常陽銀行(頭取 秋野 哲也)は、このたび株式会社協立製作所(代表取締役 髙橋 真人以下、「当社」)に対し、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」(以下、「PIF」* )のシンジケートローンを組成しましたので、下記のとおりお知らせいたします。
株式会社協立製作所に対するポジティブ・インパクト・ファイナンスのシンジケートローン組成について
常陽銀行(頭取 xx xx)は、このたび株式会社協立製作所(代表取締役 xx xx以下、「当社」)に対し、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」(以下、「PIF」* )のシンジケートローンを組成しましたので、下記のとおりお知らせいたします。
本件を通じて、サステナブルな社会の実現に向け当社が掲げている各種取り組みを支援し、継続的な対話により、その着実な進捗をサポートしてまいります。
当行およびめぶきフィナンシャルグループは、「地域とともにxxx価値創造グループ」を長期ビジョンとして掲げ、持続可能な地域社会の実現に向けて、お客さまをはじめとする地域の全てのステークホルダーの皆さまの課題に寄り添い、ともにxxx解決することで、新たな価値を創り続けてまいります。
* 企業活動が環境・社会・経済に与える影響を包括的に分析・評価し、ポジティブな影響の増大とネガティブな影響の低減に向けた取り組みを支援する融資
記
1.シンジケートローン概要
借 入 人 | 株式会社協立製作所 |
組 成 金 額 | 14 億円 |
契 約 締 結 日 | 2023 年 1 月 27 日 |
資 金 使 途 | 運転資金 |
アレンジャ‐(主幹事) | 常陽銀行 |
参 加 x x 機 関 | 常陽銀行/商工組合中央金庫/足利銀行/筑波銀行 |
2.株式会社協立製作所の概要
対 象 | 株式会社協立製作所(代表取締役 xx xx) |
住 所 | xxxxxxxxxx 0000 |
業 種 | 建設・産業・農業用油圧ポンプ・バルブおよび油圧機器部品製造業 |
企 業 概 要 | ・建設機械や産業機械、農業用機械などの油圧機器部品を製造しています。設計から、切削加工(鋳物加工を含む)、熱処理、研削加工、組立、性能試験、塗装の一貫生産体制を構築しており、大手の建設機械メーカー等から優良サプライヤーとしてこれまで数多く表彰されています。 ・環境方針を掲げ、環境保全や労働環境の整備に努めるとともに、体験実習の受け入れや、県内プロスポーツチームの支援、経済団体の活動を通じ、茨城県経済界・産業界へ貢献しています。 |
U R l |
3.インパクト評価の概要/モニタリング体制
(1) インパクト評価の概要
領域 | テーマ | 取組内容 | 関連するSDGs |
経済 | 高い技術力を生かしたものづくりの追求 | ・生産一貫体制を活かした受注の拡大 ・高度なものづくりを実現する生産マネジメントの確立 ・時代の変化に対応するための設備投資の実施 | |
環境 | 持続可能なものづくり体制の構築 | ・再生可能エネルギーの活用 ・電気使用量の削減 ・環境マネジメントシステムの維持・強化 | |
社会経済 | 従業員の幸福実現と人材力の向上 | ・従業員の安全管理の徹底 ・従業員の健康維持と働きやすさの推進 ・多様な人材が活躍できる環境づくり ・次世代のものづくりを支える社 員の育成 |
当行グループ会社である常陽産業研究所(社長 xxx xx)が、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)の提唱するポジティブ・インパクト金融原則に基づき、お客さまの SDGs(持続可能な開発目標)に関する取り組みや本業との関連性を分析・評価しました。
また、ポジティブ・インパクト金融原則への適合性についての透明性を確保するため、外部評価機関である日本格付研究所(JCR)※から第三者意見を取得しています。
※ 株式会社日本格付研究所のホームページ:xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxxxxxxx
(2) モニタリング体制
当行は、ポジティブ・インパクト金融原則に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI の進捗状況について、当社と年に1回以上共有し、KPI 達成に向けたサポートをしてまいります。
以 上
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
株式会社協立製作所
2023 年 1 月 27 日 株式会社常陽産業研究所
目次
(2)事業活動エリアにおけるインパクトニーズとの関連性 17
1.はじめに
常陽産業研究所は、常陽銀行が株式会社協立製作所(以下、協立製作所)に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するにあたって、同社の活動が、環 境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響及びネガティブな影響)を分析・評価した。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及び ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業1に対するファイナンスに適用している。
本ファイナンスの概要
資金調達者の名称 | 株式会社協立製作所 |
調達金額 | 500,000,000 円 |
調達形態 | シンジケートローン |
契約期間(モニタリング期間) | 2023 年 1 月 31 日~2028 年 1 月 11 日 |
資金使途 | 運転資金 |
1
1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する企業。
2.会社概要
(1)概要
協立製作所は、茨城県筑西市で建設機械や産業機械、農業用機械などの油圧機器部品を製造している。
研磨技術をコアに研削加工専門業として 1954 年に創業したものの、「研削加工だけではものづくりの基盤が弱体化する」という危機感のもと、ものづくりの基盤強化に向けて、生産工程の内製化を進めてきた。NC 旋盤、マシニングセンタ、CAD 等の設備をxx導入するなど設備投資を進め、現在は、設計から、切削加工(鋳物加工を含
む)、熱処理、研削加工、組立、性能試験、塗装の一貫生産体制を構築している。このようなものづくりの取り組みにより、大手の建設機械メーカーや油圧機器メーカー等からの信頼も厚く、優良サプライヤーとしてこれまで数多く表彰されている。
ものづくりの高度化や事業の拡大を進める中で直面した人手不足に対応するため に、自動化装置やロボットなどを積極的に導入し、生産の省力化を進めるとともに、作業の標準化を図ることで、資本効率の向上を実現した。
他方、近年は外国人の活用にも力を入れており、現在は 27 名(派遣社員除く)が生産現場の業務に従事する。
2023 年 2 月には、グループ体制の再編の一環で子会社の協立熱処理工業株式会社
(以下、協立熱処理工業)を統合した。
2
協立製作所とグループ企業の概要(2023 年 2 月以降)
株式会社協立製作所 (茨城県筑西市) 建設・産業・農業用油圧ポンプ・バルブ及び油圧機器部品の製造 | |
上海協立機械部件有限公司 (中国・上海) 走行モーター用部品、農業機械用バルブ部品、 真空ポンプ部品の製造 |
同社及びグループ会社の概要は以下の通りである。
社名 | 株式会社協立製作所 |
代表者 | xx xxx、xx xx |
本社 | xxxxxxxx 0000 |
設立年月 | 1958 年 2 月 |
事業内容 | 建設・産業・農業用油圧ポンプ・バルブ及び油圧機器部品の製造 |
資本金 | 9,400 万円 |
従業員 | 200 名(2022 年 12 月 1 日現在、協立熱処理工業を含む) |
社名 | 上海協立機械部件有限公司 |
代表者 | 単剛 |
本社 | xxxxxxxxx 000 x X x |
設立年月 | 1991 年 6 月 |
事業内容 | 油圧ショベル用走行モーター用部品、フォークリフトミニショベル農業機械用バ ルブ部品、真空ポンプ部品の製造 |
従業員 | 30 名(2022 年 12 月 1 日現在) |
上海協立機械部件有限公司
3
出所:㈱協立製作所 HP
(2)沿革
協立製作所は 1954 年、xxのxxxx氏の手によりxxx品川区xxにて切削工具の研削加工専門業として創業した。1958 年に有限会社協立製作所を設立し、1965 年には現在の主力事業である油圧部品の切削・製造を開始した。
1971 年には、茨城県筑西市に茨城工場を設立した。4 名からスタートした同工場では、業容拡大に合わせて、ものづくりの高度化と省力化を同時並行で進めてきた。 1974 年には HP ポンプ(超高圧給油ポンプ)の生産を開始した。また、生産体制の拡大や人材を確保するため、1991 年には中国・上海に上海協立機械部件有限公司を設立した。
xxxxxxが社長に就任した 1993 年には現在の主力製品であるスプール2専用工場を建設、1996 年には組立工場を新設してバルブ組立製品納入開始、1997 年に熱処理工場を完成させるなど、同社の強みである生産一貫体制を構築していった。さらに、 2004 年に FMS(フレキシブル生産システム)を導入した K5 工場が完成し、機械加工においては 24 時間無人で可能な生産を実現し、同年ピストンポンプの納入を開始した。
2006 年には協立製作所で行っていた熱処理工程を分社化し、協立熱処理工業株式会社を設立した。
また、2008 年には経済産業省の「元気なものづくり中小企業 300 社」3に選出され、 2011 年には茨城県知事表彰「いばらき産業大賞」4を受賞するなど、茨城県を代表する
中小製造業として知られている。
2020 年にxxxxxが社長に就任し、同年にxxxxxxが旭日単xxを受章した。2022 年には SDGs宣言を行い、2023 年 2 月には協立熱処理工業株式会社を協立製作所に統合する。
いばらき産業大賞の盾
出所:㈱協立製作所 HP
2 油の流れる方向を制御する切り替え弁
4
4 茨城県が、同県産業の発展や地域経済の活性化に対する貢献が顕著である等の企業及び団
体を顕彰するもの。
3 経済産業省・中小企業庁が、全国で約 50 万社といわれるモノ作り中小企業の中から、優れた技術、ユニークな商品を持った元気な中小企業 300 社を選定したもの。
年 | 概要 |
1954 年 1958 年 1965 年 1971 年 1974 年 1979 年 1980 年 1991 年 1992 年 1993 年 1996 年 1997 年 1998 年 2000 年 2001 年 2004 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2011 年 2020 年 2022 年 2023 年 | xxxxxがxxx品川区xxで創業、切削工具の研削・製造開始有限会社協立製作所を設立 油圧部品の切削・製造開始株式会社KYB と取引開始 茨城県筑西市に茨城工場を開設 株式会社日立製作所 HP ポンプ(超高圧給油ポンプ)生産開始油研工業株式会社と取引開始 不二越株式会社と取引開始 xxx機株式会社と取引開始 上海協立機械部件有限公司を設立xx重工業株式会社と取引開始 株式会社xx製作所(コマツ)と取引開始 xxxxxxが社長に、xxxxxが会長に就任茨城工場内にスプール専用工場が完成 組立工場完成、バルブ Assy 製品納入開始熱処理工場完成 東京計器株式会社と取引開始 ISO9001 認証取得 東芝機械株式会社(現ナブテスコ株式会社)と取引開始キャタピラージャパン株式会社と取引開始 FMS(フレキシブル生産システム)を導入した K5 工場が完成三菱重工業株式会社と取引開始 ナブテスコ株式会社ピストンポンプ Assy 製品納入開始コマツピストンポンプ納品開始 協立熱処理工業株式会社を設立新工場増設(K6 工場) ISO14001 認証取得 経済産業省「元気なものづくり中小企業 300 社」に選出コマツフォークリフト用コントロールバルブ納品開始 東京工場を茨城工場へ統合 xxx機株式会社ピストンポンプのレギュレータバルブの納品開始茨城県知事表彰「いばらき産業大賞」を受賞 xxx機株式会社走行用モーター用リリーフバルブ納品開始xxxxxが社長に、xxxxxxが会長に就任 xxxxxxが旭日単xx受章 SDGs 宣言 協立熱処理工業株式会社を株式会社協立製作所に統合 |
5
(3)経営理念
協立製作所は、「挑戦と創造」を経営理念に掲げ、「他社よりも優れた品質・コスト・納期で適格にお客様の期待に対応した信頼性の高い会社」を目指している。
1954 年の創業以来、環境の変化に伴って、ものづくりの技術領域を拡大することでものづくりの変革を行ってきた。研削加工専門業でスタートした同社は、困難が伴う中で「挑戦と創造」を支えに、現在では切削加工、熱処理、研削加工、組立、性能試験、塗装の生産一貫体制を構築している。
試作から量産まで様々な受注に対して、顧客からの要求に応えるために、特に品質に重点を置きつつ、日々の改善を行い、顧客企業との信頼関係を構築してきた。同時に、納期や価格の要請に対しても迅速に対応している。
最終的には、「社長が全てをこなす会社」から「組織と仕組みで成長していく会社」となり、「売上高 100 億円企業」の実現を目標としている。
現在は経営理念に沿った 3 つの経営方針を掲げている。
<3 つの経営方針>
1)油圧機器の部品製造を通じて社会に貢献する
2)常に先端の加工技術と製造システムを追求する
3)健全な企業活動と従業員の幸福な生活を目指す
工場の外観
出所:㈱協立製作所 HP
6
(4)事業概要
①製品
協立製作所は、「コントロールバルブ用のメインスプール」、「建設機械用油圧ポンプ」、「油圧バルブ」、「油圧部品」を柱に高精度の油圧機器及び油圧部品を手掛けている。
油圧ショベルで使用される同社の製品
7
提供:㈱協立製作所
ア)コントロールバルブ用メインスプール
スプールとは、油の流れる方向を制御する切り替え弁であり、油圧ポンプから送り出された作動油の方向、圧力、流量を制御する。協立製作所では、7〜30tの中型油圧ショベルのコントロールバルブ用スプールを製造している。
コントロールバルブの製造において、油圧の流れを遮断することにつながる恐れがあることから、バリ5を除去する必要がある。同社では、サーマルデバリングとい
う工程を付加することによって、
手作業や機械的な手法でバリを取り除いている。
顧客企業の要望に応じて、仕上げ研磨後、スプリングやプラグを組み付け、コントロールバルブにそのまま組み付けることが出来るようにするため、セットで納入している。
イ)建設機械用油圧ポンプ
油圧ショベル用コントロールバルブメインスプール
出所:㈱協立製作所 HP
現在、主に 5~10tの小型建機に使用する油圧ポンプを製造している。建機におけるポンプは、人間における心臓の役割を担う重要なパーツであり、製造時におけるバリの発生が大きな問題の一つとなる。そのため、協立製作所では、バリ取り作業手順書を作成し、バリ取り技術の蓄積を行っている。併せて、専用のテストベンチも完備し、実機で使用される環境と同等の状態で性能試験を行っている。
建設機械用油圧ポンプ
出所:㈱協立製作所 HP
ウ)油圧バルブ
協立製作所では、様々なタイプのバルブを取り扱っており、いずれの製品も加工から組立・検査、製品によっては塗装まで一貫生産を行っている。専用の組立ラインやテストベンチを使用し、図面で指示された性能を満たす製品を納入している。
油圧バルブの一つである「アウトリガ ー・ラムシリンダー用バルブ」は、足回 りがタイヤタイプのホイールショベルで使用される。ホイールショベルでは、作業時に車体の重心が大きく動いてしまう場合があるため、アウトリガー6で車体を支え
る。当バルブはアウトリガーを送り出す動作を伝達する油圧を制御する。
エ)油圧部品
油圧バルブ
出所:㈱協立製作所 HP
協立製作所は、「コントロールバルブ用メインスプール」、「建設機械用ポン プ」、「油圧バルブ」の他、油圧ショベルや産業機械向けの油圧に関する様々な加工部品を取り扱っている。いずれも切削加工から研磨までの一貫生産を行うことができる。
様々な油圧部品
出所:㈱協立製作所 HP
②技術
協立製作所は研削加工専門業として創業して以降、ものづくりの競争力を強化するために、生産工程の内製化を進めてきた。同社の強みは、設計から、切削加工、熱処理、研削加工、組立、性能試験、塗装の一貫生産体制である。
ア)切削加工
協立製作所が行っている切削加工は、「旋盤加工」と「マシニングセンタ加工」である。
■ 旋盤加工
旋盤加工は、工作物を回転させながら、刃物を移動することで切削する機械
(旋盤)を使った加工である。同社では、様々な種類の旋盤加工を行っている。端面切削では加工する材料を回転させ、刃物を材料の中心に移動させながら、 材料の端の表面を加工する。回転数、切削速度を一定に保つことで、材料の表面
を綺麗な仕上げ面にすることが可能となる。
外径切削は、回転させたワークの外径を切削工具により、金属を切削し精度の高い加工を行うことである。
内径切削は、外径とは反対に、回転させたワークの内径を切削工具で金属を切削し精度の高い加工を行うことである。同社では、熱処理後の硬い金属でも切削でき面粗度も良い加工技術を持っており、さらに切り粉の処理にも工夫している。
■ マシニングセンタ加工
マシニングセンタ加工は、自動工具交換機能を有し、目的に合わせてフライス加工・中ぐり加工・ねじ立てなどの異種の加工を 1 台で行うことができる工作機械(マシニングセンタ)を使った加工であ る。旋盤が材料を回転させて削るのに対して、マシニングセンタは刃物を回転させてテーブルに固定してある材料を削る。
旋盤加工の様子
出所:㈱協立製作所 HP
マシニングセンタ加工の様子
10
出所:㈱協立製作所 HP
イ)熱処理
熱処理には「ガス浸炭窒化」や「ガス軟窒化」、「焼入れ焼き戻し」がある。
「ガス浸炭窒化」は、浸炭用の吸熱型変成ガス7(RX ガス)にアンモニアを 5~10%添加したものを使用し、ガス浸炭よりも短い処理時間で、薄い硬化層を得る方法である。
「ガス軟窒化」は、処理物に窒素または、炭素と窒素を拡散させることで、耐磨耗性、耐疲労性などを向上させる処理である。
「焼入れ焼き戻し」は、炉を処理物がオーステナイト化する温度(オーステナイト8と呼ばれる組織に変態する温度)になるまで上げて、急冷して硬化させる処理である。焼入れのみでは、処理物の硬度が高いものの、もろいことから、焼き戻しにより変態させることで、処理物を安定な組織に近づける。
熱処理工場の様子
出所:㈱協立製作所
7 プロパン(C3H8)などの炭化水素ガスを原料に、1,050 度に加熱したニッケル触媒を通過させて反応生成したガス。
11
8 鉄がセ氏 910~1,400 度で結晶形が変化し、立方最密構造となったγ(ガンマ)鉄に、炭素が溶け込んだもの。
ウ)研削加工
研削加工は、固い砥粒9(とりゅう)を結合剤で砥石に固定させた上で、高速回転させたその砥石に工作物を押し当て表面を微小切削する加工法である。
協立製作所では、さまざまな研削加工を行っており、工作物の形状に応じて研削盤を使い分けながら使用し、スプールや小物部品の研削を行っている。
研削加工の様子
エ)組立
出所:㈱協立製作所 HP
協立製作所は、組立工程においても様々な工夫を行っている。
1 つ目の工夫は、部品棚の固定番地化と現品見本表示である。部品を保管しておく棚(部品棚)に住所をつけて固定番地化することにより、部品投入時における品番の間違いを防止するとともに、現品見本を表示することで、担当者が欲しい部品と同一の物なのかを比較出来るようになるため、間違いを防止できる。
2 つ目の工夫は、組立部品の完全キット化である。1 つの製品を組み立てるために
10~50 種類の部品が必要になるが、必要な部品を1台分ずつ部品キットに分けて用意することで、部品を見ただけで容易に確認できるように工夫し、部品の間違いや組み忘れを防止している。
3 つ目の工夫は、締め付け忘れなどの人為的なミスの防止である。締め付け作業をする際、作業台にカウンターとリミットスイッチ付トルクレンチを設置し、締め付けた回数をカウントすることにより、締め付け忘れを防止している。
12
9 ものを研ぐ、削る、磨くなどのために使われる高硬度の粒状、粉末状の物質の総称
部品棚 部品キット
出所:㈱協立製作所 HP 出所:㈱協立製作所 HP
カウンター リミットスイッチ付トルクレンチ
出所:㈱協立製作所 HP 出所:㈱協立製作所 HP
オ)性能試験
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協立製作所では、組立工程にて組み立てた製品が正常に動くかどうかを専用のテストベンチ(性能試験をする機械)を使用し、全数の性能を確認してから顧客へ納入している。テストベンチでは、限りなく実機に近いテスト環境を作り性能試験を実施している。
(5)環境・社会活動
①社会活動
協立製作所は、体験実習の受け入れや、県内プロスポーツチームの支援、経済団体の活動を通じた茨城県経済界・産業界への貢献を行っている。
体験実習の受け入れでは、茨城県立協和特別支援学校の生徒の体験実習を毎年受け入れている。体験実習は学生が校内で身に付けた力を生かし、事業所等で行うものであり、2022 年度は 10 月に同校の高校生を受け入れた。
県内プロスポーツチームの支援活動としては、2022 年度より J リーグに所属する水戸ホーリーホックとシルバーパートナー締結を締結した。同チームのスポンサーとなることによって、地域の発展に貢献するとともに、サッカー観戦を通じた従業員の福利厚生の拡充も行っている。
経済団体の活動を通じた茨城県経済界・産業界への貢献としては、代表取締役会長のxxxxxxは、茨城県産業人クラブ10の会長や、(一社)茨城県経営者協会11の副会長など経済団体の要職を務め、県内経済界・産業界の活性化や合意形成、茨城xxxの政策形成に向けた活動に尽力している。xxxxxxは、中小企業振興の功労に対して 2020 xxの叙勲において「旭日単xx」を受賞した。
xxxxxxの「旭日単xx」受賞の様子
出所:㈱協立製作所 HP
10 地域産業の結束を通じて、モノづくりを中心とした日本の産業の発展に寄与することを目的に設立された異業種交流組織で、日刊工業新聞社の支社、支局が事務局を務める。
11 経営者の相互啓発と連携のもとに、創造的で活力ある企業経営の実現と産業経済の興隆を通じて地域社会づくりに寄与することを目的とする、自主性・独立性・公益性をもつ県内唯一の総合
14 的経済団体。
②環境活動
協立製作所は、環境を保全するために環境方針を掲げている。環境方針の中で は、同社の活動、製品、サービスに係る関連法規制、その他同社が同意する要求事項を遵守することを明記し、汚染を予防するための重点特化事項を以下の通り定めている。
また、2022 年 9 月に実施した SDGs宣言においても、「品質保証」、「労働環境の整備」、「地域社会への貢献」と合わせて「環境保全への取り組み」を 4 つの柱の一つに掲げて、環境活動に注力している。
汚染を予防するための重点特化事項
・廃棄物の削減
・生産効率の向上、業務効率の向上
・資源及びエネルギーの有効利用
・有害物資の削減、廃止
15
SDGs宣言
3.包括的なインパクト分析
(1)インパクト領域の特定
UNEP FI が提供するインパクトレーダーを用いて、協立製作所が属する業種のポジティブインパクト(以下 PI)とネガティブインパクト(以下 NI)が社会面、環境面、経済面の 22 のインパクト領域のどの領域に発現するのか、包括的なインパクト分析を実施した。なお、同社の業種は、国際産業標準分類に則り「2812 流体動力装置製造業」としている。同社の製品(油圧機器)は水を汲むポンプに使用されていないことや、同社における「資源効率・安全性(NI)」のインパクトが小さいことから、発現した「水(社会)(PI)」と「資源効率・安全性(NI)」は除外する。
また、インパクトレーダーでの分析に加えて、同社の事業活動(従業員の健康維 持、人材育成、再生可能エネルギーの活用、ものづくりへの追求)を鑑み、「健康・衛生(NI)」、「教育(PI)」、「気候(PI)」、「経済収束(PI)」を追加した。
最終的な同社のインパクト領域は以下の通りとなった。
16
○:ポジティブインパクト、●:ネガティブインパクト
側 面 | インパクト領域 | 関連するSDGS | 流体動力装置 製造業 |
社会 | 水 | 6.水 | - |
食糧 | 2.飢餓 | - | |
住居 | 11.まちづくり | - | |
健康・衛生 | 3.健康と福祉 | ● | |
教育 | 4.教育 | ○ | |
雇用 | 8.働きがい | ○● | |
エネルギー | 7.エネルギー | - | |
移動手段(モビリティ) | 11.まちづくり | - | |
情報 | 9.産業 | - | |
文化・伝統 | 11.まちづくり | - | |
人格と人の安全保障 | 10.不平等 | - | |
xx・xx | 16.xxとxx | - | |
強固な制度、平和、安定 | 16.平和とxx | - | |
環境 | 水 | 6.水 | ● |
大気 | 3.健康と福祉 | ● | |
土壌 | 15.陸の豊かさ | ● | |
生物多様性と生態系サービス | 14.海の豊かさ/15.陸の豊かさ | - | |
資源効率・安全性 | 7.エネルギー/12.つくる責任・つかう責任 | - | |
気候 | 13.気候変動 | ○● | |
廃棄物 | 12.つくる責任・つかう責任 | ● | |
経済 | 包摂的で健全な経済 | 5.ジェンダー/8.働きがい | ○ |
経済収束 | 1.貧困/17.パートナーシップ | ○ |
(2)事業活動エリアにおけるインパクトニーズとの関連性
特定したインパクト領域に関して、その重要性を判断するにあたり、協立製作所の事業活動エリアにおけるインパクトニーズとの関連性について検証する。
①国内におけるインパクトニーズ
環境省が策定した「インパクトファイナンスの基本的考え方」における国内のインパクトニーズは下図によって示される。下図の同心円最内層と中間層の色区分 は、日本が特に取り組むべき SDGS のゴールを黄色、その他を緑色としており、最外層の色区分は UNEP FI のインパクト領域のうち、最もニーズが高いと評価されたものを赤色、最もニーズが低いとされたものを緑色、その他を黄色としている。
協立製作所で特定したインパクト領域と関連付けられる SDGS のゴールは「3、4、 5、6、8、9、11、12、13、15」であり、全てのゴールが同心円最内層において赤色もしくは黄色に該当している。したがって同社のインパクトは国内ニーズと整合していると考えられる。
17
出所:環境省「インパクトファイナンスの基本的考え方」
②地域におけるインパクトニーズ
以下では、協立製作所の事業活動から特定したインパクト領域と、地域の課題やニーズの関連性を分析する。
茨城県は、2022 年度からの県政運営の基本方針「第 2 次茨城県総合計画」において、「活力があり、県民が日本一幸せな県」を基本理念とし、ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据え、「Ⅰ 新しい豊かさ」「Ⅱ 新しい安心安全」「Ⅲ 新しい人材育成」「Ⅳ 新しい夢・希望」という 4 つのチャレンジを柱にした政策・施策を展開している。
「Ⅰ 新しい豊かさ」では、先端技術を取り入れた新産業の育成や中小企業等の成長を目指している。当政策は、協立製作所の「挑戦と創造」という経営理念に基づいたものづくりの高度化と合致する。また、県は豊かな自然環境を守るととも に、環境への負荷が低い社会環境づくりを推進するなど、サステナブルな社会づくりに取り組むことを掲げている。この政策は同社の環境方針や環境保全への取り組みと一致する。
「Ⅲ 新しい人材育成」では、多様性を認め合い、一人ひとりが尊重される社会や、女性が輝く社会、働きがいを実感できる環境の実現を目指している。この政策は、同社が進める外国人の活用や女性活躍推進の取り組みに一致する。
以上から、同社は地域のニーズと整合していると評価できる。
18
出所:茨城県「第 2 次茨城県総合計画」
(3)テーマの設定
19
特定したインパクト領域において、PI の拡大と NI の緩和につながり、かつ、協立製作所の持続可能な経営を高めるテーマとして、下記 3 テーマと取り組み内容を設定した。
テーマ | 取り組み内容 | 対応するインパクト領域 |
○高い技術力を生かしたものづくりの追求 | ・生産一貫体制を活かした受注の拡大 ・高度なものづくりを実現する生産マネジメントの確立 ・時代の変化に対応するための 設備投資の実施 | 経済収束【PI】 |
○持続可能なものづくり体制の構築 | ・再生可能エネルギーの活用 ・電気使用量の削減 ・環境マネジメントシステムの維持・強化 | 水(環境)【NI】大気【NI】 土壌【NI】 気候【PI】【NI】廃棄物【NI】 |
○従業員の幸福実現と人材力の向上 | ・ダイバーシティの推進 ・休暇取得の推進 ・従業員の健康増進、生産性の向上 ・安全管理の徹底 | 健康・衛生【NI】教育【PI】 雇用【PI】【NI】 包括的で健全な経済【PI】 |
4.インパクトの評価
ここでは、先に設定した 3 つのテーマについて、具体的な取組み内容について記載するとともに、インパクトの発現状況を今後も測定可能なものとするため、それぞれについて目標と KPI を設定する。
(1)高い技術力を生かしたものづくりの追求
項目 | 内容 |
インパクト領域 | 経済収束【PI】 |
関連するSDGs |
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取組み内容 ・ KPI | ① 生産一貫体制を活かした受注の拡大 -経済収束【PI】- ・協立製作所は、切削加工、熱処理、研削加工、組立、性能試験の一貫生産ラインを構築している。その強みを生かし、組立製品の受注を獲得してきた。 ・近年は、取引先である大手企業に技術部門の担当者を派遣し、開発段階から関与するケースがある。 ・今後は生産一貫体制の強化による技術力を磨き上げることで、スプール、ポンプ、バルブなど主力製品の受注拡大を図っていく。 ② 高度なものづくりを実現する生産マネジメントの確立 -経済収束【PI】- ・協立製作所は、2000 年に初めて ISO9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得して以降、認証の更新を行って、生産管理マネジメント体制を構築している。 ・また、2022 年 10 月に新たな生産管理システムの本格稼働させた。今後も同システムの運用によって顧客の求める品質・納期・価格に対応できる生産マネジメント力を強化していく。 |
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項目 | 内容 |
③ 時代の変化に対応するための設備投資の実施 -経済収束【PI】- ・協立製作所はこれまでものづくりの高度化や省力化を進めるために、積極的に設備投資を実施してきた。 ・近年は設備投資を控えていたものの、2022 年度より老朽化に伴う設備更新をxx実施し、ものづくりの競争力の維持・強化を進めるとともに、省エネ化、省力化による生産効率と働きやすさの向上を進めていく方針である。 スプールの切削加工に使用する NC 複合旋盤 提供:㈱協立製作所 【KPI】 ・主力製品(スプール、ポンプ、バルブ)の売上:年間 45 億円(2027 年度) 【現在:年間 38 億円】 ・ISO9001 の更新 ・ものづくりの維持・強化につながる設備投資 :毎年 2 億円実施(2022 年度から 2027 年度まで) 【現在:年間 0.96 億円(2021 年度)】 |
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(2)持続可能なものづくり体制の構築
項目 | 内容 |
インパクト領域 | 水(環境)【NI】 大気【NI】 土壌【NI】 気候【PI】【NI】 廃棄物【NI】 |
関連するSDGs |
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取組み内容 ・ KPI | ① 再生可能エネルギーの活用 -気候【PI】- ・昨今の燃料費や卸市場の高騰、円安の影響などを受けて、電気料金が上昇している。こうした状況を踏まえて、協立製作所は現在自家用消費型のxxx発電システムの導入に向けて検討を進めている。 ・導入を検討しているxxxオンサイトサービスでは、同社が工場の屋根を電力会社に無料で貸与し、電力会社が工場の屋根にxxx発電システムを設置するため、同社は初期費用ゼロでxxx発電システムを導入できる。 ・同社は、このシステムを導入することで、xxx発電から供給された電力を工場で自家消費(年間自家消費量:597MWh(想定))し、電気使用量の削減を進めていく方針である。 ② 電気使用量の削減 -気候【NI】- ・協立製作所は、電気使用量の削減に向けて工場内の照明を全て LED 化した。 ・現在は、エアコンの適温設定、部屋や廊下のこまめな消灯を実践し、電気使用量の削減に取り組んでいる。 ・2022 年度には、電気使用量可視化システムを導入し、今後は電気使用量の削減にこれまで以上に取り組んでいく方針である。 ③ 環境マネジメントシステムの維持・強化 -水(環境)【NI】、大気【NI】、土壌【NI】、廃棄物【NI】- |
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項目 | 内容 |
・協立製作所は 2008 年に初めて ISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得して以降、認証を更新しており、環境に配慮したものづくりを実践している。 ・ISO14001 に基づく具体的な取り組みとして以下が挙げられる。 【排水への対応】 ・排水処理について、同社は下水道に排水していない。また、法で定める浄化槽を設置し、定期的に保守・点検を実施している。 【土壌・水質汚染への対応】 ・同社は有害物質使用特定施設を有しているものの、施設の床面や周辺は有害物質が地下へ浸みこまない構造となっており、土壌・水質汚染を防止している。 【廃棄物の適正な監理】 ・廃油、廃プラスチックなどの廃棄物の適正な保管基準や、運搬業者や処理業者への適正な委託、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の適正な運用を行っている。 【化学物質の管理】 ・使用している化学物質を蒸留再生により回収している。 【大気汚染への対応】 ・フロン排出抑制法に基づき、エアコンなどの製品の管理者を定めて、定期的に保守点検を実施している。 ・協立製作所は、法令に基づく環境基準の管理・運営部門の指導や ISO更新審査に対応するために、「2S3 定(整理・清掃・定置・定番・定量)活動」を実施している。2S(整理・整頓)レベルを一層前進させるために、毎週金曜日に全員参加で清掃活動を行っている。 【KPI】 ・xxx発電システムの導入(2023 年度まで) (それ以降は稼働状況を確認) ・電気使用量 2022 年度比 5%削減(売上増減考慮後)(2027 年度) ・ISO14001 の継続 |
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(3)従業員の幸福実現と人材力の向上
項目 | 内容 |
インパクト領域 | 健康・衛生【NI】 教育【PI】 雇用【PI】【NI】 包摂的で健全な経済【PI】 |
関連するSDGs |
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取組み内容 ・ KPI | ① 従業員の安全管理の徹底 -健康・衛生【NI】、雇用【NI】- ・協立製作所は、不安全行動を撲滅するため、KYT(危険予知運動)活動を毎月実施するとともに、xxx機株式会社・コマツの協力企業による組織の災害速報を横展開することなどにより、従業員の安全意識の向上を図っている。 ・また、安全衛生委員会を毎月開催するとともに、安全パトロールを毎月 1回以上実施し、不安全環境の撲滅を進めている。 安全パトロールによる改善活動 提供:㈱協立製作所 ② 従業員の健康維持と働きやすさの推進 -健康・衛生【NI】、雇用【NI】- ・協立製作所は社員食堂やシャワー付きロッカールームを完備し、従業員の健康維持と労働環境を整備している。 ・同社は 2021 年、受動喫煙に対する対策として、受動喫煙防止の重要性 を安全衛生委員会で説明するとともに、禁煙スペースを移動させることで分煙を推進した。 |
24
項目 | 内容 |
・残業時間の削減や有給休暇の取得を全社で推進し、働きやすい環境を整備している。 禁煙スペースの移動による受動喫煙対策 提供:㈱協立製作所 ③ 多様な人材が活躍できる環境づくり -雇用【PI】、包括的で健全な経済【PI】 - ・協立製作所は外国人材の活用や女性の活躍推進に力を入れている。 ・同社では、技能実習生や特定技能、派遣社員など多様な外国人を活用している。ものづくりの基盤は人材にあるという考えに基づき、外国人材の長期的な視点での技術習得を促進するために、茨城県内の専門学校などを卒業した優秀な外国人材の確保に注力するなど、同社の技術力を長きに支える人材の育成・確保を進めている。 ・女性活躍の取り組みとして、女性活躍推進法に基づく行動計画(2022 年度から 2027 年度の 5 か年計画)を策定し、幹部級の女性管理職の育成に力を入れている。 ・その他、産休育休制度や時短勤務制度、介護休暇制度を導入しており、従業員のライフスタイル沿った柔軟な働き方の実現に取り組んでいる。 ④ 次世代のものづくりを支える社員の育成 -教育【PI】- ・協立製作所は、全従業員の基本的な知識・技術の習得や技術の高度化を奨励するため、会社の営業上有効な資格取得(乙種危険物取扱者などの公的資格を含む)に対して手当を支給する「資格取得支援制度」を創設している。会社側から要求する資格試験に合格した従業員に対して受験費用を全額負担している。 |
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項目 | 内容 |
・また、取引先など社外の機械技能競技大会への参加を促すとともに、上位入賞を目指している。 ・その他、リーダーの育成を図るため、VPM 活動(全員参加型の現場改善活動)を実施している。 技能競技大会に参加した様子 提供:㈱協立製作所全員参加型の現場改善活動での発表会 提供:㈱協立製作所 【KPI】 ・労働災害発生ゼロを目指す ・安全パトロールの毎年実施 ⇒ 毎月 1 回以上実施 【現在:毎月 1 回】 ・残業時間の削減:月平均 13 時間以内(2027 年度) 【現在:月平均 15 時間】 ・有給休暇の取得推進:年次有給休暇の消化率(消化日数/全付与日数) 40%(2027 年度) 【現在:37.58%】 ・外国人材の雇用者数(技能実習含む):35 名(2027 年度)【現在:27 名】 ・女性管理職:2 名(2027 年度まで) 【現在:1 名】 ・女性の育児休暇取得率:100%(2027 年度) 【現在:100%】 ・公的資格所得者数(累計):16 名(2027 年度まで)【現在:累計 13 名】 ・VPM 活動の定着:年間 12 回実施(2027 年度)【現在:年間 12 回実施】 |
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5.管理体制
協立製作所は、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xxxx代表取締役社長が陣頭指揮を執り、xxx総務部部長をはじめとした総務部を中心に、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xxxx代表取締役社長を最高責任者、xxx総務部部長を実行責任者とした総務部を中心に、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施する。なお、実行責任者はモニタリング担当、金融機関に対する報告担当を兼ねることとする。
最高責任者 | 代表取締役社長 xx xx |
実行責任者 | 総務部 部長 xx x |
担当部署 | 総務部 |
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6.常陽銀行によるモニタリング
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成及び進捗状況については、常陽銀行と協立製作所の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
常陽銀行は、KPI 達成に必要な資金及びその他ノウハウの提供、あるいは常陽銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートす る。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合 は、常陽銀行と協立製作所が協議の上で再設定を検討する。
28
以上
本評価書に関する重要な説明
1. 本評価書は、常陽産業研究所が、常陽銀行から委託を受けて作成したもので、常陽産業研究所が常陽銀行に対して提出するものです。
2. 常陽産業研究所は、依頼主である常陽銀行および常陽銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する協立製作所から提供された情報と、常陽
産業研究所が独自に収集した情報に基づき、現時点での計画または状況に対して評価を実施しており、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3. 本評価を実施するにあたっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP
FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるととも
に、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施していきます。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<本件問合せ先>
株式会社常陽産業研究所
地域研究部 xx調査役 xx xx
〒310-0011
29
xxxxxxxxx 0 xx 0 x 00 x TEL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2023 年 1 月 31 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社協立製作所に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社常陽銀行 |
評価者:株式会社常陽産業研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、常陽銀行が株式会社協立製作所(「協立製作所」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社常陽産業研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項
(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた
「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。常陽銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、常陽産業研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、常陽銀行及び常陽産業研究所にそれを提示している。なお、常陽銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
常陽銀行及び常陽産業研究所は、本ファイナンスを通じ、協立製作所の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、協立製作所がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、常陽銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 常陽銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:常陽銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、常陽銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、常陽銀行からの委託を受けて、常陽産業研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て常陽産業研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、常陽産業研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面の
インパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である協立製作所から貸付人である常陽銀行及び評価者である常陽産業研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000