Contract
アメリカ法
第23回
Ⅴ.アメリカ契約法
3.約因
xx xx
1 2
(8) (f) 約束的禁反言の法理の機能
(8) (f) ② 契約変更の約束を信頼した者の保護
① 無償約束に拘束力を付与
② 契約変更の約束を信頼した者の保護[次スライド]
③ 申込を信頼した被申込者の保護[第2節において解説]
④ 契約締結に向けての交渉過程においてなされた約束を信頼した者の保護
[次回スライド]
⑤ 詐欺防止法の要件を満たさない約束を信頼した者の保護
contractor
A
アパート建築(2020/7~2021/2)約束
代金$500,000(2021/3)支払約束
工事中断
追加代金$100,000(2021/3)支払約束
既存義務の履行であっても構わない。
約束を信頼
owner
B
アパート完成(2021/2)
追加代金$100,000(2021/3)支払請求訴訟
3 4
(8) (f) ② 契約変更の約束を信頼した者の保護
Central London Property Trust, Ltd. v. High Trees House, Ltd., [1947] K.B. 130
(1937/9)
貸主 借主
X
アパート用建物貸す約束
(8) (f) ② 契約変更の約束を信頼した者の保護
High Trees Case と逆の場合
(1937/9)
貸主 借主
X
アパート用建物貸す約束
賃料 £2,500/year支払約束
Y Y
賃貸契約解除?
賃借契約解除?
賃料 £2,500/year支払約束
戦争の影響でアパート入居人減少
好景気でアパート入居人激増
(1940/1)
賃料 £1,250/year免除約束
(1940/1)
賃料 £1,250/year増額約束
約束を信頼 約束を信頼
£1,250/yearを支払い賃借継続
既存義務の履行であっても構わない。
£3,750/yearを受取り賃貸継続
(1945/9)
賃料 £1,250/year免除約束撤回
1945年後半の差額£625の支払請求
賃料 £1,250/year免除約束(1940/1)……拘束力?
5
(1942/9)
賃料 £1,250/year増額約束撤回
賃料 £1,250/year増額約束(1940/1)……拘束力?
米では拘束力が認められるが,英では否定される。 6
(8) (f) ④ 契約交渉過程における約束を信頼した者の保護
Xxxxxxx v. Red Owl Stores, Inc., 26 Wis.2d 683, 133 N.W.2d 267(1965)
X
Q1 | Red Owl (フランチャイズ・チェ-ン。以下Red)とXxxxxxxは 1961年5月中旬,XxxxxxxをChiltonにおけるRed店舗の経営者とすることを目指す交渉を開始したか。 | Yes(裁判所による回答) |
Q2 | 両当事者は最終的合意に達する程度に当該提案の細目すべてについて合意したか(契約は成立しているか)。 | No(裁判所回答) |
Q3 | Redは当該交渉の過程においてXxxxxxxに対し,彼が一定の条件を満たせば彼をChiltonにおけるRed店舗経営者にするという表示をしたか。 | Yes |
Q4 | (Q3の回答がYの場合)Xxxxxxxは当該表示を信頼し,それに基づいて行動するよう誘発されたか。 | Yes |
Q5 | (Q4の回答がYの場合)Xxxxxxxは,通常の注意を行使において,当該表示を信頼すべきであったか。 | Yes |
Q6 | (Q3の回答がYの場合)Xxxxxxxは,62年1月までの交渉の取決めで求められたすべての条件を満たしたか。 | Yes |
Q7 | 以下の項目について原告が受けた損害を補償するために相当な金額はいくらか。 | $xxx.xx |
Red Owl 一定の条件を満たせば彼をChiltonにおける Hoffman Red店舗経営者にするという約束
Special verdict (Xxxxxxx v. Red Owl (資料Ⅱ 119‐20,教148)
Y
約束を信頼
種々の費用出捐
Yの約束を信頼してなした出捐について損害賠償請求訴訟
第xx(原審):原告が主張した損害項目のうち1項目を除いて請求認容。被告Red Owl
が最高裁に上告,原告も附帯上告。最高裁:原判決を支持。上告棄却。
7 8
Ⅴ.アメリカ契約法
2.申込と承諾――契約の成立
A
offeror
申込者
申込(offer)
(1) 申込 (a) 申込とは
申込者の約束
被申込者に求める約因
承諾(acceptance)
約束
行為の履行
B
offeree
被申込者
する
マスク100箱
$1000買注文
A B
買主 売主
市場価格$1300
承諾 しない
B
→市場で売る市場価格$700
→$1000承諾
9 10
A
offeror
申込者
(1) 申込 (b) 申込と申込の誘引
申込の誘引(invitation to offer)
(価格見積り,商品の展示,広告,カタログ送付,メニュー表示)
申込(offer)
承諾(acceptance)
B
offeree
被申込者
(1) 申込 (b) 申込と申込の誘引
不特定多数
行為の履行に対する報酬支払約束
(犯罪者の逮捕に役立つ情報の提供,遺失物の発見・届出など) B
申込(offer)
A 承諾(acceptance)
代金支払者
商品・サービス供給者
求められた行為を履行できる者は限られている
行為履行後,
約束を撤回できない
offeror
申込者
(不特定多数)
「現物限り」などと表示されている場合は,商品の展示や広告などが申込とされることも多い←不特定多数の者との契約を強いられるおそれはない。
11 12
申込後の⽬的物の価格変動
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
2020/7/1 7/2
7/3
7/4
系列1
系列2
系列3
(1) 申込 (c) 申込(被申込者の承諾権限)の失効事由
(1) 申込 (c) 申込(被申込者の承諾権限)の失効事由
A
offeror
申込者
マスク100箱
$1000買注文
A B
申込(offer)
承諾(acceptance)
B
申込の失効事由 | 申込の復活可能性 | 効果発 ⽣ | option | |
(イ) | 申込の撤回 | ○ | 到達時 | − |
(ロ) | 申込者・被申込者の死亡・ 能⼒喪失 | 即時 | − | |
(ハ) | 承諾期間の徒過 | ○ | 即時 | 失効 |
(ニ) | 申込の拒絶 | ○ | 到達時 | △ |
(ホ) | 契約の履⾏に不可⽋な⼈の 死亡または物の滅失 | 即時 | 失効 | |
(ヘ) | 契約の履⾏の違法化 | 即時 | 失効 |
offeree
被申込者
(申込が有効な間)
する
承諾
買主 売主
市場価格$1300
B
→市場で売る市場価格$700
→$1000承諾
しない
13 14
(c) 申込の失効事由(イ) 申込の撤回
2020/7/1 申込(offer):承諾期間は7/1~7/10。
承諾期間中は申込を撤回しないと約束
A B
(c) 申込の失効事由(イ) 申込の撤回
◆撤回の方法
Direct communication of revocation――当該契約を締結する意思がなくなったことを被申込者に通知
offeror
申込者
2020/7/5 申込の撤回
Bは承諾できなくなる。
一定期間申込を撤回しないというAの約束に対して
offeree
被申込者
約因
Indirect communication of revocation――申込者が,当該契約を締結する意思と両立しない確定的行動をとり,被申込者がこのことについて信頼できる情報を得た場合(申込で提案された売買の目的物たる土地が第三者に売却されたことを信頼できる筋から知った場合など)
◆一般的申込(general offer)の撤回――Text p. 112↓12~
Bが約因を提供していれば,Aはその間撤回できない。
⇒ optionの成立
(option contract)
承諾する承諾しない
15 16
(c) 申込の失効事由(ニ) 申込の拒絶――反対申込
マスク100箱を$1,000で買う注文
(承諾期間は7/1~7/10)。
2020/7/1 申込
(1) 申込 (d) オプション(イ) オプション契約と約因
2020/7/1 申込(offer):マスク100箱を$1,000で売る申込(承諾期間7/1~7/15)。承諾期間中は申込を撤回しないと約束
A
offeror申込者 (買主)
2020/7/5 申込の拒絶(rejection of offer)
2020/7/7 承諾――有効?
B
offeree被申込者 (売主)
A
申込者売主
一定期間申込を撤回しないというAの約束に対して Bが約因を提供すれば,Aはその間撤回できない。
承諾する
B
被申込者買主
⇒承諾としては無効,新たな申込(反対申込)
(counter offer)
⇒ optionの成立
(option contract)
約因
承諾しない
2020/7/5 $1,100で承諾――有効?
⇒ 承諾としては無効,申込の拒絶で新たな申込
(反対申込)となる。
$1,100での売買の検討依頼なら拒絶とならない。
17
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
2020/7/1 7/8 7/15
系列1 系列2 系列3
Bは約因を支払ってoptionを購入することになる。買主の取得するoptionのことをcall(買付オプ
ション)という。
目的物の相場が上昇した(例えば$1,300)ときに,その行使で利益を得ることができる。
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申込後の⽬的物の価格変動
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
2020/7/1 7/2
7/3
7/4
系列1
系列2
系列3
(1) 申込 (d) オプション(イ) オプション契約と約因
2020/7/1 申込(offer):マスク100箱を$1,000で買う申込(承諾期間7/1~7/15)。承諾期間中は申込を撤回しないと約束
A B
(1) 申込 (d) オプション(イ) オプション契約と約因
2020/7/1 申込(offer):マスク100箱を$1,000で売る申込(承諾期間7/1~7/15)。承諾期間中は申込を撤回しないと約束
A B
一定期間申込を撤回しないというAの約束に対して
申込者
一定期間申込を撤回しないというAの約束に対して
被申込者
申込者売主
Bが約因を提供すれば,Aはその間撤回できない。
約因 被申込者
買主
買主 Bが約因を提供すれば,Aはその間撤回できない。 売主
◆ 約因が主たる取引に比して名目的である場合――短期間のオプションならOK
◆ オプション契約書面に書かれた約因が現実には授受されていない場合
⇒ optionの成立
(option contract)
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
2020/7/1 7/8 7/15
系列1 系列2 系列3
承諾する 約因
承諾しない
Bは約因を支払ってoptionを購入することになる。売主の取得するoptionのことをput(売付オプ
ション)という。
目的物の相場が下落した(例えば$700)ときに,その行使で利益を得ることができる。
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(例)「Bから支払われた1ドルを約因として,Aは下記の条件での売買契約の申込をし,7/15までの承諾期間の間,本申込を撤回しないことを約束する。」と記載された書面が授受されたが約因1ドルの授受がない場合
(判例法) オプションの設定の認定が必要な場合――1ドルの支払約束が約因と認定する。
(リステイトメント) 約因の表示と申込者の署名があるオプション契約書面があり,契約の内容がxxで,期間が合理的であれば,オプション契約を有効とする。
(UCC) 申込者(商人)の署名ある書面で,一定期間撤回しない表示があれば,約因がなくても,表示された期間(≦3ヵ月)申込は撤回不可――確定申込
(firm offer)。 20
(1) (e) 申込等を信頼した被申込者の保護(イ)片務契約の場合
2020/7/1 申込(offer):7月2日朝から12時までにP地の芝を刈り終えてくれれば$200を支払う申込
(1) (e) 申込等を信頼した被申込者の保護(イ)片務契約の場合
2020/7/1 申込(offer):7月2日朝から12時までにA地の芝を刈り終えてくれれば$200を支払う申込
芝刈り機を半日$50で賃借し,燃料を4時間分を$40で購入。
A
申込者依頼者
申込の撤回
Bに求められた給付は?
0700
0800
0900
1000
1100
B
被申込者園芸業者
A
芝刈り機を半日$50で賃借し,燃料を4時間分を$40で購入。
申込者依頼者
申込の撤回
Bに与えられる救済
Restatement 2d§45(2)に基づいて芝刈を完了した場合⇒$200
Aが芝刈の完了をまったく望まない意思を表示した場合
0700
0800
0900
1000
1100
$10
$10
$10
$10
B
燃料費
被申込者園芸業者
片務契約の申込:芝刈の完了――完了まではAは撤回できる。双務契約の申込:芝刈の約束――芝刈開始時に黙示の承諾
21
⇒Bに損害軽減義務が課され,10時で作業を中止することが必要。
余った1時間分の燃料を$10/$7で処分できれば,その分が損害賠償額から控除される。
22