静岡銀行(頭取 八木 稔)では、SDGs への取り組みの一環として、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に取り組む地域企業を金融面から支援するため、「サステナ ブルファイナンス」の推進に取り組んでいます。
2024.3.25
(株)xx商店と「サステナビリティ・リンク・ローン」の契約を締結
静岡銀行(xx xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に取り組む地域企業を金融面から支援するため、「サステナブルファイナンス」の推進に取り組んでいます。
このたび、㈱xx商店(社長 xxxx)と「サステナビリティ・xxx・xxx(※)」の契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
なお本件は、静岡銀行のサステナビリティ・リンク・ローンとして初めて、環境省の「2023 年度二酸化炭素排出抑
制対策事業費等補助金」を用いて実行しました。
※お客さまの SDGs や ESG 戦略に整合した取組目標として「キー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)」と
「サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)」を設定し、SPTs の達成状況に応じて、金利などの貸出条件を連動させるローン。設定した KPI・SPTs の有意義性・野心度等については、㈱日本格付研究所の第三者評価を取得する。
1.「サステナビリティ・リンク・ローン」契約の概要
(1)契約日/3 月 25 日(月)
(2)融資金額/4 億円
(3)資金使途/運転資金
2.㈱xx商店の取り組み
〇同社は、鉄・非鉄金属を専門とした金属スクラップリサイクル業者として、企業理念に「国内循環宣言」「日本の大切な資源をxxへ」を掲げ、鉱物資源の乏しい日本における資源効率の最大化に向けた取り組みを推進しています。
〇また、同社のリサイクル事業は、バージン材製造に大量のエネルギーを必要とする鉄・銅等の金属類の再資源化を通じ、これらの金属製品の製造段階の CO2 削減に大きく寄与しています。
〇さらに、業界の枠組みを超えてサプライチェーン全体の意識を高め、環境負荷低減に貢献することをめざし、
2021 年 9 月に静岡銀行と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結しました。
〇今回、同社では以下の KPI と SPTs を設定しています。
重要な評価指標(KPI) | サステナビリティ・パフォーマンス目標 (SPTs) | 関連するSDGs |
CO2 排出量(Scope1・2) | ・2024 年度 24.1%削減(2020 年度比) ・2025 年度 28.3%削減(2020 年度比) ・2026 年度 32.5%削減(2020 年度比) ・2027 年度 36.7%削減(2020 年度比) ・2028 年度 40.9%削減(2020 年度比) |
|
【ご参考】㈱xx商店の概要
所 在 地 | xxxxxxxx 000 | 設 立 | 1977 年 |
事業内容 | 金属スクラップリサイクル | 売 上 高 | 18,296 百万円(2023 年 8 月期) |
本件に関するお問い合わせ先/法人ファイナンスグループ(xx、x)
TEL 000-000-0000
23-D-1484
2024 年 3 月 25 日
株式会社静岡銀行が
株式会社xx商店に対して実施する
サステナビリティ・xxx・xxxに係る第三者意見
株式会社日本格付研究所(JCR)は、株式会社静岡銀行が株式会社xx商店に実施するサステナビリティ・xxx・xxxに対し、第三者意見書を提出しました。
<要約>
本第三者意見は、株式会社静岡銀行が株式会社xx商店に実施するサステナビリティ・リンク・ローン(本借入金)に対して、「サステナビリティ・リンク・ローン原則」、及び「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」(総称して「SLLP 等」)への適合性を確認したものである。株式会社日本格付研究所(JCR)は、SLLP 等で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、独立した第三者機関として、xx商店のサステナビリティ戦略、本借入金で定められたキー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)、特性、レポーティング、検証について確認を行った。
(1)xx商店グループの概要及び企業理念・サステナビリティ/SDGs への取り組み
xx商店は、1977 年に設立された鉄・非鉄金属を専門とした金属スクラップリサイクル業者である。xx商店の本社は静岡県磐田市に位置しており、静岡県西部地域を中心とした排出業者を取引先としている。また、関連会社の関西メタルが、関西の排出業者からの回収を行っているほか、中部メタルは金属含有複合品処理工程の破砕・粉砕や機械選別工程を担っている。グループ全体の従業員数は 80 名である。2021 年度のグループ売上高は約 205 億円、金属取扱数量は計 4.29 万 t である。金属取扱数量の内訳について、鉄系と銅系で全体の 75%超を占めている。
xx商店は、企業理念として「国内循環宣言」、「日本の大切な資源をxxへ」を掲げており、鉱物資源が乏しい日本において資源効率を最大限に高めるべく、金属スクラップを貴重な資源と見做すことで国内金属資源の循環に貢献することを目指している。同企業理念に基づき、xx商店は環境方針・品質方針を定めている。xx商店は、サステナビリティ/SDGs への取り組みを進めるため、社会面・経済面・環境面において重点施策を定めている。
(2)KPI・SPT の設定
xx商店は、本借入金で以下の KPI 及び SPT を設定している。
KPI: CO2 排出量(Scope1・2)
SPT: 2024 年度 24.1%削減(2020 年度比) 2025 年度 28.3%削減(2020 年度比)
2026 年度 32.5%削減(2020 年度比)
2027 年度 36.7%削減(2020 年度比)
2028 年度 40.9%削減(2020 年度比)
xx商店グループの 2022 年度の Scope 1・2 の CO2 排出量は 1,410tCO2 であり、金属スクラップの回収・選別・破砕・粉砕・成分分析の工程で主に発生している。カテゴリ別の CO2 排出量としては、Scope1が全体の 7 割を占めている。
鉄や銅から排出される CO2 を削減するために、使用済製品等を回収し再資源化(リサイクル)された鉄や銅の活用をすることも施策として有効である。再資源化された鉄・銅は、天然資源から製造された鉄・銅と比較して CO2 等の環境負荷は一般的に低いものの、環境負荷はゼロにはならない。脱炭素社会を実現するためには、鉄や銅のリサイクルプロセスについても CO2 排出量の削減を進める必要がある。xx商店の事業内容は、バージン材製造に大量のエネルギーを必要とする鉄・銅等の金属類の再資 xx(リサイクル)であり、これらの金属製品の製造段階の CO2 削減に大きく寄与している。xx商店の Scope1・2 における CO2 排出源は、金属スクラップの回収から製品化までのプロセスで発生していることから、再生材のライフサイクル CO2 排出量の低減に寄与する取り組みであるともいえる。xx商店
は、環境方針の中で「自社の事業活動における省資源・省エネルギー化の定着」を主要な取り組みの一つとして掲げており、SDGs への取り組みに関する重点施策の一つとして「サプライチェーン全体での廃棄物削減や CO2 排出量の削減」を位置付けている。xx商店が営む金属リサイクル業そのものがサプライチェーン全体の環境負荷削減に貢献するものであるが、xx商店が設定した本 KPI はそのリサイクルプロセスの CO2 削減を進め脱炭素社会の実現に貢献する意欲的な取り組みである。
以上より、本 KPI は有意義であると JCR は評価している。
xx商店の KPI/SPT の過年度実績について、2020 年度から 2022 年度にかけての削減率は平均 7.8%
(年率ベース)であるが、これは再エネ導入の成果、及びコロナ禍に伴う金属リサイクル量の減少が原因である。一方、本 SPT は、2020 年度比で年率 4.2%、2022 年度比で年率約 5.0%の削減を目指すものである。xx商店は、今後事業の拡大を見込んでおり、かつ CO2 削減施策が限られてくるなかで、2020年度比で年率 4.2%削減を継続して進めることは難易度が高く野心的である、と JCR は評価している。
本 SPT と科学的根拠との比較においては、パリ協定の目標水準と整合的な温室効果ガス(GHG)排出削減目標である SBT(Science Based Targets)の 1.5℃目標と本 SPT は同等程度と考えられる。ベンチマークとの比較においては、日本政府の目標(2030 年度までに 2013 年度比 46%の GHG 削減)を本 SPTは上回っている。xx商店と同規模の同業他社において Scope1・2 に関する GHG 削減目標を開示していないケースが殆どであるなか、1.5℃目標と同水準である本 SPT は先進的であり野心的である、と JCRは評価している。
以上より、本 SPT は野心的であると JCR は評価している。
(3)借入金の特性、レポーティング・検証
JCR は、本借入金の特性について、以下の点を確認した。
・SPT の達成状況により、本借入金の財務的特性が変動すること
・xx商店は、SPT の実績・達成状況につき、外部機関による検証を受検予定であること
・xx商店は、本借入金の返済までの間、年に一度 SPT の達成状況を開示すること
・SPT にかかる重大な変更が発生した場合には、第三者機関がレビューを行い、引き続き SLLP 等への準拠状況と当初想定した KPI の有意義性や SPT の野心性が維持されるかを確認すること
以上の点を踏まえ、JCR は、本借入金が SLLP 等に適合していることを確認した。
*詳細な意見書の内容は次ページ以降をご参照ください。
第三者意見
評価対象:サステナビリティ・リンク・ローン借入人:株式会社xx商店
貸付人:株式会社静岡銀行
2024 年 3 月 25 日
株式会社 日本格付研究所
目次
<要約> . - 3 -
I. 第三者意見の位置づけと目的........................................................................................................... - 5 -
II. 第三者意見の概要 ............................................................................................................................. - 5 -
III. SLLP 等への適合性について............................................................................................................ - 6 -
1. xx商店のサステナビリティ戦略................................................................................................ - 6 -
2. KPI の選定..................................................................................................................................... - 9 -
2-1. 評価の視点................................................................................................................................ - 9 -
2-2. KPI の選定の概要と JCR による評価........................................................................................ - 9 -
3. SPT の測定.................................................................................................................................. - 12 -
3-1. 評価の視点.............................................................................................................................. - 12 -
3-2. SPT の測定の概要とJCR による評価 .................................................................................... - 12 -
i. 過年度実績との比較.................................................................................................................... - 12 -
ii. 科学的根拠、その他のベンチマークとの比較........................................................................... - 13 -
iii. SPT 達成に向けた取り組み ....................................................................................................... - 13 -
3-3. JCR によるインパクト評価..................................................................................................... - 14 -
4. 借入金の特性............................................................................................................................... - 16 -
4-1. 評価の視点.............................................................................................................................. - 16 -
4-2. 借入金の特性の概要と JCR による評価................................................................................. - 16 -
5. レポーティング・検証................................................................................................................ - 17 -
5-1. 評価の視点.............................................................................................................................. - 17 -
5-2. レポーティング・検証の概要と JCR による評価.................................................................. - 17 -
6. SLLP 等への適合性に係る結論................................................................................................... - 17 -
<要約>
本第三者意見は、株式会社静岡銀行が株式会社xx商店に実施するサステナビリティ・リンク・ローン
(本借入金)に対して、「サステナビリティ・リンク・ローン原則」1、及び「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」2(総称して「SLLP 等」)の適合性を確認したものである。株式会社日本格付研究所(JCR)は、SLLP 等で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、独立した第三者機関として、xx商店のサステナビリティ戦略、本借入金で定められたキー・パフォーマンス・インディケーター
(KPI)、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)、特性、レポーティング、検証について確認を行った。
(1)xx商店グループの概要及び企業理念・サステナビリティ/SDGs への取り組み
xx商店は、1977年に設立された鉄・非鉄金属を専門とした金属スクラップリサイクル業者である。xx商店の本社は静岡県磐田市に位置しており、静岡県西部地域を中心とした排出業者を取引先としている。また、関連会社の関西メタルが、関西の排出業者からの回収を行っているほか、中部メタルは金属含有複合品処理工程の破砕・粉砕や機械選別工程を担っている。グループ全体の従業員数は80名である。 2021年度のグループ売上高は約205億円、金属取扱数量は計4.29万tである。金属取扱数量の内訳について、鉄系と銅系で全体の75%超を占めている。
xx商店は、企業理念として「国内循環宣言」、「日本の大切な資源をxxへ」を掲げており、鉱物資源が乏しい日本において資源効率を最大限に高めるべく、金属スクラップを貴重な資源と見做すことで国内金属資源の循環に貢献することを目指している。同企業理念に基づき、xx商店は環境方針・品質方針を定めている。xx商店は、サステナビリティ/SDGsへの取り組みを進めるため、社会面・経済面・環境面において重点施策を定めている。
(2)KPI・SPTの設定
xx商店は、本借入金で以下のKPI及びSPTを設定している。
KPI :CO2排出量(Scope1・2)
SPT :2024年度 24.1%削減(2020年度比) 2025年度 28.3%削減(2020年度比)
2026年度 32.5%削減(2020年度比)
2027年度 36.7%削減(2020年度比)
2028年度 40.9%削減(2020年度比)
xx商店グループの 2022 年度の Scope 1・2 のCO2 排出量は 1,410tCO2 であり、金属スクラップの回収・選別・破砕・粉砕・成分分析の工程で主に発生している。カテゴリ別の CO2 排出量としては、Scope1が全体の 7 割を占めている。
1 Asia Pacific Loan Market Association (APLMA), Loan Market Association (LMA), Loan Syndications and Trading Association (LSTA). Sustainability-Linked Loan Principles 2023. (xxxxx://xxx.xxxx.xxx/xxxxxxx/xxxxxxxxxxxxxx-xxxxxx-xxxx- principles-sllp/)
2 環境省 サステナビリティ・xxx・xxxガイドライン 2022 年版(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxx/000000000.xxx)
鉄や銅から排出される CO2 を削減するために、使用済製品等を回収し再資源化(リサイクル)された鉄や銅の活用をすることも施策として有効である。再資源化された鉄・銅は、天然資源から製造された鉄・銅と比較して CO2 等の環境負荷は一般的に低いものの、環境負荷はゼロにはならない。脱炭素社会を実現するためには、鉄や銅のリサイクルプロセスについてもCO2 排出量の削減を進める必要がある。xx商店の事業内容は、バージン材製造に大量のエネルギーを必要とする鉄・銅等の金属類の再資源化
(リサイクル)であり、これらの金属製品の製造段階の CO2 削減に大きく寄与している。xx商店の Scope1・2 における CO2 排出源は、金属スクラップの回収から製品化までのプロセスで発生していることから、再生材のライフサイクル CO2 排出量の低減に寄与する取り組みであるともいえる。xx商店は、環境方針の中で「自社の事業活動における省資源・省エネルギー化の定着」を主要な取り組みの一つとして掲げており、SDGs への取り組みに関する重点施策の一つとして「サプライチェーン全体での廃棄物削減や CO2 排出量の削減」を位置付けている。xx商店が営む金属リサイクル業そのものがサプライチェーン全体の環境負荷削減に貢献するものであるが、xx商店が設定した本 KPI はそのリサイクルプロセスのCO2 削減を進め脱炭素社会の実現に貢献する意欲的な取り組みである。以上より、本 KPI は有意義であると JCR は評価している。
xx商店の KPI/SPT の過年度実績について、2020 年度から 2022 年度にかけての削減率は平均 7.8%
(年率ベース)であるが、これは再エネ導入の成果、及びコロナ禍に伴う金属リサイクル量の減少が原因である。一方、本 SPT は、2020 年度比で年率 4.2%、2022 年度比で年率約 5.0%の削減を目指すものである。xx商店は、今後事業の拡大を見込んでおり、かつCO2 削減施策が限られてくるなかで、2020 年度比で年率 4.2%削減を継続して進めることは難易度が高く野心的である、と JCR は評価している。
本 SPT と科学的根拠との比較においては、パリ協定の目標水準と整合的な温室効果ガス(GHG)排出削減目標である SBT(Science Based Targets)の 1.5℃目標と本 SPT は同等程度と考えられる。ベンチマークとの比較においては、日本政府の目標(2030 年度までに 2013 年度比 46%の GHG 削減)を本 SPTは上回っている。xx商店と同規模の同業他社において Scope1・2 に関する GHG 削減目標を開示していないケースが殆どであるなか、1.5℃目標と同水準である本 SPT は先進的であり野心的である、と JCRは評価している。以上より、本 SPT は野心的であると JCR は評価している。
(3)借入金の特性、レポーティング・検証
JCR は、本借入金の特性について、以下の点を確認した。
SPT の達成状況により、本借入金の財務的特性が変動すること
xx商店は、SPT の実績・達成状況につき、外部機関による検証を受検予定であることxx商店は、本借入金の返済までの間、年に一度SPT の達成状況を開示すること
SPT にかかる重大な変更が発生した場合には、第三者機関がレビューを行い、引き続き SLLP 等への準拠状況と当初想定した KPI の有意義性や SPT の野心性が維持されるかを確認すること
以上の点を踏まえ、JCRは、本借入金がSLLP等に適合していることを確認した。
I. 第三者意見の位置づけと目的
JCR は、本借入金に対して SLLP 等に沿って第三者評価を行った。サステナビリティ・xxx・xxxとは、借入人が予め定めた意欲的な SPT の達成にインセンティブを設けることで、借入人が持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとした借入金をいう。SLLP 等は、KPI の選定、SPT の測定、借入金の特性、レポーティング、検証という 5 つの核となる要素で構成されている。本第三者意見の目的は、 SLLP 等で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、JCR が独立した第三者機関として、本借入金の SLLP 等への適合性を確認することである。
II. 第三者意見の概要
本第三者意見は、xx商店が 2024 年 3 月 25 日に静岡銀行との間で契約を締結する本借入金に対する意見表明であり、以下の項目で構成されている。
1. xx商店のサステナビリティ戦略
2. KPI の選定
3. SPT の測定
4. 借入金の特性
5. レポーティング・検証
6. SLLP 等への適合性に係る結論
III. SLLP 等への適合性について
1. xx商店のサステナビリティ戦略
<事業概要>
xx商店は、1977 年に設立された鉄・非鉄金属を専門とした金属スクラップリサイクル業者である。xx商店の本社は静岡県磐田市に位置しており、グループ全体の従業員数は 80 名である。2021 年度のグループ売上高は約 205 億円、金属取扱数量は計 4.29 万 t である。金属取扱数量の内訳は図表 1 に示す通りであり、鉄系と銅系で全体の 75%超を占めている。
5%
5% 2%
12%
43%
33%
鉄系
銅系
アルミ系家電系 SUS系
雑品系
図表 1 xx商店 2021 年度 金属取扱量の内訳3
鉄については静岡県に本社を置く大手四輪・二輪車メーカーからの調達が主となっており、銅を含む非鉄金属については家電メーカー、建設業者及び自動車メーカーなどからの調達が主となっている。個人からの買い付けにも対応しており、1㎏からの買い取りも行っている。
xx商店の関連会社として、株式会社関西メタル、株式会社中部メタル、扶双産業有限会社が存在する。関西メタルは関西・四国方面の回収窓口機能を、中部メタルは金属含有複合品処理工程の破砕・粉砕や機械選別工程を、扶双産業は金属を含むスラッジ(汚泥)の乾燥を、それぞれ担っている。
野末商店は、静岡県西部地域を中心とした排出事業者及び関西メタルから金属スクラップを回収し、作業員による目視・手選別を行う。その中でも金属含有複合物など選別が必要なものは、隣接した中部メタルに持ち込まれ、シュレッダーや粉砕機などにより細かく破砕・粉砕される。破砕・粉砕された金属含有複合物は、機械選別工程を経てそれぞれの金属に分類・抽出され、野末商店において成分分析が行われる。発光分析機や X 線分析機により納品先の規格を満たしていることが確認された金属は、そのまま出荷されるか、もしくはプレス加工されフレコンバッグ・コンテナ詰めされた後に出荷され、伸銅メーカーなどに納品される。
3 野末商店提供資料よりJCR 作成
<企業理念・環境方針>
野末商店は、企業理念として「国内循環宣言」、「日本の大切な資源を未来へ」を掲げており、鉱物資源が乏しい日本において資源効率を最大限に高めるべく、金属スクラップを貴重な資源と見做すことで国内金属資源の循環に貢献することを目指している。同企業理念に基づき、野末商店は環境方針・品質方針を定めている、環境方針としては、以下に示す通り、同社の事業活動による環境負荷のための取り組みとして5項目挙げている。
環境方針
株式会社野末商店は、行動基準である「地球環境の保全のため、金属資源の活用とリサイクルの推進を行なう」に基づき、貴重な金属資源の再利用の推進と伴に、当社が位置する豊かな自然環境を未来に引き継ぐため、地球・地域環境改善に積極的且つ継続的に取り組み、環境汚染の防止に努めることを決意し、以下に環境方針を定める。
(1)当社が行なう事業活動が環境に与える影響の中で、特に以下の項目について優先的に活動し、環境保全の継続的改善及び汚染予防に取組む。
①金属資源の品質管理による、環境汚染の少ない原料の供給
②収集物の適正分別によるリサイクル化の促進
③騒音・振動など、地域環境に与える負荷を出来る限り低減した事業活動
④油の流出による水質汚染の軽減
⑤省資源・省エネルギー化の定着
(2)環境関連の法律、規制、協定、業界及び当社が同意するその他の要求事項は、順守するに止まらず、技術的・経済的に可能な範囲で一層の環境保全に取組む。
(3)全社及び各グループ毎に環境目的・目標・プログラムを定め、文書化し、実行し、維持し、定期的に見直し・改善を行ない、社長が確認することにより、環境保全活動の継続的な向上をはかる。
(4)適用範囲の中で働く人が活動できるように、環境方針を社内に掲示し、教育を実施し、環境保全型企業を目指す。
(5)この方針は開示する。
図表 2 野末商店 環境方針4
<サステナビリティ/SDGs への取り組み>
野末商店は、サステナビリティ/SDGs への取り組みを進めるため、社会面・経済面・環境面において図表 3 に示すような活動を重点的に行っている。
社会面 | |
●安心安全な労働環境(全破砕・粉砕工程において集塵機を設置、スポットクーラーの設置、現場作業員全員に空調服を配布) ●交通安全対策(金属スクラップ運搬時のルート確認、安全運転講習会の定期開催、計画的な配車管理) | |
経済面 | |
●高い経済生産性(生産計画実績表による実績の見える化、クラウドサービスを利用した情報の共有化、 社内教育講座、資格取得補助、グループ会社間での 相互監査体制、ISO9001 や ISO14001 による社内体制の体系化) | |
環境面 | |
●廃棄物の削減や資源の国内循環 (再生資源利用製品の使用、リグルーブタイヤの活用、廃モーターの処理能力向上を見込む新工場の建設) ●サプライチェーン全体での環境負荷低減(精錬不要なほど高純度な再生資源の製造によるサプライチェーン全体での廃棄物削減や CO2 排出量の削減) |
図表 3 野末商店 SDGs への取り組み5
野末商店は、日本の貴重な資源をリサイクルすることで国内循環させる自社の取り組みを公表し、金属スクラップ処理業界の枠組みを超えてサプライチェーン全体の意識を高めることで環境負荷低減に貢献したいと考え、2021 年 9 月に静岡銀行とポジティブ・インパクト・ファイナンスの契約を締結している。
<サステナビリティに関する推進体制>
責任者を社長とする「品質・安全会議」を月1回のペースで開催しており、同会議体のなかでサステナビリティや環境に関する事項について都度報告・共有されている。
2. KPI の選定
2-1. 評価の視点
本項では、本借入金の KPI について、野末商店の事業全体で関連性があり中核的で重要か、野末商店の現在・未来における事業運営上の戦略的意義は大きいか、一貫した方法論に基づく測定・定量化は可能か、ベンチマークは可能か、適用範囲等を含め定義は明確か等を確認する。
2-2. KPI の選定の概要と JCR による評価
〈評価結果〉
本借入金の KPI は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。
野末商店は、本借入金で以下の KPI を設定している。
KPI :CO2 排出量(Scope1・2)
野末商店グループの 2022 年度のCO2 排出量(Scope1・2)は 1,410tCO2 であり、金属スクラップの回収・選別・破砕・粉砕・成分分析の工程で主に発生している。
図表 4 野末商店 金属スクラップ回収から製品納品までのフロー6
6 静岡経済研究所による野末商店のPIF 評価書(2021 年 9 月 28 日)
<事業運営上の位置づけ>
野末商店グループのカテゴリ別の CO2 排出量としては、Scope1 が全体の 7 割を占めており、トラック・リフト・重機等の軽油使用が主な発生源となっている。なお、全て日本国内での排出である。
野末商店は、同社の環境方針及び SDGs への取り組みの中で、同社の事業活動における環境負荷の低減に取り組むことを掲げており、CO2 排出量の削減も重要な施策の一つとして位置づけられている。
30%
70%
Scope1 Scope2
図表 5 野末商店 2022 年度CO2 排出量の内訳(Scope1・Scope2)7
<同社の業界における位置づけと有意義性>
野末商店が再生材を提供する先である鉄鋼業・非鉄金属業の業種別業界別 CO2 排出量を見ると、製造業全体の排出量に対して、鉄鋼が 35%、非鉄金属が 4%の割合を占めており、サプライチェーン全体における CO2 排出量の削減は日本の脱炭素社会実現において重要な要素となっている。
図表 6 日本全体の部門別CO2 排出量 / 日本の製造業の業界別CO2 排出量8
野末商店の事業内容は、バージン材製造に大量のエネルギーを必要とする鉄・銅等の金属類の再資源化
(リサイクル)であり、これらの金属製品の製造段階の CO2 削減に大きく寄与している。製造業のサプライチェーン全体のカーボンニュートラル実現のためには、製造したものを廃棄して終わるリニア型の
7 野末商店提供資料
8 経済産業省 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/green_steel_01.html
サプライチェーンから、使用済製品等を回収し再資源化する循環型のサプライチェーン構築が重要となる。野末商店の事業は、製品・利用・廃棄から原材料の再資源化をつなぐ循環型サプライチェーン構築の要となる部分に該当する。
図表 7 リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの再設計概念図9
再資源化された鉄・銅は、天然資源から製造された鉄・銅と比較して CO2 等の環境負荷は一般的に低い。ただし、鉄・銅等のリサイクルプロセスにおける CO2 排出量の削減を行わない限り、環境負荷はゼロにはならない。脱炭素社会を実現するためには、再資源化プロセスについても CO2 排出量の削減を進める必要がある。野末商店の Scope1・2 におけるCO2 排出源は、前述の通り金属スクラップの回収から製品化までのプロセスで発生していることから、再生材のライフサイクル CO2 排出量の低減に寄与する取り組みであるともいえる。
野末商店は、鉄や銅のリサイクルプロセスにおける CO2 削減を進める自社の取り組みを公表し、金属スクラップ処理業界の枠組みを超えた鉄・非鉄金属のサプライチェーン全体の意識を高め、その環境負荷削減に貢献することを企図している。
以上より、本 KPI は、野末商店の事業全体で関連性があり中核的であり、事業運営上の戦略的意義は大きいと JCR は評価している。野末商店が営む金属リサイクル業そのものがサプライチェーン全体の環境負荷削減に貢献するものであるが、野末商店が設定した本 KPI はそのリサイクルプロセスの CO2 削減を進め脱炭素社会の実現に貢献する意欲的で社会的意義の大きい取り組みである。
また、JCR は、本 KPI は一貫した方法論で算定されており適用範囲も明確に定義されていることを確認している。
以上から、本 KPI は有意義であると JCR は評価している。
9 環境省 令和 3 年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第 1 部第 2 章第 2 節 循環経済への移行
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r03/html/hj21010202.html
3. SPT の測定
3-1. 評価の視点
本項では、本借入金の SPT について、選定されたKPI における重要な改善を表し Business as Usualの軌跡を超える等の野心的なものか、野末商店の過年度実績や同業他社、業界水準、科学等のベンチマークに基づいているか、目標達成へのスケジュール等は開示されるか等を確認する。
3-2. SPT の測定の概要とJCR による評価
〈評価結果〉
本借入金の SPT は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。
野末商店は、本借入金で以下の SPT を設定している。
SPT :2024年度 24.1%削減(2020年度比) 2025年度 28.3%削減(2020年度比)
2026年度 32.5%削減(2020年度比)
2027年度 36.7%削減(2020年度比)
2028年度 40.9%削減(2020年度比)
i. 過年度実績との比較
本 KPI であるCO2 排出量(Scope1・2)の過年度実績(及び SPT)は、以下の表の通りである。
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 2028 | |
実績 | 実績 | 実績 | - | SPT | SPT | SPT | SPT | SPT | |
CO2 排出量 (tCO2) | 1,673 | 1,566 | 1,410 | - | 1,270 | 1,199 | 1,129 | 1,059 | 989 |
基準年比 (2020 年度比) | - | -6.4% | -15.7% | - | -24.1% | -28.3% | -32.5% | -36.7% | -40.9% |
直近年比 (2022 年度比) | - | - | -10.0% | -14.9% | -19.9% | -24.9% | -29.9% |
図表 8 野末商店グループ 本KPI の過年度実績(及びSPT)
野末商店の過年度実績について、2020 年度から 2022 年度にかけての削減率は平均 7.8%(年率ベース)であるが、これは再エネ導入の成果、及びコロナ禍に伴う金属リサイクル量の減少が原因である。
本 SPT は、2020 年度比で年率 4.2%、2022 年度比で年率約 5.0%の削減を目指すものである。野末商店は、今後事業の拡大を見込んでおり、かつ CO2 削減施策が限られてくるなかで、2020 年度比で年率 4.2%削減を継続して進めることは難易度が高く野心的である、と JCR は評価している。
ii. 科学的根拠、その他のベンチマークとの比較
<科学的根拠との比較>
パリ協定において求められる水準と整合した中長期的な GHG 排出削減目標として、SBT(Science Based Targets)が国際的に認知されている。SBT においては、well-below 2℃目標の達成に向けては年率 2.5~4.2%、1.5℃目標の達成に向けては年率 4.2%以上の削減が目安とされている10。
野末商店は、SBT 認定取得を意識したうえで、外部コンサルティング会社や静岡銀行と協議した結果として年率 4.2%削減(2020 年度比)の SPT を設定している。本 SPT は、SBT において 1.5℃目標の水準に相当する科学的根拠のある目標と考えられる。
<その他ベンチマークとの比較>
野末商店が事業を営む日本国内においては、日本政府が 2030 年度までに 2013 年度比 46%の GHG 削減目標を公表している(約 2.7%/年の削減率に相当)。
本 SPT の削減率(年率 5.0%削減・2022 年度比)は、日本政府の目標を上回る水準と考えられる。
<同業他社との比較>
同等規模の競合他社について CO2 排出量の算定結果や削減目標を開示していないケースが殆どであるなか、野末商店が CO2 排出量の実績開示を進めるとともにベンチマーク等に比して高くかつ科学的根拠のある本 SPT を設定・公表することは先進的であり、相対的に野心的な取り組みである。
iii. SPT 達成に向けた取り組み
野末商店グループの CO2(Scope1・2)は、金属スクラップの回収・選別・破砕・粉砕・成分分析工程で主に発生している。
これまで、野末商店は、太陽光発電の導入など再エネによる Scope2 の CO2 削減を進めてきた経緯がある。現時点では Scope1 の CO2 排出量が全体の 7 割を占めており、その主な発生源はトラック・リフト・重機等で使用される軽油となっている。
上記状況を踏まえ、野末商店は SPT 達成に向け下記施策に取り組む予定であるが、更なる追加的な削減施策の検討も並行して進める予定である。
【Scope1 の削減施策】
・環境配慮型のフォークリフトの導入(ハイブリッドカーや電動フォークリフト)
・リグルーブタイヤ11を使用した大型車両の導入に伴う燃費向上
【Scope2 の削減施策】
・再エネの更なる導入(太陽光発電、非化石証書の購入など)
以上を踏まえ、本 SPT は野心的である、と JCR は評価している。
10 環境省資料(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/SBT_syousai_all_20221201.pdf)等を参照
11 リグルーブタイヤとは、タイヤのゴムをあらかじめ厚めにつくっておき、ゴムが摩耗して溝が浅くなった時点で、溝を彫り直して寿命を延ばすタイヤのこと。この作業を施すことで、タイヤの走行寿命を延ばすとともに、省燃費や安全性向上にも貢献する。
3-3. JCR によるインパクト評価
社会 | 人格と人の安全保障 | 紛争 | 現代奴隷 | 児童労働 | |
データプライバシー | 自然災害 | ||||
健康および安全 | |||||
資源とサービスの入手可能性、アクセス可能性、 手ごろさ、品質 | 水 | 食糧 | エネルギー | 住居 | |
健康と衛生 | 教育 | 移動手段 | 情報 | ||
コネクティビティ | 文化と伝統 | ファイナンス | |||
生計 | 雇用 | 賃金 | 社会的保護 | ||
平等と正義 | ジェンダー平等 | 民族・人種平等 | 年齢差別 | その他の社会的弱者 | |
社会経済 | 強固な制度・平和・安定 | 法の支配 | 市民的自由 | ||
健全な経済 | セクターの多様性 | 零細・中小企業の繁栄 | |||
インフラ | |||||
経済収束 | |||||
環境 | 気候の安定性 | ||||
生物多様性と 生態系 | 水域 | 大気 | 土壌 | ||
生物種 | 生息地 | ||||
サーキュラリティ | 資源強度 | 廃棄物 |
JCR は、本借入金の SPT に係るポジティブなインパクトの増大及びネガティブなインパクトの回避・管理・低減の度合いについて、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が策定したポジティブ・インパクト金融原則の第 4 原則で例示されているインパクト評価基準の 5 要素(多様性、有効性、効率性、倍率性、追加性)に沿って確認した。
① 多様性:多様なポジティブ・インパクトがもたらされるか (UNEP FIの定めるインパクト、事業セグメント、国・地域、バリューチェーン等) |
本KPI/SPTに係るインパクトは、UNEP FIの定めるインパクト・エリア/トピックのうち以下の通り該当している。 本SPTは、野末商店グループの事業セグメント全体へのインパクトが期待される。本SPTは、野末商店グループのサプライチェーンのうち「製造」段階でのインパクトが期待される。 【調達】 【製造】 【流通】 【使用】 【廃棄】 |
② 有効性:大きなインパクトがもたらされるか (対象となる事業の売上構成比や国内外マーケットシェア、野心度等) |
本SPTは、野末商店グループの事業セグメント全てをカバーする見込みである。 野末商店は、グループ売上高は約205億円、金属取扱数量は計4.29万tとなっており、鉄・銅のリサイクルを行う企業として中堅・中小規模ではあるが一定の事業量を有している。同等規模の競合他社が CO2削減目標を開示していない場合が殆どであるなか、野末商店が本SPTを設定・公表することは先 進的であり、業界全体・サプライチェーン全体へのインパクトも期待される。 |
③ 効率性:投下資本に比して大きなインパクトがもたらされるか (事業全体における重要性、戦略的意義等) |
本SPTは、上述した通り、SDGsやパリ協定などの世界全体の目標、野末商店が定めた重要テーマに関連する目標である。SPT達成に向けた投下資本は、野末商店の事業全体に対し効率的にインパクト が発現することが期待される。 |
➃ 倍率性:公的資金や寄付に比して民間資金が大きく活用されるか |
本SPTに係るインパクトについて、本項目は評価対象外である。 |
⑤ 追加性:追加的なインパクトがもたらされるか (対応不足の持続可能な開発ニーズへの取り組み、SDGs達成に向けた前進等) |
本SPTは、以下にリストアップしたとおり、SDGsの17目標及び169ターゲットのうち複数の目標・ ターゲットに対して、追加的なインパクトが期待される。 |
目標 7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
ターゲット 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
目標 9:産業と技術革新の基盤をつくろう
ターゲット 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
目標 13:気候変動に具体的な対策を
ターゲット 13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。
4. 借入金の特性
4-1. 評価の視点
本項では、本借入金で定められた借入金の特性について、予め設定されたSPT が達成されるか否かによって、本借入金に基づく借入金の金利等は変化するか等を確認する。
4-2. 借入金の特性の概要と JCR による評価
〈評価結果〉
本借入金で定められた借入金の特性は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。
KPI・SPT の定義については、本借入金にかかる契約書等において特定される。また、本借入金は、事前に設定された SPT を達成するか否かに応じて、財務的特性を変動させる取り決めとなっている。具体的な内容として、借入金利の変動が予定されている。
以上を踏まえ、本借入金についてサステナビリティ・リンク・ローンが具備すべき条件について適切な設定がなされている、とJCR は評価する。
5. レポーティング・検証
5-1. 評価の視点
本項では、本借入金で定められたレポーティングについて、選定された KPI の実績に係る最新情報や SPT の野心度を判断できる情報等が、年に 1 回以上開示されるか等を確認する。また、本借入金で定められた検証について、選定された KPI の実績に対する独立した外部検証は実施されるか、当該検証内容は開示されるか等を確認する。
5-2. レポーティング・検証の概要と JCR による評価
〈評価結果〉
本借入金で定められたレポーティング・検証は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。
野末商店は、本借入金の返済までの期間、本 KPI の毎年の実績値及び SPT の達成状況について、外部機関による検証を受けたのち、静岡銀行に対して毎年報告する予定である。また、KPI の各年度の実績値について、野末商店のホームページに開示される予定である。
本借入金の返済までに、周辺環境、KPI の方法論、SPT の測定等にかかる重大な変更が発生した場合には、第三者機関がレビューを行い、引き続き SLLP 等への準拠状況と当初想定した KPI の有意義性や SPT の野心性が維持されるか否かを確認する。
以上より、本借入金に係るレポーティング・外部検証は適切に計画されている、と JCR は評価する。
6. SLLP 等への適合性に係る結論
以上より、JCR は本借入金が SLLP 等に適合していることを確認した。
(担当)梶原 敦子・佐藤 大介
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が付与し提供する第三者意見は、Asia Pacific Loan Market Association(APLMA)、Loan Market Association(LMA)、Loan Syndications and Trading Association(LSTA)が策定したサステナビリティ・リンク・ローン原則及び環境省が策定したサステナビリティ・リンク・ローンガイドラインへの評価対象の適合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該評価対象がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況を評価するものであり、将来における状況への評価を保証するものではありません。また、本第三者意見は、サステナビリティ・リンク・ローンによるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。設定されたサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲットの達成度について、JCR は借入人の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を提供するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本第三者意見を提供するうえで JCR は、APLMA、LMA、LSTA、環境省及び国連環境計画金融イニシアティブが策定した以下の原則及びガイドを参照しています。
・サステナビリティ・リンク・ローン原則
・サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン
・ポジティブ・インパクト金融原則
3. 信用格付業に係る行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業に係る行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、又は閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本評価対象者と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、借入人及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、又はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、又は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるサステナビリティ・リンク・ローンに係る各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、又は撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部又は全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、サステナビリティ・リンク・ローンについて、APLMA、LMA、LSTA
によるサステナビリティ・リンク・ローン原則への適合性に対する第三者意見を述べたものです。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ 認定検証機関)
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則、Climate Transition Finance 作業部会メンバー
■その他、信用格付業者としての登録状況等
・信用格付業者 金融庁長官(格付)第 1 号
・EU Certified Credit Rating Agency
・NRSRO:JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4クラスに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。米国証券取引委員会規則 17g- 7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示は JCR のホームページ(https://www.jcr.co.jp/en/)に掲載されるニュースリリースに添付しています。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026