1.監査役会議案の作成(「【M69】【M70】監査役会の招集、開催」を参照)通常、総会後最初の監査役会にて監査役会議長を決定するので、監査役の退任や新任の監査 役候補者が確定した段階(株主総会付議議案が確定する 5 月末頃)で、総会後の監査役会の体制について監査役会議長と打合せをする。この際、総会後の監査役会ではこれ らの議案と併せ、通常、監査方針・監査計画・職務の分担等も付議するので、その点を含めて監査役会議長と打合せのうえ、これらを網羅した議案資料を作成する。 スタッフ業務のポイント...
Ⅰ 期初業務 | 根拠条x | |
x項目 中項目 | 常勤監査役の選定(解職を含む) 常勤監査役の選定 | 法 390 条 2 項 2号・3 項 基準 4 条・7 条 |
監査業務支援ツール | □「常勤監査役選定通知書」(ツールNo.A-1) | |
1.株主総会終了後の監査役会 ① 株主総会後の監査役会で監査役会議長、常勤監査役を選定し、また、定款に定めがある場合は常任監査役を選定する。 ② 会社によっては必要に応じ特定監査役を決定する。 ③ 選定又は決定した結果を、文書等により適宜代表取締役等に通知する。なお、会社によっては引き続き開催される取締役会席上にてその旨報告することで通知の代替としているところもある。 | ||
2.常勤監査役の選定 ① 監査役会設置会社では、常勤監査役を 1 名以上選定(法 390 条 3 項)しなければならないとされており、株主総会において監査役の改選があった場合は、総会後の監査役会にて決議をもって常勤監査役を選定する。また、監査役の改選がなかった場合でも、毎期、常勤監査役を選定する会社もある。なお、選定にあたっては、本人の承諾を得ておく。 ② 常勤監査役とは他に常勤の仕事がなく、会社の営業時間中原則としてその会社の監査役の職務に専念する者をいい、常勤者としての特性を踏まえ、監査の環境の整備及び社内の情報収集に積極的に努め、かつ、内部統制システムの構築・運用の状況を日常的に監視し検証することが求められている (xxxxx協会・監査役監査基準 4 条)。 ③ 取締役及び代表取締役並びに監査役に異動があった場合(選任・辞任・解任等)は、商業登記が必要であるが、常勤監査役は登記事項ではない。 | ||
監査役業務のポイント | ✍常勤監査役の解職 会社法390 条2 項に基づき、監査役会は決議をもって常勤監査役を選定するのみならず、解職することができる。この解職理由について法的定めはなく、したがって各社の監査役会に判断が委ねられている。他社の役員を常勤監査役として選定することは法令上禁止されてはいないが、その結果、職務執行が適切に行えなかった場合や、勤務形態が「常勤」の名に値しない場合は、当該常勤監査役は善管注意義務違反・任務懈怠となるおそれがある。また、監査役会が定める各監査役の職務の分担も実態に合わず、結果として十分な監査ができなくなるであろうことから、監査役会は当該監査役を解職する必要がある。 | |
3.代表取締役への通知 ① 常勤監査役を選定した旨を記した「選定通知書」を作成し、代表取締役あるいは取締役会に通知する。 ② 選定通知書は法令上、作成を義務付けられたものではなく任意のものであるため、会社によってはこれらの通知書を作成せず、株主総会後の最初の取締役会前に開催される監査役会で決議した監査役会議長、特定監査役名と併せて常勤監査役名を口頭報告し、取締役会議事録に報告があった旨を書き留めている会社もある。 | ||
【留意点】 ア. 会社によっては、定款に「必要に応じて常任監査役を定めることができる」と定めている。 「常任監査役」は会社法が定める「常勤監査役」とは関係がない。一般的に「常任」は会社内部の身分を表す肩書として使用されており、常勤監査役でかつ常任監査役であってもよく、あくまでも定款自治の範囲内での決議事項である。 イ. 会社法及び関連法令においては、「選定」の語は会議体の決議によって定めることが必須とされている地位に限定して使用されており、会社の意思によって定めるか否かを選択できる職務については単に「定め」の語を使用している。従い、一定の地位を付与されるものでもなく、会社の意思によって定めるか否かを選択できる特定監査役については、会社法 上「選定」の語は用いられていない。 |
1.監査役会議案の作成 (「【M69】【M70】監査役会の招集、開催」を参照) 通常、総会後最初の監査役会にて監査役会議長を決定するので、監査役の退任や新任の監査役候補者が確定した段階(株主総会付議議案が確定する 5 月末頃)で、総会後の監査役会の体制について監査役会議長と打合せをする。この際、総会後の監査役会ではこれらの議案と併せ、通常、監査方針・監査計画・職務の分担等も付議するので、その点を含めて監査役会議長と打合せのうえ、これらを網羅した議案資料を作成する。 | |
スタッフ業務のポイント | 2.監査役会議事録の作成 (「【M71】監査役会議事録作成と署名・記名押印」を参照) ① 監査役会に同席する。 ② 議事の経過を記録し、議事録の作成に備える。 ③ 書き留めた議事の内容をもとに議事録案を作成する。 ④ 議事録案を作成次第、議長に確認し、その後、出席した監査役に内容の確認をとる。 ⑤ 修正意見があった場合、当該箇所の修正の要否を検討し、再度、監査役に内容の確認をとる。 ⑥ 議事録を製本し、出席した監査役の署名・記名押印をとる。 ⑦ 議事録及び謄写を保管する。 |
3.執行部門への通知・手続き ① 常勤監査役の「選定通知書」を予め作成しておき、監査役会終了後に速やかに提出できるように準備しておく。書式は任意であるが、以下の項目を記載し、提出する。 ア. 常勤監査役名x. 就任日 ウ. 宛先(代表取締役あるいは取締役会とする)エ. 議長あるいは監査役全員の押印 ② 提出後、「選定通知書」の写しを保管する。 | |
スタッフとして留意する点 | 【議事録記載事項】 議事録に以下の事項が記載されているか確認する。ア. 監査役会が開催された日時・場所 イ. 出席した監査役の氏名(欠席した監査役がいる場合はその氏名) ウ. 監査役会に出席した取締役・会計参与又は会計監査人がある場合は、その氏名又は名称エ. 開催場所に存しない監査役、取締役、会計参与又は会計監査人が出席した場合はその出席 方法 (ある場合) オ. 議長の氏名(議長が存する場合) カ. 議事の経過の要領及び結果(議題、議事進行過程、出席者の意見・発言、結果) |
【通知書】 選定通知書の書式及び作成は任意であるが、監査役会活動の証跡としてとどめるため、作成することが望ましい。 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 監査役会設置会社は、常勤監査役を 1 名以上選定しなければならいことが法 390 条 3 項に明記されているが、指名委員会等設置会社には同様の定めがなく、したがって常勤の監査委員を選定する法的義務はない。ただし会社によっては、監査委員会の決議をもって常勤監査委員を選定しているケースもある。 一方、監査委員会は委員 3 人以上で組織し(法 400 条 1 項)、その過半数は社外取締役でなければ ならない(法 400 条 3 項)と定められているが、会社によっては監査委員全員が社外取締役で構成されている場合もある。社外取締役は通常、非常勤が多いと考えられることから、監査委員全員が非常勤であることも想定され得る。 なお、xxxxx協会が 2015 年度に実施したアンケートでは、指名委員会等設置会社のうち 73.3%の会社で常勤の監査委員がいるとの結果になっていた。常勤の監査委員を任意に選定した場合には、常勤の監査委員は、執行役会・常務会等の取締役会以外の会議体に出席したり、各地の事業所等に赴いて往査を行うことが考えられる。また、選定委員として、常勤の監査委員を選定することも考えられる。 今般の改正会社法に則り、常勤の監査委員の選定の有無及びその理由の事業報告への開示が必要であることも踏まえ、選定の有無を決定する必要もある。 監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役は 3 人以上で、その過半数が社外取締役であ ることが要求されている(法 331 条 6 項)。また、監査等委員会は全ての監査等委員で組織するとされ ており(法 399 条の 2 第 1 項)、社外取締役が過半数を占める組織となる。 監査等委員会設置会社は、法的には常勤の監査等委員の選定を要求されていないが、自社の事情に |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) |
応じて、監査等委員会が常勤の監査等委員を選定することは可能である。xxxxx協会「監査等委員会監査等基準」は、「監査等委員会は、必要があると認めたときは、常勤の監査等委員を選定することができる」(5 条 2 項)としている。 監査等委員会は、法令に明記されている職務を遂行する監査等委員を選定することができる(法 342 条の 2 第 4 項、法 361 条 6 項、法 399 条の 3 第 1 項・2 項、法 399 条の 7 第 1 項 2 号・3 項・4 項、法 399 条の 14、xx 132 条 5 項 3 号イ及び計規 130 条 5 項 3 号イ、計規 125 条)が、xxxxx協会「監査等委員会監査等基準」は、上記以外にも「監査等委員会の職務を適切に遂行するために、監査等委員会がその職務分担として定めた職務を行う監査等委員」を定めることができるとしている(10 条 1 項 9 号)。 | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | ✍社内規程 常勤監査役の選定に関して、法のみならず、自社の規程として定めている会社もあるので、まずは自社の定款・監査役会規則・監査役基準等にどのように記載されているかを確認しておく必要がある。下記に、常勤監査役の選定に関する記載例として、xxxxx協会のひな型を示す。 ◆ 監査役会規則(xxxxx協会「監査役会規則(ひな型)」 第5条 監査役会は、その決議によって監査役の中から常勤の監査役を選定し又は解職する。 ◆ 監査役監査基準(xxxxx協会「監査役監査基準」 第4条 1.監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない。 2.常勤監査役は、常勤者としての特性を踏まえ、監査の環境の整備及び社内の情報の収集に積極的に努め、かつ、内部統制システムの構築・運用の状況を日常的に監視し検証する。 3.常勤監査役は、その職務の遂行上知り得た情報を、他の監査役と共有するよう努める。 ✍「選任」・「選定」・「互選」の違い ◆ 選任 「選任」とは、会社法上の一定の地位を有しない不特定の者の中から、会議体の決議をもってある者を選んで特定の地位を付与することであり、株主総会による取締役・会計参与・監査役の選任、取締役会による執行役の選任などがこれにあたる。なお、「選任」に対しては「解任」が相対する言葉である。 ◆ 選定 「選定」とは、会社法上の一定の地位を有する特定の者の中から、会議体の決議をもってさらにある者を選んで一定の地位を付与することであり、取締役会による代表取締役・特別取締役の選定、委員会設置会社における指名・監査・報酬委員並びに代表執行役の選定、監査役会による常勤監査役の選定などがこれにあたる。なお、「選定」に対しては「解職」が相対する言葉である。 ◆ 互選 「互選」とは、会社法上の一定の地位を有する特定の者の中において、相互にある者を選んでさらに一定の地位を付与することであり、取締役会非設置会社における定款の定めに基づく代表取締役の互選、特別取締役の中における特別取締役会の決議内容を報告する取締役の互選、監査役 会非設置会社における会計監査人解任時の株主総会への報告監査役の互選などがこれにあたる。 |
参考文献 | xxxxx[2009]『株式会社法』有斐閣。 |
Ⅰ 期初業務 | 根拠条x | |
x項目 中項目 | 特定監査役の決定(任意) 特定監査役の決定 | xx 132 条 5 項 2 号イ 計規 124 条 5 項 2 号イ |
□「特定監査役選定通知書」(ツールNo.A-3) | ||
監査業務支援 | ・130 条 5 項 2 号イ | |
ツール | 基準 28 条⑤・33 条④ | |
1.株主総会終了後の監査役会 ① 株主総会後の監査役会で監査役会議長、常勤監査役を選定し、また、定款に定めがある場合は常任監査役を選定する。 ② 会社によっては必要に応じ特定監査役を決定する。 ③ 選定又は決定した結果を、文書等により適宜代表取締役等に通知する。なお、会社によっては引き続き開催される取締役会席上にてその旨報告することで通知の代替としているところもある。 | ||
監査役業務のポイント | 2.特定監査役の決定(任意) ① 特定監査役とは、主に監査報告内容の通知・受領に係る職務を担う監査役として監査役会が定める監査役であり、以下の職務を行う(計規 132 条 1 項・計規 130 条 1 項)。 ア. 事業報告等に係る監査役会の監査報告の内容を、特定取締役に通知 イ. 会計監査人から計算関係書類に係る会計監査報告の内容の通知を受領 ウ. 計算関係書類に係る監査役会の監査報告の内容を、特定取締役及び会計監査人へ通知 エ. 必要な場合は、特定取締役との間で上記監査役会の監査報告の内容を通知日する日を合意する ② 必ず特定監査役を定めなければならない法的義務はない。しかしこの場合は、すべての監査役が特定監査役としての職責を果たさなければならないので、特定監査役を定めることが望ましい。特定監査役を決定する場合は、必ず監査役会で定めなければならない。なお、会社によっては、任意の監査役を特定監査役として定めるのではなく、予め監査役会規則等によって監査役会議長あるいは常勤監査役をもって特定監査役とする旨を定めている会社もあ る。 ③ 監査役会で特定監査役を定める時期については、以下の場合が考えられる。 ア. 監査役会議長及び常勤監査役の選定並びに監査方針・監査計画及び職務分担の決定等と併せて、総会後の監査役会で定める イ. 特定取締役から期末監査資料等を受領する時期に合わせ、監査役会決議をもって定める | |
3.代表取締役への通知 ① 特定監査役を決定した旨を記した「決定通知書」を作成し、代表取締役あるいは取締役会に通知する。 ② 決定通知書は法令上、作成を義務付けられたものではなく任意のものであるため、会社によってはこれらの通知書を作成せず、株主総会後の最初の取締役会前に開催される監査役会で決議した監査役会議長、常勤監査役名と併せて、特定監査役名を口頭報告し、取締役会議事 録に報告があった旨を書き留めている会社もある。 | ||
1.監査役会議案の作成 (「【M69】【M70】監査役会の招集、開催」を参照) 通常、総会後最初の監査役会にて、必要に応じて特定監査役を決定するので、監査役の退任や新任の監査役候補者が確定した段階(株主総会付議議案が確定する 5 月末頃)で、総会後の監査役会の体制について監査役会議長と打合せをする。この際、総会後の監査役会ではこれらの議案と併せ、通常、監査方針・監査計画・職務の分担等も付議するので、その点を含めて監査役会議長と打合せのうえ、これらを網羅した議案資料を作成する。 | ||
スタッフ業務のポイント | 2.監査役会議事録の作成 (「【M71】監査役会議事録作成と署名・記名押印」を参照) ① 監査役会に同席する。 ② 議事の経過を記録し、議事録の作成に備える。 ③ 書き留めた議事の内容をもとに議事録案を作成する。 ④ 議事録案を作成次第、議長に確認し、その後、出席した監査役に内容の確認をとる。 ⑤ 修正意見があった場合、当該箇所の修正の要否を検討し、再度、監査役に内容の確認をとる。 ⑥ 議事録を製本し、出席した監査役の署名・記名押印をとる。 ⑦ 議事録及び謄写を保管する。 |
3.執行部門への通知・手続き ① 特定監査役の「決定通知書」を予め作成しておき、監査役会終了後に速やかに提出できるように準備しておく。書式は任意であるが、以下の項目を記載し、提出する。 ア. 特定監査役名イ. 就任日 ウ. 宛先(代表取締役あるいは取締役会とする)エ. 議長あるいは監査役全員の押印 ② 提出後、「決定通知書」の写しを保管する。 | |
スタッフとして留意する点 | 【議事録記載事項】 議事録に以下の事項が記載されているか確認する。ア. 監査役会が開催された日時・場所 イ. 出席した監査役の氏名(欠席した監査役がいる場合はその氏名) ウ. 監査役会に出席した取締役・会計参与又は会計監査人がある場合は、その氏名又は名称エ. 開催場所に存しない監査役、取締役、会計参与又は会計監査人が出席した場合はその出席 方法 (ある場合) オ. 議長の氏名(議長が存する場合) カ. 議事の経過の要領及び結果(議題、議事進行過程、出席者の意見・発言、結果) 【通知書】 決定通知書の書式及び作成は任意であるが、監査役会活動の証跡としてとどめるため、作成することが望ましい。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においても、特定監査委員を定める手続き及び特定監査委員の職務は、監査役会設置会社と同様であるが、特定監査委員を監査委員会で定めなかった場合は、監査委員全員が特定監査委員とはならず、「監査委員のうちいずれかの者」が特定監査委員となる(xx 132 条 5 項 3 号ロ・計規 130 条 5 項 3 号ロ)。 この場合、特定監査委員の職務は委員のうちの誰か 1 人が行えばよく、また、会計監査人は会計監査報告の内容を、いずれの監査委員に対して通知してもよい。 監査等委員会設置会社においても、特定監査等委員を定める手続き及び特定監査等委員の職務は、監査役会設置会社と同様であるが、特定監査等委員を監査等委員会が定めなかった場合は、監査等委員全員が特定監査等委員となるのではなく、「監査等委員のうちいずれかの者」が特定監査等委員となる(xx 132 条 5 項 3 号ロ、計規 130 条 5 項 3 号ロ)。 この場合、特定監査等委員の職務は委員のうちの誰か 1 人が行えばよく、また、会計監査人は会計監 査報告の内容を、いずれの監査等委員に対して通知してもよい。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | ✍社内規程 特定監査役の決定に関して、法のみならず、自社の規程として定めている会社もあるので、まずは自社の定款・監査役会規則・監査役監査基準等にどのように記載されているかを確認しておく必要がある。下記に、特定監査役の決定に関する記載例として、xxxxx協会のひな型を示す。 ◆ 監査役会規則(xxxxx協会「監査役会規則(ひな型)」 第7条 1.監査役会は、その決議によって次に掲げる職務を行う者(以下、特定監査役という)を定める。一 各監査役が受領すべき事業報告及びその附属明細書並びに計算関係書類を取締役から受 領し、それらを他の監査役に対し送付すること 二 事業報告及びその附属明細書に関する監査役会の監査報告の内容を、その通知を受ける者として定められた取締役(以下、特定取締役という)に対し通知すること 三 特定取締役との間で、前号の通知をすべき日について合意をすること 四 会計監査人から会計監査報告の内容の通知を受け、当該監査報告の内容を他の監査役に対し通知すること 五 特定取締役及び会計監査人との間で、前号の通知を受けるべき日について合意をすること六 計算関係書類に関する監査役会の監査報告の内容を特定取締役及び会計監査人に対し通 知すること 七 特定取締役との間で、前号の通知をすべき日について合意をすること 2. 特定監査役は、常勤の監査役とする。 ✍「選任」・「選定」・「互選」の違い ◆ 選任 「選任」とは、会社法上の一定の地位を有しない不特定の者の中から、会議体の決議をもって |
ある者を選んで特定の地位を付与することであり、株主総会による取締役・会計参与・監査役の選任、取締役会による執行役の選任などがこれにあたる。なお、「選任」に対しては「解任」が相対する言葉である。 ◆ 選定 「選定」とは、会社法上の一定の地位を有する特定の者の中から、会議体の決議をもってさらにある者を選んで一定の地位を付与することであり、取締役会による代表取締役・特別取締役の選定、委員会設置会社における指名・監査・報酬委員並びに代表執行役の選定、監査役会による常勤監査役の選定などがこれにあたる。なお、「選定」に対しては「解職」が相対する言葉である。 ◆ 互選 「互選」とは、会社法上の一定の地位を有する特定の者の中において、相互にある者を選んでさらに一定の地位を付与することであり、取締役会非設置会社における定款の定めに基づく代表取締役の互選、特別取締役の中における特別取締役会の決議内容を報告する取締役の互選、監査役会非設置会社における会計監査人解任時の株主総会への報告監査役の互選などがこれにあた る。 | |
参考文献 | xxx・xxxx[2006] 「新会社法関係法務省令の解説(5) 事業報告〔下〕」(『旬刊商事法務』 1763 号、21 頁)。 |
Ⅰ 期初業務 | 根拠条x | |
x項目 中項目 | 監査役会議長の選定 監査役会議長の選定 | 基準 8 条 |
監査業務支援ツール | □「監査役会議長選定通知書」(ツールNo.A-2) | |
1.株主総会終了後の監査役会 ① 株主総会後の監査役会で監査役会議長、常勤監査役を選定し、また、定款に定めがある場合は常任監査役を選定する。 ② 会社によっては必要に応じ特定監査役を決定する。 ③ 選定又は決定した結果を、文書等により適宜代表取締役等に通知する。なお、会社によっては引き続き開催される取締役会席上にてその旨報告することで通知の代替としているところもある。 | ||
監査役業務のポイント | 2.監査役会議長の選定 ① 会議体である監査役会の運営を円滑に進めるため、監査役会の決議をもって監査役会議長を 選定する。監査役会議長の役割は、通常「監査役会を招集し運営するほか、監査役会の委嘱 を受けた職務を遂行する」(基準 8 条 2 項)ことであり、監査役会の代表者的位置付けをもつ。 ② 通常は、監査役が選任(又は重任)され、新たな監査役体制となる総会後の監査役会にて議長を選定する。ただし監査役会議長が選定されるまでの間は仮の議長を決め(自薦・他薦、互選、協議など決め方は問わないが)、仮議長は、議長が選定されるまでの間、議事進行役を代行する。議長が選定された後は、選定された議長が議事進行を担う。 ③ 監査役会議長を選定することは法令には規定されていないが、各社の監査役監査基準・監査役会規則等に定めているのが一般的である。 ④ 監査役会の委嘱を受けた議長の職務は具体的に次のようなものが挙げられる。ア. 監査役会の招集 イ. 監査調書を監査対象部門に通知 ウ. 各種同意依頼書等、執行部門からの書類受領者 エ. 各種同意回答書、監査結果等の書類の提出責任者 等 ⑤ 各社の監査役会規則等で、議長が監査役会を招集する旨を定めていたとしても、会社法上、各監査役は監査役会を招集することができる(法 391 条)。 | |
【留意点】 ア. 選により議長を定めることで、出席監査役全員の了承があれば、仮議長は選任しなくてもよい。 イ. 議長に事故ある場合(出張よる不在・病欠等)に備え、予め議長代行を定めておくことが望ましい(各社の監査役監査基準・監査役会規則等に議長の代行者に定めがある場合はそれに従う)。 | ||
3.代表取締役への通知 ① 監査役会議長を選定した旨を記した「選定通知書」を作成し、代表取締役あるいは取締役会に通知する。 ② 選定通知書は法令上、作成を義務付けられたものではなく任意のものであるため、会社によってはこれらの通知書を作成せず、株主総会後の最初の取締役会前に開催される監査役会で決議した常勤監査役、特定監査役名と併せて、監査役会議長名を口頭報告し、取締役会議事 録に報告があった旨を書き留めている会社もある。 | ||
スタッフ業務のポイント | 1.監査役会議案の作成 (「【M69】【M70】監査役会の招集、開催」を参照) 通常、総会後最初の監査役会にて監査役会議長を決定するので、監査役の退任や新任の監査役候補者が確定した段階(株主総会付議議案が確定する 5 月末頃)で、総会後の監査役会の体制について監査役会議長と打合せをする。この際、総会後の監査役会ではこれらの議案と併せ、通常、監査方針・監査計画・職務の分担等も付議するので、その点を含めて監査役会議長と打合せのうえ、これらを網羅した議案資料を作成する。 | |
2.監査役会議事録の作成 (「【M71】監査役会議事録作成と署名・記名押印」を参照) ① 監査役会に同席する。 ② 議事の経過を記録し、議事録の作成に備える。 |
③ 書き留めた議事の内容をもとに議事録案を作成する。 ④ 議事録案を作成次第、議長に確認し、その後、出席した監査役に内容の確認をとる。 ⑤ 修正意見があった場合、当該箇所の修正の要否を検討し、再度、監査役に内容の確認をとる。 ⑥ 議事録を製本し、出席した監査役の署名・記名押印をとる。 ⑦ 議事録及び謄写を保管する。 3.執行部門への通知・手続き ① 監査役会議長の「選定通知書」を予め作成しておき、監査役会終了後に速やかに提出できるように準備しておく。書式は任意であるが、以下の項目を記載し、提出する。 ア. 監査役会議長名イ. 就任日 ウ. 宛先(代表取締役あるいは取締役会とする)エ. 議長あるいは監査役全員の押印 ② 提出後、「選定通知書」の写しを保管する。 | |
スタッフとして留意する点 | 【議事録記載事項】 議事録に以下の事項が記載されているか確認する。ア. 監査役会が開催された日時・場所 イ. 出席した監査役の氏名(欠席した監査役がいる場合はその氏名) ウ. 監査役会に出席した取締役・会計参与又は会計監査人がある場合は、その氏名又は名称 エ. 開催場所に存しない監査役、取締役、会計参与又は会計監査人が出席した場合はその出席 方法 (ある場合) オ. 議長の氏名(議長が存する場合) カ. 議事の経過の要領及び結果(議題、議事進行過程、出席者の意見・発言、結果) |
【通知書】 選定通知書の書式及び作成は任意であるが、監査役会活動の証跡としてとどめるため、作成することが望ましい。 | |
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、監査委員長は法令上規定されていないが、機関としての監査委員会の運営を円滑に行うため、各社の監査委員会監査基準又は監査委員会規則に基づき選定する。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | 監査等委員会の委員長の選定については、監査役会議長と同様、法の規定はないが、組織運営上 の要請から委員長を選定することを監査等委員会規則等で決めるのが一般的である。日本監査役協会の「監査等委員会監査等基準」では、「監査等委員会は、監査等委員会の長を定めるものとする」としている(9 条 2 項)。 |
各社の工夫・事例 | 監査役会規則で、議長の不慮の欠席に備え、予め代行順位を決めている会社もある。 |
その他特記事項 | ✍「選任」・「選定」・「互選」の違い ◆ 選任 「選任」とは、会社法上の一定の地位を有しない不特定の者の中から、会議体の決議をもってある者を選んで特定の地位を付与することであり、株主総会による取締役・会計参与・監査役の選任、取締役会による執行役の選任などがこれにあたる。なお、「選任」に対しては「解任」が相対する言葉である。 ◆ 選定 「選定」とは、会社法上の一定の地位を有する特定の者の中から、会議体の決議をもってさらにある者を選んで一定の地位を付与することであり、取締役会による代表取締役・特別取締役の選定、委員会設置会社における指名・監査・報酬委員並びに代表執行役の選定、監査役会による常勤監査役の選定などがこれにあたる。なお、「選定」に対しては「解職」が相対する言葉である。 ◆ 互選 「互選」とは、会社法上の一定の地位を有する特定の者の中において、相互にある者を選んでさらに一定の地位を付与することであり、取締役会非設置会社における定款の定めに基づく代表取締役の互選、特別取締役の中における特別取締役会の決議内容を報告する取締役の互選、監査役会非設置会社における会計監査人解任時の株主総会への報告監査役の互選などがこれにあた る。 |
参考文献 | 高橋均[2008]『監査役監査の実務と対応』同文舘出版。 |
Ⅰ 期初業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 監査計画の策定等(業務分担を含む) 監査計画の作成 | 法 390 条 2 項 3 号基準 7 条・36条 |
監査業務支援ツール | □「監査役監査計画(詳細版)」(ツールNo.A-5) □「監査役監査計画(簡易版)-計画本体-」(ツールNo.A-6①) □「監査役監査計画(簡易版)-業務分担表-」(ツールNo.A-6②) □「監査役監査計画(年間計画)」(ツールNo.A-7) | |
監査役業務のポイント | 1.監査方針及び監査計画の作成 ① 監査役会は、監査活動の開始に先立ち、監査を効率的に行うために、監査方針及び監査計画を作成する。 監査方針は会社法 390 条 2 項 3 号に規定されているが、監査計画は会社法に定められている用語ではない。日本監査役協会の監査役監査基準36 条では「監査役会は、(中略)監査方針を立て、監査対象、監査の方法及び実施時期を適切に選定し、監査計画を作成する。」と規定しており、期初に業務及び財産の状況の調査の方法及びその他監査役の職務の執行に関する事項(業務の分担を含めて)を選定して監査計画を作成することとしている。 ② 監査方針及び監査計画の作成手順としては、 ア. 前年度の監査結果の分析・評価と課題の抽出イ. 監査方針の作成 ウ. 監査計画の作成 となるが、詳細は「スタッフの業務とポイント」に記載する。 ③ 監査方針には、監査役として普遍的な監査に対する基本的な考え方、当年度の監査を実施していくうえでの考え方を設定する。 ④ 監査計画には、監査方針に基づいて重点監査項目・監査方法・監査対象・実施時期・業務分担等を設定する。原則的には監査上必要と判断し執行部門に要請すれば、あらゆる会議への出席や重要文書の閲覧が可能であるが、少数の人員と限られた時間で広範囲な業務全般について効率的な監査を行うために、監査計画を策定する。また、如何なる方法によって監査を行うのかについて、予め監査対象部門に示すことにより、監査対象部門は監査の具体的な準備に取り掛かることが可能となり、結果として、監査役監査の連携・実効性の向上に繋げることができる。 【留意点】 ア. 監査方針・監査計画の対象期間については、次の二つが考えられる。 ◆ 監査役の就任時期に合わせて、定時株主総会の日から翌年度の定時株主総会の日までとする。この場合、監査報告における監査期間(4 月~翌年3 月)とのずれが生じることとなり、6 月に新たに選任された監査役は、前任の監査役の監査(4 月~6 月)についても監査報告の対象となることに留意する必要がある。 ◆ 会社の事業年度に合わせて設定する。 イ. 3 月決算の会社で、監査役の就任時期に合わせる場合は、 ◆ 定時株主総会後、新たに就任した監査役を加えて新体制で速やかに検討・作成し、監査役会で決定する。 ◆ 新体制での監査活動が速やかに遂行できるように、定時総会前に在任中の監査役が原案を検討・作成しておき、定時株主総会後に新体制の監査役会で決定を行っている会社もある。 ◆ 事業年度に合わせる場合、新事業年度が始まる月の前月までに在任中の監査役が検討・作成し、前月又は期初の監査役会で決定する。この場合、定時株主総会で監査役が改選された場合は監査計画の追認の決議が必要となる。 ウ. 会社法上、監査役は独任制であり、業務分担の規定はないが、各監査役の経験・知識、社内・社外別、常勤・非常勤別等を考慮して監査役の職務の分担を定めて監査を実施することが有効である。職務分担の決定内容のいかんは、各監査役が作成すべき監査報告の具体的内容、さらには各監査役の責任にも関係してくる点には留意する必要がある。 エ. 監査方針及び監査計画は、期中において必要があると認められるときは、適宜、修正ないし変更する。 ✍参考:日本監査役協会「監査役監査基準」第 36条 |
1.監査役会は、内部統制システムの整備状況にも留意のうえ、重要性、適時性その他必要な要素を考慮して監査方針を立て、監査対象、監査の方法及び実施時期を適切に選定し、監査計画を作成する。監査計画の作成は、監査役会全体の実効性についての分析・評価の結果を踏まえて行い、監査上の重要課題については、重点監査項目として設定する。 2.監査役会は、効率的な監査を実施するため、適宜、会計監査人及び内部監査部門等と協議又は意見交換を行い、監査計画を作成する。 3.監査役会は、組織的かつ効率的に監査を実施するため、監査業務の分担を定める。 4.監査役会は監査方針及び監査計画を代表取締役及び取締役会に説明するものとする。 5.監査方針及び監査計画は、必要に応じ適宜修正する。 | |
1.前年度の監査結果の確認と課題の抽出 ① 当年度の重点監査項目の設定に資するため、前年度の監査結果について分析・評価し、監査環境の整備状況について確認するとともに、監査計画を検討している現時点での以下のア. ~エ.に掲げる経営上の課題を抽出し、常勤監査役の確認を受ける。 ア. 経営方針・経営計画、経営環境、経営上・事業運営上のリスク、企業集団を含めた内部統制システムの構築・運用の基本方針に係る取締役会決議の状況及び内部統制システムの構築・運用状況、企業不祥事、リスク管理体制、コンプライアンス体制整備等 イ. 法令等の改正状況、関連する行政等の動き・社会動向ウ. 他社において発生した不祥事等の問題等 エ. 会計監査人及び内部監査部門からの報告・意見交換内容 (必要あるときは会合をもち、情報及び意見交換を行う) ② 上記①で確認された課題等をもとに、監査計画・監査方針に反映させるべき重点監査項目と監査方法を整理する。 | |
上記作業は監査役会の決議よりさかのぼること 2 ヶ月前を目途に検討に入ることが望ましい。 | |
スタッフ業務のポイント | 2.監査方針案の作成 監査方針案を作成し、常勤監査役の確認を受ける。監査方針は、監査役が何を目指して監査を実施していくのか、監査の目標、方向性を示したものである。内容としては次の 2 とおりが考えられる。 ア. 監査役としての普遍的な監査に対する基本的な考え方を記載する(基準 2 条より抜粋)。 ・監査役は、取締役会と協働して会社の監督機能の一翼を担い、株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査することにより、企業及び企業集団が様々なステークホルダーの利害に配慮するとともに、これらステークホルダーとの協働に努め、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制を確立する責務を負っている。 ・前項の責務を通じ、監査役は、会社の透明・公正な意思決定を担保するとともに、会社の迅速・果断な意思決定が可能となる環境整備に努め、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることなく、取締役又は使用人に対し能動的・積極的な意見の表明に努める。 ・監査役は、取締役会その他重要な会議への出席、取締役、使用人及び会計監査人等から受領した報告内容の検証、会社の業務及び財産の状況に関する調査等を行い、取締役又は使用人に対する助言又は勧告等の意見の表明、取締役の行為の差止めなど、必要な措置を適時に講じなければならない。 イ. 当年度の監査を実施していくうえでの基本的な考え方を記載する。例:法令違反等の予防監査、法令遵守、内部統制の充実等 |
3.監査計画案の作成 監査計画案を作成し、常勤監査役の確認を受ける。監査計画の内容としては、重点監査項目・監査方法・監査対象・実施時期・業務分担等を記載する。監査対象・実施時期等は、会計監査人・内部監査部門等と事前に調整し監査計画の重複を避ける等を考慮のうえ設定する。 ① 重点監査項目:監査方針を踏まえ、(a)で抽出された課題の中から特に重要で優先度が高い監査項目について、重点監査項目として記載する。 ② 監査方法:重要会議(取締役会、経営会議、常務会、リスク管理委員会、コンプライアンス委員会等)への出席、重要文書の閲覧、事業所往査、子会社の調査、代表取締役との定期会合、取締役等からの報告聴取、内部監査部門との連携、会計監査人との連携、グループ会社監査役との連携等、監査を実施する方法について記載する。 ③ 監査対象:監査役の監査は、主要な対象先は毎年、他は数年内に一巡し、監査の空白・聖域が生じることのないように策定する(日本監査役協会 監査役監査実施要領第 4 章 3 項 2)。 ④ 実施時期:監査活動を円滑に遂行するために、年間スケジュールを作成する。日本監査役協会 |
監査役監査実施要領付表 1「年間時系列監査活動一覧」のように縦軸に監査方法を記載し、横軸を月にして、実施時期を月単位の表形式で作成すると分かりやすい。 ⑤ 業務分担:常勤監査役を中心に、これまでの職務経験等を参考にして業務分担案を作成する。各監査役の経験・知識、社内・社外別、常勤・非常勤別を考慮して監査役の職務分担を定めて監査を実施することが有効である。 ✍職務の分担例 ア. 監査役の経歴・知見に基づく分担(経理・会計、法務、営業・販売、生産・研究・開発 等)イ. 個別内部統制システム・テーマ別分担(倫理法令遵守、情報管理、環境安全 等) ウ. 事業部門別分担(国内営業、海外営業 等)エ. 地域別分担 オ. 子会社別分担 | |
スタッフとして留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、監査委員・スタッフは、常勤の監査委員の有無にも考慮し、監査計画案を策定する必要がある(常勤の監査委員無の場合は、重要会議への出席をスタッフによる代理出席で対応することを検討する等、スタッフに指示して行わせる監査・調査業務を明確にする必要がある。)。 監査等委員会については、監査方針に関する会社法の規定はないが、実効的かつ効率的な監査を行うために、監査方針、監査計画を策定することが望ましい。日本監査役協会「監査等委員会監査等基準」では、「重要性、適時性その他必要な要素を考慮して監査方針をたて、監査対象、監査の 方法及び実施時期を適切に選定し、監査計画を作成する」としている(基準 40 条)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 詳細な活動計画を記した「年間監査役監査活動計画」は、各監査役の業務分担等が一覧できるようになっている。 |
その他特記事項 | 定款の定めにより監査の範囲を会計に関するものに限定された監査役(法 389 条)の場合は、取締役等から会計に関する職務執行状況の聴取、会計に関する重要な決裁書類の閲覧、会計帳簿又はこ れに関する資料の調査など、監査を実施する方法を記載する。 |
参考文献 |
Ⅰ 期初業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 監査計画の策定等 監査役会での審議・決定と執行部門への通知 | 法 390 条 2 項 3 号基準 8 条・36条 |
監査業務支援ツール | ||
監査役業務のポイント | 1.監査役会での審議・決定と執行部門への通知 ① 監査役会で監査方針と監査計画を決議する。議事については議事録を作成する。 ② 監査役会で決議された監査方針及び監査計画は、代表取締役及び取締役会に説明する。執行部門に対しても重要会議において説明することが望ましい。監査役が出席する重要会議及び報告の聴取、並びにその時期等を明示しておくことは年間の監査役監査活動を円滑に行うために有用である。 ③ 内部監査部門や会計監査人と事前に協議し、監査の重複を防ぐとともにリスクに関する認識を共有するなど、連携して効率的な三様監査を行うようにする。 ④ グループ会社との間でも監査方針・監査計画の共有化を図ることが望ましい。施行規則100 条 1 項5 号に企業集団の内部統制が規定されているので、グループ会社の中で監査方針や監査計 画に一貫性をもたせるべきである。 | |
スタッフ業務のポイント | (「【M69】【M70】監査役会の招集、開催」を参照) 1.監査役会議案の作成 ① 監査役会の議長、又は議題を提出した監査役と議題について確認する。 ② その後速やかに議案資料を作成する。 ③ 作成した議案資料は、議長に内容の確認を依頼し、また、監査役会当日の進行について確認し、当日の議事進行がスムーズに行われるよう努める。 2.監査役会議事録の作成 (「【M71】監査役会議事録作成と署名・記名押印」を参照) ① 監査役会に同席する。 ② 議事の経過を記録し、議事録の作成に備える。 ③ 書き留めた議事の内容をもとに議事録案を作成する。 ④ 議事録案を作成次第、議長に確認し、その後、出席した監査役に内容の確認をとる。 ⑤ 修正意見があった場合、当該箇所の修正の要否を検討し、再度、監査役に内容の確認をとる。 ⑥ 議事録を製本し、出席した監査役の署名・記名押印をとる。 ⑦ 議事録及び謄写を保管する。 3.執行部門への通知、内部監査部門・会計監査人等との連携 ① 監査役が監査方針及び監査計画を、代表取締役及び取締役会、その他重要会議に説明するために、当該会議の事務局に資料を送付する。また、グループ会社社長に対しても通知を行う。 ② 監査役が監査方針及び監査計画を、内部監査部門や会計監査人に説明する機会を設け、監査計画の段階から意思疎通を図れるようにする。 | |
スタッフとして 留意する点 | ||
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては(特に常勤の監査委員無の場合)、重要会議への出席をスタッフによる代理出席で対応する等、監査委員の代理対応をスタッフが行うケースが多数発生する。執行サイドに対しては、スタッフが代理対応する事項に関しても明確に通知することが望ましい。 監査等委員会設置会社については、監査方針等の決定に関する会社法の規定はない。しかしながら、実効性のある監査を効率的に実施するという観点から、日本監査役協会の「監査等委員会監査 等基準」では、監査方針、監査計画を作成するとしている(基準 40 条)。 | |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | ||
各社の工夫・事例 | 社内や企業集団内での周知徹底を図るために、監査計画を執行部門、グループ会社監査役等にメ ールにて発信したり、イントラネットに掲示したりしている会社もある。 | |
その他特記事項 | ||
参考文献 |
Ⅰ 期初業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 監査費用予算の決定 監査費用予算の決定 | 法 388 条 基準 12 条・17 条 CG コード 4-13- ②・4-14 |
監査業務支援 ツール | ||
監査役業務のポイント | 1.監査役の監査活動に必要な費用 ① 監査役は、監査役の監査活動に必要な費用について、会社に以下のとおり請求することができる。 ◆ 前払い ◆ 自らが立て替えた場合には、立て替えた金員に加えて、立て替えた期間に相当する利息を付した額を支払うこと ◆ 監査役が負担した債務に債権者がいる場合は、その債権者に対して会社が直接支払うこと ② 会社側は、その費用又は債務が監査役の職務の執行に必要でないと証明した場合を除いては、拒むことができない(法 388 条)。もし、取締役等が監査費用の請求を理由なく拒否したときは 法令・定款違反となるため、監査役はその旨を遅滞なく取締役(会)に報告する(法 382 条)。 ③ 監査役と会社の関係は民法の委任の規定に従うものとされている(法 330 条)が、民法の規定のみでは、費用の必要性について監査役が証明しなければならないことになるため、会社法 388 条の規定により、立証責任を会社側に転嫁することで、監査役がその職務を充実させ、執行しやすくしている。 費用の支出の対象や内容等は十分慎重に行うべきものであり、また、効率的かつ適正な監査の実施のためには、監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に基づき、予め費用を予算として計上しておくことが望ましい。 2.監査費用予算 ① 監査費用は、会社法に基づきその都度、前払いあるいは事後に会社に請求することが可能であるが、監査役会は、監査計画に基づき、事業所往査にかかる出張旅費などをはじめ職務の執行上必要と認める費用について、効率性及び適正性に留意し、予め予算を計上しておくことが望ましい。 ② 監査費用の範囲については、監査役の費用、及び監査役スタッフが執行部門から独立した組織に属しているのであればその費用も含む。 ✍監査費用例 監査費用とは、監査役報酬(「【M07】監査役報酬等の協議」参照)以外の費用のことをいうが、主な例は以下のとおりである。 ア.出張旅費(国内・国外) イ.調査費(外部専門家費用等)ウ.交際費 エ.通信費(国内・国際電話料等)オ.新聞図書費 カ.研修費・教育費キ.会議費 ク.事務消耗品費ケ.雑費 ③ 監査費用予算は一般的には各社の事業年度に合わせて計上されているが、監査役の新体制が決定し、新事業年度の監査役監査活動を開始する株主総会後、監査役会で改めて監査費用予算を明確にしておくことが望ましい。 ④ 監査費用予算を計上しておいた場合でも、緊急又は臨時に必要とする(した)費用については、 その都度、前払い又は事後請求する。 |
1. 予算案の作成 ① 会社の予算編成時期に合わせ、新年度の予算案の作成を開始する(3 月決算会社の場合は概ね前年 12 月頃)。 ② 当該年度の監査費用実績と計画に対してその差異について確認・分析を行う。 ③ 新年度の往査予定対象をピックアップし、往査に必要な出張旅費・調査費等を算出する。 また、監査役及び監査役会又は監査役スタッフに必要となる研修費・教育費や図書費、日常必要とする交際費、事務消耗品費などを算出し、予算案としてまとめる。ただし、監査費用といえども会社の経費である以上、効率性及び適正性に留意し、いたずらに浪費とならぬよう、スタッフとしても留意する。 | |
スタッフ業務のポイント | 2.常勤監査役の考え方の確認 ① 予算案を作成する際、往査に関わる出張旅費(特に海外出張旅費)が大部分を占めることになるため、新年度の往査予定先について常勤監査役の考え方を確認する。 ② 当該年度計画・実績差異理由及びその分析、往査予定先の選定理由・費用など予算案の内容並びに前年度の比較を説明できるようにまとめておく。 ③ 追加・変更の必要があれば予算案に反映させる。 |
3.予算管掌部門への提出 ① 常勤監査役と調整した予算案を、予算管掌部門(経理又は財務部門等)に提出する。 ② 特筆すべき項目があれば、予算管掌部門に説明する。 | |
4.監査役会議案及び議事録作成(監査役会で予算案を決議した場合) 監査費用の予算案を監査役会で審議し、決議した場合は、「【M69】【M70】監査役会の招集、開催」及び「【M71】監査役会議事録作成と署名・記名押印」を参照のこと。 | |
スタッフとして留意する点 | ア. 海外子会社調査等のための海外出張旅費金額は金額が大きいので、海外出張を計画する場合 は、訪問先(国)、時期等が可能であれば、訪問先と日程調整のうえ、四半期単位で予め想定して予算を策定している会社もある。 イ. 各社における監査計画策定時期によって異なるが、新年度の予算は監査計画に基づき策定されるべきものであるため、監査役会に予算を報告するタイミングは監査計画の審議の後が望まし い。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社は、法 404 条 3 項に基づき、取締役(含む執行役)の個人別の報酬等の内容を、すべて報酬委員会の決議をもって決定する (定款並びに株主総会決議で決定することはできない)。 ✍緊急又は臨時に支出した費用への対応(指名委員会等設置会社の場合) ◆ 緊急又は臨時に支出した場合の対応 「緊急又は臨時に支出した費用」とは、例えば、①株主代表訴訟への対応のため、監査委員が弁護士と相談した場合等に発生する費用、②海外支店において不祥事が発生し、監査委員が海外担当の取締役の職務執行監査の一環として当該不祥事を調査するため、当該海外支店を訪問した際に発生する費用等、予算策定時に想定していなかった費用が該当することになる。このような臨時の費用が発生した場合、その都度、会社に費用を請求することになる。 ◆ 指名委員会等設置会社における対応例 委員会設置会社の場合、監査委員会が選定した監査委員は、遅滞なく、監査委員会の職務の執行状況を取締役会に報告しなければならないとされているので(法 417 条 3 項)、当該報告時に 「緊急・臨時に発生する(あるいは、発生した)費用を、会社に請求する」旨の報告をする場合もある。 また、当該事象が海外出張の場合、帰国後最初に開催される取締役会において、当該出張の内容について報告する。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 海外子会社調査等のための海外出張旅費金額は金額が大きいので、海外出張を計画する場合は、訪問先(国)、時期等が可能であれば、訪問先と日程調整のうえ、四半期単位で予め想定して予算を策定している会社もある。 |
その他特記事項 | |
参考文献 | 高橋均[2008]『監査役監査の実務と対応』同文舘出版。 |
Ⅰ 期初業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 監査役報酬等の協議 監査役報酬等の協議 | 法 387 条 2 項 基準 11 条 |
監査業務支援ツール | □「監査役報酬協議通知書」(ツールNo.A-4) | |
監査役業務のポイント | 1.監査役(会)での協議と執行部門への通知 ① 監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める(法 387 条 1 項)。また、監査役が 2 人以上ある場合において、各監査役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、監査役の協議によって定める(法 387 条 2 項)。 ② 「監査役の協議」とは、必ず監査役全員の意見の一致が必要である。 ③ 監査役間で協議する場合、一般的には、株主総会で決議された監査役報酬限度額「一事業年度 ○○○円以内」の範囲において、毎年、定時株主総会終了後に協議する場合が多い。 ④ 協議結果を「協議書」として作成し、代表取締役に提出する。 2.協議の方法 ① 報酬等の協議にあたっては、監査役会議長、常勤・非常勤の別、職務の分担の状況、取締役の報酬等の内容・水準などを考慮して検討する。あるいは、各社において役員内規及び役員報酬委員会等で役員報酬体系が決定されており、それを受けて監査役内規等で監査役の報酬のレンジが定められており、その範囲において、監査役間で協議して決める場合もある。 ② 監査役報酬等の協議は監査役全員が一堂に会して行うほか、各監査役が個別に協議して結果として監査役全員が同意する運用も可能である。 ③ 監査役全員が一堂に会する機会である監査役会に、決議事項として監査役の報酬等の決定を付議することは可能であるが、「監査役の協議」は監査役全員の意見の一致が必要であるため、この場合でも監査役全員の賛成が必要となる。通常の決議の要件(在任監査役の過半数の賛 成)によって決めることはできない。 ✍監査役のその他報酬例 ◆ 監査役の賞与 会社法上、賞与の支給を禁止する規定はなく、取締役と同様、賞与を含む「報酬等」が支給され得ることが明文で規定されているから、株主総会の決議(法 387 条)により、賞与を支給することもできるものと解される。 ◆ 監査役の業績連動型報酬 会社の業績に応じて報酬のうえ限額が変動する報酬(法 361 条 1 項 2 号)については、定額として報酬のうえ限額を定めれば、その範囲内で業績連動型報酬制度の採用を工夫することは可能であり、実際に採用している会社もあるが、取締役の場合と異なり、経営の意思決定に参画しない職務の監査役には必ずしも適合しないように思われる。 ◆ 監査役の現物報酬 「報酬等」の定義の中には財産上の利益がすべて含まれ、金銭に限定されておらず、また、現物であっても額が確定している場合はあり得るから、その限りにおいて、監査役の現物報酬は、会社法の規定に反するものではない。 なお、監査役については、取締役の報酬等のうち金銭でないもの(法 361 条 1 項 3 号)に該当する規定は置かれていないが、これは、監査役の現物報酬を禁止する趣旨ではなく、監査役の報酬については、同条 2 項の取締役の現物報酬等を相当とする理由の説明義務が生じないことを表 しているに過ぎない。 | |
スタッフ業務のポイント | ① 監査役の報酬等に関して、定款の定め、株主総会の決議内容、社内規程を確認しておく。 ② 監査役が監査役報酬等の協議を監査役会にて監査役全員で行うか、個別に協議して結果として監査役全員の同意を得るか、いずれの方法で協議するのかを予め確認しておく。 ③ 監査役会を開催する場合、監査役会開催事務を行う。 ④ (監査役会開催については「【M69】【M70】【M71】監査役会の招集、開催、議事録作成と署名・記名押印」を参照) ⑤ 協議された監査役の報酬等について、定款の定め、又は株主総会で決議された報酬総額の範囲内であることを確認する。 ⑥ 協議の結果を証跡として残すため、監査役の指示に基づき報酬協議書を作成し、各監査役の記名押印後、代表取締役(執行部門)に提出する。 ⑦ 代表取締役(執行部門)に提出した報酬協議書の謄写を保管する。 |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社は、法 404 条 3 項に基づき、取締役(含む執行役)の個人別の報酬等の内容をすべて報酬委員会の決議をもって決定する (定款並びに株主総会決議で決定することはできない)。 監査等委員である取締役の報酬は、監査役と同様、定款の定めがない場合は、株主総会の決議によって定める(法 361 条 1 項)。その際、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役を区分して定める 必要がある(同条 2 項)。 監査等委員の個人別報酬について定款の定め、株主総会の決議がない場合は、定款又は株主総会決議で定められた総額の範囲内で、監査等委員の協議によって定める(同条 3 項)。この場合、決定には監査等委員全員の同意を要する。 なお、監査等委員は、監査役と同様、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について 意見を述べる権利を有する(同条 5 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 監査役報酬等協議のための監査役会を開催する場合で、監査役全員が出席できないときの具体的な対応例を以下に示す。 ア. 監査役会議長(常勤監査役)が当日欠席の監査役と事前に面談し、監査役報酬の原案についての説明を行う。 イ. 監査役会で議長より、「監査役報酬の原案について欠席の監査役より事前同意書を入手しており、本監査役会にて協議が行われることにつき同意を得ていること、又、本監査役会での審議の結果についても監査役会終了後に議長より欠席監査役に報告を行い、同意を得ること」を説明し、審議を行う。 ウ. 次回以降の監査役会で議長より、欠席の監査役に協議結果を報告する。 エ. 上記手順を踏まえて、監査役全員の協議の結果として、監査役の報酬に関する協議書を代表取締役に提出する。 |
その他特記事項 | ア. 監査役は、経営から独立した機関であり、取締役が監査役の報酬を決定すると、取締役の職務執行を監査する責務を十分に果たせない可能性が高くなる。法387 条2 項の規定は、それを避けるために設けられた、監査役の独立性を確保する趣旨の規定である。 イ. 監査役は、株主総会において、監査役の報酬等について意見を述べることができる(法 387 条 3項)と定められている。詳細については、「【M92】監査役報酬に関する株主総会での意見陳述」 を参照のこと。 |
参考文献 | 相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔[2006]『論点解説 新・会社法』商事法務。高橋均[2008]『監査役監査の実務と対応』同文舘出版。 |
Ⅰ 期初業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 特別取締役による取締役会への出席監査役互選 特別取締役による取締役会への出席監査役互選 | 法 383 条 1 項 基準 41 条 |
監査業務支援ツール | ||
1.特別取締役による取締役会 ① 特別取締役による取締役会(以下、便宜上「特別取締役会」とする)の制度は、取締役会の決議事項のうち迅速な意思決定が必要とされ、かつ日常業務的色彩の濃い「重要な財産の処分・譲受け(法 362 条 4 項 1 号)」と「多額の借財(同 2 号)」の決定を一部の取締役に委ね、取締役会はより基本的な事項の審議に専念することを可能ならしめるためのものである。 ② 特別取締役以外の取締役の出席は妨げられていない(しかし議決権は行使できない)。また、特別取締役が選定されていたとしても、取締役会の権限の一部が排除されるわけではなく、通常の取締役会において前記の事項を決議することができる。 ③ 特別取締役会は会社法上の機関ではなく、取締役会と別個の会議体があるわけではない。あくまで、特別取締役のみが出席する取締役会を便宜上、「特別取締役会」と呼んでいるに過ぎない。 | ||
監査役業務のポイント | 2.出席監査役互選 ① 取締役会が会社法 373 条に基づき特別取締役を選定し、特別取締役会を開催する場合、監査役は、特別取締役会に出席する監査役を互選(「選任」・「選定」・「互選」の違い」については、 「【M01】常勤監査役の選定の【その他特記事項】」参照)により定めることができる。 ② 特別取締役会に出席する監査役を定めない場合は、監査役全員に出席義務が生じるが、意思決定の迅速化という特別取締役会制度の趣旨に合わせ、出席監査役を決定することが望ましい。 ③ なお、特別取締役会への出席監査役は、監査役の互選によって定めるとされているため、監査役会での決議事項ではないが、監査役会の決議によって定めることに支障はないと考えられる。 ④ 特別取締役会が開催された場合、出席監査役は他の監査役に審議内容及び結果を遅滞なく説明することが必要である。(会社法上、特別取締役は他の取締役に決議内容を遅滞なく報告することが会社法 373 条 3 項により規定されているが、監査役には報告が求められていない。し かし、監査役監査基準 41 条 4 項にあるように監査役間の情報共有のためにも非出席監査役への報告は必要であると解する)。 | |
【留意点】 ア. 取締役会が特別取締役を選定する際は、出席監査役の互選手続き及び出席監査役についてのルールを明確化しておくことが望ましい。 イ. 常勤監査役が複数いる場合は、すべての常勤監査役を出席者とするのか、人数を絞るのか、 ルール化しておくことが望ましい。また、常勤監査役の改選の有無に拘わらず、毎年、総会後の監査役会で互選することも可能である。 | ||
スタッフ業務の ポイント | スタッフは特別取締役会への出席監査役の決定の社内ルールに則って、総会後の監査役会での議 題として準備し、決議後に議事録を作成するとともに、決定内容を執行部門に通知する。 | |
スタッフとして留意する点 | ||
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社は、執行役と取締役にそれそれぞれ執行と監督の権限を分離し、経営上の意思決定の迅速化と、監督機能の強化を旨としており、取締役会は、法 416 条 1 項及び 4 項に定める、業務執行の決定を委任できない事項(取締役会専決事項)を除き、決議により業務執行の決定の権限を執行役に委任することができ、執行役は、この取締役会決議によって委任を受けた業務の執行の決定と、業務の執行を行う(法 418 条)。 したがって、取締役会の意思決定の迅速化を趣旨とする特別取締役による取締役会の制度そのものが指名委員会等設置会社には適用されていない。 監査等委員会設置会社については、取締役の過半数が社外取締役である場合(法 399 条の 13 第 5項)、取締役会の決議により重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨(委任できない業務執行の決定は、同条 5 項各号)の定款の定めがある場合(同条 6 項)、特別取締役 を選定できない(法 373 条 1 項)。 特別取締役会に出席する監査等委員については、会社法の規定がない。監査等委員は取締役なので、特別取締役への委任の決議にあたって議決権を行使できること(法 399 条の 2 第 2 項)、特別取締 役会の決議後、速やかに報告を受ける権利を有すること(法 373 条 3 項)から、監査等委員の特別取締 | |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) |
役会への出席を予定していないためと推定される。ただし、監査等委員である取締役が、特別取締役会に任意で出席するのは可能である(議決権はない)。 なお、監査等委員会設置会社への移行時に、会社法399 条の13 第6 項で規定する定款変更を行うの が一般的な傾向なので、監査等委員会設置会社で特別取締役が選定されることは稀だと思われる。 | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | ✍特別取締役による取締役会(特別取締役会)とは 取締役会による業務執行の決定は、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合以上)の決議をもって行う(法 369 条 1 項)。しかし、取締役会設置会社(委員会設置会社を除く)で、 ア. 取締役が 6 人以上いること。 イ. 社外取締役が 1 人以上いること。 を満たしている場合は、取締役会の意思決定の迅速化のため、予め選定した 3 人以上の取締役(特別 取締役)よる取締役会(特別取締役会)の決議によって、「重要な財産の処分・譲受け」と「多額の借財」に関する事項を決定できる旨を、取締役会にて定めることができる(法 373 条)。 |
参考文献 | 江頭憲治郎[2009]『株式会社法』有斐閣。 森本滋[2009]「会社法第 373 条解説」(落合誠一編[2009]『会社法コンメンタール』商事法務)。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 重要会議への出席(取締役会、経営会議(常務会)等) 取締役会への出席・意見陳述 | 法 383 条 1 項 基準 2 条・39 条・ 42 条 GC コード 4-4 |
監査業務支援 ツール | ||
監査役業務のポイント | 【「重要会議への出席」の概要】 ① 監査役は、会社法 383 条 1 項により取締役会に出席し意見陳述する義務がある。 ② 監査役は、取締役会以外にも、会社法381 条2 項の業務財産調査権により、重要な意思決定の過程及び業務の執行状況を確認するため、すべての会議に出席できるが、効率的な監査活動を遂行する観点から、重要な会議を選定し、監査役全員又は監査役間で選定した監査役が出席する。 1.取締役会への出席・意見陳述の目的 ① 監査役は、取締役会に出席する義務があり、必要と認められる場合は、意見を述べなければならない。監査役の出席・意見陳述義務は、平成 13 年の商法改正において、コーポレート・ガバナンスの実効性を確保するための一環として、監査役の取締役会に対する監視機能を強化するため、制定されたものである。 ② 取締役会への出席は、取締役の職務執行を監査する際の最重要の監査項目である。なぜなら、監査役は、取締役会において、取締役の意思決定の状況や取締役会の監督義務の履行状況を実際に確認するとともに、事後監査のみならず、違法・不当な業務執行を未然防止する事前監査の役目を果たすことができるからである。 2.取締役会出席時のチェックポイント 監査役は、以下の点を確認する。 (1)取締役会が法令・定款及び取締役会規則等の社内規定に沿って適正に運営されているか。 (招集・定足数・決議事項の適正性、決議の有効性:法 368 条、369 条) (2)取締役会の専決事項は決議されているか。 代表取締役選定、重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、重要な組織の変更・廃止、社債募集の重要事項、内部統制に関する決議、定款に基づく役員等の責任免除(法 362 条) ただし、特別取締役による取締役会が設置されている場合は、監査役の互選により、この取締役会に出席する監査役が定められ、この取締役会の専決事項は、重要財産の処分・譲り受け、多額の借財のみである。 (3)取締役の業務執行状況―報告取締役会に 3 ヶ月に 1 回の報告義務違反はないか。(法 363 条 2項、372 条 2 項) (4)取締役会の監督義務を履行しているか。例えば、取締役からの職務執行状況の報告時に、報告内容について、他の取締役が質問し、事実関係の把握に努めているか。また、課題・問題が認識された場合に、当該取締役の又は他の取締役は、以下の適切な対応を取っているか(不作為・見過ごしは無いか。)。 ∙ 理由について定量的な分析を求める ∙ 合理性のある説明を求める ∙ 考えられる要因について指摘・発言する ∙ 必要に応じて是正を求める ∙ 改善計画の策定・実施を求める、次回取締役会以降での継続報告を求める等 (5)取締役の善管注意義務・忠実義務違反はないか―決議・報告事項を通して、経営判断原則に則した判断(意思決定プロセス)がなされているか(法 355 条、357 条、民 644 条)。 なお、意思決定決定のプロセス等の相当性判断のポイントは以下のとおりである。 ① 事実認識に重要かつ不注意な誤りがないか。 ∙ 意思決定のために必要な情報(事実、計数、予測等)が十分提供され、当該情報は正確、客観的、中立的であるか ∙ 事前の調査、デュー・デリジェンスが遺漏なく実施されているか ∙ 主管部門又は専門家の意見形成は適切に行われているか ∙ 説明内容に整合性があり、過去の報告・審議内容と比較して矛盾がないか ∙ 経営会議等重要会議での課題はクリアし、各取締役に周知されているか ② 意思決定過程が合理的であるか。 ∙ 取締役会出席者が十分に情報を共有し、検討・審議に必要な時間が確保されているか ∙ 各取締役及び監査役から出された質問・疑問に対し十分な回答がなされているか ∙ 代替案や想定しうる利益・不利益等必要事項の検討・審議が行われているか |
∙ 必要な場合、当該案件についての専門家の見解を徴しているか ∙ M&A案件・投資案件等は、社内規則に従って適切に説明がなされているか ③ 意思決定内容が法令又は定款に違反していないか。 ∙ 会社法・業法等の関係法令に準拠し、定款で認められる範囲であるか ∙ 取締役会規則の決議事項に従い、取締役会で審議・決議しているか ④ 意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理でないか。 ∙ 収集された情報を踏まえ、適正な検討・審議に基づく合理的な結論となっているか ∙ 結論ありきの議論ではなく、事業性判断等の経営判断が十分できる説明がなされ、 納得のいく質疑応答が行われているか ∙ 自社の経営資源と対比して計画に無理がないか ∙ 想定しうるリスクが会社の経営にとって致命的なレベルでないか ⑤ 意思決定が取締役の利益・第三者の利益でなく会社の利益を第一に考えているか。 ∙ 「競業取引」「利益相反取引」について、取締役会規則に従い、取締役会で審議・承認されているか ∙ 経営目標から逸脱せず、企業の存続を図る利益判断を行っているか ∙ 取締役個人の保身や利得を得ることを目的としていないか ※ 監査役会による取締役会の意思決定の相当性の判断は、経営判断原則の個々の相当性判断 からだけで判断するのでなく、A.取締役会前のプロセス(資料の配付状況・社外役員への情報提供等)、B.当日の議案審議の状況(審議時間・審議の内容等)等を通して心証を形成することになる。 (6)利益相反取引・競業取引等がある場合、取締役会の承認・報告が実施されているか(法 355 条~ 357 条、365 条、330 条、民 644 条)。 (7)親会社等との取引関する審議があった場合、取締役会としてどのような議論と意思決定がなされているか、あるいは社外取締役から異なる意見が表明されていないか。また、親会社等との取引に関する規程やガイドラインが定められている場合、その規定に反していないか。 (8)親会社監査役の場合、子会社の利益を犠牲にして自社(親会社)のみの利益を図るような取引を行っていないか。 3.取締役会出席の事前準備 ① 取締役会事務局から取締役会議案を事前に入手し、取締役会付議基準等の社内規則に則って付議されているか確認する。 ② 必要に応じて取締役会事務局や起案部署から説明聴取する等により、取締役会議案のうち、重要な案件を事前に確認する。 ③ 取締役会議案内容について、全監査役は、取締役会事務局や起案担当部署から、事前に説明を聴取することが望ましい。特に社外監査役は主な発言内容が事業報告に記載されるため、取締役会に出席する前に付議される経緯・内容を理解する必要があるので、事前に説明を聴取すべきである。 ④ 取締役会議案が事前にりん議(社長)決裁されている場合、監査役は、りん議(社長)決裁書の閲覧により内容を確認する。 ⑤ 緊急に臨時取締役会が開催される場合、係る議案の検討期間が短いなどの事情が生じているときであっても、当該議題の内容が十分に理解できるか、招集手続きに不備等はないか、招集に至るまでの取締役の意思決定プロセスに瑕疵がないかなどを確認する。 この場合、適法性が確保されないおそれがあると判断されるときは、監査役から取締役会事務局担当の取締役又は取締役会議長にその旨を連絡し、必要な改善を求める。 ⑥ 親会社等の取引に関しては、定期的な親会社監査役との面談や適時な会計監査人との情報交 換等を行う必要がある。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.スケジュール調整 ① 取締役会事務局から取締役会(年間)スケジュールを入手し、監査役会年間スケジュールと調整する。取締役会事務局からできる限り長期のスケジュール(6 ヶ月~1 年間)を入手する。 ② 監査役会の年間スケジュールは、期末における株主総会スケジュール(監査報告作成日等)とも密接に関連していることに留意して調整する。 ③ 社外監査役の出席率が向上するように、事前に社外監査役が出席できない日程を確認し、取締役会事務局に連絡する。 ④ 臨時取締役会が開催される場合は、事前に社外監査役及び非常勤監査役に連絡のうえ、出欠の可否を確認し、監査役及び取締役会事務局に対してその結果を連絡する。 ⑤ 監査役にスケジュールを連絡することになっている場合は、スケジュールが確定次第、監査役に開催日時、場所を報告する。 ⑥ 必要に応じて取締役会の開催前に監査役の出欠を確認のうえ、取締役会事務局へ報告する。 |
⑦ 親会社監査役や会計監査人との面談予定についても早い段階で調整しておくことが望ましい。 2.招集手続きの適法性に関わる確認 ① 所定の期間内に招集通知を取締役会事務局から送付してもらう。 ② 取締役会開催の都度、法令又は定款に定める招集通知の期間に則り招集通知が発送されているかを確認する。同時に、監査役に招集通知が届いているか監査役に確認する。 ③ 緊急に臨時取締役会を開催する場合、監査役が付議される議案内容の検討期間を十分確保し得ないときは、取締役会事務局に理由を確認する。この場合、適法性が確保されないおそれがあると思われる事情が生じているときは、監査役から取締役会事務局担当の取締役又は取締役会議長にその旨を連絡し、必要な改善を行うよう、進言してもらう。 3.取締役会への出席・意見陳述に関わる対応 ① 取締役会事務局から取締役会資料を事前に送付してもらい、監査役に配付する。 ② 必要に応じて、取締役会議案が、取締役会付議基準等の社内規則に則って付議されているかどうかを確認し、適法性を確認のうえ、速やかに監査役にその結果を報告する。適法性が確保されないおそれがあると思われるときは、監査役から取締役会事務局担当の取締役又は取締役会議長にその旨を連絡し、必要な改善を行うよう、進言してもらう。 ③ 監査役が事前説明を求めた場合は、担当取締役等から説明聴取の場を設定する。この場合、監査役の指示に基づき、スタッフも同席し、必要に応じて備忘録を作成する。 ④ 取締役会事務局が監査役に議案の事前説明を行う場合は、日程を調整する。この場合、監査役の指示に基づき、スタッフも同席し、必要に応じて備忘録を作成する。 4.取締役会に関する文書等の保管・管理 ① 監査役監査実績表を作成し、取締役会への監査役の出席状況について、監査役会・監査役監査往査等と併せて実績を保管・管理する。 ② 取締役会資料・取締役会議事録(写)及び備忘録を保管・管理する。 | |
スタッフとして留意する点 | ア.取締役会開催スケジュールは監査役会と密接に関わることから、監査役会の日程についても確定し、参考までに取締役会事務局にその日程を連絡する。 イ.社外監査役及び非常勤監査役の出席できる日程を考慮し、取締役会開催日程と絡め、監査役会、会計監査人の四半期レビュー説明の日程も併せて、監査役会の年間スケジュールを調整、確定、報告することが望ましい。 ウ.取締役会の招集通知の発送は 1 週間前まで(それより短い場合は定款で定めた日数(法 368 条)) となるので担当取締役等から説明聴取を受ける場合は、短期間であることに留意する。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | ✍取締役会への出席 監査委員は取締役であるので、当然、取締役会に出席する義務と権利を有し、また議決権を有している。したがって、監査役のように取締役会での意見陳述の義務はないが、取締役会で決議・報告される事項に対して、審議し、妥当性を検討し、議決権(場合によっては議決に賛成しないことを含む)を行使することができる。 なお、法 417 条 3 項により、委員会がその委員の中から選定する者は、遅滞なくその委員会の職務執行状況を取締役会に報告する義務があるため、取締役会で決議・報告される事項のみならず、監査委員会として執行役等の職務を監査した結果、例えば執行役が業務執行を決定するための会議(経営会議等)について出席した結果を報告する義務を負っているとともに、業務の決定の妥当性などについても意見を述べることができる。 このように、監査委員は監査役と同等の義務と権利、取締役としての義務と権利の両者を併せ持っており、監査委員ではない取締役よりもより善管注意義務が課せられていると考えられる。 【参 考】 ◆指名委員会等設置会社の取締役会 指名委員会等設置会社の取締役会は、法 416 条 1 項及び 4 項各号に規定される事項(取締役会専 決事項)を除き、取締役会決議によって業務執行の決定を執行役に委任することができ(法 416 条 4 項本文)、また取締役は、業務を執行することができない(法 415 条)。一方、執行役は、取締役 会決議によって委任を受けた業務の執行を決定し、実際の業務の執行をする(法 418 条)。 このように指名委員会等設置会社は、取締役と執行役に監督と業務執行の権限を厳格に分離しており、取締役及び取締役会は、経営の基本方針の決定、内部統制システムの整備に関する決議、委員の選定・解任、執行役の選任・解任など、会社の根幹に関わる事項の決定と、執行役及び取締役の職務の監督に限定されている(ただし執行役が取締役を兼務することができる(法 402 条 6 項)が、その場合、監査委員となることはできない(法 400 条 4 項))。 |
なお指名委員会等設置会社以外の取締役会設置会社の業務執行取締役は、3 ヶ月に 1 回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告する義務があり(法 363 条 2 項)、またこの報告は省略す ることができないが(法 372 条 2 項)、指名委員会等設置会社には業務執行取締役が存在しないため、業務を執行する執行役に自己の職務の状況を取締役会に報告する義務が課せられている。他の執行役を代理人として報告することができる(法 417 条 4 項)が、やはりこの報告は、省略はで きない(法 372 条 2 項・3 項)。 | |
◆監査委員会の職務 監査役は独立した会社の機関であるが、これに対応するのは監査委員会であり、個々の監査委員は独立の機関ではなく、監査委員会として監査役と同様に、執行役等(執行役及び取締役)の職務遂行を監査し、監査報告を作成する義務を有する。 しかしながら、監査委員のほとんど、あるいは全員が社外取締役であることも想定され(取締役会の過半数は社外取締役であり、委員はこれら社外取締役も含めた取締役全員の中から選定される)ことから、監査委員会が選定する監査委員が、執行役等・使用人からの報告聴取や会社の業務及び財産の調査、子会社の業務及び財産の調査などを行う(法 405 条)。 監査等委員は取締役である(法 399 条の 2 第 2 項)ため、取締役会に出席し、必要に応じて意見を述べ、議決権の行使により意思表示を行うことが当然のこととして期待される。また、監査等委員会は業務財産調査権を有している(法 399 条の 3 の 1 項・2 項)ので、監査等委員会により選定された監査等委員は、業務の執行状況を監査するため、子会社も含めて、重要な会議に出席することができる。 なお、監査等委員である取締役は、業務を執行することはできない(法 331 条 3 項)。 監査等委員会は、指名委員会等設置会社の各委員会と異なり、職務の遂行状況を取締役会に報告することを法的には求められていない。 | |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | ◆監査等委員会設置会社の取締役会 監査等委員会設置会社の取締役会は、取締役の過半数が社外取締役である場合、及び、取締役会の決議により重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任できる旨の定款の定めがある場合には、会社法 399 条の 13 第 5 項各号に規定されている事項を除き、取締役に業務執行の決定を 委任することができる(法 399 条の 13 第 5 項・6 項)。 実態的には、監査等委員会設置会社では、取締役会での業務執行に係る決定事項を減らし、取締役の業務執行の監督、監査等委員会の監査等の実効性を確保するための体制・業務の適正を確保するための体制の構築、運用などに注力することにより、企業統治の強化を志向するケースが多い。 |
◆監査等委員会の職務 監査等委員会の主たる職務の一つは取締役の職務の執行の監査と監査報告の作成(法 399 条の 2 第 3 項 1 号)とされており、監査役、指名委員会等設置会社の監査委員会と共通である。 指名委員会等設置会社の監査委員と同様、監査等委員は独立の機関ではなく、特定の職務を行う よう監査等委員会によって選定されることにより、権限を行使することが可能になる。 | |
各社の工夫・事例 | ア.監査役は、取締役会の直前に監査役会を開催して、取締役会議案を事前検討し、監査役会としての意見を取締役会で述べることがある。 イ.取締役会の招集手続きは、すべての点において瑕疵がないことを、顧問弁護士に確認してもらっている(外資系会社に多い。)。 ウ.取締役会の直前に監査役会を開催して、取締役会の議題を事前検討する場合は、スタッフは全監査役と監査役会の日程を調整する。 エ.取締役会の議案内容に関して特定の法令や制度を前提とするケースや、ビジネスのグローバル化を踏まえた海外拠点の問題、及び海外関連の取引等に関する問題等に対応するため、タイムリーな事例をもとに弁護士を講師として役員対象の研修会を定期的に実施している。 《例》合併等に関する法令上の留意点 ・公正取引委員会の立入検査を受けた場合の対応 ・虚偽記載と課徴金 ・外国公務員への贈収賄 ・海外拠点のリスク管理(現地法令と国内法) オ.監査役の取締役会出席状況に関する記録管理の対応において、発言状況については取締役会事務局から、詳細な議事録の受け入れと録音テープによる内容の確認を行っている。 カ.スタッフは、監査役が取締役会開催後に議案に関する調査を指示した場合は、調査に関しては期限を明確にしたうえで、実行可能な範囲で公開情報、書類や社内データベースの閲覧や提供の要請、起案部門や関連部門等からのヒアリングを行い、必要に応じ、社内の法務・会計・人 事等や外部識者から専門的な判断を仰ぐ。また、監査役が問題ありと判断した場合は、これら |
の部門から報告聴取の場を設定する。報告聴取の場には極力スタッフも同席し、監査調書(案)を作成する。また、スタッフは、調査結果について監査役に随時報告し、調査内容に追加・修正が必要な場合はこれを実施のうえ、監査調書(案)を作成し、監査役に提出する。 | |
その他特記事項 | 監査役の取締役会出席状況に関する記録管理:海外議決権行使助言会社(ISS、プロクシー・ガバナンス)の評価基準に満たない出席率(75%)の場合、同会社より合理的な説明がない限り、株主に対し、社外役員の再任議案に反対推奨をされる場合がある。 |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 重要会議への出席(取締役会、経営会議(常務会)等) 取締役会の決議の省略 | 法 370 条 基準 40 条 GC コード 4-4 |
監査業務支援ツール | □「提案書(取締役会の決議の省略)」(ツールNo.E-3) □「確認書(取締役会の決議の省略)」(ツールNo.E-4) | |
監査役業務のポイント | 取締役会は、定款にその旨を定めている場合、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案した際には、当該提案に関して、取締役の全員が書面又は電磁的方法により同意し、かつ、監査役が異議を述べないときは、取締役会の決議があったものとみなすことが可能となった(法 370 条)。この規定の趣旨は、企業買収(M&A)などの緊急案件が発生した際に、取締役が海外出張などで招集できず、定足数に満たない場合があり得ることから、機動的な経営を推進するためである。 監査役会には、書面決議は認められていない。監査役会の決議事項は、一刻を争う緊急事項はないことがその事由であろう。 1.監査役の業務とポイント ① 取締役会は必要に応じて開催される。取締役会を招集するには、取締役会開催の 1 週間前までに、定款でその期間を短縮した場合は、その期間の前までに各取締役及び各監査役に対し、開催の通知を発しなければならないが(法 368 条 1 項)、この招集手続きは、すべての取締役と監査役に出席の機会を与えるためであるから、その全員が同意すれば招集手続きを経ないでも開催することができる。なお、取締役会の招集手続きについては、会社法 368 条では「通知を発しなければならない」とだけ規定しており、通知の方法に制限はない。したがって、定款や取締役会規則に通知の方法に関する規定(例えば、「書面による」との記載)がなければ、書面はもちろん電磁的方法(メール)等でも構わないが、少なくとも、開催時間と開催場所について通知する必要がある。 ② 定款の定めに基づく取締役会の決議の省略(書面決議)がある場合には、監査役は、当該提案に対して異議を述べることができる (法 370 条)。監査役はその内容(決議を省略すること自体を含む)について、経緯・事由・同意する意思表示の方法・実施日程・通知内容等を検討し、必要があるときは、異議を述べる (基準 40 条)。 ③ この取締役会の書面によるみなし決議(いわゆる取締役会の書面決議)は、取締役会を開催する時間的余裕がなく、全取締役が議案に賛成して議論の必要のない場合に限って、例外的な措置として会社法が認めたものであり、監査役は、取締役会決議の省略により、その決議に基づいて不当な経営が行われないよう、提案されている案件の取締役会決議の省略の可否について慎重に検討し、適法性が確保されないおそれがあると判断される場合は、取締役会事務局担当の取締役に、みなし決議の適法性を確認しなければならない。 ④ 取締役会決議の省略がある場合は、その旨を取締役会議事録に記載しなければならないこと、また、監査役のうち 1 人でも異議を述べた場合は取締役会決議の省略はできないことに留意する。 ⑤ 取締役から書面決議の依頼書を受領した場合の監査役の回答方法は、下表のとおりである。 【留意点】 監査役は、取締役会決議の省略を行って、その決議に基づいて不当な経営が行われた場合には、取締役・監査役は十分な吟味をせずに提案に同意し、異議を述べなかったという理由で、任務懈怠責任に問われる可能性があることに留意する。 |
異議がある場合 | 異議がない場合 | |
確認書(回答書)が添付されている場合 | 意義がある旨及びその理由を記載し、取締役に送付する。 | 意義がない旨を記載し、取締役に送付する。 |
確認書(回答書)が添付されていない場合 | 異議申立書を作成のうえ、異議がある旨及びその理由を記載し取締役に送付する。 | 書面決議の依頼書に記載されている異議申立て期限経過後は、異議がなかったものとみな される(何もしなくてよい。)。 |
1.スケジュール調整 ① 監査役又は取締役会事務局から、書面決議の連絡を受けた場合は、監査役の指示に基づき、取締役会事務局からの説明日程を調整する。 ② この場合、スタッフは係る説明の場に同席し、備忘録を作成する。 | |
スタッフ業務のポイント | 2.書面決議に関する監査役の異議申述に関わる各種対応 ① スタッフが法的手続きに問題があると思われる事情を認識したときは、速やかに監査役に報告し、監査役が、書面決議の提案について適法性が確保されないおそれがあると判断した場合は、取締役会事務局担当の取締役からの内容確認の場を調整する。この場合、監査役の指示に基づき、スタッフも同席し、監査調書(案)を作成する。 ② 監査役が当該提案について異議を述べた場合は、スタッフは、監査役の指示に基づき、書面決議の提案に確認書(回答書)が添付されているときは確認書に、添付されていないときは異議申立書を作成し、記載内容(異議の旨及び理由)を取りまとめ、取締役会事務局に通知する。 ③ また、この場合、取締役会の決議の省略は認められず、係る議案に関する決議を行うときは取締役会を招集する必要があるため、スタッフは、以下の業務を行う。 ア. 取締役会事務局と取締役会の設定、招集等の調整を実施する。 イ. 監査役及び社外監査役に取締役会に出席してもらうための調整・出席準備をする。 ウ. 必要に応じて、取締役会における監査役の報告又は意見申し立てに関わる関係資料を作成する。 |
3.取締役会の決議の省略に関わる文書等の保管・管理 スタッフは、取締役会議長から取締役・監査役宛てに通知された、「取締役会の書面決議」に関わる提案書、監査役からの当該提案書に対する確認書(回答書)(異議がある場合を含む)、監査役の確認書(回答書)を作成していない場合において、監査役に異議があるときの異議申立書及び備忘 録・監査調書を保管・管理する。 | |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | 監査等委員は取締役である(法 399 条の 2、2 項)ため、書面決議の内容について、適法性、合理性などの面から検討し、直接、意思表示を行うことができる。 |
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | |
参考文献 | 日本監査役協会ケース・スタディ委員会[2009]「取締役への出席」(「新任監査役ガイド 第 4 版」 『監査役』臨時増刊号第 557 号、54 頁)及び日本監査役協会[2011]「取締役への出席」(「新任監査役ガイド 第 5 版」『監査役』臨時増刊号第 592 号、56 頁)。 大橋博行[2009]「取締役会の書面決議と監査役の異議」(産業経理協会「監査役の監査実務の具体的進め方」9 月セミナー資料、48 頁)。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 重要会議への出席(取締役会、経営会議(常務会)等) 経営会議(常務会)等への出席・意見陳述 | 法 381 条 2 項 基準 2 条・42条 |
監査業務支援ツール | ||
1.経営会議(常務会)等に出席する目的 多くの会社では、取締役会とは別に経営会議(常務会)等(以下、「経営会議」という。)の名称による経営に関わる取締役社長の諮問機関が存在する。会社経営において、数多くの案件がある中で、すべての案件を取締役会に付議し、実質的な審議をすることは時間的な制約があることから、案件の実質的な審議は経営会議で行う会社も少なくない。この場合、監査役は、重要な意思決定の過程及び会社業務に関する種々の情報や潜在的な会社のリスク等を確認するために、経営会議等に出席するべきである。 | ||
監査役業務のポイント | 2.経営会議に出席する場合のチェックポイント ① 職務の分担に従って経営会議に出席する監査役は、事前に議案を調査し、適法性が疑われる議案がないか、リスクに対する対応は万全か、意思決定プロセスは合理的か、経営会議規程(付議事項等)等の社内手続きに則って付議されているかを確認する。議案又は資料に不備等が発見された場合には、担当事務局に助言・勧告する。 ② 経営会議に付議される議案等について、必要があるときは、事前に担当取締役等から説明を受ける。 ③ 出席した監査役は、必要に応じて監査役会に経営会議の審議内容を報告し、全監査役と情報の共有化を図る。 ④ 監査役が経営会議に欠席した場合は、経営会議担当事務局(以下、「事務局」という。)から、 都度、資料及び経営会議における重要な質疑応答の概要の説明を聴取する。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.経営会議運営事務局との連携 ① 事務局に年間の経営会議スケジュールを確認のうえ、職務の分担に従って経営会議に出席する監査役と日程を調整する。常勤監査役全員が出席する場合や、常勤監査役が交代で出席する場合があり、欠席する場合は、別の監査役に出席してもらう。 ② また、期中において経営会議スケジュールの変更は起こり得ることから、スケジュールが確定次第、都度、担当事務局から、監査役並びにスタッフに対して開催日時、場所を通知してもらうようにする。 ③ 担当事務局に経営会議資料の閲覧方法とルートを確認する。監査役の指示に基づく対応ができるよう、資料はスタッフも閲覧できるように手配する。 ④ 回覧方法がデータベースによる場合は、担当事務局に閲覧者の閲覧権限の付与手続きを実施する。回覧方法が紙又は電子ファイルの場合は、配信先として閲覧者を登録してもらうなど、確実に資料が回覧されるよう手配する。 ⑤ 監査役が経営会議に欠席した場合は、担当事務局の説明者から、資料及び経営会議における重要な質疑応答の概要の説明を受ける日程を調整する。 | |
2.議案等に対する調査対応等 ① 監査役からの指示に対応できるよう、経営会議等の資料を閲覧し、必要に応じて、適法性が疑われる議案がないか、経営会議規程(付議事項等)等の社内手続きに則って付議されているか議案・内容を確認する。なお、問題があることを認識した場合には、監査役にその旨を報告し、監査役の指示に基づいて担当事務局と内容確認の場を調整する。この場合、スタッフも同席のうえ、備忘録を作成する。 ② 経営会議開催前に、監査役の指示により、担当取締役等からの説明を要する場合は、スタッフは担当取締役等から監査役への説明の場を手配する。説明にはスタッフもできるだけ同席し、必要に応じて監査調書案(メモ等)を作成する。監査役が直接説明を受けるほどではないが、確認しておきたい程度の場合には、スタッフが担当部署へ出向き、直接担当者から説明を受け、監査役に報告する。 ③ 経営会議資料及び備忘録・監査調書を保管・管理する。 | ||
スタッフとして留意する点 | 監査役が経営会議に出席できないことになっている場合は、事務局から、都度、資料及び経営会議における重要な質疑応答の概要の説明を聴取することが望ましい。 | |
①機関設計の違いによる対応(指名委 | ✍取締役会への出席 委員は取締役であるので、当然、取締役会に出席する義務と権利を有し、また議決権を有してい |
員会等設置会社) | る。したがって、監査役のように取締役会での意見陳述の義務はないが、取締役会で決議・報告される事項に対して、審議し、妥当性を検討し、議決権(場合によっては議決に賛成しないことを含む。)を行使することができる。 なお、指名委員会等設置会社のみ、法 417 条 3 項により、監査委員会がその監査委員の中から選定する者は、遅滞なくその監査委員会の職務執行状況を取締役会に報告する義務がある。 ✍その他会議への出席 機関設計により出席対象となる会議が異なる場合がある(例:指名委員会等設置会社:執行役会)。常勤の委員無の場合は、重要会議への出席をスタッフによる代理出席で対応することを検討する。 独任制の監査役と違い、株式会社の機関である監査等委員会が業務財産調査権を有するので、監査等委員は監査等委員会により選定されることによって、重要会議に出席し、必要に応じて意見を述べる権利を持つ(法 399 条の 3、1 項・2 項)。 従って、監査等委員は、報告の徴収、調査に関する事項について、監査等委員会の決議があると きは、その決議に従わなければならないとされている(法 399 条の 3、4 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 取締役会と同日に経営会議が行われる場合、招集通知や議題一覧表及び会議資料等は、取締役会の分と同時に受領して両方の内容を突合している。 |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 重要会議への出席(取締役会、経営会議(常務会)等) その他重要会議への出席・意見陳述 | 法 381 条 2 項 基準 42 条 |
監査業務支援ツール | ||
監査役業務のポイント | 1.その他重要会議に出席する場合のチェックポイント ① 取締役会、経営会議以外の重要会議(以下、「その他重要会議」という)への出席については、監査役は、会議の重要度と監査の観点、また監査役の職歴(経理系/営業系/技術系)等を総合的に勘案して決定された監査役の職務分担に基づき出席する。出席するその他重要会議において監査役は、案件に法令又は定款違反はないか、意思決定プロセスが合理的かどうかなどについて監査することが基本である。 ② その他重要会議に取締役が出席する場合は、当該会議において、組織、手続き、社内規則・規程並びに内部統制システムの構築・運用状況などについて、取締役の管理監督機能が果たされているか確認する。 ③ 適法性が疑われる議案、その他内容を確認する必要がある場合は、事前に担当事務局から内容に関し報告を聴取する。また、会議開催後も監査役が問題等を感じた場合は担当取締役等から説明聴取する。 ④ 出席した監査役は、他の監査役にその他重要会議の資料を回覧するとともに、必要に応じて監査役会にその他重要会議の審議内容を報告し、全監査役と情報を共有する。 ⑤ 監査役は、スタッフによる代理出席が可能な会議である場合は、代理を指名して出席させることがある。 | |
✍その他重要会議の主な事例 ア. 代表取締役及び取締役が出席する重要会議 予算策定・決算報告の事前会議、投融資会議、技術製造会議、研究開発会議、マーケティング会議、販売会議、環境・エネルギー会議、保安防災・安全会議、デリバティブ委員会、災害対策委員会ほか イ. 内部統制システムに係る重要な会議・委員会等 内部統制委員会、リスク・マネジメント委員会、コンプライアンス委員会、危機管理委員会、品質管理委員会ほか ウ. その他情報収集のため必要な会議等事業本部長・支店長会議 | ||
スタッフ業務のポイント | 1.事前の準備 ① 監査役と確認のうえ、適宜、監査役が出席すべき重要会議を見直す。会議が新設される場合には、その会議の設置目的や審議内容を調査し、監査役に出席するかどうかを確認する。 ② 担当事務局に年間の会議スケジュールを確認のうえ、業務の分担に従ってその他重要会議に出席する監査役と日程を調整する。スタッフが出席する場合は、その旨を担当事務局に連絡する。 ③ 担当事務局に会議資料の閲覧方法とルートを確認し、資料は監査役とともにスタッフも回覧できるように手配する。回覧方法がデータベースによる場合は、担当事務局に閲覧者の閲覧権限の付与手続きを実施する。なお、回覧方法が紙又は電子ファイルの場合は、配信先として閲覧者を登録してもらうなど、確実に資料が回覧されるよう手配する。 ④ 会議に欠席した場合は、必要に応じて担当事務局からの説明聴取のスケジュール調整を行い、説明を聴取する場を設ける。 | |
2.議案等の確認及び調査手配 ① 会議資料等を担当事務局から入手のうえ、議案及び議事内容を確認する。適法性が疑われる議案や社内手続き等に問題があることを認識した場合には、監査役にその旨を報告し、監査役の指示に基づき担当事務局と内容確認の場を調整する。この場合、スタッフも同席のうえ、備忘録を作成する。 ② 会議終了後、監査役の指示により、担当取締役等からの説明を要する場合は、スタッフは担当取締役等から監査役への説明の場を手配する。説明にはスタッフもできるだけ同席し、必要に応じて監査調書(案)を作成する。監査役が直接説明を受けるほどではないが、確認しておきたい程度の場合には、スタッフが担当部署へ出向き、直接担当者から説明を受け、監査役に報告する。 ③ スタッフが出席する場合は、速やかに監査役へ審議の経過や質疑応答の内容を報告する。 |
3.その他重要会議に関わる文書等の保管・管理 その他重要会議会議資料及び備忘録・監査調書を保管・管理する。 | |
スタッフとして留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 独任制の監査役と違い、株式会社の機関である監査等委員会が業務財産調査権を有するので、監査等委員は監査等委員会により選定されることによって、重要会議に出席し、必要に応じて意見を述べる権利を持つ(法 399 条の 3、1 項・2 項)。 従って、監査等委員は、報告の徴収、調査に関する事項について、監査等委員会の決議があるときは、その決議に従わなければならないとされている(法 399 条の 3、4 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | |
参考文献 | 高橋均[2012]『監査役監査の実務と対応』同文舘出版。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 代表取締役との会合 代表取締役との会合 | 法 381 条 2 項 基準 15 条・24 条 ③ |
監査業務支援ツール | □「代表取締役との意見交換会の議事録」(ツールNo.B-8) | |
監査役業務のポイント | 監査役として、取締役の職務の執行を監査することにより、企業の健全で持続的な成長を確保し、社会的信頼に応える良質な企業統治体制の確立に努める職責を果たすため、代表取締役と定期的な会合を持って、監査に必要な情報を入手し相互に意見交換を行うことは不可欠であるといっても過言ではない。 1.代表取締役と会合をする目的 ① 監査役が主体となり、社内外に対して経営上の一切の権限を有し、かつ、取締役をまとめる立場である代表取締役(経営トップ)に対して開催を要請する会合であり、監査役と代表取締役間で意見交換を行うことにより、監査役の業務監査・会計監査に役立つ情報収集を行うほか、経営上の懸念事項について監査役から代表取締役に伝達し対処を求める場である。 ② 代表取締役(経営トップ)としての経営姿勢やリスク認識を確認するよい機会である。 ③ 代表取締役と、会合を通じて忌憚のない意見交換を行うことにより、相互認識形成と信頼関係を構築しておくことは、監査役の監査環境を整備するうえで、重要である。特に、株主の負託を受けている監査役と、経営トップとのコーポレート・ガバナンスに関する意見の一致を見ることは非常に重要である。 ✍会合における主な議題 (1)代表取締役からの説明・報告等。 ◆ 代表取締役の経営ビジョン、経営方針、経営戦略 ◆ 会社が対処すべき課題、会社を取り巻く経営リスク等と優先すべき対策についての認識・意見交換 ◆ 法令等遵守体制、損失の危険管理体制、情報保存管理体制等を含む内部統制システムの構築・運用状況についての認識・意見交換 ※ 内部統制システムの不備の等の改善に関しては、代表取締役(社長)が強い意思とリーダーシップを持って取り組まなければ表層的な改善にとどまり、本質的な改善に至らないことに留意する必要がある。 ◆ 自社の取締役会の実効性に関する評価 ◆ 社外取締役に期待する役割・位置づけ (2)監査役(会)からの説明・報告等。 ◆ 監査方針、監査計画、重点監査項目の説明 ◆ 監査役監査の実施状況とその結果についての報告(役職員からの報告聴取、国内事業所への往査、子会社の調査・確認に関わる結果を含む) ※ 代表取締役との面談は期中監査の総仕上げ的な位置づけとして臨むべきである。 ◆ 特別に実施した調査等の経過及びその結果についての報告 ◆ 監査役スタッフの確保及び監査役への報告体制(役職員からの報告体制等)を含めた環境整備事項等に監査職務の円滑な遂行、監査の実効性確保のための監査体制に関する要請・ 意見交換。特に、下記事項に係る監査役への報告体制の役職員への意識付け・習慣付けが必須であり、代表取締役(社長)に要請し、実行してもらうことが重要である。 ∙ 問題事象が発生したら、第一報を直ちに(常勤)監査役に報告すること ∙ 問題事象の改善状況について、逐次監査役(会)に報告するこ ◆ その他、監査役会の要望・指摘事項 2.会合出席時のポイント ① 効率よく的確な情報を得る機会とするため、事前にテーマを準備することが望ましい。 ② 常勤監査役のみが会合に出席する場合でも、常勤監査役は監査役会においてその旨を報告し、テーマについて協議することが望ましい。また、面談内容を監査役会で報告し全監査役と情報を共有化する。 ③ 非常勤(社外)監査役も定期会合に出席する場合は、非常勤(社外)監査役に、長年養われた深 い知識と経験を踏まえて、社内の制約に捉われない自由で忌憚のない意見を述べてもらうこ |
とに留意する。 ④ 経営トップに失言や本音がでても無用な心配をかけさせないよう、議事録を作成する場合はポイントのみにとどめ、またスタッフが同席する場合は 1 名に絞る等の配慮が必要である。 | |
スタッフ業務のポイント | ① 年間開催日程を役員秘書関連部署とスケジュール調整する。 ② 全監査役が定期的会合に出席する場合、スタッフは、非常勤(社外)監査役の秘書等に年間スケジュールを連絡する。 ③ 監査方針及び監査計画等に基づいて、定期的会合に出席する監査役と会合テーマを調整する。 ④ 監査役の指示に基づき、代表取締役への報告資料など会合に関わる資料を作成する。 ⑤ スタッフが会合に同席する場合は議事録を作成する。なお、テーマによっては議事録を残さない場合もあるため、スタッフは、会合を実施した開催日時・場所・議題・資料等を記録しておくようにする。 ⑥ 監査役の指示に基づき、会合において意見交換や協議した内容についてフィードバックするため、関連部署等と会合の場を設定する。 ⑦ 代表取締役との定期会合に関わる資料を保管・管理する。 |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社の場合、会社の業務の執行を行うのは執行役であり(法 418 条)、監査委員は、代表執行役と定期的に会合を行い、経営方針や課題について確認する。 監査等委員会設置会社については、指名委員会等設置会社と異なり、監査役会設置会社との機関設計の違いによる異なる対応はない。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | ア. 年 3~4 回開催(監査計画・期中監査結果、期末監査結果時など)している。 イ. 非常勤(社外)監査役の知見をもって確認できるようなテーマも含めるようにしている。 ウ. 様々な事例を通して監査役監査の最新動向やスキルを代表取締役に紹介して、監査役監査への理解度を深めてもらっている。 エ. 正確性を期すため、録音採取後のうえ、開催記録を作成している。 オ. 監査委員会としては、年に 1 回代表執行役から説明を聴取している。 カ. 定期的会合には、監査役全員のほかに、社外取締役(独立役員)も参加している。 キ. 代表取締役のうち社長のみが参加し、会合の内容は公開せず、議事録の代わりに開催記録のみを残している。 ク. 会合は原則として、2 ヶ月に 1 回・1 時間の開催とし、半期に 1 回は非常勤監査役も含める。 |
その他特記事項 | |
参考文献 | 高橋均[2009]『実務解説 監査役監査』学陽書房。 高橋均[2012]『監査役監査の実務と対応』同文舘出版。 日本監査役協会[2008]「監査役スタッフ業務マニュアル」。日本監査役協会[2016]「監査役監査実施要領」。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 重要書類の閲覧 取締役会議事録等の閲覧 | 法 381 条 2 項 基準 39 条④ |
監査業務支援ツール | ||
【「重要書類の閲覧」の概要】 ① 重要書類の閲覧は、法 381 条 2 項の業務財産調査権に基づく、監査役の基本的かつ重要な監査の方法の一つである。 ② 監査役は、取締役の職務の執行について、社内手続き等に問題はないか、また内部統制システムの整備・運用の状況の観点から、社内手続きや重要書類の保存管理体制の状況に問題はないかなどを調査するために重要書類を閲覧する。 ③ 監査役は、重要書類を閲覧し、必要に応じて取締役等に説明を求め、また助言・勧告を行う。 | ||
監査役業務のポイント | 1.取締役会議事録等閲覧の目的 ① 取締役会議事録等は、株主からの請求に基づく閲覧(または謄写)に供され(法 371 条 2 項)、取締役会の決議に参加した取締役であって、取締役会議事録等に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定される(法 369 条 5 項)。 ② 株主代表訴訟となった場合、取締役は取締役会議事録等を証拠資料として提出するため、監査役は、取締役会において監査役が意見陳述義務を果たしていることを証明するため、監査役の発言内容が取締役会議事録等において適切に記載されているか確認する。 ③ 社外監査役は、特に事業報告に取締役会における社外監査役の主な発言内容が記載されること(施規 124 条4号)に留意して、議事録を確認する。 ④ 取締役会議事録等は 10 年間本店に備え置かなければならないため(法 371 条 1 項)、監査役は必要に応じて取締役会議事録等の備置状況を確認する。 | |
2.取締役会議事録閲覧のチェックポイント ① 取締役会議事録回付時 ア. 取締役会議事録は監査役等からの指摘による加筆・修正があり得るので、ドラフト段階で取締役会事務局から監査役に回付してもらうことが望ましい。 イ. この場合、監査役は、確認の意味で、取締役会議事録最終案を取締役会事務局から入手する。 ② 議事録閲覧時 監査役の発言内容や質疑応答は、適切に記載されているかに留意する。 ③ 議事録が電磁的記録をもって作成されている場合 法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置(=電子署名:施規 225 条)(法 369 条 4 項)を講じているかどうかに留意する。 | ||
3.取締役会議事録の修正 監査役は、必要と認めた場合は、取締役会事務局に取締役会議事録の修正を求める。 | ||
スタッフ業務のポイント | ① 取締役会事務局と調整のうえ、取締役会議事録の回覧方法・ルートを確認する。 ② 取締役会議事録がドラフト段階で監査役に回付される場合は、監査役からの議事録修正依頼等に対応できるよう、スタッフにも取締役会議事録のドラフト及び最終案を取締役会事務局から回付してもらうよう手配する。 ③ 取締役会議事録における監査役の発言内容等に疑義等がある場合は、監査役の指示に基づき、スタッフが取締役会事務局に確認し、必要に応じて取締役会事務局に議事録の修正を求める | |
スタッフとして留意する点 | ||
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | ア. 監査役設置会社では、監査役が経営の意思決定や業務執行を監査するのに必要なすべての調査ができる権限を有している(法 381 条 2 項)のに対し、指名委員会等設置会社の場合は、監査委 員会が選定する監査委員に同様の権限が与えられている(法 405 条 1 項)。りん議決裁書等の閲覧は監査委員会が選定する監査委員が行うほか、監査委員会の職務を補助すべき取締役(施規 112 条 1 項 1 号)が行うことも考えられる。特に常勤の委員なしの場合、選定委員(委員会の職務を補助すべき取締役)は、スタッフと協議し、閲覧方法(委員の閲覧前に、スタッフが閲覧し、要旨をまとめる等)を検討することも必要である。 イ. 指名委員会等設置会社においては、「執行役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体 |
制」(施規 112 条 2 項 1 号)は、執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして取締役会が決議する事項の 1 項目である。 ウ. 指名委員会等設置会社では、監査委員は取締役であり、当然、取締役会の一員として取締役会議事録作成について責任を負っている。したがって、ドラフト・案の作成段階からその内容を確認する必要があるが、自己の発言のみならず、他の取締役の発言内容や決議の賛否の記載が適切か、経営判断原則に沿った合理的な検討・審議・意思決定のプロセスが記載されているかを確認する。 エ. 株主代表訴訟については、監査役設置会社では監査役(法 386 条 2 項 1 号)、指名委員会等設置 会社では監査委員(法 408 条 3 項 1 号)が事前の提訴請求を受ける。ただし、監査委員は取締役であるので、訴訟提起の対象者である場合には除外される。また、非公開会社の場合で、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定している会社における株主代表訴訟では、取締役と会社間の訴訟は、監査役が代表するのではなく、株主総会又は取締役会が会社を代表する者を定めることができるとの規定(法 353 条、364 条)が適用される。 監査役会設置会社では、監査役が経営の意思決定や業務執行を監査するのに必要なすべての調査ができる権限を有している(法 381 条 2 項)のに対し、監査等委員会設置会社の場合は、監査等委員 会が選定する監査等委員に同様の権限が与えられている(法 399 条の 3、 1 項)。これは、機関である監査等委員会が権限を有しており、選定することにより、その権限を行使することを監査等委員に委任すると解すべき。りん議決裁書等の閲覧は監査等委員会が選定する監査等委員が行うほか、監査等委員会の職務を補助すべき取締役または使用人(施規 110 条の 4、1項1号)が行うことも考えられる。 監査等委員会設置会社では、監査等委員は取締役であり、当然、取締役会の一員として取締役会議事録作成について責任を負っている。したがって、ドラフト・案の作成段階からその内容を確認する必要があるが、自己の発言のみならず、他の取締役の発言内容や決議の賛否の記載が適切か、 経営判断原則に沿った合理的な検討・審議・意思決定のプロセスが記載されているかを確認する。 | |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 株主代表訴訟となった場合、取締役は取締役会議事録や添付資料等を証拠資料として提出することになるため、監査役は、取締役の発言内容や決議の賛否の記録等が取締役会議事録に適切に記載 されているかについても確認し、必要に応じて取締役に助言している。 |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 重要書類の閲覧 りん議決裁書の閲覧 | 法 381 条 2 項 基準 43 条 |
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1.りん議決裁書閲覧の目的 ① りん議決裁は取締役会決議と並ぶ、取締役の重要な意思決定の方法の一つであり、監査役は取締役の職務執行状況の監査の一環としてりん議決裁書を閲覧する。 ② りん議とは、所定の重要事項について、決定権をもっている取締役などに主管者が文書で決裁承認を得ることであり、職務権限規程等において、項目毎に社長決裁、本社部(室)長決裁、事業所長決裁等の最終権限者が定められている。 ③ 監査役は、りん議決裁書及び添付資料を入手・閲覧のうえ、審査が必要な案件を選定し、手続きに違法性(社長決裁逃れ等)がないか確認する。 ④ 社長決裁案件の中から重要なものを取締役会決議事項としている場合は、監査役は取締役会に出席し意見陳述するためにも、社長決裁書を閲覧する。 | ||
監査役業務のポイント | 2.りん議決裁書閲覧のチェックポイント ① 閲覧対象とすべきりん議決裁書の選定 監査役は、基本的には社長決裁書はすべてを閲覧し、本社部(室)長決裁書は特に重要なものを選定し、閲覧する。事業所長決裁書は基本的には、往査時にも閲覧する。 ② りん議決裁書回付時 ア. 社長決裁書は、電子決裁(データベース)による場合は、起案部署による発議から社長決裁に至るまでの情報を情報公開画面で確認できるよう、また、書面決裁による場合は、社長決裁後、遅滞なく監査役に回付されるよう、総務や経営企画部門等の担当事務局に求める。 イ. 本社部(室)長決裁書は、電子決裁(データベース)による場合は、起案部署による発議から部(室)長決裁に至るまでの情報を、情報公開画面で確認できるよう、また、書面決裁による場合は、部(室)長決裁後遅滞なく監査役に回付されるよう、起案部門に求める。 ③ りん議決裁書閲覧時 ア. 監査役が閲覧すべきりん議決裁手続きに、職務権限規程など社内規則上の違反はないか、決裁権限者の押印がなされているか(決裁権限者の決裁漏れはないか。)。 イ. 決裁事項は明確か、決裁理由は経営判断のために必要な項目が記載されているか。 ウ. 売買契約書・覚書・労働協約など、りん議決裁書に添付されている資料は、決裁の目的に照らし合わせて必要かつ十分かどうか。 エ. 事前協議部署の意見は正鵠を得ているか、事前協議部署が反対又は保留の場合はどのような理由によるのか。 オ. 経営会議等で事前にりん議決裁案件が審議される場合は、経営会議等における審議内容との整合性はとれているか。 カ. 決裁のタイミングは妥当か(事後決裁はないか。決裁までに時間がかかり過ぎてないか。)。キ. 方針等のりん議決裁に対して実行りん議が発議された場合、元のりん議決裁書との整合性 はとれているか。 ク. 案件分割により、下位決裁者が処理していないか、取締役会付議事項がりん議決裁だけで済まされていないか。 ケ. 特に、りん議決裁に競業取引及び利益相反取引等がある場合は、取締役会承認手続きが漏れていないか(競業取引及び利益相反取引等の監査は、「【M22】競業取引・利益相反取引の監査」を参照)。 コ. 内部統制システムの観点から、社内規則など、りん議決裁書は保管場所や保存年数が定められており適切に保管・管理されているか。 | |
3.りん議決裁書閲覧後の対応 ① りん議決裁書等を閲覧した監査役は、要審査案件の審査結果を監査役会にて報告し、全監査役と情報を共有する。 ② りん議決裁手続きに職務権限規程の違反があり、これが改善・是正されない場合や、合議部から反対意見があり、監査役としてその内容が看過できない場合は、必要に応じて取締役会 等において指摘し、意見を述べる。 |
スタッフ業務のポイント | ① りん議決裁担当事務局(以下、「担当事務局」という。)と調整のうえ、りん議決裁書の閲覧方法・ルートを確認する。 ② 回覧方法が電子決裁(データベース)による場合は、担当事務局に閲覧者の閲覧権限の付与手続きを要請する。なお、回覧方式が書面(持ち回り)又は電子ファイル方式の場合は、配信先として閲覧者を登録してもらう。 ③ 監査役からの問い合わせに対応できるよう、スタッフもりん議決裁書を閲覧できることが望ましい。 ④ スタッフがりん議決裁書を閲覧する場合は、都度、職務権限規程と照らし合わせて決裁手続きに問題がないかを確認する。また、監査役の指示に基づき、要審査案件の審査結果一覧を取りまとめる。 ⑤ 特に、りん議決裁に競業取引及び利益相反取引等がある場合は、取締役会承認手続きが漏れていないか確認する。 ⑥ 監査役がりん議決裁手続き、又は決裁内容に手続き違反や法令違反等の疑義等がある場合、監査役の指示に基づき、起案部署からのヒアリングの場を設定し、面談録を取りまとめる。 ⑦ 要審査案件一覧資料及び面談録を保管・管理する。 |
スタッフとして留意する点 | ア. スタッフは、りん議決裁書の記載事項(作成年月日、開催日時、場所、出席者、議題、議事内容、決裁内容、決裁理由、発送(送信)先等)及び添付資料を確認する。りん議決裁書等の確認後、手続きの誤りや決裁内容の不備を発見した場合、軽微なものについてはりん議決裁書担当事務局に確認するとともに、訂正が必要と思われるものについては訂正の要請を行い、その結果を監査役に報告する。 イ. スタッフにて疑義のある場合、監査役と相談のうえ、調査・確認を行い、監査役の指示に基づき、担当事務局又は起案部署からのヒアリング、関連資料・データの収集、調査事項に知見のある者からの聴取、関連法規、官公庁指針、現地状況の調査等を行うことがある。 ウ. りん議決裁の有効期間を定めており、期限内に執行されなかったりん議決裁書は再度りん議決 裁をとることとしている。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | |
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | |
参考文献 | 高橋均[2012]『監査役監査の実務と対応』同文舘出版。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 重要書類の閲覧 その他の書類等の閲覧 | 法 381 条 2 項 基準 43 条・61 条 |
監査業務支援ツール | ||
監査役業務のポイント | 1.その他の書類等の閲覧のチェックポイント 監査役は、取締役の職務の執行又は取締役から権限委譲を受けた支配人その他の使用人の業務の執行状況を調査するためにその他の書類等を、入手・閲覧のうえ、手続き違反(権限逸脱)や法令違反がないか確認する。 ✍その他の書類の主な事例ア. 株主総会議事録 イ. 経営会議等の議事録 ウ. その他重要会議(CSR会議・内部統制委員会等)の議事録エ. 内部監査報告書 オ. 人事関係(昇降格・懲罰)書類 ※役職員が不利益処分を受ける場合は、事実認定に特に留意し、当人の人権の侵害にあたらないか確認するため閲覧する。 カ. 経営会議等出席者に対する供覧書 ※年間の資金運用実績・デリバティブ残高など、定例業務のため経営会議等出席者に供覧の方法により周知しているものについて、権限委譲を受けた支配人その他使用人の業務の執行状況を調査するために閲覧する。 キ. リスク情報 ※事件・事故・不祥事等のリスク情報が開示されている場合は、発生の都度、情報を閲覧する。 2.その他の書類等の閲覧後の対応 ① その他の書類等の内容に手続き違反(権限逸脱)や法令違反等があった場合は、担当部署からの聴取により内容を確認のうえ、監査役会にて報告し、全監査役と情報を共有する。 ② その他の書類等に手続き違反(権限逸脱)や法令違反があり、これが是正されない場合は、取締役会等において意見を述べる。 | |
スタッフ業務のポイント | ① その他の書類等の所管部署(以下、「担当事務局」という。)と調整のうえ、その他重要書類の閲覧方法・ルートを確認する。 ② 回覧方法がデータベースによる場合は、担当事務局に閲覧者の閲覧権限の付与手続きを要請する。なお、回覧方式が紙又は電子ファイル方式の場合は、配信先として閲覧者を登録してもらう。 ③ 監査役からの問い合わせに対応できるよう、スタッフもその他の書類等を閲覧できることが望ましい。 ④ 監査役がその他の書類等の手続きや内容に不備があると判断した場合、監査役の指示に基づき、所管部署からのヒアリングの場を設定し、面談録を取りまとめる。 ⑤ 面談録及び関係資料を保管・管理する。 | |
スタッフとして 留意する点 | ||
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | ||
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | ||
各社の工夫・事例 | 監査役の指示に基づき、監査役が全件閲覧する書類と、スタッフが抽出して監査役の閲覧に供する書類とに分類している。例えば、意思決定書類であるりん議決裁書や、会社の信用に関わる事故報告書等については監査役が全件閲覧し、契約書や社印・社長印押捺簿に記載の書類件名に ついては監査役の指示に基づき、スタッフが抽出し、これを監査役が閲覧している。 | |
その他特記事項 | ||
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 役職員からの報告聴取(任意報告の受領) 役職員からの定例報告(業務執行及び財産保全の状況) | 法 381 条 2 項 基準 3 条④・37条③ |
監査業務支援ツール | □「役職員からの報告聴取 監査調書」(ツールNo.B-9) | |
【役職員からの報告聴取の前提】 ① 役職員とは事業部・本社各部門・事業所等の取締役及び使用人(以下、「役職員」という。)をいう。 ② 法 381 条 2 項の規定により、監査役は、いつでも役職員に対して事業の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。会社は取締役からの委任に基づいて、事業部長・本社各部門長又は事業所長が業務を執行していることから、監査役は、取締役の職務の執行状況及び取締役の管理監督機能が十分に機能しているかどうかなどの観点から監査する(事業所長等からの報告聴取は、「【M20】【M21】事業所への往査、子会社(国内・海外)の調査・確認」を参照。)。 ③ 役職員が監査役に報告をするための体制の整備は、監査役監査の環境整備に関する事項の中の「監査役への報告体制」に該当し、内部統制システムに係る取締役会の決議事項の1項目である。 ④ 本項目「役職員から報告聴取(任意報告の受領)」では、以下のとおり区分する。 ・役職員からの定例報告(業務執行及び財産保全の状況) ・役職員からの非定例報告(リスク情報:事件・事故・不祥事、法令違反他) ・子会社の役職員からの報告聴取(任意報告の受領) | ||
1.役職員から報告聴取する目的 (1)役職員からその職務の執行状況について報告を受け、必要に応じて説明を求め、業務執行の状況や財産保全の状況を確認することにより、監査役は、取締役の職務の執行状況を監査し、内部統制システムの構築・運用状況を監査する。なお、内部統制システムの構築・運用状況に関し、役職員が監査役に定例的に報告する事項の例は、以下のとおりである。 | ||
監査役業務のポイント | 《取締役からの定例報告事項》 取締役の職務分掌、管掌部門における具体的な内部統制システムの構築(組織の設置・規則制定等)、運用状況。具体的には、以下のとおり。 ① 会社の基本理念、経営方針・経営戦略・計画に対する認識と責任 ② 取締役としての善管注意義務・忠実義務、法令遵守、責任についての認識 ③ 取締役の職務分掌・管掌部門における内部統制システムの構築・運用状況 ・ 必要な組織が設置されているか、必要な規程・規則が制定されているか ・ 取締役および部門内の責任、決裁権限・基準は明確になっているか ・ 牽制機能が働く組織体制になっているか ・ 業務の遂行に十分な人員配置に配慮しているか ・ 業務の効率性に配慮しているか ・ 意思決定・業務執行のプロセス・結果に係る情報を適切に保管する仕組の有無 ・ 社員に対して、経営方針・規則等を周知徹底しているか (情報を伝達する仕組みの構築状況) ・ 内部統制システムの運用状況(問題の有無)について把握しているか (情報が上がる仕組みの構築状況) 《使用人からの定例報告事項》 所属部門における全社的な内部統制システムの運用状況。具体的には以下のとおりである。 ① 本社部門:企業行動基準・経営方針・経営戦略等の周知徹底状況。法令・定款・規則の遵守状況。リスク管理、業務の有効性・効率性・適正性確保の状況、企業集団の状況。会社財産の保全状況。 ② 事業部門:法令・規則等の遵守体制(業務のPDCAの確認を含む)。財産の保全状況。当該部門の役割・責任・機能。本社管理部門等からの情報伝達状況 監査役は、これらの報告聴取において、必要と認められる場合は監査役会で協議し、代表取締役との定期的会合での報告に加え、取締役に対し助言・勧告を行う。 ③役職員からの定例報告は、定例の業務監査項目の一つであり、すべての事業部・本社各 部門を対象として年 1~2 回行うことが多いようである。 |
2.役職員と面談する際のチェックポイント (1) 取締役会における年間面談計画の報告 監査役は、監査役の役割・監査の目的を知らしめるために、役職員の年間面談計画を取締役会に報告する方が望ましい。 (2) 面談計画の面談対象者への通知 監査役は、取締役会で役職員の年間面談計画を報告する場合は、事前に、事業部・各部門長に面談通知若しくは口頭報告により面談する旨を通知することが望ましい。この場合、併せて管掌取締役にもその旨を通知する。 (3) 面談時 ① 面談に管掌取締役が出席する場合は、管掌部門に対する取締役としての管理監督機能が果たされているか確認する。また、必要に応じて競業取引・利益相反取引等がないか確認する。取締役の「業務執行確認書」の記載事項をその場で説明し、確認することがある。 ② 管掌取締役が出席しない場合は、使用人の業務執行状況の聴取を通じて、取締役が管理監督機能を果たしているか確認する。 ③ 営業部門と製造部門ではリスクが異なり、また一括りに営業部門といっても取扱品目や販売エリア(国内/海外)によってリスクが異なるので、各部門に個別の重点監査項目を提示することが必要である。 ④ 面談の主な項目は以下のとおりである。 ア. 今年度事業計画(定量及び定性)の重点課題並びに進捗状況イ. 財務の状況・月次・四半期(中間を含む)・期末決算状況 ウ. 管掌部門の組織・運営体制エ. 他部門との連係状況 オ. 内部監査部門が実施した内部監査の結果カ. 事故・不正・苦情・トラブルの状況 キ. 内部統制システムの構築・運用状況 ◆ コンプライアンスの状況 ◆ リスクマネジメントの状況 ◆ 社内規則の整備状況 ◆ 重要書類の保管・管理の状況 ◆ 財産の調査(金銭、売掛債権、有価証券等) ⑤ 期末監査において面談相手が取締役の場合は、必要に応じて、競業取引・利益相反取引 等がないか確認する。また、取締役の「業務執行確認書」の提出を面談の場で要請する。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.スケジュール調整 (1) 面談先の選定 ① 前年度の面談先・面談録(監査役指摘事項)、当年度の部門計画・事業環境に鑑み、面談先を選定する。また、面談先は当年度の監査計画及び監査方針と整合性を図るものとする。 ② 内部監査部門からの事業部・本社各部門に対する改善要望(指摘)事項がないか、内部監査報告書を閲覧して確認し、面談先を選定する際の参考とする。 ③ 面談先は、基本的には事業部長・本社部門長であるが、部門が多い場合は、統括本部長や管掌役員とする場合がある。この場合は、現況と課題のような大きなテーマで意見交換することが望ましい。 ④ 事業部長・各部門長以外に、反面調査のために担当者に対する面談を行うことがある。 (2)面談スケジュールの作成 ① 営業部門を面談する場合は、販売方針変更時や新製品発売時は期間を空けてから面談する等、事業の節目に留意して面談スケジュールを作成する。 ② 事業部長等が新任の場合は、不慣れのため質問に答えられない場合があるので、期間を空けてから面談する等の気配りも必要である。 ③ 面談対象者が多い場合、監査役(室)のほかの行事と重ならないように面談スケジュールを作成する。 2.面談に関わる事前対応 ① 概ね面談の 1~2 ヶ月前に、スタッフが事業部・本社各部門の庶務担当責任者と面談スケジ |
ュールの詳細調整を行う。またスタッフが複数いる場合は、面談に同席するスタッフを絞り込む。 ② 面談内容(質問項目、論点、着眼点等)を、監査役と協議のうえ作成する。スタッフは、面談対象先に関わる事業計画や部門目標、直近の取締役会や経営会議(常務会)等をはじめとする重要会議の資料、当該部門に関わる事件・事故・不祥事、法令違反、セクハラ・パワハラ・メンタル疾患等のリスク情報を入手し、面談内容を取りまとめるとよい。また、面談項目は、以前聴取した内容の進捗や課題を反映させる等、継続性のあるものが望ましい。 ③ 管掌取締役が出席する場合は、内部統制システムの構築・運用状況に関わる取締役の義務を中心に日常業務で気付いた質問事項を取りまとめる。また、取締役の「業務執行確認書」をその場で確認する場合は、「業務執行確認書」を用意する。 ④ チェックリスト方式で面談する場合は、当年度の経営計画や事業環境、法令改正等を考慮し、監査役と相談して、チェックリストを見直す。 ⑤ 面談対象先の部門長に対し(面談先が管掌役員や本部長の場合は当人宛て)、通知文書を作成し、聴取内容を提示する。 ⑥ 監査役からは、業務の負荷を配慮し、面談先に対して積極的に面談時の説明資料の作成を求めないが、面談先が説明資料を必要とする場合は、スタッフは事前に入手し、監査役に手交する。 3.受領した関係資料・面談録の保管・管理 ① 可能な限り面談に同席し、面談後、内容の記録、要点の整理を行い、面談録(案)を作成する。 ② 面談の中で、調査が必要となった事項は、後日聴取した本社役職員等から資料を入手し監査役に提出する。 ③ 関係資料及び面談録を保管・管理する。 | |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 監査役会設置会社では、監査役は経営の意思決定や業務執行を監査するのに必要なすべての調査ができる権限を有している(法 381 条 2 項)のに対し、指名委員会等設置会社の場合は、監査委 員会が選定する監査委員に同様の権限が与えられている(法 405 条 1 項)。役職員からの報告聴取は監査委員会が選定する監査委員が行うほか、監査委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人 (施規 112 条 1 項 1 号)が行うことも考えられる。特に常勤の委員無の場合は、スタッフが対応するケースが考えられる。 なお、指名委員会等設置会社においては、執行役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した時は、直ちに、その事実を監査委員に報告しなければならないが、取締役にはこの報告義務はない(法 419 条 3 項)。 監査役会設置会社では、監査役は経営の意思決定や業務執行を監査するのに必要なすべての調査ができる権限を有している(法 381 条 2 項)のに対し、監査等委員会設置会社の場合は、監査等委員会が選定する監査等委員に同様の権限が与えられている(法 399 条の 3、1 項)。役職員からの報告聴取は監査等委員会が選定する監査等委員が行うほか、監査等委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人(施規 110 条の 4、1 項 1 号)が行うことも考えられる。これは、機関である監査等委員会が権限を有しており、選定することによりその権限を行使することを委任していると解される。 なお、監査等委員会は、取締役等に対して、監査等委員会に出席し、監査等委員会が求めた事 項について説明するよう要求する権限を有している(法 399 条の 9、3 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | ア. 主要施策の現状と課題等について社外監査役向け勉強会(部長級による講義)を年 4 回実施 し、社外監査役との情報共有化及び社内知識の向上(常勤監査役と同じ土俵で監査を行ってもらうため。)を図っている。 イ. 面談は役職員単位ではなく、役職員が担当する本社内部署毎に実施しており、役職員を主体としつつ、部長次長級社員からも取組み方針、課題等を聴取している。 ウ. 年初の面談に加え、進捗状況又は新たな発生課題等を把握するため、年度末にフォロー面談を実施している。 エ. スタッフの担当部署を決めておき、各スタッフは担当部署の役職員に対する面談の年間スケジュールを作成している。 オ. 担当役員が複数の部署を管轄している場合、可能な限り、管轄部署毎にスケジュールをまとめ効率的な面談を行っている。 カ. 監査計画策定時に、取締役その他職員から必要に応じ重点監査項目を含む実務の状況を聴取 する旨を通達するほか、面談日程が決まった後、目的・趣旨・討議テーマ等を当該役職員にメールで送付している。 |
キ. 聴取に同席するスタッフは、聴取した本社役職員(又は部門)の出身系統に近い者を選定している。 ク. スタッフの担当部署を決めておき、各スタッフは担当部署の役職員に対す面談について個別調整を行う。 ケ. 面談の記録を社内イントラネット上の監査役及びスタッフの共有フォルダに保存し、監査役を含めスタッフ全員で情報を共有している。 コ. 人事事案等、スタッフの同席が好ましくない案件は、役職員の面談を監査役のみで実施、面談録も作成しない。 サ. スタッフの担当部署を決めておき、各スタッフは担当部署の役職員に対する面談に同席し記録作成等を行う。 シ. 次回の面談に活かせるよう、継続的に聴取すべき内容にチェックをしておく。 | |
その他特記事項 | 監査の実効性をあげる方法として、チェックリストを利用することがある。チェックリストは 監査対象部門が予め自主点検を行うための確認表として用いられる。チェックリストは、確認すべき全社共通項目を抽出して作成するのが基本である。 |
参考文献 | 高橋均[2009]『実務解説 監査役監査』学陽書房。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 役職員からの報告聴取(任意報告の受領) 役職員からの非定例報告 | 法 381 条 2 項・382条・385 条 基準 27 条 |
監査業務支援ツール | ||
1.リスク情報を報告聴取する目的 ① 監査役は、法 382 条により、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告することが義務付けられている。 ② また、取締役も、法 357 条により、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した時は、監査役(監査役会設置会社においては監査役会)に報告しなければならない。 ③ 事故・事件・不祥事、法令違反その他(以下、「リスク情報」という)が発生した場合や、監督官庁による検査により行政処分等を受けた場合は、大きな企業不祥事に発展し得ることに留意し、これらのリスク情報が適切に報告される体制を整備し、発生した場合は、リスク情報担当部署(以下、「担当部署」という。)からその内容を聴取する。 ④ リスク情報の報告聴取は、内部統制システムの基本方針に記載されているリスク管理体制の構築・運用状況を確認するよい機会である。 | ||
2.リスク情報の事例及び報告を聴取する時期 ① リスク情報の主な事例 ア. 事件・事故・不祥事情報 イ. 法令違反(会社法以外の法令を含む) ウ. 監督官庁による検査、調査により行政処分を受けた場合 エ. コンプライアンスホットライン利用状況(「【M35】内部通報制度の有効性の確認」参照)オ. 係争中の訴訟 カ. セクハラ・パワハラ・メンタル疾患の発生 | ||
監査役業務のポイント | ② 報告聴取の時期 ア. マスコミに公表されて大きな企業不祥事に発生する可能性があることから、基本的には、発生時に担当部署から報告を聴取する。 イ. 発生から収束にいたるまで適切に対応しているか進捗状況を確認するために、すべてのリスク情報について、定期的(中間・期末時等)に、まとめて担当部署から報告を聴取することが望ましい。 | |
3.リスク情報報告聴取時のチェックポイント ① リスク情報は、基本的には発生時に担当部署の使用人から報告聴取するので、使用人の業務執行状況の聴取を通じて、取締役のリスク情報に対する管理監督機能を確認する。報告聴取時のポイントは以下のとおりである。 ア. 被害の拡大防止に適切に対応しているか。被害者への対応は適切か。 イ. 業法・関連法令に基づく届出・報告等が主管官庁等に遅滞なく実施されているか。ウ. マスコミ対応は適切か。当社のダメージを極小化するよう手を打っているか。 エ. 原因の究明を適切に行っているか。 オ. 責任の所在を明確にしているか。社内処分は適切か、懲戒規程等に従っているか。 カ. 再発防止策は適切か(場合によっては、再発防止策が適切に実行されているかフォロー監査を実施する。)。 ② 対外的に報道される場合は、事前に非常勤監査役にもその内容を知らせる。 ③ 不祥事の場合には、常勤監査役が調査委員会等に出席し内容を聴取した方がよい。 ④ 報告聴取した監査役は、リスク情報を監査役会で報告し、全監査役と情報を共有化し、必要に応じて取締役に助言・勧告を行う。 ⑤ 有事に備えた危機管理体制が適切に整備されているか、再発防止・未然防止のための危機管理対応が有効に機能しているか担当取締役に確認し、必要に応じて指摘や改善に向けた助言・勧告等を行う。 ⑥ 報告が内部通報の場合、通報者が不利な扱いを受けていないか。 | ||
4.監査役として留意する事項 |
① 経営者の構築したリスク管理体制に関わる内部統制の有効性の監査を実施することが、社会及び株主から強く期待されており、監査役はリスク情報の報告聴取を行わなければならない ② 情報の漏洩・滅失がないよう常に最大限の注意を払う(守秘義務)。特に、個人情報の取り扱いに留意する。また、報告が内部通報の場合、通報者が不利な扱いを受けていないかの事後確認を怠らないこと。 ③ 発生後、迅速な初期対応を図らねばならない案件と再発防止のために慎重に時間をかけて体制整備を強化しなければならない事項があるので、案件によっては、速報を受けた後、状況の経過を見ながら聴取を行う。 ④ 情報が得られるように日頃から、役職員と良好なコミュニケーションを取っておく。 | |
スタッフ業務のポイント | ① 監査役に報告されるべき事項が、漏れなく、迅速かつ円滑に聴取できる体制を構築できるよう、担当部署と、報告聴取すべきリスク情報及び報告に必要な事項(報告内容の概要、資料の有無、説明者等)を確認する。定期報告(中間・期末時等)を聴取する場合は、その日程についても決めておく。 ② 国内外のグループ会社からも、リスク情報が入手できるように調整する。 ③ 担当部署から報告を受けた事故・事件の概要を一覧表にまとめ、監査役会資料を作成する。 ④ 担当部署から報告を受けた事故・事件の速報、確報はファイリングして管理する。 ⑤ 重大かつ緊急性の高い案件は、監査役の指示に基づき担当役員及び関連部に報告を徴求し、報告内容について面談録を作成する。事案によっては、監査役会で担当役員に説明してもらう手配を行う。 ⑥ イントラネットにリスク情報が開示されている場合は、関連アイコン(不祥事、苦情、顧客情報漏洩事故、訴訟事案等)を適宜、閲覧して確認する。 ⑦ 発生した事案について、補足説明が必要な場合は、他の部署等にも適宜確認し、情報収集を行い監査役に報告する。 ⑧ 説明資料及び面談録を保管・管理する。 |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、執行役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した時は、直ちに、その事実を監査委員に報告しなければならないが、取締役にはこの報告義務はない(法 419 条 3 項)。 監査等委員は、監査役と同様、取締役の不正行為等について、取締役会への報告義務を負っている(法 399 条の 4)。 前記の「1.リスク情報を報告聴取する目的」の②について、監査等委員会設置会社の場合は、 取締役の報告先は監査等委員会とされる(法 357 条 3 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | ア. 監査役に対し迅速な報告体制にするため、関連部から速報ベースの報告文書を入手し、調査後の確報レポートも書面で送付してもらっている。 イ. 原則、情報はメールで常勤監査役に関係部門長から配信され、写しは監査役室にも配信される。ウ. 実務ベースでの連絡会を毎月開催し、定期的な情報収集に努めている。 エ. 四半期に1回、関係部署から不祥事件・顧客情報漏洩事故・反社会的勢力への対応等について、監査役会で報告を受けている。 オ. 会議等で報告される内容については、必要に応じて事前に担当事務局から監査役に報告されるよう調整している。 カ. 「内部統制基本方針」7 条(監査役への報告に関する体制)における規定と、監査役事務局の対応は以下のとおりである。 ◆ 役職員は、経営、財務、コンプライアンス、リスク管理、内部監査の状況等について定期 的に監査役に報告を行うとともに、業務執行に関し重大な法令若しくは社内ルールの違反又は会社に著しい損害を及ぼすおそれがある事実があることを発見した時は、直ちに監査役に報告を行う。 ◆ 役職員は、ホットライン(内部通報制度)の運用状況及び重要な報告・相談事項について定 期的に監査役に報告を行う。 <監査役事務局の対応> ◆ 「コンプライアンス関連事項及びリスク管理関連事項報告基準」は、報告すべき事由、報告先が詳細に規程されている(大項目で 70 項目程度)。報告先は本社統括部署であるが、ほぼ全項目の送付先として、監査役事務局が入っており、監査役事務局経由で一定の絞り込みを行い、常勤監査役に回付する。また、上記報告基準とは別に、内部通報、各種ホットラインは月次報告にて、コンプライアンス部門から監査役事務局に報告があり、同局経由 で常勤監査役に回付している。 ◆ ホットライン、お客様の声、訴訟事案、資産運用リスク管理、広報・広告、寄付・諸団体 |
加入等の項目は、明文規定は設けていないが、前記報告基準とは別に月例など定期的な報告を受けている。 ◆ 内部統制基本方針の各項目については、半期毎に各執行部門による振り返り・改善策が行 われており、この内容についても監査役への報告が行われている。 ◆ また、取締役会、経営会議、各種委員会に監査役は出席しており、その場でリスク情報が報告されるとともに、議題によっては、事前に説明、報告が行われている。 ◆ セクハラ・パワハラ・メンタル疾患者の発生状況は、明文規定に挙げられていないが、報告対象となる場合にはその場で報告される。 キ. リスク情報の項目毎にスタッフの担当部門を決めておき、各スタッフは担当部門の役職員から報告聴取について日程調整等を行う。 ク. 法務担当部門は毎年、全本社部門・事業所対象に遵法点検調査(自己点検)を行っており、監査役は法務担当部門からその結果報告を受けるとともに、往査先において遵法点検調査が有効に 機能しているか確認している。 | |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 役職員からの報告聴取(任意報告の受領) 子会社の役職員からの報告聴取(任意報告の受領) | 法 381 条 3 項 基準 3 条④・20 条 |
監査業務支援ツール | □「子会社役職員からの報告聴取 監査調書」(ツールNo.B-10) | |
監査役業務のポイント | 1.子会社の役職員から報告聴取する目的 ① 子会社とは、会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいい(法 2 条 3 号)、形式基準を満たしていなくても、一定の支配が見られる場合には国内会社、外国会社を問わず、「子会社」の範疇に含めるものとされている。 ② 子会社の業績は会社の連結決算に反映され、また子会社の不祥事は会社に対する社会的信頼を揺るがすことなどから、監査役は、子会社を管理する担当取締役や主管部署の職員並びに子会社取締役(以下、「子会社の役職員」という。)から任意の報告を聴取することにより、親会社における企業集団の内部統制システムの構築・運用状況や子会社を管理する担当取締役の法的義務の履行状況等を監査する。 ③ 監査役は、関連会社において発生した事件・事故・企業不祥事が親会社のブランド価値や損益に重大な影響を及ぼすことがあることから、場合によっては、関連会社についても、関連会社を管理する担当取締役や主管部署並びに関連会社取締役から任意の報告を聴取すべきことに留意する。 2.子会社の役職員から報告聴取する時のチェックポイント ① 監査役が、子会社(国内・海外)へ実地調査(往査)する場合は、都度、事前に子会社を管理する担当取締役や主管部署の職員から、当該子会社における対応状況の報告を聴取する (【M21】子会社(国内・海外)への調査・確認を参照)。 ② 子会社において事件・事故・企業不祥事等が発生した場合は、子会社を管理する担当取締役や子会社取締役から報告を聴取する。監査役はこれらの報告聴取を通じて、子会社管理担当取締役は子会社に対する管理上の法的義務を適正に果たしているか確認する。 ③ 子会社の役職員から報告を聴取した監査役は、親会社における企業集団の内部統制システムの不備や、子会社を管理する担当取締役の義務違反が判明し、又はそのおそれがある事実を認めたときは、当該取締役に対して、助言又は勧告など必要な措置を講じる。 ④ 子会社の役職員から報告を聴取した監査役は、必要に応じて監査役会に報告し、情報の共有化を図る。 ⑤ 企業集団内部統制システムの監査の一環として、「子会社の利益を犠牲にして、自社(親会社)のみの利益を図るような取引を行っていないか」という視点が必要である。なお、子会社に少数株主が存在する場合、企業グループ全体の利益のために当該子会社の利益を犠牲にした 取引はあり得ないことに留意する。 | |
スタッフ業務のポイント | ① 監査役が子会社の役職員から任意の報告を聴取すべきと判断した場合は、都度、子会社の役職員と、報告聴取に関わるスケジュール調整を行う。 ② 事前に、該当する子会社の基本情報(事業内容・組織体制等)を入手し、監査役に報告する。報告聴取の場にはスタッフも同席し、面談録を取りまとめる。 ③ 報告聴取の中で、さらに情報・資料収集や状況確認等が必要となったときは、監査役の指示に基づき聴取先等から必要な資料等を入手し、監査役に報告する。関連資料及び面談録を保管・管理する。 | |
スタッフとして留意する点 | 日頃から子会社役職員との良好なコミュニケーションに心掛けること | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | ||
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | ||
各社の工夫・事例 | ||
その他特記事項 | ||
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 実地調査(往査)の実施 事業所への往査 | 法 381 条 基準 36 条・45 条 |
監査業務支援ツール | □「国内支社・事業所往査 往査依頼」(ツールNo.B-1) □「国内支社・事業所往査 調査表」(ツールNo.B-2) | |
監査役業務のポイント | 1.実地調査(往査)の実施について(概要) (1)実地調査(往査)とは 会社の業務全般の実情を把握するため、本社に限らず、本社の各部署や支店・営業所・工場などの事業所(以下、「往査先」という。)の現場に赴き、営業や操業の実態、損益・資産又は設備の状況、業務の執行状況の適法性・適切性、また、内部統制システムの構築・運用状況などを、監査役自らが、現物・現実を確認し、現場の責任者はもちろん、従事する担当者らの声を聞き、総体的な視点で実査(実際に現地に行って調査すること)や監査を行うことである。 (2)実地調査(往査)に際しての監査役の業務 ・監査役は、取締役の職務の執行を監査する目的で、「いつでも、会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる」として、法的権限が付与されている(法 381 条 2 項)。 ・監査役は、当該権限(以下、「業務財産調査権」という。)に基づいて、管掌する取締役が適切に指揮・命令等を実施し、機能しているかなどを確認するため、往査先を監査する。 ・当該確認結果に指摘すべき改善事項が発見された場合、監査役は、既に取締役から聴取したことが実施されているかなど、代表取締役をはじめ管掌する取締役等に対して意見陳述や改善勧告を行う。 2.往査の目的 ① 監査役は、業務財産調査権に基づき、往査先における現場レベルの業務の実情を把握し、これらの業務が適法かつ適正に行われているか、内部統制システムが構築され、有効に機能しているか、取締役会等が行った意思決定が明確に伝達・浸透され、問題なく実行されているか、現場の業務の遂行状況が取締役に迅速に伝わるようになっているかを確かめるなど、監査意見を形成するうえで必要かつ合理的な根拠を得るため、直接的に監査する。 ② 監査役は、監査計画等において定めた業務分担を踏まえ、往査先固有の事情に鑑みた以下の監査項目を主眼にし、決定する。 ✍主な監査項目(例) ◆ 法令等の遵守状況(関係法令、社内規程の把握・遵守、法定書類の提出状況等) ◆ 内部統制システムの構築・運用状況(組織、制度、規程などの構築・運用等) ◆ 経営方針等の浸透状況(取締役会その他重要会議の決定事項に関する実施状況等) ◆ 財産の調査(金銭・在庫・設備等の取得又は保有、管理若しくは処分等の状況等) ◆ 取引又は業務の状況(特殊な取引、信用管理等の実態状況等) ◆ 書類及び情報の保存・管理状況(重要書類、機密情報及び個人情報等の管理状況等) ◆ 以上のほか、重要会議での決議事項・報告事項、職場環境、本社の指揮命令の十分性及び理解や把握の状況等 3.往査に当たっての心構え ① 往査先の実状がありのままに把握できるよう、往査の目的・意義(内部監査部門の監査との違い。往査の目的が、役職員を罰することではなく、不備等を改善することであること等)を対象者に理解してもらうよう努める。 ② 往査先の責任者だけでなく、広範囲の社員との対話を図り、隠された本音部分(往査先の実状・実態)の把握に努める。 ③ 往査で得た情報の取扱いに十分留意する(往査先の役職員との信頼関係の維持)。 ④ 往査は限られた時間内に効率的・有効的に行う必要がある。従って、往査先でのヒアリングは、事前に往査先の現状・課題を整理しておき、往査先のリスク(発生し得るリスク)にも留意した上で、ポイントを絞った質問を行うよう努める。 ⑤ 監査役の牽制機能(監査役が現場を訪問することで期待される効果)にも留意する。 4.往査先の選定 往査先の選定に際し、必ずしもすべての事業所を対象とする必要はなく、監査役は、過去の往 |
査実績や経年年数並びに次の観点を考慮し、往査先や日程等を決定する。 ◆ 取締役会その他重要会議の経過、内部監査部門、会計監査人から受領した監査報告の結果 ◆ リスク情報(「役職員からの報告聴取(任意報告の受領)」)に基づく各種報告内容 ◆ 監督官庁等から受けた是正指導若しくは指摘事項 5.監査役の往査・実査 監査役は、予め決定した監査項目及び事前に入手した情報や資料から判明した事実や確認事項等に基づき、往査先の責任者や担当者に対する面談・ヒアリング、現地視察などを含めた実査、重要書類の閲覧等の方法により状況を調査・確認する。 ✍往査における留意事項 ◆ 往査先において、規程・マニュアル通りに運用されていなかった場合、① 本社管理部門の周知徹底(啓蒙活動)方法に問題があるのか、②往査先の実状・実態と規程・マニュアルの内容が合致しているのか等について確認し、改善策・対応策を要請する(②の場合、人員の補充等も含む。)。 ◆ ある往査先で確認された不備が、他の往査先でも発生していないか、あるいは、発生する兆候はないか確認する。 ◆ 役職員からの報告聴取等で把握した情報と整合性が取れていない場合、往査先に隠れた問題点等がないか確認する。 6.往査終了後の対応 往査終了後、法律上の要請はないものの、次の目的でいわゆる「監査調書」である「往査調書」を作成する(基準 57 条)。なお、期中監査に係る「監査調書の作成」については、「【M40】監査調書の作成」を参照のこと。 ◆ 他の監査役との情報共有等のため ◆ 取締役会又は管掌する取締役に対する助言・勧告等のため ◆ 往査先に対する講評等のため ◆ 問題点又は改善事項等に関するフォローのため ◆ 次回往査時の参考記録を残すため | |
スタッフ業務のポイント | 1.事業所往査に関わる事前対応 (1) 往査先の選定及びスケジュール等の調整 ① 前提 事業所往査の年間スケジュールを作成する際、各往査先の業務内容や状況、繁忙期を避けた実施等を考慮し、監査役の「監査計画」に基づき、具体的なスケジュールや応対する担当者等を策定する。この場合、往査先の行事(往査先の各種イベントや内部監査部門又は会計監査人による監査等)を勘案し、個別具体的な往査日、ヒアリング対象者等の決定をするが、往査先に過重な負担を感じさせないような配慮も必要である(特に緊急実施する必要性が認められる場合を除く。)。 ② 往査スケジュール(案)等の決定 ア. 監査役が往査先を選定する際、当該往査先に関わる基本情報(組織及び人員構成等の概況、営業等の実績、内部監査部門等による監査結果等)を収集のうえ、監査役に報告する。 イ. 往査先の選定に従い、時期や期間などスケジュール(案)等を立案する。 ウ. 立案内容に基づき、往査先の責任者又は担当者と協議のうえ、日時及び拠点・場所等に関する調整を図り、監査役の意見等を確認しながら、往査スケジュール等を決定する。この場合の往査スケジュール等には、往査タイムスケジュール、応対する責任者又は担当者、その他往査時に必要な各種対応事項など、詳細かつ具体的な計画を含む。 ③ 決定した往査スケジュール等を監査役に報告する。 (2) 往査に関わる事前準備 ① 往査先の選定並びに往査スケジュールを踏まえ、スタッフは、次の事前準備に着手する。 ② 監査役の指示に基づき、往査に必要な事業所に関わる情報及び資料等を入手のうえ、監査役に報告する。この場合、入手する情報及び資料等の例は、次のとおりである。 ◆ 往査先の概況(運営方針・組織・人員構成・責任者の在籍年数等) ◆ 営業及び操業に関する直近の実績状況 ◆ 過去の内部監査部門又は会計監査人による監査結果 ◆ 監督官庁等から受けた是正指導若しくは指摘事項 ◆ 往査先の事業運営に係る法令及び諸規程類(コンプライアンス体制の管理状況を含む) ◆ 内部通報事案に係る情報及び資料等 |
◆ 前年度の往査実績 ③ 管掌する取締役及び往査先の責任者等に対し、往査当日の相当期間前までに、往査スケジュール並びに監査項目など、必要事項を連絡・通知のうえ、往査に関する趣旨や要領を周知する。 ④ 入手した情報及び資料等に係る補足等に関し、必要に応じて往査先の責任者等から説明を受け、最新情報や資料を入手するなどの対応を行う。また、往査で確認する事項を整理し、チェックリスト・質問事項の作成を行う。なお、往査先に対する質問事項は、役職員からの報告聴取等の日常の監査役の補助業務の中に転がっており、常日頃から、問題意識(職業的懐疑心)を持って活動することが重要である。例えば、役職員からの報告聴取に同席した場合、面談録の作成等のほか、「現場(往査先)で確認した方が良い事項はないか。」といった視点を持つことがポイントである。 2.事業所往査時及び事後の対応 (1) 事業所往査時の対応 ① 予め監査役が決定した監査項目並びにチェックリスト(監査対象となる事業所が、予め自主点検を行うための確認表)に従い、監査役による面談・ヒアリング及び視察・実査等の確認・調査に関するメモをとるなど、実施状況及びその結果を記録する。 ② スタッフが面談に同席した場合、スタッフとしての“気づき(タイムスケジュール・監査項目の聴き漏れなど)”があれば、往査目的の範囲で監査役又は往査先の責任者らに対して意見等を述べることが望ましい。 ③ 実物実査を補助する。 ※ 実物実査は重要な監査活動であり(オリンパスの第三者委員会報告書において指摘あり)、監査役が往査先の役職員との面談等により対応できない場合、スタッフが実施することになる。 (2) 往査調書(案)の作成 ① スタッフが同行した場合、監査役の往査結果・コメント・発見事項並びに質疑応答事項等を踏まえ、往査時に記録したメモ等の要点をまとめ、往査調書(案)の素案を作成し、監査役の承認を得て最終版とする。なお、監査調書の主要な記載事項は、次のとおりである。 ◆日時・場所 ◆往査者・面談者 ◆調査書類名 ◆監査(調査)項目 ◆調書送付先 ◆面談議事内容 ◆往査講評 ② 往査に際して受領した各種資料は、往査調書と併せて保管・管理する。 なお、監査役監査報告・監査役会監査報告の基礎となる監査資料の保管・管理又は備え置きに関しては、「【M41】文書等の保管・管理と保存年限」を参照のこと。 (3) 往査結果(往査報告)に関わる対応 ① 監査役の指示に基づき、監査役会若しくは他の監査役、取締役会若しくは管掌する取締役、往査先の責任者らに対して往査調書を通知する。 ② 監査役が通知すべき事項があると判断したときは、管掌する取締役及び往査先の責任者に 対する説明等を行うため、講評会等の会合を手配する。 | |
スタッフとして留意する点 | (1)往査先によって監査役の質問事項等が変わらないよう、スタッフは、監査項目やヒアリング時などに利用する監査項目やチェックリスト(監査対象部門が予め自主点検を行うための確認表)等の決定に留意する。 (2)往査調書(案)の作成にあたっては、往査目的や監査項目から逸脱しないようにし、かつ、記 載事実の裏付けを確実に行わなければならないことに留意する。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 監査役設置会社では、監査役が経営の意思決定や業務執行を監査するのに必要なすべての調査ができる権限を有している(法 381 条 2 項)のに対し、指名委員会等設置会社の場合は、監査委員会が 選定する監査委員に同様の権限が与えられている(法 405 条 1 項)。実地調査(往査)は監査委員会が 選定する監査委員が行うほか、監査委員会の職務を補助すべき取締役(施規 112 条 1 項 1 号)が行うことも考えられる。 監査役会設置会社では、監査役が経営の意思決定や業務執行を監査するのに必要なすべての調査を行う権限を有している(法 381 条 2 項)のに対し、監査等委員会設置会社の場合は、監査等委員会が選定する監査等委員に同様の権限が与えられている(法 399 条の 3、1 項)。実地調査(往査)は監査等委員会が選定する監査等委員が行うほか、監査等委員会の職務を補助すべき取締役または使用人(施規 110 条の 4、1 項 1 号)が行うことも考えられる。 ただし、監査等委員会は組織監査を前提としており、会社の内部監査部門と連携し、内部統制シ ステムを活用して、組織的かつ効率的に職務を執行する(監査等委員会監査等基準 39 条 1~3 項」)ことを期待されている。従って、自ら網羅的に往査を行う必要はなく、重点監査項目に従い、重 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) |
要な事業所に対象を絞り込むべきである。 | |
各社の工夫・事例 | (1)内部監査部門による監査結果に依拠する場合など、往査では、原則として、監査役による実際の資産等の数量や金額との差異を確認するなどの実査は行わず、往査先の責任者及び担当者に対するヒアリングのみとしている。 (2)往査の結果報告は、経営会議メンバーに対してフィードバックし、特に監査役が問題意識をもっている事項については、経営に対するメッセージをしっかり打ち出すように工夫している。 (3)代表取締役との打合せ時(年 2 回程度)に概要報告し、各往査先が抱える重要課題等について 意見交換をしている。 |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 実地調査(往査)の実施 子会社(国内・海外)への調査・確認 | 法 381 条 基準 36 条・38 条 |
監査業務支援ツール | □「国内子会社往査 往査依頼」(ツールNo.B-3) □「国内子会社往査 調査表」(ツールNo.B-4) □「海外子会社往査 往査依頼」(ツールNo.B-5) □「海外子会社往査 調査表」(ツールNo.B-6) □「海外子会社往査 チェックリスト」(ツールNo.B-7) | |
1.子会社の調査・確認の目的 ① 子会社を有する会社の監査役は、職務の遂行に必要な場合、子会社に対して事業の報告を求め、業務及び財産の状況を調査することができる(法 381 条 3 項)。他方、子会社は正当な理 由があるときは、当該報告又は調査を拒むことができる(法 381 条 4 項)。 ② 子会社の業績は会社の連結決算に反映され、また子会社の不祥事は会社に対する社会的信頼を揺るがし、さらに子会社の健全な成長は会社経営上の重要な課題であるなど、子会社の管理は取締役の重要な職務の一つであることから、監査役は、基本的には、子会社を管理する取締役の職務の執行状況を監視・検証するため、子会社に往査して以下の事項を調査・確認する。 ア. 親会社の会社法内部統制決議に記載されている、企業集団における業務の適正を確保するための体制の構築・運用状況並びに親会社の取締役による指導・監督状況 イ. 親会社の事業報告監査の一環として、子会社の事業の概況等 ③ 子会社監査役との情報共有・意見交換に留意する(「【M30】子会社監査役との連携」を参照)。 ④ 海外子会社は現地国の法令に従うため、その法的な制約条件も十分に考慮のうえ、往査する。 | ||
監査役業務のポイント | 2.子会社の選定 ① 往査先の選定に際し、必ずしもすべての子会社を対象とする必要はなく、監査役は、過去の調査実績や経年年数並びに次の観点を考慮し、これを決定する。 ア. 親会社の監査役や管理部門の子会社非常勤監査役の兼務の状況及び子会社における常勤監査役設置の有無 イ. 親会社の内部監査部門又は会計監査人等から受領した監査報告の結果及び監査計画 ウ. 子会社における事件・事故、不祥事等のリスク情報に基づく各種報告内容(【M17】【M18】 【M19】を参照。) ② 以上のほか、上記目的の観点を併せて考慮し、子会社以外の持分法適用会社や非連結子会社も往査の対象会社とするかの適否を判断する。 | |
3.監査役の子会社往査時のチェックポイント ① 監査役は、監査役の役割・監査の目的を知らしめるために、年間子会社往査計画を取締役会に報告することが望ましい。また、この場合は、事前に子会社を管理する取締役や担当部門並びに子会社代表取締役に、往査通知書若しくは口頭により往査する旨を通知することが望ましい。 ② 職務の分担により往査する監査役は、往査の事前に、子会社を管理する取締役や担当部門から親会社の会社法内部統制決議に記載されている、企業集団における業務の適正を確保するための体制の構築・運用状況の報告聴取を受ける(「【M19】子会社役職員からの報告聴取(任意報告の受領)」を参照)。 ③ 監査役は予め決定した監査項目及び事前に入手した情報や資料から判明した事実や確認事項等に基づき、子会社代表取締役等に対する面談・ヒアリング、現地視察等の方法により状況を確認する。 | ||
4.往査終了後の対応 ① 往査した結果、企業集団の内部統制に問題があった場合は、子会社を管理する取締役等に確認し、必要に応じて改善に向けた助言・勧告等を行う。 ② 往査した監査役は、監査役会で報告し、全監査役と情報の共有化を図る。 |
1.子会社(国内・海外)の確認・調査に関わる事前対応 (1) 往査スケジュール(案)の調整 スタッフは、子会社の往査に関わる年間スケジュールを作成する際、各社の事業内容やその状況、繁忙期を避けた実施等を考慮し、具体的なスケジュールや応対者等を策定する。また、実際の往査にあたっては、子会社の行事を勘案し、個別具体的な実施日、ヒアリング対象者等を子会社の担当責任者等と調整をする。この場合、子会社に往査のための特別な資料は作成させない等、過重な負担を感じさせないような配慮も必要である。 | |
スタッフ業務のポイント | (2) 往査に関する事前対応 子会社の選定並びにスケジュール等を踏まえ、スタッフは次の事前準備を行う。 ① 子会社管理担当取締役等からの、親会社の会社法内部統制決議に記載されている企業集団における業務の適正を確保するための体制に関わる構築・運用状況のヒアリングの場を設定する。スタッフも同席し備忘録を作成する。ヒアリングのポイントは、以下の項目について、グループとしての体制の構築・運用状況と子会社の対応状況である。 ア. 情報管理体制 イ. 法令遵守体制 ウ. リスク管理体制 エ. 効率性確保体制 ほか ② 監査役の指示に基づき、往査に必要な子会社に関わる情報及び資料等を入手・収集のうえ、監査役に報告する。この場合、入手する情報及び資料等の例は、次のとおりである。 ア. 子会社の概況(事業内容・年間計画・組織・人員構成等)イ. 業績(営業及び操業)に関する直近の実績状況 ウ. 過去における親会社の内部監査部門又は会計監査人による監査結果エ. 事件・事故、不祥時等のリスク情報 オ. 子会社の事業運営に係る重要な法令カ. 親会社との連係体制 ③ 監査役の指示に基づき、子会社の代表取締役や監査役並びに管掌する取締役等に対し、調査・確認当日の相当期間前までに、係る目的、監査項目及びスケジュールなど必要な実施要領を通知のうえ、周知し、協力を要請する。 |
2.子会社への往査時及び事後の対応 (1) 子会社往査時の対応 ① 予め監査役が決定した監査項目並びにチェックリスト(監査対象となる事業所が、予め自主点 検を行うための確認表)に従い、監査役による面談・ヒアリング及び視察・実査等の往査に関するメモをとるなど、実施状況及びその結果を記録する。 ② スタッフが面談に同席した場合、スタッフとしての「気づき」などがあれば、往査目的の範囲で監査役又は子会社代表取締役又は責任者らに対して発言することが望ましい。 | |
(2) 受領した資料及び監査調書の保管・管理 ① スタッフが同行した場合、監査役の往査結果・コメント・発見事項並びに質疑応答事項等を踏まえ、往査時に記録したメモ等の要点をまとめ、監査調書(案)を作成し、監査役の承認を得て最終版とする(期中監査に係る「監査調書の作成」については、「【M40】監査調書の作成」を参照)。 ② 往査に際して受領した各種資料は、監査調書と併せて保管・管理する。監査役会監査報告の基礎となる監査資料の保管・管理又は備え置きに関しては、詳細は、「【M41】文書等の保管・管理と保存年限」を参照のこと。 | |
(3) 往査結果(往査報告)に関わる対応 ① 往査した監査役は、監査役会に報告し、全監査役と情報を共有する。 ② 監査役が往査した結果、企業集団の内部統制に問題があると判断したときは、子会社を管理する取締役等からの確認の場を設定し、改善に向けた助言・勧告等を行うよう進言してもらう。 | |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | |
②機関設計の違い |
による対応(監査等 委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 場合によっては本社内部監査部門、子会社監査役との連携を取り、監査の重複感を避けるケース もある。 |
その他特記事項 | 会社に重要な関連会社がある場合には、当該関連会社の重要性に照らして、【M21】に準じて行 う(基準 25 条 3 項、38 条 4 項)。 |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 競業取引及び利益相反取引等の監査 競業取引・利益相反取引の監査 | 法 356 条 基準 26 条 CG コード 1-7 |
監査業務支援ツール | □「業務執行確認書(関連法令記載)」(ツールNo.C-2) | |
1.競業取引・利益相反取引について監査する目的 ① 監査役は、取締役の職務の執行における重要監査項目として取締役の善管注意義務違反・忠実義務違反がないかを監査する必要がある。また、忠実義務の一内容として、取締役の競業取引・利益相反取引の行為は、原則的に制限又は規制されており、これら取締役の行為によって会社の利益に繋がる機会を失うことや損害を及ぼすなどの事態を防止する目的からも、監査役が、これらの取締役の行為に義務違反がないかを取締役会への出席や重要書類の閲覧などによって監視し、検証することは重要な職務である。 ② 競業取引とは、会社の事業の部類に属する取引を指し、会社が現に行っている事業と市場において競合するとともに、会社と取締役との間に利益の衝突をきたすおそれのある取引をいい、利益相反取引とは会社と取締役の利益が相反する取引をいう。 | ||
【競業取引の制限(競業避止義務)・利益相反取引の規制】 ア. 取締役が自己(取締役自身)又は第三者(他の会社・個人の代表者・代理人として)のために会社の営業等の事業の部類に属する取引を行うことは原則として禁止されている。会社が取得できたはずの取引の機会が奪われ、また、会社のノウハウや機密情報の利用等によって会社に損害を及ぼすおそれがあるため、当該取引を予防的に制限している。 イ. 取締役が当該取引を行うときは、重要な事実を取締役会に開示(報告)し、経営判断に密接に関わる行為(取引)であることからも、事前にその承認を受けなければならない(法 365 条)。なお、取締役会設置会社以外の承認機関は、株主総会である(法 356 条 1 項)。 <重要な事実の例> ◆ 競業取引等の具体的内容 ◆ 当該取引に関して他社の業務執行者の兼職がある場合は、社名・地位・担当 ◆ 取引の量・金額(利益相反の額)、自社における影響度 ◆ 情報漏洩などの懸念の有無 | ||
監査役業務のポイント | ウ. また、当該取引を行った取締役は、当該取引後遅滞なく重要な事実を取締役会に報告しなければならない(法 365 条 2 項)。 エ. 承認後の効果として、取締役がその義務を果たさないとき、任務懈怠責任を免れないと推定され、会社に対して損害賠償責任を負う(法 423 条 1 項)。 オ. 取締役が競業取引の承認を得ないで取引をしたときは、会社は当該取締役に対して損害賠償を請求することができる(法 423 条 1 項、同条 2 項)。 カ. 100%子会社の場合は形式的に競業取引・利益相反取引にあたっても、両者は実質的に一体であるから、当該親子会社間で取締役の兼任関係があっても競業取引・利益相反取引には該当せず、取締役会の承認は要しないものとされている。また、100%子会社同士の場合も同様に、取締役会の承認は要しないものとされている。 <利益相反取引の取締役会の承認の要否> ○○会社 ← 利益相反取引 → △△会社 ① 代表取締役 A氏 代表取締役 ⇒承認必要 ⇒承認必要 ② 代表取締役 B氏 取 締 役 ⇒承認不要 ⇒承認必要 ③ 取 締 役 C氏 取 締 役 ⇒承認不要 ⇒承認不要 | |
2.監査の方法・チェックポイント 監査役は、競業取引・利益相反取引の監査を遂行するにあたり、以下の方法及び観点から監視し、検証する。 ① 取締役会を担当する取締役等から、取締役の兼任状況が会社に報告され、競業取引・利益相反取引が取締役会で確実に承認される体制が構築されているか確認する。 ② 取締役会に出席し、取締役の競業取引・利益相反取引が事前に取締役会に承認され、事後に 取締役会に報告されるなど適法に取締役会に付議されているかを確認する。 |
年度初めの取締役会において、新年度の承認と過年度の報告を合わせて付議する場合が多い。 ③ 取締役会の承認や報告にあたっては、監査役は、取引価格(条件)が合理的に算定され妥当な水準か確認する。 ④ 「役職員からの定例報告」時に、取締役に競業取引・利益相反取引の有無を確認する。 ⑤ 会計監査人が競業取引・利益相反取引について、「関連当事者取引に関わる確認書」等に基づく調査を行った場合、監査役は、その結果を聴取する。 ⑥ 監査役は、りん議決裁書を閲覧し、取締役会の承認を得ていない競業取引・利益相反取引がないか確認する。 ⑦ 監査の結果、体制の不備がある場合は、取締役会担当取締役に、取締役の義務違反が判明し、又はそのおそれがある事実を認めたときは、当該取締役に対して、助言又は勧告など必要な措置を講じる。 3.「業務執行確認書」取得 期末監査の一環として、監査役は、取締役の善管注意義務、忠実義務の履行状況を確認するため、アンケート形式による「業務執行確認書」を交付し、その中で競業取引・利益相反取引の有無及び内容を記入のうえ、提出してもらう方法がある(「業務執行確認書」に関する効用及び主要確認項目等の詳細は、「【M44】業務執行確認書の取得」を参照)。 | |
1.取締役会で報告・承認される体制の確認 ① 必要に応じて取締役会の担当取締役や取締役会事務局から、競業取引・利益相反取引が取締役会で報告・承認される体制を確認するための場を設定する。スタッフも同席し備忘録を作成する。 ② 事業年度末において、事業報告の作成を行った主管部署又は担当部門から「役員の兼務状況」に関する有無並びに状況等を確認のうえ、監査役に報告する。 ③ 「役員兼務状況」資料及び備忘録を保管・管理する。 | |
スタッフ業務のポイント | 2.取締役会の手続き状況の確認対応及びりん議決裁書の閲覧対応 ① 取締役会における手続き状況の確認対応 ア. 取締役会事務局から競業取引・利益相反取引に係る取締役会承認・報告事項に関する議案及び資料を入手し、監査役に報告する。 イ. 取引価格(条件)が合理的に算定され妥当な水準か確認のうえ、問題がある場合は、監査役に報告のうえ、取締役会の担当取締役等から内容を確認するための場を設定する。スタッフも同席し備忘録を作成する。 ② りん議決裁書の閲覧対応 ア. 新規取引(出資)先との契約・重要な人事(関係会社等)に係るりん議決裁書を閲覧する場合は、取締役が 100%出資会社ではない取引先、又は業界団体等の代表取締役となっている相手先を意識して内容を確認する。 イ. 通常は、競業取引・利益相反取引に係る取締役会承認は、りん議決裁後の取締役会で行われるので、スタッフは、新たに競業取引・利益相反取引が発生しそうな場合は、りん議決裁書を閲覧した後に取締役会承認漏れがないか確認する。 ウ. スタッフが取締役会承認漏れを確認した場合、監査役から取締役にその旨を連絡し、速やかに取締役会付議事項として承認手続きがなされるよう進言してもらう。 |
3.取締役等へのヒアリング対応等 ① 「役職員からの定例報告」など監査計画を踏まえて、取締役からヒアリングを行う時期に合わせ、他社・他団体で代表取締役を兼務していることはないか等競業取引・利益相反取引に関わる質問事項を用意する。 ② スタッフはヒアリングに同席し面談録を作成のうえ、関連資料と共に保管・管理する (「【M41】文書等の保管・管理と保存年限」を参照)。 ③ 監査役による期末監査の一環として、「業務執行確認書」を準備する。 | |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | ア. 指名委員会等設置会社の場合は、法 356 条(競業及び利益相反取引の制限)及び法 365 条(競業 及び取締役会設置会社との取引等の制限)2 項の規定は、執行役に準用する(法 419 条 2 項)。イ. 指名委員会等設置会社の場合における役員の兼務状況に関する確認は、執行役も含まれる。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | 監査等委員会設置会社において、監査等委員会は、取締役の利益相反取引について承認を求められたときは、承認するか否かを決定しなければならない。監査等委員会が承認した利益相反取引について、その取引を行った取締役は任務懈怠の推定を免れる(法 423 条 4 項。ただし、監査等委員 |
会の承認があっても、任務懈怠が認められる場合は、損害賠償の責を負う。)。監査役会設置会社における監査役会、指名委員会等設置会社における監査委員会にはこのような規定はなく、監査等委員会固有の職能となっている。 | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | 競業取引は取締役が会社の外で行う取引であるため、その事実を把握するのが難しい(会社は取引の相手方にならない。)。したがって、当該取引が競業取引であるかどうかの認識、また取引開始前の承認取得の手続きは、その取締役の自覚に依存するところが大きいことが指摘されている(したがって、取締役の定期的異動・改選期又は管掌・担当範囲の変更等があるときなど、取締役に対して 競業取引の有無をヒアリングや業務執行確認書等により確認する必要があると考えられる。)。 |
参考文献 | 日本監査役協会本部スタッフ研究会[2010]「監査報告作成時における監査役監査の視点・着眼点の考察」。 日本監査役協会本部監査役スタッフ研究会[2014]「取締役の職務の執行の監査」。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 競業取引及び利益相反取引等の監査 無償の利益供与の監査 | 法 120 条 基準 26 条 CG コード 1-7 |
監査業務支援 ツール | □「業務執行確認書(関連法令記載)」(ツールNo.C-2) | |
1.無償の利益供与(反対給付が著しく少ない財産上の利益供与を含む)について監査する目的 ① 無償の利益供与について取締役に義務違反がないか、重要書類の閲覧やヒアリング等により監視・検証する。 ② 無償の利益供与は、会社法が禁じている「株主の権利の行使に関する財産上の利益供与」と、 「その他の不適切な利益供与」に分けて考える必要がある。ア. 株主の権利の行使に関する財産上の利益供与の禁止 会社法は株主の権利の行使に関して財産上の利益の供与を禁止しており(法 120 条)、違 反行為に対しては刑事罰が科せられる(法 970 条)。これは、会社財産の浪費の防止とともに、総会屋の活動の抑止を図ることで、間接的には会社運営の健全性を確保することが目的であるとされている。 イ. その他の不適切な利益供与の禁止 一方、政治献金、寄付金など、会社法が禁止する株主の権利の行使に関する財産上の利益の供与に該当しないものであっても、政治資金規正法違反や使途不明金などは取締役の義務違反が問われる。 | ||
監査役業務のポイント | 2.監査の方法・チェックポイント ① 会社方針の確認及び「企業倫理規程」「社員行動指針」等の遵守状況の確認 株主の権利の行使に関する財産上の利益供与及びその他の不適切な利益供与を排除するには、これら不適切な利益供与の排除を会社の方針として明確に示すとともに、「企業倫理規程」、「社員行動指針」等に規定として定め、役員及び社員に周知徹底する必要がある。監査役は、利益供与排除に関する会社の方針及び関連規程の内容を確認すると共に、規程等の遵守を宣誓させることなどによって役員及び社員に倫理的行動を促す体制が構築されていることを確認する。 ② チェック体制の確認 監査役は、不適切な支出又は取引をチェックしている担当取締役や主管部署から、会社法が禁じている株主の権利の行使に関する財産上の利益供与と「その他の不適切な利益供与のチェック体制を確認する。 ③ 関連勘定科目の支出・取引内容の確認 ア.監査役は、株主等の権利の行使に関する贈収賄、利益供与に該当するおそれがあると考えられる支出がどの費用項目として処理されるか把握しチェックすべき費用項目(例:会費、寄付金、献金、奨励金、広告費、図書・調査費、交際費、雑費等、以下「寄付金等」という。)について調査する。 イ.監査役は、適時に、個別の支出状況の明細を閲覧し、新規の支出又は予算額以上の支出や費用が急激に増加又は減少している場合など、必要に応じて実情を調査する 3。基本的には不適切な支出又は取引をチェックしている主管部署がデータを集計しているので、監査役はモニタリングの位置付けでチェックする。 ④ 「役職員からの定例報告」時に、取締役に無償の利益供与の有無を確認する。 ⑤ りん議決裁書類の閲覧による確認 監査役は、りん議決裁書類を閲覧し、決裁権限規程等に則った決裁が行われていること、目的、相手先、金額等の観点から見て不適切な支出や取引が行われていないことを、りん議決裁書起案部署の担当取締役や主管部署に確認する。 ⑥ 監査の結果、体制の不備がある場合や、取締役の義務違反が判明し、又はそのおそれがある事実を認めたときは、監査役は、取締役に対して、助言又は勧告など必要な措置を講じる。 | |
3.業務執行確認書の取得 期末監査の一環として、監査役は、取締役の善管注意義務、忠実義務の履行状況を確認するため、アンケート形式による「業務執行確認書」を交付し、その中で無償の利益供与の有無及び内容を記入のうえ、提出してもらう方法がある(「業務執行確認書」に関する効用及び主要確認項目等の詳細は、「【M44】業務執行確認書の取得」を参照)。 |
1.会社方針の確認及び「企業倫理規程」「社員行動指針」等の遵守状況の確認 ① 「企業倫理規程」「社員行動指針」等の社内規則の確認 ア. 不適切な利益供与の排除について、「企業倫理規程」、「社員行動指針」等の社内規則に定められていることを確認する。 イ. 監査計画を踏まえて無償の利益供与の監査を行う時期に合わせて、係る社内規則を入手し、無償の利益供与(不適切な利益供与を含む)の排除に関する規定の状況を確認のうえ、監査役に報告する。 ② 「企業倫理規程」「社員行動指針」等の周知徹底・遵守状況の確認 ア. 「企業倫理規程」、「社員行動指針」等の社内規則が役員及び社員に対し、社内イントラ等に掲載するなど常に閲覧できる状況にあるかどうか、またその周知がなされているかどうかの状況を確認のうえ、監査役に報告する。 イ. 主管部署又は内部監査部門に「企業倫理規程」、「社員行動指針」等の周知徹底の方法及び周知徹底の状況並びに遵守状況等について問い合わせ、その結果を監査役に報告する。この場合、監査役の指示等を踏まえ、必要に応じて、役員及び社員の宣誓書のコピーや宣誓状況が確認できる資料を徴求する。 | |
スタッフ業務のポイント | 2.取締役等へのヒアリング対応等 ① 不適切な支出又は取引をチェックしている担当取締役又は主管部署から、無償の利益供与の状況のヒアリングを定期的に設定する。また、監査役から指示があった場合など、必要に応じて各役員への個別ヒアリングを設定する。 ② 「役職員からの定例報告」など監査計画を踏まえてヒアリングを行うとされている時期に合わせて、無償の利益供与に有無や内容に係る質問事項を用意する。 ③ ヒアリングに同席のうえ、面談録を作成し、関連資料と共に保管・管理する(「【M41】文書等の保管・管理と保存期限」を参照)。 |
3.関連勘定科目の支出・取引内容の調査対応及びりん議決裁書の閲覧対応等 ① 寄付金等の計上データ等の調査 ア. 監査計画に基づき寄付金等の調査を行う時期に合わせて寄付金等の計上データ等を入手し、監査役が内容を確認できるよう手配する。 イ. 相手先や支出内容等の必要な事項が網羅された計上データを主管部署から入手のうえ、監査役に報告する。通常は毎月若しくは四半期毎に報告している。 ウ. 監査役が計上データを確認する過程で、支出の経緯についてより詳細に調査を行う必要が生じた場合には、関係部署に追加の資料等の提出を求める。また、計上データの調査と共に、寄付金等の支出について事前申請等の手続きやチェック体制が整備され運用されていることを、管理部門担当取締役や主管部署へのヒアリングにより確認のうえ、監査役に報告する。 エ. スタッフは関連資料を保管・管理する(【M41】を参照)。 ② りん議決裁書の閲覧対応 ア. りん議決裁書を閲覧し、無償の利益供与の決裁があった場合に不適切な支出かどうかチェックする。 イ. 不適切な支出を発見した場合は、監査役から取締役にその旨を連絡し、必要な改善を行う様、進言してもらう。 ③ 監査役による期末監査の一環として、「業務執行確認書」を準備する。 | |
スタッフとして留意する点 | 監査役は、子会社においても不適切な利益供与の排除が「企業倫理規程」、「社員行動指針」等に 規定されると共に、役員及び社員がその規程を遵守していることが確認されているかどうかを子会社監査での調査対象項目とすることに留意する。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 会社が株主の権利の行使に関して財産上の利益の供与をしたとき、利益を供与した取締役は、会社に対して連帯して供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負うが、指名委員会等設置会社の場合には取締役だけでなく執行役もその対象となる(法 120 条 4 項、施規 21 条)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 「無償供与取扱要領」に基づき、主管部署が年間の無償供与報告書を作成し、中間・期末時に監 査役に説明している。 |
その他特記事項 | |
参考文献 | 日本監査役協会本部監査役スタッフ研究会[2010]「監査報告作成時における監査役監査の視点・着眼点の考察」。 日本監査役協会[2016]「監査役監査実施要領」。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 競業取引及び利益相反取引等の監査 関連当事者との一般的でない取引の監査 | 施規 129 条1項6号 基準 26 条 CG コード 1-7 |
監査業務支援ツール | □「業務執行確認書(関連法令記載)」(ツールNo.C-2) | |
監査役業務のポイント | 1.関連当事者との一般的でない取引を監査する目的 関連当事者とは、親会社、子会社、関連会社、株主等との取引であり、これらの取引は恣意性が入りやすいことから、取締役に義務違反がないか、重要書類の閲覧やヒアリング等により監視・検証する。 関連当事者との一般的でない取引(以下、「一般的でない取引」という。)の主な事例は以下のとおりである。 ・決算期前後の大量取引(循環取引) ・取引価格の異常な取引、条件の恣意的変更 ・無利息/低利/無担保/担保不足、返済計画がずさん/返済期限がない融資 ・債権肩代り、債権譲渡、債務免除、無担保/弁済能力に問題のある債務保証 ・不当価格の有価証券取引 ・買戻条件付等の条件付取引 ・無償、低廉の賃貸借 ・株主発行物の多量購入、多額の広告料支払い ・株主との独占的扱いの商取引等 ・金額の算出根拠に乏しいいわゆる「経営指導料」(コンサルタント料、ブランド使用料等) 2.監査の方法・チェックポイント ① チェック体制の確認 監査役は、一般的でない取引をチェックする担当取締役又は主管部署から、親会社、子会社、関連会社、株主等との取引について一般的でない取引(市場における一般的な水準・基準を大きく下回る、あるいは独立した第三者との取引条件から大きく逸脱しているなど)について以下の点を確認する。 ア. 一般的でない取引の基準や当該取引を行う場合の規程類・ガイドライン等の制定状況イ. 当該取引を審査する場合の方法および決裁の仕組み等のチェック体制。 ② 取締役等へのヒアリング ア. 監査役は、取引をチェックする担当取締役又は主管部署から、定期的に一般的でない取引のヒアリングを行う。一般的でない取引が取締役の「義務違反」に該当するかどうかは、合理的な理由があるか、また取引価格(条件)等が合理的に算定され妥当な水準かどうかで判断する。 イ. 「役職員からの定期報告」時に、取締役にヒアリングする場合は、取締役から一般的でない取引の有無を確認する。 ウ. 当該取引が発生し審議の上承認された場合、一定の条件の下、長期にわたり妥当性の再検証を行わずに継続・反復的に同様の取引が履行される場合が考えられる。一方で事業報告・計算書類等は会計年度単位での活動報告を求められているものであり、そのような取引が確認された場合は、その取引の妥当性を再度検証するよう求める。 ③ りん議決裁書の閲覧対応 監査役は、一般的でない取引の有無を、りん議決裁書などで確認する。従来からの取引状況(例:月別の取引数量、取引価格、支払条件等)について、予めある程度正確に把握し、販売会社の場合は大手関連取引先に対する値引き等、業種の特性上一般的でない取引が発生しやすい取引項目を特定しておくことが重要である。なお、定量的な基準で判断できない定性的なリスク(為替変動リスク等、会社内部・外部の環境要因により損失を被るリスク)が予見される場合は、主管部署等でそのリスクが識別され対応措置が検討されているか否かについても留意する必要がある。 ④ 第三者の意見聴取 将来における価値獲得を狙った戦略的な低利益受注や市場価格の算定が難しい取引等に関しては、必要に応じ、第三者の意見を踏まえた上で意思決定がなされているかを確認する。そのような検討が十分でない場合は、監査役(会)として第三者の意見を聴取するよう要請することも考えられる。 ⑤ 個別注記表等において注記を要する親会社等との取引がある場合、以下の監査活動を行う ア. 社外取締役の意見の確認:当該取引について社外取締役から異なる意見がなかったかを確 |
認しておく必要がある。もし、社外取締役から異なる意見があった場合は、その内容が事業報告に記載されていることを確認する。 イ. 親会社監査役との連携:親会社のグループ戦略等について親会社監査役と意見交換・情報交換を行う。特に完全子会社の監査役は、親会社との取引に係る取締役の判断について監査するに際し、同戦略を理解しておくことが重要である。 ウ. 会計監査人との連携:個別注記表に記載予定の取引について取締役会等で適切な承認がなされていない場合、至急、決議を要請する必要があるため、個別注記表に記載される取引 (重要性の判断)については早目に会計監査人と情報の共有を行う。 3.業務執行確認書の取得 期末監査の一環として、監査役は、取締役の善管注意義務、忠実義務の履行状況を確認するため、アンケート形式による「業務執行確認書」を交付し、その中で関連当事者との一般的でない取引の有無及び内容を記入のうえ、提出してもらう方法がある(「業務執行確認書」に関する効用 及び主要確認項目等の詳細は、「【M44】業務執行確認書の取得」を参照)。 | |
スタッフ業務のポイント | 1. 取締役等へのヒアリング対応 ① 一般的でない取引をチェックしている取締役又は主管部署へのヒアリングを定期的に設定する。また、親会社監査役や会計監査人との面談に加え、監査役から指示があった場合など、必要に応じて個別ヒアリングを設定する。 ② 「役職員からの定期報告」など監査計画を踏まえてヒアリングを行うとされている時期に合わせて、一般的でない取引の有無や内容に係る質問事項を作成する。 ③ ヒアリングに同席のうえ、面談録を作成し、関連資料と共に保管・管理する(「【M41】文書等の保管・管理と保存期限」を参照)。 2.りん議決裁書の閲覧対応等 ① りん議決裁書を閲覧する場合で、一般的でない取引が発生した時は、不適切と思われるような取引かどうかチェックする。 ② 不適切と思われるような取引を発見した場合は、監査役に確認のうえ、監査役から取締役にその旨を連絡し、必要な改善を行う様、進言してもらう。 ③ 期末監査の一環として、「業務執行確認書」を準備する。 |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社の場合、関連当事者のうち役員には執行役も含まれる(計規 112 条 2 項 2号)ので、執行役に対しても取引状況等の確認を行う。 |
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 自己株式の取得・処分等、剰余金の配当の監査 自己株式の取得・処分等の監査 | 法 155 条 基準 26 条 CG コード 1-7 |
監査業務支援ツール | ||
1.監査の目的 ① 監査役は、自己株式の取得及び処分、又は株式消却手続き(以下、「自己株式の取得・処分等」という。)について、法令・定款に即した手段で行われているか調査・確認する。 ② 会社財産の戻しを、剰余金の配当か、自己株式の取得か、減資に伴う払い戻しかによって区分する必要性も合理性も乏しいことから、会社法では、これらの行為に統一的な財源規制が講じられ、いわば同列に扱われている。自己株式の取得も、分配可能額の範囲内で会社の剰余資金等を株主に還元する目的等で活用されるようなっている。 しかしその中で、特定株主のみからの自己株式の買付あるいは売却、また、不公正な価格による自己株式の買付あるいは売却、インサイダー情報を利用した自己株式の買付あるいは売却等、自己株式の取得や処分等に関する不正行為や法令違反等は、株主平等原則に抵触する、また、株式取引の公正性を損ねる重大な事項であり、取締役の職務執行において特に注意を要する事項の一つである。 ③ 会社法上は「貸借対照表」・「株主資本等変動計算書」、金融商品取引法上は「自己株券買付状況報告書」・「有価証券報告書」、並びに内部者取引規制の規定等において、自己株式に係る開示について適法に開示がなされているか確認する。 | ||
2.自己株式の取得・処分等の承認機関 | ||
監査役業務のポイント | ||
3.監査の方法 ア. 株式担当取締役等から説明を聴取する。 イ. 株主総会の決議内容、取締役会の議案及び決議の状況を確認する。 ウ. 会計監査人が自己株式の取得及び処分等について調査を行った場合は、その結果を聴取する。エ. 必要に応じて、取締役業務執行確認書により、自己株式の取得(端株の買取を除く)及び処分 又は株式失効の手続きを確認する。 | ||
4.監査役の留意点 ① 自己株式の取得及び処分等に関連して新制度導入時(信託型従業員持株インセンティブ・プラン)などは、資料内容、税制等をよく理解しておくことが必要である。 |
承認機関 | |
自己株式の合意取得 | 一般的に、株式会社が自己式を取得する場合、定款の定等、特別な理由がない限り、株主との合意のうえで取得することとなり、これを自己株式の合 意取得という。 |
原則 | 株主総会の普通決議により、取締役会に、取得する株式の数、株式の取得価格等を授権する(法 156 条 1 項)。 |
例外 | ⅰ.特定の株主からの取得(ⅱ.の場合を除く)…株主総会の特別決議(法 156条、309 条2項2 号) ⅱ.子会社から買い受ける場合(取締役会設置会社に限る)…取締役会決議 (法 163 条) ⅲ.市場取引等による取得(取締役会決議による取得について定款の定めがある場合)・・・取締役会決議(法 165 条 2 項) ⅳ.法459 条の定款の定めがある場合(ⅰ.の場合を除く) …取締役会決議(法 459 条1 項1 号) |
☞参考:法 459 条の定めは「【M26】剰余金の配当の監査」を参照のこと。 | |
自己株式の処分 | 自己株式の処分は、会社が新たに株式を発行する場合と異なることがない ので、原則株式発行と同じ、取締役の決議により処分する。 |
自己株式の消却 | 自己株式を再利用しない場合は、取締役会の決議により消却する。自己株式の却効果は消却した自己株式数に相当する数の株式を再発行することが できるようになることである。 |
② 自己株式の取得が可能な場合のうち、単元未満株式の請求に基づく買取、合併に伴い消滅会社から継承する場合等を除く多くのケースにおいて、基本的には法 461 条に定める配当等の 制限(財源規制)を受け、また取締役等は法 462 条の違法配当等に関する支払義務、法 465 条の欠損が生じた場合の補填責任を負うことに留意する。 ③ 監査役としては、会社が自己株式の取得・処分を行おうとする場合、まずその目的(何のために自己株式を取得・処分するのか。)や中期計画等との整合性について確認することが重要である。それを踏まえて、自己株式取得・処分の合目的性、会社の現況や会社が置かれた環境 における自己株式取得・処分の妥当性を確認することに留意する。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.ヒアリングの日程調整等 ① 監査計画を踏まえて、株式担当部署からのヒアリングの日程調整を行う。 ② 株式担当部署にヒアリングの趣旨を説明し、事前に目的・適法性等について質問事項を作成し通知する。 ☞参考:自己株式を取得する場合の財源規制は、「【M26】剰余金の配当の監査」を参照のこと。 ③ ヒアリングに同席し、ヒアリング後は備忘録を作成し、関係資料と共に保管・管理する。 ④ スタッフのみがヒアリングを実施する場合は、その結果を監査役に報告し、適法性が確保されないおそれがあると思われる場合は、監査役から株式担当取締役にその旨を連絡し、必要な改善を行う様、進言してもらう。 ⑤ 会計監査人が自己株式の取得及び処分等について調査を行った場合は、会計監査人からのヒアリングの日程調整を行う。スタッフも同席し備忘録を作成のうえ、これを保管・管理する。 2.株主総会の決議内容、取締役会の議案及び決議の状況の調査対応 ① 取締役会事務局に株主総会議事録、取締役会議事録の提出を依頼する。 ② 株主総会の決議内容、取締役会の議案及び決議の状況のうち、自己株式の取得・処分等に係る適法性について、議事録により確認し、監査役に報告する。基本的には事前に調査しているので、確認の意味で議事録を閲覧する。 ③ 入手した株主総会議事録(写)、取締役会議事録(写)は、各々の添付資料と共に保管・管理する。 3.「自己株券買付状況報告書」、財務諸表(貸借対照表、株主資本等変動計算書)における自己株式に係る開示の確認 ① 期中においては決算短信・四半期報告書で自己株式に係る開示について適法な開示がなされているか確認する。 ② 期末においては会社法上は「貸借対照表」・「株主資本等変動計算書」で、金融商品取引法上は「自己株券買付状況報告書」・「有価証券報告書」で、自己株式に係る開示について適法な開示がなされているか確認する。 ③ 株式名簿、株式事務代行会社からの帳票等で確認した内容が開示されているかを検証する。 ④ 決算短信、四半期報告書、有価証券報告書等、開示に際し適法な開示がなされているか確認する。 |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、監査委員は取締役会における意思決定に参加することで業務執行の決定を個別に審査し、実質的な監視を行っているといえる。 監査等委員会設置会社においては、監査等委員は取締役会における意思決定に参加することで業務執行の決定を個別に審査し、実質的な監視を行っているということができる。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | 自己株式の取得が可能な場合は法 155 条に列挙されている。ただ、会社が何らかの意図をもって 取得の意思決定を行い、実際の取得を行うケースが多いと考えられる(例えば会社の剰余資金を株主に還元する等)。 |
判例 | ◆ 会社支配の公正 東京高等裁判所 判決 平成 8 年 2 月 26 日事件番号/平成6年(う)1301 号 要旨:株式会社の取締役経理部長及び経理部次長が、同社の株式を買い占めた仕手集団に対抗するために、買い占めの妨害や買い占められた株式の買取等の工作を第三者に依頼し、業務上保管していた金員を工作資金や報酬として支出した行為について、買取は明らか に商法(平成 17 年法律 87 号改正前)210 条(法 155 条)に違反し、会社自身でも行うこと |
ができないことを行おうとしたものであり、取締役らに当該支出の権限はなかったなど として、業務上横領罪の成立が認められた事例。 | |
参考文献 | 日本監査役協会本部監査役スタッフ研究会[2010]「監査報告作成時における監査役監査の視点・着眼点の考察」。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 自己株式の取得・処分等、剰余金の配当の監査 剰余金の配当の監査 | 法 461 条 |
監査業務支援ツール | □「配当として分配可能な額の計算シート」(ツールNo.D-7) | |
監査役業務のポイント | 1.監査の目的と方法 ① 会社は、分配可能額(法 461 条)の範囲内で、いつでも剰余金を配当することができる(法 453 条)が、分配可能額(法 461 条)を超える剰余金の配当は、会社財産維持、会社債権者保護の観点に鑑みて重大な違法行為のため、監査役は、剰余金の配当が法令・定款に従い適切な手続きを経て実施されているかどうかを確認する。 ② 配当金の分配可能額は、期末日時点の剰余金に必要な加算・減算を行った結果としての期末日時点での分配可能額に、期末日以降の剰余金の変動、分配可能額の変動を調整して算定される。この配当金額は、剰余金の配当議案として取締役から株主総会等に提出されるが、監査役としても、配当金額が剰余金等の分配可能額の範囲内にあり、また配当実施日の属する期の分配可能額がマイナスになるような事態が想定されていないことを検証する。 ③ 違法配当の可能性がある場合、監査役は差止権(法 385 条)をもってしても回避すべきである。 ④ 事業報告に記載するなど、自社が公表している配当方針との整合性にも留意する必要がある。 2.剰余金の配当の承認機関 |
承認機関 | |
原則 | 株主総会の普通決議(法 454 条 1 項) |
例外 | ⅰ.中間配当…取締役会設置会社は、定款の定めがある場合は、取締役会で年1回の中間配当を行うことが認められている(法 454 条 5 項)。 ⅱ.現物配当(金銭分配請求権を与えない場合) …株主総会の特別決議(法 454 条 4項、309 条2項 10 号) ⅲ.459 条等の定款の定めがある場合(ⅱ.の場合を除く) …取締役の任期が 1 年以内 (選任後1 年以内に終了する最終の事業年度に係る定時株主総会終結日以前)であり監査役会及び会計監査人が設置されている会社又は委員会設置会社は、剰余金の配当等を取締役会が決定する旨を定款に定めることができる(法 459 条 1 項 4 号)。しかしこの定めだけでは、株主総会においてこれらの事項を定めることも可能なので、会社はこれらの事項を株主総会の決議によっては定めない旨を定款で定めることもできる(法 460 条)。 これらの定款の定めは、以下の条件をすべて満たす場合に限り、その効力を有する(計規 155 条)。 ◆ 最終事業年度に係る計算書類を対象とする会計監査意見が無限定適正意見(計規 126 条 1 項 2 号イ)であること ◆ 上記会計監査報告に係る監査役会(監査委員会)監査報告が作成され、その内容あるいは付記された監査役(監査委員)の意見の内容が、会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認める意見でないこと ◆ 剰余金の配当の場合は、配当財産が金銭以外の財産であるときは、株主に対して金銭分配請求権を与えること。 |
スタッフ業務のポイント | ① 剰余金の配当に関する法令・定款の内容の確認 剰余金の配当が取締役会に付議されることが明らかになった時点、あるいは剰余金の配当が株主総会議案となることが明らかになった時点でスタッフは、剰余金の配当に関する法令の規定について改正の有無を含め確認する。また、機関設計に応じて認められる定款の定めが会社の定款に定められているかどうかを確認する。 ② 分配可能額及び配当予定額の確認 剰余金の配当が取締役会に付議されることが明らかになった時点、あるいは剰余金の配当が株主総会議案となることが明らかになった時点でスタッフは、主管部署から剰余金及び分配可能額の算定に必要な資料を入手すると共に説明を求めるなどにより、剰余金及び分配可能額を確認する。また、取締役会資料等により、配当予定額が分配可能額の範囲内にあることを確認する。 ③ 配当に関する取締役会審議状況の確認 総会議案提案の取締役会又は剰余金の配当が付議された取締役会の議事録が作成された時点でスタッフは、株主総会決議による配当に関しては、総会議案提案取締役及び議案提案に同意の取締役又は議案提案の取締役会決議に賛成の取締役を確認する。取締役会決議による配当に関しては、 取締役会議案提案取締役(委員会設置会社にあっては、取締役又は執行役)を確認する。 |
スタッフとして留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、監査委員は取締役会における意思決定に参加することで業務執行の決定を個別に審査し、実質的な監視を行っているといえる。 監査等委員会設置会社においては、監査等委員は取締役会における意思決定に参加することで業務執行の決定を個別に審査し、実質的な監視を行っているということができる。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | ア. 分配可能額を超えて剰余金の配当がなされた場合には、金銭等の交付を受けた者(株主)は、会社に対し、配当財産の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う(法 462 条)。株主のほかに以下の者は配当支払い分の帳簿価額を会社に支払う義務を負う(その職務を行うにつき注意を怠らなかったことを証明したときは義務を負わない。また義務を負う場合は、総株主の同意がなければ免除されない)。 ◆ 職務を行った業務執行者 ◆ 株主総会決議による配当の場合:総会議案提案取締役及び議案提案に同意の取締役又は議案提案の取締役会決議に賛成の取締役 ◆ 取締役会決議による配当の場合:取締役会議案提案取締役(委員会設置会社にあっては、取締役又は執行役) イ. 会社が剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の普通決議によって、配当財産の種類及び帳簿価額の総額、株主に対する配当財産の割り当てに関する事項、及び剰余金の配当の効力発生日を定めなければならない(法 454 条 1 項)。 |
判例 | ◆ 監査役の善管注意義務違反 東京地方裁判所 判決 昭和 52 年 7 月 1 日 要旨:会社更生手続の管財人が、当時の取締役及び監査役に対し会社更生手続開始直前の 3年間にわたって粉飾決算を行い、違法に利益を計上し、配当の可能性がないにもかかわらず違法配当及び納税をしたとして損害賠償請求権査定請求を行い、「監査役の地位にあった被申立人らは、その任務を怠り、各期の定時株主総会において議案が適法、かつ、正確である旨を報告した」という事実が認定された。 |
参考文献 | 日本監査役協会 本部監査役スタッフ研究会[2010]「監査報告作成時における監査役監査の視点・着眼点の考察」。 高橋均編著[2009]「実務解説 監査役監査」学陽書房。弥永真生[2009]「リーガルマインド会社法」有斐閣。 日本監査役協会[2016]「監査役監査実施要領」。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 会社法内部統制システムに係る監査 会社法内部統制システムに係る監査 | 法362 条4 項6 号・362条5項 施規 100条 1 項・3 項・ 129 条1 項5号 基準 4 条・17 条・18条・19 条・20 条・21条・24 条・36 条・37 条 |
監査業務支援ツール | □「内部統制システム監査 チェックリスト」(ツールNo.C-5) | |
監査役業務のポイント | 1.監査の目的 会社法では、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備(以下、本項では「内部統制システム」という。)」を取締役会の専決事項としており(法 362 条4 項6 号)、大会社(資本金が 5 億円以上又は負債 200 億円以上の株式会社)においては、 これらの体制を整備することを取締役会に義務付けている(法 362 条 5 項)。 したがって、監査役は、取締役の職務執行監査の一環として内部統制システムの構築・運用状況について監査することになるが、期末に事業報告の監査を実施するに当たっては、内部統制システムの運用状況の記載を含めて、その相当性について判断することを義務付けられている(施規 118 条2 項、同 129 条1項5 号)。 2.監査のポイント (1)内部統制システムの構築状況とともに運用状況について監査 内部統制システムは、構築しただけでは意味がなく、適切な運用が伴わなければならない。したがって、監査役は、内部統制システムの構築状況とともに運用状況についても監査することになる。なお、主なポイントは以下のとおり。 ア. 会社に必要な規程・規則等が整備され、規程・規則等通りに運用されているか イ. 会社に必要な各種委員会が設置され、委員会規程・規則通りに運用されているか ウ. 会社に必要な部署(特に内部統制部署)が設置され、業務分掌通りに業務を行うことができる人員(人数・資質)が配置され、業務が執り行われているか エ. 牽制機能が働く組織体制になっているか(上記ア~ウに加え、役員の配置状況等)オ. 情報の伝達(上⇒下)・報告(下⇒上)体制は確立されているか ※ 上記ア~オの内部統制システム(仕組み)について確認することに加え、「統制環境」に ついて確認することも重要なポイントとなる。 監査役は、上記確認ポイントについて、会社法に規定されている各体制の構築・運用状況(縦串)と、内部統制システムに係るPDCAサイクルが確立しているか(横串)について監査することになる。 (2)会社法に規定されている各体制の構築及び運用状況について監査 取締役会が整備する内部統制システムは、会社法(会社法施行規則)に規定されているので、監査役は、会社法に規定された各体制の構築・運用状況について監査することになる。 以下では、各体制の監査のポイントについて記載する。 ア. 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制(施規 100 条 1 項 1 号) ◆ 情報の作成保存管理に関する規程が整備され、有効に運営されているか ◆ 取締役会議事録等が適正に記録され保存される社内体制が整備されているか ◆ 情報の重要度に応じアクセス権等の付与及び見直しが適宜行われているか 等イ. 損失の危険の管理に関する規程その他の体制(同 2 号) ◆ リスク管理に関する規程が整備され、有効に運営されているか。 ◆ 重大なリスクに対応するために、リスクの識別・分析・評価等の対応を行っているか ◆ 取締役会等の会議において上記リスクについての議論が十分になされているか等ウ. 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制(同 3 号) ◆ 複数の取締役が存在する場合の職務分掌が整備されているか等 エ. 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(同 4 号) ◆ コンプライアンスに関する研修や教育等の状況 ◆ 内部通報制度の導入と運用状況 ◆ 内部監査部門の設置や監査の実施状況等 オ. 次に掲げる体制その他の当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制(同 5 号イ~ニ) (ア) 子会社の取締役の職務の執行に係る事項の会社への報告に関する体制 |
(イ) 子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制 (ウ) 子会社の取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制 (エ) 子会社の取締役及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制 ◆ いわゆる「グループ会社法制」 ◆ 当該「親会社」として、きちんとグループ(子会社)管理をする体制を有しているか ◆ 子会社から直接の親会社への報告体制は機能しているか ◆ 関係会社に関する規程の整備状況はどうか ◆ 会議体、連絡体制が規程どおり運営されているか等 カ. 監査役がその職務を補助すべき使用人(以下、監査役スタッフ)を置くことを求めた場合における監査役スタッフに関する事項(施規 100 条 3 項1号) ◆ 監査役スタッフの人事権の確認 等 ◆ 執行から独立した監査役スタッフを配置しているか キ. 監査役スタッフの取締役からの独立性に関する事項(同 2 号) ◆ 監査役スタッフの人事・考課・懲戒等が執行側から独立しているか ◆ 上記ルールは社内規則上、きちんと規定され、そのとおり運用されているかク. 監査役の監査役スタッフに対する指示の実効性の確保に関する事項(同 3 号) ◆ 監査役による監査役スタッフに対する指示権の確保 ◆ 監査役への報告事項が明確となっており、そのことを周知しているかケ. 監査役への報告に関する体制(同 4 号イ、ロ) (ア) 取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制 (イ) 子会社の取締役、監査役及び使用人等から報告を受けた(親会社の)者が監査役に報告をするための体制 ◆ 社内の各種情報やグループの子会社の各種情報が、監査役へ遺漏なく報告される仕組 みができているか ◆ 監査役と内部監査部門の連携体制の確認等 コ.監査役に対して「ケ」の報告をした者が、報告したことを理由に不利益を受けないことを確保するための体制(同 5 号) ◆ 監査役へ報告した者への報復や不利益を社内規程で禁止し、社内に周知しているか サ.監査役監査に係る費用の前払い、償還及び、その他あらゆる費用又は債務処理に関する事項 (同 6 号) ◆ 監査役監査活動に要する費用の請求や支払いについての社内規程があるか ◆ 監査役監査活動に要する費用は、予め予算化されているか ◆ 監査役が外部専門家を活用する際の費用に関し、社内規程があるか 等 (3)内部統制システムに係るPDCAサイクルが確立されているか監査 会社及び、会社を取り巻く事業環境は常に変化している。したがって、内部統制システムは会社の状況に応じて常に改善され続けることが必要であり、監査役は、いわゆるPDCAサイクルが確立されているかについて監査することになる。 ア.内部統制システムが取締役会決議に沿って構築されているか、又は必要なアクションがとられているか イ.内部統制システムの構築・運用状況について定期的に報告されているか、報告に具体性があるか ウ.事業機会リスク・オペレーショナルリスクや、コンプライアンスに係る案件が、取締役会に報告される体制となっているか エ.実際に報告され、また改善や対策について議論されているか ◆リスクの顕在化や不祥事等の問題の未然防止について ◆リスクが顕在化や不祥事等の問題が発生した場合の対応策の議論について オ.課題・問題があった場合に、報告を受けた他の取締役は善管注意義務の観点から適切に対応を取っているか(不作為・見過ごしは無いか) カ. 例えば、コンプライアンスに係る施策立案された場合、「当該施策の役職員への周知状況→各部署において当該施策の実施 →各部署における自己点検等により実施状況の確認→問題点が確認された場合改善策を実行」といった一連の流れが確立され、この一連の流れを監査部門が監査するという態勢が構築・運用されているか。この場合、各種委員会への出席、役職員からの報告聴取、往査等の監査活動で入手した情報の整合性の確認が重要になってくる 3.監査の方法 |
監査役は、日頃の監査活動を通じて、内部統制システムの構築・運用状況について監査することになる。具体的には,以下のとおり。 ア. 取締役会に出席し、内部統制システムの構築・運用に係る取締役会の取組み状況について確認する イ. リスク管理委員会・コンプライアンス委員会等の重要な会議に出席し、執行部門のリスク管理・コンプライアンスの取組み状況について確認するとともに、当該会議の開催される回数・議題等が規程とおりに運営されているかについて確認する ウ. 代表取締役との面談時において、代表取締役の内部統制システムの構築・運用状況に係る見解について確認する。代表取締役が内部統制システムの運用状況等に係る問題点を認識している場合、当該問題点への対応方法について確認する エ. 役職員との面談時において、当該役職員の管掌部門の内部統制システムの構築・運用状況について確認する。また、内部監査部門により、内部統制システムの不備が指摘されている場合、当該指摘事項への対応策や対応策の進捗状況について確認する オ. 内部監査部門、会計監査人との連携を通じて、内部統制システムの現況と課題、改善策を確認する カ. 期末において、取締役から業務執行確認書を取得し、内部統制システムの構築・運用状況 に係る各取締役の見解について確認する | |
スタッフ業務のポイント | スタッフは、上記3.のア~カの監査役監査活動の補佐をすることになるが、具体的には、「【M09】 ~【M35】業務監査」の各監査活動におけるスタッフ業務のポイントを参照のこと。 |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 15 条(監査委員会監査の実効性を確保するための体制)、16 条(補助使用人等)、17 条(監査委員会への報告に関する体制等)、23 条(内部統制システムに係る監査)が規定されている。 監査委員会は、執行役及び使用人の職務執行監査の一環として内部統制システムの構築・運用状況について監査することになるが、監査報告作成時において、内部統制システムの内容の相当性について判断することが義務付けられている(施規 131 条 1 項 2 号)。また、内部統制システムを利用した監査を行うことも踏まえ、内部統制システムの構築・運用状況について監査する必要がある。なお監査委員会は、期中の監査活動を通じて、内部統制システムの不備が認められる場合には、 執行役に是正を促す、あるいは、取締役会において助言・勧告しなければならないが、当該助言・ 勧告への対応状況についても確認することになる。 監査役会設置会社では、監査役を補助する使用人は、「監査役が補助使用人を置くことを求めた場合」に設置されることになるが(施規 100 条 3 項 1 号)、監査等委員会設置会社においては、会社法によって補助使用人の設置が規定されている(法 399 条の 13、1 項 1 号ロ及び施規 110 条の 4、 1項 1 号)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 運用状況の確認の方法は各社によって異なるため、事例として挙げることとする。 (1)コンプライアンス担当部門が「会社法内部統制モニタリング」を実施し、監査役がその結果を確認している。 (2)監査役による役員へのヒアリング、及び子会社往査の際に、内部統制に関する質問を織り込 みその記録をとることによって内部統制システム運用監査の一環としている。 |
その他特記事項 | |
参考文献 | 日本監査役協会本部監査役スタッフ研究会[2014]「取締役の職務の執行の監査」。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目中項目 | 取締役への業務監査報告取締役への業務監査報告 | 基準 21 条・583 条 1項 |
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監査役業務のポイント | 1.業務監査報告の目的・内容 業務監査報告とは、一定期間における取締役の職務に不正行為又は法令若しくは定款に違反する行為がなかった、あるいはそのおそれがなかったことを取締役(会)に報告するため、期間内での監査活動の方法及び結果を取りまとめたものであり、主な内容は以下のとおりである。 ア. 取締役会等の重要な意思決定会議の機能の状況 ◆ 取締役は、自らの管掌分野かどうかにかかわらず、必要な場合に必要な発言を行ったか。また議案に対して妥当な賛否を投じたか ◆ 取締役は、自らの管掌分野に関わる議案において、意思決定のプロセスを明示したかイ. 管掌する部門の管理の状況 ◆ 取締役は、日常的に管掌している業務部門(事業所・子会社を含む)において、善管注意義務を果たしているか ウ. 会社法内部統制システムの構築・運用への係わり ◆ 取締役は、内部統制システムの構築・運用、すなわち計画を立て、実行した後にチェックを行い、その結果に基づき改善することに責任をもって取り組んでいるか ◆ 不祥事発生時は、迅速な社内報告、迅速かつ正確な情報収集のための初動、ステークホルダーへの報告、第三者委員会設置等の必要性の検討、対外発表の検討、グループ企業内での再発防止策の策定等がなされているかをチェックする エ. 取締役の不正、法令・定款違反行為のチェック ◆ 取締役が不正行為・法令定款違反行為をし、又はするおそれがあるとまでは認められないまでも、監査役が看過できない事項 ※監査役が、取締役が不正行為・法令定款違反行為をし、又はするおそれがあると認めた場合は、 「【M79】取締役の不正行為等の取締役(会)への報告」を参照のこと。 2.業務監査結果の通知と助言・勧告 (1) 定例報告する場合 ① 監査役が取締役に定例で業務監査報告を行う場は二つある。一つは代表取締役との定期会合の場であり、もう一つは中間・期末時に年間監査活動としてまとめて取締役会に報告する場である。取締役会に定例報告する場合は、中間時に報告すれば、タイミングを失することなく助言・勧告を行うことができる。 ② 定例報告する場合は、監査役全員としての監査意見であるか否かについて監査役で意思疎通を図り意見集約を行うため、監査役会で協議することが望ましい。 (2) 助言・勧告する場合 ① 期中の業務監査において、監査役が法令・定款違反の情報をキャッチし、緊急の調査・確認を行う必要があると判断した場合は、時期を問わず、速やかに該当する取締役に通知し、必要に応じて助言・勧告を行う。 ② 監査役が助言・勧告した内容については、速やかに代表取締役又は該当する取締役から回 答してもらうことが望ましい。 | |
スタッフ業務のポイント | ① 代表取締役との定期会合で報告する場合は担当部署と、取締役会で報告する場合は取締役会事務局と定例報告の日程を調整する。 ② 監査役が定例報告する日の 1~2 ヶ月前に、期中の監査調書(メモ)や取締役会や経営会議 (常務会)等その他重要会議議事録に記載されている監査役の発言内容を確認し、業務監査報告の項目案を作成する。 ③ 監査役と定例報告の具体的内容を検討し、監査役会で検討する場合は、非常勤(社外)監査役の意見を聴取したうえで、定例報告を取りまとめる。 ④ 既に対応済みのものを定例報告の対象としていないかどうか、該当する部門に確認する。 ⑤ 定例の業務監査報告書及び関連資料を保管・管理する。 | |
スタッフとして |
留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、会社法 417 条 3 項により、監査委員会がその監査委員の中から選定する者は、遅滞なくその監査委員会の職務執行状況を取締役会に報告する義務がある。 監査等委員会設置会社においては、監査役会設置会社と同様、職務の執行状況の取締役会への報告は法的には要求されていないが、日本監査役協会「監査等委員会監査等基準」では、活動状況等について、定期的に取締役会へ報告するとしている(基準 58 条 1 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | ✍監査報告作成時 監査報告作成時に、併せて業務監査報告書を作成している。 ✍社内イントラの役員情報欄への掲示 社内イントラの役員情報欄(役員限定)に「監査役会情報」のコーナーを設け、取締役会で報告した各部署の監査調書を掲載している。 |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 社外取締役との連携 社外取締役との連携 | 施規 105 条2 項1 号基準 16 条 CG コード 4-4-①・ 4-8-①・4-8-② |
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監査役業務のポイント | 1.社外取締役と連携(面談)する目的 ① 社外取締役が期待される機能を発揮できる状況にあるか確認(取締役会の監督義務の履行状況の監査の一環) ② 親子会社間の利益相反取引についての社外取締役の判断・理由の確認 ③ 社外取締役の活動の補助(情報提供) ④ 社外取締役からの情報を監査役監査活動に活かす 2.面談時期 ① 定例面談:他の取締役との面談回数との平仄合わせが必要になるが、社外取締役はお忙しいことも想定されるため、例えば、期末監査時に 1 回面談することが考えられる。 ② 非定例面談:取締役会において親子会社間の利益相反取引のほか、重要な決議を行う場合等、必要に応じて取締役会開催前・後に面談を実施する。 3.面談時における主なテーマ ① 社外取締役の役割に対する考えの確認(1 回目の面談時のテーマ) ② 取締役会決議等に係る事前情報の入手状況・主管部署からの説明の有無 ③ 親子会社間の利益相反取引についての社外取締役の判断・理由の確認 ※いわゆる「損して得取れ取引」や「市場価格の算定が難しい取引」等、社外取締役が当該取引の妥当性について判断しづらく、第三者(外部専門家)の意見を聴取する必要があると考え、監査役(会)も同じ意見であった場合、共同で取締役会に対してその旨要請すること も考えられる ④ 自社の内部統制システム(親子間利益相反取引に係る内部統制システムも含む)に関する 取締役・監査役は、必要と考える場合には、会社の費用において外部の専門家の助言を得ることも考慮すべきである(CG コード補充原則 4-13 ②) ⑤ 自社の取締役会の監督機能に関する社外取締役の見解の確認 ⑥ 監査役監査の実施状況や監査役監査活動で入手した情報(取締役会決議において必要な情報)の提供、取締役会決議案件に関する監査役(会)・社外監査役の考え方の説明、意見交換 4.その他留意事項 社外取締役と連携するに当たり、監査役(会)は代表取締役社長と面談し、社外取締役の選任理由等について確認しておくことが重要である。なお、面談時におけるポイントは以下のとおりである。 ① 代表取締役社長に確認する事項 ア.社外取締役の選任理由、社外取締役に期待する事項(社外取締役が考える役割との整合性の確認) イ.社外取締役への情報提供等についての考え方 ウ.社外取締役の指摘事項・提言を真摯に受け止め、経営に反映させていく心構えがあるのか ② その他のポイント 社外取締役への情報提供が十分でないと判断した場合、改善するよう意見具申すること。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.日程調整 ① 基本的には取締役会開催の前後に開催されることが想定されるが(例えば、取締役会の 前後に開催される監査役会)、そうでない場合、社外監査役が出席できるよう日程調整を行う。 ② 日程調整を行う場合、概ね 1~2 ヶ月程度前に行うことになる。 2.面談実施前対応 ① 監査役(常勤監査役)と相談し、面談時のテーマ等を決定する。 ② 必要に応じて、面談時の資料を作成する(例えば、監査役監査の状況等)。 3.面談実施時の対応(社外取締役との面談に同席した場合の対応) ① 監査メモの作成、気づき事項を記録する。 ② 必要に応じて質疑応答に加わり、監査役をサポートする。 4.面談実施後の対応 ① 面談録案の作成(社外取締役との面談に同席した場合)。 ② 面談録・面談時に使用した資料の保管・管理。 ③ 面談の結果、代表取締役・取締役等との面談が必要になった場合、速やかに実施手続きを行う。 |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 24 条(企業集団における監査)、42 条(企業集団における監査の方法)が規定されている。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会) | 監査等委員会の過半数は社外取締役ではあるが、監査等委員ではない社外取締役が選任されている場合、企業統治の一層の強化の観点から、社外取締役連絡会などを開催し連携することが望ましい。 |
各社の工夫・事例 | ・ 新任の社外取締役に対する会社のレクチャーの場には、監査役スタッフも同席する。 ・ 監査役監査の結果を適宜、社外監査役にも伝達する。 ・ 非業務執行役員連絡会や独立役員連絡会を開催し、情報の共有に努めている。 |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | その他、監査役の職務を適切に遂行するための意思疎通、情報収集等 子会社監査役との連携 | 施規 105 条 4 項 基準 17 条 |
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監査役業務のポイント | 1.子会社監査役との連携の目的と方法 (1) 子会社監査役と連携する目的 ① 監査役は、ⅰ)子会社を管理する部署・管掌役員から報告聴取、ⅱ)子会社の管理状況等について報告・協議する会議体への出席、ⅲ)子会社社長より状況報告を聴取する会議(取締役会等)への出席等を通じて子会社監査を行う。 ② 監査役は、その職務を遂行するにあたり、必要に応じて子会社の監査役との意思疎通及び情報の交換を図ることが求められおり(施規 105 条 4 項)、例えば、以下に列挙した事項に関する子会社監査役の見解を確認し、監査役監査の一助とすることを目的として子会社監査役と連携することは重要であると考える。 ア. 企業集団における業務の適正を確保するための体制の構築・運用に係る監査の一環として、子会社における当該体制の構築・運用に関する不備の有無及びその是正状況並びに親会社の取締役の指導・監督状況について イ. 連結計算書類監査の一環として、子会社の会計監査人の監査の方法と結果の相当性について ③ 子会社監査役との面談等を通じて子会社監査役の監査品質・監査役監査環境の整備状況を確認し、必要に応じて、子会社監査役の監査品質の向上・監査役監査環境の整備をサポートし、グループ会社全体の監査役監査のレベルアップを図ることは重要であると考える。 ④ 子会社監査役は、「1人監査役」というケースも多く、情報の入手手段も限られていることも想定されるため、他のグループ会社監査役と一堂に会し、意見交換・情報交換を行う場を設けることは有意義であると考えられる。 なお、子会社・グループ会社の監査役が集まる会議は、子会社監査役連絡会、グループ会社監査役連絡会、グループ会社交流会等、様々な名称で呼ばれているが、本項では、「グループ会社監査役連絡会(以下、「連絡会」という。)」とする。 (2) 子会社監査役との連携方法 子会社監査役との連携方法(意思疎通・情報交換の方法)としては、以下の方法が考えられる。ア. 子会社監査役が「グループ会社監査役連絡会」において、親会社監査役会監査計画の周 知徹底、あるいは勉強会・研究会等、子会社監査役のスキルアップ、監査役監査の品質向上が期待できるテーマについて説明し、意見交換・情報交換を行う。 イ. 各子会社監査役と個別に面談し、各子会社の内部統制システムの構築・運用状況、会計監査の状況等について意見交換・情報交換を行う。 2.子会社監査役との連携方法と具体的なポイント (1) グループ会社監査役連絡会の開催 ① 連絡会に出席するメンバー 連絡会のメンバーは、以下のとおり。ア. 原則 50%以上の子会社の監査役イ. 重要な子会社の常勤監査役 すべてのグループ会社の監査役に出席してもらうことが望ましいが、数多くの子会社を抱えている会社もあり、基本的には上記のメンバーが出席することが一般的である。 ② グループ会社監査役連絡会のテーマ(議題) 連絡会のテーマは、グループ会社監査役全員で共有しておいた方が望ましい情報・事項、グループ会社監査役の職務知識の向上により監査役監査の品質向上が期待される情報・事項等が挙げられ、具体的には以下のテーマ(議題)が考えられる。 ア. 親会社監査役会の監査方針・監査計画 ◆ 親会社監査役会の監査方針・監査計画を説明し、企業集団内部統制システム監査のレベルアップを目的として、子会社監査役の監査方針・監査計画にも反映させる。なお、親会社監査役会が「監査役監査基準・実務指針」を制定している場合も同様に行うことになる。 イ. 親会社内部監査部門の監査結果等 ◆ 親会社内部監査部門からの説明により、子会社の内部監査において問題となった事 |
象と子会社執行部門の対応方法等を共有させることにより、各グループ会社の監査役監査の品質向上に資することが期待できる。 ウ. 親会社の中期経営計画の概要等 ◆ 監査役会の監査計画を作成するにあたり、『当社グループがどの方向に進んでいくのか。』ということを認識し、それに対応した監査役監査計画を作成することは必要である。したがって、親会社の中期経営計画等を説明し、子会社監査役に認識してもらうことは、子会社監査役監査計画を作成するうえで重要となってくる。 エ. その他、連結決算の概要等、親会社の現況オ. 監査役監査にとって必要な知識 ◆ 会社法改正・会計基準の改定等法令諸規則の改正の動向について。 ◆ 業界に特有な法律の改正の動向についての解説。 ③ 開催の時期 例えば、『期初、第 2 四半期(中間期)、期末』の年間 3 回開催するのが望ましい。 (2) 子会社監査役との個別面談の実施 ① 面談する子会社監査役 基本的には、グループ会社監査役連絡会のメンバーと同じ。 ② 面談において確認する事項 ア. 子会社の内部統制の構築・運用状況に関する子会社監査役の見解。 イ. 子会社監査役監査の進捗状況、及び子会社監査役の監査活動において確認された問題点とその対応策。 ウ. 子会社の会計監査人の監査の方法及び結果の相当性に関する子会社監査役の見解。 ※特に、親会社の会計監査人と子会社の会計監査人が異なる場合は重要であり、親会社の会計監査人と子会社の会計監査人との連携状況等についても確認することになる。 エ. 子会社の監査役監査環境の整備状況、子会社監査役の監査の品質等、以下のポイント。 ◆ 子会社監査役の監査環境は整備されているか、親会社監査役のサポートは必要ないか。 ◆ 子会社監査役はどのような監査を実施しているのか、監査の業務品質は十分か。 ◆ 子会社の常勤監査役・非常勤監査役は適切に配置されているか。 ③ 面談の時期とテーマ 子会社監査役との面談時期・面談内容は、以下のとおり(事例)。ア. 監査計画策定時 ◆ 株主総会終了後、7 月~8 月を目途に実施。 ◆ 親会社の監査役会監査計画を説明し、必要に応じて子会社監査役(会)監査計画に反映してもらう。あるいは、子会社監査役監査計画について説明を受け、必要に応じ て修正することを要請する。イ. 期中 ◆ 第 2 四半期(中間決算時)決算確定時、11 月上旬~中旬を目途に実施。 ◆ 子会社監査役の監査の進捗状況、内部統制システムの構築・運用状況について説明 を聴取。また、子会社監査役監査活動において確認された問題の有無について確認し、問題点があった場合、当該事項に対する対応状況と当該対応状況に関する子会社監査役の見解を確認。 ◆ 子会社の概況、第 2 四半期(中間期)までの決算の状況と子会社を担当する会計監査人の監査の方法・監査意見等について確認。 ◆ 親会社の子会社管理部門からの報告聴取にいて疑問に思った点等について、子会社監査役の見解を聴取。 ウ. 期末 ◆ 親会社の監査役監査報告作成前、5 月上旬~中旬を目途に開催することが望ましい。 ◆ 子会社監査役の期末監査(事業報告監査・会計監査)の状況について説明を聴取。 以上、子会社監査役との連携方法について述べてきたが、各社の状況・年間を通じてのテーマ等を踏まえ、グループ会社監査役連絡会・子会社監査役との個別面談を上手く使い分け、子会社監査役との連携を図っていくことになる。 【留意点】 ✍子会社及び重要な関連会社の監査について 子会社の監査は原則として、子会社の監査役が行うことになる。親会社監査役による監査役監査は、親会社及び子会社の管理部門や内部監査部門からの報告聴取等が中心となる。あくま |
でも、子会社監査役との意思疎通・情報交換(施規 105 条 4 項)であって、子会社監査役から報告を受けるという位置付けではないことに留意する。なお、監査役は、その職務を行うために必要があるときは、子会社に対して事業の報告を求め、又は子会社の業務及び財産の調査を行うことができるとなっているが(法 381 条 3 項)、これは、いわゆる「子会社調査権」の行使に該当することに留意する。 また、「親会社」で定める企業集団の内部統制システム上においても重視されているような関連会社がある場合、その関連会社の重要性に照らして、上記に準じて監査を実施する必要がある(基準 38 条 4 項)。 ✍子会社が上場会社の場合における留意事項 上場会社である子会社の監査役と面談する場合、あるいは、グループ会社監査役連絡会に参加させる場合、親会社・子会社双方のインサイダー情報が話されないように留意する必要があ る。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.日程調整 (1) グループ会社監査役連絡会に関する日程調整 ① 監査役会の監査計画案を作成する際、監査役とも相談のうえ、連絡会の日程案を作成。その際、例えば四半期毎に開催する場合、『開催月(7 月、10 月、1 月、4 月)の第1週の金曜日に開催』というように、予め開催日をルール化することにより、子会社監査役が、事前に日程を押さえやすくなると考えられる。 ② 年間の連絡会開催スケジュールが確定した時点で、常勤監査役と、テーマ(議題)と連絡会の運営方法、並びに、配付資料について検討を加え、テーマ(議題)によっては、会計監査人、弁護士、内部監査部門等に講師を依頼する。 ③ 日程・テーマ(議題)等が確定した後、子会社監査役のほか、オブザーバー出席される方の出欠を確認し、連絡会の開催 1 ヶ月前程度には、連絡会次第を出席者に通知する。 (2) 個別面談に関する日程調整 ① 監査役会監査計画案作成時に、本年度における子会社監査役との面談のポイント(確認事項)と、当該ポイント(確認事項)を確認するにふさわしい時期(例えば、11 月上旬)を概ね決定し、監査役会監査計画案に反映させる。 ② 上記の時期の概ね 1 ヶ月前を目途に、詳細な日時・場所を決定し、子会社監査役に連絡。その際、今回の面談の趣旨(目的)について説明し、準備しておいてほしい資料があれば併せて要請しておく。 ③ 日時・場所を決定する際、親会社監査役が訪問するのか、あるいは、子会社監査役に来訪してもらうのかについて常勤監査役と相談して決定する。特に親会社監査役が新任の場合、子会社監査役の監査環境等を確認すること等を目的として訪問することがあることに留意する。 2.事前準備 (1) グループ監査役連絡会のテーマ(議題)の設定と講師の依頼 ① 連絡会のスケジュール案作成時に、以下の事項を踏まえながら年間のテーマ(議題)を設定する。 ア. 会社法・金融商品取引法・企業会計基準・公認会計士法・独占禁止法・労働基準法・業法等の改正、監査役監査基準の改定等の動向 イ. 親会社・グループ会社のトピックス・経営課題 ウ. 子会社監査役の監査環境の整備状況・監査の実施状況エ. 業界動向等、会社を取り巻く環境の変化 ② テーマ(議題)を設定するに際して、社内・社外講師に依頼し、テーマ(議題)の概要等について打合せる。具体的には、年間の日程・テーマ(議題)が確定した段階で、依頼する講師に対して、テーマ(議題)を取上げる趣旨、説明してほしい内容、説明時間・質疑応答時間等、連絡会のテーマ(議題)に関する詳細な内容を説明する。 ③ 講師から事前に資料を受け入れ、連絡会のテーマに合致した内容か、あるいは、当方が要請している事項が網羅されているか等を確認し、必要に応じて、加筆・修正を依頼する。なお、受入時期は、スタッフによる資料内容の確認、常勤監査役との相談、加筆・修正の依頼等を踏まえると、遅くとも、3 営業日前までには受け入れることが望ましい。 (2) 子会社監査役との個別面談に係る事前準備 子会社面談時スタッフは、以下の情報を取りまとめておく ア. 子会社の月次・四半期・期末決算情報(経理部門より受領) |
イ. 子会社の月例業務報告(子会社を管理する主管部門等より受領) ウ. 子会社の内部統制の整備・運用に係る推進状況・不備の有無及び当該不備の改善状況等の報告(内部統制部門より受領) エ. 取締役会・経営会議等の資料、執行側からの報告聴取時の資料・面談録のうち、当該子会社に関係する資料 3.運営補助等 (1) グループ会社監査役連絡会開催補助 ① 出欠者の確認と連絡会次第(アジェンダ)の通知 ② 常勤監査役と相談し、講師から受け入れる資料のほか、必要な配付資料の準備(後述の、「スタッフとして留意する点」参照)をするほか、当日の座席表の作成を行う。 ③ 当日の議事進行や、連絡会の会議録の作成を行う。 (2) 子会社監査役との個別面談録(監査役会報告資料)の作成 子会社監査役との面談に同席した場合、以下の事項を取りまとめた面談録を作成する。ア. 日時 イ. 面談した場所ウ. 面談者 エ. 面談の趣旨(確認事項)と確認された事項オ. 面談内容(質疑応答事項) 4.その他の関連業務 ① グループ会社監査役連絡会の運営方法等を取りまとめた要綱・要領(目的・会員・運営方法・事務局等を規定)案を作成する。 ② 子会社・関連会社の常勤監査役リストを都度更新。 ③ 子会社監査役の発言状況(要請事項等も含む)を踏まえ、今回の連絡会における課題を整理し、監査役と相談のうえ、次回以降の連絡会で取上げるべきテーマ(議題)がないか検討する。 ④ 子会社が在外子会社の場合、在外子会社の所在国における主な法令、規制、会計基準等及び 経済・市場動向等に係る情報収集と監査役への提供。 | |
スタッフとして留意する点 | ✍グループ会社連絡会開催に係る留意点 ア. 連絡会に必要な資料の配布に関しては、連結監査の実効性・効率性確保という目的はあるものの、どこまで資料が出せるかを関係部局と相談しながら実施する。 イ. 各社監査役に極力発表(発言)の機会を与え、監査役と十分連絡が取り合えるような関係構築を目指す。 ウ. 予め年間のテーマ(議題)を設定するが、年間のテーマ(議題)はあくまで目安の位置付けであ り、都度(連絡会開催 1 ヶ月前程度)、テーマ(議題)を見直す。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 24 条(企業集団における監査)、42 条(企業集団における監査の方法)が規定されている。 監査等委員会設置会社については、実効的かつ効率的な監査の実施のための手段の一つとして、親会社及び子会社の監査役等、内部監査部門等、会計監査人との積極的な意思疎通、情報交換が挙げられている(監査等委員会監査等基準 45 条 2 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | ア. 親会社の監査役(会)監査報告を作成する前に、子会社の内部統制システム監査の結果・会計監査の結果を確認することを目的として、子会社監査役の監査報告(写)を受領している。 イ. 親会社における「監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制(施規 100 条 3 項 4 号)」の一項目として、「執行側はグループ会社監査役連絡会の開催を補佐する」旨の条項を規定し、グループ会社の執行部門に周知徹底している。 ウ. グループ会社監査役連絡会のテーマ・出席者等に関する事例 ◆ 子会社監査役に監査環境及び業務監査に関するアンケートを送付し、グループ監査役会(連絡会)において、結果のフィードバックと合わせて連絡会を開催している事例。その際、小分科会を開催し、各社の状況について意見交換してもらう方が、子会社監査役の本音もでて、有意義な会議になる場合もある。 ◆ 会社法改正・会計基準の改定等法令諸規則の改正の動向について、例えば、会社法改正については、法務部門、あるいは顧問弁護士に講師を依頼し、会計基準の改定については、 会計監査人に講師を依頼している。 ◆ 社外監査役が、弁護士、あるいは公認会計士である場合、社外監査役に講師を依頼し、質疑応答等を通じて、社外監査役と子会社監査役が直接意見交換・情報交換を行っている。 ◆ 会社が大きく変わる局面等、テーマによっては、子会社監査役を補佐するスタッフも出席 |
させ、子会社監査役の監査方針・監査計画案を作成する際の一助としてもらっている。 ◆ 代表取締役社長(CEO)が変わった時に、新任の代表取締役社長(CEO)に自社グループの中期経営計画について直接説明させ、質疑応答を行っている。 ◆ 内部監査部門担当役員・内部監査部門長等が子会社の非常勤監査役を兼務している場合、オブザーバー出席を依頼し、執行部門にもグループ会社監査役連絡会の運営状況を見てもらっている。 ◆ 連結納税制度の導入、東日本大震災の影響及び対応状況等、会社を取り巻く内外の環境変化を認識してもらうためのテーマ(議題)を選定し、意見交換・情報交換を行っている。 ◆ 子会社監査役の監査環境の整備状況・監査の実施状況について説明させ、意見交換・情報交換を行う。 エ. グループ会社監査役連絡会の開催に関する事例 ◆ 本社が東京なので、首都圏にある子会社監査役を中心として開催しているが、名古屋・大阪地区の対象会社にも声をかけ、可能な場合、参加してもらっている。 ◆ 東京、名古屋、大阪等、各拠点において子会社が配置されている場合、同じ内容のテーマで、各拠点(例えば、東京と大阪)においてグループ監査役連絡会を開催している。 ◆ 『期初、第 2 四半期(中間期)、第 3 四半期、期末』の年間 4 回開催し、2 回は子会社の内部統制システムについてのテーマとし、2 回は研修会・勉強会としている。 ◆ 年間 6 回(うち 1 回は懇親会を含む)開催している事例もある。オ. グループ会社監査役連絡会への出席者に関する事例 ◆ 子会社が監査役会設置会社で、常勤監査役のほか、非常勤監査役を親会社の内部管理部門等の使用人が兼務している場合、当該非常勤監査役はメンバーには加えない。 ◆ 会社法上、子会社監査役とは意思疎通・情報交換を図ることを求めているが、関連会社の監査役との意思疎通・情報交換までは規定していないが(施規 105 条)、他社との合弁会社等、親会社にとって重要な関連会社に派遣した常勤監査役を、必要に応じてメンバーに加えている。 | |
その他特記事項 | ✍ホールディングス(純粋持株会社)の事例 ホールディングス(純粋持株会社)の場合は、事業活動は中核事業子会社が行うので、「企業集団における業務の適正を確保するための体制」を監査するためには、中核事業子会社常勤監査役と定期会合を開催し、各社の経営会議の議題や監査(往査)結果報告を中心に、意思疎通や情報交換を図ることが効率的であり実効性のある方法となっている。以下では、中核事業子会社と定期的会合を開催しているホールディングス(純粋持株会社)における監査役監査のチェックポイントと、スタッフ業務について記載する。なお、定期的会合に参加している監査役は 8 人である。 ア. 監査役監査におけるチェックポイント ◆ 中核事業子会社監査役の監査環境は整備されているか? ホールディングス監査役のサポートの必要性はないか。 ◆ 中核事業子会社監査役はどのような監査を行っているか? 監査の業務品質はどのようか? ◆ 監査役は取締役会や経営会議でどのような視点で発言をしているか? ◆ ホールディングスと中核事業子会社監査役が共通に知っておくべき情報や、監査に役立つ情報はないか? ◆ 中核事業子会社監査役に要請すべき事項はないか?イ. スタッフ業務 ◆ ホールディングス監査役と監査役スタッフの週例会の前日に、ホールディングスと中核事業子会社の 3 ヶ月分の諸会議・監査(往査)スケジュールを作成する。 ◆ ホールディングス監査役と監査役スタッフの週例会で、スケジュールの調整を行うとともに、ホールディングスの経営会議議題資料ほか中核事業子会社監査役との定期会合で用いる資料を確認する。 ◆ 中核事業子会社監査役との定期会合の事前に、ホールディングス及び中核事業子会社のそれぞれの経営会議議題資料等を必要分コピーする。 ◆ 中核事業子会社監査役との定期会合の日程は、会の席上で都度確認する。 ◆ ホールディングスと中核事業子会社の監査役スタッフは全員、中核事業子会社との定期会 合に出席する。 |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 | その他、監査役の職務を適切に遂行するための意思疎通、情報収集等 | 施規 105 条 2 項 |
中項目 | 内部監査部門等との連携 | 基準 19 条2 項 7・ |
監査業務支援ツール | 24 条2 項・36 条2 項・37 条・38 条 CG コード 4-13-③ | |
監査役業務のポイント | 1.内部監査部門と連携する目的 監査役は、その職務を遂行するにあたり、内部監査部門と緊密な連携を保ち、組織的かつ効率的な監査を実施する旨、日本監査役協会の監査役監査基準に規定されている。実際問題として、監査役と内部監査部門の監査はその対象や内容に異なる点はあるが、監査役監査と内部監査部門監査の監査領域が重なることによる重複感を避け(被監査部署の負担軽減)、双方の監査結果を有効に活用すること等により、双方の監査の実効性・効率性を高め、限られた監査資源を有効に活用することが、内部監査部門と連携する主な目的である。 2.内部監査部門との連携におけるポイント (1) 内部監査部門からの監査計画の説明聴取 ① 説明を聴取する時期とその理由 ア. 内部監査計画が取締役会等で承認される前 イ. 監査役(会)との議論・意見交換等により、監査役(会)の要請が反映された内部監査計画を取締役会に上程してもらうため。 ② 聴取する内容 内部監査の基本方針、重点監査項目(ポイント)・監査実施項目、対象部署・監査実施時期、等 ③ 組織的かつ効率的・実効的な監査役監査活動を行うためのポイント ア. 期中監査で確認した問題点・想定される監査役監査の重点監査項目等で、内部監査部門に監査(確認)してほしい点、または、内部監査計画で不十分ではないかと思われる点があった場合、監査計画の修正を要請する。 イ. 内部監査部門の監査結果を活用できる事象については、監査の効率性確保・被監査部門の負担軽減等の観点から、被監査部門への往査時期・監査項目の調整(重複事項の排除等)を行う。 (2) 内部監査部門への監査役監査計画の伝達 ① 伝達する時期 監査役会での決議、または、取締役会への報告後、速やかに実施。 ② 伝達する内容 前年度の監査役監査の実効性を評価したうえで、新たに作成若しくは継続する監査計画(基本方針、重点監査項目・通常監査項目、監査対象部門・監査日程、等) ③ 組織的かつ効率的・実効的な監査役監査活動を行うためのポイント ア. 監査役の重点監査項目(認識する課題)、監査日程等を提示することにより、内部監査部門から、効率的な情報(監査結果)の提供を受ける。 イ. 必要に応じて、内部監査計画の修正を要請する。 (3) 内部監査結果の報告聴取 ① 報告を受ける時期 報告を聴取する時期は各社によって異なることが想定される。 ② 聴取する内容 ア. 期初に聴取した、監査計画に基づき、監査の進捗状況イ. 監査上の問題点の有無と、問題点への対応状況 ③ 組織的かつ効率的・実効的な監査役監査活動を行うためのポイント 監査結果等を踏まえ、監査上の問題点・留意点等について意見交換を行うことにより、 ◆ 会社全体のリスクの状況等を把握し、その後の監査役監査活動に活かす。 ◆ 監査役監査で見落としている点がないか確認する。 ◆ リスクの未然防止・問題点の最小化にも努める。 ◆ 監査役監査(往査)の(事前)資料、または、代表取締役との面談時の参考情報の一つとして活用。 内部監査部門の監査結果を、監査役監査(取締役の職務執行監査)の一助とする。例えば、子会社の数が多い会社において、国内グループ子会社への往査結果(監査結果)情報または、 |
海外グループ子会社の往査結果(監査結果)を入手し、当該監査結果を監査役監査に活かしていくことは、組織的かつ実効的・効率的な監査役往査を行ううえで有効な手段になると考えられる。 (4) 監査役監査結果の伝達 ① 伝達する時期 内部監査部門からの監査の進捗状況・監査結果の報告聴取時に、必要に応じて伝達する。 ② 伝達する内容 監査役監査において発見した事象で、内部監査部門の監査の実効性・効率性が向上すると思われる事項、重要なリスク情報、社外監査役の専門的な知見(弁護士・会計士・他社役員等)を活かした監査意見、または、確認しておいてもらいたい事項(例えば、監査役監査において指摘した事項の改善状況等) ③ 組織的かつ効率的・実効的な監査役監査活動を行うためのポイント 監査役監査において発見した問題点・留意点等について意見交換を行うことにより、ア. 内部監査部門の監査の実効性・効率性の向上を図る。 イ. 監査役監査の実効性・効率性の向上を図る(可能な部分は、内部監査部門の監査結果に依拠し、監査範囲の網羅性を高める)。 ウ. リスク発生の未然防止・リスクの拡大等を防ぐ。 (5) 内部監査部門とのその他の連携 ①定例月次会議の開催:内部監査部門と緊密な連携を保ち、組織的かつ効率的な監査を実施するためには、監査役会と内部監査部門が定期的な会議体において緊密な情報交換をするとよい。例えば、内部監査部門長が監査役会に出席し、内部監査結果等について執行側だけでなく監査役会へも定期的な報告があることが望ましい。なお内部監査部門が執行側・監査役会の双方に報告することは、一般的にはダブル・レポーティング(報告)・ラインと呼ばれる。 ②特別調査の依頼:重大な不祥事の原因究明及び、詳細な背後関係、事実関係の調査等 (6) 期末における内部監査部門の監査結果等の活用のポイント ① 時期 監査役監査報告を作成する前 ② 方法 通期の監査結果(総括)を確認することにより、監査役監査結果との齟齬又は認識の違い等がないか確認する。 【留意点】 ア. 監査役監査が取締役の職務執行を監査する立場である以上、内部監査部門が執行側(経営者)直属の独立監査機関であるケースが多い点に留意をし、対応する。 イ. 内部監査部門の活動に同行し、会議体において出席または情報交換することで、内部監査部門による内部統制システムのチェック機能の相当性を監視・検証することが可能である。内部監査部門の体制が不十分であると判断した場合、必要に応じて、代表取締役・取締役会に、内部監査部門の体制整備(要員補充等)について進言することに留意する。例えば、監査の進捗状況が遅れている場合、その理由について確認し、以下のような対応をとることが望ましいと考えられる。 ◆ 監査の人員が不足している場合、人員の補充等を執行側に要請する。 ◆ 被監査部門の協力体制が不十分(非協力的)である場合、当該被監査部門を管掌する役員に、状況の改善を申し入れる。 3.内部監査部門等(内部監査部門以外)との連携 「3 つのディフェンスライン」で定義される組織機能のうち、コンプライアンス統括部門、リスク管理部門等の「第 2 のディフェンスライン」に属する部門または所属について、「監査役が必要と認める内部統制部門」として、監査役会が定期的かつ随時に報告を聴取することは監査役監査を実効的・効率的に行う上で有効であると考えられる。 |
スタッフ業務のポイント | 1.日程調整 ① 内部監査部門からの監査計画の説明聴取、内部監査部門への監査役監査計画の伝達、期中における面談の日程調整を行う。 ② 監査役会で実施している場合、監査役会の開催予定日を内部監査部門に連絡し、内部監査部門長が出席可能な日時を確認する。 ③ 監査役監査に内部監査部門が同行する場合、往査先の選定や日程などを調整する。 ④ 日程調整は、概ね 1 ヶ月前を目途に行うことが望ましい。 2.資料の事前配付 ① 意見交換に先立ち、内部監査部門から資料を提出させ、各監査役に配付する。 ② 内部監査部門に提供する資料について常勤監査役と相談する。 3. 監査役の往査時の資料として活用 ① 内部監査部門が監査した被監査部署の監査結果・内部調査資料等の内部資料、監査役の往査日程に合わせて準備し、内容を取りまとめて往査する監査役に配付する。 ② 監査役の関係会社往査に際しても、(監査結果のみならず)内部監査部門の業務監査時のを入 手し、監査役に配付する。 |
スタッフとして留意する点 | ア. 内部監査部門の「内部監査報告書」その後の意見交換会、内部調査資料は、支社、関係会社の実態を監査役が把握する情報源になることに留意する。 イ. 内部監査部門の調査資料には正式な「内部監査報告書」をまとめるに至った調査事項や内部監査部門担当者の意見など、取上げられなかった裏の情報もあり、監査役の往査時の参考資料として有効な資料になることに留意する。 ウ. 内部監査部門を兼務している場合、内部監査部門所管の資料に対しては内部監査部門責任者の 許可のうえで対応する。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、監査委員会監査基準 18 条(内部監査部門等との連携体制)が規定されている。 また指名委員会等設置会社の場合、監査委員は取締役(取締役会の構成員)であるため、内部監査部門に対して、直接、指揮・命令権を有していると考えられるケースもあるが、内部統制システムを利用した組織的監査を行う上では、内部監査部門を取締役会や監査委員会の直轄下に置くことも検討する必要がある。さらに内部統制システムに「補助使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項(施規 112 条 1 項 3 号)が追加されたことを踏まえた対応も必要である。 監査等委員会は非常勤の社外取締役を中心とする組織であるため、組織監査を前提としている。内部監査部門との連携が監査役会設置会社以上に重要となるが、日本監査役協会「監査等委員会監査等基準」では、内部監査部門のみならず、内部統制部門(経理・財務セクション、コンプライアンス所管部門、リスク管理所管部門など)から内部統制システムに係る報告を受け、必要に応じて調査を求めることにより監査等委員会の監査の実効性を確保する体制の整備に努めることが求めら れている(基準 20 条 3 項)。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | ・ 監査計画は社長報告後に監査役会、内部監査部門が互いに共有を行う。監査役監査の計画は業務監査のリスク分析を参考にしている。監査目的の階層が異なるので、対象部所は同じでも重複することは少ない。 ・ 内部監査報告書は全て監査役に回覧され、内部監査部門から必要事項は口頭での報告も行っている。重要事項は監査役監査でさらに牽制することがある。監査役監査では、内部監査部門との共有した課題に基づいて、指摘・アドバイスを行うことがある。 ・ 常勤監査役と内部監査部門の担当役員等が定例連絡会を月 1 回程度開催している他、その他必要に応じて監査実施状況等の報告を受けている。 ・ 常勤監査役との意見交換会を定期的(原則月次)に開催し、「監査役監査計画の伝達」及び「内部監査計画の聴取」、「監査役監査の実施状況とその結果の伝達」及び「内部監査の実施状況とその結果の聴取」等として情報共有を実施する。 ・ 内部監査部門の監査計画、四半期報告を監査役会にて聴取する。また、常勤監査役が内部監査部門から月次で報告を聴取している内容を、事務局が取り纏め、監査役会にて報告する。 ・ 監査役スタッフは、内部監査部門の保管情報に対しアクセス権を持ち、必要に応じて閲覧できる。また、監査役の要望に応じ、随時提供する事が了承されている。 ・ 月 1 回の内部監査部門ミーティングに監査役スタッフが出席し、意見を述べるとともに情報を収集している。 ・ 内部監査部門より内部統制の整備・進捗報告を受けている。また、財務部門、経理部門からは財務・会計処理に関する重要な事項の報告、法務部門へは取締役会に関する手続、内容に関して指摘を行い報告や回答を受ける。 ・ コンプライアンス本部部門・リスク管理部部門・監査部内部監査部門・ITSRC(Security Risk Compliance)部部門を内部統制部門とし、常勤監査役との定期的な意見交換会を実施している。 ・ ①子会社取締役からの月次レポートにより、子会社の情報は共有される。②子会社の監査役か |
ら子会社監査情報を入手する。これは内部監査部門とも共有されている。③子会社監査役とも意見交換の場を設けており、情報を共有している。また、本社監査役の子会社監査に対しても協力や意見交換をしており、監査が重複しないように工夫をしている。④他にはリスクマネジメント委員会や J-SOX 報告会により子会社の内部統制の報告を受ける。 ・ 子会社との意思疎通及び情報の交換としては、子会社の内部監査部門と監査役・監査等委員とのミーティングが考えられる。 ・ 監査役実地監査及び内部監査の計画及び実行の段階で、実施スケジュール、実施対象、監査チ ェックリスト等を突合し、効果的な監査を実施している。 | |
その他特記事項 | |
参考文献 | 日本内部監査協会 CIA フォーラム研究会報告[2016]「監査役会と内部監査部門の理想的な関係」。 プロティビティ LLC[2014]『世界の内部監査』第 10 号。 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | その他、監査役の職務を適切に遂行するための意思疎通、情報収集等 会計監査人との連携 | 施規 105 条 2 号、法 340条・344 条・397 条・399条、計規 127 条・130 条・131 条、金商法 193条 3、基準 24 条 2 項・ 36 条②・38 条・47 条 CG コード 3-2-② |
監査業務支援ツール | ||
監査役業務のポイント | 1.会計監査人と連携する目的 (1)会社法等の権限・義務を履行するため 監査役は、会社法に規定された以下の監査役の権限・義務を履行するため、常日頃から会計監査人と面談し、意見交換・情報交換を行うなど会計監査人との連携を密にすることは重要となる。 ① 会計監査人の選任・解任・不再任に関する議案の内容の決定権(法 344 条) 会計監査人との連携を通じて、会計監査人の監査の方法の相当性・会計監査人の独立性について、監視・検証することになる。監査役(会)は、株主総会で会計監査人の選任等に関する議案の内容について「説明責任」を負うことになる。 ② 会計監査人の解任権(法 340 条) 会計監査人との連携を通じて、法 340 条に規定される事象に抵触しないか確認すること になるが、特に、同条第 1 項第 1 号の「職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき」に留意する必要がある。 ③ 会計監査人の報酬等に関する同意権(法 399 条) 会計監査人との連携を通じて、過年度の会計監査人の監査の実施状況と今年度の監査計画の妥当性等について確認することになる。 ④ 会計監査人からの報告聴取権・徴求権(法 397 条 1 項・2 項・3 項) 会計監査人が、その職務を行うに際して、取締役の不正行為等を発見した場合、遅滞なく、監査役に報告する義務がある。また、監査役は、必要に応じて、会計監査人から報告を求める権利がある。 ⑤ 会計監査人の監査報告の内容の通知を受ける権限(計規 130 条) 監査役(特定監査役)は、会計監査人から、会計監査報告の内容を通知される権限(会計監査人の義務)がある。 ⑥ 会計監査人の職務遂行に関する事項の通知を受ける権限(計規 131 条) 監査役(特定監査役)は、会計監査報告の内容の通知を受ける際、「会計監査人の職務遂行に関する事項」の通知を受ける権限(会計監査人の義務)があるが、期初・期中における監査役と会計監査人との面談時において、説明を受けることもある。 ⑦ 会計監査人の監査の方法と結果に係る監査報告を作成する義務(計規 127 条) 会計監査人の監査の方法と監査の結果の相当性を判断するためには、期初・期中における会計監査人からの報告(意見交換・情報交換)を通じて、相当性判断のための根拠 (エビデンス)を積み重ねていくことが必要となる。 | |
(2)効率的・実効的監査のため ① 会計監査人は、リスク・アプローチの手法により、自社の環境変化・内部統制システムの構築・運用状況等について評価・判断し、会計監査計画を作成しているので、会計監査人が評価・判断する自社の内部統制システムの構築・運用状況、あるいは、会計監査人が監査の過程で把握したリスク等の情報を監査役が聴取し、監査役監査活動に活かしていくことは、監査役監査の実効性・効率性を高めることになる。 ② 監査役監査活動において把握した情報の中で、会計監査人の参考となる情報(例え ば、内部統制の構築・運用状況に係る問題点、代表取締役等の自社を取り巻く環境に係る認識・今後の経営方針等)を提供することは、会計監査の実効性・効率性を高めることになり、計算関係書類の監査を一部依拠することになる監査役にとって(計算 関係書類の監査は、一次的には職業専門家である会計監査人が行う)、会計監査人の監査の実効性・効率性が向上することは、有意義であると考える。 | ||
(3)その他の目的 平成 27 年 6 月 30 日に閣議決定された「『日本再興戦略』改定 2015-未来への投資・生産性革命-」において「IFRS任意適用企業の更なる拡大促進」が提言されるなど、 |
IFRSに関する動きは着実に進められているが、IFRSの導入は、単に「会計処理の変更」にとどまらず、経営戦略の変更、すなわち、監査役監査環境の変化にも繋がることが想定される。監査役は、会計監査人との意見交換・情報交換を通じて、IFRSを採用することによる自社への影響について把握しておくことは重要であると考える。 2.会計監査人との連携方法 (1)期初 ① 会計監査人からの監査計画の説明を聴取 会計監査計画の妥当性の確認と監査役(会)による会計監査人の監査報酬の同意を行うための情報(判断基準のもととなる情報)の入手、並びに会計監査人の自社の内部統制システムの評価等の確認を目的として実施。具体的な監査役の業務のポイントは、 「【M36】会計監査人からの監査計画の説明受領」を参照のこと。 ② 監査役会の監査計画について提供・説明 会計監査人に監査役監査計画を理解してもらうことにより、監査役監査の補完・協力関係を構築すること等を目的として実施。具体的な監査役の業務のポイントは、 「【M37】会計監査人への監査役監査計画の提供・説明」を参照のこと。 (2)期中 ① 会計監査人の四半期報告書レビュー結果の説明聴取 取締役が適切に四半期報告書を作成しているか(取締役の執行監査の一環)、会計監査人の監査が適切に実施されているか等を確認するために実施。具体的な監査役の業務のポイントは、「【M38】四半期報告書・半期報告書の監査」を参照のこと。 ② 会計監査人の実証手続きへの立ち会い 会計監査人が適切な監査を実施しているか確認するために実施。具体的な監査役の業務のポイントは、「【M39】会計監査人の実証手続への同行・立会」を参照のこと。 (3)期末 ① 監査経過報告の聴取 期末決算短信公表前に、会計処理等の論点整理のため実施。具体的な監査役の業務のポイントは、「【M50】会計監査人からの会計監査報告の受領」を参照のこと。 ② 会計監査人の監査報告の内容の通知を受領 会社計算規則第 130 条の規定に従い実施。通知と共に会計監査の概要等について報告を受け、会計監査人の監査の方法と結果の相当性の判断材料とする。具体的な監査役の業務のポイントは、「【M50】会計監査人からの会計監査報告の受領」を参照のこと。 ③ 会計監査人の職務遂行に関する事項に係る通知を受領 会社計算規則第 131 条の規定に従い実施。会計監査人の独立性・監査体制の整備状況等を確認するために実施。具体的な監査役の業務のポイントは、「【M51】会計監査人の職務遂行に関する通知の報告受領」参照のこと。 ④ 有価証券報告書・財務統制報告に係る内部統制報告書の監査結果の聴取 取締役が適切に有価証券報告書・財務報告に係る内部統制報告書を作成しているか (取締役の執行監査の一環)、会計監査人の監査が適切に実施されているか等を確認するために実施。具体的な監査役の業務のポイントは、「【M56】有価証券報告書・内部統制報告書の監査」を参照のこと。 (4)その他の連携(随時) 会計監査人からの報告聴取 監査役は、期初(会計監査計画策定時)・期中(四半期報告書レビュー結果)・期末(会計監査報告の受領)以外にも、例えば、経理担当役員との面談で会計処理等に関して疑問が生じた場合、必要に応じて会計監査人から説明を聴取する。 ※1. 会計監査人の選任・解任・不再任に関する議案の内容の決定権(法 344 条)に関する連携方法(監査活動)については、「【M81】会計監査人の選任・不再任議案の内容の決定」を参照のこと。 ※2. 会計監査人の解任権(法 340 条) に関する連携方法(監査活動)については、 |
「【M82】会計監査人の解任」を参照のこと。 ※3. 会計監査人の報酬等に関する同意権(法 399 条)に関する連携方法(監査活動)については、「【M75】会計監査人の監査報酬等の同意」を参照のこと。 (5)会計監査人との連携に係る具体的なスケジュールについて 日本監査役協会 会計委員会が平成 26 年 4 月 10 日に公表した「会計監査人との連携に 関する実務指針」第 5 連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示を参考にして下さい。 <http://www.kansa.or.jp/support/library/accounting/kaikei2014.html> 3 月末決算会社を一例とした主な内容を挙げると以下のとおり。 | ||
○月:会計監査人と監査契約の新規締結時 | ||
○月:会計監査人と監査契約の更新時 | ||
7 月:会計監査人が策定した監査計画の説明聴取及び監査役監査計画の提供 | ||
8 月:第 1 四半期報告書レビュー結果の説明聴取 | ||
11 月:第 2 四半期報告書レビュー結果の説明聴取 | ||
2 月:第 3 四半期報告書レビュー結果の説明聴取 | ||
3 月:期末の会計監査人実証手続きへの立ち会い | ||
4 月:期末監査結果の経過報告に係る報告聴取 | ||
5 月:会計監査人の監査報告受領。財務報告に係る内部統制報告書の経過報告聴取 | ||
6 月:必要に応じて、有価証券報告書・財務報告に係る内部統制報告書の監査結果の 聴取(金商法に基づく監査人としての監査) | ||
随時:会社に重要な影響を与える事項が判明した場合は、会計監査人及び監査役等双 方で情報並びに意見交換する必要がある | ||
随時:不正リスク対応基準に基づく対応 | ||
随時:法 397 条 1 項及び金商法 193 条 3 その他法令に基づく対応 | ||
スタッフ業務のポイント | 期初・期中・期末における連携については、①日程調整、②事前準備、③監査調書・面談録の作成等が考えられるが、具体的には、以下の項目を参照いただきたい。 1.期初におけるスタッフ業務:「【M36】会計監査人からの監査計画の報告受領」、「【M37】会計監査人への監査役会監査計画の提供・説明」 2.期中におけるスタッフ業務:「【M38】四半期報告書・半期報告書の監査 3.期初におけるスタッフ業務:「【M50】会計監査人からの会計監査報告の受領」、 「【M51】会計監査人の職務遂行に関する通知の報告受領」、「【M56】有価証券報告書・内部統制報告書の監査」 | |
スタッフとして留意する点 | ||
①機関設計の違いによる対応(指名委員会等設置会社) ②機関設計の違いによる対応(監査等委員会設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 34 条(会計監査人の選任等の手続)、35 条(会計監査人の報酬等の同意手続)、41 条(会計監査人との連携)が規定されている。 なお、指名委員会等設置会社においては、定期的に監査委員会で会計監査人より報告を受ける形式が多いため、スタッフ主導で監査委員と会計監査人のスケジュール調整を行い、監査委員会の年間議案スケジュールに組み込むケースが多い。その他、必要に応じて常勤の監査委員やスタッフで定期的に会計監査人との会合を年間スケジュールに組み込むケースもある。 監査等委員会設置会社においても、監査等委員会は、会計監査人の選任・解任・不再任の議案内容の決定(法 399 条の 2)、会計監査人の解任(法 340 条)、会計監査人の報酬への同意(法 399 条)、会計監査人からの報告の聴取(法 397 条)の権限を有しており、その職務を遂行するた めに会計監査人と定期的な接触を行う必要がある。また、実効的で効率的な監査を実施するために、会計監査人との連携が必要とされている(監査等委員会監査等基準 44 条)。 | |
各社の工夫・事例 | ||
その他特記事項 | ||
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | その他、監査役の職務を適切に遂行するための意思疎通、情報収集等 三様監査会議 | 施規 105 条 2 項 基準 24 条 2 項 |
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1.三様監査会議の目的 | ||
監査役(会)、会計監査人、内部監査部門(以下、「三様監査機関」という)は、業務執行から | ||
独立した立場で「監査」する職責を有している点で共通しており、三様監査機関が連携を図 | ||
ることは、コーポレート・ガバナンスの充実を図るという市場の要請に応える手段の一つと | ||
して有効である。このことは、有価証券報告書の「コーポレート・ガバナンスの状況等」の | ||
記載事項において、「内部監査、監査役監査、会計監査の相互の連携状況」について記載が求 | ||
められていることにも表されていると考えられる。 | ||
本節では、「監査役と内部監査部門との連携」、「監査役と会計監査人との連携」について記 | ||
載してきたが、テーマ(会議のテーマ)によっては、監査役が内部監査部門・会計監査人と | ||
それぞれ別に意思疎通・情報交換の場をもつより、三様監査機関が一堂に会して行う「三様 | ||
監査会議」を活用することにより、監査役監査の実効性・効率性がアップすることも考えら | ||
れる。 | ||
また、内部監査部門・会計監査人と直接面談する機会が少ない社外監査役にとって、三様 | ||
監査会議に出席し、内部監査部門・会計監査人との質疑応答・意見交換を行うことは、有効 | ||
であると考えられる。 | ||
以下(「三様監査会議に関するポイント」において、三様監査会議を実施している会社の事 | ||
例に基づいて三様監査会議の連携の方法について記載している。三様監査会議については「監 | ||
査役と会計監査人との連携、あるいは、監査役と内部監査部門との連携をしっかり行ってお | ||
り、三様監査会議を開催するまでもない」という会社もあろうかと推測するが、各社の実情 | ||
に合わせて開催する際の参考にしていただきたい。 | ||
2.三様監査会議に関するポイント | ||
監査役業務のポイント | (1) 監査計画作成時の連携 三様監査の今期の監査方針、監査計画、重点監査項目など忌憚のない意見交換を行う。 | |
① 内部監査部門からの監査計画説明聴取時(3 月) | ||
ア. 各事業年度(or 次年度)における業務監査及び内部統制監査に係る監査計画について、 | ||
(現在進行中の)今年度の会計監査・監査役監査で把握した問題点への対応等が反映され | ||
ているか確認し、三者で意見交換を行い、必要に応じて、監査対象・監査項目の追加等 | ||
について要請若しくは助言する。 | ||
イ. 三者での意見交換では、問題点の重大性・緊急性等に係る会計監査人・内部監査部門の | ||
見解を聴取し、監査役監査を行うか、あるいは、内部監査部門の監査結果に依拠するか | ||
等について(会計監査人の意見等も踏まえ)判断し、次年度の監査役監査計画に反映させ | ||
る。また、必要に応じて、次年度の会計監査人の監査計画(往査等)にも反映させること | ||
を要請する。 | ||
ウ. 財務報告に係る内部統制の構築・運用状況に関する内部監査の監査対象・監査手続き・ | ||
監査目的等について、監査人(会計監査人)による外部監査との調整を行い、必要に応 | ||
じて、監査役からも監査対象等の追加について要請し、三者で協議する。監査役は、内 | ||
部統制の構築・運用状況の監査に係る監査計画を策定する際に、内部監査部門・監査人 | ||
(会計監査人)の監査計画(対象・方法・日程等)を参考にし、内部監査・外部監査へ | ||
の立会計画を作成する。 | ||
② 会計監査人からの監査計画説明聴取時(7 月) | ||
ア. 各事業年度(or 今年度)における会計監査に係る監査項目・監査方法(往査先)等の説明 | ||
を聴取し、内部監査部門の往査先との重複・補完関係等を三者が把握することにより、 | ||
監査役監査・内部監査計画への反映等により、監査の実効性・効率性を向上させる。 | ||
イ. 各事業年度(or 今年度)における内部統制監査に係る監査体制、監査項目、監査方法等 | ||
の説明を聴取し、内部監査部門からの見解も踏まえ、当該計画の妥当性(実効性)等を判 | ||
断するうえでの一助とするとともに、必要に応じて、監査計画の修正等も要請する。 |
ウ. 内部監査部門の 6 月末までの監査の状況を踏まえ、会計監査人の監査計画に追加してほしい事項がないか確認する。当該事項がある場合、三者で意見交換を行い、会計監査人の監査計画、あるいは、監査役監査計画に監査実施項目として追加するか否か検討を加える。 ③ 監査役会からの監査役監査の方針。計画の説明時(7 月) ア. 監査役監査計画について説明し、監査の重点項目等に関して三者で意見交換を行い、会計監査人・内部監査部門に監査項目・日程について認識してもらい、監査役監査への協力を要請する。 イ. 内部監査部門の 6 月末までの監査の状況を踏まえ、監査役監査計画に反映させる必要があるか、あるいは、会計監査人の監査に依拠できるか等について意見交換を行う。 ウ. 監査役の往査計画先について、協議のうえ、必要に応じて会計監査人若しくは内部監査部門の帯同を要請する。 (2) 期中・期末の連携 ① 会計監査人より、期中監査、四半期レビュー、期末監査、往査等及び内部統制報告書監査、有価証券報告書監査の状況及び結果の報告を聴取し、会計監査人の監査の方法及び結果の相当性を判断する一助とする際、必要に応じて、内部監査部門の見解等を参考にする。 ② 会計監査人より、不正の有無及び内部統制上の重要な欠陥の有無等について報告を受けることにより、取締役の職務執行に係る監査の一助とする。また、疑義がある事象が確認された場合、内部監査部門と三者で検討を加え、必要に応じて、内部監査部門に特別調査を依頼する。 ③ 内部監査部門より、期中における業務監査及び内部統制監査の実施状況と結果の報告を受け、子会社を含む取締役の職務執行に係る監査の一助とする際、必要に応じて、会計監査人の見解等を参考にする。 ④ 会計監査人若しくは内部監査部門から報告を受けた子会社に関する不備事項について、三者で協議し、必要に応じて監査役から子会社を管理する役員・担当部署に意見を述べる。また、監査役が子会社の監査役を兼務している場合、子会社の取締役会等において意見を述べ、その是正状況について、会計監査人・内部監査部門からも報告を受ける。 ⑤ 監査役が、自身の監査活動の結果、疑義を有している事項や注視・着目している事項、その他リスクと認識している事項等について、会計監査人や内部監査部門に説明を求め、又は、必要に応じて調査等を要請する。 ⑥ 監査役が自身の監査の結果、会計監査人や内部監査部門と三者で共有することにより、監査の実効性・効率性が向上すると思われる事項について、説明若しくは意見を表明し、情報及び意見の交換を行う。 ⑦ 監査役が把握した会計上の疑義等について、三者で情報を共有したうえで、会計上の処理等については会計監査人に、その原因となっている事実(内部統制上の不備の有無等)の確認については内部監査部門に要請する。 ⑧ 内部統制システム監査において、疑義等が生じた事項について、会計監査人・内部監査部門の認識等について意見交換を行ってもらい、両者に認識の差がないか等について確認し内部統制システム監査の一助とする。さらに、重要な欠陥若しくはそのおそれのある不備が発見された場合、三者で情報を共有化したうえで、必要に応じて内部統制推進部門のほか、関連部門を交えてその原因の把握と是正計画等について協議する。また、 その結果について、監査役・内部監査部門・会計監査人が同じ認識であるか確認する。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.日程調整 監査役全員、会計監査人全員、監査室長が出席可能な日時、場所の設定を調整する。特に、社外監査役や会計監査人(特に、業務執行社員)の日程確保のため、できるだけ早期(3 月期決算会社の場合、2 月までに)に年度計画(三様監査会議開催日程)を提示する。 2.会議の運営 ① 三様監査会議の開催通知を監査役会議長の承認の下、関係者に発信する。 ② 会計監査人、内部監査部門に対し、会合時の報告事項等を事前確認する。 ③ 重要な事業所往査があった場合、当該往査の報告を議題の一つとするよう要請する。 |
④ 主に常勤監査役と、会合時に説明若しくは意見表明する事項について事前協議する。 ⑤ 口頭のみの報告は避け、問題のない限り配付資料を用意する。 ⑥ 三様監査会合の議事録を作成する。 | |
スタッフとして留意する点 | 年間の会議開催日を早期に確定させるために、会社の取締役会の年間予定を 1 月まで(3 月期決算会社の場合)には確定するよう担当部門に促し、監査役会開催予定と合わせて年間の会合日程案を策定し、会計監査人に対し日程確保を促す。 |
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | |
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | ア. 四半期毎、期末監査終了後、株主総会後翌月の 6 回程度の開催している。 イ. 期中を通じ必要の際は適宜、意見交換を実施している。その際、監査役スタッフ、内部監査部員、会計監査人のマネージャクラス等担当レベルが実務的に会合をもつことも有用。 ウ. 新事業年度開始前(期末の 2 ヶ月程度前)に、監査役会と会計監査人及び内部監査部門との定期会合(監査役会主催の三様監査会合)日程及び議題(報告を受けるべき事項等)を年度計画として作成し、監査役、会計監査人、内部監査部門と事前調整のうえ、期末以前に開催される三様監査会合にて、関係者に徹底する。 エ. 三様監査の意見交換会は新監査事業年度が始まる 7 月初旬に行うが、会計監査人とは四半期レビュー報告時に、内部監査部門とは毎月の意見交換の際と定期的な情報交換の場を設定する。 オ. 必要に応じて、内部統制推進部門も招聘し、内部統制に関する問題点・課題・改善状況等 について認識を共有化する。 |
その他特記事項 | 三様監査連携の必要性・重要性については、以下の基準・指針等にも記載されているので参照されたい。 ア. 「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(平成 17 年 3 月 31 日 内閣府令第 34 号) イ. 「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」Ⅲ3(5) ウ. 監査役若しくは監査役会又は監査委員会とのコミュニケーション」の一部改正について平成 21 年改正(日本公認会計士協会 監査基準委員会報告書第 25 号) エ. 監査役若しくは監査役会又は監査委員会と監査人との 連携に関する共同研究報告 (平成 21 年最終改正 (日本監査役協会 ・日本公認会計士協会)) オ. 会計監査人との連携に関する実務指針 平成 21 年改正(日本監査役協会 会計委員会)カ. 上場会社コーポレート・ガバナンス原則 平成 21 年 12 月改正(東京証券取引所) キ. 上場制度整備の実行計画 2009 平成 21 年 9 月(東京証券取引所) ク. 内部監査基準実施要領「内部監査と法定監査との関係」(日本内部監査協会)ケ. 内部統制報告制度に関するQ&A |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | その他、監査役の職務を適切に遂行するための意思疎通、情報収集等 その他の意思疎通を図るべき者との連携 | 施規 105 条 2 項 3 号 基準 3 条 4 CG コード 4-13② |
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監査役業務のポイント | 1.その他の意思疎通を図るべき者との連携の目的 ① 監査役は、施規 105 条 2 項 3 号において、職務を適切に遂行するため、当該株式会社の取締役や子会社の取締役等及びその他監査役が適切に職務を遂行するにあたり意思疎通を図るべき者と意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めなければならないとされている。 ② 監査役監査の観点から見れば、単に受動的に報告を求めるだけでなく、必要な情報を提供・交換できる対象者に対し、その意義を普段から周知し、非常時においても密な意思疎通(情報の提供・交換)ができる環境、報告を受ける体制を整えて、監査役監査の実効性を高める努力が求められているものだと言えよう。また、監査役は基準 12 条 3 項において必要と考えられる場合、外部専門家の助言を受け、その費用を会社に請求する権利も明記されている。 ③ その他の意思疎通を図るべき者の例としては、総務部門・法務部門、別途詳述している会計監査人や内部監査部門等のほか、外部専門家として各社業務の専門的分野に関係が深い弁護士、税理士、弁理士、社労士及び不動産鑑定士等も考えられる。これらの者から自発的な情報提供を受けることは、現実にはかなり困難なことであると推測されるものの、監査役監査における専門性を補完する対策の一つとしての連携、意思疎通が考えられる。 ④ 総務部門・法務部門は、取締役会及び株主総会の主管部署であることが多いことから、監査役は、監査役監査の対象となる事項について、適時かつ適切に監査役に報告が上がる体制を両部門と連携して整備し運用すべきである。 2.監査役の業務のポイント その他の意思疎通を図るべき者との連携は、法的に明文化された業務ではないため、各社の事情に合わせた運用が考えられるが、大きくは(1)連絡会の開催、(2)各種の懸案事項に関する個別相談・質問、(3)監査役会での報告等、がその具体的な業務となる。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.その他の意思疎通を図るべき者との連絡会開催におけるスタッフ業務 ① 連絡会開催の目的の明確化 目的としては情報把握、認識すり合わせ、相談、意見聴取等が考えられる。 ② 連絡会開催及び日程の調整 (プロセス例) ア. 開催の約 1 ヶ月前に日程を決定 イ. 開催の約 1 ヶ月前に進め方、内容に関し常勤監査役と打合せ ウ. 開催の約 3 週間前に連絡会での進め方について対象部門、外部専門家等と打合せエ. 必要に応じ、連絡会に参加する社外監査役に内容等に関し事前説明実施 ③ 連絡会において使用する帳票・証跡の準備連絡会で議題とする資料 等 2.各種懸案事項に関する外部専門家への個別相談等 ① 外部専門家への個別相談等を行う内容の確定 (相談内容例:顧問弁護士の例) ア. 株主総会想定問答に対する回答作成 イ. 株主代表訴訟における不提訴理由書作成ウ. 訴訟事案への対応 エ. 各種作成文書内容のリーガル・チェックオ. 各種規程類の見直し ② 外部専門家との顧問契約の締結 ア.業務内容の確認(顧問弁護士の例) |
法律相談、法令等の調査、書類の作成、示談交渉、書面による鑑定、株主総会等の指導、登記の申請、訴訟・調停・保全処分等の裁判上の手続きの代理、その他監査役会が特に委任した事項等 イ.顧問料の確認、検証 (タイムチャージ型、成功報酬型、手付金の要否 等)ウ.法律顧問契約書の作成、保管 3.総務部門との連携 (1) 取締役会に関する事項を監査役に通知・報告する体制の整備・運用 ① 取締役会の年間開催日程(開催場所を含む)を事前に把握し、監査役会日程と調整のうえ、取締役会及び監査役会の日程(開催場所を含む)を早期に監査役に通知する。 ② 取締役会に上程する議案について、事前に関係部門より目的その他内容を聴取し、社外監査役に対し、必要に応じて説明を行う。 ③ 取締役会に陪席し、後日、監査役の発言の内容等が議事録に適切に反映されているか検証するとともに、必要に応じて、取締役会議事録に関する記載内容の調整を行う。 ④ 不祥事事件等に関する報告を、取締役会における報告案件とするよう働きかけを実施(取締役会付議基準はあるものの、執行側の裁量の範囲が大きいため) (2) 株主総会関係・株式取扱関係に関する事項を監査役に報告する体制の整備・運用 ① 株主総会開催 3 ヶ月程度前に、準備スケジュールの報告を受け、逐次、その後の進捗状況を確認する。 ② 招集通知状の内容の調査及び議決権行使書面返送状況、株主提案若しくは質問の有無等について、監視、検証するために必要な報告を適時に受け、監査役に報告する。 ③ 開催当日における議決権行使結果を確認し、臨時報告書を検証するとともに、大株主の状況について、適宜に報告を受け、異常な移動等の有無等を監査役と検証する。 (3) 寄付・献金等無償の利益供与関係に関する事項を監査役に報告する体制の整備・運用 ① 寄付・献金等の支払実績に関して、担当取締役名の文書による定期報告を監査役が聴取する機会を年 2 回(以上)設ける。 ② 法務部門、経理部門の提供資料と運用されているイントラネット上のDB 資料と突合し、検証を行う。 (4) 子会社を含む以下の様な緊急時の状況を適時適宜に監査役に報告する体制の整備・運用事例 ア. 流行疾病発生の状況 イ. 労働災害・重要生産設備停止・事業所における顧客の重大な事故等の発生等に関する緊急報告等 4.法務部門との連携 (1) 以下に関する事項を適時、適宜に監査役に報告する体制の整備・運用ア. 紛争関係:事例 ◆ 子会社を含め係争事案(民事・刑事・行政の各訴訟・労働訴訟・PL訴訟等)が発生又は 発生のおそれのある事件に関する報告 ◆ 経営に重大な影響のあるクレームの発生及び当該クレームに伴う法的支援若しくは紛争処理の状況・取引先倒産対応・不良債権回収に係る法的支援状況等 イ. コンプライアンス関係・リスクマネジメント関係:事例 ◆ 子会社を含む法令違反のおそれのある事象の有無 ◆ 重要な契約の締結に係るリスク・コンプライアンスプログラムの作成及び教育の状況 ◆ リスクマネジメントに係る情報・子会社を含む重要な法律相談の有無等 ウ. 経営法務関係:事例 M&Aに係る法的課題・事業再編に係る法的課題・独禁法、個人情報保護法等に係る子会社を含む事業リスクの状況・法改正に伴う子会社を含む対応状況等 エ. 知的財産関係(法務部門が主管の場合):事例 特許出願状況・ライセンス契約・技術提携状況・特許侵害等の有無・偽造品対策の状況等 |
(2) 監査役(会)への報告及び情報・意見交換に関する体制の整備・運用 ア. 会社法その他監査役監査に必要な法律・規制等に関する情報の適時受領と情報・意見交換 イ. 監査役よりの法的質問に対する迅速な法務部門の対応 ウ. 監査役会において、年 1 回定期報告記載の確認を依頼(議事録閲覧請求に備えて) | |
スタッフとして留意する点 | ア. 当方からの相談内容に対し、外部専門家が効率的に対応できるよう、論点整理等事前の準備が重要・文章やメールでのやり取りが主体となることから、当方の意向が正確に伝わるよう、文章表現には留意する。 イ. 日頃から懸案事項に関し相談(業務委託)できる外部専門家の事務所を確保しておく。 ウ. 株主代表訴訟が提起された場合には、被告取締役や補助参加人(会社のこと)が起用する法律事務所とは異なる法律事務所を起用する必要があり、留意が必要。 エ.依頼の形式にかかわらず、企業などから独立した立場で、企業などのステークホルダーのた めに、中立・公正で客観的な調査を行う第三者委員会についても同様。 |
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | |
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | 連絡会の開催にあたり、以下を実施(顧問弁護士の例)。 ア. 法務の専門家である社外監査役もメンバーに加え、法規部門も同席。 イ. 連絡会での進行をスムーズに進めるため、法規部門に主な訴訟案件一覧表の作成を依頼。ウ. 当社が係る主な訴訟案件に関する情報共有・認識のすり合わせのほかに、この連絡会の 場を使い、監査役監査業務に関するフリーディスカッションを実施。 エ. スタッフとして、トピックスとして取上げるべきテーマの探索、情報収集に日頃から留意。 オ. 個別相談等を行うにあたり、面談時間に比例した弁護士費用支払いとなるため、事前に事案関連書等をメールにて送付し、効率的な面談が行えるよう工夫している。 総務部門・法務部門との連携にあたり、以下を実施。 カ. 総務部門より受けた無償の利益供与に関する報告内容は、別途受ける経理部報告と突合わせをするとともに、毎月行うりん議決裁書及び帳簿閲覧結果との著しい相違の有無を検証する。 キ. 当月開催の取締役会議事録を翌月末の監査役会で確認するため、議事録作成の工期を総務と取り決めている。 ク.法務部門に監査役議事録に関する記載の確認を依頼。 |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | その他、監査役の職務を適切に遂行するための意思疎通、情報収集等 内部通報制度の有効性の確認 | 施規 100 条 3 項 4 号ロ及び 5 号 施規 105 条 2 項 基準 20 条 5 CG コード 2-5① |
監査業務支援ツール | ||
1.目的 | ||
① 監査役は、取締役の職務執行の監査の一環として、取締役・内部統制部門長等との面談を | ||
実施するが、内部通報制度は、グループ会社(企業集団)を含む一般社員からの情報、例 | ||
えば、取締役の法令違反等の情報を入手する手段として有用なルートとなっている。 | ||
② 「内部通報制度によって上がってくる情報が、確実に監査役の耳に届くようになっている | ||
か。」また「監査役へ報告した者が、報告したことを理由に不利益を受けることがない体 | ||
制が確立しているか」といった観点で、内部通報制度の有効性について確認することは、 | ||
監査役の監査環境の整備として重要である。 | ||
2.監査役の業務のポイント | ||
監査役業務のポイント | ① グループ会社(企業集団)も含めて内部通報制度が活用され、法令違反あるいは不適切行為等の不正行為の早期発見及び防止のための再発防止策が実施されるなど、内部通報制度 | |
が適切に運用されているかどうか以下の点を中心に確認する。 | ||
② 内部通報による情報を集約している担当部署から適宜(例えば四半期に1度)、通報内容及 | ||
び通報後の対応等について聴取する。 | ||
③ 内部通報が放置されることのないよう適切な事後対応策がとられているか、担当部署から | ||
聴取する。 | ||
ア. 通報内容が経営陣にまで報告され共有化されているか、担当部署から聴取する。 | ||
イ. 内部通報者が通報を行なったことで不利益な取り扱いを受けていないか確認する。ま | ||
た、内部通報制度がグループ会社(企業集団)も含めて社内通達やポスター等で情宣さ | ||
れ、周知徹底されて活用されているか確認する。 | ||
④ 年度別の通報件数の推移、通報内容、内部通報者属性分類、通報手段等を聴取して、担当 | ||
部署が適切な対応を行っているか確認する。 | ||
スタッフ業務のポイント | ① 内部通報の内容が監査役に報告される体制を担当部署と調整し構築する。 ② 監査役に報告されるべき通報内容が漏れなく、定期的に報告されるよう担当部署と調整し、通報件数・内容、事後対応等について確認する。 ③ 特に、取締役や執行役員を対象とする案件については漏れなく監査役に報告されるよう整備する。また、監査役へ報告したことを理由に不利益を受けていないか確認し、状況により適宜、追跡調査を行う。 ④ 通報内容のうち、監査役から引き続きフォローするよう指示があった場合、その後の進捗 状況をタイムリーに監査役へ報告する。 | |
スタッフとして 留意する点 | ||
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 17 条(監査委員会への報告に関する体制等)が規定されている。 | |
②機関設計の違いによる対応(監査等委員会設置会社) | 内部通報制度は、会社法施行規則に規定する監査等委員会報告体制(施規 110 条の 4 第 1 項 4号・5 号)の一部と位置づけられので、監査等委員会設置会社の取締役会は、内部通報制度の整 備、運用状況の監視の義務を負う。 | |
各社の工夫・事例 | ① 内部通報制度は、通常、執行側が通報窓口となり、監査役が通報内容を上述のとおり確認しているが、監査役室が外部弁護士からの通報窓口となり、以下のプロセスで運用している会社の例もある。 ア. 内部通報のプロセス: 通報者→社外弁護士→監査役室・監査役→関係部署→監査役室→社外弁護士→通報者イ. 当該内部通報制度のポイント ◆ 通報者から社外弁護士(当社の顧問弁護士ではない)への連絡は原則として実名、社外弁護士から監査役(室)への連絡は通報者が匿名となっている。 ◆ 通報のうち、取締役等の法令・定款違反等に繋がる(おそれがある)情報については、監 |
査役(室)が中心となって調査を行い、そうでない通報は関係する部署に調査を依頼して、調査結果等を社外弁護士に報告している。 ◆ メリットは、内部通報制度で上がってくる情報をすべて把握することができることがあ げられ、また、執行側から独立した監査役(室)が窓口ということで、通報者側に「徹底した調査が期待できる」と考えられている側面もある。デメリットは、内部通報件数が多くなると、監査役(室)の通常業務に支障をきたすこともある。 ◆ 内部通報に関する情報は、定期的に取締役会に報告されており、必然的に監査役が確認 できる体制になっている。 子会社の内部通報についても、前記に準じ、親会社の子会社主管部署を通じて監査役へ報告される。 ② 子会社の内部通報についても、上記に準じ、親会社の子会社主管部署を通じて監査役へ報告されている。 ③ 重要な内部通報に関して審議する会議体に常勤監査役が出席し、必要に応じて意見を述べ、 監査役会で概要を報告している。 | |
その他特記事項 | ①半期に 1 回、関係部から通報件数・内容、事後対応について、監査役会等で報告を受ける。 ②社内の内部通報窓口の他に、監査役会の要望で社外通報窓口(法律事務所)を設置している。 ③対象案件別ホットライン(参考)。 ④コンプライアンスホットライン:業務上の法令違反・不適切行為、社内規程違反等。 ⑤人間尊重ホットライン:人権、セクハラ、パワハラ、残業等。 ⑥社外窓口:業務上の法令違反・不適切行為等(メールも可)。 |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 会計監査 会計監査人からの監査計画の説明受領 | 施規 105 条 2 項 基準 47 条 |
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1.会計監査人から監査計画について報告を受ける目的 会計監査人からの監査計画の聴取は以下の目的で実施される。 (1) 法第 399 条に規定されている、監査役(会)による会計監査人の監査報酬の同意を行う基本的な情報を入手するため。 (2) 会計監査人の監査計画説明聴取は、監査役が、会計監査人の監査の方法と監査の結果の相当性を判断するための始点となる場であり、会計監査人の監査計画についての疑問点や確認事項を聴取し、併せて意見交換を行うため。 (3) 当社の内部統制の整備状況・自社特有のリスク等を踏まえ会計監査人は監査計画を作成するので、会計監査人が把握する、上記ポイントを確認し、必要に応じて監査役監査活動に活かす等、監査役監査の実効性・効率性を高めるため。 | ||
監査役業務のポイント | 2.監査役の業務のポイント (1) 会計監査人からの監査計画説明聴取の時期 会計監査人からの監査計画の説明聴取は、株主総会終了後(毎年 7 月)に実施。なお、会計監査人が変更された場合、8 月にずれ込むことも考えられる。 (2)会計監査人からの監査計画説明聴取の実施方法 ① 監査役全員が会計監査人から聴取するケース 非常勤監査役の中に、公認会計士や税理士資格保有者がいる企業もあり、財務会計の知見を活かすため、監査役全員で説明を聴取する。 ② 常勤監査役が聴取し、監査役(会)に説明・報告するケース 常勤監査役が対応し、会計監査人から説明聴取の結果について取りまとめ、その結果を非常勤監査役に対し監査役会にて説明・報告する。 (3)「監査計画説明書」の確認 ① 監査役は会計監査の目的(以下 1)、2)の事項)が達成される監査計画となっていることを確認する。 1) 計算書類が公正妥当(適正な会計基準に則り)に作成される。 2) 企業の財務状況が正しく反映される。 ② 上記1)・2)について具体的には「監査計画説明書」の以下の「確認のポイント」の項目の内容について確認している。 | |
✍確認のポイント (1) 会計監査人の独立性 ① 公正不偏の態度の保持・独立性に関する根拠規則(例:日本公認会計士協会規則・監査法人方針・規則)が監査計画書内に記載されていることの有無等。なお、具体的な確認のポイントは、「【M51】会計監査人の職務遂行に関する通知の報告受領」を参照のこと。 ② 会計監査人から期末報告時に提出される「会計監査人の職務遂行に関する監査役への報告」に記載されている独立性に関する事項を参照のこと。 (2) 監査基準 ① 監査計画書内に「一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠する」旨の記載の有無等を確認する。 (例:会社法・金融商品取引法関連の法令、監査に関する品質管理基準等) (3) 監査のアプローチ ① 監査計画書内に記載されている「監査手法」の有無等を確認する。 (例:「全社的な内部統制」・「具体的な監査戦略」・「リスク対応手続き」・「監査手順」) (4) 重点監査項目 ① 前期からの懸案事項、会計基準の変更の有無のほか、繰延税金資産の回収の可能性等の個別の項目について確認する。また、前期より追加される項目等については、その内容、追加された理由等について確認する。併せて、重点監査項目を設定する際、会計監査人が認識していた自社のリスクについても確認する。 |
(5) 会計監査人の監査日程・監査人員・監査時間等 ① 監査日程(往査予定・往査対象場所)について確認する。 ② 内容別(監査計画作成に○時間、監査実証手続きに○時間)、場所別(支店に○時間、工場に○時間)に確認する。なお、内容別については、後述の「各社の工夫している事例」を参照のこと。 ③ パートナー(監査責任者/業務執行社員)・マネージャ・スタッフ(補助者)別の人員数、日数・時間等の前期との相違点等を確認し、相違・疑問があった場合はその理由を聴取する。 (6) 会計上の見積りの監査 ① 会計上の見積りは不確実性に伴い、その程度により重要な虚偽表示リスクが異なる。従って、監査人は見積りの性質・方法、関連する内部統制、経営者の変更の兆候等といった不確実性に影響を与える要素を検討して重要な虚偽表示リスクを識別して評価することが求められる。以上のことを投資家保護の観点から纏めた平成 27 年 7 月公認会計士・監査審査会発行の「監査事務所 検査結果事例集」P86~P98 までの、3.会計の見積りの監査(9 項目)を参照し、重要なリスク低減に努めること(次の URL 参照)。 <http://www.fsa.go.jp/cpaaob/shinsakensa/kouhyou/20150721/01.pdf> | |
スタッフ業務のポイント | 1.会計監査人からの監査計画説明・聴取のスケジュール調整 (1) 5 月~6 月、監査役(会)監査計画案作成時に実施。 (2) 監査役(会)監査計画案(常勤監査役とも相談した案)に基づき、7 月の監査役会開催日、あるいは監査役全員がそろう日を会計監査人に伝え、会計監査人の監査計画作成終了予定日も踏まえ、日程を調整する。その際、出席するメンバー(パートナークラスなのか、マネージャクラスなのか)についても確認する。 (3) 時間の余裕が無く監査役全員のスケジュール調整がむずかしい場合は、常勤監査役と会計監査人でスケジュールを調整し、常勤監査役だけが会計監査人からの監査計画説明・聴取を行うこともある。 2.事前準備 (1) ドラフト版の事前入手 ① ドラフト版において、前年の監査計画からの変更点の有無について漏れなく確認・把握し、必要に応じて、会計監査人に確認する。 ② ドラフト版を入手し、会計監査計画に対する質問書を作成する場合もある。 ③ 参考資料として前年度の監査結果説明書(監査計画と実績の予実分析がされたもの)を準備する。 (2) 面談のためのヒアリングシート(メモ)の取りまとめ ① 会計監査人からの説明に際して、説明聴取のためのポイントを予め取りまとめておき、会計監査人より提出された今期「会計監査計画書」と照査しながら、相違点・疑問点について説明を求めるケースがある。 ② その場合、スタッフは、前年度の計画書から想定される会計監査のポイントについて、会社を取り巻く環境の変化等を踏まえ、監査役と事前に協議し、監査役よりポイントとして指示を受けた項目について説明聴取用のヒアリングシート(メモ)を作成する。また、その際に経理部門等に「会計基準の変更」等についても確認しておく。 (3) 聴取結果「面談録」の作成 ① 会計監査人からの監査計画の聴取の結果を取りまとめ、面談録(案)(非常勤監査役が出席していない場合は、非常勤監査役への説明資料として「監査計画の聴取記録(案)」)を作成し、常勤監査役の内容確認がなされた後、「面談録」(非常勤監査役への説明資料)として保管する。 ② 監査役会の場で説明を聴取した場合、監査役会議事録案を作成する。 |
スタッフとして留意する点 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員 会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 41 条(会計監査人との連携)が規定されている。 なお、指名委員会等設置会社においては、監査委員会で会計監査人より監査計画の報告を受ける形式が多いため、スタッフ主導で監査委員と会計監査人のスケジュール調整を行い、 年間スケジュールに組み込むケースが多い。 |
②機関設計の違い による対応(監査等委 員会設置会社) | 監査等委員会設置会社においても、監査等委員会は、会計監査人の選任・解任・不再任の議案内容の決定(法 399 条の 2)、会計監査人の解任(法 340 条)、会計監査人の報酬への同意(法 399 条)、会計監査人からの報告の聴取(法 397 条)の権限を有しており、その職務を遂行するために会計監査人と定期的な接触を行う必要がある。 また、実効的で効率的な監査を実施するために、会計監査人との連携が必要とされている(監 査等委員会監査等基準 44 条)。 |
各社の工夫・事例 | 1. 会計監査人は毎月 経理部門に訪問しているので、会計監査人との日程調整は経理部門と連携するとスムーズに調整できる。 2. 三様監査会議の一環として実施する場合もある。 3. 監査計画説明会には監査役全員のほかに、経理部担当役員・経理部長、経営企画部担当役員・経営企画部長、内部監査部担当役員・内部監査部長にも連絡し出席させている。その主な趣旨及び目的は以下のとおり。 (1) 会計監査人の監査計画に対する監査役会の意見・要望を執行側に認識・共有してもらい、会計監査人の監査品質の向上及び執行側の内部統制機能を高めるため。 (2) 会計監査人の監査において、会計監査人が独立の立場を保持し適正に監査できる体制にあることに関して監査役として監視・検証していることを、執行側に周知・徹底するため。 4. 会計監査人監査計画完成版を受領する前に、常勤監査役と会計監査人が事前にすり合わせをし、監査役の要望を反映してもらう。 5. 監査時間の見積に関する研究報告(日本公認会計士協会/平成 20 年 6 月 3 日)を参考資料として、監査法人から説明を聴取する事例。 (1) 同研究報告では、会計監査人の作業内容を、①計画(監査契約、監査計画、固有リスク評価)、 ②統制リスクの評価(統制リスクの評価)、③実証手続き等(四半期レビュー、手続き、実証手続き、表示の検討)、④意見形成等(四半期レビュー・監査意見の形成、四半期レビュー・監査報告、相談事項等、品質管理)に分類し、それぞれの総時間の割合等について記載している。 (2) この分類に基づき、自社時間配分と同研究報告の時間配分との相違点を確認し、また、各作業内容について説明を受け、深掘り(例えば、職位別・職責別時間配分等について説明を受ける)して聞くことにより、会計監査人が特に重点を置いている作業・項目について確認するなど、監査報酬額の算定要因の一つである監査計画(時間)の妥当性の判断材料の一助とする。また、必要に応じて、監査役監査計画に、当該事項を反映することも考えられる。当該分析を 1 回実施すれば、翌年からは前年度との比較による説明を聴取することになる。 6. 「監査実施状況調査(平成 26 年度)、日本公認会計士協会 情報管理センター」で、会計監査人の、監査の実施状況・監査時間数・監査報酬について業種別や会社規模別の参考資料があるので、参考にして頂きたい。(下記 HP 参照) |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 会計監査 会計監査人への監査役会監査計画の提供・説明 | 施規 105 条 2 項 基準 47 条 |
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監査役業務のポイント | 1. 会計監査人に監査役監査計画を説明する目的 会計監査人に対して、監査役監査計画の内容(策定の背景、理由、視点、監査対象等)について理解してもらうことにより、監査役監査の補完、協力関係を構築し、また、監査役から会計監査に必要な情報を提供することなどにより、双方の監査の実効性・効率性の向上を図ることが主な目的として考えられる(計算関係書類の監査において、会計監査人の監査結果に依拠する監査役(会)として、会計監査人監査の品質向上は望ましいことと考える。)。 2.監査役の業務のポイント (1)会計監査人に説明する方法 会計監査人への監査計画提供・説明方法は以下のケースが考えられる。 ① 常勤監査役(スタッフ)が、会計監査人に説明する。 ② 監査役会(監査役が全員そろう場)若しくは三様監査会議の場で説明する。 ③ 会計監査人へ監査計画を提供する。 1)例えば、会計監査人の監査計画説明聴取後に監査役監査計画を手渡すことが考えられる。 2)監査計画とともに、補足説明用の資料を手渡すケースもある。 3)会計監査人より確認事項等があれば、後日、電話等にて質問を受け付け回答する。 (2) 会計監査人に説明する時期 | |
株主総会終了後、監査役会で監査計画を決議した後、7 月を目途に実施。基本的には、 | ||
会計監査人の監査計画の説明聴取と同じ時期に行われる。 | ||
スタッフ業務のポイント | 1.会計監査人と監査計画説明聴取の日程調整 (1) 監査役会(監査役が全員そろう場)で会計監査計画説明聴取後、会計監査人へ監査計画を提供する(手渡しする)場合は、監査役(会)監査計画案(常勤監査役とも相談した案)に基づき、7 月の監査役会開催日、あるいは監査役全員がそろう日を会計監査人に伝え、会計監査人の監査計画作成終了予定日も踏まえ日程を調整する。 (2) 常勤監査役(スタッフ)が説明する場合は、常勤監査役と会計監査人の都合のよい日を確認し、日程調整を行う。その場合、会計監査人の出席者は、パートナークラスとマネージャクラスが共に出席することが望ましい。 2. 資料の準備 以下の事項等に留意し、資料を準備する。 (1) 重点監査項目・・・策定の背景・理由、監査の視点・評価項目、監査対象(拠点・業務)など (2) 往査箇所・・・往査時の共通監査項目及び個別確認事項など (3) スケジュール・・・年間スケジュールなど 3. 会計監査人からの質問事項への対応 監査役(会)監査計画に関して会計監査人から質問事項があった場合スタッフが対応することになるが、内容によっては監査役と相談して回答する。 | |
スタッフとして 留意する点 | ||
①機関設計の違いによる対応(指名委員会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 41 条(会計監査人との連携)が規定されている。 監査委員会で監査計画が議案として付議される時に会計監査人の陪席を要請するケースや、常勤の監査委員やスタッフとの定期会合時に説明するケースがある。 実効的で効率的な監査を実施するために、会計監査人との連携が必要とされている(日本監査 役協会「監査等委員会監査等基準」44 条)が、両者の計画が補完的に遂行されるという観点で監査計画の開示は有益だと考えられる。 | |
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | ||
各社の工夫・事例 | ||
その他特記事項 | ||
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 会計監査 四半期報告書・半期報告書の監査 | 施規 105 条 2 項 金商法 24 条の 5 |
監査業務支援 ツール | □「会計監査人 監査報告の議事録」(ツールNo.F-8) | |
1.四半期報告書・半期報告書の監査の目的 (1) 取締役の職務執行としての四半期報告書・半期報告書が適切に作成されているか確認する。 (2) 各四半期報告書のレビュー結果が計算関係書類の監査にも繋がってくることから、会計監査人の監査が適切に行われているか確認することの一助とする。 | ||
監査役業務のポイント | 2.監査役の業務のポイント (1) 確認事項 ① 会計監査人監査計画の進捗状況、例えば、重点監査項目の監査の進捗状況について確認する。 ② 会計監査人による四半期報告書・半期報告書の監査が適切に行われているかを確認する。 (2) 確認する方法 常勤監査役が説明を聴取し、監査役会に報告するとともに、監査役としてアクションが必要か経過を見守ることで十分か判断する。なお、具体的な監査活動は以下のとおり。 ① 監査の実施状況の説明を受け、関連資料を受領し、情報交換・意見交換を行う。 (会計処理の変更、未修正事項、前期からの会計監査上の懸案事項、重要な後発事象等) ② 発見事項その他及びそれによる財務報告・内部統制への影響、当該事項への対応状況 (監査人、経理部門、発見箇所毎に)、改善のスケジュールなどについて説明を聴取。 (3) 確認する時期 四半期報告書開示前、第1四半期であれば、8月上旬を目途に実施。 | |
スタッフ業務のポイント | 1.会計監査人と説明聴取の日程調整 常勤監査役と会計監査人の都合のよい日を確認し、日程調整を行う。その場合、会計監査人の出席者は、パートナークラスとマネージャクラスが一緒に出席することが望ましい。 2.会計監査人からの説明書(四半期レビュー結果説明書 等)のドラフト版を入手し、レビューのポイントを確認する。 3.会計監査人の監査役への説明に同席し、説明内容・質疑応答の議事録を作成する。 (議事メモは会計監査人から受領した四半期レビュー結果報告書と併せて、監査役会における監査の実績報告資料となる。) 4.発見事項があった場合は監査役の判断を受け、以下を行う。 経理部門へ事実の確認を行うとともに、必要な場合は改善の要請、改善状況の確認を行う。 | |
スタッフとして留意する点 | 1. 経理部から聴取した内容、意見等の相違がないか確認する。 2. 説明聴取にあたり、事前に当日の説明事項(重点的に説明を受けたい事項など)を会計監査人とスタッフ間で詰めておき、監査役と会計監査人の意見交換が効果的に行われるよう準備することが望ましい。 | |
①機関設計の違い による対応(指名委員 会等設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、日本監査役協会の監査委員会監査基準 41 条(会計監査人との連携)が規定されている。 なお、指名委員会等設置会社においては、定期的に監査委員会で会計監査人より報告を受ける形式が多いため、スタッフ主導で監査委員と会計監査人のスケジュール調整を行い、監 査委員会の年間議案スケジュールに組み込むケースが多い。 | |
②機関設計の違い による対応(監査等委 員会設置会社) | 四半期レビュー時に監査法人より経営者確認書草案について確認依頼を受けるが、これにより監査法人が監査上重視している項目を確認できる。 | |
各社の工夫・事例 | 臨時)監査役会の場で報告を聴取し監査役会議事録(監査証跡)を残す。なお、その席には、経理部門の責任者(担当役員・部門長)にも同席してもらい、双方の見解に隔たりがないか確認する。また、財務報告内部統制の整備状況等についても併せて報告を受ける場合、内部監査部門の責任 者(担当役員・部長)も同席する。 | |
その他特記事項 | ||
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 会計監査 会計監査人の実証手続への同行・立会 | 施規 105 条 2 号 基準 47 条 |
監査業務支援ツール | □「会計監査人 監査報告の議事録」(ツールNo.F-8) | |
1.会計監査人の実証手続に同行・立ち会う目的 会計監査人の監査の方法及び結果の相当性を判断するための監査の一環として、会計監査人の往査(実証手続き)に立ち会い、適切な監査を実施しているか確認する。 | ||
監査役業務のポイント | 2.監査役の業務のポイント (1) 会計監査人の実証手続きの同行・立会の方法 ① 会計監査人の往査の立会 1)実地棚卸の立会 2)会計監査の立会 3)内部統制の確認の立会 ② 会計監査人の監査結果講評会に出席 1)会計監査人の監査結果、監査コメント・発見事項等を聴取 (2)内容例 ① 実地棚卸 1)製品、原材料の管理の状況の監査の立会 ② 会計監査 1)現金・有価証券等の現物(有形資産)監査の立会 2)債権・債務残高に関する監査(確認)の立会 ③ 内部統制の監査 1)各規程類の整備状況・運用状況の検証の立会 (3)確認する項目 ① 期初に聴取した監査計画に基づき監査が実施されているか。 ② 会計監査方法は、効果的・効率的か。 ③ 会計監査人の知識・スキルは必要十分か。 ④ 製品・原材料の管理体制の整備状況 ⑤ 有形資産(有価証券・固定資産等)の管理状況 (4)監査役会への報告 ① 立ち会った監査役は、立会記録を作成し監査役会に報告すると共に、監査役監査報告・監査役会監査報告の裏付けとする。 ② 立会報告書は期末監査結果報告の際に、会計監査人より受領し説明を聴取する。 | |
【留意点】 1.立会対象は、監査手続きや勘定科目等の重要性に基づいて決定する。 2.立会対象について事前に会計監査人から説明を受け理解を深めて臨むことが望ましい。 | ||
スタッフ業務のポイント | 1.立会先の選定(スケジュール調整) (1)立会日程等調整 ① 会計監査人の往査日程を入手し立会先を選定 会計監査人の往査日程を入手し、本年度の監査重点項目との関係、各監査役のスケジュール等を踏まえ、常勤監査役から以下の点について相談・指示を受け、立会先を選定する。 1)立会拠点(往査場所…下記参照)はどこにするのか 2)往査に立ち会うのか、監査結果講評会への出席だけにするのか 3)立ち会う監査役、同行スタッフは誰にするのか ※立会先の例 財務部門(現物実査:有価証券、株式、ゴルフ会員権等)工場(製品、原材料・半製品等)、支店等 ② スケジュール調整は 1 ヶ月前くらいまでに終了させるのが望ましい。 (2) 立会拠点を主管部署に連絡。主管部署は拠点に監査役の立会を連絡する。 (3) 監査役スタッフから立会拠点担当者に、「監査役の立会は会計監査人が適切な監査を実施しているか確認する」ためであることを連絡し、必要に応じて立会当日のスケジュール等を確認・調整する。 |
2.資料の準備 (1) 会計監査人の説明資料を、執行側から受領する。 (2) 立会先の資料を主管部署より入手し監査役に提供する(実地棚卸計画書、配置図(構内図)、棚卸一覧表、前年度指摘事項(ある場合) 等)。 3.立会記録(案)の作成 会計監査人の監査結果・監査コメント・発見事項、並びに、質疑応答事項等を踏まえ、立ち会った監査役が立会記録を作成する。スタッフが同行した場合はスタッフが立会記録の素案を作成し立ち会った監査役の承認を得て最終記録を作成する。立会記録は受領資料と併せて、監査役監査報告・監査役会監査報告の証跡となることに留意する。 | |
スタッフとして留意する点 | 1.実地棚卸の作業については、システマティックに行えるよう体系付けられた業務体制となっていることが重要であるため、監査役監査としては、会計監査人が実地棚卸の業務体制の有効性を確認していることに留意点を置くこととなる。 2.会計監査人の往査日程が分かり次第、速やかに主管部署より連絡を受け、資料を受領 することに留意する。 |
①機関設計の違い による対応(指名委員 会等設置会社) ②機関設計の違い による対応(監査等委 員会設置会社) | 指名委員会等設置会社においては、監査委員は社外かつ非常勤のケースが多いため、監査役設置会社の監査役が対応する事項もスタッフが対応するケースがある。 監査等委員の対応が困難な場合、監査等委員会の職務を補助すべき取締役または使用人が対応することがある。 |
各社の工夫・事例 | 1. 立会部署が監査役監査を受けるものと誤解しないように、監査役スタッフが立会部署 に対し事前に「監査役の立ち会いは貴部署を監査するものではなく、会計監査人の監査手続きの適切性及び監査結果の相当性を監査役が監査するものです。」という内容のメールを送信する。 2. 「事実の確認のための証明力ある証拠」を確実に把握し、入手できるように会計監査人の監査環境整備に努める。 3. 時間的な制約があるため、一部サンプリングによる調査が主体となる。その為、効率的な確認方法や会計監査人の監査環境の整備に注力する。 4. 監査役業務の確認方法に記載されている 3 種の監査手続は、それぞれ固有の留意事項があるため、事前にそれぞれの予備知識の習得に努める。場合によっては適宜会計監査 人からの指導を仰ぐべきである。 |
その他特記事項 | |
参考文献 |
Ⅱ 期中業務 | 根拠条文 | |
大項目 中項目 | 期中監査に係るその他の事項 監査調書の作成 | 基準 57 条 |
監査業務支援ツール | □「代表取締役との意見交換会の議事録」(ツールNo.B-8) □「役職員からの報告聴取 監査調書」(ツールNo.B-9) □「子会社役職員からの報告聴取 監査調書」(ツールNo.B-10) | |
1.期中における監査調書 | ||
① 監査報告には、実際に実施した監査の方法及びその内容の記載が必要となる。また、監 | ||
査の結果として意見を表明する事項は法令に定められている。したがって、監査役は監 | ||
査報告作成に係る法令を確認するとともに、日常実施する監査の方法やその結果を監査 | ||
報告に記載し、株主に報告することができるような監査活動の実施と監査調書の作成が | ||
求められていることから、この点にも注意を払っておく必要がある。 | ||
② 具体的な期中監査の結果を踏まえ、期末監査として、当該事業年度に係る事業報告及び | ||
附属明細書について改めて監査すればよいのであり、期末時点で新たに評価項目を設定 | ||
し、監査することは必要ない。すなわち、期中監査のまとめの段階で、大方、監査の結 | ||
果は決まっていることに留意してほしい。 | ||
③ また、会計監査の期中監査項目としては、会計監査人から受領した新年度の会計監査計 | ||
画概要書による実務対応の内容の確認や四半期決算、中間決算及び臨時決算時における | ||
財務諸表等について担当取締役及び使用人から内容の説明を受けるとともに、会計監査 | ||
人の監査の実施状況の説明を受け、関連する資料を受領し、情報交換や意見交換及び協 | ||
議を行うことも求められている。 | ||
2.監査役及びスタッフの業務とポイント | ||
期中における監査調書は、監査役(会)の監査意見形成過程・理由を提供する文書・記録とな | ||
る。また、監査役が十分な注意をもって期中監査を実施したことを立証する文書・記録でもあ | ||
る。 | ||
監査役業務のポイント | (1) 作成目的 | |
監査調書を作成する目的は次のとおり。 | ||
ア. 監査意見形成の根拠とする | ||
イ. 監査役間での情報共有化を図る | ||
ウ. 監査実施を立証する | ||
エ. 指摘・勧告、助言を監査対象部門にフィードバックする | ||
オ. 次期以降の監査における再確認に繋げる | ||
(2) 記載内容 | ||
監査調書は、法的に定められたものではない。期中監査の実態を立証する証拠として、 | ||
前項の作成目的のために必要としているものである。次のことが明瞭に記載・記録・保管 | ||
されていることが必要である。 | ||
ア. 監査実施年月日(開始時刻・終了時刻) | ||
イ. 監査対象部門(名称、所在地)、報告・説明者(役職、氏名) | ||
ウ. 監査実施監査役名(スタッフが代理で実施した場合、スタッフ名) | ||
エ. 報告聴取の内容と実施した監査方法(報告聴取・資料閲覧・立会・視察等) | ||
オ. 監査結果及び指摘事項並びに所見等(助言・勧告すべき事項を含む) | ||
カ. 監査意見形成に至った過程・理由等(監査役の意見形成の根拠) | ||
キ. その他補足説明 | ||
報告聴取の内容を補足している提出資料は、別添として一体化させておくことも忘れて | ||
はならない。監査調書は重要な証跡であるが、監査役会議事録や監査役会監査報告書のよ |
うに株主等の社外者に閲覧謄写をさせる義務のない内部文書である。しかしながら、取締役や監査役等の善管注意義務等を原因とする訴訟が発生したときには、重要な証書となるので、文書の記録として表現の適切性にも十分注意を払っておくべきである。 監査調書は、監査活動及び監査報告作成の基礎となる監査証拠であることを意識して作成することが重要である。また、監査調書を作成する際、下記の構成要件を満たすことにより、第三者が監査調書を読めば追加の説明を受けることなく内容を理解できるような監査調書を作成することに留意する必要がある。 ア. 完全性:監査活動の内容と責任の範囲を明らかにする情報を全て漏れなく記載 イ. 秩序性:誰が利用しても、実施した監査手続きの内容と範囲が理解できるよう、一定の体系のもと整理され、かつ、相互参照できるよう作成 ウ. 明瞭性:実施した監査の内容と範囲について、第三者でも理解できるよう、的確な表現と理解可能な言葉 (会社特有の略語の未使用・専門用語の説明等)で、明瞭・簡潔に記載 エ. 真実性:実施した監査の内容や範囲を偽ることなく、正確に記載。また、改ざんを 防ぐため、連番を付すなど、真正性を確保することも重要 | |
スタッフ業務の ポイント | |
スタッフとして 留意する点 | |
①機関設計の違いによる対応(指名委 員会等設置会社) | |
②機関設計の違いによる対応(監査等 委員会設置会社) | |
各社の工夫・事例 | |
その他特記事項 | |
脚注 |