2 医薬品及び医療機器 GCP 省令第2条22項に定める「自ら治験を実施しようとする者」及び2
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
第1章 中央治験審査委員会
(目的と適用範囲)
第1条 本手順書は「医師主導治験に係る標準業務手順書」に基づいて、医師主導治験に係る標準業務手順書第12条第1項の規定により院内に設置された中央治験審査委員会の運営に関する手続き及び記録の保存方法を定めるものである。
2 医薬品及び医療機器 GCP 省令第2条22項に定める「自ら治験を実施しようとする者」及び2
3項に定める「自ら治験を実施する者」を、本手順書においては、「自ら治験を実施する者」という。
3 医療機器の治験に対しては、第8条及び第22条を除き「医薬品」、「治験薬」、「被験薬」、「副作用」及び「同一構造および原理」と読み替えることにより、本手順書を適用する。
4 医薬品 GCP 省令第27条または医療機器 GCP 省令第46条に基づき、他の医療機関の長より治験の調査及び審議の依頼があった場合、理事長と他の医療機関の長との契約が締結されたことを確認した上で、当該治験の調査審議を行うことができる。
(中央治験審査委員会の責務)
第2条 中央治験審査委員会は、すべての被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図らなければならない。
2 中央治験審査委員会は、社会的に弱い立場にあるものを被験者とする可能性のある治験には特に注意を払わなければならない。
3 中央治験審査委員会は、倫理的、科学的及び医学的・薬学的妥当性の観点から治験の実施及び継続等について調査審議を行わなければならない。
(中央治験審査委員会の設置及び構成)
第3条 中央治験審査員会は、理事長が指名する者 9 名以上をもって構成する。なお、理事長は中央治験審査委員会の委員にはなれないものとする。
(1) 委員長:薬剤部長
(2) 副委員長:治験・臨床研究推進センター長
(3) 委員:医師 2 名以上(内科系医師1名、外科系医師1名を含むこと)、看護研修室長
(4) 医学、歯学、薬学その他の医療又は臨床試験に関する専門的知識を有する者以外の委員(下記、(5)の委員を除く):財務経理部長、財務経理課長
(5) 実施医療機関と利害関係を有しない委員:2 名以上
2 委員の任期は1年とするが、再任は妨げない。
3 中央治験審査委員会は、男女両性で構成されることが望ましい。
4 本条第1項の委員に欠員が生じた場合は、理事長は後任の委員を指名する。この場合、後任の委員の任期は、前任者の残余期間とする。
(中央治験審査委員会の業務)
第4条 中央治験審査委員会は、その責務の遂行のために、次の最新の資料を実施医療機関の長から入手しなければならない。
(1) 治験実施計画書
但し、実施医療機関の名称及び所在地、治験責任医師となるべき者の氏名及び職名並びに各実施医療機関を担当するモニター(モニターが複数である場合にはその代表者)の氏名、職名及び電話番号等の医療機関に特有の情報について治験実施計画書の別冊とされている場合は、実施医療機関に係わるもののみでの良いこととする。
(2) 症例報告書の見本
但し、治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解することができる。
(3) 説明文書・同意文書
(4) モニタリングに関する手順書
(5) 監査に関する計画書及び業務に関する手順書
(6) 治験薬等の管理に関する事項を記載した文書
(7) 医薬品GCP省令又は医療機器GCP省令の規程により治験責任医師(自ら治験を実施する者)及び実施医療機関に従事する者が行う通知に関する事項を記載した文書
(8) 当センターが治験責任医師の求めに応じて治験に係る文書又は記録を閲覧に供する旨を記載した文書
(9) 当センターが医薬品GCP省令及び医療機器GCP省令又は治験実施計画書に違反することにより適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合(被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由による場合を除く。)には、治験責任医師は治験を中止することができる旨を記載した文書
(10) その他治験が適正且つ円滑に行われることを確保するために必要な事項を記載した文書
(11) 被験者の募集手順(広告等)に関する資料(募集する場合)
(12) 治験責任医師及び治験分担医師の氏名を記載した文書(書式 2 で代用)
(13) 治験薬概要書
(14) 被験者の安全等に関わる報告
(15) 治験の費用の負担について説明した文書(被験者への支払(支払いがある場合)に関する資料)
(16) 被験者の健康被害に対する補償に関する資料
(17)治験責任医師の履歴書及び治験責任医師が医薬品GCP省令第42条又は医療機器GCP
省令62条に規定する要件を満たすことを証明した履歴書((医)書式1)及び調査審議に必要な場合には治験分担医師の履歴書
(18)治験の現況の概要に関する資料(継続審査等の場合)(書式11)
(19)その他中央治験審査委員会が必要と認める資料
2 中央治験審査委員会は、次の事項について調査審議し、記録を作成する。
(1) 治験を実施することの倫理的、科学的及び医学的・薬学的観点からの妥当性に関する調査審議事項
ア 実施医療機関が十分な臨床観察及び試験検査を行うことができ、かつ、緊急時に必要な措置を採ることができる等、当該治験を適切に実施できること
イ 治験責任医師及び治験分担医師が当該治験を実施する上で適格であるか否かを最新の履歴書等により検討すること
ウ 治験の目的、計画及び実施が妥当なものであること
エ 被験者の同意を得るに際しての説明文書及び同意文書の内容が適切であることオ 被験者の同意を得る方法が適切であること
カ 被験者への健康被害に対する補償の内容が適切であることキ 予定される治験費用が適切であること
ク 被験者に対する支払いがある場合には、その内容・方法が適切であること ケ 被験者の募集手順(広告等)がある場合には、募集の方法が適切であること
(2) 治験実施中又は終了時に行う調査審議事項ア 被験者の同意が適切に得られていること
イ 以下に挙げる治験実施計画書の変更の妥当性を調査・審査すること
① 被験者に対する緊急の危険を回避するなど医療上やむを得ない事情のために行った治験実施計画書からの逸脱又は変更
② 被験者に対する危険を増大させるか又は治験の実施に重大な影響を及ぼす治験に関するあらゆる変更
ウ 治験実施中に当該実施医療機関で発生した重篤な有害事象報告に基づく、治験の継続の可否を調査審査すること
エ 被験者の安全又は当該治験の実施に悪影響を及ぼす可能性のある重大な情報に基づく、当該治験の継続の可否を調査審査すること
注)重大な情報
① 他施設で発生した重篤で予測できない副作用
② 重篤な副作用又は治験薬及び市販医薬品の使用による感染症の発生数、発生頻度、発生条件等の発生傾向が治験薬概要書から予測できないもの
③ 死亡又は死亡に繋がる恐れのある症例のうち、副作用によるもの又は治験薬及び市販医薬品の使用による感染症によるもの
④ 副作用又は治験薬及び市販医薬品の使用による感染症の発生数、発生頻度、発生状
況等の発生傾向が著しく変化したことを示す研究報告
⑤ 治験の対象となる疾患に対し効能若しくは効果を有しないことを示す研究報告
⑥ 副作用又は感染症によりがんその他の重大な疾病、障害又は死亡が発生するおそれがあることを示す研究報告
⑦ 当該被験薬と同一成分を含む市販医薬品に係る製造又は販売の中止、回収、廃棄その他の保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための措置の実施
オ 治験の実施状況について少なくとも 1 年に 1 回以上調査審査することカ 治験の終了、治験の中止又は中断及び開発の中止を確認すること
(3) その他中央治験審査委員会が求める事項
3 中央治験審査委員会は、新規申請の治験については、原則として各実施医療機関の治験責任医師を代表して 1 名の治験責任医師の中央治験審査委員会への出席を要請し、意見を求めるものとする。
4 中央治験審査委員会は、治験責任医師に対して中央治験審査委員会が治験の実施を承認し、これに基づく実施医療機関の長の指示及び決定が文書で通知され、理事長と治験責任医師との合意が締結されるまで被験者を治験に参加させないように求めるものとする。
5 中央治験審査委員会は、被験者に対する緊急の危険を回避するためなど医療上やむを得ない場合、又は変更が事務的事項に関するものである場合(例:実施医療機関の名称・診療科名の変更、実施医療機関の所在地又は電話番号の変更、治験分担医師の氏名表記、所属及び職名の変更、モニターの変更)を除き、中央治験審査委員会から承認の文書を得る前に治験実施計画書からの逸脱又は変更を開始しないように求めることとする。
6 中央治験審査委員会は、治験責任医師が以下の事項を実施医療機関の長を経由して中央治験審査委員会に速やかに文書で報告するよう求めるものとする。
(1)被験者に対する緊急の危険を回避するなど医療上やむを得ない事情のために行った治験実施計画書からの逸脱又は変更に関する報告
(2) 被験者に対する危険を増大させるか又は治験の実施に重大な影響を及ぼす治験に関するあらゆる変更
(3) 全ての重篤で予測できない副作用等
(4) 被験者の安全又は当該治験の実施に悪影響を及ぼす可能性のある新たな情報
(5) 治験期間中の審査の対象となる文書の追加、更新又は改訂が行われた場合
7 中央治験審査委員会は実施医療機関に対して実施されたモニタリング報告書及び監査報告書を入手し、モニタリング又は監査が適切に実施されたことを確認し、自ら治験を実施する者が行う治験が適切に行われたことについて、モニタリング及び監査と相互に点検する。
8 中央治験審査委員会は被験者に対して直接の臨床的利益が期待できない非治療的な内容の治験であって、被験者の同意を得ることが困難な者を対象とすることが予測される治験について承認する場合には、かかる被験者の参加を承認する旨と承認文書に記載する。
9 緊急状況下における救命的な内容の治験において、被験者による事前の同意を得ることが不可
能で、かつ被験者の代諾者と連絡がとれない場合にも治験が行われることが予測される場合には、承認文書中に被験者の同意なしに治験に参加する際の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図るための方法、及び治験責任医師等ができるだけ速やかに被験者又は代諾者となるべき者に対して説明し、同意を得た経緯と結果を中央治験審査委員会に報告するように承認文書に記載する。
10 あらかじめ、自ら治験を実施する者、治験審査委員会等及び理事長の合意が得られている場合には、医薬品GCP省令第 26 条の6第2項、医療機器GCP省令第 39 条第 2 項に関する治験を継続して行うことの適否についての意見に限り、治験審査委員会等は、理事長に加えて自ら治験を実施する者にも同時に文書により意見を述べることができる。この場合、医薬品GCP省令第32条第7項又は医療機器GCP省令第51条第7項の規定に基づき、治験審査委員会等の意見を理事 長が自ら治験を実施する者に文書により通知したものとみなす。
(中央治験審査委員会の運営)
第5条 中央治験審査委員会は、原則として月1回(第3週木曜日)開催する。但し、実施医療機関の長から緊急に意見を求められ、委員長が必要と判断した場合には、随時中央治験審査委員会を開催することができる。
2 中央治験審査委員会の議事進行は、原則委員長が行うものとする。但し、委員長不在あるいは委員長が当該治験の関係者の場合は、副委員長が議事進行を行うものとする。また、委員長・副委員長の両者が不在の場合、予め委員長が委員長代行を指名するものとする。
3 中央治験審査委員会は、実施中の各治験について、被験者に対する危険の程度に応じて、少なくとも 1 年に 1 回の頻度で治験が適切に実施されているか否かを調査審議するものとする。 なお、必要に応じて治験の実施状況について調査し、必要な場合には、実地医療機関の長に意見を文書で通知するものとする。
4 中央治験審査委員会の開催にあたっては、あらかじめ第2章第6条でいう中央治験審査委員会事務局から原則として 1 週間前に文書で委員長及び各委員に通知するものとする。
5 中央治験審査委員会は、以下の要件を満たす会議においてのみ、その意思を決定できるものとする。
(1) 審議の採決に参加できる委員が委員総数の過半数が参加していること。
(2) 第3条第1項(4)の委員が少なくとも1名参加していること。
(3) 第3条第1項(5)の委員が少なくとも1名参加していること。
6 採決に当たっては、審議に参加した委員のみが採決への参加を許されるものをする。
7 自ら治験を実施する者又は自ら治験を実施する者と密接な関係を有する委員(自ら治験を実施する者の上司又は部下等、治験薬提供者又は治験薬提供者と密接な関係を有するもの等)は、その関与する治験について情報を提供することは許されるが、当該治験に関する事項の審議及び採決への参加はできないものとする。
8 委員長が特に必要と認める場合には、委員以外の特別の分野の専門家を委員会に出席させて意見を聞くことができる。
9 採決は出席した委員全員の合意を原則とする。
10 意見は次の各号のいずれかによる。
(1)承認する
(2) 修正の上で承認する
(3) 却下する
(4) 既に承認した事項を取り消す(治験の中止又は中断を含む)
(5) 保留する
11 実施医療機関の長は、中央治験審査委員会の審査結果について異議がある場合には、理由書を添えて中央治験審査委員会に再審査を請求することができる。
12 中央治験審査委員会は、審査及び採決に参加した委員に関する記録(各委員の資格及び職名を含む)に関する記録、会議の記録及びその概要を作成し保存するものとする。なお、会議の記録の概要については次の各号により作成する。
(1) 開催日時
(2) 開催場所
(3) 出席委員名
(4) 議題(治験薬の成分記号及び一般名を含む。なお、第Ⅲ相試験の場合は開発の相及び対象疾患名を含める。)
(5) 審議結果を含む主な議論の概要
13 中央治験審査委員会は、審査終了後速やかに実施医療機関の長に、治験審査結果通知書((医)書式5)により報告する。治験審査結果通知書((医)書式5)には、以下の事項を記載するものとする。
(1) 審査対象の治験
(2) 審査をした資料
(3) 審査日
(4) 参加委員名
(5) 治験に関する委員会の決定
(6) 決定の理由
(7) 修正条件がある場合は、その条件
(8) 中央治験審査委員会の名称と所在地
(9) 中央治験審査委員会が医薬品及び医薬機器GCP省令に従って組織され、活動している旨を中央治験審査委員会が自ら確認し保証する旨の陳述
14 中央治験審査委員会は、承認済みの治験において治験期間内の軽微な変更の場合には迅速審査を行うことができる。迅速審査の対象か否かの判断は委員長が行う。ここでいう軽微な変更とは、治験の実施に影響を与えない範囲で、被験者に対する精神的及び身体的侵襲の可能性が少なく、被験者への危険性を増大させない変更を言う。具体的には、実施医療機関に係る組織・体制の変更、治験の期間が 1 年を超えない場合の治験実施期間の延長、実施症例数の追加又は治験分担医師の追
加・削除等が該当する。迅速審査は、中央治験審査委員会委員長及び委員長が指名する 1 名の委員により行い、本条第9項に従って判定し、第12項に従って実施医療機関の長に報告する。中央治験審査委員会委員長は、次回の中央治験審査委員会で迅速審査の内容と判定を報告する。なお、委員長が当該迅速審査の対象となる治験の関係者である場合は、副委員長と他の委員を指名して代行させる。
第2章 中央治験審査委員会事務局
(中央治験審査委員会事務局の業務)
第6条 中央治験審査委員会事務局は、中央治験審査委員会委員長の指示により、次の業務を行うものとする。
(1) 中央治験審査委員会の開催準備
(2) 中央治験審査委員の会議の記録(Q and A を含む)及びその概要(審議及び採決に参加した委員の名簿を含む)の作成
(3) 治験審査結果通知書((医)書式5)の作成及び実施医療機関の長への提出
(4) 記録の保存
中央治験審査委員会で審査の対象としたあらゆる資料、会議の記録(Q and A を含む)及びその概要、中央治験審査委員会が作成するその他の資料等を保存する
(5) その他、中央治験審査委員会に関する業務の円滑化を図るために必要な事務及び支援
2 中央治験審査委員会事務局は次の各号に示すものをホームページ等に公表する。
(1) 中央治験審査委員会標準業務手順書
(2) 委員名簿
(3) 会議の記録の概要
(4) 中央治験審査委員会の開催予定日
3 本条前項に関して変更があった場合は直ちに更新し、履歴を作成するものとする。なお、本条前項第3号の会議の記録の概要については中央治験審査委員会の開催後2か月以内を目処に公表するものとする。
4 中央治験審査委員会事務局は会議の記録の概要の公表の際、自ら治験を実施する者より知的財産権を侵害する内容が含まれていないか事前に確認したい旨の求めがあった場合には、これに応じると共に、必要に応じてマスキング等の措置を講じた上で公表する。
第3章 記録の保存
(記録の保存責任者)
第7条 中央治験審査委員会における記録の保存責任者は中央治験審査委員会事務局長とする。
2 中央治験審査委員会において保存する文書は以下のものである。
(1) 当標準業務手順書
(2) 委員名簿(委員の職業、所属及び資格を含む)
(3) 提出された文書
(4) 会議の記録及びその概要(審査及び採決に参加した委員名簿を含む。)
(5) 書簡等の記録
(6) その他、必要と認めたもの
(記録の保存期間)
第8条 中央治験審査委員会における保存すべき文書は、(1)又は(2)の日のうちいずれか遅い日までの間保存するものとする。ただし、自ら治験を実施する者がこれよりも長期間の保存を必要とする場合には、保存期間及び保存方法について自ら治験を実施する者と協議するものとする。
(1) 当該被験薬に係る製造販売承認日(開発を中止した又は臨床試験の試験成績に関する資料が申請書に添付されないことを決定した旨の通知を受けた場合にはその通知を受けた日)
(2) 治験の中止又は終了後3年が経過した日
2 中央治験審査委員会は実施医療機関の長を経由して、自ら治験を実施する者より前項にいう承認取得あるいは開発の中止等に関する報告((医)書式18)を受けるものとする。
(附則)
1 中央治験審査委員会に関する書類の取り扱いについては、統一書式を用いる。
平成 24 年 4 月 1 日施行
平成 24 年 6 月 22 日改訂
平成 25 年 4 月 1 日改訂
平成 25 年 8 月 1 日改訂
平成 26 年 4 月 1 日改訂平成 27 年 4 月 1 日改訂