Contract
財産法の基礎2 第9回 消費貸借ほか無償契約・講義資料
01 書面による贈与は、要式契約である。しかし、書面によらない贈与を撤回可能としたのは、権利関係を明 確にして後日の紛争を防ぐとともに、贈与者に熟慮をさせ、軽率に贈与することを防止する趣旨であるから、 550条に言う書面は、贈与者の権利移転の意思が明確に示されていれば足りる。[超基本]
02 書面にしなかった贈与については、いずれの当事者も、申込みもしくは承諾の意思表示を原則としていつでも撤回できる。[超基本]
03 AがBに甲地と乙地を贈与する旨の口頭の合意が成立し、AがBに甲地の引渡しと所有権移転登記をした後、Aが贈与の撤回をBに通知した場合でも、Bは、Aに対して、乙地の引渡しと所有権移転登記を請求できる。[やや難]
04 贈与契約が意思表示の瑕疵もなく有効である場合、贈与者が引き渡した目的物を取り戻す余地はない。
05 贈与者は、自らに帰属する権利をあるがままで移転する債務を負うにすぎないから、単純な贈与契約の場合、原則として、目的物の権利や物の瑕疵について責任を負わないが、瑕疵を知りながら黙って贈与した者は、これによって瑕疵を知らなかった受贈者が被った損害を賠償しなければならない。[超基本]
06 負担付贈与契約では、負担の履行先が贈与者本人である場合も第三者である場合もある。負担付贈与契約においても、目的物の瑕疵を知らなかった贈与者は、担保責任を負わない。
07 死因贈与は、遺言で行われる遺贈とは異なって要式行為ではないが、遺贈と同様に異なるところはなく、贈与者の死亡によって効力を発生するほか、書面で行った死因贈与であっても、遺言と同様の方式により撤回できる。
08 消費貸借契約では、借主が利用しているのは、自己の物であって、他人の物ではない。[超基本]
09 民法の定める消費貸借は、利息を払う特約があっても、片務の要物契約であるから、貸主は借主に対して、合意された金銭を貸す義務を負わない。また、元本となる金銭の交付が行われる前にその契約から生じる貸 金債権を被担保債権として抵当権の設定登記がされても、この登記は無効であり、抵当権の実行に対して、 元本を交付されていなかった債務者は、執行異議によって争うことができる。
10 民法の定める消費貸借契約は要物契約であるから、債務者の目的物受領がない限り成立しない。たとえば、 YがAに対する債務の弁済に充てる目的でXから融資を受ける場合、Yの依頼で、XがAに対して、直接融資金を交付したとしても、XY間に消費貸借契約は成立しない。
11 利息付の消費貸借については、消費貸借契約の予約や諾成的消費貸借契約の成立を認める有力な考え方があり、判例もそれを肯定しているが、無利息消費貸借契約についてまで、予約や諾成的消費貸借契約の成立を認める考え方はない。[やや難]
12 判例の見解によれば、金銭消費貸借契約の予約に基づいて発生する借主の権利は、金銭債権であるから、借主は、この権利を第三者に譲渡したり、貸主に対する別口の債権と相殺することができる。[やや難]
13 諾成的消費貸借契約の成立を肯定する考え方は、予約の失効に関する589条の類推適用を認めない。
14 返還時期を定めずに金銭の消費貸借がされた場合において、貸主は直ちに返還の請求ができ、412条3項により、借主は返還請求を受けた時から遅滞に陥り、遅延利息を支払わなければならない。これに対して、借主は、いつでも借入金を返還することができ、利息を支払う特約があっても、返還時以降の利息を払う義務は生じない。[超基本]
15 返還時期を定めて金銭の消費貸借がされた場合において、貸主は、借主が期限の利益を失わない限り、返還を請求できない。これに対して、借主は、この場合でもいつでも借入金を返還することができ、利息を支払う特約があっても、返還時までの利息を付ければ足りる。
16 物の消費貸借契約において、YがXに交付した目的物に隠れた瑕疵があった場合には、Yが瑕疵の存在を知らなかったとしても、XはYに瑕疵のない物の交付を請求できる。[超基本]
17 準消費貸借は、消費貸借の要物性を緩和する諾成契約であり、複数の債権をまとめて債権管理を容易にす
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2011/10/28
財産法の基礎2 第9回 消費貸借ほか無償契約・講義資料
るために用いられることが多い。準消費貸借の前提とされていた旧債務が実際には存在しなかったとしても、準消費貸借契約は有効である。
18 準消費貸借では、旧債務についての抗弁が存続するか否かは、契約当事者の意思次第である。
19 印刷用紙が急に足りなくなって困っている友人に、君が無料で用紙を提供する場合、君と友人の間の法律関係は、返してもらわなくてよい趣旨で用紙を交付していれば、贈与契約であるが、返して欲しい旨であれば、使用貸借契約である。[超基本]
20 使用貸借契約は、無償の要物契約であり、貸主は、借主に対して目的物を交付する義務を負わないが、目的物を借主の使用目的に適した状態にする義務は負担する。[超基本]
21 使用貸借契約の多くは、親族間などにおける人的な信頼関係に基づいて結ばれるため、明確な合意がない場合が少なくない。たとえば、共同相続人の1人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきた場合、被相続人が死亡した後も、遺産分割によって建物の所有が確定するまでは、引き続き借主に無償使用をさせる旨の合意があったものと推認される可能性がある。[やや難]
22 使用貸借契約の目的物に隠れた瑕疵があったとしても、貸主は、借主に対して担保責任を負わない。[超基本]
23 XがYから頼まれ、1週間後の返却と定めて、講義ノートをYに好意で貸した。この場合において、Yが Xに無断でそのノートをZに貸してZが所持しているときには、XはZから即時にノートの返還を求めることができる。YがZから返却されてノートを所持しているときには、1週間経たないうちであっても、Xは Yにノートの返還を求めることができる。
24 使用貸借契約において、目的物の保存に要する費用は借主が負担しなければならない。これに対して、目的物の改良に要する費用は、貸主が負担しなければならないから、借主が目的物の改良を行った場合には、貸主は、借主の投下した費用と目的物の増価額のいずれかを選択して(通常は低い方になる)借主に償還しなければならない。借主は、必ずしもこの償還が行われるまで目的物を留置できるとは限らない。
25 駐車場としての使用を目的とした土地の使用貸借契約において、借主Yが無断で使用目的に反して廃棄物を置き始めたため、貸主Xは、契約を解除して土地の返還を受けた。さらにXは、Yに対して、土地の表面土の入れ替えについて要した費用相当額の損害賠償を、債務不履行を理由として請求しようと考えている。この損害賠償請求権は、土地の返還を受けた時から10年間存続する。[超基本]
26 使用貸借契約は、当事者間の人的な信頼関係に基づくものであるから、特段の合意がなければ、貸主・借主のいずれかが死亡すれば、終了する。[超基本]
27 Xは、資材置き場としてYからY所有の土地を無償で借り受ける旨の合意をしたが、土地の引渡しを受ける前に、無権限のZがその土地の通路部分に物を置いたため、資材を搬入できそうにない。この場合、Xが Zに対して、妨害の排除を求めることはできない。
28 Xは、資材置き場としてYからY所有の土地を無償で借り受ける旨の合意をし、土地の引渡しを受けたが、 Yが死亡してYを相続したAが、XY間の合意の存在を知らず、その土地をZに売却してZに移転登記をしてしまった。Xは、原則として、Zにその土地の使用の継続を求めることができない。
29 返還時期の定めがある使用貸借契約では、貸主は、借主がその時期以前に死亡した場合を除いて、その時期より前には、目的物の返還を請求できない。これに対して、返還時期の定めがない使用貸借契約では、貸主は、原則として、いつでも目的物の返還を借主に対して請求することができる。[超基本]
30 親子間で結ばれた返還時期の定めのない土地・建物の使用貸借契約が、同建物を使用する会社の経営の承継と、経営から生じる収益で老父母を扶養する等を目的としている場合において、借主が理由もなく老父母に対する扶養をやめ兄弟とも交流を断ってしまったときには、貸主は、この使用貸借契約を解約できる可能性が高い。[やや難]
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