信託契約番号 REIT2021-001 信託受益権/ABL
<資産証券化商品>
信託契約番号 REIT2021-001 信託受益権/ABL
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
21-S-0007
2021 年 4 月 16 日
【新規】
信託受益権予備格付
A号受益権 AAA
B号受益権 A+
ABL予備格付 A+
■格付事由
本件は、複数の日本法人(対象債務者)向けローンを参照債務とするシンセティック CLO 案件に対する格付である。
1.スキームの概要
(1) 委託者であるxx証券株式会社は受託者との間で特定金銭信託契約を締結し、信託勘定に信託金を拠出し、A号受益権および B 号受益権の当初受益者となる。受託者は拠出された信託金を原資として、定期預金(満期 3 年)を口座開設金融機関に預け入れる。A 号受益権および B 号受益権は委託者から投資家に譲渡され、一部の B 号受益権については投資家から B 号信託 ABL(B 号受益権とあわせて B 号受益xxと総称)を受け入れることによって償還される。
(2) 受託者は、貸付人が保有する対象債務者向けローンを対象とする損害担保契約を貸付人と締結する。また、受託者は、損害担保契約に基づき貸付人が受託者に対して有する補填債務履行請求権の担保として、定期預金債権に貸付人を根質権者とする第一順位の根質権を設定する。
(3) 貸付人は受託者に対し四半期毎に補填手数料を前払いにより支払う。受託者は期中、補填手数料を原資に、A号受益権および B 号受益xxの収益配当・利払いを行う。
(4) 期中、補填債務履行事由(いわゆるクレジットイベント)が発生した場合には、受託者は当該ローン債務者の補填対象元本額に相当する金銭を定期預金から取り崩し、貸付人に仮払金として支払うことにより、損害補填債務を履行する。貸付人は、補填債務履行事由発生後の回収金を還付金として受託者に支払い、受託者は A 号受益権、B 号受益xxの順に元本償還・返済に充当する。
(5) 口座開設金融機関は信託期間満了予定日と同日となる定期預金満期日に定期預金を受託者に払い戻し、受託者は払い戻された預金元本で信託期間満了予定日に A 号受益権および B 号受益xxを償還・返済する。ただし、信託期間満了予定日に貸付人の受託者に対する還付金の引渡債務が存在する場合には、信託期間は信託期間満了予定日の 6 か月後の応当日まで継続し、受託者は当該日に還付金としての回収金をもって A 号受益権、B 号受益xxの順に元本償還・返済に充当する。
2.仕組み上の主たるリスクの存在
(1) 対象債務者向けローンのデフォルトリスク
対象債務者向けローンのいずれかについて、補填債務履行事由が発生した場合には、当該ローンの金額相当の預金が損害補填債務履行のために充当され、A 号受益権および B 号受益xxの償還・返済原資が不足するリスクがある。このリスクに対しては、A 号受益権について必要とされる劣後水準を設定している。
(2) 補填手数料の不払いのリスク
A 号受益権および B 号受益xxの予定配当・利息の支払いは、損害担保契約にもとづいて貸付人が支払う補填手数料が原資となっているところ、貸付人がデフォルトした場合には、当該予定配当・利息の支払いが不足する恐れがある。
本件では、貸付人は補填手数料を四半期ごとに一期分前払いにより支払うことが規定されており、貸付人がデフォルトした場合には、A 号受益権および B 号受益xxは預金を原資として期限前償還・返済され、また、A 号受益権および B 号受益xxの予定配当・経過利息が前払いされた補填手数料を主な原資に支払われることとなっている。これらの手当てにより、A 号受益権および B 号受益xxに対する貸付人の信用リスクの影響は極小化されていると判断される。
(3) 預金預入先の信用リスク
本件の関連契約において、口座開設金融機関の格付が一定の水準まで低下した場合は、他の金融機関に預金口座を移転することなどが規定されている。このような手当てにより、A 号受益権および B 号受益xxの信用力に対する口座開設金融機関の信用リスクの影響は極小化されているものと判断される。
3.格付評価のポイント
(1) 損失、キャッシュ・フロー分析および感応度分析
定量分析では、シンセティック CDO の格付方法にもとづき、2 ファクター企業価値モデルをベースとして、取引期間を単位期間とする、シングルピリオド型モンテカルロ・シミュレーションを行う。
すべての対象債務者は JCR の格付を既に付与されており、当該対象債務者に付与されている長期発行体格付を参照し、格付と期間に対応した想定デフォルト率を割り当てる。補填債務履行事由(クレジットイベント)と JCR のデフォルトの定義との間の範囲の相違は概ねみられず、標準的な想定デフォルト率を採用している。業種の相関関係に関しては業種集中度がきわめて高い場合に適用する係数値を使用し、回収率は対象債務者の特性を考慮した水準とした。
以上の前提条件をもとに、モンテカルロ・シミュレーションを行った結果、A 号受益権および B 号受益xxがそれぞれ「AAA」「A+」相当の信用力を有することを確認した。さらに、参照プールの債務者集中度が高いことから、格付の急激な変動を抑制するためのストレスシナリオ分析を行い、最終的な格付を決定した。
以下の前提のもとで、受益権譲渡日から 1 年後にすべての対象債務者の格付が当初より 3 ノッチ低下することを仮定とした感応度分析を行った。
(前提)
評価時点は受益権譲渡日から 1 年後の時点算定手法は上記と同じ手法
感応度分析の結果、設定劣後比率を前提とした A 号受益権の格付は「AA」となった。また、設定劣後比率を前提とした B 号受益xxの格付は「BBB+」となった。
(2) その他の論点
①スキーム関係者からの倒産隔離が図られているものと評価される。
②関係当事者の本件運営にかかる事務遂行能力に現時点で懸念すべき点はみられない。
以上より、本スキームに基づく A 号受益権の元本償還、予定配当支払いにかかるリスクは、信用補完措置および仕組み上の工夫によって、格付相当の水準に縮減されていると考えられ、A 号受益権の予備格付を「AAA」と評価した。また、B 号受益xxの予備格付を上記のとおり「A+」と評価した。
この予備格付は、A 号受益権および B 号受益xxについて、期日通りの予定配当・利息の支払いと信託期間満了予定日(延長後を含む)までの元本の全額償還・返済の確実性を評価したものである。
【補填債務履行事由】
未公表
【参照組織個別シェア 】
参照組織個別シェア | 比率(金額ベース) |
10%以上 20%未満 | 76.8% |
10%未満 | 23.2% |
【個別参照体所在国別内訳】
日本:100.0%
【個別参照体業種別内訳】
不動産:100.0%
【個別参照体格付別内訳 】
個別参照体別格付 | 比率(金額ベース) |
AA レンジ | 89.0% |
A レンジ | 11.0% |
(担当)xx xx・xx xx
■格付対象
【新規】
対象 | 発行額/実行額* | 劣後比率 | 信託期間満了予定日** | クーポン・タイプ | 予備格付 |
A 号受益権 | 254 億円 | 15.33% | 2024 年 6 月 25 日 | 固定 | AAA |
B 号受益権 | 未定 | - | 2024 年 6 月 25 日 | 固定 | A+ |
B 号信託 ABL | 未定 | - | 2024 年 6 月 25 日 | 固定 | A+ |
* 上記xx未定部分は 2021 年 6 月 25 日までに決定予定。B 号受益権および B 号信託 ABL の合計金額は 46 億円。
<発行の概要に関する情報>
信託設定日 | 2021 年 6 月 18 日 |
受益権譲渡日/ABL 実行日*** | 2021 年 6 月 25 日 |
償還方法 | 満期一括償還 |
流動性・信用補完措置 | A 号受益権:優先・劣後構造および補填手数料の前払い ※劣後比率:1 – A 号受益権÷当初ローン債権元本(補填対象元本額) B 号受益xx:補填手数料の前払い |
上記格付はバーゼルⅡに関連して金融庁が発表した『証券化取引における格付の公表要件』を満たしている。
** 本件における事実上の法定最終償還期日。但し、信託期間満了予定日において貸付人の受託者に対する還付金の引渡債務が存在する場合には、2024 年 6 月 25 日の 6 か月後の応当日。
*** 本件における事実上の発行日
<ストラクチャー、関係者に関する情報>
委託者 | xx証券株式会社 |
受託者・補填人 | 非公表 |
アレンジャー | xx証券株式会社 |
<裏付資産・参照ポートフォリオに関する情報>
裏付資産の概要 | 質権付定期預金 |
個別参照体平均格付 | AA- |
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2021 年 4 月 13 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:xx xx
xx格付アナリスト:xx xx
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準については、JCR のホームページ(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/)の「格付関連情報」に「信用格付の種類と記号の定義」(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法(格付方法)の概要は、JCR のホームページ(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/)の「格付関連情報」に、「シンセティック CDO」(2019 年 9 月 24 日)の信用格付の方法として掲載している。回収金口座や倒産隔離など他の付随的な論点についても上記のページで格付方法を開示している。
5. 格付関係者:
(オリジネーター等) xxx所在の大規模金融業(ビジネス上の理由により非公表:オリジネーター名が公表された場合、オリジネーターのレビュテーションへの影響等の不利益が生じる可能性があるため)
(アレンジャー) xx証券株式会社
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。JCR は、格付付与にあたって必要と判断する情報の提供を発行者、オ
リジネーターまたはアレンジャーから受けているが、その全ては開示されていない。本件信用格付は、資産証券化商品の信用リスクに関する意見であって、価格変動リスク、流動性リスクその他のリスクについて述べるものではない。また、提供を受けたデータの信頼性について、JCR が保証するものではない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。また、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
① 格付対象商品および裏付資産に関する、オリジネーター等およびアレンジャーから入手した証券化対象債権プールの明細データ、証券化関連契約書類
② 裏付資産に関する、中立的な機関から公表された中立性・信頼性の認められる公開情報
③ オリジネーター等に関する、当該者が対外公表を行っている情報
④ その他、オリジネーター等に関し、当該者から書面ないし面談にて入手した情報
なお、JCR は格付申込者等から格付のために提供を受ける情報の正確性に関する表明保証を受けている。
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、いずれかの格付関係者による表明保証もしくは対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. 資産証券化商品の情報開示にかかる働きかけ:
(1) 情報項目の整理と公表
JCR は、資産証券化商品の信用格付について、第三者が独立した立場で妥当性を検証できるよう、裏付資産の種類別に、第三者が当該信用格付の妥当性を評価するために重要と認められる情報の項目をあらかじめ整理してホームページ上で公表している。
(2) 情報開示にかかる働きかけの内容及びその結果の公表
JCR は、本資産証券化商品の格付関係者に対し、当該資産証券化商品に関する情報(上記の情報項目を含む。)の開示を働きかけた。
働きかけの結果、格付関係者が公表に同意した情報の項目について、JCR は、格付関係者の委任を受け、格付関係者に代わりここで当該情報を公表する(上記格付事由及び格付対象を参照)。なお、公表に対して同意を得られていない情報の項目については、上記格付事由および格付対象の箇所で未公表と表示している。
10. 資産証券化商品についての損失、キャッシュフローおよび感応度の分析:
格付事由参照。
11. 資産証券化商品の記号について:
本件信用格付の対象となる事項は資産証券化商品の信用状態に関する評価である。本件信用格付は裏付けとなる資産のキャッシュフローに着眼した枠組みで付与された資産証券化商品格付であって、A 号受益権および B 号受益xxの期日通りの予定配当・利息の支払いと信託期間満了予定日(延長後を含む)までの元本の全額償還・返済の確実性、に対するものであり、ゴーイングコンサーンとしての債務者の信用力を示す発行体格付とは異なる観点から付与されている。
12. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であって、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データを含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
予備格付:予備格付とは、格付対象の重要な発行条件が確定していない段階で予備的な評価として付与する格付です。発行条件が確定した場合には当該条件を確認し改めて格付を付与しますが、発行条件の内容等によっては、当該格付の水準は予備格付の水準と異なることがあります。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラスに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000