Contract
15 パ-トタイム労働者として働くために
パートタイム労働法では、短時間労働者(以下「パートタイム労働者」という。)とは、通常の労働者に比べ、1週間の所定労働時間が短い労働者をいいます。
したがって、パートタイマー、準社員、アルバイト、臨時などの名称とは関係なく、通常の労働者と比べ労働時間の短い働き方をする者は、すべてパートタイム労働者となります。
パートタイム労働者にも労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、雇用保険法などの労働者保護法令は適用されます。
少子高齢化、労働力減少社会で、パートタイム労働者がその能力をより一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、改正パートタイム労働法が平成27年4月1日より施行されていま す。
事業主は、パートタイム労働法(パート法)他、関係法令に基づき、パートタイム労働者の雇用管理の改善に努めてください。
パートタイム労働者の雇用管理
① 事業主の責務(パート法第3条) |
事業主は、その就業の実態などを考慮して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進の措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、パートタイム労働者の能力を有効に発揮することができるように努めなければなりません。 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用するパートタイム労働者の雇用管理改善等に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければなりません。 |
② 労働条件に関する文書の交付 (パート法第6条) |
事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、速やかに、労働基準法に基づき明示を義務づけられている賃金、労働時間等の労働条件とともに「昇給・賞与・退職金の有無」 「相談窓口」を文書の交付等で明示しなければなりません。 事業主は、上記の項目以外の労働条件について、文書の交付などにより明示するよう努めなければなりません。 |
③ 短時間労働者の待遇の原則 (パート法第8条) |
パートタイム労働者と正社員の待遇の相違は職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して不合理でないものとしなければなりません。 |
④ 差別的取扱いの禁止(パート法第9条) |
事業主は、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の待遇について差別的取扱いをしてはいけません。 |
⑤ 賃 金(パート法第10条) |
事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、パートタイム労働者の職務内容、成果、意欲、能力、経験などを勘案して賃金を決定するように努めなければなりません。 |
⑥教育訓練 (パート法第11条) |
事業主は、職務内容が通常の労働者と同じパートタイム労働者に対して、職務の遂行に必要な能力を付与する教育訓練は、通常の労働者と同様に実施しなければなりません。 上記以外の教育訓練については、職務の内容の違いの有無にかかわらず、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経験などに応じて実施するように努めなければなりません。 |
⑦ 福利厚生施設 (パート法第12条) |
事業主は、福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用の機会をパートタイム労働者に対しても与えるように配慮しなければなりません。 |
⑧ 通常の労働者への転換 (パート法第13条) |
事業主は、パートタイム労働者に対して、通常の労働者への転換を推進するため次のいずれかの措置を講じなければなりません。 ①通常の労働者を募集する場合、その募集内容を既に雇っているパートタイム労働者に周知する ②通常の労働者のポストを社内公募する場合、既に雇っているパートタイム労働者にも応募する機 会を与える ③パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度を設ける ④その他通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずる |
⑨ 待遇の決定に当たって考慮した事項の説明(パート法第14条) |
事業主は、パートタイム労働者を雇い入れた時は速やかに実施する雇用管理の改善措置の内容を説明しなければなりません。 事業主は、雇い入れ後パートタイム労働者から求められたとき、そのパートタイム労働者の待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明しなければなりません。 |
⑩ 相談体制の整備(パート法第16条) |
事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するため必要な体制を整備しなければなりません。 |
⑪ 苦情の自主的解決(パート法第22条) |
事業主は、パートタイム労働者から苦情の申出を受けたときは、事業所内で自主的な解決を図るように努めなければなりません。 |
⑫ 紛争解決の援助(パート法第24条)、調停(同第25条) |
紛争解決援助の仕組みとして、「都道府県労働局長による助言、指導、勧告」、「均衡待遇調停会議による調停」が設けられてます。 |
⑬ 期間の定めのある労働契約(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準) |
期間の定めのある労働契約締結の際に、労働基準法に基づき定められた「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の定める措置(有期労働契約締結時の当該契約更新の有無の明示等)を講じなければなりません。 有期労働契約の締結時や期間満了時におけるトラブルを防止するために、使用者が講ずべき様々な措置として「契約の締結時・契約期間終了後の更新の有無」と「更新する場合又はしない場合の判断基準」を明示しなければなりません。 |
⑭ 解 雇(労働契約法第16条、労働基準法第20条、民法第628条) |
パートタイム労働者だからといって、いつでも解雇できるものではありません。 期間の定めのない労働契約の場合、通常の労働者と同じく、正当な理由のない解雇は無効です。 また、解雇する場合は、少なくとも30日前に、その予告をするか平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。 なお、期間の定めのある労働契約の場合は、「やむを得ない事由がある場合」を除き、契約期間中に一方的に契約を解除する(解雇する)ことは原則できません。 |
⑮ 雇止め(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準) |
期間の定めのある労働契約の場合、契約期間が満了すれば自動的に労働契約は終了します。なお、3回以上労働契約を更新している、または1年を超えて継続勤務しているパートタイム労働者(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く)を雇止めする場合には30日前までの予告が必要となります。 |
⑯ 退職時等の証明(労働基準法第22条第1項、第2項) |
退職に際し、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職事由(解雇の場合はその理由を含む)について証明書の請求があった場合、事業主は遅滞なくこれを交付しなければなりません。 解雇予告をした日から退職日までの間に、パートタイム労働者から解雇の理由について証明書の請求があった場合、事業主は遅滞なくこれも交付しなければなりません。 |
⑰ 年次有給休暇(労働基準法第39条) |
週30時間以上、又は週5日以上勤務の場合は、通常の労働者と同じ日数の年休が、週30時間未満かつ週4日以下勤務のときは勤続年数や労働日数に応じて、比例付与されます。 |
⑱ 健康診断(労働安全衛生法第66条) |
常時雇用するパートタイム労働者についても、雇入れ時、定期に健康診断を実施しなければなりません。一定の有害業務に就かせる場合、または当該業務への配置換えの際には、特殊健康診断を実施しなければなりません。 |
⑲ 妊娠中及び出産後における措置(労働基準法第65条、男女雇用機会均等法第12、13条) |
妊娠中及び出産後1年以内のパートタイム労働者について、事業主は、産前産後休業の措置や母子保健法の規定による保健指導又は健康診査等を受けるために必要な時間を確保 しなければなりません。 また、事業主は、パートタイム労働者が当該保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更等必要な措置を講じなければなりません。 |
⑳ 労働保険、社会保険 |
<労災保険> パートタイム労働者も通常の労働者と区別することなく、業務上及び通勤途上の負傷及び疾病に対して労災保険給付を受けることができます。 <雇用保険> パートタイム労働者の場合は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合、被保険者となることができます。 <健康保険と厚生年金保険> パートタイム労働者が被保険者になるかどうかについては、労働日数、就労形態、職務内容等を総合的に判断されます。その目安としては、1日または1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、通常の労働者のおおむね4分の3以上であるとされています。 加えて、平成28年10月から①週20時間以上 ②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上) ③勤務期間1年以上 ④学生除く ⑤従業員501人以上の企業 全てを満たす場合は被保険者となります。 |
パートタイム労働指針のポイント
パートタイム労働指針は、事業主が講ずべき適正な労働条件の確保及び雇用管理の改善に関する措置等に関し、その適正かつ有効な実施を図られるために定められています。
パートタイム労働指針では、事業主がパートタイム労働者を雇う上での基本的な考え方として、次のように規定しています。
◆基本的な考え方
(1)労働関係法令を遵守してください。
パートタイム労働者には、パートタイム労働法以外にも労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、雇用保険法などの労働関係法令が適用されますので、事業主はこれらの法令を遵守しなければなりません。
(2)労働条件を合理的な理由なく一方的に不利益変更することは許されないことに
留意してください。
パートタイム労働者の雇用管理を見直す際、通常の労働者、パートタイム労働者にかかわらず、労働者の労働条件を合理的な理由なく、事業主の一存で一方的に変更することは、許されません。
労働条件の変更を労働契約によって行う場合には労働者との合意が必要ですし、就業規則によって行う場合には各労働者の合意までは求められませんが、その内容の相当性や労使交渉等の事情にかんがみ合理的なものである必要があります。
いずれにしても、労働条件を見直す際は、事業所内でよく話し合った上であることが望まれます。
(3)フルタイムで働く「パート」と呼ばれる方にも法の趣旨が考慮されるべきであることに
留意してください。
フルタイムで働く人については、「パート」などに類する名称で呼ばれていてもパートタイム労働法の対象とはなりませんが、事業主はこれらの方についてもパートタイム労働法の趣旨が考慮されるべきであることに留意する必要があります。
(4)上記の基本的な考え方に基づき、事業主が適切に講ずべき措置は以下のとおりです。
①労働時間について配慮するよう努めること、
②職務関連賃金以外の賃金(退職手当や住宅手当等)について均衡を考慮するよう努めること、
③給食施設、休憩室及び更衣室の利用以外の福利厚生について均衡を考慮するよう努めること、
④パートタイム労働者との話し合いを促進するよう努めること、
⑤法定事項を行ったことによってパートタイム労働者を不利益に取り扱わないこと
⑥親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由とした解雇等を行わないこと