権には 156 条 2 項も適用される。すなわち、質権設定者は、質権者に目的債権を証明する文書をすべて交付しなければならない(162 条及び 163 条)。
17. e) 2012 年の新しいチェコ民法は、1335 条から 1340 条において金銭債権質を規定している。譲渡可能な金銭債権は質入れができる(1335 条 1 項 1 文)。金銭債権質は、両当事者の合意で設定できるが、質権が登記されていない場合には、質権設定者が債務者に通知をするまでは、債務者に対して効力を有しない(同条 2 項)。目的債権の弁済期が到来すれば、質権者はその弁済を受けることができるが、目的債権の債務者に通知をしておかなければならない(1336 条 2 項)。弁済期が未到来の間は、債権者は、目的債権の譲渡を求めることができる(同項 2 文)。両当事者は、1336 条の規定とは異なる合意をすることができる(1340 条)。
18. f) イングランド法によれば、金銭債権は(しばしば帳簿上の債務や受取勘定として論じられている。用語法につき、Beale, Bridge a.o. no.7.72)、抵当権 mortgage もしくは物上負担 charge という真の担保権または準担保権(とりわけ、いわゆる受取勘定融資 receivable financing。Beale, Bridge
a.o. nos.7100 ss.)の目的とすることができる。帳簿上の債務の固定担保の場合には、担保目 的となっている帳簿上の債務の価値変形物につき担保債権者が支配している必要がある。そのような支配がなければ、担保権は浮動担保と考えられる(Re ASRA Establishment Ltd., [2000] 2 BCLC 631 (C.A.); Agnew v. Commissioner for the Inland Revenue, [2001] AC 710 (S.Ct.))。
19. g) ドイツでは、金銭債権は民法 1273 条・1279 条に従って、質入れすることができる。これには、将来債権を含む金銭債権が含まれる(Münchner Kommentar (-Damrau) § 1279 no.3; Bülow no.625)。債権者は債務者に通知をしなければならない(民法 1280 条)。
<p.347>
20. h) イタリアでは、債権の質入れが、債務者を含む第三者に対して対抗できるためには、確定日付のある証書による質入れ債権の第三債務者に対する通知又はその承諾が必要である(民法 2800 条)。第三債務者に対する通知は、口頭でも可能である(▇▇▇▇▇▇▇▇▇, Il pegno 205)。債権が証書から生じているときは、質権設定者は、質権者にそれを引き渡す義務を負うが(2801 条)、これは第三者に対して質権を対抗するための要件ではない(▇▇▇▇▇▇▇▇▇, Il pegno 205)。
21. i) オランダは、現代民法を定め、契約と財産に関するその規定の多くが 1992 年 1 月 1日に施行された。その現代的で先進的な性格にもかかわらず、裁判所は、それを新しい発展に合わせて修正してきた。判例準則の特別な例は、金銭債権の質入れの分野である。判例となったある事案において、債務者である会社が銀行から与信を受けた。その担保として債務者は、将来の金銭債権を含む現在及び将来の全財産を銀行に譲渡した。
22. これらの債権の[第三]債務者たちは、その債権の質入れについて通知を受けたが、その通知は、受信者が自らの債務者たちから授与を求めなければならなかった代理権によって、この点でも銀行が[第三]債務者たちを代理して行為したものであった。こうした債務者による債権譲渡が有効となったのは、こうした(純粋に)将来の債権がおよそ発生する場合に限られ、その発生時点である。債務者[訳注:複数形はおかしい]がその顧客たち[=第三債務者たち]の残存債務の一覧表を日々交付していたので、銀行は、実効的に、その担保の量を(日々変動する)全与信債権に拡大した(Verstijlen at p.2942 s.を参照)。この形式での担保付与信の有効性についての議論は、最終的には、最高裁により、例外的に長大な意見において、債権者である銀行に有利に解決された(▇▇かつ一般的にこれを肯定する Verstijlen の評釈の付いた S. Ct. 3 Feb. 2012, N.J. 2012 no.261)。
23. この判決前には、▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇が、将来の契約から生じる将来の金銭債権は現在の時点で担保を設定することができない、という意見を述べていた(in ▇▇▇▇▇▇▇▇ and Rank-Berenschot no.546)。
24. j) 北欧諸国につき、デンマークの 1938 年約束手形法第 3 章 27 条・29 条・31 条は、単純な約束手形に関して、金銭債務にも適用される(▇▇▇▇▇▇▇ and ▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇ 336 no.3, 337)。デンマーク法によれば、質権の設定が質権者にとって有効となるには、質権者が[譲渡制限につき]善意の場合に限られる。金銭債権の質入れは、債務者がその担保設定について通知されなければ、他の債権者に対して効力を有しない。
25. 1936 年のスウェーデン約束手形法(10 条・31 条)も、デンマーク法と同様の有効要件を必要としている(Håstad, Sakrätt 434)。
26. フィンランド法によれば、金銭債権は、特定され、譲渡可能で、交換価値を有していれば、担保を設定することができる(Collan and Kouvula 267)。フィンランドの法実務は、金銭債務の担保化に好意的である(ibidem 272)。
Ⅲ. 金銭債務の譲渡担保
1. 将来の不特定な権利の譲渡については、Ⅲ.-5:106 条のノートを参照。
2. a) 許容と形式要件
aa) オーストリアでは、権利の譲渡担保には、金銭債務の質入れと同じ公示性が必要とされる。すなわち、[第三]債務者への通知又は商業帳簿への記載が必要である(S. Ct. 29
Oct. 1997, SZ 70 no.288; S. Ct. 26 June 2001, SZ 74 no.112; ▇▇▇▇▇▇▇▇▇ 395)。それにもかかわらず、法実務は、金銭債権の質入れよりも譲渡担保の方を好んでいる。譲渡担保権者は、自らの利益のための受託者であると考えられている(▇▇▇▇▇▇ and ▇▇▇▇▇▇ 409 s.)。
3. bb) ベルギーでは、金銭債権の譲渡担保の許容には、むしろ論争がある。裁判所の判決も分かれていた。この論争は、動産担保に関する新規定において立法者により決着が付けられた(2013 年 7 月 11 日法)。立法者は批判を認めつつ<p.348>、ある種の妥協をした。すなわち、譲渡担保は、「譲渡された」金銭債権に譲渡人が担保を設定するにすぎないとしたのである(62 条)。
4. cc) ブルガリア法は、担保目的の債権譲渡を認めている。譲渡担保権者[質権者という表現は不適切で質権規定の類推適用のようである]は、譲り受けた権利を保存するのに必要なあらゆる行為を行う義務を負う。譲渡担保権者は、弁済期が来た利息を収取するように務めなければならないし、譲り受けた[元本]債権の弁済期が来たときは、その弁済を得るよう努めなければならない(1950 年の債務・契約法 164 条)。受領した金銭は銀行に預託しなければならず、債権者の担保となる(164 条 3 項)。
5. b) イングランドでは、債権(choses in action)の譲渡がコモン・ロー上の債権譲渡 legal assignment となるための条件が、1925 年の財産法 136 条 1 項に規定されている。それによれば、債権譲渡は書面で行わなければならず、債権上の担保権[の設定]にとどまることなく債権を絶対的に譲渡しなければならず、書面による通知を譲渡債権の[第三]債務者に対して行わなければならない。さらに、それは全権利の譲渡でなければならず、債権の一部の譲渡は、エクイティ上の債権譲渡と見られることになろう(▇▇▇▇▇▇ 104 s.、▇▇▇▇▇, Legal Problems 11)。[第三]債務者への書面による通知を欠いた債権譲渡も、エクイティ上の債権譲渡と見られることになろう。
6. ee) ドイツでは、担保目的の債権譲渡は認められており、「担保 encumbrance」の通常の方法である。というのも、譲渡債権の[第三]債務者への通知は必要とされないからである(Münchner Kommentar (-Roth) § 398 no.102)。債権譲渡は、将来債権や多数債権についても可能である(包括的債権譲渡 blanket assignment、ドイツ語では Globalzession。Münchner Kommentar (-Roth) § 398 no.102)。
7. ff) ハンガリーは、譲渡債権の[第三]債務者への通知を必要としており、将来債権の譲渡も許容している(Illa 95 ss.)。
8. gg) イタリアでは、[第三]債務者が譲渡を承諾するか、少なくとも口頭によって通知される場合には、債権譲渡は第三者に対しても効力がある(民法 1264 条・1265 条。▇▇▇▇▇▇▇▇▇,
Il pegno 205)。もっとも、[譲受人である]第三者からの通知前にさえ、[第三]債務者が債権譲渡を知っていたことを譲受人が証明したときは、債務者は、譲渡人に弁済しても免責されない(民法 1264 条 2 項)。債権が証書によって発生する場合には、担保設定者はそ
れを担保権者に引き渡す義務を負う(民法 2801 条)。ただし、これは第三者に対する担保の効力の要件ではない(▇▇▇▇▇▇▇▇▇, Il pegno 205)。
9. hh) ポルトガルにおいては、債権譲渡担保は、物的担保の形式の 1 つである。それは信託的譲渡であるとされ、債権質よりも有利なのは、それが有効となるために何らの形式要件も必要としないことである(民法 577 条以下、Teles de Menezes Leitão 290 s.)。
10. ii) フランス及びルクセンブルクでは、債権譲渡が第三者に対して対抗できるためには、第三債務者に通知をしなければならない(フランス及びルクセンブルク民法 1690 条)。ルクセ ンブルクでは、通知の形式は、1994 年以来緩和されている。第三債務者への形式を問わ ない通知が、形式を問わない承諾と共に認められているのである。
11. フランスでは、物的担保権としての債権譲渡は、近時、最高裁により、質権に転換された(S. Ct. 19 Dec. 2006, JCP E 2007 no. 1131 p.19 n. ▇▇▇▇▇▇▇ and no. 2187 p.13 n. Auckenthaler を参照)。流質約款 lex commissoria の禁止は 2006 年 3 月の法改正以来解除されたのに(民法 2348 条)、債権の所有の信託的譲渡の禁止は維持された。有体財産質権につき明示的に規定されている流質約款は(民法 2348 条)、司法的な介入のない債権譲渡[担保]の実行をも認めている。特別規定が欠けていることから、無体財産上の質権は、有体財産上の質権に近づいている。フランスの 2006 年法の立法者の目的は、おそらく、信託的所有権を所有権留保に限るというものであった(民法 2367 条)。物的担保権としての債権譲渡が有効なのは、特別法が規定している場合である。たとえば職業的債権(金融財政法 L.211-27 条以下)の場合または金融部門からの職業人間の債権の場合(買戻特約に関する同法 L.211-27 条および 2002年の担保指令を転換する同法 L.211-36 条以下)。
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12. b) 包括的債権譲渡の有効性 aa) ドイツにおける包括的債権譲渡の場合には、当事者は、被担保債権が担保より減少したときに、過剰担保となる危険を負う。債権譲渡によって提供された担保が、被担保債権額を 20%以上になる時は、売主[=延長された所有権留保売主で将来債権譲渡の譲受人]は、その過剰担保によって損害を受けた買主又は第三者の請求により、自らの選択により担保を解除する義務を負う(S. Ct. 8 Dec. 1998, NJW 1999, 940 s.)。さらに、包括的債権譲渡は、延長された所有権留保の一部として、通常の営業の範囲で譲渡された債権を含む場合には、公序良俗に違反して、無効と考えられている(S. Ct. 9 Nov. 1978, BGHZ 72, 308)。
13. bb) オーストリアとドイツでは、包括的債権譲渡は可能であるが、将来債権の特定可能性に関して、同じ懸念が表明されている(S. Ct. 11 July 2002, RdW 2003, 194)。担保権者の過剰担保の可能性も懸念を生じている(▇▇▇▇▇▇ and ▇▇▇▇▇▇ (Kletečka) 408 ss.)。
14. cc) 他方、ハンガリーでは、包括的債権譲渡は無効である。もっとも、特別の法的関係
から生じる全債権を譲渡することは可能である(Illa, Grundeigentum und Sicherheiten in Ungarn 95 ss.)。
15. c) 債権譲渡禁止
aa) 債権譲渡担保の禁止は、法の定め又は譲渡禁止条項によって定めうる。後者の効力は国によってまちまちであるが、それは、譲渡禁止条項がその性質上契約条項であるとの事実が主たる理由である。すなわち、有効で第三者に対しても効力を有するのであれば、対世効があるからである。
16. bb) エストニア、フランス、オーストリア及びイングランドは、債権譲渡禁止条項は両当事者間で有効であるにすぎず、対世効を持たない。しかしながら、有効性の条件はまちまちである。たとえば、オーストリアでは、禁止があるにもかかわらず行われた債権譲渡は、第三者に対して有効である(民法 1396a 条 1 項、Grünzweig 398)。同様に、商人間の債権譲渡禁止がオーストリアで有効となるのは、それが個別に交渉されていて債権者に著しい不利益とならない場合に限られる。
17. cc) イタリア、ギリシャ、ポルトガル、スペイン及びポーランドでは、妥協的立場が採られている。譲渡禁止条項は当事者間でのみ有効である。ただし、譲受人が不誠実に行為したか又は債権譲渡時点で譲渡禁止特約を知っていた場合は除く(たとえば、イタリア民法 1260 条)。
18. dd) ドイツ、スロヴェニア及びチェコ共和国では、譲渡禁止条項は一般的に有効である。当事者は、特定の 1 つの債権についても複数債権についても譲渡禁止条項を合意することができ、この譲渡禁止は、当事者間のみならず対世的に譲渡を無効にする(ドイツにつき、Münchener Komentar (-Roth), § 398 no.399 nos. 36 ss.、スロヴェニアにつき、債務法 417 条 2 項)。
19. ee) もっとも、スロヴェニアとドイツでは、商人間の譲渡禁止条項には特別規定が適用される。ドイツでは、そのような債権譲渡禁止に違反する債権譲渡は、その債権が商事取引から生じている場合には、商人間では有効である(商法 354a 条、スロヴェニア債務法 417条 4 項)。
20. これ以上の注記と債権譲渡禁止条項についての参考文献については、Ⅲ.-5:108 条の各国法ノートを参照。
Ⅲ. 担保債権者に対する担保設定者の権利への担保設定
1. a) ドイツ法は、担保債権者のために同人に対する担保設定者の権利に担保を設定することを認めている(S. Ct. 25 April 1988, NJW 1988, 3260, 3262; S. Ct. 29 Nov 1984; BGHZ 93. 71. 75; S. Ct. 1 July 1985, BGHZ 95, 149, 154)。これは、銀行とその顧客の間の通常の実務である(銀行一般取引約款 14 条、貯蓄銀行一般取引約款 21 条。Bülow no. 629)。オーストリアでは、銀行口座名義人の口座残高の銀行による質入れは、<p.350>債務者への特別な通知を要しない(S. Ct. 6 July 2009, ÖBA 2010, 61 および 17 March 1998, RdW 1998, 730 ss.; Binder no. 11/28; ▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇, JBl)。
2. b) イタリア法も、担保債権者に対する担保設定者の権利への担保設定を認めている。こ
の場合には、[対抗するために]通知を要する第三者が存在しないので、質権は設定時点から有効である(▇▇▇▇▇▇▇▇▇, Il pegno 206 ss.)。
3. c) イングランド法は、金銭債務の債務者がその上に担保権を取得できるかどうかという問題について、現在、異なる立場を採っている。真正譲渡は、[債務者の]免責として効力を生じるので不可能であるが(Re Charge Card Services Ltd., [1987] 1 Ch. 150 (C.A.))、Re BCCI (no.8), [1998] AC 214 (S. Ct.)事件において担保設定は可能であると判示された。抵当権については結論が出ていない。というのは、抵当権は債権譲渡の方法により効果を生じるものの、譲渡債権の[元の]債権者は、▇▇法上の受戻権を保有しているからである(Beale, Bridge a.o. no. 6.62 における議論を参照)。
Ⅴ. 担保権の負担が及ぶ範囲
1. a) オーストリアでは、第 2 の質権(民法 454 条。転質権 Afterpfandrecht)は、金銭債権及びこの権利を担保する質権につき設定することができる。もっとも、金銭債権及び質権がそれぞれ転質権の対象となりうるのか、それとも、質権が必然的に債権に付従するのかについては議論がある(付従しないとするものとして、Koziol and Welser 383; Schwimann and Kodek (-Hinteregger) § 454 no.2。Kletečka and Schauer (-▇▇▇▇▇▇▇▇▇▇ and Domej) § 454 no.1 ss. によれば、質権
は債権に付従する)。転抵当権(?)の場合には、第 2 の質権は登録しなければならない(Koziol
and Welser (-Koch) § 454 no.3)。
2. b) 現存する担保の新しい担保債権者への移転 ブルガリアでは、担保対象である金銭債権の質入れにより、その債権の担保も新しい債権者に移転する(1996 年・1997 年特別質▇▇ 6 条)。同様に、金銭債権に質権が設定され、この権利が抵当権により担保されている場合、ドイツでは、質権は、抵当権にも及ぶ(Münchener Komentar (-Eickmann), §1253 no.4)。この規律は、2012 年のチェコ共和国民法 1346 条 2 項に明確に採用されている。
3. c) フランスでは、債権質は、両当事者が別段の定めをしなければ、その債権に付従するものに及ぶ(民法 2359 条。Carbrillac, Mouly a.o. no.763)。
4. d) 他方、イタリアでは、担保対象になっている債権は質入れすることができる。もっとも、この債権を担保する権利は、質権には及ばない(▇▇▇▇▇▇▇▇▇, Il pegno 205)。
5. e) 債権譲渡の効力が担保権に及ぶことは、イングランド法でも、とりわけ資産の証券化のために用いられているが、証券化は、最初は、土地抵当権により担保された貸付金債権を用いる場合に発達した(Beale, Bridge a.o. no. 7.130)。
