Contract
懲 戒 処 分 書
事務所 xxxxxxxxxxxxxx00xx5司法書士 xx xxx
上記の者に対し、次のとおり処分する。主 文
令和4年9月10日から3か月間の業務の停止に処する。
理 由
第1 事案の概要
本件は、司法書士xxxxx(以下「被処分者」という。)が、A(以下
「A」という。)から依頼を受けて行った行為に関し、①被処分者は、Aか ら依頼を受けた建物退去交渉において、弁護士法違反の行為をした、②被処 分者は、Aから依頼を受けた不動産売買に係るコンサルタント契約において、費用等を不正に請求するなどした、③被処分者は、Aが持分を所有する土地 の売買等契約において、当該契約の内容が不当であったことから合意解除し、 Aに、本来必要のない費用等を支出させ、損害を与えた等として、Aのxx 後見人に就任した弁護士法人〇〇から懲戒請求がされた事案である。
第2 認定事実
以下の事実が、兵庫xxx書士会の調査結果報告書及び神戸地方法務局における調査結果その他の一件記録から認められる。
1 被処分者は、昭和63年11月28日、司法書士となる資格を取得し、平成2年4月19日付け登録番号兵庫第936号をもって司法書士の登録を受け、同日、兵庫xxx書士会に入会し、司法書士の業務に従事している者であり、これまでに懲戒処分歴はない。
なお、被処分者は、平成15年7月28日付け認定番号第114013号をもって、司法書士法第3条第2項で定める簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士として認定を受けている。
2 被処分者は、弁護士の資格を有せず、認定司法書士としても行い得ない業務の範囲であるにもかかわらず、報酬を得る目的で、平成27年7月、Aから、A所有の建物(以下「本件建物」という。)に居住していたAの長男を退去させる方法について相談を受け(以下「建物退去交渉事件」という。)、建物退去のために本件建物及びA所有の2筆の土地(以下「本件土地」という。)の管理を受任して交渉を行い、同年10月18日に建物退去を実現させ、もって他人の法律事務を業として違法に取り扱った。
この違法な業務に関連し、被処分者は、建物退去交渉事件の経済的利益を
433万2100円と算定し、Aに対し、着手金29万8733円を請求し、同年7月21日、Aはこの着手金を被処分者に支払い、また、建物退去交渉事件の完了後、被処分者は、Aに対し、報酬金60万2000円を請求し、同年10月23日、Aはこの報酬金を被処分者に支払った。
3 平成27年11月頃までに、A及びAの妻であるX(以下「B」という。)は、両名が所有する本件土地及び本件建物の売却を被処分者に依頼し、被処分者は、A及びBからコンサルタント料を受け取った。
同年12月末頃までに、被処分者は、Aに対し、本件士地及び本件建物について、被処分者が代表を務める不動産の売買等を業とする有限会社〇〇〇
(以下「〇〇〇」という。)への売却を提案したが、売却代金等の条件についての十分な情報提供や説明を怠った。その結果、A及びBは、〇〇〇に対し、平成28年1月23日(不動産登記簿上の売買契約日は同年3月7日)、本件土地及び本件建物を7350万円で売却した(以下「本件不動産売買」という。)が、同売却代金は本件土地の固定資産評価額と比しても不当に低い価格であり、本件不動産売買後の同年4月28日、〇〇〇は、第三者に対し、本件土地のうちの1筆を1億2600万円で売却して転売益を得た。
Aは、被処分者に対し、本件不動産売買の仲介に関し、不動産売買契約書作成等名目で平成28年1月23日に11万5800円、同年3月7日に最終決済立会等名目で19万2000円の報酬をそれぞれ支払った。しかしながら、被処分者は、本件不動産売買に関し、司法書士業務を受任しているのか定かではないことに加え、本件不動産売買の当事者は被処分者が代表者を務める〇〇〇であることからすれば、被処分者について、上記報酬を請求するに値する司法書士業務の提供があったとは認め難いものであった。
4 平成28年10月9日当時、Aは、本件土地以外にも、それぞれ210分の176の持分を持つ土地2筆を所有していたが、被処分者の働きかけにより、同日、Aは、〇〇〇に対し、そのうちの1筆の土地につき、持分のうち
210分の21を代金170万円で売却する土地持分売買契約を締結し(以下「本件土地持分売買契約」という。)、残りの持分210分の155を代金1258万円で売買する土地持分売買予約契約を締結する(以下「本件土地持分売買予約契約1」という。) とともに、Aが持分を持つ残りのもう1筆の士地について、全持分である210分の176を代金1310万円で売買する士地持分売買予約契約を締結した(以下「本件土地持分売買予約契約
2」といい、本件土地持分売買契約及び本件土地持分売買予約契約1と併せて「本件土地持分売買等契約」という。)。
ところが、本件土地持分売買等契約の上記の各代金額は、被処分者が本件土地持分売買等契約当時の各土地の路線価の25パーセントを基準として決定したもので不当に低い価格であって、被処分者はその旨の説明をAに行っていなかった。
その後、平成29年6月、Aと〇〇〇は、本件土地持分売買等契約について合意解除し、Aは、〇〇〇に対し、本来支出する必要のない実費129万
6612円及び抹消登記費用32万5000円を支払うことになり、合計金
162万1612円の損害を被った。
第3 処分の量定
1 上記第2の2の行為は、被処分者による違法な非弁行為と報酬等名下での不当請求に当たり、上記第2の3の行為は、不動産売買事案について説明義務違反による不当廉売と報酬名下での不当請求に当たり、また、上記第3の4の行為は、土地持分売買契約事案について説明義務違反による不当xxとこれにより相手方に不要な費用負担を負わせたものと認められる。これらはいずれも、依頼者の正当な利益を守って適正に業務を遂行すべき司法書士としての業務を怠り、司法書士の信用を失墜させるものとして、弁護士法第
72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)、司法書士法第2条 (職責) 、同法第3条第1項第7号(業務) 、同法第23条(会則の遵守義務)、兵庫x xx書士会会則第87条(品位の保持等)、同会則第106条(会則等の遵守 義務)に違反するものである。
これに対し、被処分者は、聴聞手続において、上記第2の3の行為は、司法書士業務とは関係がなく品位を損なうほどの違法性がない等と主張するが、当該行為については、確定判決(松山地方裁判所平成〇〇年(〇)第〇〇号) において被処分者の法的責任が認定されており、過失相殺が認められたことを差し引いてもその責任は重大であり、司法書士としての品位を害する業務外行為というべきものである。
2 そして、被処分者による上記1の違反行為は、司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方 (処分基準等)の別表違反行為の欄の「業務外行為」「報酬又は費用の不正請求」「その他会則に違反する行為」に該当し、懲戒処分の量定としては、それぞれ、「戒告、2年以内の業務の停止又は業務の禁止」「2年以内の業務の停止又は業務の禁止」「戒告」が相当であるとされている。
3 本件は、上記1のとおり、被処分者において弁護士法に違反した上、不正請求等により依頼者に多額の経済的損害を与えたものであり、被処分者の責任は相当に重いものがある。
他方、依頼者に生じた多額の損害については、被処分者においてその元本及び遅延損害金を既に支払済みであり、実質的な損害は回復されている。また、被処分者には、これまでに懲戒処分歴はなく、本件について、上記損害の回復の点も含め、真摯な反省の態度を示しているなど、被処分者に酌むべき情状も認められる。
4 よって、これら一切の事情を考慮し、司法書士法第47条第2号の規定により被処分者を主文のとおり処分する。
令和4年8月31日
法務大臣 x x x x
(教示)
この処分に不服がある場合は、行政不服審査法(平成26年法律第68号)の規定により、この処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、法務大臣に対して審査請求をすることができます(なお、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内であっても、処分があった日の翌日から起算して1年を経過した場合には審査請求をすることができなくなります。)。
また、この処分の取消しを求める訴訟を提起する場合は、行政事件訴訟法(昭和3
7年法律第139号)の規定により、この処分があったことを知った日から6か月以内に、国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣となります。)、東京地方裁判所又は行政事件訴訟法第12条第4項に規定する特定管轄裁判所にこの処分の取消しを求める訴訟を提起することができます(なお、この処分があったことを知った日から6か月以内であっても、処分の日から1年を経過した場合には、この処分の取消しを求める訴訟を提起することができなくなります。)。
ただし、審査請求をした場合には、この処分の取消しを求める訴訟は、その審査請求に対する裁決の送達を受けた日から6か月以内に提起することができます(なお、裁決の日から1年を経過した場合は、この処分の取消しを求める訴訟を提起することができなくなります。)。