技術検証(PoC)契約書
技術検証(PoC)契約書
(新素材)
想定シーン
1. X 社(樹脂に添加することで放熱性能を金属並みに引き上げることができる新素材αを開発した大学発スタートアップ)は、秘密保持契約を締結後、Y 社(自動車部品メーカー)に対し、新素材αの技術情報(非公開の物性値、表面処理に関する情報)について、関連資料を開示するとともに説明を行った。
2. Y 社は、X 社に対し、新素材αを用いたヘッドライトカバーの開発を進めたい意向はあるものの、今期の予算が限られていること、来期の開発予算獲得のために社内の説明資料が必要であることから、まずは技術検証(以下「PoC」という。)を行いたいと伝えた。
3. X 社と Y 社は、協議の結果、以下のとおり PoC を進めることに合意した。
① Y 社は、X 社に対し、ヘッドライトカバーの使用環境に関するデータを開示する。
② X 社は、外部の第三者を用いて、ヘッドライトカバーの材料であるポリカーボネート樹脂に新素材αを添加して成形することにより試験片(サンプル)を作成し、試験片の性能および耐久性に関する簡易検査(ヘッドライトカバーの使用環境を模した環境での性能および耐久性試験)を行い、当該検査結果を契約締結から 3 週間以内に報告書にまとめる。なお、X 社は、Y 社に対して、新素材αを開示(サンプルを提供)しない。
③ Y 社は、X 社に対し、上記作業の対価として●万円を支払う。
④ Y 社は、上記報告書の受領後、2 ヶ月以内にX 社との共同研究開発に移行するかを決定する。
目次
前文 4
1 条(目的) 5
2 条(定義) 6
3 条(本検証) 7
4 条(委託料) 8
5 条(甲の義務) 9
6 条(共同研究開発契約の締結) 9
7 条(乙の義務) 10
8 条(秘密情報の取扱い) 11
9 条(本報告書等の知的財産権) 15
10 条(損害賠償) 18
11 条(差止め) 18
12 条(解除) 19
13 条(期間) 20
14 条(存続条項) 20
15 条(準拠法) 21
16 条(裁判管轄) 21
17 条(協議解決) 23
後文 23
その他の追加オプション条項 24
(別紙●●) 26
前文
X 社(以下「甲」という。)と Y 社(以下「乙」という。)は、甲乙による開発対象となるヘッドライトカバーに対して、甲の開発した放熱特性を有する新素材 αを導入・適用することの可否についての技術検証に関して、本契約を締結す
る。
<ポイント>
技術検証(PoC)契約は、本開発に移行するか否かを判断するために、スタートアップの保有している技術の開発可能性などを検証するための契約である。
本前文では、PoC の対象が、X 社の研究・開発した技術(新素材α)を後の共同研究開発での開発対象として想定される製品(ヘッドライトカバー)へ導入・適用することについての検証であることを明確にしている。
<解説>
PoC 契約を締結するに当たっては、両当事者が以下に挙げる点を十分に理解しておくことが重要である。
① PoC 契約が、将来的な共同研究開発契約の締結を目指したものであること
② 既に秘密保持契約を締結し、相互の情報を開示し合った上での検証段階であること
③ PoC においては、検証の目的を共有することが重要であり、未だ検証の目的が固まっていない場合は、まずその点を確定してから PoC 契約を締結すべきであること
【コラム】技術検証(PoC)契約の意義
PoC は、スタートアップにとって、その技術や製品を他社に採用してもらう可能性を検討するための重要なステップである。
かつては、本開発への移行をちらつかされながら、次から次へと無償でPoC を依頼され、にもかかわらず本開発に移行せず、PoC にかかる一切のコスト回収ができずに資金が尽きてしまうケース(いわゆる「PoC 貧乏」)が散見された。
また、PoC の過程で得られた知見について、相手方に対して譲渡するよう強要されたり、無断で特許出願されてしまうなどの紛争になるケースもある。
これらのことを未然に防止するための契約が PoC 契約であり、近年、オープンイ
ノベーションの進展に伴い注目される契約の一形式である。
【コラム】素材を提供する際の留意点
本想定シーンでは、スタートアップから事業会社に対して新素材αを提供するこ とが想定されておらず、技術検証もスタートアップ自身で行うが、一般論としては、新素材αを事業会社に提供した上で、事業会社が技術検証を行うこともありうる。その際には、素材移転に特化した契約である素材移転契約書(MTA:Material Transfer Agreement)を別途締結するか、あるいは、PoC 契約にその内容を追記すべきである。同契約書では、移転対象となる素材の特定、使用方法の指定、素材を提供すること(技術検証の実施を許諾すること)の対価のなどが定められる。
1 条(目的)
第 1 条 本契約は、以下に定める対象技術を対象製品に対して導入・適用するための共同研究開発を甲乙が行うことの可否を判断するために行う技術検証
(以下「本検証」という。)における、甲と乙の権利・義務関係を定めることを目的とするものである。
対象技術:甲が開発した放熱特性を有する新素材α
対象製品:自動車用ヘッドライトカバー
<ポイント>
秘密情報やスタートアップが提出する報告書は、本検証の遂行のために必要な範囲に利用が制限されるから(8 条、9 条)、本検証の定義が重要である。本モデル契約の目的を定める条項であるが、その中で、本検証を定義している(但し、具体的な内容は別紙●●で定める。2 条 1 号)。
PoC において情報の提供や報告書の提出をする側としては、想定外の利用を防ぐために、本検証の定義を限定的に定める必要がある。
<解説>
対象技術のみで本検証を特定した場合、提供した秘密情報や報告書が他の製品のために用いられることを制限できないため、本検証を対象製品とともに限定する必要がある。
本検証を、例えば、「・・・研究開発を行うことの可否を判断するために行う技術検証」とだけ記載した場合、事業会社が受領した秘密情報を、自社が独自で行う対象製品の開発の可否を判断するために用いることも契約上は「目的内」となるため、かかる行為を禁止することはできない。そのため、本条のように、「・・・共同研究開発をスタートアップと事業会社が行うことの可否を判断するため」などと規定するべきである。
事業に必須のコア技術が特許等により保護されていない限り、秘密保持契約および本モデル契約が自社の技術・ノウハウを保護する数少ない手段となる。
協業に向けた協議を開始する段階では、協業内容が明確でない場合も多いが、上記の点なども考慮し、目的をできるだけ具体的に定めることが必要である。
2 条(定義)
第 2 条 本契約において使用される次に掲げる用語は、各々次に定義する意味を有する。
① 本検証
第 1 条に定める甲の技術の導入・適用に関する検証をいい、具体的な内容は別紙●●に定める。
② 本報告書
甲が乙に提供する、本検証に関する報告書をいい、具体的な内容は別紙●●に定める。
③ 知的財産x
x的財産基本法 2 条 2 項に定める権利および外国におけるこれらに相当する権利をいう。
<ポイント>
本モデル契約で使用する用語の定義を定める条項である。
本検証および本報告書の具体的な内容については、別紙●●により特定することとした。
<解説>
「本報告書」は、本検証の成果物である本検証に関する報告書を意味する。
本モデル契約は「技術検証(PoC)契約」となっているが、その実質は別紙●●に
特定された本検証を行い、本報告書を作成することを業務とする業務委託契約
(準委任契約)である。従って、本検証および本報告書の内容を一定程度詳細に特定しておかないと、後々トラブル(いつまで経っても検証がまだ終わっていないとして追加作業や報告が発生するなど。)が生じる可能性がある。そのため、別紙●●において、検証の計画・スケジュールを含め、ある程度詳細な事項を特定することが望ましい。
本条では、「知的財産権」の定義として、知的財産基本法 2 条 2 項の定義をそのまま用いている。すなわち、知的財産権は「特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利または法律上保護される利益に係る権利」である。そして、「知的財産」には「営業秘密その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報」が含まれるから
(同法 2 条 1 項)、知的財産権にはこれらに係る権利(つまり、営業秘密およびノウハウを利用する権利)が含まれる。
しかし、PoC後に締結する共同研究開発契約においてこの定義を踏襲し、かつ、
「知的財産権」を事業会社に移転する旨の条項を設けた場合には、スタートアップのノウハウおよび営業秘密を利用する権利も事業会社に移転すると解釈されるおそれがある点には留意が必要である。この観点からは、「知的財産権」には
「営業秘密およびノウハウを利用する権利」は含まれないと整理しておくことも考えられる。
3 条(本検証)
第 3 x xは、甲に対し、本検証の実施を依頼し、xはこれを引き受ける。
2 甲は、本契約締結後 3 週間以内に、乙に本報告書を提供する。
3 本報告書提供後、xが甲に対して本報告書を確認した旨を通知した時または乙が甲に対してから書面で具体的な理由を明示した上で異議を述べることなく 1 週間が経過した時に、乙による本報告書の確認が完了する。本報告書の確認の完了をもって、xによる本検証にかかる義務の履行は完了する。
4 乙は、甲に対し、本報告書提出後 1 週間以内に前項の異議を述べた場合に限り、本報告書の修正を求めることができる。
5 前項に基づき、乙が本報告書の修正を請求した場合、xは、速やかに本報告
書を修正して再提出し、乙は、再提出された本報告書につき再度確認を行う。
再度の確認については、本条第 3 項および第 4 項を準用する。
<ポイント>
PoC をスタートアップ(X 社)が担当することおよびその報告書の提出に関して定めるものである。
本モデル契約で想定している検証(本検証)は、一定のサンプルを用いて、対象技術を導入・適用した開発の可否や妥当性の評価を行うことである。
よって、本モデル契約は、一定の成果物を完成させるもの(請負型)ではなく、検証のための業務の実施を目的としたもの(準委任型)である。
<解説>
本報告書の提供後、いつまでも本検証の追加作業を依頼されるという事態を防ぐため、報告書の確認(本検証の完了)に関する規定(3 項)を設けることがポイントとなる。
確認の期限は、本報告書の内容が別紙の項目を満たしているかを確認するためも必要となる合理的な期間を設定する。適切な期間は検証の内容によって異なるので一概にはいえないが、1 週間程度とすることが多い。
4 条(委託料)
第 4 条 本検証の委託料は●万円(税別)とし、本契約締結時から 10 営業日以
内に全額を、甲が指定する金融機関の口座に振込送金する方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。
<ポイント>
本検証の対価としての委託料の金額、支払時期および支払方法を定める条項である。
委託料については、固定金額とする他に、人月単位または工数単位に基づく算定方法のみ規定し、毎月の委託料を算定する方法とすること等が考えられる。
<解説>
委託料の支払方法としては、①一定の時期に一括して支払う方式、②着手時および本報告書提出時等に分割して支払う方式、③一定の業務時間に達するごとに当該業務時間分の対価を支払う方式等、様々な方式がある。
本モデル契約では、スタートアップである X 社の資金繰りも考慮し、①の方式を採用している。
5 条(甲の義務)
第 5 x xは、善良なる管理者の注意をもって本検証を遂行する義務を負う。ただし、前条の委託料の支払を受けるまでは、甲は本検証に着手する義務およびこれによる責めを負わない。
2 甲は、本検証に基づく何らかの成果の達成や特定の結果等を保証するもので
はない。
<ポイント>
本検証を実施する当事者(スタートアップ)の法的義務および検証の結果に対する非保証を定めた条項である。
本モデル契約の法的性質は準委任契約であることから、スタートアップが善管注意義務を負うことを確認している。
検証段階という性質に鑑み、特定の結果等を保証するものではないことも明確にしている。PoC は、ある技術について(後の本格的な取り組みにおいて)所望の結果が得られることを期待できるか、という点についての簡易かつ暫定的な検証作業であり、これについていちいち成果保証をすると精度よりもスピードが求められる PoC の趣旨に反すること、現有技術では所望の結果を得ることが期待できないという検証結果も、PoC の結論としては十分に意義があることなどから、このような仕切りにしている。
6 条(共同研究開発契約の締結)
第 6 条 甲および乙は、本検証から共同研究開発段階への移行および共同研究開発契約の締結に向けて最大限努力し、乙は、本契約第 3 条第 3 項に定める
本報告書の確認が完了した日から 2 ヶ月以内に、甲に対して共同研究開発契
約を締結するか否かを通知する。
<ポイント>
共同研究開発契約への移行についての規定である。
<解説>
PoCは、共同研究開発契約移行のための実証段階という性質を有していることから、当事者に共同研究開発契約締結の努力義務を課している。本条では努力義務について、「最大限努力し」と定めているが、これは、合理的に取り得る手段を最大限講じるという意味であり、当然のことながら、自社の利益に反する対応までを求めるものではない。
また、PoC後に次のステップに進むかどうか未確定なままで時間が経過することを避けるため、事業会社に対し一定期間内に共同研究開発契約を締結するか否かの通知義務を課している。
共同研究開発契約の締結を促すとともに、本モデル契約の委託料が共同研究開発段階に至らずPoC段階で終了する場合の対価であることをより明確化する観点から、以下のような規定とすることも考えられる。
【変更オプション条項:共同研究開発契約を締結しない場合の追加委託料】
甲および乙が、本契約第 3 条第 3 項に定める本報告書の確認が完了した日から
4 ヶ月以内に、共同研究開発契約を締結しなかった場合は、乙は、甲に対し、
本検証の追加の委託料として、本報告書確認完了から 5 ヶ月以内に●万円(税別)支払う。
<解説>
事業会社としては、PoC段階があくまで共同研究開発段階の前提であるため、委託料を低額に抑えるという判断になることも多い。
PoC を受託するスタートアップとしては、共同研究開発に進めるのであれば、PoC段階では低額な委託料に甘んじるという方針もあり得る。
そこで、これらの思惑の調整規定として、本条は、共同研究開発契約が締結されなかった場合は、事業会社が PoC 費用の追加分の支払う旨を規定している。
PoC段階後、共同研究開発段階に進まないことも少なくないから、契約交渉においては、本条と委託料を関連付けて交渉することが望ましい。
7 条(乙の義務)
第 7 条 乙は、甲に対し、本検証に合理的に必要な資料、データ、機器、設備等
の提供、開示、貸与その他本検証に必要な協力(以下「提供等」という。)を
行う。
<ポイント>
本検証に際して、事業会社(Y 社)による資料等の提供その他の協力義務および提供された資料等に起因する責任について取り決めた規定(追加オプションの 2
項および 3 項)である。
<解説>
本検証において、事業会社(Y 社)がスタートアップ(X 社)に対して提供する資料等が重要な位置づけとなる場合には、以下のとおり、当該資料等の開示権限の有無・適法性について事業会社の表明保証を定めたり、当該資料等の内容に誤りがあったり、提供等が遅延したために、本検証の遅延や本報告書に瑕疵等が生じた場合にスタートアップが責任を負わない旨を定めることも考えられる。
【追加オプション条項:乙提供資料等についての責任】
2 乙は、甲に対し、前項に定める資料、データ、機器、設備等を甲に提供等することについて、正当な権限があることおよびかかる提供等が法令に違反するものではないことを保証する。
3 乙が甲に対し提供等を行った資料もしくはデータの内容に誤りがあった場合またはかかる提供等を遅延した場合、これにより生じた本検証の遅延、本報告書の瑕疵(法律上の契約不適合を含む。)等の結果について、xは責任を負
わない。
8 条(秘密情報の取扱い)
第 8 条 甲および乙は、本検証の遂行のために、書面、口頭、電磁的記録媒体その他開示の方法および媒体を問わず、また、本契約の締結前後にかかわらず、一方当事者(以下「開示者」という。)が相手方(以下「受領者」という。)に対して開示した一切のデータその他の情報、素材および機器その他の有体物ならびに本検証によって得られた情報(本報告書に記載された情報を含む。)
(別紙●●に列挙のものを含む。以下「秘密情報」という。)を秘密として保持し、開示者の事前の書面または電磁的記録(以下「書面等」という。)によ
る承諾を得ずに、第三者に開示または漏えいしてはならない。
2 前項の定めにかかわらず、次の各号のいずれか一つに該当する情報については、秘密情報に該当しない。
① 開示を受けたときに既に保有していた情報
② 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
③ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得しまたは創出した情報
④ 開示を受けたときに既に公知であった情報
⑤ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報
3 受領者は、秘密情報を、開示者の事前の書面等による承諾を得ずに、本検証の遂行以外の目的で使用、複製および改変してはならず、本検証の遂行に合理的に必要となる範囲でのみ、使用、複製および改変できる。
4 受領者は、秘密情報等について、開示者の事前の書面等による承諾を得ずに、秘密情報の組成または構造の分析・解析その他類似の行為を行ってはならない。
5 受領者は、秘密情報を、本検証の遂行のために知る必要のある自己の役員および従業員(以下「役員等」という。)に限り開示するものとし、この場合、本条に基づき受領者が負担する義務と同等の義務を、開示を受けた役員等に退職後も含め課す。
6 前各項の定めにかかわらず、受領者は、次の各号に定める場合、秘密情報を開示することができる。(ただし、1 号または 2 号に該当する場合には可能な限り事前に開示者に通知する。)また、受領者は、かかる開示を行った場合には、その旨を遅滞なく開示者に対して通知する。。
① 法令の定めに基づき開示すべき場合
② 裁判所の命令、監督官公庁またはその他法令・規則の定めに基づく開示の要求がある場合
③ 受領者が、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、司法書士等、秘密保持義務を法律上負担する者に相談する必要がある場合
7 本条第 1 項および同条第 3 項ないし第 5 項の定めにかかわらず、甲および乙は、相手方の事前の承諾なく、以下の事実を第三者に公表することができる。
甲乙間で、本検証が開始された事実
8 受領者は、本契約の有効期間中であるか終了後であるかを問わず、開示者からの書面等による請求があった場合、開示者の指示に従い、自らの選択および費用負担により、受領者または受領者から開示を受けた第三者が保持する秘密情報(その複製物および改変物を含む。)を速やかに破棄または返還する。
9 受領者は、開示者が秘密情報の廃棄を要請した場合には、速やかに秘密情報が化体した媒体を廃棄し、開示者の指示に従い、当該廃棄にかかる受領者の義務が履行されたことを証明する書面等を提出する。
10 受領者は、本契約に別段の定めがある場合を除き、秘密情報の開示により、開示者の知的財産権が譲渡、移転または利用許諾されるものでないことを確認する。
11 本条は、本条の主題に関する両当事者間の合意の完全なる唯一の表明であり、本条の主題に関する両当事者間の書面等または口頭による提案およびその他の連絡事項の全てに取って代わる。
12 甲乙は、甲乙間の●年●月●日付秘密保持契約書における秘密情報を、本条においても秘密情報として取り扱うことに合意する。
13 本条の規定は、本契約の終了後もなお 5 年間有効に存続する。
<ポイント>
相手から提供を受けた秘密情報の管理方法に関する条項である。
<解説>
秘密情報の定義
秘密情報の定義については、当事者間でやりとりされる情報を包括的に対象とする場合と、個別に秘密である旨の特定を要求する場合がある。簡易迅速に行うことが多いPoC段階において、秘密である旨の特定を忘れることによるリスクを避けるため、本条では前者を採用した。
他方で、秘密情報を「一切の情報」と包括的に定義すると、範囲が広過ぎるとして有効性が争われ、逆に保護の範囲が狭まってしまう(秘密情報とは保護に値する情報を意味すると限定解釈される。)リスクが発生する。このリスクを排除するためには、「秘密を指定」する条文を採用すればよい。
なお、「秘密を指定」する条文オプションとその背景となる秘密情報の範囲に関する考え方については、「秘密保持契約」のモデル契約書に詳細に解説しているた
め、そちらを参考にされたい。 秘密保持契約書(新素材)
URL : xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxxx/xxxx-xxxxxxxxxx- portal/index.html
【コラム】秘密情報管理の詳細については以下も参照されたい。 秘密情報の保護ハンドブックのてびき
xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxx/xxxxxxx/xxx/000000_xx tebiki.pdf
秘密情報の保護ハンドブック
xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxx/xxxxxxx/xxx/xxxxxxxx/xxxx.xxx
知財を使った企業連携 4 つのポイント
xxxxx://xxxxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxx.xxx
技術検証が開始された事実の公表
スタートアップにとって重要な条項となるのが本条第 7 項である。スタートアップにとって、自社技術が事業会社への導入の技術検証のフェーズまで進んだとの事実は、投資家やユーザーに対する効果的なPR 材料になる場合が多く、かかる事実の公表を望むケースが多い。
しかし、本条 7 項のような規定がない場合、秘密情報の定義の内容によっては、かかる事実の第三者への公表が守秘義務違反となるか否かが曖昧となり、その結果スタートアップが公表に踏み切れないケースや、事業会社に事前に許可を求めたものの社内決裁等に時間を要したため発表すべきタイミングに発表できないケースが散見される。
そこで、本モデル契約では、本検証が開始された事実は公表しても問題ないと双方が合意したと想定し、当該公表を積極的に認める規定を設け、かかる弊害を回避している。
秘密保持契約と PoC 契約内の秘密保持条項の関係
秘密保持契約に引き続いて PoC 契約を締結する場合、秘密保持契約と PoC 契
約内の秘密保持条項の関係が問題となる。
PoC 契約では秘密保持条項を設けず秘密保持契約が引き続き適用されるとする場合もあるが、本モデル契約では、本 PoC 契約内の秘密保持条項が、すでに締結されている秘密保持契約を上書きすることを 11 項で明記している。
もっとも、秘密情報の定義が1 項(「本検証の遂行のために・・・開示した・・・情報」)のみの場合、秘密保持契約で秘密情報と定義されていた情報の中には必ずしも本モデル契約における秘密情報に含まれない(こぼれ落ちてしまうものがある)と解釈される可能性も否定できない。そこで、秘密保持契約で秘密情報と定義されていた情報は本モデル契約においても引き続き秘密情報として取り扱う(受領者は秘密保持義務等を負う)ことを 12 項で明記している。
すでに締結した秘密保持契約の内容を PoC 契約で上書きすることで齟齬が生じないか、十分に注意して規定する必要がある。
新たな秘密保持条項の必要性
PoC 段階など、相手方から提供を受けた秘密情報と並んで、検証結果などの成果物情報が存在する場合、これらの成果物情報(いわゆるフォアグラウンド情報)も秘密保持の対象とする必要がある。すでに秘密保持契約を締結している場合も多いと思われるが、秘密保持契約では秘密情報の定義上、フォアグラウンド情報が含まれるかどうかが曖昧なケースが多いため、別途PoC 契約で秘密保持契約条項を設ける必要がある。
PoC 契約で新たに秘密保持条項を設ける場合、秘密保持契約を全て上書きする場合(上記の条項案の例)と、秘密保持契約の条項を活かしつつ、追加で必要な条項のみ追加する場合がありうる。PoC 契約締結までの契約交渉を簡便にするという観点からは、後者の方法に依ることも考えられる。
9 条(本報告書等の知的財産権)
第 9 条 本報告書および本検証の遂行に伴い生じた知的財産権は、乙または第三者が従前から保有しているものを除き、甲に帰属する。
2 甲は、乙に対し、乙が本検証の遂行のために必要な範囲に限って、乙自身が
本報告書を使用、複製および改変することを許諾するものとし、著作者人格権を行使しない。
<ポイント>
本報告書の著作権その他の知的財産権の取扱いおよび利用条件について取り決めている。
<解説>
本報告書および本検証の遂行に伴い生じた知的財産権の帰属
本報告書や、その他本検証の過程で生じる知的財産権の取扱いについては争いが生じることがあるので、契約において規定しておくことが重要である。
本モデル契約では、本検証の作業主体が、新素材αの開発者であるスタートアップ(X 社)であることを前提として、知的財産権はすべてスタートアップに帰属することと規定している。
スタートアップに帰属する知的財産権の出願は、秘密保持義務等他の条項に抵触しない限りにおいてスタートアップが自由に行うことができるが、事業会社が従前から保有していた知的財産権(バックグラウンドIP)との関係で紛争が起こることがある。これを回避するため、以下の【追加オプション:出願の事前通知】に記載するように、スタートアップに対して、出願前に事業会社への通知義務を課すことも考えられる。
なお、本報告書の利用が第三者の知的財産権を侵害しないことの保証を求められる場合もあるが、PoC 段階では、完成させるべき成果物が定まっていないことから、第三者の知的財産権の侵害の有無を判断する前提となる事実関係が固まっていないため、侵害の有無の確認が困難となりうること等を踏まえ、本モデル契約では保証条項は設けないこととした。
技術検証段階におけるスタートアップと事業会社の関係性
事業会社(Y社)としては、委託料を払っている以上、本報告書を含むすべての知的財産権は事業会社に帰属すべきと考えるかもしれない。
しかしながら、本モデル契約における委託料は、専ら、スタートアップ(X社)の検証作業に対する対価であるから、これにより発生した知的財産権の譲渡を事業会社が受けるためには、別途それに見合った対価を支払う必要がある。事業会社が当該知的財産権をスタートアップから買い取りたい場合またはスタートアップ
が当該知的財産権を事業会社に売却したい場合は、双方で別途対価について協議することになる。
知的財産権をスタートアップおよび事業会社の共有とする場合であっても、第三者への利用許諾を含め、スタートアップが独立して知的財産権を行使すること
(サブライセンスフリー)に事前同意する旨を定めることは不可欠である。
事業会社は、オープンイノベーションを通じて自社の事業を加速させるという観点から、スタートアップとの間で適切な知的財産権の分配を行うというスタンスの重要性を意識した上で、PoC 段階において最も重要なのは共同研究開発の実現に向けた報告書の内容であり、その知的財産権の帰属ではないことを認識されたい。
【追加オプション条項:出願の事前通知】
甲は、本条第 1 項の知的財産権のうち、特許権、実用新案権、回路配置利用権、
意匠権および商標権について出願をしようとするときは、予め乙にその概要を書面等で通知する。
<解説>
本条第1 項の知的財産権(本報告書および本検証の遂行に伴い生じた知的財産権)がスタートアップに単独に帰属する場合であっても、スタートアップは守秘義務を負っているから、当然のことながら、事業会社の秘密情報を含めた形で特許出願をしてはならない。
とはいえ、スタートアップによる特許出願に伴い、本検証を通じてスタートアップが得た事業会社の秘密情報が対外的に開示されてしまうリスクがあることは否定できないため、事業会社としては、本条のような事前通知を要望することが多い。
【追加オプション条項:フィードバック規定】
本検証の遂行の過程で、乙が甲に対し、本検証に関して何らかの提案や助言を
行った場合、xはそれを無償で、甲の今後の製品の改善のために利用することができる。
<解説>
本検証において、事業会社からスタートアップに対し提案や助言(フィードバック)が行われることも多いが、フィードバックの権利性で後にトラブルが発生するリス
クを避けるため、上記のような規定を設けることも考えられる。
10 条(損害賠償)
第 10 条 甲および乙は、本契約に違反して相手方に損害(合理的な範囲の弁護士費用を含む。)を与えたときは、相手方に対して当該損害を賠償する責任を負う。
2 前項の損害賠償の総額は、故意または重大な過失に基づくものである場合を
除き、本契約の委託料を限度とする。
<ポイント>
契約違反が生じた場合の損害賠償責任に関する条項である。
<解説>
損害賠償責任の範囲・金額・請求期間についてどのように定めるかについては、本検証の内容やコストの負担、委託料の額等を考慮してスタートアップ・事業会社の合意により決められるケースもあるが、本条案では具体的な損害賠償額は定めず、以下のとおり総額の上限のみ定めた。
本モデル契約では、損害賠償の範囲について、何を請求原因とするのかにかかわらず、損害賠償額の上限は委託料を限度とすることを定めている。
但し、故意・重過失の場合には、上限規定は適用されないものとしている。損害発生の原因が故意による場合には、免責・責任制限に関する条項は無効になると解釈されるおそれがあり、故意に準ずる重過失の場合(例えば、重大な情報の漏えい等。)にも同様に無効とするのが有力な考え方であることから、このような規定を設けた。
11 条(差止め)
第 11 条 甲および乙は、相手方が、本契約に違反しまたは違反するおそれがあ
る場合には、相手方に対し、その差止め、損害の予防および信用回復措置を請求することができる。
<ポイント>
契約違反が生じた場合の違反行為の差止め等に関する条項である。
<解説>
本モデル契約は、損害立証が困難な秘密情報を取り扱うものであり、かつ、収益性が不明確な研究・開発段階の契約であることから、違反行為による損害の発生を事前に予防、あるいは損害が発生しつつある場合にはそれを最小限に留めることに越したことはない。
そこで本条では、損害賠償以外にも違反行為の差止め、損害の予防、信用回復措置を請求することができるとした。状況によっては、特定の行為の差止めを求める仮処分を申し立てることも考えられよう。
12 条(解除)
第 12 条 甲または乙は、相手方に次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合には、何らの催告なしに直ちに本契約の全部または一部を解除することができる。
① 本契約の条項について重大な違反を犯した場合
② 支払いの停止があった場合または競売、破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始の申立てがあった場合
③ 手形交換所の取引停止処分を受けた場合
④ その他前各号に準ずるような本契約を継続し難い重大な事由が発生した場合
2 甲または乙は、相手方が本契約のいずれかの条項に違反し、相当期間を定め
てなした催告後も、相手方の債務不履行が是正されない場合は、本契約の全部または一部を解除することができる。
<ポイント>
契約解除に関する一般的規定である。
<解説>
【解除事由としての COC 条項の例】
⑤ 合併、株式交換、株式移転、会社分割、事業譲渡または株主が全議決権の●
分の 1 を超えて変動した場合など、支配権に実質的な変動があった場合
スタートアップとしては、上記のようないわゆるチェンジオブコントロール条項
(COC 条項)により、M&Aが本モデル契約の解除事由として定められると、M&
Aに先立つデューデリジェンスにおいてリスクとして評価されうる。
かかる条項が解除事由に含まれている場合は、これらの支障を説明した上で削除を求めることも検討を要する。
事業会社より、スタートアップが競合企業に吸収合併等されて秘密情報が競合にわたってしまうことを懸念してCOC条項の導入が求められる場合も考えられる。その場合には、当該懸念を解消するべく、解除事由となる支配権の移転先を競合会社(具体的に会社名を列挙することも考えられる。)に限定した上でCOC条項を導入することも考えられる。
13 条(期間)
第 13 条 本契約の有効期間は、本契約締結日から第 3 条第 3 項に定める確認が
完了する日までとする。
<ポイント>
契約の有効期間を定めた一般的条項である。
<解説>
本モデル契約では、有効期間を本報告書の確認の完了(3 条 3 項)までとしている。3 条 3 項は「乙が甲に対して具体的な理由を明示した上で異議を述べることなく 1 週間が経過した」場合には本報告書の確認が完了すると定めており、事業会社(乙)が報告書を確認せず塩漬けにする(その結果、技術検証契約が続く。)という事態を回避している。
14 条(存続条項)
第 14 条 本契約が期間満了または解除により終了した場合であっても本契約第 5 条(甲の義務)第 2 項、第 6 条(共同研究開発契約の締結)、第 7 条(乙が
甲に提供する資料等)第 2 項および第 3 項、第 9 条(本報告書等の知的財産
権)から第 11 条(差止め)、本条から第 17 条(協議解決)の定めは有効に存続する。
<ポイント>
契約終了後も効力が存続すべき条項に関する一般的規定である。
第 8 条(秘密情報の取扱い)については、本条では定めていないが、第 8 条 13
項で「本契約の終了後もなお 5 年間有効に存続する」旨を定めている。
15 条(準拠法)
第 15 条 本契約に関する紛争については、日本国法を準拠法とする。
<ポイント>
クロスボーダーの取引も想定し、準拠法を定めるものである。
16 条(裁判管轄)
第 16 条 本契約に関する紛争については、●地方裁判所を第xxの専属的合意
管轄裁判所とする。
<ポイント>
紛争解決手段に関して、裁判手続きで解決することを前提に、その際の裁判管轄を定める条項である。
<解説>
紛争解決手段については、上記のように裁判手続きを前提に裁判管轄を定める他、下記変更オプションのように調停や仲裁によるとする場合がある。
【変更オプション条項 1:知財調停】
第 16 条 本契約に関する知的財産権についての紛争については、まず[東京・大阪]地方裁判所における知財調停の申立てをしなければならない。
2 前項に定める知財調停が不成立となった場合、前項に定める地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
3 第 1 項に定める紛争を除く本契約に関する紛争(裁判所の知財調停手続きを
含む。)については、日本国法を準拠法とし、第 1 項に定める地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
<ポイント>
紛争解決手続きとしてまずは知財調を申し立てることを定める条項である。
<解説>
話し合いによる紛争解決を目指す場合、東京地方裁判所および大阪地方裁判所
において創設された知財調停を利用することが考えられる。
「知財調停」は、ビジネスの過程で生じた知的財産権をめぐる紛争を取り扱う制度であり、仲裁手続き同様、非公開・迅速などのメリットがあるだけでなく、専門的知見を有する調停委員会の助言や見解に基づく解決を行うことができ、当事者間の交渉の進展・円滑化を図ることができるというメリットがある。
運用面では、原則として、3 回程度の期日内で調停委員会の見解を口頭で開示することにより、迅速な紛争解決の実現を目指すとされており、迅速に解決でき、コストや負担を軽減できる可能性がある。
知財調停を利用するためには、東京地方裁判所または大阪地方裁判所いずれかを、合意により調停事件の管轄裁判所とする必要がある。
知財調停は、当事者双方が話合いによる解決を図る制度であるため、当事者が合意できず調停不成立となった場合は、裁判等により別途紛争解決が図られることとなる。
また、仲裁手続きは、裁判と比べて非公開・迅速などのメリットもあることから、スタートアップのような事案では、本条に変えて下記のような仲裁条項に変えるという選択肢もある。
【変更オプション条項 2:仲裁】
第 16 条 本契約に関する一切の紛争については、(仲裁機関名)の仲裁規則に
従って、(都市名)において仲裁により終局的に解決されるものとする。
<ポイント>
紛争解決手続きとして仲裁を指定する条項である。
<解説>
仲裁手続きは、裁判と比べて非公開・迅速などのメリットがあり、さらに、調停と異なり終局的な判断を得ることができることから、紛争解決手段として、仲裁を選択することも考えられる。もっとも、迅速な手続きであることの反面として、仲裁は裁判のように上訴ができない(一発勝負である)点には留意が必要である。
本条では、仲裁地、仲裁手続きが準拠する規則を定めている。この他、仲裁人の人数やその決め方等について定めることも考えられる。
17 条(協議解決)
第 17 条 本契約に定めのない事項または疑義が生じた事項については、協議の
上解決する。
<ポイント>
紛争発生時の一般的な協議解決の条項である。
後文
本契約の成立を証するため、本書 2 通を作成し、甲乙記名押印の上、各自 1 通を保有する。但し、本契約を電子契約により締結する場合には、本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙が合意の後電子署名を施し、各自
その電磁的記録を保管する。
<ポイント>
契約書の作成通数(原本の数)や調印方法について定める条項である。電子契約により締結する場合を但書で定めている。
年 月 日
甲乙
その他の追加オプション条項
【追加オプション条項:再委託】
第●x xは、乙が書面等によって事前に承認した場合、本検証の一部を第三者
(以下「委託先」という。)に再委託することができる。なお、乙が上記の承諾を拒否するには、合理的な理由を要する。
2 前項の定めに従い委託先に本検証の遂行を委託するこの場合、甲は、本契約における自己の義務と同等の義務を、当該委託先に課す。
3 甲は、委託先による業務の遂行について、乙に帰責事由がある場合を除き、自ら業務を遂行した場合と同様の責任を負う。ただし、乙の指定した委託先による業務の遂行については、甲に故意または重過失がある場合を除き、責任を
負わない。
<ポイント>
本検証の遂行に際しての再委託の可否および再委託が行われた場合のスタートアップの責任内容について定める条項である。
<解説>
再委託の可否については、再委託について委託者の事前承諾を要するxxxxと再委託先の選定について原則として受託者の裁量により行えるパターンが考えられる。
技術の導入検証では、受託者(スタートアップ)の技術力に着目して契約が締結されることや、委託者(事業会社)が提供する資料等の取扱いについて委託者のコントロールを及ぼすという観点から、本モデル契約においては委託者の同意を取得することとしている。
【追加オプション条項:契約内容の変更】
第●条 甲および乙は、本検証の遂行の過程で検証事項が想定外に拡大した等の事情により、検証期間、委託料その他の契約条件の変更が必要となった場合、書面等でその旨を相手方に通知し、協議を申し出る。当該申し出があった場合、甲および乙は、速やかに契約条件の変更の要否および変更する場合の内容について協議する。
2 前項の協議に基づき、本契約の内容の全部または一部を変更する場合、甲お
よび乙は、当該変更内容が記載された変更契約を締結する。
<ポイント>
契約の内容を変更すべき事情が生じた場合における、契約変更の手続について定めた規定である。
【追加オプション条項:権利義務の譲渡禁止】
第●条 甲および乙は、相手方の事前の書面等による承諾を得ずに、本契約上の
地位を第三者に承継させまたは本契約から生じる権利義務の全部もしくは一部を第三者に譲渡し、引き受けさせもしくは担保に供してはならない。
<ポイント>
権利義務等について、承諾なく譲渡できないとする一般的規定である。
【追加オプション条項:遅延損害金】
第●条 甲および乙が、本契約に基づく金銭の支払を遅滞したときは、当該当事者は、支払を遅滞した金額につき当該支払期限の日の翌日から支払済に至るまでの期間につき年率 14.6%の割合で計算される遅延損害金を支払わなけれ
ばならない。
<ポイント>
遅延損害金についての一般的な条項である。
(別紙●●)
本検証(第 2 条 1 項)
本検証のプロセスは概ね以下のとおりとする。なお、本別紙と本モデル契約本文が矛盾抵触する場合、本別紙が優先する。
1. 乙は、甲に対して、本検証の対象となる製品(ヘッドライトカバー)に関する図面、仕様に関する情報、本検証において期待される放熱性能を含めた目標スペック、その他本検証を甲が進めるにあたり必要となる情報を提供する。
2. 甲は、乙から提供された情報を基に、本検証にかかる詳細計画を提示する。詳細計画は以下を含む。-※
新素材αを添加したヘッドライトカバーの材料を成形して製造される試験片の形状・寸法などの詳細
試験片に対して行われる試験項目(放熱特性の他、機械的強度や疲労特性などを含む。)
その他、乙により特に要望された事項が存する場合、当該事項
3. xは、詳細計画に沿って本検証を行い、乙に対して本報告書を納品す る。乙は本報告書を速やかに確認し、その後、以下の事項を含む通知を相当な期間内に行う。
(a) 共同研究開発を締結するか否かの結論
(評価結果が当初想定されたレベルの場合、原則として共同研究開発フェーズへと移行する。)
(b) 共同研究開発に移行しない場合はその理由
(改善すべき特性の指摘など、具体的な事柄を明記すること。)
(c) 放熱特性を含む以下の項目に関する生データを含めた乙の評価結果
※ 秘密保持契約段階で②まで終了している場合は、詳細計画を別紙として添付する。