• ・貸金等債務以外の根保証(ex賃貸借や継続売 買取引の根保証)についても、想定外の多額の保証債務や、想定していなかった主債務者の相続人の保証債務の履行を求められる事例は少なくない。
保証とは・・・
主債務者が債務の支払をしない場合に、これに代わって支払をすべき義務のこと
債権者
主債務 保証債務
通常の保証:契約時に特定している債務の保証
(例:住宅ローンの保証)
根 保 証 :将来発生する不特定の債務の保証
(例:継続的な事業用融資の保証)
主債務者
保証人
平成16年民法改正(貸金等債務に関する包括根保証の禁止)
商工ローンの保証などの社会問題化が背景
貸金等債務の根保証をした個人保証人の保護のため、以下の措置を講ずる。
極度額(保証の上限額):極度額の定めのない根保証契約は無効(現§465-2)
元本確定期日(保証期間の制限):保証人が責任を負うのは元本確定期日までの間に行われた貸金等に限定
: 元本確定期日までの期間を原則3年(最長5年)に制限(現§465-3)元本確定事由(特別事情による保証の終了):
元本確定期日の到来前であっても特別な事情(保証人や主債務者の死亡・破産等)が発生した場合には、その時点で元
平成16年民法改正後の二つの課題
① 包括根保証の禁止の対象を拡大することの当否
② 保証人保護のさらなる拡充(第三者保証の法的制限など)
本確定(それ以前の貸金等に限り責任を負う)(現§465-4)
主債務に含まれる債務 | 貸金等債務あり | 貸金等債務なし (賃借人の債務など) |
極度額 | 極度額の定めは必要 | 極度額の定めは不要 |
元本確定期日 (保証期間) | 原則3年(最長5年) | 制限なし |
元本確定事由 (特別事情による保証の終了) | 破産・死亡などの事情があれば保証は打ち切り | 特に定めなし |
現 状
主債務に含ま れる債務 | 貸金等債務あり | 貸金等債務なし (賃借人の債務など) |
極度額 | 極度額の定めは必要 | 極度額の定めは必要 |
元本確定期日 (保証期間) | 原則3年(最長5年) | 制限なし |
元本確定事由 (特別事情によ る保証の終了) | 破産・死亡などの事情があれば保証は打ち切り | 破産・死亡などの事情(主債務者の破産等を除く。)があれば保証は打ち切り |
改正法の内容
問題の所在
• ・貸金等債務以外の根保証(ex賃貸借や継続売 買取引の根保証)についても、想定外の多額の保証債務や、想定していなかった主債務者の相続人の保証債務の履行を求められる事例は少なくない。
→ 例えば、借家が借主の落ち度で焼失し、その損害額が保証人に請求されるケースや、借主の相続人が賃料の支払等をしないケースなど
・包括根保証禁止の既存のルールをすべての契約に拡大すると、例えば、賃貸借契約について、最長でも
改正法の内容
①極度額の定めの義務付けについては、すべての根保証契約に適用。【新§465-2】
②保証期間の制限については、現状維持(賃貸借
等の根保証には適用せず)。【新§465-3】
③特別事情(主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡など)がある場合の根保証の打ち切りについては、すべての根保証契約に適用。ただし、主債務者の破産等があっても、賃貸借等の根保証が打 ち切りにならない点は、現状を維持。【新§465-4】
5年で保証人が存在しなくなるといった事態が生ずるおそれがある。
貸金等債務以外の根保証の例
貸金等債務以外の根保証については、以下の保証契約などが該当し得る。
不動産の賃借人が賃貸借契約に基づいて負担する債務の一切を個人が保証する保証契約
代理店等を含めた取引先企業の代表者との間で損害賠償債務や取引債務等を保証する保証契約介護、医療等の施設への入居者の負う各種債務を保証する保証契約
改正法の施行日前に締結された保証契約の取扱い
改正法の施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、現行法のルールが適用される。(改正法附則第
21条)
例えば、改正法の施行日前に、賃借人の債務の一切を保証する旨の保証契約が締結された場合には、以下の図のとおり。
※ただし、保証契約が更新後の債務も保証する趣旨でされていた場合についてのものである。
(現行法適用)
(改正法適用)
(現行法適用)
契約締結
合意更新
契約締結
施行日
賃貸借に関する規定
(§601~622の2)
保証に関する規定
(§446~465の10)
意思能力制度の明文化
意思能力制度とは・・・
意思能力を有しない者がした法律行為は無効となること。
意思能力は、行為の結果を判断するに足るだけの精神能力。例えば、認知症を患って行為の結果を判断することができない者は、意思能力を有しない。
代金を返して!
A B
現 状 買主 売主
自らが締結した売買契約の無効を主張して、代金の返還等を求めることができることにより、判断能力が低下した高齢者等が不当に不利益を被ることを防ぐことが可能。
高齢化社会が進展する中で意思能力制度の重要性はますます高まっている。
※ 類似の制度として、高齢者等の保護を図るxx後見制度がある。xx後見制度の利用のためには、事前に家庭裁
判所の審判を得ていなければならないが、意思能力制度は事前に家庭裁判所の審判を得ていなくとも利用が可能。
※ 意思能力を有しなかった者(右上のケースでは買主)の原状回復義務(受け取った商品の返還)の範囲は、現に利益を受けている限度にとどまると解されている。
問題の所在
判例・学説上は、異論なく認められ、実際にも活用されているが、民法にxxの規定はない。
改正法の内容
◼ 民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から、意思能力を有しない者がした法律行為は無効とすることを明文化【新§3-2】
※併せて、意思能力を有しなかった者が相手方にする原状回復義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」にとどまる旨の規定を新設【新§121-2Ⅲ】