Contract
【ダイジェスト版】工事請負契約における
設計変更ガイドライン(総合版)
~設計変更手続の明確化~
令和2年10月日 立 市
目 次
設計変更ガイドライン(総合版)の策定にあたって
本市では、これまで建設工事請負契約約款に基づき適正に設計変更を実施してきたところですが、この度、設計変更手続をより明確にするため、設計変更が不可能なケース・可能なケース、手続きの流れ等を体系的に整理した設計変更ガイドラインを策定することとしました。
この背景には、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の改正により、発注者の責務として「計画的な発注、適切な工期設定、適切な設計変更等」が示され、「設計図書に適切に施工条件を明示するとともに、必要があると認められたときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金額、又は工期の変更を行うこと」が明確化されたことがあります。
また、令和元年の台風15号、19号による風水害のような大規模自然災害の発生、新型コロナウイルス感染症等の指定感染症拡大防止措置などにより資機材等が調達できない場合や、これらにより技術者等が確保できない、実際に工事現場において感染者が発生した等の事情で現場の施工を継続することが困難となった場合には、工事一時中止及びこれに伴い必要となる請負代金額の変更等、適切な措置を行う必要があります。
このため本市では、工事一時中止に係るガイドラインを含む設計変更ガイドライン(総合版)を策定することにより、設計変更における対象事項や必要な手続に関する受発注者双方の理解を深め、迅速かつ適切な設計変更を実施することで、公共工事の一層の品質確保につなげることとしました。
1 設計変更ガイドライン策定の背景 1
(1) 工事請負契約の原則 1
(2) 発注者・受注者の留意事項 1
2 用語の定義 2
3 設計変更が不可能なケース 2
4 設計変更が可能なケース 3
5 設計変更の対象となる具体的な事例 3
(1) 設計図書に誤謬又は脱漏がある場合 3
(2) 設計図書の表示が明確でない場合 4 (3) 設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件
と実際の工事現場が一致しない場合 4 (4) 設計図書に明示されていない施工条件について
予期することのできない特別な状態が生じた場合 4 (5) 発注者が設計図書の変更を必要と認めた場合 5 (6) 工事中止の場合 5
(7) 受注者からの請求による工期の延長 5
(8) 発注者の請求による工期の短縮 5
6 Q&A 6
(1) ガイドライン全般 6
(2) 仮設における「指定」と「任意」の考え方 6
(3) 個別事項 7
7 工事一時中止の取扱いの運用 9
8 工事の中止(契約書の規定) 9
9 工事を中止すべき場合 10
1 設計変更ガイドライン策定の背景
(1) ガイドライン策定の目的
設計変更に係る業務の円滑化を図るためには、発注者と受注者がともに、設計変更が不可能なケー ス・可能なケース、手続の流れ等について十分理解しておく必要があることから、設計変更ガイドラインを策定する。なお、設計変更ガイドラインは一般的な考え方を示すものである。
(2) 発注者・受注者の留意事項
◆ 当 初
工事に必要な関係機関との調整、住民合意、用地確保、法定手続などの進捗状況を踏まえ、現場の実態に即した施工条件(自然条件を含む)を明示して、適切に設計図書を作成し、積算内容との整合を図るよう努める。
発注者
工事の着手に当たって設計図書を照査し、着手時点における疑義を明らかにするとともに、施工中に疑義が生じた場合には、工事打合せ簿の提出をもって、発注者とできるだけ早い段階で「協議」し工事を進めることが重要である。
受注者
◆ 設計変更時
設計変更に当たり関係部局と調整した際、速やかに受注者へ工事打合せ簿による指示・協議等を行う。
発注者
工事打合せ簿・指示書等の書面による発注者からの回答を得てから施工する。
受注者
2 用語の定義
◆ 設計変更ガイドラインにおいて用いる用語を以下に定義する
◇ 「設計変更」とは、図面又は仕様書を変更する場合に、発注者が受注者に対して、契約変更の前に変更内容を指示することをいう。
◇ 「契約変更」とは、工期又は請負代金額について変更の契約を締結することをいう。
◇ 「軽微な設計変更」とは、次に掲げる「重大な設計変更」以外の変更をいう。
① 構造、工法、位置、断面等の変更で重要なもの。
② 新工種に係るもの。
◇ 「設計図書」とは、仕様書、図面、現場説明書及び質問回答書をいう。また、土木工事においては、工事数量総括表を含む。
3 設計変更が不可能なケース
◆ 下記のような場合においては、原則として設計変更できない
◇ 設計図書に定め(条件明示)のない事項において、発注者と「協議」を行わず受注者が独自に判断して施工を実施した場合
◇ 発注者と「協議」をしているが、協議の回答がない時点で施工を実施した場合
◇ 「承諾」により施工した場合
◇ 契約書等に定められている所定の手続を経ていない場合
◇ 正式な書面によらない事項(口頭のみの指示・協議等)の場合
承諾 : 受注者自らの都合により施工方法等について監督職員に同意を得るもの。設計変更不可
協議 : 発注者と書面により対等な立場で合意して発注者の「指示」によるもの。設計変更可能
4 設計変更が可能なケース
◆ 下記のような場合においては、設計変更が可能である
◇ 仮設(任意仮設を含む。)において、条件明示の有無にかかわらず、当初発注時点で予期しえなかった土質条件や地下水位等が現地で確認された場合
◇ 設計書に指定する工事着手時期に、受注者の責めによらず、工事着手できない場合
◇ 所定の手続(「協議等」)を行い、発注者の「指示」によるもの(この場合であっても「協議」の結果として、軽微なものは契約変更を行わないこともある。また、土木工事における数量の変更で、設計表示単位に満たない場合は、契約変更の対象としない。)
◇ 受注者が行うべき「設計図書の照査」の範囲を超える作業を実施する場合
◇ 受注者の責めによらない工事の一時中止及び工期の延期・短縮を行う場合で、協議により必要があると認められるとき。
5 設計変更の対象となる具体的な事例
(1) 設計図書に誤謬又は脱漏がある場合(契約書第18条第1項第2号)
① 条件明示する必要がある場合にもかかわらず、土質や地下水位、交通整理人等に関する条件明示がない場合
② 設計図書内に記載した事項が、整合していない場合
(2) 設計図書の表示が明確でない場合(契約書第18条第1項第3号)
① 土質柱状図の地下水位が不明確で、水替工の記載はあるが、作業時もしくは常時排水などの運転条件等の明示がない場合
② 設計図書の記載内容が読み取れず、施工が困難な場合
(3) 設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しない場合
(契約書第18条第1項第4号)
土木工事
① 設計図書に明示された土質や地下水位が、現地条件と一致しない場合
② 設計図書に明示された交通誘導員の人数等が規制図と一致しない場合
建築工事
① 施工中に設計図書に示されていないアスベスト含有建材を発見し調査及び撤去が必要となった場合
(4) 設計図書に明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じた場合
(契約書第18条第1項第5号)
① 施工中に地中障害物を発見し、撤去が必要となった場合
② 施工中に埋蔵文化財を発見し、調査が必要となった場合
(5) 発注者が設計図書の変更を必要と認めた場合(契約書第19条)
① 周辺住民との協議により、変更する必要があると認めた場合
② 関係官公署の行政指導により、変更する必要があると認めた場合
(6) 工事中止の場合(契約書第20条)
① 警察、河川・鉄道管理者等の管理者間協議が未成立の場合
② 受注者の責めによらない何らかのトラブル(地元調整等)が生じた場合
③ 工事用地の確保ができない等のため工事を施工できない場合
④ 埋蔵文化財の発掘又は調査、その他の事由により工事を施工できない場合
(7) 受注者の請求による工期の延長(契約書第21条)
① 設計図書に明示された関連工事との調整に変更があり、工期の延長が必要な場合
② 受注者の責めに帰すことができない事由により、工期の延長が必要な場合
(8) 発注者の請求による工期の短縮(契約書第22条)
① 工事一時中止に伴い工期延長が予想されるが、供用日が決まっており工期短縮が必要な場合
② 地元調整、関係機関調整などにより、工期の短縮が必要な場合
6 Q&A
(1) ガイドライン全般
Q1 設計変更された内容の契約変更手続は、いつ頃行うのが適正ですか。
現場条件等の変更があり、発注者が施工条件の変更の必要性を認めた場合でも、契約変更手続は工期末に一括して行われるケースが多くあります。その都度、契約変更手続を実施できないのですか。
A1 設計変更に伴う契約変更手続は、その必要が生じた都度実施することとなります。ただし、建設工事においては軽微な設計変更も多くあり、それらに伴う契約変更手続については工期末に一括して行う場合もあります。
(2) 仮設における「指定」と「任意」の考え方
Q2 任意仮設の設計変更の考え方を教えてください。
A2 任意仮設は、工事請負契約書第1条第3項により受注者がその責任において定めるものとされているため、設計変更の対象となりません。
一方、施工条件と実際の工事現場が一致しない場合や当初発注時点で予期しえなかった現場条件等が確認された場合は、受発注者間の協議により、設計変更の対象となります。これに伴う任意仮設の変更は、請負代金額の変更の対象となります。
Q3 重機等施工機械の移動範囲の地盤強度が足りないことから、当初契約時の設計図書にない敷鉄板
等の仮設物が必要となりました。発注者がその必要性を認めた場合、設計変更の対象となりますか。
A3 仮設物の施工方法は任意であるため、原則として設計変更の対象となりません。
ただし、工事契約後の現地調査等の結果により地盤強度が足りないことが判明した場合は、工事請負契約書第18条第1項第4号に該当するものと考えられるため、受発注者間の協議により、設計図書の変更を行い、請負代金額を変更する場合もあります。(工事請負契約書第18条第4項 第3号、同条第5項)
(3) 個別事項
Q4 工事契約後、使用材料の入手に想定以上の時間がかかることが判明し、材料規格等を変更する場
合、設計変更の対象となりますか。
A4 受注者は、使用材料の入手にかかる時間について工事契約前に想定し、工事を受注したと考えられます。よって、工事請負契約書第18条第1項の条件変更等には該当しないので、原則として設計変更の対象となりません。
ただし、発注者の使用材料の選定に明らかに責めがある場合及び新型コロナウイルス感染症の拡大などのように発注段階では想定されない事象により材料等を変更せざるを得ない場合は、設計変更の対象となります。(工事請負契約書第18条第4項第1号、第3号)
Q5 大規模自然災害の発生又は新型コロナウイルス感染症の拡大防止措置や感染者等の発生により、技術者等が確保できず工程に遅れが生じた場合、工期の延長やそれに伴う増加費用について、設計変更の対象となりますか。
A5 受注者の責めによらない社会的な状況の変化により工期内に工事を完了できないときは、工事請負契約書第21条第1項の規定により、発注者に工期の延長変更を請求することができます。
また、工期延長に伴う増加費用については、原則として請負代金額の変更は行いませんが、社会的な影響が大きく国又は茨城県からの通知があった場合は、受発注者間で協議を行い必要と認められる対策について請負代金額を変更する場合もあります。
Q6 xxの高温多湿な作業環境下での措置として、WBGT(暑さ指数)の高い時間帯の作業休止や休憩時間の確保等により工程に遅れが生じた場合の工期の延長、及び、その(熱中症)対策による増加費用について、設計変更の対象となりますか。
A6 受注者の責めによらない異常な気象状況により工期内に工事を完了できないときは、工事請負契約書第21条第1項の規定により、発注者に工期の延長変更を請求することができます。
また、一般的な熱中症対策については、共通仮設費率及び現場管理費率等に含まれているため、原則として請負代金額の変更は行いませんが、受発注者間で協議を行い、特に必要と認められる対策(遮光ネット等)については、請負代金額を変更する場合もあります。
7 工事一時中止の取扱いの運用
◆ 工事の現状及び課題
一部の建設工事では、当初契約締結時に予測できない人為的事象や天災等の発生に伴う工事現場の状態
の変化等により、工事の継続が困難な状況に陥る場合がある。
そうした場合、工事現場の維持等に要する費用の適切な計上が必要である。
◆ 工事一時中止の取扱いについて
発注者は契約書第20条の規定に基づき、受注者の責めに帰すことができないものにより工事目的物等に損害が生じ若しくは工事現場の状態が変動したことにより、施工ができなくなった工事については、工事の全部又は一部の施工を一時中止させなければならない。
主に発注者の事由による工事一時中止について、適正な対応を行うための取扱いを定める。
8 工事の中止(契約書の規定)
◇ 受注者の責めに帰すことができない事由により工事を施工できないと認められる場合
① 工事用地等の確保ができない等のため、工事を施工できないと認められるとき。
② 暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象により工事目的物等に損害を生じ、若しくは工事現場の状態が変動したため、工事を施工できないと認められるとき。の2つが規定されている。【契約書第20条第1項】
◇ 上記の2つの規定以外にも、発注者が必要があると認めるときは、工事の全部又は一部の施工を一時中止させることができる。【契約書第20条第2項】
9 工事を中止すべき場合
◆ 工事用地等の確保ができない等のため工事を施工できない場合(例示)
◇ 設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見されたため(契約書第18条第1項)
施工を続けることが不可能な場合等
◇ 設計変更等により計画通知手続きが必要になり、工事の施工を止める必要がある場合
◇ 同一現場内に土木、建築、電気設備、機械設備等、複数の工事があり、一部の工事の契約が成立せず、他の契約済みの工事の施工ができない場合
◇ 同一現場内に土木、建築、電気設備、機械設備等、複数の工事があり、一部の工事で大幅な施工の
遅延が生じ、他の契約済みの工事の施工ができない場合
◇ 同一現場内に土木、建築、電気設備、機械設備等、複数の工事があり、一部の受注者が倒産等により施工できない状況が発生し、他の契約済みの工事の施工ができない場合
◆ 自然的又は人為的な事象のため工事を施工できない場合(例示)
◇ 地中障害物・埋設物等の調査及び処理を行う場合
◇ 埋蔵文化財の調査又は発掘を行う場合
◇ 天災等により地形等に物理的な変動があった場合
◇ 妨害活動を行う者による工事現場の占拠及び著しい威嚇行為があった場合