Contract
2022 年 9 月 30 日
各 位 株式会社 三十三銀行
日本アルシー株式会社との「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
株式会社三十三銀行(頭取:xx xx)は、持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、日本アルシー株式会社(社長:xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたのでお知らせいたします。
本件の取り組みにあたっては、株式会社三十三総研(社長:xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。今後も「三十三フィナンシャルグループSDGs宣言」のもと、企業活動を通じてSDGsの達成に貢献することで、持続可能な社会の実現に努めてまいります。
(※)企業活動が「経済・社会・環境」のいずれかに与えるインパクトを包括的に分析・特定し、ポジティブインパクトが期待できる活動と、ネガティブインパクトを低減する活動を支援するもので、借入人様によるSDGs達成への貢献度合いを評価指標とし、借入人様から情報開示を受けながら当行がその過程を定期的にモニタリングするものです。
1. 融資概要
(1) 契約日 | 2022年9月30日 |
(2) 融資金額 | 100百万円 |
(3) 期間 | 7年 |
(4) 資金使途 | 運転資金 |
2. 借入人概要
(1) 企業名 | 日本アルシー株式会社 |
(2) 所在地 | xxxxxxxxxxxxxx0000 |
(3) 事業内容 | 排水(廃液)処理用薬品の製造販売・排水処理プラントの建設 |
当社は、微生物処理を活用することで、工場排水や下水処理で問題となる汚濁物質の除去を、環境負荷を低減しながら、効率的かつ効果的に行う技術を有する。当社では、独自開発した水処理薬品の製造・販売をはじめ、従来型の排水プラ ントでは成し得なかった導入コストの低減・ゼロエミッション・コンパクト化・省力化にもつながる環境対応型排水処理施設「バイオアルシー」を建設し、事業展開をしている。 当社の製品・排水処理施設は既に大手自動車部品メーカーをはじめ国内企業に幅広く導入されているほか、タイをはじめとした東南アジアにおいても導入実績がある。現在は、独立行政法人国際協力機構(JICA)と共同でバイオアルシー導入普及・実証事業を行うこととなっており、東南アジア広域でのインフラ整備を同社のバイオアルシーによって実現する目標を掲げている。 <原水> <従来法> <アルシー法> (アルシーフロックN100シリーズの導入結果事例) (タイへ導入したバイオアルシー) | |
(4) 従業員数 | 30名(2022年9月現在) |
(5) 資本金 | 80百万円 |
3. 特定インパクトと測定するKPI
(1) 経済面 環境面 | 経済収束(ポジティブ)、水(質)(ポジティブ) | |
①2029年までに国内においてバイオアルシー設備を8件導入する。 <国内におけるこれまでの導入実績> 2017/12期:1件、2018/12期:0件、2019/12期:1件、2020/12期:2件、 2021/12期:0件 ②2029年までに東南アジア等の発展途上国のインフラ整備を5件実施する。 <国外におけるこれまでの10年間の実施実績> 台湾:1件、タイ:2件、インドネシア:2件、マレーシア1件 | ||
包摂的で健全な経済(ポジティブ) | ||
①2029年までに、留学生を3名採用する。 | ||
(2) 社会面 | 雇用(ポジティブ・ネガティブ)、教育(ポジティブ) | |
①2029年まで毎年賞与水準を2021/12期比1%ずつ向上させる。 ②2029年まで一人当たりの年間時間外労働を前年比毎年5%削減していく。 <従業員一人当たりの年間時間外労働時間の推移> 2017/12期:95.4時間、2018/12期:67.1時間、2019/12期:77.9時間、 2020/12期:89.5時間、2021/12期:45.4時間 ③2028年12月期までに資格取得者数の増加を図る。 | ||
xx・xx(ネガティブ) | ||
①1日以上の休業を要する労働災害発生件数0件を今後も維持する。 ②従業員の健康診断受診率100%を維持する。 ③35歳未満の法定外検診受診率を増加させる。 2022/12期:85%、~2024/12期:90%、~2026/12期:95%、 2027/12期以降:100% | ||
(3) 環境面 | 資源効率・安全性(ポジティブ) | |
①2029年までにクローズ化システムを3件導入する。 | ||
気候(ネガティブ) | ||
①2029年までに乗用車6台・トラック3台などの社用車をすべてFCV車・ HV車に切り替えCO2排出量の削減を図る。 |
資格 | 実績 | KPI |
公害防止管理者 | 2名 | 4名 |
毒物劇物取扱責任者 | 2名 | 4名 |
4. お問い合わせ先
(1) 三十三銀行(ソリューション営業部:xx、連絡先:059-354-7125)
(2) 三十三総研(調査部:xx、連絡先:059-354-7102)
(コンサルティング部:xx、連絡先:059-351-7417)
以 上
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2022 年9月 30 日株式会社三十三総研
三十三総研は、三十三銀行が、日本アルシー株式会社に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するにあたって、日本アルシー株式会社の活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価にあたっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及びESGハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
目次
1.評価対象の概要 2
2.日本アルシー株式会社の概要 2
2-1.基本情報
2-2.経営方針と事業内容
2-3.サスティナビリティに関連する活動
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性 16
3-1.経済面のインパクト
3-2.社会面のインパクト
3-3.環境面のインパクト
4.測定するKPI とSDGsとの関連性 20
4-1.経済面・環境面(ポジティブ)
4-2.経済面・社会面(ポジティブ)
4-3.社会面(ポジティブ)
4-4.社会面(ネガティブ)
4-5.環境面(ポジティブ)
4-6.環境面(ネガティブ)
4-7.その他KPI を設定しないインパクトと SDGsとの関連性
5.サスティナビリティ管理体制 26
6.モニタリング 26
7.総合評価 26
1.評価対象の概要
企業名 | 日本アルシー株式会社 |
借入金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
契約日及び返済期限 | 2022 年9月 30 日 ~ 2029 年9月 30 日 |
2.日本アルシー株式会社の概要
2-1.基本情報
本社所在地 | xxxxxxxxxxxxxx 0000 |
従業員数 | 28 名(2021/12 末時点) |
資本金 | 80 百万円 |
業種 | 排水(廃液)処理用薬品の製造販売、排水処理プラントの建設 |
事業拠点 | 本社工場及び環境分析センター:xxxxxxxxxxxxxx 0000 関東事業所:xxxxxxxxxx 000-0 xxx工業団地 名古屋支社:xxxxxxxxxxxx0xx 00-00海外関連会社:NIPPON ALSI (THAILAND) CO.,LTD Amata City Industrial Estate Phase 6C 700/602 Moo.7 T.Donhualor,A. Muang,Chonburi |
沿革 | 1988 年 日本ラパント株式会社を設立 業務拡大と企業イメージ明確化の為に日本アルシー株式会社に社名変更 日本下水道事業団の下水処理においてアクチゲンや活性汚泥診断薬がバルキング対策に貢献 1989 年 名古屋市xx区に名古屋支社を設立 1991 年 バイオアルシーの特許出願、バイオアルシー1 号機の建設 1992 年 アルシーフロックN100 シリーズ完成 1995 年 本社第2工場2階に事務所と機器分析設備を設置し、水質分析を強化 1996 年 xxの自動車メーカー向けに反応釜の増設 1997 年 資本金を 40 百万円に増資 1998 年 本社新社屋を同敷地内に建設 |
1998 年 デモ設備、事務所・工場内の排水処理設備として本社敷地内にバイオアルシーを建設 2000 年 環境計量事務所(アルシー分析センター)を開設 2001 年 バイオアルシーの特許成立(韓国、日本) アルシー法水処理基本特許が成立し、バイオアルシーの受注が拡大 2002 年 栃木県xx市に関東事業所を開設 2007 年 バイオアルシーの導入によるダイキャスト排水処理で、大幅な処理費用の削減効果に対してサンワアルテック㈱より表彰を受ける 2008 年 本社工場 ISO14001 取得 2009 年 福岡県京都郡に九州事業所を開設 資本金を 80 百万円に増資 2011 年 タイ王国に NIPPON ALSI(THAILAND) CO.,LTD を設立 2022 年 九州事業所を撤収 |
2-2.経営方針と事業内容
【事業内容】
日本アルシー株式会社(以下、日本アルシー)は、三重県三重郡菰野町に本社を置き、排水
(廃液)処理用薬品の製造販売、排水処理プラントの設計・製造・施工業務、分析事業、環境プラント維持管理業務の受託、排水処理設備のコンサルティング業務等を営む総合排水処理業者である。
同社は 1988 年に、設立者であるxxxxxが三菱モンサント化成株式会社(現:三菱ケミカルアグリドリーム株式会社)在籍中に開発した活性汚泥(下水や廃水中に生じる、細菌などの微生物からなる汚泥)のバルキング防止剤(水処理装置内の沈殿槽において固液分離が正常に行われない現象を防ぐもの)を主体に、運転維持管理技術や設備の改善増強工事等により菌相の安定化を総合的に進めていく事業を目的とし、日本ラパント株式会社を創業した。その後、単なるバルキング防止剤の販売から、研究開発を強化し同社独自のアクチゲン(糸状性細菌の選択性殺菌剤)を製造販売するまで事業範囲を広げた。また、菌体及び菌体代謝産物の製造や自動制御センサー機器の製造など業務が拡大し、企業イメージのさらなる明確化を図るため、社名を「日本アルシー株式会社」へと変更し、事業展開を行ってきた。主な事業内容については以下の通り。
〇環境対応型薬品事業 |
主に製造工場などから排出される排水処理において、汚泥削減を図る水処理薬品の開発、製造、販売を行う。主な薬品はアルシーフロックN100 シリーズ、アルシーフロックシリーズ、トルシリンシリーズ、アクチジェムシリーズ、アクチゲンシリーズ(バルキング防止剤)、活性汚泥診 断薬など。 |
【概要】 微生物の活動を選択的に抑制する新技術の開発から始まった環境対応型薬品事業。従来の無機凝集剤の問題点に着目し、有機凝集剤の開発に着手しアルシーフロックN100 シリーズを完成させた。 【同社の製品例】:アルシーフロックN100 シリーズ 一般的に広く用いられてきた薬品(無機凝集剤)は、添加によりpHを変動させること、汚染物質に対して大量添加が必要であること、活性汚泥処理に悪影響を及ぼすことなど多くの問題点を有していた。そこで、同社は逸早く上記の問題をすべて解決できる有機凝集剤「アルシーフロック(N100 シリーズ)」の開発に着手し、完成させた。本製品は有害物質を排出せず、微生物や環境に悪影響がなく、水処理に伴う廃棄物を削減できることを目指して開発された商品であり、安心して利用できるものとなっている。 <原水> <従来法> <アルシー法> 【特徴】 1. 発生スラッジ(下水処理場や各種工場などで発生する汚泥物質)量を大幅に低減 ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、塩化第二鉄などの無機凝集剤に比べて、汚泥発生量を大幅に削減でき、汚泥処分費用の大幅削減が可能。 2. バイオ処理に最適 生分解性(バクテリアや菌類などの微生物によって、有機化合物が水や二酸化炭素といった無機物まで分解される性質)であり、処理水の塩濃度を上昇させないため、活性汚泥処理などのバイオ処理プラントに適している。 3. 薬品使用量が少なくて済む 無機凝集剤を使用した従来型に比べて、薬品の使用量が 1/10 程度であり、在庫スペースが少なくて済む。 4. エマルジョン廃液に強い 水と油が混ざっている廃液(エマルジョン廃液)を容易に油水分離できる。 |
〇環境対応型バイオ処理設備事業 |
微生物処理プラントの設計、製造から施工業務まで一貫してバイオ処理設備事業を行う。 |
【概要】 従来の生物処理設備では処理できない廃液があることに着目し、様々な微生物の組合せで 2段階処理を行う排水処理システム「バイオアルシー」を開発。高機能で無駄の無い高効率処理が可能になり、少ない貴重なスペースでの無人処理を可能にした。ゼロエミッションの実現、排水の再利用を可能にするなど、環境保全に対応した事業を行っている。 【同社の製品例】:バイオアルシー 従来の活性汚泥処理は曝気(水を空気にさらし、液体に酸素を供給する)後、活性汚泥を沈殿分離して、分離した汚泥を返送する方式が一般的である。もっとも、この方式では濃厚廃液の処理が困難であるという欠点があった。また、濃厚廃液を処理する場合は、原水を希釈しなければならず廃水量が増加するため、非常に広大な曝気槽と沈殿槽が必要であることから広い土地が必要であった。業界内では、「濃厚廃液は生物処理が困難である」という常識があるなか、上記の問題点を解決すべく、嫌気好気循環型微生物処理装置「バイオアルシー」を開発。従来型ではそれぞれが分離している嫌気槽、好気槽、沈殿槽の3つの工程を一体化したシステムであり、少ない敷地面積に設置ができるため、コンパクトで高機能な微生物処理が可能となった。濃厚廃液も希釈することなくそのまま処理が可能であり、優れた処理能力で廃棄物及び余剰汚泥の大幅削減を可能にした。
バイオアルシー<側面> バイオアルシー<上部> 【特徴】 1. Three in One の省スペース・省エネルギー 酸素を嫌う嫌気性細菌、酸素を好む好気性細菌が存在し、それぞれ違った汚濁成分を分解できる特徴を有している。これらをうまく組み合わせると高濃度の難分解性物質さえも分解することが可能である。上記の嫌気槽、好気槽と沈殿槽を「3槽建て」にすることによって一体化・コンパクト化した 1 つのシステムにし、省スペース、省エネルギーが可能となり、従来設備に比べて建設コストも低減した。 |
<図:バイオアルシー> aerobic microbe:好気性細菌 anaerobic microbe:嫌気性細菌 waste water:廃水 2. 高濃度廃液にも対応 嫌気・好気処理を交互に繰り返すため、高濃度廃液(例:水溶性切削油、離型剤、塗装廃水等)の処理が可能である。これまで、高濃度廃液を産業廃棄物として外部委託焼却処理していた工場が、バイオアルシーの導入により高濃度廃液の外部委託処理ゼロを実現している。 3. 地球に優しい高機能 BOD(生物化学的酸素要求量)除去能力は、従来の活性汚泥処理に比べ3~10 倍アップ。また、微生物による処理のため、CO₂排出量が少なく、地球環境への悪影響が抑制されている。バイオアルシーにより処理された水は、河川放流できるレベルの水質を安定的に確保している。 |
【経営理念】
【ビジネスモデル】
〇微生物処理が難しい排水や廃液を独自の技術により微生物処理することで処理費用を低減させる。
他社が、微生物処理できない場合に導入する設備投資費用や薬品使用費用などと比較して、同社処理方法により発生する設備投資費用や運転管理コストを低減した金額を顧客にメリットとして提示し、そのメリットの一部を同社の貢献度により、受け取ることをメインのビジネスとして、この微生物処理ビジネスの普及と発展を推し進める。
同社の貢献度とは、
微生物処理を可能にするための技術提供
微生物処理を可能にする微生物処理設備の提供
微生物処理を可能にするための前処理技術ならびに要因の提供同上を達成するための前処理薬品の提供
顧客の貢献度とは、
本件を実施するに当たる設備投資要員の提供
処理場所の提供
ユーティリティの提供
同社と顧客との間で、この貢献度に対する評価を事前に実施して、顧客が得るメリットを両者で明確にする。そして、このメリットを実際に確認するための投資や技術改良を実施してメリットを出す。得られたメリットに対して、顧客と同社との間でのメリットの分配を事前に明確にしていた割合でその対価を分配して受け取る。
<日本アルシーと同業他社の相違点>
日本アルシー | 同業他社 | |
ビジネス | ・微生物処理を最大限に活用する技術を販売する ・微生物処理できない原因を明確にして、 その物質を選択的に除去することによ り、微生物処理能力を最大限に引き出す | ・微生物処理できないときに水処理薬品、脱水機、凝集沈殿、凝集加圧浮上設備、膜分離処理、活性炭吸着塔などを販売 |
商品 | 地球上に広く分布している微生物を用い る。これは無償で誰でも恩恵に預れる。これを活用するための微生物処理技術であ り、高分解能力を持つ「微生物処理設備と 前処理技術」と前処理薬品。 | 微生物処理できない残された汚濁物質の部分を物理化学的に除去するための設備や薬品を販売する |
商品例 | ・バイオアルシー高効率微生物処理設備 ・アルシーフロックN100シリーズ(前処理剤) ・アクチゲン(バルキング防止剤・活性汚泥調整剤) | ・特殊な菌やメディアを用いた微生物処理 ・特殊な菌体を販売 ・無機凝集剤(前処理・後処理) (PAC/ポリ鉄/硫酸バンド/xx) ・粉末活性炭、粒状活性炭 ・活性炭吸着塔、脱水機 ・減圧蒸発設備 ・焼却設備 |
概念 | ・汚濁物質を分解し水と炭酸にする ・常温常圧で空気により汚濁物質を燃焼させる ・廃棄物の発生量が少なく、かつ処理により地球環境の汚染を無害化する | ・汚濁物質を系外に隔離・分離する(汚濁物質がなくならないだけでなく、分離剤や薬剤も汚濁物質の分離とともに分離されて多量の廃棄物処理が必要となり、処理しても地球環境の汚染状態は継続され る) |
廃棄物の発生量 | 前処理汚濁物質のみ | 汚濁物質が吸着材や分離剤などと結合し て、大量の汚濁廃棄物が発生する |
処理コスト | 安価な処理コスト | 高価な処理コストと高価な機材費 |
実施例 | 濃厚水溶性切削廃液処理、熱間鍛造離型剤廃液処理、ダイキャスト離型剤廃液処理、 染色廃液処理、動植物油など | 蒸発濃縮処理、焼却処理、膜分離焼却処 理、膜分離処理、蒸発処理後焼却処理、脱 色剤、COD除去用凝集剤、活性炭など |
【環境問題への取組】
同社は 2008 年に本社工場にてISO14001 を取得しており、環境への負荷を最小限に抑えた事業展開を行っており、認証取得後も更新手続きにより認証維持を続けている。
※ISO14001 とは、環境マネジメントシステムに関する国際規格であり、社会経済的ニーズとバランスをとりながら、環境を保護し、変化する環境状態に対応するための組織の枠組み。
環境方針:基本理念 |
日本アルシーは、環境保全を使命とする総合廃水処理会社として、すべての人と企業活動から発生する汚水の微生物処理を通じて環境への負荷の抑制に努め、人の健康の維持と地 球環境の保全に、積極的に貢献します。 |
環境方針:行動指針 | |
1 | 当社の製品とサービスを提供することにより、お客様の環境改善を図ります。 |
2 | 事業活動に伴い発生する廃棄物を適正に管理します。 |
3 | 事業活動の各段階において、省資源・省エネルギーに努めます。 |
4 | 環境関連の法規制や条例及び組織が同意するその他の要求事項を遵守します。 |
5 | 環境教育活動を継続的に実施し、環境保全意識の普及を推進します。 |
6 | 事業活動を通じて、顧客をはじめ利害関係者に対し、事業に伴う環境配慮事項についての 具体的計画及び施策等を積極的に働きかけます。 |
7 | この環境方針を達成するため、環境目的・目標を設定し、維持していくことにより汚染の予防を図ります。また、環境目的・目標を含めた環境マネジメントシステムの各要素を定期的 に見直すことにより、継続的改善を図ります。 |
2-3.サスティナビリティに関連する活動
【一貫した総合排水処理事業】
(1)バルキング防止剤「アクチゲン」による下水道事業
1988 年の創業当時から注力しているのが、生物処理における活性汚泥のバルキング防止剤
「アクチゲン」の製造、販売である。「アクチゲン」とは糸状性細菌の選択性殺菌剤であり、単なる凝集剤ではなく、活性汚泥の自然な凝集力を短時間で引き出す。活性汚泥の処理能力の低下がなく、処理水を確保しながら活性汚泥の沈降性を即効的に回復させることが可能で、一度所定量を添加処理すると1~3ヶ月間は良好な状態が得られる。また、人体に無害で取り扱いが容易であるほか、活性汚泥の沈降性ならびに処理能力向上により電気代、凝集剤等の維持管理費が削減できる。上記の商品により、創業当初より食品製造業者の抱える問題解決をメインとして実施してきたxxの技術力、実績を有する。
(2)一貫した排水処理サービスの提供
排水処理に課題を抱える事業者は多岐に亘る。同社の製品であるアクチゲンやアルシーフロックシリーズ、バイオアルシーの導入などを活用し顧客ニーズに対応している。顧客ニーズには、迅速な改良を必要とする緊急性を要するものから、汚泥処理費用の削減、排水処理のランニングコストの低減、環境問題の面から廃棄物やCO₂の削減を目的とするものまで幅広いニーズがある。そうしたニーズに応え
るべく、同社は顧客ごとに適切な提案ができるよう、現地調査や検査・分析、処方、導入、確認、設備計画、設備設計・製造、施工など上流から下流まで一貫した排水処理サービスの提供を行っている。
(3)技術力の高いスペシャリストと専門的な環境分析センター
同社には技術オンリーの職種はなく、従業員全員が顧客のニーズをじっくりと聴取し、実験・分析をして、最適な提案をする技術力の高いスペシャリストで構成されている。顧客には最初から最後まで微生物、化学、排水処理、環境、電気、プラント設備といった多岐に亘る分野の知識を持つプロのセールスエンジニアが対応し、環境問題への高い意識を持って取り組んでいる。排水がどの様な状態になっても、その都度的確な提案ができる体制と、充実したアフターサービスで顧客のニーズに応えている。
また、同社独自の環境分析センターを有しており、排水の採水、分析試験を行っている。試験
結果の報告書を作成し、今後の対策方針の提案を行う。高い分析能力、解析能力に裏付けされた水処理のソリューションビジネスを展開している。
(4)クローズ化システムの構築
同社のアルシーフロックN100 シリーズとバイオアルシーを用いることで、排水処理で生じる塩濃度を低減することができ、排水をUF膜(限外濾過膜)などで濾過してトイレや冷却水として再利用する水の循環システムや排水を出さないクローズ化システムの構築が可能である。導入企業のコスト負担懸念から、過去の導入実績は 1 件にとどまっているものの、SDGsの取り組みを進める企業の増加を背景に、導入数を増加させていく予定。
(5)東南アジアのインフラ整備
2016 年8月~2017 年5月に国際協力機構(JICA)と実施した「インドネシア国生活排水処理インフラ整備へのバイオアルシー導入案件化調査」において、開発途上国である東南アジアのインフラ整備、特に下水道事業にバイオアルシーシステムが非常に優位であることが実証された。同社は、JICAと「生活排水処理インフラ整備へのバイオアルシー導入普及・実証事業」を行っており、今後も引き続き実施していくための予算(1.5 億円)を取得している。開発途上にある東南アジアのインフラ整備(特に下水道事業)を同社のバイオアルシーによって実現する余地は大きく、東南アジアのインフラ整備に関わる案件の増加を目標に掲げている。開発途上国のインフラ整備がバイオアルシーの導入で可能であることが証明されることで、将来的に日本国内の下水道事業にバイオアルシーシステムが採用される可能性も十分あり得ると考えられる。
<タイへ導入したバイオアルシー>
【積極的な外国人従業員の採用】
同社はタイに関連会社を有しており、東南アジア諸国から訪日している留学生を今後現地採用の人材として積極的に採用する予定である。2022 年 10 月より、ラオスからの留学生を 1 名採用することが決まっており、半年間日本で研修した後にタイの関連会社へと派遣する。同社は、東南アジア諸国の企業へ販路拡大を継続していく考えであり、営業活動を行う上で現地法人とのリレーションを築くことができる人材の雇用が重要であることから、通訳の役割を担える語学が堪能な東南アジア諸国出身の留学生を採用する予定。
【労働環境の改善】
(1)従業員の健康管理
従業員全員の健康診断、人間ドッグの受診費用を同社が負担しており、特に 35 歳未満の若年層の女性については乳がん検診、子宮がん検診の受診も同社の費用負担により受診を促進している。同社従業員の健康診断受診率は 100%を維持しており、また、35 歳未満の若年層の法定外検診受診率も 70%以上と高い水準にある。
(2)有給休暇取得率の向上
同社では勤続年数 10 年未満の若手従業員の有給休暇取得率は 100%を維持しており、従業員の雇用環境の向上に注力している。一方、勤続年数 10 年以上の中間管理職の有給休暇取得率は低位であり、今後向上を図ることを目指している。2019 年4月に施行された「働き方改革関連法」を社内で改めて周知徹底を図り、最低限の有給休暇の取得を行うことをはじめ、管理表を策定することにより、3か月毎に全社員の有給休暇取得状況を把握し取得を促すとともに、中間管理職においても例外なく取得することを推進している。
(3)従業員の所得向上
従業員のモチベーション向上のために、同社では業績に応じた賞与水準の引き上げを目標にしており、従業員へ還元することを意識している。今後、毎年賞与水準を1%ずつ引き上げていくことを目標としている。
(4)時間外労働の削減
勤務時間の管理については出勤簿を活用している。残業等の時間外勤務や休日出勤は事前に各部署の上席の許可を必要とする体制に変更している。理由なく会社に残ることを禁止した結果、直近3年間で徐々に残業時間は減少傾向にあり、従業員の時間外労働への意識も改善されつつある。
(5)従業員寮の完備
県外出身の従業員が居住できる独身寮を設けており、従業員の生活環境を整備している。
(6)労働災害発生を抑制する取組
本社工場内の薬剤製造所は危険物倉庫となっていることから、定期的な消防の立ち入り検査が必要であり、日頃より管理等の徹底を図っている。また、劇物の取り扱いもあるため、作業中の防具着用の義務化、排水処理場にて作業を行うなど系外に漏れ出ないように日々留意することで、労働災害の発生を抑制している。
【従業員の資格取得支援】
専門的な知識・技術を用いた事業を行う同社では、安全衛生や技術系の資格取得が必要である。そこで、従業員の資格取得にかかる受験費用を同社が負担することで積極的な資格取得を促進し、従業員の育成にも尽力している。今後、資格取得者に対するインセンティブの付与等も視野に入れており、より一層従業員の資格取得を支援していく予定である。なお、取得を推進する資格は以下の通りとなっている。
資格名 | 内容 | 取得者数 |
公害防止管理者 | 特定の工場において、燃料や原材料の検査、騒音や振動の発生施設の配置の改善、排出水や地下浸透水の汚染状態の測定の実施、煤煙の量や特定粉塵の濃度の測定の実施、排出ガスや排出水に含まれるダイオキシン類の量の測定の実施等の業務を管理する者。特定工場において、法律で設置が義務付けられている。 | 2名(2022/9末現在) |
毒物劇物取扱責任者 | 毒物及び劇物取締法の定めに基づき、毒物や劇物の製造・販売などを行う事業者でそれらによる保健衛生上の危害の防止に当る者の責任者として取得が義務付けられている。 | 2名(2022/9末現在) |
また、同社の本社がある三重県には、トヨタ自動車㈱のグループ企業が多く点在しているため、トヨタ自動車㈱のグループ企業(オールトヨタ)の構内において工事を行う場合に必要となる全豊田外来工事資格証の取得を積極的に進めており、新入社員の研修の一環としてオールトヨタの研修を受講させている。
【水質改善に貢献する取組】
同社では他の排水処理設備業者とは異なり、微生物処理を最大限に活用して、工場のグリーン生産に貢献している。
【資源の効率的な利用】
同社では、薬品を梱包する 20Lポリ容器、1tコンテナなどを回収し、少なくとも5回以上はリユースすることで資源の効率的な利用を行っている。
【環境負荷の低減】
(1)CO₂排出量の削減
一次処理用の薬品をポリ塩化アルミニウムやポリ硫酸第二鉄といった無機の凝集剤から同社の製品であるアルシーフロックN100 シリーズに変更することで、薬品由来の余剰汚泥を1/2~
1/10 に削減できる。これにより、産業廃棄物量が減少し、産業廃棄物を燃やすための顧客のコストの低減及び焼却時に発生するCO₂の削減が可能である。
(2)エコカーへの切り替え
同社では、現在保有している乗用車、トラックなどの社用車を今後すべてFCV(燃料電池自動車)・HV車に切り替え、ガソリン使用量の削減および再生可能エネルギーを利用することでCO₂排出量の削減を目指す。
(3)CO₂排出量の見える化
自社のCO₂排出量の削減に向けて、CO₂排出量見える化・削減クラウドサービス「アスゼロ」の導入を予定している。
(4)顧客の廃棄物削減に貢献
環境対応型バイオ処理設備事業を通じて顧客の廃棄物削減にも貢献している。ある自動車部品メーカーでは、同社のバイオアルシーシステムの導入により、産業廃棄物として処理していたものを全て内部処理に変更することで、大幅な廃棄物量の削減が可能となった。その結果、排水処理コストの大幅な削減にもつながり、これまで年間 1,800 万円必要であった排水処理コストが 300万円に減額し、廃棄物のみならず顧客のコスト削減にも貢献している。
<その他の導入事例>
原水
従来法
アルシー法
水溶性切削油排水 オートバイ メーカーY社様
アルシー法導入前 アルシー法導入後
45%削減
ED電着塗装排水 自動車部品 メーカーE社様
アルシー法導入前 アルシー法導入後
56%削減
原水 従来法 アルシー法
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性
※色の濃い項目が同社のインパクト領域
本ファイナンスでは、日本アルシーの事業について、国際標準産業分類における「他に分類されないその他の化学製品製造業」、「配管・暖房・空調設備工事業」として整理した。その前提のもとで UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、「包摂的で健全な経済」「経済収束」「水」
「住居」「保健・衛生」「教育」「雇用」「水(質)」「資源効率・安全性」「気候」「廃棄物」に関するポジティブ・インパクト、「保健・衛生」「雇用」「水(質)」「大気」「資源効率・安全性」「気候」「廃棄物」に関するネガティブ・インパクトが分析された。
一方、事業活動等を踏まえ、本ファイナンスで特定された同社のインパクトは以下の通りである。
3-1.経済面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ) 包括的で健全な経済 | 留学生の積極的な採用 | ・同社のタイの関連会社向け人材として、訪日している東南アジア諸国出身の留学生を積極 的に採用 |
経済収束 | 一貫した総合排水処理事業 | ・高効率微生物処理施設(バイオアルシー)の導入を促進させ、導入先の排水処理費用の削減に貢献 |
東南アジアのインフラ整備 | ・開発途上国である東南アジアにおいて、同社のバイオアルシーシステムを導入することでインフラ整備に貢献し、同地域の汚染物質の流出を抑制し、水質環境の維持、土壌汚染の減少に貢献 |
3-2.社会面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ)教育 | 従業員の資格取得支援 | ・安全衛生・技術系の資格取得者数の増加を図 る。資格試験の受験料を同社が負担。今後、資格取得者には給与への反映も検討。 |
雇用 | 留学生の積極的な採用 従業員の所得向上 従業員寮の完備 | ・同社のタイの関連会社向け人材として、訪日している東南アジア諸国出身の留学生を積極的に採用 ・業績推移に応じた従業員賞与の支給率の向上を図り、従業員のモチベーションアップを図る ・県外出身の男性従業員には独身寮を完備しており、従業員の生活環境を整備 |
(ネガティブ)保健・衛生 | 従業員の健康管理 労働災害発生を抑制する取組 | ・従業員の健康診断受診の推進を図っており、特に 35 歳未満の女性従業員においては乳がん検診、子宮がん検診の受診費用を同社が負担し受診を促進 ・薬品製造所において、作業中の防具着用の義務化や排水処理場で作業を行うなど劇薬が系外に漏れないように管理体制の構築をし、労働災害発生を抑制 |
雇用 | 有給休暇取得率の向上 | ・若手社員の有給休暇取得率は 100%を維持している。勤続年数 10 年以上の中間管理職の取得率が低く、今後取得を促進。 |
時間外労働の削減 | ・残業を行う場合、各部署の上司の許可を必要としたことで、直近3年間の時間外労働は徐々に減少傾向にあり、従業員の時間外労働に対する意識も改善傾向 |
3-3.環境面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ)水(質) | 水質改善に貢献する取り組み 東南アジアのインフラ整備 | ・微生物処理を最大限に活用して、工場のグリーン生産に貢献 ・開発途上国である東南アジアにおいて、同社のバイオアルシーシステムを導入することでインフラ整備に貢献し、同地域の汚染物質の流出を抑制し、水質環境の維持、土壌汚染の減 少に貢献 |
資源効率・安全性 | クローズ化システムの構築 | ・同社製品のアルシーフロックN100 シリーズとバイオアルシーを利用することで、排水処理で生じる塩分濃度を低減することができ、排水を濾過することでトイレや冷却水として再利用(ク ローズ化システム)を促進 |
気候 | CO₂排出量の削減 | ・高効率微生物処理施設(バイオアルシー)の 導入により、化石燃料を使用することでCO₂排出量の削減に貢献 |
廃棄物 | 顧客の廃棄物削減に貢献 | ・自社のバイオアルシーを通じて顧客の廃棄物を削減 |
(ネガティブ) 資源効率・安全性 廃棄物 | 資源の効率的な利用 | ・薬品容器やコンテナなどのリユースをしてお り、プラスチック素材のものは5回程度再利用することでコストを削減 |
気候 | エコカーへの切り替 | ・乗用車、トラックなどの社用車をすべてFCV (燃料電池自動車)・HV車に切り替え、ガソリン使用量の削減および再生可能エネルギーを利用することで、CO₂排出量を削減 ・自社のCO₂排出量の削減に向けて、CO₂排出量見える化・削減クラウドサービス「アスゼロ」の導入を予定 |
え | ||
CO₂排出量の見える化 |
なお、インパクト分析ツールで発出したネガティブ・インパクトのうち、同社のインパクトと特定しなかったものについては、以下記載の理由に基づく。
同社の事業活動において、自社の排水は同社製品の排水処理システムで処理した後に排水していることから水(質)への大きな影響は発生しないこと、大気に直接的に影響を与える化学物質の使用・排出をしていないことから「水(質)」「大気」については同社のネガティブ・インパクトとして特定しない。
4.測定するKPI とSDGsとの関連性
日本アルシーは本ファイナンス期間において以下の通り KPI を設定する。
4-1.経済面・環境面(ポジティブ)
特定インパクト | 経済収束 水(質) |
取組、施策等 | 【一貫した総合排水処理事業】 ・高効率微生物処理施設の導入を促進し、導入先の排水処理費用の削減と合理化を図っている 【東南アジアのインフラ整備】 ・開発途上国である東南アジアにおいて、同社のバイオアルシーシステムを導入することでインフラ整備に貢献し、同地域の汚染物質の流出を抑制し、水質環境の維持、土壌汚染の減少に貢献することで住民の保健衛生の向上を図る。既にタイ、インドネシア等に6件の実績がある。 |
借入期間におけるKPI | ・2029 年までに、国内においてバイオアルシー設備を8件導入する <国内におけるこれまでの導入実績> 2017/12 期:1件 2018/12 期:0件 2019/12 期:1件 |
2020/12 期:2件 2021/12 期:0件 ・2029 年までに東南アジア等の開発途上国のインフラ整備を5件実施する <国外におけるこれまでの(10 年間)実施実績> ・台湾:1件 ・タイ:2件 ・インドネシア:2件 ・マレーシア:1件 | ||
関連するSDGs | 6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 6.a 2030 年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協 力と能力構築支援を拡大する。 |
4-2.経済面・社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 包括的で健全な経済 雇用 | |
取組、施策等 | 【留学生の積極的な採用】 ・同社はタイに関連会社を有しており、今後東南アジア諸国 から訪日している留学生を現地採用の人材として積極採用を予定している | |
借入期間におけるKPI | ・2029 年までに留学生を3名採用する (2022/9末時点実績:0名) 2022 年 10 月より 1 名採用が決定 | |
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならび に同一労働同一賃金を達成する。 |
4-3.社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 雇用 | |
取組、施策等 | 【従業員の所得向上】 ・業績推移に応じた従業員賞与の支給率の向上を図り、従業員のモチベーションアップを図る | |
借入期間におけるKPI | ・2029 年まで、毎年賞与水準を 2021/12 期比1%ずつ向上させる (2021/12 期実績:▲18%(対前期比)) | |
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならび に同一労働同一賃金を達成する。 |
特定インパクト | 教育 | |
取組、施策等 | 【従業員の資格取得支援】 ・専門的な知識・技術を用いた事業を行う同社では、安全衛生や技術系の資格の取得が必要である。そこで、従業員の資格取得にかかる受験費用を同社が負担することで積極 的な資格取得を促進し、従業員の育成にも尽力している。 | |
借入期間におけるKPI | ・公害防止管理者資格取得者数を増加させる (2022/9末時点実績:2名) 2022/12 期:2名(2022/9末比±0名) 2023/12 期~2025/12 期:3名(2022/9末比+1名) 2026/12 期~2028/12 期:4名(2022/9末比+2名) ・毒物劇物取扱責任者資格取得者数を増加させる (2022/9末時点実績:2名) 2022/12 期:2名(2022/9末比±0名) 2023/12 期~2025/12 期:3名(2022/9末比+1名) 2026/12 期~2028/12 期:4名(2022/9末比+2名) | |
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 |
4-4.社会面(ネガティブ)
特定インパクト | 保健・衛生 | |
取組、施策等 | 【従業員の健康管理】 ・従業員全員の健康診断、人間ドッグの受診費用を同社で負担しており、特に 35 歳未満の若年層の女性については乳がん検診、子宮がん検診の受診も同社の費用負担により受診を促進している。同社従業員の健康診断受診率は 100%を維持しており、また、35 歳未満の若年層の法定外検診受診率も 70%以上と高い水準を維持している。 【労働災害発生を抑制する取組】 ・薬品製造所において、作業中の防具着用の義務化や排水処理場で作業を行うなど劇薬が系外に漏れないように管理体制を構築し、労働災害発生を抑制 | |
借入期間におけるKPI | ・従業員の健康診断受診率 100%を維持する ・35 歳未満の法定外検診受診率を増加させる 2022/12 期 85%、2023/12 期 90%、2024/12 期 90%、 2025/12 期 95%、2026/12 期 95%、2027/12 期以降 100% (過去実績:2021/12 期 75%) ・1日以上の休業を要する労働災害0件を今後も維持する (過去の労働災害発生件数:0件) | |
関連するSDGs | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 |
特定インパクト | 雇用 |
取組、施策等 | 【時間外労働の削減】 ・残業を行う場合各部署の上司の許可を必要としたことで、直近3年間の時間外労働は徐々に減少傾向にあり、従業 員の時間外労働に対する意識も改善されつつある |
借入期間におけるKPI | ・2029 年まで、一人当たりの年間時間外労働を毎年前年比 5%削減していく <従業員一人当たりの年間時間外労働時間の推移> 2017/12 期:95.4 時間 2018/12 期:67.1 時間 |
2019/12 期:77.9 時間 2020/12 期:89.5 時間 2021/12 期:45.4 時間 | ||
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 |
4-5.環境面(ポジティブ)
特定インパクト | 資源効率・安全性 | |
取組、施策等 | 【クローズ化システムの構築】 ・同社製品のアルシーフロックN100 シリーズとバイオアルシーを利用することで、排水処理で生じる塩分濃度を低減することができ、排水を濾過することでトイレや冷却水として の再利用(クローズ化システム)を促進する | |
借入期間におけるKPI | ・2029 年までにクローズ化システムを3件導入する (過去実績:1件) | |
関連するSDGs | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物 の発生を大幅に削減する。 |
4-6.環境面(ネガティブ)
特定インパクト | 気候 |
取組、施策等 | 【エコカーへの切り替え】 ・乗用車、トラックなどの社用車をすべてFCV(燃料電池自動車)・HV車に切り替え、ガソリン使用量の削減および再生可能エネルギーを利用することで、CO₂排出量の削減を 図る |
借入期間におけるKPI | ・2029 年までに全社用車をFCV(燃料電池自動車)及びHV車に切り替える <社用車保有台数内訳> ・乗用車6台 ・トラック3台 |
(2022/9 末時点:切り替え台数0台) | ||
関連するSDGs | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計 画に盛り込む。 |
その他、同社がインパクトとして特定した項目の中でKPIとして目標を設定しなかったものについては以下の通りであり、引き続きそれぞれの取り組みを確認していく。
4-7.その他KPIを設定しないインパクトと SDGsとの関連性
事業活動 | 関連するSDGsのターゲット | SDGsの ゴール |
〈社会面〉 有給休暇取得率の向上 | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成 する。 | |
従業員寮の完備 | 10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規制的かつ責任ある移住 や流動性を促進する。 | |
〈環境面〉 水質改善に貢献する取り組み | 6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 6.a 2030 年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対 象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。 | |
CO₂排出量の削減 | 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善 する。 | |
CO₂排出量の見える化 | 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善 する。 |
資源の効率的な利用 | 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減 する。 | |
顧客の廃棄物削減に貢献 | 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
5.サスティナビリティ管理体制
日本アルシーでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、藤野社長を最高責任者とし、総務部が中心となって日々の業務やその他活動を棚卸し、自社の事業活動とインパクトレーダー、SDGsの 17 のゴール・169 のターゲットとの関連性について検討を行った。 本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行後、返済期限までの間において、藤野社長と総務部を中心に KPI の達成状況を定期的に確認・協議を行うなど、推進体制を構築し、各部署に おいて実行していく。 |
最高責任者 | 代表取締役 藤野清治 |
管理責任者 | 総務部 取締役 藤野芳鹿 |
担当部 | 総務部 |
6.モニタリング
本件で設定したKPIの進捗状況は、日本アルシーと三十三銀行の担当者が年に1回以上の会合を設けることで確認する。モニタリングの結果、当初想定と異なる点があった場合には、三 十三銀行は、同社に対して適切な助言・サポートを行い、KPIの達成を支援する。 |
7.総合評価
本件はUNEP FIの「ポジティブ・インパクト金融原則」に準拠した融資である。日本アルシーは、上記評価の結果、本件融資期間を通じてポジティブな成果の発現とネガティブな影響の低減に努めることを確認した。また、三十三銀行は年に1回以上その成果を確認する。 |
本評価書に関する重要な説明 1.本評価書は、三十三総研が、三十三銀行から委託を受けて作成したもので、三十三総研が三十三銀行に対して提出するものです。 2.三十三総研は、依頼者である三十三銀行および三十三銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する日本アルシーから供与された情報と、三十三総研が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。 3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書 の提供を受けています。 |
〈本件問合せ先〉
株式会社三十三総研
調査部 研究員 内田 誠弥
〒510-0087
三重県四日市市西新地 10 番 16 号第二富士ビル4階
TEL:059-354-7102 FAX:059-351-7066
第三者意見書
2022 年 9 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 日本アルシー株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社三十三銀行 |
評価者:株式会社三十三総研 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、三十三銀行が日本アルシー株式会社(「日本アルシー」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社三十三総研による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項
(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた
「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシア ティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、イ ンパクト分析ツールを開発した。三十三銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際 し、三十三総研と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国 内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分 析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、 中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、三十三銀行及び三十三総研 にそれを提示している。なお、三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義 を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義 する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1 定義
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
三十三銀行及び三十三総研は、本ファイナンスを通じ、日本アルシーの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、日本アルシーがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2 フレームワーク
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、三十三銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:三十三銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、三十三銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、三十三銀行からの委託を受けて、三十三総研が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て三十三総研が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、三十三総研が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である日本アルシーから貸付人である三十三銀行及び評価者である三十三総研に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評
価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト 担当アナリスト
梶原 敦子 川越 広志
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026