3.財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の概要 12
平成 15 年度
包括外部監査の結果に関する報告
「学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業」
平成 16 年2月
北九州市包括外部監査人公認会計士 x x x x
平成 16 年2月 24 日
北九州市包括外部監査人
xx xx
平成 15 年4月1日付包括外部監査契約書第8条に基づき外部監査の結果について別紙のとおり報告いたします。
包括外部監査の結果に関する報告
(学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業)目 次
第1.外部監査の概要 1
1.外部監査の種類 1
2.選定した特定の事件(テーマ) 1
3.事件を選定した背景及びその理由 1
4.外部監査の方法 2
5.外部監査の実施期間 3
6.外部監査人補助者 3
第2.北九州学術研究都市の概要 4
1.北九州学術研究都市の全体概要 4
2.北九州市立大学国際環境工学部等の概要 8
3.財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の概要 12
第3.外部監査の結果 17
Ⅰ.学術研究都市全般 18
1.施設整備事業 18
2.市の公有財産管理 20
3.市の物品管理 22
Ⅱ.北九州市立大学国際環境工学部 23
1.国際環境工学部関連の歳入の概要 23
2.目的外使用料 23
3.留学生会館使用料 23
4.教員宿舎家賃収入 25
5.予算管理簿 26
6.旅費 28
7.委託料 33
8.報償費、需用費、役務費等 41
9.工事請負費 41
10.公有財産購入費 42
11.備品購入費 42
12.物品受入れ 43
13.物品返納 43
14.物品管理 45
15.外部研究費 47
Ⅲ.財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS) 51
1.補助金収入の概要 51
2.研究基盤整備推進事業補助金 51
3.SOC 設計研究推進事業補助金 53
4.財団運営補助金 56
5.FAIS への学術研究施設等管理運営業務委託 57
6.知的クラスター創成事業 58
7.北九州 TLO 事業 59
8.生ごみ精製乳酸化実証事業 60
9.固定資産取引の状況 60
10.固定資産の現物管理状況 65
11.固定資産台帳 65
12.物品管理 66
第4.利害関係 68
本文中の表内の数値については、四捨五入にて端数処理を行っており、合計数値と内訳数値とに相違がある場合がある。
第1.外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第1項及び第2項に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件(テーマ)
(1)外部監査対象
学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業
(なお、対象を「学術研究都市全般」、「北九州市立大学国際環境工学部」、「財団法人北九州産業学術推進機構」の3つに区分して監査を行った。)
(2)外部監査対象期間
自 平成 14 年4月1日 至 平成 15 年3月 31 日
ただし、必要と認めた範囲において、上記平成 14 年度以外の各年度分についても一部監査の対象とした。
3.事件を選定した背景及びその理由
かつてxx長大型の産業都市として発展してきた市は、産業構造の転換や急速な国際化、高度情報化等を背景として、少なからず経済の足取りが緩み、市内の産業や企業だけでなく、市民生活にまで広く影響を及ぼしつつあった。これに対し、市は「北九州市ルネッサンス構想」を打ち出し、その重点的取組の一つとして、産業の高度化及び新産業の創出を推進するために学術研究都市づくりを進めてきた。
これは、市の目指すべき将来像を見据えた上で、大学や研究機関等を集積させた知的基盤を整備し、産学連携を推進することによって、地域経済の活性化、地場産業の振興を目指したものである。市の四大プロジェクトにも位置づけられ、市の将来発展可能性についての鍵を握る重要な事業の一つである。
また、学術研究都市における環境に関する学術・研究は、昨年度、特定の事件に選定した環境施策とともに、わが国環境政策の中でも先進的な取組である。市単独でこのような規模の学術研究都市を整備する事業は例がないこともあり、学術研究都市は対外的にも市を象徴するプロジェクトと言える。
現在のところ、学術研究都市の整備事業はまだ途中段階であり、産学連携による地域経済の活性化、地場産業の振興など、本来目的とする最終的な成果については、より長期的な視野に立って見極める必要がある。
ただし、学術研究都市整備事業の第1期については平成8年の事業着手以降の着実な整備によってほぼ終了しつつある(第1期区画整理事業費約 298 億円)。また、第1期
の大学ゾーンについては平成 13 年4月に正式オープンしており、2年間の管理運営の実績が積まれている。今後、さらに整備事業への投資が行なわれ、管理運営に対して市
の財政支出が継続されていくことを考えると、学術研究都市の構想の一部がハード、ソフト両面で形として見え始めた早い段階で監査を行うことは、意義があるものと考え、当該事件を選定した。
4.外部監査の方法
(1)外部監査の視点
当該事件について、次のような着眼点で監査を実施した。
① 事務事業の財務事務は、関係諸法令に従って、合規に執行されているか。
② 事務事業の経営管理事務は、経済性・効率性及び有効性の観点から、合理的かつ適切に執行されているか。
なお、具体的には次のような視点を有している。
(学術研究都市全般)
① 学術研究都市における主要な施設整備事業の事務が法令等に準拠しているか。
② 学術研究都市の共同利用施設及びその他財産の運営や管理について、事務手続等が適切になされているか。
(北九州市立大学国際環境工学部)
① 出納及び財務事務は法令等に準拠して、適切に遂行されているか。
② 財産の受入れ、返納の手続及び管理が適切になされているか。
③ 外部研究費のxxxに関して、規程・要綱への準拠及び取得財産の管理が適切になされているか。
(財団法人北九州産業学術推進機構)
① 出納及び事務は法令等に準拠しているか。
② 資産が適切に管理されているか。
(2)主な監査手続
(学術研究都市全般)
① 関係資料の閲覧及び説明聴取を行うとともに現場視察を行い、学術研究都市の概要を把握した。
② 学術研究都市に係る整備事業費に関して、決議書等承認関係、入札関係、契約関係等の書類を確認し、手続の適正性を検証した。
③ 学術研究都市における産業学術振興局所管の財産について、台帳等の閲覧及び照合を行い、関連帳簿類の整備状況及び正確性等の検証を行った。
(北九州市立大学国際環境工学部)
① 大学特別会計及びそのうちの国際環境工学部分の歳入・歳出決算資料を確認し、分析するとともに、内容について説明聴取を行い、財政状況を把握した。
② 使用料及び手数料等の歳入について、xx決議書等の関係書類を確認し、手続が
規定どおり行われ、正しく収入されているかを検証した。
③ 旅費、委託料等の歳出について、予算管理簿を確認するとともに、証憑類を閲覧し、契約・支出事務手続が適正に行われているかを検証した。
④ 物品に関して台帳類を閲覧するとともに現物照合を行い、関係規定等に沿った適正な受入れ・返納手続や管理が行われているかを検証した。
⑤ 奨学寄附金や受託研究費等の外部研究費に係る手続書類や収支簿、証憑類等を確認し、要綱や規程に沿って、適正な手続及び執行が行われているか検証した。
(財団法人北九州産業学術推進機構)
① 事業報告書及び収支決算書などの関係書類を閲覧するとともに、説明聴取を行い、概要を把握した。
② 市からの補助金について、補助金等交付規則等に則って、申請から実績報告までの手続が適正に行われているか、また、補助金が目的に従って適切に使用されているか検証した。
③ 市からの委託料について、契約書等の関係書類を閲覧し、適正に契約や精算の手続がなされるとともに、適切に履行されているかを検証した。
④ 固定資産台帳等及び関係帳簿類を閲覧するとともに、一部現物照合を行い、資産が適切に管理されているかについて確認した。
5.外部監査の実施期間
自 平成 15 年6月 23 日 至 平成 16 年2月 24 日
6.外部監査人補助者 | ||
公認会計x | x x | x x |
同 | x x | x x |
同 | x x | x x |
会計士補 | x x | x |
同 | x x | x x |
同 | x | x x |
その他 | x x | x x |
第2.北九州学術研究都市の概要
1.北九州学術研究都市の全体概要
(1)目的と経緯
北九州学術研究都市整備構想は、xx区西部及び八幡西区北西部において、市が近代産業の成長過程で蓄積した技術を生かし、アジアにおける学術研究機能の拠点として、21 世紀における創造的な産業都市として再生することを目指したものである。具体的には、先端技術開発の頭脳となる大学や研究機関等を集積し、学術研究機能と産業界との連携を促進することによって産業の高度化及び新産業の創出を図ることをねらいとしている。
年 月 | x x |
昭和 63 年 12 月 | ・「北九州市ルネッサンス構想」策定(目標年次:平成 17 年度) 目指す都市像のひとつに「xxをひらくアジアの学術・研究都市」を掲げる |
xxx年 12 月 1月 3月 | ・「北九州市ルネッサンス構想第 1 次実施計画」策定(xxx年度~平成5年度) ・「北九州学術・研究都市整備構想」発表 ・「北九州学術・研究都市基本構想」策定 |
平成3年2月 7月 | ・用地買収開始 ・福岡県「九州北部学術研究ゾーン整備基本計画」発表 北九州地域が第一次拠点地域として位置づけられる |
平成4年3月 | ・「北九州市に必要な新しい大学に関する研究報告書」作成 |
平成5年2月 | ・「新大学構想策定委員会」の発足 |
平成6年3月 4月 | ・「xxxx大学構想」策定 ・「北九州市ルネッサンス構想第2次実施計画」策定(平成6年度~10 年度) 四大プロジェクトの一つとして「北九州学術・研究都市整備」を位置づける |
平成7年4月 | ・北九州学術・研究都市整備事業第1期事業都市計画決定(市街化区域編入、区画整 理区域の決定等) |
平成8年2月 5月 | ・北九州学術・研究都市整備事業第1期事業の事業認可、事業着手 ・「xxxx大学設立検討委員会」発足 |
平成9年3月 5月 | ・「xxxx大学設立検討委員会」の検討結果報告 ・「xxxx大学構想推進委員会」発足 |
平成 10 年5月 8月 9月 | ・英国クランフィールド大学と日本センター設立の基本協定締結 ・ドイツ国立情報処理研究所と GMD-Japan 研究所設立の基本協定締結 ・早稲田大学と理工学総合研究センター九州研究所設立の基本協定締結 |
平成 12 年2月 4月 | ・「北九州市ルネッサンス構想第3次実施計画」策定(平成 11 年度~15 年度)重点施策の中で「学術・研究都市づくり」が取り上げられた ・早稲田大学大学院(仮称)先端技術デザイン研究科設置構想発表 ・九州工業大学大学院生命体工学研究科博士課程設置 |
平成 13 年1月 4月 | ・早稲田大学大学院(仮称)先端技術デザイン研究科進出の基本協定締結 ・北九州学術研究都市オープン ・早稲田大学理工学総合研究センター開設 ・九州工業大学大学院生命体工学研究科第1期生受入れ |
平成 14 年4月 | ・北九州学術・研究都市整備事業第2期事業着手 ・福岡大学大学院工学研究科資源循環・環境工学専攻開設 |
平成 15 年4月 | ・早稲田大学大学院情報生産システム研究科開設 |
経緯としては、昭和 63 年 12 月に策定された「北九州市ルネッサンス構想」に表1 北九州学術研究都市整備事業の経緯
(資料)市資料より作成
端を発している。同構想は、2005 年を目標に「水辺と緑とふれあいの“国際テクノロジー都市”へ」を基調テーマとして5つの都市像を目指したものであり、その一つの都市像が「xxをひらくアジアの学術・研究都市」である。その後、xxxxxx構想の三次にわたる実施計画においても位置づけられ、市の四大プロジェクトの一つとして事業が進められている。北九州学術研究都市整備事業の第1期事業の着手は平成8年2月である。
一方、学術研究都市の中核として国・公・私の大学や研究機関を集積させ、相互に協力や連携を深めながら教育研究を進めることを目指した新大学構想も検討されている。平成 10 年には英国クランフィールド大学、ドイツ国立情報処理研究所、そして早稲田大学との間で、学術研究都市への進出に関する基本協定を結び、新大学構想が具体的に動き出している。
その後、共同利用施設等の施設整備が進むとともに、九州工業大学大学院や北九州市立大学国際環境工学部などの大学や研究機関等も立地し、平成 13 年4月、北九州学術研究都市が正式にオープンしている。
(2)整備事業
学術研究都市の開発地域はxx区(大字xx、大字小敷、大字xx、xxxの)と八幡西区(大字xx、大字xx)である。開発面積は河川事業の約 10ha を含めると 335ha になる。整備手法は土地区画整理事業であり、全体の開発地域を3期に分けて段階的に整備する計画となっている。
第1期事業(約 121ha、このうち大学ゾーンは約 35ha)は、都市基盤整備公団が事業主体となり、平成7年度から平成 17 年度までの整備計画である。全体事業費
は約 298 億円となる。なお、土地の投機的値上がりを防ぐため、拠点整備地区内がxxx年2月1日から国土利用計画法に基づく「監視区域」に指定されている。
第2期事業(約 136ha)は市が事業主体となり、平成 14 年度から平成 21 年度までの計画である。全体事業費は約 270 億円が見込まれている。第3期事業(約68ha)については事業化に向けて検討を行っているところである。
整備の基本方針としては、周辺の自然環境や都市環境を活かしながら、先端科学技術に関する教育・研究機関の集積や良好な住宅宅地の供給を目標に複合的な街づくりを目指すとしており、計画人口は第1期 3,500 人、第2期 5,000 人、全体で
12,000 人である。
なお、今回の監査においては、学術研究都市の開発地域のうち、おおむね整備が終了し、既に大学や研究機関等が立地している第1期事業区域の大学ゾーン(約 35ha)を対象としている。
図1 北九州学術研究都市整備事業の概要
本監査で対象とする地域
(第1期大学
ゾーン約 35ha )
第1期 | 第2期 | 第3期 | |
大学・関連施設 | 38.2ha | 37.2ha | 検討中 |
研究所 | 11.3ha | 0ha | |
センター・沿道施設 | 10.5ha | 9.2ha | |
住宅 | 15.9ha | 45.6ha | |
公園・緑地 | 6.6ha | 11.7ha | |
道路 | 23.4ha | 23.0ha | |
その他 | 15.5ha | 8.8ha | |
合計 | 121.4ha | 135.5ha | 67.9ha |
(出所)市及び財団法人北九州産業学術推進機構のホームページより。ただし、平成 15 年 12 月8日の区画整理事業計画変更の内容に基づき面積等を修正済み。
(注) 上記の他、xx拡幅部約 10ha を河川事業で行う 。
(3)立地する主要な施設及び大学・研究機関
学術研究都市の第1期大学ゾーンに立地する主要な施設と大学、研究機関は次表のとおりである。この中で、今回の監査の対象となるのは、Ⅰ.第1期大学ゾーン内における共同利用施設や大学等に係る市による施設整備事業及び公有財産管理
(産業学術振興局)、Ⅱ.北九州市立大学のうち第1期大学ゾーンに立地する国際環境工学部及び大学院国際環境工学研究科、Ⅲ.学術研究都市の管理運営等を担っている財団法人北九州産業学術推進機構である。
表2 第1期大学ゾーンに立地する共同利用施設及び主な大学・研究機関等一覧
名 称 | 監査対象(○印) | |
共同利用施設 | ①産学連携センター(貸オフィス、研究室、会議室など) | ○ |
②共同研究開発センター(産学連携センター2号館) | ○ | |
③情報技術高度化センター(産学連携センター3号館) | ○ | |
④学術情報センター(図書室、講義室など) | ○ | |
⑤会議場 | ○ | |
⑥体育館 | ○ | |
⑦運動場、テニスコート、クラブセンター | ○ | |
主な大学 ・研究機関等 | ○北九州市立大学国際環境工学部、北九州市立大学大学院国際環境工学研究科 | ○ |
○九州工業大学大学院生命体工学研究科 | ||
○早稲田大学大学院情報生産システム研究科、早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所 | ○ (市による施設整備費等一部のみ) | |
○福岡大学大学院工学研究科 | ||
○福岡県リサイクル総合研究センター | ||
○GMD-Japan 研究所 | ○ (FAIS 関連のみ) | |
○英国クランフィールド大学北九州研究所 | ||
○科学技術振興事業団(さきがけ研究21「組織化と機能」領域事務所、SORST 北九大事務所) | ||
○早稲田大学国際情報通信研究センター | ||
○(財)九州ヒューマンメディア創造センター | ||
○通信放送機構北九州IT 開発支援センター | ||
○財団法人北九州産業学術推進機構(産学連携センター内) | ○ |
図2 学術研究都市の第1期大学ゾーンにおける建物配置図
学術情報センター
体育館
食堂
北九州市立大学国際環境工学部
大学院国際環境工学研究科
早稲田大学理工学総合研究センター
九州研究所 教職員宿舎
情報技術高度化センター(3号館)
九州工業大学大学院生命体工学研究科
北九州市立大学教員宿舎
早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所 研究員宿舎
北九州市立大学 留学生宿舎
共同研究開発センター(2号館)
会議場
産学連携センター
早稲田大学大学院
情報生産システム研究科
早稲田大学
理工学総合研究センター九州研究所
(出所)市資料より
2.北九州市立大学国際環境工学部等の概要
(1)設置経緯
北九州市立大学は、昭和 21 年に創立され、外国語学部や商学部など文系の学部を中心として経営されてきたが、平成6年策定のxxxx大学構想とそれに続く検討の中で、理工学系の学部を新設することが位置づけられ、国際環境工学部の開設に至っている。
具体的には、平成11 年4月に設置準備室、平成12 年4月に開設準備室が設置さ
れ、平成 12 年 11 月に校舎竣工、同年12 月に学部設置が正式に認可されている。
平成 13 年4月には第1期生を受け入れ、3年目を迎えている。また、平成 15 年4月には大学院国際環境工学研究科(博士前期・後期)が開設されている。
なお、北九州市立大学は、現在、地方独立行政法人法に基づき、平成 17 年度の法人化に向けて準備が進められているところである。
表3 北九州市立大学国際環境工学部の設置経緯
年 月 | x x |
平成 11 年4月 6月 | ・設置準備室設置 ・校舎着工 |
平成 12 年4月 | ・開設準備室設置、設置認可申請提出 |
5月 | ・文部省から大学設置・学校法人審議会に設置認可を諮問 |
11 月 | ・校舎竣工 |
12 月 | ・学部設置正式認可 |
平成 13 年4月 | ・国際環境工学部開設、第1期生受入れ、大学名を「北九州市立大学」に改称 |
平成 14 年 12 月 | ・大学院国際環境工学研究科設置認可 |
平成 15 年4月 | ・大学院国際環境工学研究科開設(博士前期・後期) |
(2)施設、学科、組織等
国際環境工学部及び大学院国際環境工学研究科は、北九州市立大学のxxxのキャンパスとして、学術研究都市内に立地している。施設としては独自に事務棟や校舎棟などを所管するとともに、学術情報センター(図書xx)や体育館、運動場など学術研究都市の共同利用施設を利用できる点が特徴である。
国際環境工学部は、環境化学プロセス工学科、環境機械システム工学科、情報メディア工学科、環境空間デザイン学科の4学科からなり、1学年の定員は 250 名(別に編入学定員として3、4年次に各 25 名)である。平成15 年4月から受入れを開始した大学院国際環境工学科は環境工学と情報工学の2専攻で構成されている。
今回の監査では、北九州市立大学のxxxのキャンパスが対象となるが、平成 14 年度が監査対象であるため、国際環境工学部が中心となり、必要に応じて大学院国際環境工学科にも触れている。
事務局 | 庶務課 | |
表4 国際環境工学部(大学院を含む)の概要
所在地 | xxxxxxxxxxx0x0x |
施 設 | 事務棟、北棟、xx、特殊実験棟(機械系:加工センターを含む)、特殊実験棟(建築系)、 計測・分析センター、xxxの留学生会館、教員宿舎(学術研究都市内の共同利用施設を除く) |
学科等 | ○北九州市立大学国際環境工学部 定員 250 名(別に編入学定員として 3、4 年次に各 25 名) ・環境化学プロセス工学科(入学定員 50 名) ・環境機械システム工学科( 同 50 名) ・情報メディア工学科 ( 同 100 名) ・環境空間デザイン学科 ( 同 50 名) ○北九州市立大学大学院国際環境工学研究科(平成 15 年4月開設) ・環境工学専攻 博士課程前期(修士)(入学定員 60 名) 博士課程後期 ( 同 15 名) ・情報工学専攻 博士課程前期(修士)( 同 40 名) 博士課程後期 ( 同 10 名) |
事務組織機構図 (一部抜粋) | ※ 北九州市立大学全体の機構図における国際環境工学部等の位置づけ ※ 網掛けの部分が今回の監査対象 参 事 学生部 学生課 学部・大学院 企画課 外国語学部 教務課 経済学部 学 長 文学部 副学長 法学部 大学院社会システム研究科 国際環境工学部・大学院国際環境工学部研究科 管理課国際環境工学部 大学院国際環境工学研究科北九州産業社会研究所 国際教育交流センター 情報処理教育センター 附属図書館 事務課 |
(3)歳入・歳出の状況
北九州市立大学の歳入、歳出は大学特別会計に計上されており、次表のように平成 14 年度の大学全体の歳入決算額は 9,614 百万円、歳出決算額は 7,967 百万円である。歳入のうち、一般会計からの繰入金が 4,477 百万円で全体の 46.6%と半分近くを占め、授業料などの使用料及び手数料は 35.3%の割合である。歳出では人
表5 北九州市立大学の歳入・歳出決算額 (単位:千円)
歳入決算額 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | ||||
款 | 大学全体 | うち xxxの分 | 大学全体 | うち xxxの分 | 大学に占めるxxxのの割合 | xxxの対前年増減額 |
1.使用料及び手数料 | 3,228,597 | 11,806 | 3,396,592 | 10,027 | 0.3% | △1,779 |
2.国庫支出金 | 6,145 | 4,000 | 2,103 | 0 | 0.0% | △4,000 |
3.財産収入 | 6,070 | 5,482 | 15,758 | 15,468 | 98.2% | 9,986 |
4.寄附金 | 25,500 | 25,500 | 58,961 | 58,961 | 100.0% | 33,461 |
5.繰入金 | 4,941,688 | - | 4,477,007 | - | - | - |
6.繰越金 | 959,706 | - | 1,399,297 | - | - | - |
7.諸収入 | 156,495 | 134,572 | 123,080 | 99,084 | 80.5% | △35,488 |
8.市債 | 1,540,000 | 1,540,000 | 142,000 | 142,000 | 100.0% | △1,398,000 |
計 | 10,864,200 | 1,721,360 | 9,614,798 | 325,541 | 3.4% | △1,395,819 |
歳出決算額 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | ||||
節 | 大学全体 | うち xxxの分 | 大学全体 | うち xxxの分 | 大学に占めるxxxのの割合 | xxxの対前年増減額 |
1.報酬 | 299,051 | 24,863 | 308,892 | 26,499 | 8.6% | 1,636 |
2.給料 | 1,624,546 | - | 1,687,773 | - | - | - |
3.職員手当 | 1,227,370 | - | 1,208,966 | - | - | - |
4.共済費 | 498,562 | 2,072 | 509,799 | 1,923 | 0.4% | △149 |
7.賃金 | 16,181 | 1,620 | 12,290 | 696 | 5.7% | △924 |
8.報償費 | 25,753 | 6,388 | 29,586 | 10,469 | 35.4% | 4,081 |
9.旅費 | 106,924 | 43,803 | 95,559 | 32,185 | 33.7% | △11,618 |
10.交際費 | 248 | 0 | 185 | 0 | 0.0% | 0 |
11.需用費 | 445,091 | 199,716 | 458,636 | 210,723 | 45.9% | 11,007 |
12.役務費 | 34,610 | 16,580 | 40,742 | 17,624 | 43.3% | 1,044 |
13.委託料 | 1,073,950 | 721,568 | 1,168,734 | 855,445 | 73.2% | 133,877 |
14.使用料及び賃借料 | 28,196 | 10,135 | 46,072 | 17,931 | 38.9% | 7,796 |
15.工事請負費 | 1,762,741 | 1,753,133 | 68,747 | 29,799 | 43.3% | △1,723,334 |
16.原材料費 | 60 | 0 | 47 | 0 | 0.0% | 0 |
17.公有財産購入費 | 180,790 | 180,790 | 833,689 | 833,689 | 100.0% | 652,899 |
18.備品購入費 | 1,256,914 | 1,132,819 | 568,557 | 440,586 | 77.5% | △692,233 |
19.負担金、補助及び交付金 | 60,748 | 55,462 | 150,242 | 138,957 | 92.5% | 83,495 |
21.貸付金 | 50 | 0 | 50 | 0 | 0.0% | 0 |
28.繰出金 | 823,118 | - | 779,074 | - | - | - |
計 | 9,464,904 | 4,148,949 | 7,967,640 | 2,616,525 | 32.8% | △1,532,424 |
(注)1.大学特別会計の歳入・歳出決算額のうち、xxxの分として明確に区分できるものを対象とした。したがって、授業料、入学金、給料、職員手当等についてはxxxの分を計算していない。
2.xxの網掛け部分が、監査対象である。ただし、費目の一部のみを対象とする場合も含まれる。
件費関係が大きく、報酬から給料、職員手当、共済費、賃金まで含めると、3,727百万円となり、歳出全体の 46.8%を占めることになる。
一方、大学の中で、国際環境工学部の分として明確に区分できるものを集計すると、表5のように歳入決算額は 325 百万円、歳出決算額は 2,616 百万円となる。授業料や繰入金、給料、職員手当など、歳入、歳出の中心となるものが除かれており、国際環境工学部の正確な収支ではないが、大学全体に比べると市債や公有財産購入費、備品購入費など資本的支出に関連した歳出入が多い。国際環境工学部が整備途上であるとともに、工学系であることなどを反映している。ただし、平成 13 年度に比べると市債や工事請負費、備品購入費は減少している。
また、財産収入や寄附金、諸収入、委託料なども国際環境工学部が中心となっている。財産収入は学研都市内の教員宿舎の家賃収入である。寄附金と諸収入は外部研究費が多くを占めており、前者が奨学寄附金の受入れであり、後者が受託研究費と共同研究費の受入れである。
今回はこれらを含めて、表5の網掛けで示す科目(そのうちの一部分のみの場合を含む。)を対象として監査を行った。
3.財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の概要
(1)目的、組織等
財団法人北九州産業学術推進機構(以下、「FAIS」という。)は、北九州地域における産学官連携による研究開発及び学術研究の推進等により、産業技術の高度化及び活力ある地域企業群の創出・育成に寄与することを目的として、平成2年3月 29 日設立の財団法人北九州市産業技術振興基金を改組・拡充し、平成 13 年3月1日に設立されたものである。
FAIS の概要は表6のとおりである。組織としては、キャンパス運営センター、 SoC 設計センターなどの各センターと、GMD-Japan 研究所、クランフィールド大学北九州研究所からなる。そのうち、中小企業支援センターの一部(経営支援部、研究開発部)と、産学連携センターの技術移転推進部(北九州 TLO)は、市内xx区の北九州テクノセンタービルに拠点を置き、また、中小企業支援センターのうちテレワークセンターは、市内xx北区のアジア太平洋インポートマートビルに入居している。中小企業支援センター以外は、学術研究都市内の産学連携センター等に入居している。なお、技術移転推進部については、平成 15 年7月1日にxxから学術研究都市に移転している。
職員数は 134 名である。そのうち市からの派遣 28 名を始めとして、派遣職員が 40 名を占めている。また、研究員の多さ(20 名)も FAIS の特徴である。
(2)主要な取組事項等と市の財政支出
平成 14 年度における FAIS の具体的な取組事項は表7のとおりである。FAIS が設立されて実質2年目であるが、産学連携の基盤となる学研都市の管理運営から、大学間の連携促進、産学共同研究プロジェクトの創出・運営、技術移転(TLO)に至る一連の流れをカバーするとともに、半導体設計拠点形成や中小・ベンチャー企業支援を含めて、非常に幅広い事業を行っている。
それらの事業実施及び財団運営に対して、市は委託料及び補助金の形で財政支出を行っており、合計すると委託料 1,508 百万円、補助金 1,271 百万円、合計 2,779百万円となる。今回の監査では、市の財政支出のうち、学術研究都市を拠点として実施される事業を取り出し、xxの網掛けの委託料・補助金を対象とした(委託料 1,357 百万円、補助金 889 百万円、合計 2,247 百万円)。
表6 財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の概要
設 | 立 | 平成 13 年3月1日(平成2年3月 29 日設立の財団法人北九州市産業技術振興基金を改組) |
基本財産 | 800,000 千円 (北九州市 100%出捐) | |
所在地 | xxxxxxxxxxx0x0x 産学連携センター内 | |
目 | 的 | 北九州地域における産学官連携による研究開発及び学術研究を推進する等により、産業技術の高 度化及び活力ある地域企業群の創出・育成に寄与すること |
事 業 (寄附行為) | 1)産業技術の研究開発及び学術研究 2)産業技術の研究開発及び学術研究に対する支援 3)産業技術振興及び学術研究振興のための調査 4)産業技術振興及び学術研究振興のための各種交流事業及び情報提供事業 5)産業技術振興及び学術研究振興のために必要な知的所有権の取得並びに提供又は譲渡に関すること 6)産業技術の研究開発及び学術研究のための施設の管理運営 7)中小企業等の振興のために必要な調査、研究、診断・助言及び支援に関すること 8)その他この法人の目的を達成するために必要な事業 | |
役 | 員 | 理事数 17 名、監事2名(平成 15 年7月1日現在) |
職 | 員 | 職員総数 134 名(平成 15 年7月1日現在) ・常勤職員 71 名(市派遣 28、嘱託 30、専門幹部1、民間派遣 10、県派遣2) ・非常勤職員3名、その他 60 名(臨時1、人材派遣 11、研究員 20、その他 28) |
組織図 (一部抜粋) | キャンパス運営センター総務企画部 学術情報部 専務理事 SoC設計センター 設計研究部人材育成部 理事長 副理事長 GMD-Japan 研究所 クランフィールド大学北九州研究所 産学連携センター 産学連携部 専務理事 技術移転推進部 ヒューマンテクノクラスター推進センター中小企業支援センター 経営支援部研究開発部 テレワークセンター |
表7 平成 14 年度の主要な取組事項とそれに対する市の財政支出(委託料、補助金)
主な取組事項 | 所管センター | 市からの委託料 | 市からの補助金 |
1.産業の知的基盤として整備した学術研究都市の充実、振興 | |||
(1)大学間連携の促進 | キャンパス 運営センター | - | ・財団運営補助金(一部) 7,481 千円 |
(2)研究基盤の整備推進 | GMD-Japan 研究所 | - | ・研究基盤整備推進事業補助 金 127,854 千円 |
(3)学研都市の共同利用施設の管理運 営 | キャンパス 運営センター | ・学術研究施設等管理運営 業務委託 1,294,567 千円 | - |
2.知的基盤(大学・研究機関)を活用した産学連携 | |||
2-1.シーズ・ニーズ調査、PR、交流の場の提供(産学連携風土の醸成) (1)シーズ・ニーズ調査 (2)産学交流及び PR 事業 | 産学連携センター | - | ・財団運営補助金(一部) 87,828 千円 |
2-2.産学共同研究プロジェクト、研究 会の創出・運営(産学連携の具体化1) | 産学連携センター 中小企業支援 センター | - | - |
(1)財団による研究開発助成 | - | ・プロジェクト誘致助成金 20,000 千円 | |
(2)国等の資金を活用した研究開発プロジェクト | ・学研都市における街づくり検討業務委託等 28,288 千円 | ・生ごみ精製乳酸化実証事業補助金 200,310 千円 | |
(3)産学共同による研究会 | - | - | |
(4)知的クラスター創成事業 | ヒューマンテクノクラスター 推進センター | ・知的クラスター創成事業 委託 35,019 千円 | - |
2-3.知的所有権の取得及び移転譲渡 (北九州 TLO)(産学連携の具体化2) | 産学連携 センター | - | ・北九州技術移転推進事業補 助金 17,547 千円 |
3.半導体設計拠点に向けた取組み | |||
(1)設計ベンチャーの創出・支援 (2)産学共同研究支援 (3)人材の育成及び情報発信 | SoC 設計センター | - | ・SoC 設計整備推進事業補助金 339,400 千円 |
4.中小・ベンチャー企業の支援 | |||
4-1.研究開発支援 | 中小企業支援センター | - | ・中小企業支援センター関連補助金 382,171 千円 |
(1)技術交流・情報提供 | ・コア人材創出育成事業委託 1,109 千円 | ||
(2)産学共同研究支援(再掲) | - | ||
(3)知的所有権センターの運営 | ・知的所有権センター運営支援事業委託 13,222 千円 | ||
4-2.経営・創業支援等 (1)窓口相談・専門家派遣 | - | ||
(2)創業支援 | ・ベンチャー支援コンサルタント派遣 事業委託 2,766 千円 | ||
(3)販売支援 | ・販路拡大支援事業委託 1,995 千円 | ||
4-3.SOHO、IT ベンチャー支援(北九州 テレワークセンターの運営) | - | ||
(1)施設の管理運営 | ・北九州テレワークセンター管理運営事業委託 117,514 千円 | ||
(2)センター振興事業 | ・北九州テレワークセンター振興事 業委託 13,914 千円 | ||
※ 財団運営 | キャンパス 運営センター | - | ・財団運営補助金(一部) 88,767 千円 |
計 | 1,508,394 千円 | 1,271,358 千円 |
(資料)FAIS の平成 14 年度事業報告書等より作成
(注) 1.市からの補助金には、市単独の補助金以外に国の補助金を受けて市が交付している補助金も含まれる。
2.xxの網掛け部分が今回の監査対象。
(3)財務状況
FAISの収支計算書と貸借対照表の概要は次のとおりである。一般会計以外には、学研都市の共同利用施設等の管理運営に係る学術研究施設等管理運営事業特別会計と、GMD-Japan 研究所の運営に係る研究基盤整備推進事業特別会計の2つの特別会計が設けられている。
平成 14 年度の当期収入は 4,400 百万円、当期支出は 4,370 百万円である。いずれも前年度から2倍以上に増えており、事業等が急速に拡大している。当期収支差額は30 百万円、次期繰越収支差額も42 百万円とわずかながらプラスである。また、平成 14 年度末現在の資産総額は 3,341 百万円である。
前述のように、監査対象は市の財政支出に関連する部分であり、収支計算書においても網掛けをした科目の中で、市からの委託料や補助金の収入とそれを財源とする事業費や管理費の執行に係る支出が該当する。また、貸借対照表の中では固定資産を中心に監査を行っている。
表8 財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の収支計算書の概要 (単位:千円)
平成 13 年度 | 平成 14 年度 | |||||
総合計 | 総合計 | (増減額) | 一般会計 | 学術研究施設等管理運営 事業特別会計 | 研究基盤整備推進 事業特別会計 | |
Ⅰ収入の部 | ||||||
基本財産運用収入 | 4,240 | 2,940 | △1,300 | 2,940 | 0 | 0 |
事業収入 | 1,153,362 | 2,565,843 | 1,412,480 | 1,153,761 | 1,412,081 | 0 |
補助金等収入 | 784,475 | 1,823,209 | 1,038,734 | 1,695,355 | 0 | 127,854 |
寄付金収入 | 0 | 7,194 | 7,194 | 7,194 | 0 | 0 |
雑収入 | 5,922 | 1,135 | △4,787 | 1,114 | 8 | 13 |
84 | 70 | △14 | 0 | 0 | 70 | |
繰入金収入 | 3,950 | 0 | △3,950 | 0 | 0 | 0 |
当期収入合計(A) | 1,952,034 | 4,400,391 | 2,448,357 | 2,860,364 | 1,412,089 | 127,938 |
前期繰越収支差額(B) | 5,197 | 12,536 | 7,339 | 12,536 | 0 | 0 |
収入合計(A)+(B) | 1,957,231 | 4,412,927 | 2,455,696 | 2,872,900 | 1,412,089 | 127,938 |
Ⅱ支出の部 | ||||||
事業費 | 1,632,968 | 3,153,832 | 1,520,864 | 1,765,668 | 1,286,018 | 102,146 |
管理費 | 97,593 | 448,050 | 350,458 | 309,594 | 123,411 | 15,045 |
固定資産取得支出 | 208,784 | 765,098 | 556,314 | 752,217 | 2,660 | 10,221 |
敷金・保証金支出 | 1,400 | 525 | △875 | 0 | 0 | 525 |
特定預金支出 | 0 | 2,682 | 2,682 | 2,682 | 0 | 0 |
繰入金支出 | 3,950 | 0 | △3,950 | 0 | 0 | 0 |
当期支出合計(C) | 1,944,695 | 4,370,187 | 2,425,492 | 2,830,161 | 1,412,089 | 127,938 |
当期収支差額( D)=(A)-(C) | 7,339 | 30,204 | 22,865 | 30,204 | 0 | 0 |
次期繰越収支差額(D)+(B) | 12,536 | 42,739 | 30,204 | 42,739 | 0 | 0 |
(資料)FAIS の決算書より作成
(注) xxの網掛けの中で、前述の市の財政支出に関連した部分について監査対象とした。
表9 財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の貸借対照表の概要 (単位:千円)
平成 13 年度末 | 平成 14 年度末 | |||||
総合計 | 総合計 | (増減額) | 一般会計 | 学術研究施設等管理運営 事業特別会計 | 研究基盤整備推進 事業特別会計 | |
Ⅰ資産の部 | ||||||
流動資産 | 720,890 | 1,602,226 | 881,336 | 1,170,373 | 403,424 | 28,429 |
固定資産 | 1,024,119 | 1,739,711 | 715,592 | 1,692,874 | 2,767 | 44,069 |
基本財産 | 800,000 | 800,000 | 0 | 800,000 | 0 | 0 |
その他の固定資産 | 224,119 | 939,711 | 715,592 | 892,874 | 2,767 | 44,069 |
資産合計 | 1,745,009 | 3,341,937 | 1,596,928 | 2,863,247 | 406,191 | 72,499 |
Ⅱ負債の部 | ||||||
流動負債 | 708,354 | 1,559,487 | 851,132 | 1,127,634 | 403,424 | 28,429 |
負債合計 | 708,354 | 1,559,487 | 851,132 | 1,127,634 | 403,424 | 28,429 |
Ⅲ正味財産の部 | ||||||
正味財産 | 1,036,655 | 1,782,450 | 745,796 | 1,735,614 | 2,767 | 44,069 |
負債及び正味財産合計 | 1,745,009 | 3,341,937 | 1,596,928 | 2,863,247 | 406,191 | 72,499 |
(資料)FAIS の決算書より作成
(注) xxの網掛け部分を監査対象とした。
第3.外部監査の結果
今回の包括外部監査の目的は、学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業について、内容を把握し、法令等に従って事務が適正かつ効果的に執行されているかを確かめることにある。そしてこの目的は、法令、条例、規則、要綱、要領等定められた基準(以下、「法令等定められた基準」という。)への合規性・準拠性を検証し、監査を実施することにより達成される。包括外部監査は、第xx的に合規性監査であることを踏まえ、監査結果の報告書(以下、「結果報告書」という。)ではこの趣旨に沿うもののみを記載している。
また、監査実施時に、経済性、効率性及び有効性の観点から組織又はその運営の合理化に資するため必要と認めた事項につき、地方自治法第 252 条の 38 第2項に基づく意見として、「包括外部監査の結果に関する報告に添えて提出する意見書」(以下、「意見書」という。)を結果報告書に添えて申し述べる。
Ⅰ.学術研究都市全般
1.施設整備事業
(1)概 要
前述のように施設整備の開発手法については、用地を先行取得して、土地区画整理事業により整備を行っている。大学ゾーンは第1期事業の段階で整備され、開発面積は約 35ha である。大学ゾーンを中心とする整備事業費の推移は次のとおりとなっており、概ね終了しつつある。
今回の監査の対象として、北九州学術研究都市の建設工事費のうち、主要な施設の本体工事のみを対象として、表Ⅰ-3のように 12 件を抽出した(平成 13 年度以前の契約分を含む)。
表Ⅰ-1 学術研究都市整備事業費 (単位:百万円)
平成 10 年度 | 平成 11 年度 | 平成 12 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | 平成 15 年度 | 合計 | |
北九州市立大学国際環境工 学部等整備 | |||||||
設計費等 | 83 | 296 | 248 | 24 | 0 | 0 | 651 |
工事費 | 0 | 2,131 | 11,321 | 1,750 | 0 | 0 | 15,202 |
備品等 | 0 | 0 | 2,065 | 1,009 | 0 | 0 | 3,074 |
計 | 83 | 2,427 | 13,634 | 2,783 | 0 | 0 | 18,927 |
学術研究都市共同利用施設 等整備費 | |||||||
設計費等 | 214 | 266 | 282 | 47 | 21 | 60 | 890 |
工事費 | 0 | 1,497 | 7,969 | 1,435 | 210 | 966 | 12,077 |
備品等 | 0 | 0 | 2,697 | 937 | 20 | 4 | 3,658 |
計 | 214 | 1,763 | 10,948 | 2,419 | 251 | 1,030 | 16,625 |
早稲田大学大学院整備費 | |||||||
設計費等 | 0 | 0 | 45 | 83 | 30 | 0 | 158 |
工事費 | 0 | 0 | 0 | 545 | 3,129 | 0 | 3,674 |
備品等 | 0 | 0 | 0 | 0 | 800 | 490 | 1,290 |
計 | 0 | 0 | 45 | 628 | 3,959 | 490 | 5,122 |
合計 | |||||||
設計費 | 297 | 562 | 575 | 154 | 51 | 60 | 1,699 |
工事費 | 0 | 3,628 | 19,290 | 3,730 | 3,339 | 966 | 30,953 |
備品等 | 0 | 0 | 4,762 | 1,946 | 820 | 494 | 8,022 |
合計 | 297 | 4,190 | 24,627 | 5,830 | 4,210 | 1,520 | 40,674 |
(注)平成 14 年度までは決算額、平成 15 年度は予算額
表Ⅰ-2 用地費 (単位:百万円)
合計金額 | 平成 11 年度 | 平成 12 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | 平成 15 年度 | 平成 16 年度~ | |
公 有 財 産 購入費 | 18,703 | 2,868 | 1,654 | 255 | 1,173 | 1,147 | 11,606 |
(注)平成 14 年度までは決算額、平成 15 年度は予算額、平成 16 年度以降は予定額
表Ⅰ-3 平成 14 年度の主要施設整備事業一覧 (単位:千円)
施設名称 | 工事名 | 契約金額 |
北九州学術研究都市会議場 | ①(仮称)学術・研究都市交流センター | 640,500 |
北九州学術研究都市学術情報センター | ②(仮称)学術・研究都市メディアセンター | 1,286,250 |
北九州学術研究都市産学連携センター | ③(仮称)学術研究都市産学連携センタービル | 962,850 |
北九州学術研究都市環境エネルギーセンター | ④北九州大学(仮称)国際環境工学部環境エネ ルギーセンター | 393,414 |
北九州学術研究都市体育館 | ⑤(仮称)学術研究都市体育館 | 866,250 |
北九州学術研究都市共同研究開発センター | ⑥(仮称)学術研究都市共同研究開発センター | 228,900 |
北九州学術研究都市情報技術高度化センター | ⑦(仮称)学術・研究都市 IT 高度化センター(開 発センター棟) | 382,200 |
⑧(仮称)学術・研究都市 IT 高度化センター(共 同研究棟) | 460,950 | |
早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所 研究員等宿舎 | ⑨(仮称)学術・研究都市研究所研究員等宿舎 | 299,250 |
早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所 | ⑩(仮称)学術・研究都市研究所 | 848,400 |
早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所 教職員宿舎 | ⑪(仮称)学術・研究都市研究所教職員宿舎 | 212,100 |
学術研究都市大学院棟 | ⑫(仮称)学術・研究都市大学院棟 | 2,100,000 |
計 | 8,681,064 |
(2)実施した監査手続
市産業学術振興局にヒアリングを行うとともに、資料提出を求め、地方自治法、北九州市公有財産管理規則(以下、「財産規則」という。)、北九州市財産条例(以下、「財産条例」という。)、北九州市会計規則(以下、「会計規則」という。)、北九州市契約規則、北九州市工事請負契約約款等との合規性を検証した。具体的には以下の手続を行った。
① 決議書等の承認手続の確認をし、内容について関係者に質問を行った。
② 入札関連書類の確認をし、契約の種類、業者の選定、予定価格の設定方法などについて質問を行った。
③ 設計変更及び契約変更などの建設工事関係書類を確認した。
④ 建設工事の費用について妥当性を検討した。
(3)監査の結果
①~④についての監査手続を実施した結果、合規性の観点から特に問題となる事項は見られなかった。
2.市の公有財産管理
(1)概 要
市は、北九州学術研究都市での学術研究や研究開発を促進する場を提供する目的で、公有財産である土地、建物等を保有・管理している。大学ゾーンにおいて市が所有・管理している主な研究施設等の状況は、次表のとおりである。
表Ⅰ-4 施設の概要(産業学術振興局の建物台帳等より)
施設名称 | 目的及び用途等 | 所在地 | 延面積 (㎡) | 構造 | 取得価格 (百万円) | 取得・建築 年月日 |
北九州学術研究都市会議場 | 学会等にも対応できる映像施設・同時通訳設備を備え、研究発表や産学官の交流の場。 大会議場(460 席)、イベントホール等 | 若松区 ひびきの 2-3 | 2,288 | RC 造 2階建 | 1,096 | H12.11. 1 |
北九州学術研究都市学術情報センター | 学術情報の収集提供ならびに情報処理教育機能を持つほか、学研都市内の大容量ネットワークの管理や情報通信サービスを提供。 図書室、講義室、研修室、情報処理施設等 | 若松区 ひびきの 1-3 | 7,250 | RC 造 3階建 | 1,969 | H12.12.20 |
北九州学術研究都市産学連携センター | 大学院、研究機関及び最先端研究を行う企業等が入居する学研都市の中核施設。 研究室、会議室、研修室、管理事務室等 | 若松区 ひびきの 2-1 | 5,845 | RC 造 4階建 | 1,588 | H12.11. 1 |
北九州学術研究都市環境エネルギーセン ター | 学研都市全体の水リサイクルとコ・ジェネレーションによるエネルギー管理施設。 水処理施設、電気・熱供給システム | 若松区 ひびきの 1-2 | 1,927 | RC 造 1階建 | 1,658 | H12.11. 1 |
北九州学術研究都市体育館 | 学生、教員、研究者等が交流輪深める健康増進施設。 アリーナ、アスレチックコーナー、学生食堂等 | 若松区 ひびきの 1-4 | 3,955 | RC 造 2階建 | 1,111 | H13. 2.28 |
北九州学術研究都市 共同研究開発センター | 企業や大学による半導体製造関連分野の研究や製造工程開発をサポートする施設。 研究室、レイアウト設計室、組立・測定室等 | 若松区 ひびきの 1-5 | 1,062 | RC 造 2階建 | 538 | H13.12.11 |
北九州学術研究都市情報技術高度化センター | 研究開発機器や研究室の提供などにより、企業や大学の連携による高度な情報通信技術や半導体設計技術の研究開発をサポートする施設。 研究室、研修室、設計開発室等 | 若松区 ひびきの 2-5 | 5,118 | S造 4階建 | 1,561 | H14. 3.14 |
早稲田大学理工学総合研究センター九州 研究所研究員等宿舎 | 早稲田大学に勤務する研究員等のための宿舎。単身用住居(55 戸) | 若松区 ひびきの 2-6 | 1,635 | RC 造 4階建 | 434 | H13. 3.16 |
早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所 | 環境、建築、情報通信、システム LSI、ロボティクスなどの理論から実学的研究までを行う早稲田大学の九州拠点。 研究室、実験室、会議室等 | 若松区 ひびきの 2-2 | 4,197 | S 造 3階建 | 870 | H13. 2.26 |
早稲田大学理工学総合研究センター九州 研究所教職員宿舎 | 早稲田大学に勤務する教職員のための宿舎。住居5棟(10 戸) | 若松区 ひびきの 2-11 | 889 | S 造 2階建 | 257 | H13.3.16 |
学術研究都市大学院棟 | 早稲田大学大学院情報生産システム研究科。講義室、実験室、学生室等 | 若松区 ひびきの 2-7 | 12,375 | RC 造 3階建 | 3,397 | H15. 1. 6 |
表Ⅰ-5 学術研究都市整備事業土地取得一覧表
年度 | 種別 | 全体面積(㎡) | 資金使用額(千円) |
2年度 | 基金 | 31,775.59 | 364,466 |
3年度 | 基金 | 114,308.94 | 1,431,558 |
4年度 | 基金 | 145,892.68 | 1,731,185 |
5年度 | 基金 | 415,975.49 | 5,575,212 |
6年度 | 基金 | 91,392.18 | 1,153,002 |
7年度 | 基金 | 126,867.22 | 1,449,737 |
8年度 | 基金 | 70,364.76 | 916,773 |
9年度 | 基金 | 14,129.54 | 274,231 |
公社 | 51,979.09 | 626,811 | |
計 | 66,108.63 | 901,042 | |
10 年度 | 基金 | 31,810.81 | 567,617 |
公社 | 74,532.34 | 892,695 | |
計 | 106,343.15 | 1,460,312 | |
11 年度 | 基金 | 28,245.16 | 528,075 |
公社 | 79,851.96 | 963,514 | |
計 | 108,097.12 | 1,491,589 | |
12 年度 | 基金 | 54,095.24 | 792,862 |
公社 | 62,197.96 | 893,486 | |
計 | 116,293.20 | 1,686,348 | |
13 年度 | 基金 | 43,062.43 | 582,849 |
計 | 基金 | 1,167,920.04 | 15,367,567 |
公社 | 268,561.35 | 3,376,506 | |
計 | 1,436,481.39 | 18,744,073 |
(2)実施した監査手続
産業学術振興局関係者にヒアリングを行うとともに、関係資料提出を求め、財産規則等との合規性を検証した。具体的には以下の手続を行った。
① 公表決算資料により異常増減がある場合にはその理由を検討した。
② 公有財産管理の状況を質問し、土地台帳と建物台帳を閲覧した。
③ 建物台帳の建物全てを実査し、利用状況を確認した。
④ 土地台帳と建物台帳の記載内容と公表されている北九州学術研究都市のパンフレットの整合性を確認した。
⑤ 建物台帳の記載内容と建設工事にかかる関係資料との整合性を確認した。
⑥ 建物の取得金額の記載について検証し、一部関係書類を閲覧した。
(3)監査の結果
産業学術振興局が所管する建物台帳を検証した結果、財産規則第15 条、第34 条、第 35 条、会計規則第 97 条等に従って整理され、合規性に問題はなかった。
3.市の物品管理
(1)概 要
市では、地方自治法、財産規則、財産条例、会計規則、物品管理要領等に基づいて物品を管理している。
物品を会計規則第 82 条第1項では、(1)備品、(2)消耗品、(3)原材料に区分して
いる。このうち、備品と消耗品の分類は、金額基準の1 万円以上を備品として規定されている(物品管理要領第2 2)。また、「物品管理者は、その所管に属する物品の適正かつ効率的に管理し、常にその使用状況をは握しておかなければならない。」(会計規則第 84 条第1項)。
(2)実施した監査手続
産業学術振興局関係者にヒアリングを行うとともに、関係資料提出を求め、会計規則・物品管理要領等との合規性を検証した。具体的には以下の手続を行った。
① 公表決算資料に異常増減がある場合にはその理由を検討した。
② 物品管理の状況を質問し、備品台帳と重要物品台帳を閲覧した。
③ 備品台帳と重要物品台帳の一部を抽出して実査した。
④ 備品台帳と重要物品台帳の取得金額の記載について検証し、一部関係書類を閲覧した。
(3)監査の結果
物品管理に関して、物品管理要領等の規定に反する管理はなされておらず、特に指摘すべき事項は見られない。
Ⅱ.北九州市立大学国際環境工学部
1.国際環境工学部関連の歳入の概要
国際環境工学部関連の平成 14 年度歳入決算額として次のような歳入が計上されている。
表Ⅱ-1 平成 14 年度歳入決算額 (単位:千円)
歳入決算額 | 主な内容 | ||
使用料及び手数料 | 10,027 | ・目的外使用料 | 7,589 |
・留学生会館使用料 | 2,437 | ||
財産収入 | 15,468 | ・教員宿舎家賃収入 | 15,468 |
寄附金 | 58,961 | ・奨学寄附金 | 58,961 |
諸収入 | 99,084 | ・受託研究費 | 38,425 |
・共同研究費 | 37,222 | ||
・外部研究費市管理費 | 13,178 | ||
市債 | 142,000 | ||
計 | 325,541 |
2.目的外使用料
(1)概 要
使用料及び手数料のうち、目的外使用料の決算額は 7,589 千円である。目的外使
用料はひびきのキャンパスの一部を平成 14 年 4 月から 12 月までの9ヶ月間、九州工業大学に使用させることにより、同大学から北九州市立大学に支払われたものである。
(2)実施した監査手続
① 行政財産目的外使用許可申請書、許可書(案)を閲覧して使用許可の手続が規程等(財産規則、市助役以下専決規程)に則っているか検討した。
② 領収済通知書等を閲覧して、使用料の収入が正しく行われているか検討した。
(3)監査の結果
特に指摘すべき事項はなかった。
3.留学生会館使用料
(1)概 要
使用料及び手数料のうち、留学生会館使用料の決算額は 2,437 千円である。留学
生会館は海外からの留学生を入居対象として単身用 50 室、世帯用2室が建設されたものである。入学当初の住居の安定を図ることが目的であり、入居期間は入学後
1年以内に限られている。
なお、平成 14 年度監査委員監査において、次のような指摘がなされている。
「留学生会館の使用許可において、一部の入居者について定められた入居届兼誓約書を徴さずに入居させていた。また、留学生会館の使用料の徴収において、事務の遅れから使用料の納入期限が条例に定められた納入期限より遅れているものや、入居許可書等の文書で入居日等が明確にされていないために、中途入居者の日割計算が適正になされているか不明なものがあった。」
適正な事務処理とともに使用許可のあり方について検討が求められている。
(2)実施した監査手続
① 監査委員からの指摘事項について改善状況を確かめるため、居室料領収ファイルと入居届兼誓約書を突合した。
② 居室料領収ファイルにおいて所属が北九州市立大学以外となっている者3名について、決裁文書と照合して入居許可の手続が適切になされているか確かめた。
③ 調定決議書ファイルを通査して、市立大学条例第7条別表に定められた居室料の納入期限(毎月末)が遵守されているか検討した。なお、平成 14 年6月分までは監査委員の監査を受けていることから7月分以降について検討の対象とした。
④ 入居率の月次推移を算出した上で、月次変動の理由を質問し、留学生会館建設の目的に沿った適正な水準で利用されているか検討した。
(3)監査の結果
① 平成 14 年 12 月時点の入居者 39 名のうち、
・入居届兼誓約書を提出していない者 2名
・入居届兼誓約書を提出しているが日付の記入のない者 5名
これらについては、「北九州市立大学留学生会館管理運営マニュアル 2002 年 11月」の運用開始以前の瑕疵である。同マニュアルは監査委員の指摘を受けて事務手続の改善を図るため作成されたものである。この中に「3(6)入居時の手続について 入居届兼誓約書を徴収する。(徴収について一覧表にチェックする。)」との定めがあり、入居時に提出していない2名については入居後であっても徴すべきであった。また、5名については監査委員の指摘を受けて徴したとのことであるが、日付の記入のないまま入居届兼誓約書を徴することは、不適切と考えられる。
これ以降についてはマニュアルに従い、適切な事務手続がとられているとのことであった。
② 所属が北九州市立大学以外となっている3名は短期間の入居である。3名のうち
2名について、入居許可の決裁文書に学長の決裁印はあるものの決裁日付の記載がなかった。1名については指摘すべき事項はない。
決裁文書に日付の記載を欠くことは、決裁が規定どおり事前になされているかの確認ができなくなる点で手続の瑕疵と言える。必ず記載されるようにされたい。
③ 7月分の居室料について、48 名全員の調定が8月1日、納期が8月 16 日となっていた。8月分以降及び監査委員の指摘以降についての遅れは見られないが、今後についても市立大学条例に従った適正な処理が必要である。
④ 平成 14 年度の入居率は次のようであった。
表Ⅱ-2 留学生会館の入居率
月 | 入居(室) | 入居率 |
4月 | 45 | 87% |
5月 | 48 | 92% |
6月 | 48 | 92% |
7月 | 48 | 92% |
8月 | 48 | 92% |
9月 | 48 | 92% |
10 月 | 47 | 90% |
11 月 | 40 | 77% |
12 月 | 39 | 75% |
1月 | 38 | 73% |
2月 | 38 | 73% |
3月 | 19 | 37% |
平均 | 42.2 | 81% |
年度末にかけて入居率が低下するのは、退去期限を前に留学生自身で民間のアパート等を探して移り住むためとのことである。
上半期の入居率はおおむね 92%であり、特に空室が多いとは言えない。また、入居希望者が定員を上回って収容しきれない状況にも至っていないため、留学生会館の目的に沿った適正な水準で利用されていると認められた。
4.教員宿舎家賃収入
(1)概 要
財産収入である教員宿舎家賃収入の決算額は 15,468 千円である。教員宿舎の内訳は、次のとおりである。
・単身用 30 戸(18 戸1棟、12 戸1棟)
・世帯用 30 戸(6戸5棟)
(2)実施した監査手続
入居管理表、調定決議書等を閲覧し、証憑のチェックを行った。
(3)監査の結果
特に指摘すべき事項はなかった。
5.予算管理簿
(1)概 要
「予算管理簿」は予算の執行状況を明らかにするための帳簿であり、北九州市予算規則第 16 条において、「予算の令達をうけた課長」は「予算管理簿を備え、予算執行状況が常に明らかになるよう措置しなければならない。」とされている。
現在、市においては財務会計システムが導入されているが、財務会計システムとは連動しておらず、「予算管理簿」の記入は手書きにて行われている。このため、担当者は財務会計システム上において入力・処理するとともに、別途「予算管理簿」の記入も行うこととなる。事務局によると、担当者が自ら所掌している予算の残高を確認するために使用しており、年度末の段階で財務会計システム上の予算残高等と確認しているとのことである。
なお、そのひな型の概略は以下のとおりである。
表Ⅱ-3 予算管理簿ひな型(概略)
(出所)「予算管理簿」を基に監査人が概略版を作成
(2)実施した監査手続
各費目の監査を実施するに当たり、監査人がその執行状況の詳細を確認するために「予算管理簿」を閲覧・通査した。
(3)監査の結果
以下のように適切な記入がなされていない点が見られた。
① 配当替の記載
「国際環境工学部キャンパス維持管理事業」内において、委託料から工事請負費に対して 19,900 千円の「節間流用」がなされているが、流用元たる委託料の「予算管理簿」上、金額・日付とも記載がなく、また、流用先の工事請負費の「予算管理簿」上、金額の記載はあったが日付の記載がなかった。事務局によれば、担当者の記入漏れとのことである。なお、当該「節間流用」の承認等にかかる事務処理自体は適正に処理されていたものである。
② 財務会計システム上の予算残高との差異
「国際環境工学部学生支援事業」にかかる旅費において、「予算管理簿」上の予算残高と財務会計システム上の予算残高とが不一致であった。事務局によれば、担当者による決定額(支出額)の記入誤りとのことである。
現行、財務会計システム上においても予算執行状況が把握でき、「予算管理簿」への記入処理と財務会計システムへの入力処理とが重複していること等から、「予算管理簿」への記入が重要視されていない状況にあると言える。このため、担当者によって記入状況に大きく幅があり、事後的に担当者以外の者がその適正性を検証することが困難な場合がある。
加えて、上述のように、監査人の検証時に財務会計システム上の予算執行残高との差異が判明することもある。事務局によると、担当者が自ら所掌している予算の残高を確認するために使用しており、年度末の段階で財務会計システム上の予算残高等と確認しているとのことであったが、事後的な財務会計システムとの照合作業が実施されているかどうか疑問を持つに足る状況である。
財務会計システム上の予算執行額は、年に数回会計室から執行状況が報告されることになっているが、少なくとも、財務会計システムから執行状況が送付される段階において、① 予算残高、② 支出額等について照合作業を実施した上で、担当課長等上長が承認を行う等、管理上適切な処置を取ることが必要であると思われる。
「予算管理簿」を使用した予算の残高管理を継続する以上は、このような措置により、予算執行状況を常に明らかにする必要があると思われる。
ただし、財務会計システムへの入力と「予算管理簿」への記入との事務処理上の重複を解消する観点から、将来的には財務会計システムと「予算管理簿」との統合を検討する必要がある。市においても、平成 16 年度中頃を目処として財務会計システムと「予算管理簿」との統合を検討しているとのことであるが、早期の統合を図り、事務処理上の重複を解消する必要があるものと思われる。
適正な事務処理をされたい。
6.旅費
(1)概 要
旅費は、教授を始めとした研究者を含む市の職員等が公務のため旅行する場合に支給されるものであり、北九州市旅費条例(以下、「旅費条例」という。)に基づいて支給される。旅行には、職員等が公務のため一時その勤務場所を離れて旅行する
「出張」と、採用もしくは転任に伴い新たな勤務地に旅行する「赴任」とがある。公務のため旅行する場合、職員等は原則として任命権者等(以下、「旅行命令権
者」という。)の発する旅行命令に基づいて旅行を行い、出張の場合には、職員等の帰庁後、7日以内に『復命書』を旅行命令権者に提出することとされている。
主な旅費の種類は旅費条例第7条に規定されており、具体的には以下のものである(表Ⅱ-4)。ただし、外国旅行の際に支給される旅費は、これに限らず、「北九州市旅費条例の運用方針について」にて別に定められている。
表Ⅱ-4 旅費の種類
旅費の種類 | 内容 |
鉄道賃、船賃、航空賃 | 鉄道旅行、水路旅行、航空旅行について、路程に応じ旅客運賃等に より支給する。 |
車賃 | 陸路旅行(鉄道を除く。)について、路程に応じ1キロメートル当り の定額または実費額により支給する。 |
日当 | 旅行中の日数に応じ1日当りの定額により支給する。 |
宿泊料 | 旅行中の夜数に応じ1夜当りの定額により支給する。 |
移転料 | 赴任に伴う住所または居所の移転について、路程に応じ一定距離当 りの定額により支給する。 |
着後手当 | 赴任に伴う住所または居所の移転について、定額により支給する。 |
扶養親族移転料 | 赴任に伴う扶養親族の移転について支給する。 |
平成 14 年度において北九州市立大学にて執行された旅費の内、ひびきのキャン
パスにかかるものは 32,184,726 円であり、その事業別の内訳は以下のとおりである(表Ⅱ-5)。
表Ⅱ-5 平成 14 年度旅費(ひびきのキャンパス分のみ)
事業名 | 執行額 | 割合 |
国際環境工学部キャンパス管理運営事業 | 7,758,954 円 | 24.1% |
国際環境工学部運営諮問会議設置事業 | 449,820 円 | 2.4% |
国際環境工学部研究活動推進事業 | 662,380 円 | 2.1% |
国際環境工学部非常勤講師確保事業 | 3,131,570 円 | 9.7% |
国際環境工学部教員研究費 | 12,149,497 円 | 37.7% |
国際環境工学部入試広報事務 | 1,271,920 円 | 4.0% |
国際環境工学部留学生受入推進事業 | 3,655,305 円 | 11.4% |
国際環境工学部教育活動支援事業 | 1,435,950 円 | 4.5% |
国際環境工学部大学院開設準備事業 | 1,344,320 円 | 4.2% |
国際環境工学部学生支援事業 | 325,010 円 | 1.0% |
合 計 | 32,184,726 円 | 100.0% |
内訳としては「国際環境工学部教員研究費」にて計上される旅費が最も多いが、
これは教授等の研究活動に伴う旅費であり、国内出張のみならず外国出張も含まれる。次に計上額の多い「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」にて計上される旅費は、管理運営業務全般にかかる旅費であり、市役所本庁舎もしくは北九州市立大学北方キャンパスへの事務連絡にかかる旅費の他、赴任旅費が含まれる。また、
「国際環境工学部留学生受入推進事業」にて計上される旅費は、留学生の確保を目的として、中華人民共和国大連市にて実施された日本語短期課程入学試験の実施及び大韓民国にて実施された高等学校への広報活動に伴う旅費等が主体である。
このように、公務としての旅行に際しては、鉄道やバスを利用した際の運賃について原則として実費を支給することとされているが、タクシーはこの範疇にない。しかし、時間的な余裕がない場合や外部の人員の送迎等にタクシーを使用する場合が当然あり得るため、その際のタクシー代は旅費ではなく、使用料及び賃借料の費目にて支出される。
今回、旅費について監査をする一環として、使用料及び賃借料に計上されているタクシー代についても、その執行状況の確認を行うこととした。なお、タクシーの利用はタクシーチケットを使用することとされており、市内の移動に限られている。
(2)実施した監査手続
① 大学事務局から入手した平成 14 年度北九州市立大学(ひびきのキャンパス分)歳出決算額について、「予算管理簿」と照合した。
② 「予算管理簿」を通査するとともに、執行額の変動要因等について関係職員に対してヒアリングを実施した。
③ 「キャンパス管理運営事業」、「留学生受入推進事業」及び「工学部教員研究費」にて計上されている旅費から、主に金額の大きいものを中心としてサンプルを抽出し、関係する証憑類を閲覧するとともに、必要に応じて関係職員に対してヒアリングを実施した。
④ タクシーチケットの利用状況を確認するため、「国際環境工学部教育活動支援事業」にかかる使用料及び賃借料の「予算管理簿」を通査するとともに、関係する証憑を閲覧し、必要に応じて関係職員に対してヒアリングを実施した。
(3)監査の結果
以下の事項を除いては、特に指摘すべき事項はない。
① 「復命書」の提出状況について
「国際環境工学部教員研究費」にかかる旅費において、宿泊出張等「復命書」の提出が要請される場合であるにも関わらず「復命書」の提出を省略し、口頭復命にて済ませているものがある(表Ⅱ-6)。
表Ⅱ-6 「復命書」の作成が省略されていた旅行
適用 | 目的地 | 日程 | 旅費支払額 | |
1 | 第7回 SGRA フォーラム参加 | 東京 | H14.5.10~5.11 | 77,480 円 |
2 | 世界ガス会議出席 | 東京 | H14.5.15~5.16 | 77,480 円 |
3 | 2002 年度日本建築学会大会出席 | 金沢 | H14.8.2~8.4 | 105,540 円 |
職員等が出張を終えた際には、その報告として「復命書」の作成及び提出が原則として求められる。その詳細は、「旅行命令に対する復命について〔平成9年4月 22 日北九総人人第 11 号各所属長、各旅行命令権者あて総務局長通知〕(表Ⅱ-7)」
(以下、「総務局長通知」という。)に定められており、旅行命令権者は「職員が出張を終え帰庁した時、7日以内に復命書を提出させ、用務経過等を確認する」こととされ、原則として定型の様式による「復命書」の提出が求められている。また、
「復命書」の提出によらず口頭による復命が容認される状況も定められており、「勤務地内出張、近距離旅行及び近距離旅行以外の旅行のうち宿泊を要しない県内旅行の場合」においては、「出張用務の内容に応じ口頭により復命させることができる。」とされている。
本件の場合、いずれも宿泊を要する国内出張であり、「総務局長通知」に定める口頭復命が容認される場合に該当せず、「復命書」の提出が要請されるものである。事務局の説明によると、教員の国内出張にかかる復命については、上長である学部長の判断により口頭復命にて済ませている場合があるとのことであるが、その判断基準が明確ではなく、かつ当該運用は「総務局長通知」に反するものである。
旅費として公費の支出を伴う以上、旅行の事実を証明し、かつその必要性及び有効性等を証明する上で「復命書」は重要であり、合理的な理由がある場合を除き、その提出を受ける必要があるものと判断される。
なお、大学の特殊性から、書面による復命とすることが非合理となる状況があるのであれば、口頭復命の要件等を改めて検討する必要があるものと思われる。
適正な事務処理をされたい。
表Ⅱ-7 「旅行命令に対する復命について」抜粋
(平成9年4月 22 日北九総人人第 11 号各所属長、各旅行命令権者あて総務局長通知)
1 旅行命令に対する復命について
(1) 旅行命令権者は職員が出張を終え帰庁した時、7日以内に復命書を提出させ、用務経過等を確認するものとする。ただし、勤務地内出張、近距離旅行及び近距離旅行以外の旅行のうち宿泊を要しない県内旅行の場合は、出張用務の内容に応じ口頭により復命させることができる。
(2) 前号の復命書は別紙様式によるものとする。ただし、これにより難い場合は、別紙様式に示した項目を記載したものであれば、別紙様式以外の復命書によることができる。
② 勤務地内旅費の事業間流用について
「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」及び「国際環境工学部教員研究費」にかかる旅費の執行額の推移は表Ⅱ-8のとおりである。10 月以降、「国際環境工学部教員研究費」にかかる旅費の執行額が異常に減少しているが、これは9月末の段階において当初予算配当額の約97%を執行し予算配当残額が僅少となったためである。また、一方において「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」にかかる旅費について、「予算管理簿」上、適用欄に教員研究用として記載されている案件の執行額を集計したところ、総執行額 7,758,954 円の内、約 67%に当たる 5,243,360円を占めており(表Ⅱ-9)、「国際環境工学部教員研究費」にかかる旅費の不足分を「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」から賄っている状況と言える。
表Ⅱ-8 旅費執行額の推移
月 | 国際環境工学部教員研究費 | 国際環境工学部キャンパス管理運営事業 | ||||
予算配当額 | 執行額 | 予算配当残額 | 予算配当額 | 執行額 | 予算配当残額 | |
H14.4 | 12,150,000 円 | 1,445,065 円 | 10,704,935 円 | 8,205,000 円 | 1,699,304 円 | 6,505,696 円 |
5 | 1,652,320 円 | 9,052,615 円 | 32,480 円 | 6,473,216 円 | ||
6 | 2,025,703 円 | 6,999,912 円 | 123,730 円 | 6,349,486 円 | ||
7 | 3,224,651 円 | 3,775,261 円 | 116,920 円 | 6,232,566 円 | ||
8 | 1,657,770 円 | 2,117,491 円 | 18,320 円 | 6,214,246 円 | ||
9 | 1,749,468 円 | 368,023 円 | 428,540 円 | 6,785,706 円 | ||
10 | 286,200 円 | 81,823 円 | 1,299,255 円 | 4,486,451 円 | ||
11 | 58,470 円 | 23,353 円 | 1,152,780 円 | 3,333,671 円 | ||
12 | 7,060 円 | 16,923 円 | 305,455 円 | 3,028,216 円 | ||
H15.1 | 0 円 | 16,923 円 | 447,510 円 | 1,038,820 円 | ||
2 | 3,860 円 | 12,433 円 | 1,038,820 円 | 1,541,886 円 | ||
3 | 11,930 円 | 503 円 | 1,095,840 円 | 446,046 円 | ||
計 | 12,150,000 円 | 12,149,497 円 | 503 円 | 8,205,000 円 | 7,758,954 円 | 446,046 円 |
(資料)「予算管理簿」より作成
表Ⅱ-9 「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」内に占める教員研究用旅費
教員研究用 | その他 | 合計 | |
旅費 | 5,243,360 円 (67.6%) | 2,515,594 円 (32.4%) | 7,758,954 円 |
(資料)「予算管理簿」より作成
事業環境の変化等に伴い当初予算配当額に変更を要する状況は当然に予想されるものであり、その場合、予算の節内において該当する事務事業を変更する「事業間流用」の処理を行うことにより、各事業の旅費の間で過不足額を調整することが規定されている。これは、必要がある場合において、ある事業の予算を別の事業の予算に付け替えるものであり、当該「事業間流用」を行う場合には、「流用決議書兼通知書」により、北方キャンパスにある北九州市立大学庶務課経理係あて決裁を得ることとされている。しかし、本件の場合、「国際環境工学部キャンパス管理運
営事業」の旅費から「事業間流用」の措置がなされることなく、教員研究用の旅費が執行されており、その額も「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」にかかる旅費の約 67%を占める程の額となっている。
支出目的が教員研究用であり、本来「国際環境工学部教員研究費」に分類・計上されるべき性質の旅費が「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」に計上された場合、各事業別の決算数値がその実態と乖離し、行政活動の成果を適切に示し得ない恐れがある。決算数値は過去の活動の結果を反映し、行政活動に対する説明責任を果たす際の客観的な証拠の一部となるものであるとともに、次年度以降の予算積算の根拠となるべき数値である。本件の場合、旅費という同一の費目内における事業間の分類の問題であるが、教員の研究活動に必要となる旅費について、適切な予算の積算を阻害する恐れがあるものである。
また、今後は、予算編成の局面において、各局が主体性をより発揮することを求められる状況が増加することが予想されるが、各局が主体的に判断する上において、過去の実績を適切に把握し意思決定することが前提となろう。一方、主体性が高ま れば、それに応じた説明責任が求められるが、これも適切な実績の把握に基づいた説明がなされなければ、各局は、実施した活動に対する説明責任を十分に果たし得 ないであろう。この場合、所掌部署が内部的に本来の必要額を把握するだけではなく、公式の記録にそれが適切に反映されている必要があることは言うまでもない。
本件の場合、大学の根幹的な活動である教員の研究活動にかかるものであり、教員活動の成果と対応するコストの一要素を構成するものである。その性質的な重要性からも、事業別に費用を認識・把握することに重要性があると言え、今後、適正な事務処理がなされることを求める。
7.委託料
(1)概 要
平成 14 年度において北九州市立大学にて執行された委託料のうち、ひびきのキ
ャンパスにかかるものは 855,445,339 円であり、ひびきのキャンパスにおける歳出執行総額の約 32%強を占めている。その事業別の内訳は以下のとおりである(表Ⅱ
-10)。主要なものは、「国際環境工学部補助要員確保事業」、「学術情報センター管理運営」及び「国際環境工学部キャンパス維持管理事業」である。
表Ⅱ-10 平成 14 年度委託料 事業別内訳
事業名 | 執行額 | 割合 | ||
国際環境工学部備品整備事業 | 23,885,349 円 | 2.8% | ||
国際環境工学部補助要員確保事業 | 101,508,167 円 | 11.9% | ||
国際環境工学部キャンパス維持管理事業 | 88,400,376 円 | 10.3% | ||
国際環境工学部工学部教員研究費 | 6,083,535 円 | 0.7% | ||
国際環境工学部入試広報事務 | 25,038,808 円 | 2.9% | ||
国際環境工学部留学生受入推進事業 | 3,000,000 円 | 0.4% | ||
国際環境工学部大学院開設準備事業 | 1,255,170 円 | 0.1% | ||
国際環境工学部教育活動支援事業 | 11,327,400 円 | 1.3% | ||
国際環境工学部学生支援事業事業 | 1,059,418 円 | 0.1% | ||
学術情報センター管理運営事業 | 593,887,116 円 | 69.4% | ||
合 計 | 855,445,339 円 | 100.0% |
(資料)「平成 14 年度歳出決算 事業別」 大学提供資料より作成
① 「国際環境工学部補助要員確保事業」にかかる委託料
「国際環境工学部補助要員確保事業」は、授業、実験及び研究等において技術的なサポートをする補助要員であるエンジニアリング・アドバイザー(以下、「EA」という。)及び授業のサポートを行う補助要員であるティーチング・アシスタント
(以下、「TA」という。)等により担われる業務を外部に対して委託するものであり、平成 14 年度における執行額は 101,508 千円であった。なお、平成 14 年度における契約別の内訳は以下のとおりであり(表Ⅱ-11)、事業内における委託費の内、 EAにかかる委託費が約 87%を占めている。
表Ⅱ-11 国際環境工学部補助要員確保事業 契約別内訳
契約件名 | 執行額 |
北九州市立大学国際環境工学部研究等補助業務委託契約 (EAにかかる委託契約) | 88,454,870 円 |
北九州市立大学国際環境工学部研究等補助業務委託契約 (TAにかかる委託契約) | 10,919,049 円 |
産学連携事務補助業務委託契約 | 955,972 円 |
大学院開設準備事務補助業務委託契約 | 616,513 円 |
国際環境工学研究科開設事務補助業務委託契約 | 561,763 円 |
合 計 | 101,508,167 円 |
(資料)「予算管理簿」より作成
② 「国際環境工学部キャンパス維持管理事業」にかかる委託料
「国際環境工学部キャンパス維持管理事業」における委託料には、キャンパス清掃業務、昇降機保守点検業務及び留学生会館にかかる設備管理・巡回警備業務等の委託とともに、ひびきの本館、計測・分析センター及び特殊実験棟に関する維持管理・警備業務等の FAIS への委託料分が含まれる。なお、平成 14 年度における執行額は 88,400 千円であり、契約別の主な内訳は以下のとおりである(表Ⅱ-12)。執
行金額の上位3件で 72,518 千円を執行しており、事業内における委託費の約 82%を占めている。
また、下表における「産業学術振興局への再配当」が、ひびきの本館、計測・分析センター及び特殊実験棟に関する維持管理・警備業務等の FAIS への委託料分である。当該契約は、市から FAIS への学術研究施設等管理運営業務委託契約に包含されていることから、産業学術振興局に配当替されるとともに、次に述べる学術情報センター管理運営事業にかかる委託料と併せて、産業学術振興局にて執行されている。
表Ⅱ-12 国際環境工学部キャンパス維持管理事業 契約別の主な内訳
契約件名 | 執行額 |
産業学術振興局への再配当 | 40,716,411 円 |
北九州市立大学ひびきのキャンパス清掃等業務委託 | 28,350,000 円 |
北九州市立大学ひびきのキャンパス昇降機保守点検業務委託 | 3,452,400 円 |
その他 25 件 | 15,881,565 円 |
合 計 | 88,400,376 円 |
(資料)大学側作成資料より、監査人が抜粋して作成
③ 「学術情報センター管理運営事業」にかかる委託料
「学術情報センター管理運営事業」は、図書室の図書の管理及び学術研究都市内に整備された情報基盤等の管理運営業務等を委託するものであり、委託先は FAISである。平成 14 年度の執行金額は 593,887 千円であるが、当該契約は前述のとおり、市から FAIS への学術研究施設等管理運営業務委託契約に包含されていることから産業学術振興局に配当替された上、産業学術振興局にて執行されている。
市から FAIS への委託契約にかかる執行額の内訳は以下のとおりであり(表Ⅱ
-13)、北九州市立大学特別会計の負担額は 634,603 千円である。この内訳は、「国
際環境工学部キャンパス維持管理事業」から 40,716 千円及び「学術情報センター
管理運営事業」から 593,887 千円であり、ひびきの本館、計測・分析センター及び特殊実験棟のように北九州市立大学独自の施設に関する維持管理・警備業務等にかかる委託料を「国際環境工学部キャンパス維持管理事業」において負担し、図書室の図書管理及び学術研究都市内に整備された情報基盤等の管理運営業務等のうち北九州市立大学所管分に関する委託料を「学術情報センター管理運営事業」におい
て負担している。
表Ⅱ-13 市から FAIS への委託契約にかかる執行額
執行総額 | 一般会計負担分 | 北九州市立大学 特別会計負担分 | |
委託料負担額 | 1,329,585,550 円 | 694,982,023 円 (52.3%) | 634,603,527 円 (47.7%) |
(注)雑収入控除後の委託料負担額である。
(2)実施した監査手続
① 大学事務局から入手した平成 14 年度北九州市立大学(ひびきのキャンパス分)歳出決算額について「予算管理簿」と照合するとともに、必要に応じて関係職員に対してヒアリングを実施した。
② 「国際環境工学部補助要員確保事業」、「国際環境工学部キャンパス維持管理事業」及び「学術情報センター管理運営事業」にて計上されている委託料から、主に金額の大きいものを中心としてサンプルを抽出し、関係する証憑類を閲覧するとともに、必要に応じて関係職員に対してヒアリングを実施した。
(3)監査の結果
以下の事項を除いては、特に指摘すべき事項はない。
① 「北九州市立大学国際環境工学部研究等補助業務委託契約(EAにかかる委託契約)」の契約形態について
ア.契約の概要
(ア)契約概要
北九州市立大学国際環境工学部においては種々の業務を外部に委託しているが、その中でもEAにかかる委託は北九州市立大学独自に行われているものである。EAとは、授業・実験・研究等において、教授等を技術的にサポートする補助要員であり、対応する業務は化学薬品の管理・発注から旋盤・ボール盤操作、建築材料耐久性試験装置操作、製図基礎実習補助まで幅広いものである。国立大学においては通常「技官」として正規の職員がこの任にあたっているが、北九州市立大学においては、民間のノウハウの活用及び費用の効率化の観点から、開学時より外部の業者に対して業務委託を実施している。
(イ)契約形態
表Ⅱ-14 EAに係る委託契約
契約件名 | 執行額 | 契約形態 |
北九州市立大学国際環境工学部研究等補助業務委託契約(EAにかかる委託契約) | 88,454,870 円 (税込み) | 特命随意契約 (地方自治法施行令第 167条の2 第1項第2号) |
委託(請負)として契約を締結しており、契約書の記載内容等も「北九州市委託業務要綱」に準拠した形態でなされている。
また、「委託料のみを判断基準とする競争入札方式では、EA個人のスキルを見極めることができず、教員の要望に応じた必要な人材を確保し、十分な成果をあげることはできない。」として、コンペを実施した上で特命随意契約にて契約を締結しているが、結果として、当該業務開始以来、市内の同一の人材派遣会社が受託している。
(ウ)業務の概要
平成 14 年度においては概ね以下の業務が委託対象となっており、合計で 21人が当該業務に従事すべく委託先会社より大学に出向いている(表Ⅱ-15)。大学院の拡充等に伴い業務は拡大傾向にあり、平成 15 年度には 27 人を予定して
おり、最終的には 29 人を予定している。なお、業務は全て大学キャンパス内で実施される。
表Ⅱ-15 平成 14 年度委託業務の内容
学科等 | 業務内容 | 人員数 |
環境科学プロセス工学科 | ①化学薬品管理等 ②物理化学実験補助等 ③有機化学実験補助等 | 3名(各1名) |
計測分析センター | ①バイオ分析機器の操作 ②表面分析機器の運転等 ③金属イオン分析機器の運転等 | 3名(各1名) |
環境機械システム工学科 | ①機械設計製図作成等 | 1名 |
特殊実験棟加工センター | ①旋盤、ボール盤操作等 ②フライス盤の操作等 ③CNCジグボーラ操作等 ④レーザー加工機の操作等 | 4名(各1名) |
情報メディア工学科 | ①情報処理学演習の補助等 ②学科コンピュータ管理等 ③CALL授業補助、教材作成等 | 3名(各1名) |
環境空間デザイン学科 | ①建築材料実験補助及び骨材準備等 ②環境工学実験補助・実験設備操作調整・実験データ収集・整備等 ③環境設備実験補助・実験設備操作調整・実験データ収集・整備等 ④製図基礎実習補助等 | 4名(各1名) |
全学共通 (主に情報メディア学科) | ①情報化推進業務 | 1名 |
環境科学プロセス工学科 環境機械システム工学科 | ①学内OA推進業務 | 1名 |
全学共通 | ①TAシフト管理 | 1名 |
合 計 | 21 名 |
(エ)履行確認の方法 EAの各人別の出勤状況を記載した『業務完了報告書』の提出を受けるとと
もに、管理課にて出退管理を出勤簿に押印させる形態にて確認作業を実施している。その際、年に 10 日間の有給休暇の存在を前提とし、その上で運用を行っている。
イ.労働者派遣業務との類似性
請負契約であるとの前提から、委託契約として契約が締結されているが、内容的に労働者派遣業務に類似した点が含まれている。
本件の場合、受託会社からEA業務に従事する者を大学キャンパスに出向かせた上で業務に従事させているが、当該業務が労働者派遣法上に規定する労働者派遣業務に含まれるか否かが問題となる。労働者派遣法においては、契約上請負の形態を採っていたとしても、契約の相手方が「① 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること、② 請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理すること」のいずれの要件も満たしている場合でなければ請負ではなく労働者派遣業務であると判断されることとなり
(1986 年4月 17 日 労働省告示第 37 号)、労働者派遣業務であると判断された場合には、契約形態の如何によらず、労働者派遣法に規定される種々の措置が必要となる。これは請負の形態を採ることにより、労働者派遣法に対する潜脱行為を妨げる趣旨である。
本件の場合、受託会社の社員が大学に出向いているものの、受託会社が大学から独立して当該業務を処理しているとは明確に判断し得ない実態が一部にあるものと思われる。これは、受託会社が自らの雇用する労働者の労働力を自ら直接利用した上で、独立して業務を実施していると言うためには、指揮命令系統が大学から独立していることが要件とされるが、EAが教授等の補助業務を担うものである以上、実態として、業務上の指揮命令を下すのは教授等であり、実質上の指揮命令権は大学側が有していると推測される点があるためである。これは、「契約書」に付随し、委託業務の詳細を規定する「業務仕様書」等において勤務場所、就業時間等の定めはあるものの、大学側から独立して業務を実施することが明確に規定されていないこと、及び委託業務の履行を確認するための「業務完了報告書」の内容は出勤状況の報告のみであること、有給休暇の付与等のように労働者派遣業務を前提としたと思われる管理面での運用が存在すること等に起因するものである。
結果として、今回の監査を通じて、現状の契約内容を前提とした場合、当該契約が請負として適切であるとの積極的な心証は得られなかった。
ウ.必要とされる措置
EAの派遣業務自体が継続することを前提とした場合、契約内容及び実態を請
負もしくは労働者派遣かのいずれかに整理する必要がある。
(ア)請負として整理する場合
大学事務局は今後とも請負による委託契約形態を継続する意向を有してい るが、その場合、契約内容及び実態を請負として整理する必要がある。この場 合、委託した業務について、その内容及び必要とされる質的水準等を明確にす るとともに、履行確認についても、出勤日の確認だけではなく成果の確認を行 ったことを明確に記録する必要がある。また、受託会社が独立して業務を遂行 することを前提として、責任関係及び出向いてくる者の出勤日及び時間等を請 負の立場から明確に規定する必要がある。また、当該業務は、労働者派遣業務 と近接した業務であることから、契約内容が請負として適切であることについ て、当該領域の専門家の意見を必要に応じて徴することが適切であると考える。
(イ)労働者派遣業務として整理する場合
労働者派遣業務として整理する場合には、労働者の派遣を受け入れる者として、体制を整備する必要があり、派遣労働者にかかる就業条件の確立、「派遣先責任者」の選任、「派遣先管理台帳」の作成及び保管等、労働者派遣法上の所要の措置が必要になる。この場合においても、契約内容が適切であることについて、当該領域の専門家の意見を必要に応じて徴することが適切であると考える。
いずれの形態に整理するにしても、地方公共団体が行う業務である以上、法律に抵触しているかのような疑義を外部に与えることなく適切に遂行することを求めるものである。
② 「大学院開設準備事務補助業務委託契約」における有給休暇の付与についてア.契約形態
表Ⅱ-16 大学院開設準備事務補助業務委託契約
契約件名 | 執行額 | 契約形態 |
大学院開設準備事務補助業務委託 | 616,513 円 (税込み) | 特命随意契約 (地方自治法施行令第 167 条の2第1項第1号) |
受託会社は人材派遣会社であるが、契約形態は委託(請負)契約であり、労働者派遣業務の形態は採っていない。
イ.有給休暇の付与
「大学院開設準備事務補助業務委託契約」に基づき、平成 14 年5月1日から
平成 14 年7月 31 日を期間として、受託先会社から社員1名が出向き業務に従事していたが、当該者に対して7月に、以下の日数について有給休暇と称した休暇
を付与している(表Ⅱ-17)。
本件の場合、「業務仕様書」において、「毎週月曜日から金曜日」までの間就業するとともに、「委託期間内において勤務しなかった時間がある場合」には、一定の方法により算出した金額を「委託金額から減額する」旨規定されている。しかし、管理課にて管理する「出勤簿」上においては有給休暇として扱う一方、受託会社からの「業務完了報告書」においては出勤扱いとされたものを検収し、当該日数分の委託料も出勤日数に加算し受託会社に支払っている。
ちなみに、「業務仕様書」上に規定されている減額単価は時間当たり 1,080 円
であり、もし減額の措置を採った場合、22,680 円(1,080 円×7.0h×3日=22,680円)の減額となったものである。
表Ⅱ-17 有給休暇の付与
月 日 | 出勤簿上の扱い | 業務完了報告書上の扱い |
7月 11 日(木) | 有給扱い | 出勤 |
7月 12 日(金) | 有給扱い | 出勤 |
7月 31 日(水) | 有給扱い | 出勤 |
ウ.事務局による解釈及び事務処理
事務局によると、派遣職員であっても6ヶ月以上勤務した者には 10 日間の有給休暇が付与されることとの均衡上、運用において有給休暇として処理したとのことである。また、当該労働者は、契約案件は異なるものの、6ヶ月以上継続的に雇用されることが7月段階において想定されたため市の負担にて有給休暇を付与したとしている。
確かに、労働基準法上、派遣労働者が同一の人材派遣会社(派遣元)にて6ヶ月以上続けて勤務し、その間の8割以上は出勤しているという条件を満たした場合には、10 日間の有給休暇を取得する権利が発生する。しかし、その場合には、派遣元において有給休暇を付与する義務が生じるものであり、本来、派遣先である北九州市立大学が負うべき性格の費用ではない。また、本件の者は、以下のように継続的に北九州市立大学からの委託業務に従事しているものの、派遣元が異なるために、派遣元からは有給休暇を付与されていない者であるとともに、各契約が独立したものである以上、7月の段階においては6ヶ月間継続して勤務する保証はないものである(表Ⅱ-18)。
加えて、「業務仕様書」における減額規定は欠勤等が生じた場合に適用することを想定しているものであり、本件については、受託会社側との間で合意を得ていることから減額規定の適用対象外であるとしている。
表Ⅱ-18 事務補助業務委託契約
契約案件 | 受託会社(派遣元企業) | 派遣期間 |
大学院開設準備事務補助業務委託 | A社 | H14.5~H14.7 |
産学連携事務補助業務委託 | B社 | H14.8~H14.12 |
国際環境工学研究科開設事務補助業務委託 | A社 | H15.1~H15.3 |
エ.今後の措置等について
本件における大学側の措置は労働者保護の観点からなされたものであるとは言え、有給休暇の付与を前提とした運用に関して、契約書及び仕様書に明確に規定されてはおらず、また、受託会社側との合意も口頭による合意にすぎないため、第三者が事後的に確認し得るものとして存在していない。このように、第三者にも確認し得る明確な根拠規定もしくは契約条項等が存在しない中において、運用により有給休暇的な休暇を特定の者に付与することは、他の者との均衡上、公平性を欠く恐れがあり、結果として適切性を欠く処置であったと判断する。
本件についてもEAにかかる委託契約と同様に、労働者派遣業務と請負との混同が見られることから、今後類似の契約案件について、契約内容を請負業務もしくは労働者派遣業務のいずれかに整理することが必要である。また、必要に応じて当該分野の専門家の意見を徴することが望ましいものと考える。
また、労働者派遣を受けている場合、派遣先が自己の負担にて派遣職員に対して追加的に有給休暇を付与すること自体は労働基準法及び労働者派遣法等に抵触するものではないと考えられるが、派遣職員間の公平性及び制度の透明性を確保するために、付与条件・日数・承認権限者等を規定した内部規程を整備し明確化する必要があるものと考える。
8.報償費、需用費、役務費等
(1)概 要
北九州市立大学国際環境工学部の平成 14 年度における報償費、需用費及び役務費等の、細節ベースでの歳出決算額は以下のとおりである。
表Ⅱ-19 報償費の内訳 (単位:円)
細節 | 歳出額 |
報償費 | 10,468,832 |
表Ⅱ-20 需用費の内訳 (単位:円)
細節 | 歳出額 |
食糧費 | 91,105 |
物件費 | 1,809,063 |
維持補修費 | 1,540,350 |
自動車重量税 | 17,600 |
その他需用費 | 207,264,843 |
合 計 | 210,722,961 |
(注)その他需用費の主なものはひびきの本館の光熱水費である。
表Ⅱ-21 役務費の内訳 (単位:円)
細節 | 歳出額 |
保険料 | 558,870 |
その他役務費 | 17,064,860 |
合 計 | 17,623,730 |
(2)実施した監査手続
上記費目について、一般支出決議書あるいは見積書・契約書等の証憑書類を閲覧し、担当者へのヒアリングを実施することにより、契約・支出事務手続の適正性、取引の有効性・効率性について検討した。取引の検証は試査によるものとした。
(3)監査の結果
特に指摘すべき事項は見られなかった。
9.工事請負費
(1)概 要
キャンパス維持管理事業は大学の設備の一般的維持管理を行う事業である。たとえば、開設当初建物に電気配線のみ設けられていたところに、実験設備の設置のためコンセントを取り付けるといった整備が工事請負費で行われる。
(2)実施した監査手続
工事請負費の予算管理簿から執行金額の最も大きい計測・分析センター電源設備改修工事 23,353 千円を選び、支出負担行為伺、工事契約書等を査閲して規則に則った手続がなされているか検討した。
(3)監査の結果
「5.予算管理簿」で指摘したように、配当替の記載について以下のように適切な記入がなされていない点が見られた。
委託料から工事請負費に対して 19,900 千円の「節間流用」がなされているが、流用元たる委託料の「予算管理簿」上、金額・日付とも記載がなく、また、流用先の工事請負費の「予算管理簿」上、金額の記載はあったが日付の記載がなかった。事務局によれば、担当者の記入漏れのためとのことである。なお、当該「節間流用」の承認等にかかる事務処理自体は適正に処理されていたものである。
適正な事務処理をされたい。
10.公有財産購入費
(1)概 要
平成 14 年度歳出決算において国際環境工学部建設事業(用地費)の公有財産購
入費として 833,689 千円の執行が計上されている。北九州市立大学ではひびきのキャンパスの開設にあたり住宅・都市整備公団(現都市基盤整備公団)から用地を取得し、売買代金を分割払いとしている。833,689 千円はその平成 14 年度支払分である。
(2)実施した監査手続
特別会計予算に関する説明書、契約書、割賦金額表等を照合し、債務負担行為が予算に定められていること、及び金額の正確性を確かめた。
(3)監査の結果
特に指摘すべき事項はなかった。
11.備品購入費
(1)概 要
国際環境工学部教員研究費は教員の研究に関する支出をまかなうものであるが、そのうち平成 14 年度の備品購入費は 75,977 千円である。
(2)実施した監査手続
備品購入費の予算管理簿から執行金額の大きいもの5件について支出決議書、請求書等を査閲した。
(3)監査の結果
5件のうち「太陽光発電システム用備品一式の購入について」1,205 千円について、納入条件、仕様書としてメーカーの作成したものがそのまま使われていた。本来仕様書は市の側で作成する書類である。さらにこの購入は北九州市契約規則第 19 条(他社見積辞退)により随意契約で行われており、市の主体性が保たれたか疑問を招きかねないと思われる。発注のための仕様書は、メーカーの資料を参考にする場合であっても市で作成することを徹底されたい。
他の4件については指摘すべき事項はなかった。
12.物品受入れ
(1)概 要
平成14 年度における国際環境工学部備品整備事業の決算額377,656 千円のうち、備品購入費が 343,103 千円を占める。
(2)実施した監査手続
① 予算管理簿から金額の大きい執行5件を選び、支出決議書、入札者指名調書等を査閲し、規則に則った手続で支出されているか検討した。
② また、当該物品を含む大学の管理物品について備品管理台帳を閲覧するとともに管理責任者にヒアリングを行い、物品管理要領に則った管理がなされているかどうか検討した。
(3)監査の結果
支出・物品受入れの手続について指摘すべき事項はなかった。
13.物品返納
(1)概 要
物品管理要領第1 1において不用な物品については会計規則第 91 条により速やかに手続を行うことが定められている。また、同要領第6で、使用に耐えなくなった物品及び使用する必要のなくなった物品の処理は、物品返納書により行うことが定められている。
返納に際しては、廃棄処分する他に、消耗品として処理する場合に以下のような規定がある。「物品の使用者等は、使用中の物品で使用の必要がなくなつたもの、または使用することができなくなつたものがあるときは、その旨を物品管理者に報告しなければならない。」(会計規則第 90 条第1項)、また、この場合の使用不能物
品として会計規則第 91 条第2項に規定する市長が定めるものとは次のものをいう。ア.破損又は劣化した物品で、修繕による経費がかさみ使用の見込みがなく、新た
に取得することが有利なもの。
イ.耐用年数の経過等により能力の低下をきたし、修繕又は改造しても使用の見込みがないもの。
さらに会計規則第 84 条第1項では、「物品管理者は、その所管に属する物品の適正かつ効率的に管理し、常にその使用状況をは握しておかなければならない。」と規定している。
国際環境工学部はキャンパス開設が平成 13 年度とまだ新しいため、不用な物品は少ない状況である。
(2)実施した監査手続
平成 14 年度の廃棄分 77 件、1,937 千円について物品返納書を査閲し、管理責任者へのヒアリングを行い、会計規則及び物品管理要領に則った返納手続がなされているか検討した。
(3)監査の結果
① 物品返納書の作成について
返納する物品の備品管理台帳は備品管理台帳ファイルから物品返納書ファイルに移されている。備品管理台帳は異動の事由・年月日を記入する様式となっているにも関わらず、返納物品として物品返納書ファイルに移された備品管理台帳に異動事由(返納)と返納の年月日が記入されていない。当該物品が返納されたことが備品管理台帳上明らかになっていないため、万一他のファイルに綴られてしまった場合、当該物品は返納されていないことになってしまう。
適正な事務処理が望まれる。
② 返納手続の遅れについて
平成14 年度中に返納された物品が一括して平成 15 年4月1日付の物品返納書で処理されている。返納の事務処理が遅れたため、現物の状態(返納済み)と備品管理台帳の状態(使用中)が一致しなくなっていた。実際の返納の都度、物品返納書を作成すべきである。この点について質問したところその都度行うべきことは認識されており、今後は速やかに事務処理していくとのことであった。
14.物品管理
(1)概 要
北九州市立大学では、地方自治法、財産規則、財産条例、会計規則、物品管理要領等に基づいて物品を管理している。
(2)実施した監査手続
大学関係者にヒアリングを行うとともに、関係資料提出を求め、物品管理要領等との合規性を検証した。具体的には以下の手続を行った。
① 公表決算資料により異常増減がある場合にはその理由を検討した。
② 物品管理の状況を質問し、備品台帳と重要物品台帳を閲覧した。
③ 備品台帳と重要物品台帳の一部を抽出して実査した。
④ 備品台帳と重要物品台帳の取得金額の記載について検証し、一部関係書類を閲覧した。
(3)監査の結果
① 物品の分類について
返納された備品にはコンパクトフラッシュ等があり、内蔵されたメモリーを消去して初期化すれば使用可能のものが存在した。しかし、それは初期化されず、教授の研究室に保管されたままであり、会計上、消耗品として処理されていた。このような取扱を行った理由は、大学における備品数が膨大となり、その管理の効率化を図るためとのことである。また、この件について、現場の実質的な管理者である教授等には具体的な連絡はなされていなかった。
問題は金額が1万円以上で、初期化すれば備品としての価値は変化しないのにもかかわらず、消耗品として処理されている点である。
なお、現在では消耗品ではなく備品として処理されている。
② 現物照合について
ア.会計規則第 84 条、物品管理要領第1等への合規性を確かめるため、備品管理台帳からサンプルを選び、現品の管理状況を確かめたところ、ワークステーション DELL Precision530(液晶モニタ付)について、台帳上の保管場所では校舎・実験棟・S338(実験室)771 と指定されていたが、当該備品が見当たらなかった。また、三分力計用センサインターフェースや三分力天秤については、実査当日に現物が見当たらず、後日、機械工学実験室の回流水槽近くで発見された。他に、ただちに現物が特定できない場合が散見された。
また、共焦点走査蛍光顕微鏡については、台帳上の保管場所は特殊実験棟・機械工学実験棟であったが、実際の保管場所は計測・分析センター・顕微鏡室 104
であり、異なっているものがあった。
会計規則第 84 条第1項により、「物品管理者は、その所管に属する物品の適正かつ効率的に管理し、常にその使用状況をは握しておかなければならない」ことから、大学の状況に応じた適切な現物照合が必要である。
イ.会計規則第 95 条第1項及び第2項では、「物品管理者は、その所属に属する重 要な物品について、現在高に異動を生じた場合はその都度現在高増減表を作成し、収入役に通知しなければならない。収入役は、年度の中途における重要な物品の現在高を前項の規定による現在高増減表により常に明らかにしておかなければ ならない。」と規定されている。そのため、実際には、現物照合を行い、また、市が規定している備品台帳の記載内容を検証すべきであることを示唆している と考える。
ここで、重要物品とは、1品の取得価格が 100 万円以上の物品である。
大学では、指示が会計室よりあった時に、規定どおり、重要物品現在高増減表を作成している。しかし、この場合、現物照合を行わずに、大学の物品管理関係者で作成された表計算ソフトによる帳票をもとに増減を記載している。そこで、異動の生じた物品について現物照合を行うことで、現在高を明確に認識した上で重要物品現在高増減表を作成する必要がある。
③ 備品管理台帳について
備品管理台帳の記載については、合規性の観点から特に指摘すべき事項はない。
15.外部研究費
(1)概 要
外部研究費とは、市の予算であらかじめ確保されている研究費ではなく、民間など大学以外から寄附、委託、補助によって提供される研究費のことである。奨学寄附金と受託研究、共同研究の3つを外部研究費とする場合もあるが、ここでは次表のように科学研究費補助金(以下、「科研費」という。)も含めて、対象とした。
奨学寄附金、受託研究、共同研究の研究費はいったん市の歳入として受け入れ、その後、大学に交付される。各研究費の執行管理責任は学長にあり、また、管理費として研究費受入れ額の 10%が大学の歳入となっており、適切に管理することが求められる。大学としても次表のような要綱等を整備して円滑な受入れと弾力的な執行を図っている。
科研費については市の歳入及び歳出としては計上されないが、原則として研究者の所属する大学が研究費の管理実務を担うとされている。その手続は、下表のような国の規程や通知に従って行うこととなる。
表Ⅱ-22 外部研究費の概要
趣 旨 | 手 続 | |
奨学寄附金 | 学術研究に要する経費等、教育研究の奨励を目的とする経費に充てるべきものとして民間等から受ける寄附金等 | 寄附者から申込→地域・産学連携委員会の意見→市受入れ決定→寄附金受納書→市へ寄附金納付(歳入)→大学へ研究費交付→寄附金 の執行→年度終了後に報告 |
受託研究 | 外部からの委任を受けて委託者の負担する経費を使用して公務として研究し、その成果を委託者に 報告する制度 | 委託者(共同研究は本学教員)から申込→地域・産学連携委員会の意見→市受入れ決定→受託・共同研究契約→市へ研究費納付(歳入) →大学へ研究費交付→研究費の執行→年度終了後に報告 |
共同研究 | 民間等から研究者及び研究経費を受け入れて、教員と民間等の研究者とが対等の立場で共通の課題について共同して研究を行うことにより、優れた 研究成果が生まれることを促進する制度 | |
科学研究費補助金 | わが国の学術を振興するため、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的 とする研究助成費 | 応募→文部科学省・日本学術振興会で審査→交付内定→交付申請→交付決定→大学に補助金交付→大学受入れ→研究者に配分→補助金 執行→年度終了後報告 |
表Ⅱ-23 外部研究費の取扱に係る要綱及び規程等
外部研究費 | 要綱・規程等 |
奨学寄附金 | ・「北九州市立大学奨学寄附金取扱要綱」 ・「北九州市立大学国際環境工学部奨学寄附金取扱規程」 |
受託研究 | ・「北九州市立大学受託研究取扱要綱」 ・「北九州市立大学国際環境工学部受託研究取扱規程」 |
共同研究 | ・「北九州市立大学共同研究取扱要綱」 ・「北九州市立大学国際環境工学部共同研究取扱規程」 |
以上共通 | ・「北九州市立大学国際環境工学部外部研究費の執行に関する規程」 |
科学研究費 補助金 | ・「科学研究費補助金取扱規程」(文部省告示第 110 号) ・「科学研究費補助金(科学研究費)の取扱いについて(通知)」(14 文科振第 135 号)等 |
国際環境工学部における外部研究費の受入れ実績は次表のとおりである。平成 14 年度は 75 件、1億 6,951 万円であり、前年度から件数で 1.5 倍、金額で約 2.5倍の伸びを示している。
表Ⅱ-24 北九州市立大学国際環境工学部における外部研究費の受入れ状況 (単位:千円)
平成 13 年度受入れ | 平成 14 年度受入れ | 対前年比 | ||||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
奨学寄附金 | 24 | 25,500 | 28 | 58,961 | 116.7% | 231.2% |
受託研究 | 8 | 14,786 | 20 | 38,426 | 250.0% | 259.9% |
共同研究 | 8 | 6,283 | 11 | 37,223 | 137.5% | 592.4% |
科学研究費 補助金 | 10 | 21,900 | 16 | 34,900 | 160.0% | 159.4% |
計 | 50 | 68,469 | 75 | 169,510 | 150.0% | 247.6% |
1件当り金額 | - | 1,369 | - | 2,260 | - | - |
(注)奨学寄附金の繰越等のため、各年度の受入れ額と払出し額は一致しない。
(2)実施した監査手続
① 外部研究費の受入れや執行等の手続を定めた要綱や規程等の内容を確認した。
② 平成 14 年度に受け入れた外部研究費の一部案件をサンプルとして抽出し、申込から報告に至る関係書類を閲覧して、要綱等に沿った適正な手続が行われているかを検証した。
③ 同様に一部の案件を対象として、予算管理簿や収支簿、受払報告書等を閲覧するとともに、適宜、証拠書類となる会計帳票を確認し、適正な執行管理が行われているかについて検証した。
④ 外部研究費で購入した備品・図書の扱いについて説明を受けるとともに、金額の大きい備品については現物確認を行った。
(3)監査の結果
以下の点を除いて、特に指摘すべき事項は見られなかった。
① 奨学寄附金の受入れ手続について
奨学寄附金の受入れが決定すると、市長から学長に対して奨学寄附金受入決定通知書を送付するとともに、寄附者に対して奨学寄附金受納書及び納入通知書を送付する。そして、寄附者から奨学寄附金が納付された後、学長が市長に対して奨学研究費交付申請書で交付申請するとされている。
寄附者に対して寄附受入れの決定を通知する受納書が奨学寄附金受入決定通知や奨学研究費交付申請書等よりも2ヶ月以上あとに発行されている例が見られた
(表Ⅱ-25)。要綱等に沿った適正な手続書類の作成が必要である。
表Ⅱ-25 奨学寄附金Cの受入れ手続
適正な手続順序 | 奨学寄附金Cの実際の手続日 |
1.寄附者へ奨学寄附金受納書の送付 | 平成 14 年 10 月7日 |
2.寄附者から市への奨学寄附金の納付 | 平成 14 年7月 25 日 |
3.学長による市長への奨学研究費交付申請 | 平成 14 年7月 25 日 |
4.市長から学長への奨学研究費交付決定通知 | 平成 14 年7月 25 日 |
② 執行計画書について
外部研究費(奨学寄附金、受託研究、共同研究)を使用する教員はあらかじめ、外部研究費執行計画書を学長に提出し、それに基づき外部研究費の執行を行うとされている。
奨学寄附金で、執行計画書提出(10 月 23 日)の前に既に支出の起案(9月分研究等補助業務委託)がなされているものが見られた。また、受託研究や共同研究で日付が不明瞭なケースや合計金額が記入されていない場合など、不完全な執行計画書が見られた。要綱等に基づいた適正な執行計画書の作成・提出が必要である。
表Ⅱ-26 執行計画書の様式の一部
区 分 | 金 額(千円) | 内 容 |
物品購入 | ××× | 備品購入、消耗品の購入等 |
薬品購入 | ××× | 薬品の購入 |
図書購入 | ××× | 図書の購入 |
旅 費 | ××× | 旅費 |
その他 | ××× | 謝礼、通信運搬費、委託料等 |
計 | ××× |
③ 奨学寄附金の受払報告について
奨学寄附金については、総括及び個別の収支簿を備えて、外部研究費の管理及び執行状況を常に明確にしておかなければならない。また、学長は年度経過後、奨学寄附金受払報告書で市長に報告することになっている。
奨学寄附金ごとの個別の収支簿は払出内訳表、総括の収支簿は受払報告書と同一の帳票で管理されている。払出内訳表と受払報告書の金額が一致していない奨学寄附金があり、正確な金額が市長へ報告されていないことになる。受払報告書を正確に作成する必要がある。また、このようなミスを防ぐために、市の財務会計システムで奨学寄附金の年度末残高を確認し、受払報告書と照合する必要がある。
④ 受託研究、共同研究の予算管理簿について
受託研究、共同研究についても、総括及び個別の収支簿を備えて、外部研究費の管理及び執行状況を常に明確にしておかなければならない。また、受託研究費及び共同研究費は学長の名義により金融機関に預金させ、所管課長は学長の支出命令に基づき、その払出しを行うものとされている。
個別の収支簿として予算管理簿が作成されている。受託研究の平成 14 年度末(平
成 15 年3月末)現在の予算管理簿は預金残高と一致してゼロとなっているが、平
成 14 年 12 月末現在で照合すると予算管理簿上は、預金残高よりも 170,083 円少ない金額となっている。委託者との間の連絡の行き違いや予算管理簿上の日付未記入などが原因であるが、金融機関からの領収済通知書などの帳票類とも照合し、予算管理簿に正しく記載する必要がある。
Ⅲ.財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)
1.補助金収入の概要
FAIS は、平成 13 年3月に設立されて活動を始め、平成 14 年度は国等からの補助金も増加し、また、市からの補助金収入も対前年比 62%の増加となっている。
表Ⅲ-1 FAIS における補助金収入の概要 (単位:千円)
項目 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | 備考 |
(一般会計) 北九州市補助金福岡県補助金 国補助金 | 568,693 - - | 1,143,504 18,789 533,063 | |
計 | 568,693 | 1,695,356 | |
(特別会計) | 産業技術振興事業特別会計 | ||
北九州市補助金 〃 | 110,762 105,020 | - 127,854 | (テクノセンター分) 研究基盤整備推進事業特別会計 |
計 | 784,475 | 1,823,210 |
(資料)FAIS 計算書類より作成
表Ⅲ-2 市の補助金収入の内訳 (単位 千円)
No. | 項 | 目 | 所管センター | 決算額 | ||
平成 13 年度 | 平成 14 年度 | |||||
1 2 3 4 5 6 | (一般会計) | キャンパス運営センター産学連携センター SoC 設計センター産学連携センター 〃 中小企業支援センター | ||||
財団運営補助金 | 162,260 | 184,076 | ||||
プロジェクト誘致助成金 | - | 20,000 | ||||
SoC 設計整備推進事業補助金 | 272,893 | 339,400 | ||||
北九州技術移転推進事業補助金 | - | 17,547 | ||||
生ごみ精製乳酸化実証事業補助金(農水省) | 133,540 | 200,310 | ||||
中小企業支援センター関連補助金 | - | 382,171 | ||||
(中小企業産学官連携研究開発事業・中小 | ||||||
企業支援センター運営費) | ||||||
計 | 568,693 | 1,143,504 | ||||
7 8 | (特別会計) 産業技術振興センター関連補助金 | 産業技術振興センター | 110,762 | - | ||
研究基盤整備推進事業補助金 | GMD-Japan 研究所 | 105,020 | 127,854 | |||
合 | 計 | 784,475 | 1,271,358 |
(資料)FAIS 作成資料より作成
2.研究基盤整備推進事業補助金
(1)概 要
① 補助事業の目的
当該補助金は、北九州市補助金等交付規則に従い、FAIS に交付されるものであり、その目的は「ドイツ国立情報処理研究所(現フラウンホーファー研究所、以下、
「GMD」という。)のアジア拠点である「GMD‐Japan 研究所」において、情報分野
(ロボティクス等)の研究活動を進め、地域の情報産業を支援するための研究基盤を確立する」ことである。
② 補助金交付の経緯
この補助金交付にあたっては、平成 10 年8月 28 日付で、GMD、市長、(財)九州ヒューマンメディア創造センター(平成13 年度に FAIS が同事業を引き継ぐ以前の団体、以下、「HMC」という。)の三者で基本協定書が締結されている。
この結果、同協定第3条第3項「北九州市は、協定期間中(平成 10 年8月 28 日から平成 15 年3月 31 日)、GMD から派遣された研究員の研究活動費として、議会の議決を得て、HMC に毎年度1億5千万円の支援を行う」により、平成 10 年度から平成 14 年度まで、総予算額7億5千万円が設定され、平成 15 年度には1億円が予算化されている。
③ 研究基盤整備推進事業補助金(特別会計)の執行状況
表Ⅲ-3 研究基盤整備推進事業補助金 (単位:千円)
科 目 | 平成 14 年度 当初予算 | 平成 14 年度 最終予算 | 平成 14 年度 実 績 | 備 考 予算科目 | |
研究者等給与 | 80,060 | 80,060 | 58,731 | ||
福利厚生費 | 15,000 | 15,071 | 6,331 | ||
消耗什器備品等 | 589 | 1,339 | 3,924 | ||
事業費 | 旅費 図書費 | 12,620 200 | 12,209 200 | 11,889 228 | |
委託費 | 5,500 | 15,200 | 17,340 | ||
その他事業費 | 4,313 | 4,203 | 3,703 | ||
事業費計 | 118,282 | 128,282 | 102,146 | ||
事務用品・印刷 | 330 | 530 | 1,455 | (消耗什器備品・消耗 | |
光熱水費 | 600 | 830 | 849 | 品・印刷製本費) | |
賃借料 | 5,804 | 10,404 | 10,805 | ||
管理費 | 旅費 | 220 | 220 | 209 | |
通信運搬費 | 500 | 890 | 1,046 | ||
その他管理費 | 1,480 | 1,030 | 681 | ||
管理費計 | 8,934 | 13,904 | 15,045 | ||
固 定 資 産 取得費 | 什器備品購入 無形固定資産購入支出 | 20,784 - | 5,289 - | 5,763 4,458 | |
固定資産取得費計 | 20,784 | 5,289 | 10,221 | ||
敷金 | 敷金 | - | 525 | 525 | |
予備費 | 予備費 | 2,000 | 2,000 | - | |
合計 | 150,000 | 150,000 | 127,937 |
(注)1.「平成 14 年度の当初予算」は補助金交付申請書に添付の「特別会計収支予算書」及び FAIS より入手した当初予算内訳書から作成。
2.「科目」は、「特別会計収支予算書」の科目を補助金交付申請書添付の「月別執行見込」の科目に準じて集約した。
3.「平成 14 年度最終予算」「平成 14 年度実績」は補助金実績報告書より作成した。
(2)実施した監査手続
① 北九州市補助金等交付規則に則って申請、交付決定、交付確定、実績報告が行われているか検討した。
② 実績報告の内容を検討するため、特別会計について元帳と実績報告書を照合した。
③ 実績報告書には、同規則第 15 条により、「補助事業の成果」が記載されていなければならないが、明確に記載されているか検討した。
④ 事業費のうち、給料勘定について内容分析し、2ヶ月抽出して給料台帳と照合した。抽出した研究員について「任期付研究員の給与及び研究奨励金に関する規程」に準拠して決定され、雇用契約が締結されているか検討した。
⑤ 事業費のうち、委託料について1件抽出し、総勘定元帳、契約伺、契約書写により内容を確認した。
⑥ 基本協定終了後、どのような協議が行われているかについて質問した。
⑦ 現在のところ、大半が市補助金によって運営されているが、市以外からの第三者である企業等からの資金供与の可能性がないかどうか質問した。
(3)監査の結果
① 平成 14 年度に支出された委託料のうち 7,100 千円は、「小型下水道検査ロボット
に関する研究開発業務」の残金であった。契約時支払金は平成 13 年度に 6,611 千円、委託料として計上されていた。
契約時支払金は内容を検討したところ、契約締結時に支払った前金的性格のものであり、会計処理上は前渡金として処理すべきものではなかったかと考えられる。
なお、この契約は特命随意契約であり、特命理由書及び契約書と同額の見積書・見積り明細が添付されていた。
② その他、実施した監査手続において指摘する事項はなかった。
3.SoC 設計研究推進事業補助金
(1)概 要
① 補助事業の目的
当該補助金は、北九州市補助金等交付規則に従い FAIS に交付されるものであり、その目的は「新規産業の創出、雇用の創出及び国際的半導体設計拠点の形成を図り、地域経済の発展に資する」(平成 14 年4月8日付交付申請書 補助事業の目的)である。
② SoC 設計センターの設立の経緯
市は重化学工業を中心とした重厚長大型産業の集積した都市として発展してき
たが、産業構造の変化によりそれに対応した街づくりを行うため、市では、エレクトロニクス産業を中心とした頭脳都市として再生する施策がとられている。
その一環が SoC(システムオンチップ)設計センターの FAIS 内の設置であり、半導体設計のための施設整備、設計技術者等の人材育成、半導体を中心としたベンチャー企業の創出・支援、産学連携プロジェクトの推進事業を行っている。
③ 補助金の内訳と支出実績
表Ⅲ-4 補助金の内訳・支出実績 (単位:千円)
年度 事業内訳 | 平成 13 年度補助金収入 内訳 | 平成 14 年度補助金収入 内訳 | 平成 14 年度 SoC センター 支出実績 |
SoC 設計センター管理運営 | 58,613 | 70,000 | 71,111 |
ベンチャー企業育成 | 23,443 | 61,100 | 64,291 |
産学連携プロジェクト推進 | 150,000 | 150,000 | 150,000 |
人材育成 | 40,837 | 54,000 | 55,263 |
半導体アジア大学会議推進 | - | 3,000 | 3,000 |
情報発信 | - | 1,300 | 1,399 |
計 | 272,893 | 339,400 | 345,064 |
(資料)FAIS 作成資料より
(2)実査した監査手続
① SoC 設計センターの活動状況を把握するために視察を行った。
② 北九州市補助金等交付規則に則って交付申請、交付決定、交付確定、実績報告の手続が行われているか検討した。
③ 「SoC 設計研究推進事業費」の内容について質問し、収支計算書と実績報告書との関連を突合した。
④ 「産学連携研究開発事業助成金」(産学連携プロジェクト推進事業)のうち SoC設計拠点形成特別助成金について、その交付の申請、決定、確定、実績報告の手続が規程に則って行われているかを検討した。
⑤ 「半導体関連起業家助成金」について、その交付の申請、決定、確定、実績報告の手続が規程に則って行われているかについて検討した。
⑥ その他の SoC 設計研究推進事業の支出について、人件費以外の勘定科目から金額の大なるものを7件抽出し、証憑チェックと会計処理の妥当性を検討した。
(3)監査の結果
① SoC設計研究推進事業に対する市の補助金の交付に関する手続は規則に則って行われていると認められた。
② SoC 設計研究推進事業補助金の実績報告額 345,063 千円については、FAIS の収支
計算書に基づいて作成されていると認められた。
③ 「産学連携研究開発事業助成金」のうち SoC 設計拠点形成特別助成金は2社に対し合計 150 百万円助成されていた。
ア.助成金の交付申請書に添付される研究開発実施計画書、大学等との共同研究契約書(写)について閲覧し、また、担当者から説明を聞いた限り、特に問題となる事項はなかった。
このほか、交付申請者の要件は、交付規程によると次のとおりであり、担当者より返還するような状況は生じていないという説明を受けた。
交付申請者の要件
・市内に本社を置く法人
・助成期間も含め 10 年以上、市内において事業を継続することを前提とする
・半導体上の新たなシステム及び新たな半導体設計環境の開発を行う
・新規常用雇用者の人員が5人以上であること
など、8つの要件があり、雇用の確保がないなど事業計画が達成できない場合や交付申請の内容に偽りがあれば、助成金の返還を要することとなっている。
イ.平成 14 年度の助成金の支給額 150 百万円について、支出負担行為伺、振替伝票、領収書、請求書と突合したところ、問題は認められなかった。
ウ.当該助成金については、交付規程第 17 条により事業実績報告書を提出しなければならないため、実績報告書を閲覧し、検討した。
当該実績報告書に記載されている項目は、次の項目であった。
・交付事業概要
・収支計算
・常用雇用者一覧表
当助成金の対象事業期間が5年間であり、当該年度は助成の最終年度ではないため、補助金の使用状況を確認するための立入調査、領収書等の確認はしていないということであったが、助成金の規模を考慮するならば、毎年度収支決算の正しさを裏付けるために、最低限、会社の正規決算書を入手し、かつ、金額基準を設けて領収書等の証憑をチェックする必要があると考えられる。
④ 「半導体関連起業家助成金」については、当該助成金の交付規程・交付要領を閲覧し、申請書と実績報告書の関連を検討した。
平成 14 年度に支給された「半導体関連起業家助成金」にかかる交付申請書、交
付決定通知書はあったが、実績報告書は入手されていなかった。これは、助成金の支給が年度末間際の平成 15 年2月から3月に行われたためであるが、本来は年度末時点での実績報告書を入手すべきとも思われる。少なくとも助成事業終了後は速やかに入手される必要がある。
⑤ (2)⑥の手続により抽出した経費科目について、会計処理上の問題はなかった。
4.財団運営補助金
(1)概 要
① 補助事業の目的
当該補助金は、北九州学術研究都市内の組織文化の異なる大学・研究機関の連携及び企業と大学等との連携を効率的・効果的に進めながら、学術研究都市全体を一体的に運営し、地域産業の高度化や新たな産業の創出・育成を図ることを目的としている。
② 補助事業の経費配分と実績報告の状況
表Ⅲ-5 補助金実績 (単位 千円)
補助金申請予算 | 補助金実績額 | 差引 | |
(収入) 北九州市補助金財団自主財源 | 184,076 10,000 | 184,076 505 | 0 9,495 |
計 | 194,076 | 184,581 | 9,495 |
(支出) 大学間連携事業 産学連携推進事業管理運営費 | 12,012 99,623 82,441 | 7,481 87,828 89,272 | 4,531 11,795 △ 6,831 |
計 | 194,076 | 184,581 | 9,495 |
(資料)補助金申請資料及び実績報告書より作成
(2)実施した監査手続
① 北九州市補助金等交付規則に則って交付申請、交付決定、交付確定、実績報告の手続が行われているかを検討した。
② 「財団運営補助金」の内容について、申請書の閲覧を行って把握し、収支計算書と実績報告書との関連を突合した。
③ 産学連携推進事業費のうち、給与勘定の内容分析を行い、一部の月について給与集計表と突合し、出向者については覚書を閲覧し検討した。
④ 産学連携推進事業費のうち委託料について、総勘定元帳より抽出し、支出負担行為伺、支出命令書、請求書と突合した。
(3)監査の結果
① 財団運営補助金の交付に関する手続は、規則に則って行われていると認められた。
② 財団運営補助金の実績報告額 184,581 千円については、収支計算書に基づいて作成されており、一般管理費に計上されている法人税等、みなし寄付金、文献複写料は対象にされておらず、適切と思われる。
③ 産学連携推進事業費の給料について、上記手続を行った結果、特に問題はなかった。
④ 産学連携推進事業費の委託料について、証憑突合を行ったが、その結果は特に問題はなかった。
5.FAIS への学術研究施設等管理運営業務委託
(1)概 要
学術研究都市における施設等管理運営事業を、北九州学術研究都市条例(平成 12年条例第63 号)及び北九州学術研究都市条例施行規則(平成13 年規則第11 号)等に基づき、FAIS に委託するものである。
(委託業務の内容)
ア.学術研究施設(産学連携センター、学術情報センター、会議場、体育館、運動場、共同研究開発センター、情報技術高度化センター)、環境エネルギーセンター、クラブセンターの維持管理業務(設備管理、警備、清掃等)
イ.情報基盤等管理運営業務(※)ウ.図書室運営業務(※)
エ.学術研究施設の使用受付、指導、調整等オ.学術研究施設の使用料等の徴収業務
カ.学術研究都市の広報業務
キ.学術研究都市入居団体の連絡調整業務
ク.その他、産学連携推進事業など学術研究都市の設置目的を達成するために必要な業務
ケ.北九州市立大学所管の施設の維持管理業務(設備管理、警備)コ.その他両者協議のうえ決定した事項
(※) 北九州市立大学所管部分を含む
平成 14 年度の委託料は 1,329 百万円であるが、委託内容には北九州市立大学所
管部分も含まれるため、一般会計 694 百万円と、北九大特別会計 634 百万円に按分して計上されている。
委託料は、4月から3月までの1年契約となっており、当初契約金額を概算払いにより支払い、契約満了後に精算することとなっている。
FAIS では、当該委託業務のうち、施設管理については特別会計で処理しており、会計帳簿により支出の管理をしている。
(2)実施した監査手続
① 所管である産業学術振興局にヒアリングし、委託契約書、見積書、決裁書その他関連する書類を閲覧し、契約内容及び契約手続が、法令等に照らして適切かどうかについて検討した。
② また、FAIS においてヒアリングし、会計帳簿より特に金額の大きい委託費を中心に抽出し、契約書、見積書、決裁書その他関連する書類を閲覧して当該委託業務が適切に実施されているかどうか検討した。
(3)監査の結果
① 市と FAIS との委託契約
監査の結果、契約内容及び契約手続には、問題は見受けられなかった。
② FAIS と外部業者との委託契約
委託費について、委託内容別に特に金額の重要なものについて、随意契約、特命の理由を決裁書により検討し、また、相見積りの実施の有無について検討したが、情報通信基盤運用保守、清掃業務などを除き随意契約となっている。委託内容の専門性が高い、当該委託先しかできるところがない、プロジェクトの当初のスキームから当該委託先しかないなどの理由による。
特に、専門性の高い業務の委託先は限られており、大学や共同研究企業にさせることが多いため、より透明性を高めるために見積入手や入札等により、金額積算根拠の客観性が求められるが、実施した手続の範囲では、特に指摘すべき事項はなかった。
6.知的クラスター創成事業
(1)概 要
知的クラスター創成事業とは、研究開発能力拠点の創成を目指す文部科学省の事業であり、北九州学術研究都市地域が当該事業の実施地域の一つとして選定された。北九州学術研究都市では、「システム LSI を軸とした新産業の創成」をテーマとして、
システム LSI 技術、マイクロ・ナノ技術を研究領域とした活動を行っている。国からの補助金の交付先は、「地方公共団体の所管する財団その他の地域にあって当該地域の科学技術振興の中核的存在であり公益性の認められる法人格を有した民間団体等」に限られており、当地域では、当該民間団体として市が FAIS を選定している。
文部科学省からの補助金は、年間5億円程度、期間5年の予定となっており、平 成 14 年度の入金額は 462 百万円となっている。国からの補助金とは別に、地域が主 体的に取り組む事業であることから自治体も経費の一部を負担することになっており、平成 14 年度は市から 35 百万円が支出されている。
(2)実施した監査手続
① 所管である産業学術振興局及び FAIS 担当者からヒアリングし、補助金の収入について補助金交付申請書、事業計画書、補助事業実施状況報告書、その他関連する書類を閲覧し、合規性を検討した。
② また、支出内容について主に委託費を中心に、支出負担行為伺、請求書、領収書、決裁書、契約書と照合した。
③ また、大学への受託研究委託について、決算報告書と照合し、補助事業が適切に実施されているかどうか検討した。
(3)監査の結果
特に指摘すべき事項はなかった。
7.北九州 TLO 事業
(1) 概 要
当初、㈱北九州テクノセンターが文部科学省、経済産業省から技術移転機関として承認を受けていたが、市の産学連携政策の拡充方針に伴い、平成 14 年4月からその事業は FAIS に移管された。
北九州地区7大学1高専が参加し、大学、産学共同研究開発等だけでなく、地域の中小企業の新技術等から発明の提供を無償で受け、TLO が評価、特許出願、管理、企業等に譲渡、または使用許諾により技術移転を行う。
FAIS では、特許権の譲渡収入、又は実施許諾契約による収入を得るとともに発明者への収入の配分を行う。なお、国と市双方から補助金が支出されている。
(2)実施した監査手続
特許権の譲渡収入、実施許諾契約による収入について、契約書、決裁書等と照合
し、支出すなわち発明者への収入の配分の手続についても契約書等と照合して事業が適切に実施されているかどうか検討した。
(3)監査の結果
特に指摘すべき事項はなかった。
8.生ごみ精製乳酸化実証事業
(1)概 要
FAIS が主体となり、平成 13 年 11 月から平成 17 年3月までの期間にわたって行
う事業である。事業費総額は 861 百万円であり、必要な設備等を購入して大学、民間企業等と共同して研究活動を行うものである。
農水省から市環境局を経由してFAIS に補助金(施設整備費 7 億円の 50%)が交付される。平成 14 年度の補助金は、200 百万円である。
残り 50%と、研究経費(1.5 億円)を合わせて共同研究している民間企業から FAIS が受け取る。平成 14 年度の収入は、365 百万円である。
(2)実施した監査手続
① 補助金については、補助金交付確定通知書、事業計画書、工事請負契約書、その他関連する書類を閲覧し、合規性を検討した。
② また、支出内容について主に研究経費を中心に、支出負担行為伺、請求書、領収書、決裁書等と照合し、事業が適切に実施されているかどうか検討した。
なお、固定資産支出については、別途、次項以降、検討している。
(3)監査の結果
特に指摘すべき事項はなかった。
9.固定資産取引の状況
(1)概 要
FAIS では、財団法人北九州産業学術推進機構会計処理規程(以下、「FAIS 会計規程」という。)に基づいて固定資産を管理している。固定資産は、基本財産と運用財産で構成されている。FAIS の寄附行為第6条によると、基本財産とは,(1)設立当初の財産目録中基本財産の部に記載された財産、(2)基本財産とすることを指定して寄附された財産、(3)理事会の議決により運用財産から基本財産に繰り入れられた財産をいう。運用財産は、基本財産以外の財産をいう。
FAIS が保有している固定資産は以下の通りである(表Ⅲ-6)。
表Ⅲ-6 FAIS 平成 14 年度貸借対照表より抜粋 (単位:円)
貸借対照表 | 一般会計 | 学術研究施設等管理 運営事業特別会計 | 研究基盤整備推進事 業特別会計 |
基本財産 | |||
投資有価証券 | 369,337,989 | ||
普通預金 | 400,662,011 | ||
大口定期 | 30,000,000 | ||
基本財産合計 | 800,000,000 | ||
その他の固定資産 | |||
建物 | 3,517,500 | ||
建物減価償却累計額 | △126,891 | ||
車両運搬具 | 173,250 | ||
車両運搬具減価償却累計額 | △51,923 | ||
機械設備 | 713,847,750 | ||
機械設備減価償却累計額 | △26,686,192 | ||
什器備品 | 168,457,015 | 3,600,555 | 56,454,005 |
什器備品減価償却累計額 | △13,401,805 | △833,328 | △18,422,919 |
無形固定資産 | 46,342,606 | 4,457,670 | |
無形固定資産減価償却累計額 | △2,015,025 | △74,293 | |
電話加入権 | 76,440 | ||
敷金 | 1,635,000 | ||
保証金 | 60,000 | 20,000 | |
基本財産積立預金 | 2,681,557 | ||
その他の固定資産合計 | 892,874,282 | 2,767,227 | 44,069,463 |
① 固定資産の残高管理
固定資産の管理はキャンパス運営センター総務企画部長が行い、基本財産明細帳及び固定資産台帳を備え、資産の数量等現況を明らかにしなければならない( FAIS会計規程第 27 条)。FAIS では、取得価額 10 万円以上の固定資産については固定資産台帳で管理している。また、以前は表計算ソフトの帳票にて管理していたが、平成14 年度にはTLOの特許権等一部を除き市販の会計ソフトで管理するようになり、平成 15 年度からは TLO の特許権についても同じ会計ソフトで管理している。
FAIS が管理している固定資産(基本財産は除く)の取得価格、帳簿価格、当期償却額等は表Ⅲ-7の通りである。また、FAIS が管理している基本財産の増減額及びその残高は表Ⅲ-8の通りである。
表Ⅲ-7 固定資産台帳明細表(固定資産台帳を集計したもの)より合計金額のみ抜粋
(単位:円)
取得価額 | 期首帳簿価額 | 当期償却額 | 期末帳簿価額 | 償却累計額 | |
(一般会計) | |||||
建物 | 3,517,500 | 3,507,741 | 117,132 | 3,390,609 | 126,891 |
車両運搬具 | 173,250 | 0 | 51,923 | 121,327 | 51,923 |
機械設備 | 713,847,750 | 3,730,851 | 26,631,793 | 687,161,558 | 26,686,192 |
機械設備(国プロ) | 135,514,325 | 0 | 0 | 135,514,325 | 0 |
什器備品 | 168,510,583 | 11,982,812 | 11,302,644 | 155,055,210 | 13,455,373 |
無形固定資産(ソフトウェア) | 34,278,720 | 0 | 2,015,025 | 32,263,695 | 2,015,025 |
無形固定資産(特許権) | 8,141,879 | 0 | 0 | 8,141,879 | 0 |
(特別会計) | |||||
(施設管理) | |||||
什器備品 | 3,600,555 | 627,200 | 409,425 | 2,877,530 | 723,025 |
(研究基盤) | |||||
什器備品 | 48,886,676 | 40,260,797 | 9,154,153 | 35,262,544 | 13,624,132 |
無形固定資産(ソフトウェア) | 10,759,397 | 4,785,891 | 2,091,642 | 7,151,919 | 3,607,478 |
表Ⅲ-8 平成 14 年度における基本財産の増減額及び残高 (単位:円)
科目 | 前期末残高 | 当期増加額 | 当期減少額 | 当期末残高 |
投資有価証券 | 0 | 369,337,989 | 0 | 369,337,989 |
普通預金(基本財産) | 800,000,000 | 0 | 399,337,989 | 400,662,011 |
大口定期 | 0 | 30,000,000 | 0 | 30,000,000 |
合計(基本金) | 800,000,000 | 399,337,989 | 399,337,989 | 800,000,000 |
② 固定資産の購入・処分手続状況について
FAIS の固定資産の購入・処分手続は、財団法人北九州産業学術推進機構専決規程別表第3(第2条関係(財務事項))に基づく承認手続のほか、各種の関係書類の作成を必要としている。
また、基本財産についてはFAIS 寄附行為第8条で処分の制限が定められている。
(2)実施した監査手続
FAIS 関係者にヒアリングを行うとともに、関係資料提出を求め、FAIS 会計規程等との合規性を検証した。具体的には以下の手続を行った。
① 公表決算資料により期間比較表を作成し、異常増減がある場合にはその理由を検討した。
② 上記推移表と総勘定元帳とを突合した。
③ 基本財産明細帳と固定資産台帳の金額と、総勘定元帳とを突合した。
④ 固定資産台帳明細表の固定資産の取得金額を貸借対照表と突合し、減価償却費の計算をチェックし、一部関係書類を閲覧した。
⑤ FAIS に財産の管理状況を質問し、基本財産明細帳と固定資産台帳明細表を閲覧した。
⑥ FAIS の基本財産について、貸借対照表・正味財産増減計算書と注記事項を突合し、FAIS関係者に質問するとともに預金通帳と公債に関する関係書類を閲覧した。
⑦ 基本財産について基本財産明細帳と残高証明書・通帳・決裁書を突合した。
⑧ 基本財産について総勘定元帳と基本財産明細帳を突合した。
⑨ その他の固定資産(FAIS 会計規程第 26 条)のうち、保証金・敷金については、貸借対照表と総勘定元帳、総勘定元帳と敷金/保証金管理表・納入通知兼領収書・建物賃貸契約書・領収書・決裁書を突合した。
(3)監査の結果
貸借対照表の金額 | 固定資産台帳明細表の金額 | 差額 | |
(一般会計) | |||
Ⅰ.資産の部 | |||
2.固定資産 | |||
その他の固定資産 | |||
什器備品 | 168,457,015 | 168,510,583 | △53,568 |
什器備品減価償却累計額 | △13,401,805 | △13,455,373 | 53,568 |
(研究基盤整備推進事業特別会計) | |||
Ⅰ.資産の部 | |||
2.固定資産 | |||
その他の固定資産 | |||
什器備品 | 56,454,005 | 48,886,676 | 7,567,329 |
什器備品減価償却累計額 | △18,422,919 | △13,624,132 | △4,798,787 |
無形固定資産 | 4,457,670 | 10,759,397 | △6,301,727 |
無形固定資産減価償却累計額 | △74,293 | △3,607,478 | 3,533,185 |
① 固定資産台帳上の金額と、決算書上の金額に、以下のとおり差額が生じている。表Ⅲ-9 貸借対照表と固定資産台帳明細表の比較 (単位:円)
(一般会計)
ア.差額:什器備品△53,568 円.什器備品減価償却累計額 53,568 円
北九州市産業技術振興基金(前身)から引き継いだ什器備品2件の帳簿価額 244,032 円について、貸借対照表上では正しく計上しているが、固定資産台帳上
では 297,600 円で入力しているため差額が生じている。引継資産という特殊事情
があり、固定資産台帳に帳簿価額 244,032 円を入力すると正しい減価償却額が算定できないことからやむを得ず当該振興基金の当初購入価額(取得原価) である 297,600 円を入力しているとのことである。しかしながら、正しい帳簿価格は
244,032 円であり、今後は出力された固定資産台帳に手書で修正しておく必要がある。
イ.勘定科目訂正
什器備品のうち SoC 設計センターの半導体設計用ソフトウェア(取得価額 10,642,800 円及び什器備品減価償却累計額 3,512,124 円)については、無形固定資産に分類されるべきであるため、無形固定資産として固定資産台帳と貸借対照表に計上する必要がある。
(研究基盤整備推進事業特別会計)
差額:什器備品 7,567,329 円、什器備品減価償却累計額 △4,798,787 円、無形固定資産△6,301,727 円、無形固定資産減価償却累計額 3,533,185 円
平成 13 年度に取得資産した8件のソフトウェア(取得価額 6,301,727 円、減価償
却累計額 3,533,185 円、平成 14 年度減価償却額 2,017,349 円)の勘定科目を固定資産台帳上は無形固定資産で計上しているが、決算書上では什器備品で計上しているため差額が生じている。正しい勘定科目は無形固定資産であり、今後は決算書の勘定科目についても無形固定資産とする必要がある。
② 貸借対照表上の基本財産について
ア.投資有価証券の内容は公債であり、その合計金額は貸借対照表上の勘定残高 369,337,989 円と一致しており、FAIS では、適切に処理され、合規性に問題はなかった。
イ. 貸借対照表上の大口定期 30,000,000 円と普通預金 400,662,011 円は、通帳の残高と一致し、適切に処理され合規性に、問題はなかった。
(一般会計) | 金額 | 固定資産台帳明細表 | 差額 |
Ⅰ.増加の部 | |||
1.資産増加額 | |||
電話加入権購入額 | 76,440 | 0 | 76,440 |
③ FAIS が保有している固定資産の取得または処分の状況は以下の通りである。表Ⅲ-10 正味財産増減計算書より抜粋 (単位:円)
表Ⅲ-11 収支計算書より抜粋 (単位:円)
(一般会計) | 金額 | 固定資産台帳明細表 | 差額 |
3.固定資産取得支出 | |||
電話加入権購入支出 | 76,440 | 0 | 76,440 |
(一般会計) (差額:電話加入権購入額 76,440 円)
電話加入権は1件であり減価償却対象外固定資産であるため、固定資産台帳に記載がないとのことであるが、他の無形固定資産同様に、固定資産台帳に記載する必要がある。
10.固定資産の現物管理状況
(1)概 要
FAIS では、FAIS 会計規程に基づいて固定資産を管理している。FAIS 会計規程第 27 条で、「基本財産明細帳と固定資産台帳を備え、資産の数量等現況を明らかにしなければならない。」となっている。そのため、実地照合を行うことで現況を明らかにするよう示唆していると言える。FAIS では、自主的に実地照合を固定資産税申告前と年度末に行っている。FAIS の実地照合は、総務企画部長の命で FAIS の各センターの職員が実施しており、経理担当課長に口頭にて申告し、経理担当課長より総務企画部長に結果報告を行っている。
(2)実施した監査手続
FAIS 関係者にヒアリングを行うとともに、関係資料提出を求め、FAIS 会計規程等との合規性を検証するため、以下の手続を行った。
① FAIS に財産の現物管理状況を質問し、関連書類を閲覧した。
② 機械、建物については 100 万円以上、什器備品については 50 万円以上を実査した。
③ 固定資産台帳と固定資産台帳明細表の整理番号・取得年月日・資産名等を固定資産整理票と照合した。
(3)監査の結果
合規性に関して特に問題となる事項はなかった。
11.固定資産台帳
(1)概 要
FAIS 会計規程第 27 条で、「基本財産明細帳と固定資産台帳を備え、資産の数量等現況を明らかにしなければならない。」となっている。FAIS では、固定資産管理システムより出力した固定資産台帳をファイルして管理している。
なお、平成 14 年度は、TLO 事業で発生する特許権(無形固定資産)を産学連携センターが別に管理していたため、同センターから適時の報告が必要となっていた。
(2)実施した監査手続
FAIS 関係者にヒアリングを行うとともに、関係資料提出を求め、FAIS 会計規程等との合規性を検証するため、以下の手続を行った。
① FAIS に証憑書類の閲覧及び担当者への質問により、FAIS 会計規程に基づいて台帳管理を実施しているか、合規性について検証を行った。
② 固定資産システムへの入力の方法や時期について質問し、一部関係書類と突合した。
③ 固定資産台帳明細表に記載されている減価償却費について計算突合した。
④ 固定資産台帳を閲覧し、その記載内容について検討した。
⑤ FAIS の関係者に固定資産システムのセキュリティについて質問し、状況を検証した。
(3)監査の結果
固定資産台帳と固定資産システムのセキュリティについては、合規性に反しておらず、特に指摘すべき事項はなかった。
12.物品管理
(1)概 要
FAIS では、FAIS 会計規程に基づいて物品を管理している。FAIS での物品とは、金銭、有価証券及びFAIS 会計規程第 26 条に規定する固定資産となる物品を除く一切の動産をいう(同規程第 30 条)。
FAIS では、取得価額5万円以上の物品は物品管理台帳で管理している。このとき、取得価額 10 万円以上の固定資産は、物品管理台帳から除かれ、固定資産台帳で管理されている。図書については、図書費として収支計算書に記載するが、物品管理台帳で物品に含めて管理し、その取得金額は、10 万円以上の分でも記載されている。
FAIS が保有している物品は以下の通りである。
表Ⅲ-12 FAIS 作成の物品管理台帳より (単位:円)
保管場所 | 金 額 |
知的クラスタープロジェクト推進室 | 303,450 |
SoC 設計センター | 1,961,877 |
キャンパス運営センター学術情報部 | 3,542,591 |
GMD-Japan 研究所 | 971,294 |
産学連携センター(技術移転推進部) | 1,153,982 |
キャンパス運営センター総務企画部(施設) | 813,028 |
合 計 | 8,746,222 |
物品管理台帳は、購入や移動の際に、その事実の発生した年月日、対象となる物品の品名・仕様・購入価額等を原則として一品一葉で記入したものが綴られている。また、現物への管理番号添付がなされている。
(2)実施した監査手続
FAIS 関係者にヒアリングを行うとともに、関係資料提出を求め、FAIS 会計規程等との合規性を検証するため、FAIS の物品管理状況について質問し、物品管理台帳を閲覧した。
(3)監査の結果
物品管理台帳等の記載状況について、査閲した範囲では要領に反した不整合や、指摘すべき不合理な取扱は認められなかった。
また、FAIS 会計規程では、物品の出納及びそれに付随する事務を取り扱わせるため、物品取扱員を置くと規定している(同規程第 31 条)が、保管場所に応じ、物品取扱員の検印がなされており、規程に準拠していた。
第4.利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、私は地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
以 上
平成 15 年度
包括外部監査の結果に関する報告に添えて提出する意見書
「学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業」
平成 16 年2月
北九州市包括外部監査人公認会計士 小 島 庸 匡
包括外部監査の結果に関する報告に添えて提出する意見書
(学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業)目 次
第1.意見書について 1
第2.学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業についての意見 2
Ⅰ.学術研究都市全般 2
1.施設整備事業 2
2.市の建物管理 4
3.市の物品管理 4
4.早稲田大学の誘致 6
Ⅱ.北九州市立大学国際環境工学部 10
1.勤務地内旅費にかかる規程の見直し 10
2.委託料 13
3.電子複写機(コピー機)の使用 17
4.物品の廃棄方法 19
5.物品管理 19
6.外部研究費 22
Ⅲ.財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS) 26
1.研究基盤整備推進事業補助金 26
2.SOC 設計研究推進事業補助金 27
3.財団運営補助金 28
4.FAIS における会計処理、契約規則 28
5.FAIS への学術研究施設等管理運営業務委託 29
6.知的クラスター創成事業 30
7.北九州 TLO 事業 31
8.固定資産の現物管理 31
9.固定資産システムのセキュリティ 32
10.固定資産の処分手続 32
11.産学共同研究のコーディネート・管理機能 33
12.市からの自立性 34
Ⅳ.学術研究都市の評価に向けて 36
本文中の表内の数値については、四捨五入にて端数処理を行っており、合計数値と内訳数値とに相違がある場合がある。
第1.意見書について
監査実施時に、経済性、効率性及び有効性の観点から組織又はその運営の合理化に資するために必要と認めた事項につき、地方自治法第 252 条の 38 第2項に基づき意見として述べている。
監査の結果とともに、この意見についても参考とされ、今後の学術研究都市の整備や管理運営に関して、より一層改善を望むものである。
第2.学術研究都市の施設整備及び管理運営にかかる事務事業についての意見
Ⅰ.学術研究都市全般
1.施設整備事業
建設工事のうち対象とした 12 件(契約金額合計 8,681,064 千円)に関して、予定価格に対する最低制限価格の比率を検証したところ、83%から 85%の範囲内に収まっている。予定価格は、入札前に公表される価格であり、最低制限価格は入札後に公表される価格であるが、予定価格の公表によって、事前に最低制限価格を予想できる状況にある。
また、予定価格に対する落札価格の比率を検証したところ、85.0%及び 79.8%と算定されたケースが1件ずつあるが、残りは 94%以上である。特に全体の半数にあたる6件
(契約金額ベースでは合計 6,040,650 千円、全体の 69.6%)において、98%台と高い比率となっている。
公正さや経済性の追求という競争入札方式採用の趣旨を前提とすると、少なくとも業者間の競争によって、今以上に市が経済的なメリットを享受できるように、入札方式を研究・検討する余地は残されていると考える。今後も、より公正さと経済性に留意した業者選定が望まれる。
(参考)
1.予定価格
予定価格は、競争入札の方法により相手方を選定して契約を締結する際の落札価格すなわち契約決定の基準となるものである。予定価格の設定は、予算で定める金額の範囲内で仕様書、設計書等により、競争入札に付する事項の価格の総額について定める。
その決定方法については、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないものである(日本経営協会資料より)。
2.最低制限価格
普通地方公共団体の長は、一般競争入札により工事又は製造その他についての請負の契約を締結しようとする場合において、当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、あらかじめ最低制限価格を設けて、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができる。(地方自治法施行令第 167 条の 10 第2項より)
(落札価格)
表Ⅰ-1 入札状況一覧 (単位:千円)
工事名 | ① ( 仮称) 学術・研究都市交流センター | ② ( 仮称) 学術・研究都市 メディアセンター | ③ ( 仮称) 学術 研 究 都 市 産学連携センタ ービル | ④北九州大学 (仮称)国際環 境工学部環境 エネルギーセンター | ⑤ ( 仮称) 学術 研 究 都市体育館 | ⑥ ( 仮称) 学術 研 究 都 市 共 同 研 究 開発センター | ⑦ ( 仮 称 ) 学術・研究都市 IT 高度化センター(開発センター棟) | ⑧ ( 仮 称 ) 学術・研究都市 IT 高度化センター(共同研究棟) | ⑨ ( 仮称) 学術・研究都市 研 究 所 研 究員等宿舎 | ⑩ ( 仮称) 学術・研究都市研究所 | ⑪ ( 仮称) 学術・研究都市 研 究 所 教 職員宿舎 | ⑫ ( 仮称) 学術・研究都市大学院棟 |
入札金額 | 627,300 | 1,240,000 | 923,000 | 374,680 | 834,000 | 230,000 | 366,200 | 439,500 | 353,000 | 809,900 | 205,000 | 2,020,000 |
628,400 | 1,232,000 | 930,000 | 435,000 | 837,000 | 243,000 | 364,700 | 440,300 | 355,000 | 820,000 | 205,000 | 2,010,000 | |
650,000 | 1,230,000 | 934,000 | 431,900 | 835,000 | 240,800 | 365,100 | 441,500 | 351,500 | 811,000 | 208,500 | 2,010,000 | |
634,000 | 1,229,000 | 922,000 | 439,000 | 838,000 | 236,000 | 366,000 | 443,000 | 342,500 | 819,800 | 206,500 | 2,000,000 | |
640,000 | 1,239,000 | 925,000 | 433,800 | 836,500 | 248,000 | 364,500 | 442,200 | 339,240 | 813,000 | 209,000 | 2,015,000 | |
647,500 | 1,239,000 | 927,000 | 374,680 | 840,000 | 244,000 | 365,000 | 442,000 | 350,000 | 820,000 | 210,000 | 2,016,000 | |
630,000 | 1,225,000 | 929,000 | 432,000 | 830,000 | 240,000 | 365,700 | 440,000 | 285,000 | 809,900 | 207,000 | 2,018,000 | |
625,000 | 1,233,000 | 921,000 | 433,500 | 827,000 | 238,750 | 364,000 | 439,800 | 298,100 | 818,000 | 204,000 | 2,013,000 | |
610,000 | 1,240,000 | 925,000 | 438,400 | 831,500 | 245,500 | 365,500 | 440,550 | 320,000 | 817,600 | 202,000 | 2,007,000 | |
637,400 | 1,230,000 | 917,000 | 431,400 | 835,000 | 236,500 | 365,900 | 439,000 | 354,700 | 810,000 | 204,500 | - | |
- | 1,239,000 | 930,000 | 435,000 | 829,500 | 230,000 | - | 440,600 | 345,200 | 808,000 | 209,500 | - | |
- | 1,235,000 | 920,000 | 434,090 | 830,000 | 235,000 | - | 440,000 | 347,000 | 814,900 | 209,000 | - | |
- | 1,237,000 | 932,000 | 436,060 | 832,000 | 218,000 | - | - | 340,000 | 819,500 | 208,000 | - | |
- | 1,238,000 | 931,000 | 435,600 | 825,000 | 245,000 | - | - | 350,000 | 809,200 | - | - | |
- | - | - | 434,100 | - | - | - | - | 352,000 | 817,000 | - | - | |
平均値 | 632,960 | 1,234,714 | 926,143 | 426,614 | 832,893 | 237,896 | 365,260 | 440,704 | 338,883 | 814,520 | 206,769 | 2,012,111 |
(A)落札価格 | 610,000 | 1,225,000 | 917,000 | 374,680 | 825,000 | 218,000 | 364,000 | 439,000 | 285,000 | 808,000 | 202,000 | 2,000,000 |
(B)予定価格 | 629,000 | 1,250,000 | 935,000 | 440,800 | 846,000 | 230,700 | 370,000 | 444,000 | 357,100 | 823,000 | 208,500 | 2,030,000 |
(C)最低制限価 格 又 は 調 査基準価格 | 534,000 | 1,055,000 | 794,750 | 374,680 | 702,000 | 196,095 | 314,500 | 377,000 | 303,535 | 683,000 | 177,225 | 1,725,000 |
(A)/(B) | 97.0% | 98.0% | 98.1% | 85.0% | 97.5% | 94.5% | 98.4% | 98.9% | 79.8% | 98.2% | 96.9% | 98.5% |
(C)/(B) | 84.9% | 84.4% | 85.0% | 85.0% | 83.0% | 85.0% | 85.0% | 84.9% | 85.0% | 83.0% | 85.0% | 85.0% |
- 3 -
(注)「落札価格」が「最低制限価格又は調査基準価格」を下回っているものがあるが、そのケースは「調査基準価格」である。
2.市の建物管理
市の建物について、地方自治法施行規則及び市公有財産管理規則に基づき、保有財産目録及び公有財産台帳(建物台帳)が作成されている。ただし、建物台帳の台帳価格は取得価格のまま記載され、減価償却計算を行わないため、建物の価値の減少を台帳価格に反映することはできない。
そこで、建物台帳の台帳価格に関して、市の建物等の更新計画を検討するためにも、別途、償却状況を把握していくなど、建物台帳の機能を補完できるような仕組みの導入について検討することが望ましい。
なお、検討に際しては、必要性の高い部門を重点的に取り上げるなど、費用対効果を考慮しつつ、戦略的に進める必要がある。
3.市の物品管理
(1)物品管理
北九州市会計規則(以下、「会計規則」という。)第 84 条第1項の趣旨を踏まえて、帳簿と現物を照合するには、帳簿上あるべき資産の詳細なリストが必要であり、計画的なたな卸のためには、保管者(実質的)・保管場所、細目等による集計が可能であることが望まれる。このような意味で、現在の備品台帳では適切とは言えない。望ましいのは、市全体をカバーする電算管理システムで、随時必要な情報が得られることである。将来的には地方公共団体においても複式簿記や貸借対照表の本格的導入もありうるため、それらを見据えた物品管理システムの見直しが望ましい。
なお、市は平成 16 年4月に IT 化による新たな物品管理システムの導入を予定している。
(2)寄付採納
会計規則第 89 条第3号、物品管理要領第7によって、贈与又は寄付の受納の場合は、別途決裁を受けた後、手続を行うこととされている。
その際には、所定の手続により、見積価格を備品管理台帳あるいは重要物品管理台帳に記載することが必要であると考えられるが、今回の監査対象の範囲では、寄付採納の際、寄付者の購入時の購入価格を取得価格欄に記載していた。
その価格で備品として扱うかどうか、あるいは重要物品かどうかが判断されることを考えると、市の取得価格は、寄付者の購入価格ではなく、寄付された時点の時価あるいはそれに相当する見積価格を取得価格とすることが望ましい。
(3)貸出備品
物品の貸付けについては会計規則第 92 条で定められている。また、物品管理要
領第3 5では、備品の庁外持ち出し等を頻繁に行う課は貸出簿を備え、使用者の印を徴する等、常に使用者の保管責任を明らかにして、亡失、き損等の事故予防処置を講じておくこととされている。
学術研究都市においては、会議場などに備えられた貸出用備品の多いことが特徴である。貸出用の備品として位置づけられているものについては、独自に備品管理台帳又は重要物品台帳、整理票に「貸出用」と明記されている場合があるが、特に明記されていない場合もあり、必ずしも統一された扱いとはなっていない。貸出用の備品は通常の備品とは異なり、多くの利用者によって様々な状況で使用されることが想定されるため、亡失や毀損等を防ぐためにも、統一的な扱いについて検討しておくことが望ましい。
(4)物品整理票
備品はすべて整理票その他の方法により、分類表示して管理しなければならない
(会計規則第 84 条第2項)。また、備品管理台帳の整理番号をとり、整理票は消えにくいインク等で記入し各備品に貼り付けること(物品管理要領第3 4)とある。
しかし、整理票が貼付されていないものや整理票が剥がれそうなものが見られた。また、備品の形状等によって整理票を貼付しにくい場合には、別の方法を講じる必 要があるが、その対応をしていないとのことである。整理票貼付の徹底が望まれる。
また、物品管理要領における表現では、重要物品については整理番号を付けて整理票を貼付するという手続を明確には規定していないように読み取れる(会計規則第 95 条第3項・第 84 条第2項、物品管理要領第3 2、4)。実際の手続の状況を見ると、重要物品に整理票が貼られていない場合があった。
物品の重要性という点からは、重要物品と分類されているものほど、厳重な管理が必要となるはずであるため、重要物品についても、整理番号の記載や整理票の貼付などの手続について明確に規定し、管理を徹底することが望ましい。
(5)備品管理業務の引継
備品管理台帳でコンテンツ制作室に設置されているはずの3つの収納棚(備品管理台帳 No.3162、3163、3164)について、所在不明であることに気づいた職員が「注意」という付箋をつけたメモを台帳に綴っていた。この収納棚は一時的に別の部屋に置かれていたが、保管場所が変更になっていることが、職員に伝えられていなかったことが原因である。
このようなケースが実際に起こっていることから、職員の異動に際しては、口頭ではなく、紙 面等の文書で業務内容を引き継ぐなど、重要な事項が確実に引き継がれるようにする必要がある。
4.早稲田大学の誘致
平成 15 年 10 月 14 日、産業学術振興局において、早稲田大学誘致の経緯及び同大学との協定内容等について、ヒアリングするとともに関係書類について閲覧した。
(1)早稲田大学との基本協定書
早稲田大学との間で、締結された基本協定書は次のとおりである。
① 「早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所(以下、「九州研究所」という。)の設置に関する基本協定書」平成 10 年9月1日締結
② 「(仮称)早稲田大学大学院先端技術デザイン研究科(以下、「大学院」という。)の設置に関する基本協定書」平成 13 年1月 10 日締結
(2)誘致に関する決裁及び支援内容
① 九州研究所設置の決裁……平成 10 年8月 24 日ア.主な支援内容
(ア)九州研究所用施設の無償貸付け
(イ)研究者・大学院生用宿舎の無償貸付け
(ウ)前2号の施設用地として約2ha の土地の無償貸付けイ.支援を行う理由
(ア)北九州学術研究都市整備事業は、本市の最重要プロジェクトの一つであり、産学連携に実績のある早稲田大学理工学総合研究センターはぜひとも誘致したい研究機関であること。
(イ)私立大学等の誘致には自治体が巨額の費用を支援していること(表Ⅰ-2)。
(ウ)理工学系の大学、研究所は、多額の開設費用を要する割には学生数が少ないなどの理由により、特別の支援措置を講ずることが必要であること。
② 新大学院設置の決裁……平成 12 年 12 月 25 日ア.主な支援内容
(ア)新大学院の校地の無償貸付け
(イ)新大学院の校舎の無償貸付け(当初、無償譲渡としていたが、その後、無償貸付けに改められた。)
(ウ)新大学院の教育研究に必要な備品購入費等の経費の負担※
※ この経費の負担は、‘学術研究都市教育機関整備事業’の補助金8億円の形で行われた。平成 15 年3月 28 日補助金は交付され、これに対し、4月
14 日に市の現地調査が実施されている。
表Ⅰ-2 大学等の新・増設に対する地方自治体の支援事例
開学 年度 | 大学名 | 自治体 | 設置経費等の支援 | 校地に関する支援 |
H13 | 九州国際看護大学 | 福岡県 | 6億円 | |
宗像市 | 2億円 | 3.4 ㌶無償譲渡(校地の約6割) 2.0 ㌶無償貸与(30 年間) | ||
東北公益文科大学 | 山 形 県 ・ 酒 田 市・鶴岡市 | - | 無償譲渡 | |
山 形 県 ・ 酒 田 市・鶴岡市・周 辺市町村 | 大学設備費 113 億円、開学後4年間運営費 13 億 6,000 万円 | - | ||
鳥取環境大学 | 鳥取県・鳥取市 | 施設事業費 177 億円(用地を含む) 経常経費 28 億円 | ||
H12 | 立命館アジア太平洋大学 | 大分県 | 校舎建設費など 150 億円 | - |
別府市 | 造成費 42 億円 | 無償譲渡 | ||
静岡文化芸術大学 | 静岡県 | 準備財団の基本財産 1億円 校舎・備品の整備費約 300 億円 | - | |
浜松市 | - | 約 2.8 ㌶無償譲渡(校地全部) | ||
H11 | 萩国際大学 | 山口県 | 20 億円 | - |
萩市 | 20 億円 | - | ||
H10 | 九州看護福祉大学 | 熊本県 | 施設整備費 16 億円 | - |
玉名市 | - | 無償譲渡 | ||
2市 10 村 | 施設整備費 30 億円 | - | ||
千歳科学技術大学 | 千歳市 | 創設費 86 億円 (全体 98 億円) | 無償譲渡 | |
H9 | 高知工科大学 | 高知県 | 設備経費約 258 億円 | 半分を無償譲渡残りを無償貸与 |
H7 | 名城大学 都市情報学部 | 可児市 | - | 校地約 6.3 ㌶を無償譲渡・貸与 |
H6 | 長岡造形大学 | 長岡市 | 創設費 89 億円のうち 3分の2 | 約 11.5 ㌶無償譲渡 |
新潟県 | 上記の残り3分の1 | - | ||
新潟国際情報大学 | 新潟県 20 億円、新潟市 45 億円、寄附等 25 億円、計 90 億円で土地と建設費をほぼ負担 | |||
新潟経営大学 | 加茂市・田上市 | - | 6.4 ㌶無償譲渡 | |
新潟県 | 11 億円 | - | ||
地元 18 市町村 | 24 億円 | - |
(資料)日本経済新聞等の記事より作成
(3)施設等の無償貸付けに係る早稲田大学との契約内容
① 九州研究所関係
「市有財産(研究所及び宿舎の土地、建物及び備品)使用貸借契約書」(平成 13
年3月 30 日契約)……使用貸借期間~平成 13 年4月1日から平成 19 年3月 31 日までの6年間
契約書の第 16 条3項において、“市が公用又は公共用に供するために使用貸借物件を必要とするときは、使用貸借期間中であってもこの契約を解除することができ
る。”としている。
② 大学院関係
ア.「市有財産(土地)使用貸借契約書」(平成 15 年4月1日契約)……使用貸借
期間~平成 15 年4月1日から平成 35 年3月 31 日までの 20 年間
イ.「市有財産(建物)使用貸借契約書」(同 上)……使用貸借期間~平成 15 年
4月1日から平成 25 年3月 31 日までの 10 年間
(4)開校後の状況
① 九州研究所関係
平成 13 年4月に開設され、研究者 30 名、大学院生等 21 名でスタートし、現在
それぞれ 99 名、30 名(平成 15 年 12 月現在)に増えている。
② 大学院関係
平成 15 年4月7日に入学式が開催され、修士課程 115 名、博士後期課程 32 名が入学した。入学式の内容については、マスコミにも記者発表された。また、9月にも修士課程 17 名、博士後期課程 21 名が入学している。現在のところ、教員は 32
名、職員は 10 名である。
(5)早稲田大学の誘致に伴い、市が支援していることについて
大学の誘致について、地方自治体が支援していることについては、表Ⅰ-2のように数多くの例が見られ、市が早稲田大学の誘致に当たって、土地や校舎の無償貸与及び備品購入費等の経費負担をしたことについては、特段珍しいことではない。また、北九州市財産条例においても、その第5条で、“普通財産は、次の各号に
該当するときは、これを無償又は時価よりも低い価額で貸付けることができる。
(1) 国、他の地方公共団体その他公共団体又は公共的団体において公用若しくは公共用又は公益事業の用に供するとき。
(2)及び(3)については、省略”
とされており、市有財産を無償貸与することは、問題はないものと思われる。
なお、無償貸与することについて、平成 11 年6月の議会において、議員からの質問に対して、当時の企画局長から“研究に必要な施設を無償貸与するほか……”と答弁されていることからもオープンにされている。
誘致したことのメリットは、北九州学術研究都市にネームバリューのある早稲田大学を誘致できたことにより、「学研都市」全体のイメージが上がり、その結果、世間一般に同都市の認知が高まったことは事実であり、それなりに評価しうるものと判断される。
また、大学を誘致したことにより、同大学の研究者、教員及び学生等が増え、それらが市内に居住することによる経済的効果も今後期待できる。
しかしながら、これらの経済的効果が見込まれる一方で、必要な土地や校舎などを建設した上で、無償貸与することは、市が多大な負担を負うことになる。市の負担の妥当性については大学誘致の効果を見据えながら評価する必要がある。無償貸与などの経済的な支援をしなければ、誘致できなかったことは十分考えられるが、大学誘致による本来の効果は長期的に現れてくるものと考えられるため、まずは市が負担するコストについて明らかにしておくことが重要である。
市としても、この経済的負担については、平成 13 年9月 27 日開催された総務財政委員会で、議員の質問に対して、その時点で算定した額を答弁することによって、明らかにしている。ただし、その時点で、大学院は未開校で、しかも大学院校舎の無償譲渡を前提としていた段階である。その後、校舎等が完成し、同大学に無償貸付けを実施した段階で、改めて公表されたものはない。監査実施時点において資料を求めたが、特に市が負担しているコスト(機会費用等)についてまとまった形で整理されたものはなかった。どのような方法で計算し、どの程度外部に明らかにすべきかなどについては検討の余地はあるが、無償貸付けすることは、実質的にキャッシュ・フローを伴わない補助金のようなものであり、少なくとも無償貸付けの期間の間、常にその額を把握しておくべきである。
また、平成 15 年8月に策定された「北九州市科学技術振興指針」において、「この学研都市を、知的基盤の中核として位置づけ、国内外の高度な教育研究機関との連携の強化、大学・大学院・研究所のさらなる誘致・充実などにより、特色ある分野において、国際水準の実践的な教育研究機能を早期に実現し、知的基盤の土台となる基礎的な研究機能も充実する。」と記述されている。したがって、今後も学術研究都市に大学・大学院・研究所を誘致する動きが出てくると予想されるが、市の重要な財産を無償貸与する場合には、その経済的な負担について、市民に理解を求めていくことが重要である。
なお、現在、早稲田大学に対して、無償貸付けしている資産の明細を示せば、次のとおりである。
表Ⅰ-3 早稲田大学に対する無償貸付け資産一覧
土 地 | 建 物 | 物 品 | ||
面積 | 延床面積 | 取得価格 | ||
①九州研究所 ②教職員宿舎 ③研究員宿舎 ④大学院 | 13,705 ㎡ 809 ㎡ 1,831 ㎡ 19,666 ㎡ | 3,182 ㎡ 889 ㎡ 1,635 ㎡ 12,357 ㎡ | 659 百万円 257 百万円 434 百万円 3,397 百万円 | 29 百万円 - 1 百万円 - |
計 | 36,011 ㎡ | 18,063 ㎡ | 4,747 百万円 | 30 百万円 |
(資料) 市有財産使用貸借契約書(変更契約書を含む)より作成。
(注) 1.この他に大学院誘致に関連して備品等の経費補助金として8億円が別途支給されている。 2.九州研究所の建物取得価格は、無償貸付け分を面積按分して算出した。
Ⅱ.北九州市立大学国際環境工学部
1.勤務地内旅費にかかる規程の見直し
(1)勤務地内旅費の概要
勤務地内旅費は市内の旅行に際して支給される旅費であり、北九州市旅費条例第 16 条に定めるとおり、継続4時間以上かつ1キロメートル以上の行程での旅行について交通費及び日当を支給するものである(表Ⅱ-1)。具体的には、交通費については実費を支給し、日当については定額により 100 円と定められている。
「第 16 条 勤務地内において出張する場合の旅費の額は、別表第4に定めるところによる。」
別表第4
備考
(1) 片道1キロメートル未満の在勤地内出張又は公用車を利用した場合の勤務地内出張については、旅費は支給しない。
(2) 東京事務所に勤務する職員については、日当は支給しない。
(3)~(4) 省略
表Ⅱ-1 北九州市旅費条例(抜粋)
旅費額 | 交通費 | 日当 |
実費 | 継続4時間以上 100 円 |
(2)勤務地内旅費の支給実態
支給の実態を把握するため、「国際環境工学部教員研究費」及び「国際環境工学部キャンパス管理運営業務」を選択し、これにかかる「近距離旅行、勤務地内出張命令書」を通査したところ、両事業において執行された教員の研究活動にかかる勤務地内旅費は 41 件、職員の事務遂行にかかる勤務地内旅費は 97 件であった。
教員の研究活動にかかる勤務地内出張は、主に北九州市国際会議場等を行き先とした小倉・門司近辺への研究協議等による勤務地内出張が主体である。また、事務職員の勤務地内出張は、主に北九州市役所等小倉近辺への事務遂行及び研修等による勤務地内出張が主体である。いずれの場合においても、交通費実費分と日当として 100 円が支給されている。
一例として、平成 15 年3月における支給実態を以下に挙げる(表Ⅱ-2、表Ⅱ-
3)。なお、教員の研究活動にかかる旅費について「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」から執行されており、「事業間流用」の措置がなされていないが、これについては結果報告書に指摘事項として記載している。
表Ⅱ-2 教員の研究活動にかかる勤務地内旅費
(「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」)
日程 | 出張先 | 用件 | 最寄駅 | |
1 | 3.20 | 門司港駅舎 (門司区) | 研究協議及び現地調査 | 門司港 |
2 | 3.22 | 北九州市国際会議場 (小倉北区) | 特別講演会 | 小倉 |
3 | 3.29 | 門司港駅舎 (門司区) | 研究協議及び現地調査 | 門司港 |
(資料)「近距離旅行、勤務地内出張命令書」より作成
表Ⅱ-3 職員の事務遂行にかかる勤務地内旅費
(「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」)
日程 | 出張先 | 用件 | 最寄駅 | |
1 | 3.7 | 総合保健福祉センター (小倉北区) | 研修 | 小倉 |
2 | 3.12 | 小倉北区役所 (小倉北区) | 研修 | 西小倉 |
3 | 3.13 | 小倉北区役所 (小倉北区) | 研修 | 西小倉 |
4 | 3.15 | 北九州市立大学北方キャンパス (小倉南区) | 学位授与式応援事務 | 小倉 (競馬場前) |
5 | 3.18 | 北九州市立大学北方キャンパス (小倉南区) | 合格発表書類送付事務 | 小倉 (競馬場前) |
6 | 3.20 | 北九州市立大学北方キャンパス (小倉南区) | 図書館協議員会出席 | 小倉 (競馬場前) |
7 | 3.27 | リーガロイヤルホテル小倉 (小倉北区) | 講演会 | 小倉 |
(資料)「近距離旅行、勤務地内出張命令書」より作成
(3)勤務地内旅費における日当支給の妥当性
公務による旅行である以上、交通費については適切な範囲内において実費を支給することは妥当であるが、一方で、日当として支給される 100 円については、何の対価として支給されているのか支給目的が明確ではない。市としては、例えば公衆電話代等の諸経費を想定しており、本来は実費弁償が原則であるものの、事務の効率性及び迅速性等を勘案して定額制を採用しているとのことである。本来、公務の遂行に際して必要となった経費については、実費弁償がなされる必要があるが、事務作業の負担を考慮した上で定額を支給することも容認されるものと考えられる。
しかし、北九州市立大学ひびきのキャンパスにおける勤務地内旅行の実態としては、ひびきのキャンパスから小倉もしくは門司への市内移動であるとともに、特に、職員の事務遂行にかかる勤務地内旅行は主に大学以外の市の施設を目的地としている。このような状況において、想定しているような公衆電話代等が恒常的に発生するかは疑問である。
加えて、公用車を利用した場合には支給されないこと、及び東京事務所に勤務する職員には支給されないことと考え併せても、その支給に合理性を有するとの積極的な意義を見出し得ない。制度設定の当初は幾分かの合理性を有していたとしても、その後の経済環境の変化等に伴い、現状においては合理性を喪失している可能性がある。
今後の勤務地内出張における日当の取扱いについては、旅費が実費弁償を基本とする以上、出張の実態も考慮した上で、社会通念上許容される範囲内において、廃止も含めて支給額及び支給基準の見直しを行うことが望ましいと考える。なお、参考として、近距離旅行にかかる日当を支給していない地方公共団体を例示する。
表Ⅱ-4 (参考)近距離旅行にかかる日当を支給していない地方公共団体
地方公共団体名 | 旅費にかかる条例 |
福島県 | 【福島県旅費条例】第 19 条 2 日当は、次の各号に掲げる旅行については支給しない。(略) 一 県内旅行(内国旅行のうち県の区域内におけるものをいう。以下同じ。)のうち路程百キロメートル未満のもの |
福井県 | 【福井県一般職の職員等の旅費に関する条例】 第 21 条 県内旅行については、日当は支給しない。 |
石川県 | 【石川県職員等の旅費に関する条例】第 19 条 3 出発地から目的地までの路程が百キロメートル未満の県内旅行については、日当は、支給しない。 |
2.委託料
(1)「北九州市立大学国際環境工学部研究等補助業務委託契約(EAにかかる委託契約)」の競争促進策等
① 概要
結果報告書に記載したように、EAは、授業、実験及び研究等において技術的なサポートをする補助要員であり、国立大学においては通常「技官」として正規の職員がこの任にあたっている。北九州市立大学においては、民間のノウハウの活用及び費用の効率化の観点から、外部の人材派遣会社と業務委託契約を締結し、人員の派遣を受けているものである。
② 契約締結の状況
表Ⅱ-5 契約の状況
契約件名 | 執行額 | 契約形態 |
北九州市立大学国際環境工学部研究等補助業務委託契約 | 88,454,870 円 | 特命随意契約 |
(EAにかかる委託契約) | (税込み) | (地方自治法施行令 |
第 167 条の2 第1項 | ||
第2号) |
契約形態は特命随意契約を採用しているが、この理由として、「特命理由書」においては、「委託料のみを判断基準とする競争入札方式では、EA個人のスキルを見極めることができず、教員の要望に応じた必要な人材を確保し、十分な成果をあげることはできない。」ためとしている。また、競争入札は実施していないものの、これを補うべく、契約に先立ちコンペを実施し、その上で業者を選定することとしている。しかし、コンペを実施しているものの、結果として受託会社は開学以来同一の会社であり、平成 15 年度も含めて過去4年間同一の会社が受託している。
③ 今後について
人選にあたっては教員からの希望を重視していることもあり、結果として、相当程度固定的な面もある。以上のことから、次の点を検討することが望ましい。
ア.直接雇用の検討
人選にあたって教授からの推薦及び希望が重視されること並びに委託契約形態を採ることにより受託企業に対する追加的なコストが生じることに鑑み、嘱託職員もしくは期限付職員等として直接雇用することを検討することが望ましいと考える。
イ.現行の委託契約における競争促進策の検討
直接雇用が不可能であれば、可能な範囲において競争をより促進させる方策を検討することが望ましいと考える。
(2)「昇降機保守点検業務委託」における特命理由
北九州市立大学ひびきのキャンパスにおいては、本館に4台、計測分析センターに1台及び留学生会館に1台のエレベータが設置されているが、その保守点検業務については、エレベータの製造業者との間で、「北九州市立大学ひびきのキャンパス昇降機保守点検業務委託」として、特命随意契約の形態にて契約を締結している。
表Ⅱ-6 契約の状況
件 名 | 契約金額 | 契約形態 |
北九州市立大学ひびきのキャンパス昇降機保守点検業務委託 | 3,569,258 円 (税込み) | 特命随意契約 (地方自治法施行令第 167 条の 2、第1項第2号) |
特命随意契約は、「その性質又は目的が競争入札に適しないもの(地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号)」について、契約締結の方法の原則である競争入札の形態を採らず、任意に特定の相手方を選択して、その者を相手方として契約を締結するものである。
本件においては、「特命理由」として、① 24 時間遠隔監視を行うこととされているが、そのためにはメーカー独自のノウハウを蓄積したシステムの利用が必要であり、当該エレベータの製造業者以外の者では、「そのシステムを利用することは不可能であり、つまり、24 時間体制で遠隔監視を行うことが出来ない。」こと、②
「故障時の修理や部品の交換といった場合」には、製造業者以外の「受託業者では対応できない部分も」あること等を挙げている。
確かに、エレベータ保守点検業務については専門的な技術を要するものの、① 昨今においては、エレベータ製造業者及びその系列会社以外に当該業務を担う業者があること、② エレベータ製造業者の純正部品について、エレベータ製造業者及びその系列会社以外の業者も購入可能であること等を考慮した場合、これらを理由とすることのみでは特命理由として積極性を有し得ない。
現状、事務局は、製造業者以外に当該業務を担い得る業者の有無について確認を行わず、上述の理由にて特命随契としているが、今後は、契約に際して参入業者の有無を確認し、可能であれば指名競争入札等の競争的な契約形態を採用することが望ましい。
(3)FAIS との管理委託契約の一本化
ひびきの本館など北九州市立大学独自の施設に関する維持管理・警備業務等と、学術研究都市内に整備された情報基盤等の管理運営業務及び図書室の図書管理のうち北九州市立大学所管分については、FAIS に業務委託されているものの、留学生会館にかかる「巡回警備業務委託」及び「設備点検業務」については、これとは
別個に北九州市立大学が個別に業者と契約を締結している。
表Ⅱ-7 FAIS への業務委託以外の管理運営業務委託
件 名 | 契約金額 | 契約形態 |
北九州市立大学留学生会館巡回警備業務委託 | 629,790 円 (税込み) | 特命随意契約 (地方自治法施行令第 167 条の2、第1項第2号) |
北九州市立大学留学生会館設備点検業務委託 | 630,000 円 (税込み) | 特命随意契約 (地方自治法施行令第 167 条の2、第1項第2号) |
警備業務委託の「特命理由」としては、平成 14 年度の学術研究都市内(北九州市立大学含む)の警備業務が FAIS よりD社に委託されたことを受け、「① 留学生会館巡回警備についても学術研究都市内の一部の建物と位置づけ、D社の巡回ルートに入れることにより警備員及び経費の削減ができること、② 留学生会館前の情報技術高度化センターにD社の警備員が常駐するため、緊急時も早く対応できること」を挙げた上で、D社と契約を締結することとしている。
一方、設備点検業務委託の「特命理由」は、平成 14 年度の学術研究都市内(北九州市立大学含む)の設備管理業務が FAIS よりE社に委託されたことを受け、「①本来、一つの建物(受電施設)に対し、電気主任技術者等を選任しなくてはならないが、E社に委託することにより、既存で選任されているE社の電気主任技術者が兼任できること、② 日常点検も既存に従事しているE社が実施することができ、増員の必要がないこと、③ E社は 24 時間常駐しているので、緊急時にも早く対応できること」を挙げ、E社と契約を締結することとしている。
しかし、本件の業務については、留学生会館が大学校舎等と異なり設備等について FAIS の施設と特に関連を有していないこと、及び留学生が 24 時間生活する場であり大学が管理責任を直接に負う必要性があること等の理由から、個別の契約としているが、学術研究都市の管理法人としての FAIS の設立趣旨からして、学術研究都市内の他施設と分離して契約を締結する強い必要性は認識できず、本来、単一の契約によることが望ましいものと考える。「特命理由」の中で、D社及びE社に対する FAIS からの委託契約と一本化しなかった理由として、「留学生会館が共同利用施設に当てはまら」ないためとしているが、実際には北九州市立大学の留学生のみではなく、学術研究都市内の他大学の留学生に対しても入居を認めている。したがって、FAIS との協議により解決し得る問題であり、契約を分ける積極的な理由であるとは判断し得ない。
加えて、契約の予定価格を FAIS の契約価額を基礎として算出しているが、FAISのものと契約を一体化し、ロットが大きくなった場合には、現在の契約単価が必要になるとは限らず、効率性の面でも分離する必要性は見出せない。事務処理上の効
率化を図る上でも、FAIS と協議を行った上で契約の一本化を検討することが望ましいと考える。
3.電子複写機(コピー機)の使用
北九州市立大学ひびきの本館においてはカラー複写機1台を含め計9台の複写機を使用している。これら複写機はすべてF社が所管しており、北九州市立大学が借り受けて使用している形となっている。
北九州市立大学はF社に対して、複写機使用枚数に単価8円を乗じた額を支払っている(カラーコピーは1枚をモノクロコピー5枚分とみなし実際の使用枚数に加算している)。複写機使用によるF社への支出は主に「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」という事業科目で処理されているが、この科目だけで支出額は6百万円近くにのぼっている。
次表は、その「国際環境工学部キャンパス管理運営事業」における複写機使用によるF社への支出の内訳である。ただし、他の事業科目で処理されているものもあるため、F社に対する支出総額はこれを上回るものとなる。
次表に記載した支出について、北九州市立大学はすべて「コピー用紙の購入」として取扱っている。
「物品調達事務について(平成3年9月2日北九財財調第 11 号各課長あて財政局財務部調達課長通知)」によると、コピー用紙のような物品の調達については、1件の契約金額が 20 万円までの場合は各課で契約ができるとされ、また、見積り合せにより取引先を決定することができるとされている。北九州市立大学では次表の「コピー用紙の購入」を一連の取引ではなく、それぞれ個別の取引として取扱っている。契約金額はいずれも 20 万円以下のため、管理課長決裁で支払を行っており、見積り合せの方法により取引先を決定している。契約相手はいずれもF社となっている。
見積書はF社ともう1社から入手しているが、同一業者から継続して入手しており、この状況に変化がなければ、今後もF社に対して継続的に「コピー用紙の購入」代金を支払うことになると思われる。したがって、取引の実態としては、北九州市立大学はF社から複写機を借り受け、「コピー用紙の購入」の名目でその使用料を支払い、F社は複写機を良好な状態に維持するためのサービスを継続して提供することとなり、リース(あるいはレンタル)取引に該当するものと思われる。取引の実態に合わせて、物件の借入れに関する契約(リースあるいはレンタル契約)を締結して、取引条件等を明確にしておくことが望ましい。
また、80万円を超える物件の借入れに関する契約については、原則として競争入札とすることが定められている(北九州市契約規則第19条)。
北九州市立大学の資料によると平成13年度の複写機使用枚数は584千枚である。これに単価8円を乗じた場合、支出総額は税込で約5百万円となる。
平成14年度においても、事前に同程度あるいはそれ以上の支出は十分見込めると予想される。すなわち、事前に年間80万円以上の支出が見込まれると思われることから、平成14年度においては競争入札により業者を選定する必要があったと考える。
ちなみに、平成 15 年度においては北九州市立大学はF社と「電子複写機及び消耗品等供給契約」を締結している。契約内容は使用枚数に単価8円を乗じた金額を取引金額としており、実態は平成 14 年度と変わっていない。また、競争入札は行わず、特命随契によりF社と契約を結んでいる。
表Ⅱ-8 国際環境工学部キャンパス管理運営事業におけるF社への支出の内訳
支出命令 | 購入枚数 | 単価(円) | 購入金額(税込)(円 | 支出命令 | 購入枚数 | 単価(円) | 購入金額(税込)(円 | |
15.4.7 | 10,496 | 8 | 88,166 | 14.7.19 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
15.3.6 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.7.12 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
15.2.19 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.7.10 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
15.2.7 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.7.4 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
15.1.23 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.7.2 | 4,641 | 8 | 38,984 | |
15.1.14 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.6.25 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.12.12 | 19,106 | 8 | 160,490 | 14.6.14 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.11.28 | 15,032 | 8 | 126,268 | 14.6.7 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.11.21 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.6.3 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.11.14 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.5.20 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.10.17 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.5.14 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.10.8 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.5.13 | 4,100 | 8 | 34,440 | |
14.10.1 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.5.1 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.9.27 | 18,525 | 8 | 155,610 | 14.5.9 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.9.23 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.4.26 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.9.10 | 619 | 8 | 5,199 | 14.4.22 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.9.19 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.4.16 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.8.29 | 20,000 | 8 | 168,000 | 14.4.11 | 20,000 | 8 | 168,000 | |
14.8.26 | 2,442 | 8 | 20,512 | 14.4.5 | 16,346 | 8 | 168,000 | |
14.7.30 | 20,000 | 8 | 168,000 | 合計 | 691,307 | - | 5,837,669 |
4.物品の廃棄方法
物品管理要領その他関連規則において、返納された不用物品の最終的な廃棄方法についての定めがない。今後、パソコン等情報セキュリティ上の問題のある物品や実験機器・装置等大型のもの、危険物の返納・廃棄が想定されるため、最終的な廃棄方法と市における確認手続について規定を設けておくことが望ましい。
この点について、現状では社会通念上適切に処理されていると認識しているとのことであり、また今後、パソコン等の返納・廃棄については、内部的な規定である北九州市情報セキュリティポリシーに沿った処理を行う予定とのことである。
学術研究都市がエコ・キャンパスを標榜していることからも、廃棄物処理までを視野に入れて物品の種類ごとに、例えば廃棄証明を入手する、マニフェストを入手するといった手続の明文化を検討する必要があると考えられる。
5.物品管理
(1)現物照合の方法と整理票の貼付
結果報告書で指摘したように、備品等の実査の結果、保管場所が備品台帳上と異なっていたり、保管場所が不明なため現物の照合ができないなどの例が散見され、現実的には、適切に現物照合がなされているとは言えない状況にあった。物品の適切かつ効率的な管理を行うには、大学という特殊性から、全ての備品を現物照合するには相当の人員と時間を要するため、間接的な現物照合で実効性を高めることが考えられ、重要物品を中心に現物照合するなど大学独自の現物照合の方法を検討することが望ましい。
また、会計規則第 84 条第2項と物品管理要領第3 4より、備品はすべて整理票その他の方法により、分類表示して管理しなければならず、備品管理台帳の整理番号をとり、整理票は消えにくいインク等で記入し各備品に貼り付けることとある。ただし、フレキシウォール FCS など、現品が存在しても備品整理票が物陰に隠れて目視できない場合が散見された。流体力測定用供試体など、備品の状況によっては貼付していないものがある。整理票を貼付しない場合には、別の方法を講じる必要がある。現物照合を適切かつ効率的に行うためにも、整理票貼付等の徹底が望まれる。
(2)備品台帳での金額基準
北九州市立大学ひびきのキャンパスについては、その特殊性(理工学系の教育・研究機関)から備品数が膨大となり、市の中でも特に管理が難しい部門と言える。
備品の金額基準については、現状、市全体として1万円以上とされているが、大学の特殊性から判断すると、法人化の検討の中では、その基準の引き上げを検討することが望ましい。その際には、引き上げることのデメリット(例えば、消耗品と
して購入しやすくなる物品の範囲が広がるなど)についても十分考慮する必要がある。
(3)備品管理台帳について
会計規則第 93 条第1項によると、「物品管理者は、次の帳簿を備えて物品の管理を明らかにしなければならない。」と規定し、「(1)備品管理台帳、(2)重要物品管理台帳、(3)自動車管理台帳、(4)その他必要な帳簿」を挙げている。
また、市の物品管理要領により、備品管理台帳は1品1葉の紙カード式を原則として作成される。しかし、所管する物品の一覧表の作成は定められていない。この点に関して国際環境工学部管理課では、備品管理台帳のデータがコンピュータ上の表計算ソフトに入力され、一覧表が作成されている。これにより、保管場所別、種類別等に物品を把握することが可能となっている。また、物品購入にあたり一覧表を事前に調べることで二重に購入してしまうことが避けられると思われる。物品を多数保管するという大学の事情を前提にすると、備品管理台帳については、情報システム化による対応が不可欠である。
大学では、紙カード式の備品管理台帳も作成しているが、物品管理者が補助的に作成している上述した表計算ソフトから、1年に一度紙面に打ち出している。大学の台帳記帳の必要性と効率化の観点から、表計算ソフトによる帳票を補助元帳と位置づけ、担当者が変わっても有効な手段として機能できるよう、簡単な記入要領や使用マニュアル等を作成しておくことが望ましいと考える。
(4)備品持ち出し
物品管理要領第3 5より、備品の庁外持ち出し等を頻繁に行う課は貸出簿を備え、使用者の印を徴する等、常に使用者の保管責任を明らかにして、亡失、き損等の事故予防処置を講じておくこととある。
大学では、頻繁に行っているわけではないが、産業医大に持ち出したものがある。この持ち出しに関する覚書は、目的・時間・管理者名を簡単に記載したメモ程度のものである。また、現物照合は行っていないため、実際に、産業医大に保管されているかどうか確認されていないことになる。
学術研究都市の趣旨からも見ても、今後、各大学や研究機関との間で備品の相互利用が活発化することが期待されていると考えられるが、それを支えるためにも備品持ち出しについての事務手続を明確に定めておくことが望ましい。例えば、メモ程度の覚書ではなく、貸付け備品の賃借料の扱いや故障した場合の保守修繕費負担や運搬費などが生じた場合の処置などの必要事項について明記した書類が必要であり、そのための様式設定などを検討することが考えられる。
(5)物品管理要領について
大学の備品・重要物品は非常に多数・多種類にわたり、また、特殊な物品も多い。今後教育研究活動の拡充に伴い、備品・重要物品の増減や管理換え等も頻繁に発生すると予想される。一般的に市の物品管理要領はこのような大学の事情に必ずしも適合していないとの印象を受ける。
実際の使用者である研究者への管理責任分担のあり方を含めて、効果的・効率的な管理方法を模索する必要があり、大学独自の物品管理要領等の規定を定めることが望ましい。
6.外部研究費
(1)執行計画
外部研究費を使用する教員はあらかじめ執行計画書を学長に提出する必要があるが、執行計画による経費の配分はあくまで目安であり、特に拘束されないということである。個別研究費ごとの収支簿(予算管理簿)の中に執行計画の費目別の予定金額が記入されていない例も見られた。
執行計画自体が形骸化している恐れもあることから、実際の支出が執行計画の経費配分から大きく外れる場合には研究者から理由書の提出を求めるなど、執行計画が外部研究費の適正な執行に寄与できるように、その運用について見直すことが望ましい。
(2)奨学寄附金の受払報告
外部研究費の管理及び執行状況を明確にしておくために、収支簿を備える必要があるが、奨学寄附金では払出内訳表や受払報告書が収支簿の機能を担っている。ただし、払出内訳表や受払報告書の様式としては、支出費目別の内訳を示すことになっていない。
執行計画との対比もできるよう受託研究や共同研究と同様に支出費目別の内訳を示したものを作成することを提案する。
(3)受託研究、共同研究に要する経費
委託者あるいは共同研究の相手先が負担する経費としては、当該研究遂行に必要な経費に相当する額及び管理経費とするとされている。
共同研究の海外旅費の目的に留学志願者との面接(大学院生の確保のため)が含まれるものが見られた。海外旅費自体はこの共同研究の執行計画でも想定されており、国際会議の出席や情報交換が主な目的である。共同研究の相手先に了承されている限り、国際会議出席とともに留学生志願者との面接を行っても契約上は問題ない。ただし、留学生の確保は共同研究の目的とは直接関係ないと考えられ、しかも必要であれば大学として予算化し、計画的に対応すべき性格のものと考えられる
(学部留学生の確保は予算化済み)。大学院生を含めた留学生確保のための経費については、受託研究や共同研究から支出しないことが望ましい。
(4)科学研究費補助金の収支簿
科学研究費補助金の収支簿は作成されているが、摘要欄の設備備品や消耗品の品名・数量、あるいは旅費の旅行者名や旅行先など、国の定める様式で記入することとなっている事項が一部省略されていて記入されていない例が見られた。関係証拠
書類との照合をしやすくするためにも収支簿への正確な記載が求められる。
(5)受託研究、共同研究の収支決算
研究担当者は研究完了後、受託研究(あるいは共同研究)完了報告書とともに収 支決算報告書を学長に提出し、学長は市長に研究完了を通知することとなっている。受託研究についてはさらに市長から委託者に報告される。また、学長は収支決算報 告書に基づいて学部総括表を作成し、市長に提出することとなっている。
予算管理簿と収支決算報告書を照合したところ、金額としては一致しているが、研究のまとまり(予算管理簿での複数の研究を収支決算報告では1件としてまとめて行っている)や研究者名が一致しておらず、照合を難しくしている例が見られた。統一的な研究単位や研究者名で管理することが望ましい。また、総括の収支簿は学部総括表で代替されているが、管理上、奨学寄附金の受払報告書のような個別研究が一覧できるような収支簿を作成することが望ましい。
(6)受託研究、共同研究の研究成果
受託研究完了報告書及び共同研究完了報告書の研究成果欄には研究成果の概要を記載し、成果の詳細を別紙添付することになっている。抽出した一部の研究について、添付されている研究成果の詳細資料を査閲したが、専門家ではない第三者が研究成果について評価することは難しい。委託料等が支払われている事実のみで研究成果の質を判断せざるを得ない。
ただし、今後、大学全体として外部研究費の受入れの拡大を図るためには、研究成果の質や委託者の満足度、地域への貢献度等をチェックする機能が必要になると考える。直接評価を行うことが難しい場合は、少なくとも研究者に緊張感を持たせるとともに、外部に対して大学の外部研究費の受入れ体制をアピールするために、可能な範囲で研究成果を積極的に公表していくなどの取組を行うことが望ましい。また、平成 14 年度でみると国際環境工学部(大学院を含む)の教員のうち、何らかの外部研究費を受けている割合は5割弱程度(73 名中 35 名)にとどまっているが、その割合を拡大することにもつながると考えられる。
(7)外部研究費で購入した備品
ア.奨学寄附金、受託研究、共同研究
奨学寄附金、受託研究、共同研究のいずれも、研究に要する経費で取得した設備、備品、図書等は市に帰属するとされている(奨学寄附金は市への寄附)。
外部研究費で購入された備品等は(奨学寄附金により購入された備品等は寄附申込を経て)、通常の市の備品と同様に受入れの手続がなされる。ただし、研究者から大学への寄附等は年度終了後となり、翌年度に新規に受け入れたものとし
て扱われている。したがって、備品管理台帳への記載はさらにその翌年度となり、備品購入時点から1年以上経過することになる。
少なくとも平成 14 年度に購入した備品等は、平成 14 年度の受入れとして処理するなど、もっと早い段階で備品管理台帳に記載することが望ましい。あるいは実務上、担当者が作成して備品管理に使用されている表計算ソフトによる帳票を正式に備品管理台帳の補助簿等として位置づけ、運用についても規定を設けるなどの対応が望ましい。奨学寄附金については「直ちに市に寄附する」とされており、その趣旨を汲み取り、定めのない受託研究や共同研究を含めて、備品購入時点あるいは購入月別に備品管理台帳やそれに代わる補助簿等に記載していくことを提案する。
イ.科学研究費補助金
備品等は購入後、直ちに大学に寄附することとなっている。ただし、文部科学大臣等の承認を受けて研究が終了するまで寄附を延期することができる(5万円未満の図書は承認が必要ない)。寄附した備品等は科研費で購入したものである旨を記し、大学の備品等として登録し、備品番号を付けるなど適正に管理することとされている。
実際の手続としては、年度末にまとめて大学に寄附されている。また、大学に寄附された後は、市の備品等の受入れと同様の手続となり、①の意見が、科研費でも当てはまる。
ウ.備品管理
金額の大きい備品等を抽出し、現物実査を行ったが、管理上(整理票)の保管場所と実際の備品等の保管場所が異なるケースが散見された。整理票や管理帳簿上で正しい保管場所を記載することが必要である。また、各教員を通じた間接的な確認を組み合わせるなど手法を工夫しつつ、現物確認を徹底することが求められる。
(8)外部研究費で購入した図書
図書については5千円以上が備品であり、備品管理台帳に記載される。ただし、図書原簿を備えたときは備品管理台帳への記載を省略でき、また、5千円未満については、消耗品とされている。
内部研究費で購入した図書については一律、学術情報センター(図書室)で登録されているのに対して、外部研究費で購入した図書は、備品管理台帳に記載されるもの以外は、登録されていない状態である。各研究者等の管理に任されており、物品管理要領が物品管理者に求めている「物品の整理区分を明確にし、保管場所を一
定しておくこと。(特に図書等)」などの趣旨が反映されにくい状況と言える。外部研究費で購入した場合も市に帰属する図書である。外部研究費による図書をすべて登録することは事務手続き上の煩雑さやそのコストを考慮する必要はあるが、少なくとも内部研究費と外部研究費で扱いが異なることについては検討の余地はあると考える。