〇同社は、高齢化の進展や健康に対する関心の高まりから拡大を続けている健康食品業界において、ソフト・ハードカプセル型サプリメントの設計・受託製造を通じて人々の健 康に貢献しています。健康食品は直接体内に摂取するため厳格な生産管理体制が求められるなか、同社は ISO22000 や健康食品 GMP を取得し、安全性・信頼性の高い生産管理体制の確保に取り組んでいます。
2022.3.30
丸一化成㈱と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、丸一化成㈱(社長 xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 3 月 30 日(水)
2.融資金額 1 億円
3.資金使途 運転資金
4.丸一化成㈱の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、高齢化の進展や健康に対する関心の高まりから拡大を続けている健康食品業界において、ソフト・ハードカプセル型サプリメントの設計・受託製造を通じて人々の健康に貢献しています。健康食品は直接体内に摂取するため厳格な生産管理体制が求められるなか、同社は ISO22000 や健康食品 GMP を取得し、安全性・信頼性の高い生産管理体制の確保に取り組んでいます。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境 面 | ・環境保全対策(自社で策定した環境方針に則った各種汚染対策による環境保全) ・資源の有効活用(徹底した原料管理や端材の再利用、製品ロスの削減による資源の有効活用や廃棄物の削減) ・気候変動対策(エコドライブやアイドリングストップなどの励行、製造効率の改善、LED 照明やハイブリッドカーの導入などによる使用燃料・電力の削減) |
|
社会 面 | ・多様な栄養ニーズに応える健康食品事業(子供からお年寄りまで、多様な栄養ニーズに応えられる健康食品サプリメントの ODM・OEM 生産) ・優れた品質管理体制(日本健康・栄養食品協会の健康食品 GMP 認証および ISO22000 認証に基づいた品質管理体制の確立・運用) |
|
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】丸一化成㈱の概要
所 在地 | xxxxx 000 xx 0 | 創 業 | 1953 年(昭和 28 年)7 月 |
資 本金 | 20 百万円 | 売 上高 | 4,618 百万円(2021 年 12 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:丸一化成株式会社
2022 年3月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 丸一化成株式会社(以下、丸一化成) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、丸一化成の企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
丸一化成は、化成品事業、フィルム事業、健康食品事業の3事業を営む製造・販売業者である。ソフト・ハードカプセル型サプリメントを設計・受託製造する健康食品事業が売上の約7割を占めており、本評価書では売上高の多くを占める健康食品事業を中心に評価していく。
健康食品事業は、さまざまなサプリメントを製造することで、人々の多様な栄養ニーズに応えている。関連会社にウキシマメディカル株式会社(以下、ウキシマメディカル)を擁し、大手健康食品通販会社などから受注を獲得している。品質管理も万全を期しており、日本健康・栄養食品協会の健康食品 GMP 認証および ISO22000 認証を取得するなど体系的な体制を確立している。
また、丸一化成では新しいアイデアやチャレンジする精神を推奨する企業風土が根付いており、表彰制度や充実した教育体制と併せて従業員のやりがいを創出している。安全衛生委員会の設置や労働災害対策、女性が活躍できる支援体制など、労働環境の改善にも努めており、安全で安 心して働けるxxな職場を醸成している。
環境面に関しても、策定した環境方針に則った各種環境汚染対策や徹底した原料管理、端材の再利用、環境配慮車の導入などにより、廃棄物の削減や資源の有効活用、CO2 排出量の抑制に努めている。
本ファイナンスでは、次のインパクトが特定され、それぞれに KPI が設定された。
【ポジティブ・インパクトの増大】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
社会 | 子供からお年寄りま | 2030 年までに、健康食品事業部の売上高を現状の 3,045 百万円から+114%増加させ、 6,500 百万円を達成する | |||
多様な栄養 | で、多様な栄養ニー | 食料 | |||
ニーズに応える | ズに応えられる健康 | ||||
健康食品事業 | 食品サプリメントの | 健康と衛生 | |||
ODM・OEM 生産 | |||||
新しいアイデアやチャ | ①2030 年までに、従 | ||||
レンジを推奨する企 | 業員数を現状の 162 | ||||
業風土、カイゼン表 | 人から+38 人増加さ | 教育 | |||
彰、充実した従業員 | せ、200 人を達成する | ||||
働きがいある 職場の醸成 | 教育制度などによる 従業員のモチベーシ | ②2030 年までに、女 | 雇用 | ||
ョン向上、女性が活 | 性従業員比率を現状の | 包摂的で | |||
躍できる体制の整 | 40.7%から+9.3pt 増 | 健全な経済 | |||
備、同一労働同一 | 加させ、50.0%を達成 | ||||
賃金の実現 | する |
【ネガティブ・インパクトの低減】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | 環境保全対策 | 自社で策定した環境方針に則った各種汚染対策による環境保全 | 排水処理システムなど現在の環境保全対策を継続し、大気・水質・土壌汚染事故の発生件数0件を維持する | 大気水 土壌 | |
資源の有効活用 | 徹底した原料管理や端材の再利用、製品ロスの削減による資源の有効活用や廃棄物の削減 | 健康食品事業部の歩留まり率を現状の水準 (97%)で維持する | 資源効率・ 資源安全確保 廃棄物 | ||
気候変動対策 | エコドライブやアイドリングストップなどの励行、製造効率の改善、LED 照明やハイブリッドカーの導入などによる使用燃料・電力の削減 | 2025 年までに、CO2排出量の測定を開始し、CO2 排出量削減目標を策定する | 気候変動 | ||
社会 | 優れた 品質管理体制 | 日本健康・栄養食品協会の健康食品 GMP 認証および ISO22000 認証に 基づいた品質管理体制の確立・運用 | 優れた品質保証体制を継続し、日本健康・栄養食品協会の健康食品 GMP 認証および ISO22000 認証を維持する | 食料 健康と衛生 |
安心安全な職場 | 安全衛生委員会の設置や危険箇所への柵の設置などといった労働災害対策 | 労働災害対策を継続し、毎年の発生件数を 2件に留める | 健康と衛生雇用 |
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2022 年3月 30 日~2025 年3月 30 日 |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 3 年0ヵ月 |
企業概要
企業名 | 丸一化成株式会社 |
所在地 | xxxxx 000 xx2 |
事業所 | ・東京営業所:xxxxxx区xx猿楽町 2-8-11 ・大阪営業所:xxxxxxxxxxxx 0-4-16 ・富士工場:xxxxx 0000-31 ・フィルム事業部:xxxxx 0000-19 ・倉庫:xxxxxxxxx 000-1 ・フィルム倉庫:xxxxxx 00-47 |
関連会社 | ウキシマメディカル株式会社:xxxxx 0000-65 |
従業員数 | 162 名(男性 96 名、女性 66 名) |
資本金 | 2,000 万円 |
業種 | 化成品・フィルム・健康食品製造・販売業 |
主要取引先 | <仕入先> 化成品事業:日本軽金属㈱、三菱ケミカル㈱、日本酢ビ・ポバール㈱フィルム事業:三井物産プラスチック㈱、xx産業㈱ 健康食品事業:ゼライス㈱、㈱ニッピ、クオリカプス㈱、ロンザ㈱ など <販売先> 化成品事業:xx国際産業㈱、東京製紙㈱、xx製紙工業㈱フィルム事業:包装材料商社、精密光学メーカー、物流会社 健康食品事業:健康食品通販会社、健康食品販売会社 など |
沿革 | 1953 年 沼津市xxに丸一商店を創業 1956 年 丸一化成株式会社設立 1968 年 xxxx園町に本社社屋を建設、移転 1975 年 富士市xx工業団地に工場建設 1994 年 子会社ウキシマメディカル株式会社設立 1995 年 富士工場建設 1997 年 東京営業所開設 2001 年 現在地に本社移転 2009 年 大阪営業所開設 |
(2022 年3月 30 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および特徴
丸一化成は、製紙業界向けの薬剤などを販売する化成品事業とシュリンク包装資材を扱うフィルム事業、ソフトカプセルやハードカプセルなどのサプリメントを設計・受託製造する健康食品事業の3事業を営む製造・販売業者である。売上の約 70%が健康食品事業となっており、化成品事業とフィルム事業が 15%ずつを占めている。東京と大阪に営業所を設け、営業エリアは北海道から沖縄までとなっており、沼津市や富士市に集約された工場・倉庫から全国に製品が配送されている。
<丸一化成の事業構造>
丸一化成 | |||||||||||||||||||||||
化成品事業 (商社) | フィルム事業 (製造販売・代理販売) | 健康食品事業 (ODM・OEM) | |||||||||||||||||||||
製紙 ( 薬 剤 ) | 自動車 (加 工剤 等 ) | 化粧品 (原 料 ) | 電機 ( 加工剤 等 ) | 食 品 ( 原 材料 ) | サ 熱 ー 吸 ク 収 ル チ チ ュ ュ ー ー ブ ブ の | エ 静 レ 電 ウ 気 ォ 対 ー 策 ル の | ベリ ーシ ュリンク | ラ 多 ベ 色 ル 印 シ 刷 ュ 包 リ 装 ン の ク | 富士インパルス シーラ ー | ソフトカプセル | ハード カプセル |
祖業でもある化成品事業は、無機・有機化学品や界面活性剤、各種油脂・油剤など工業薬品全般を取り扱っている。日本軽金属㈱や三菱ケミカル㈱といったxxx成品メーカーから商材を仕入れ、静岡県東部地区を中心に全国のユーザー企業へ化成品を卸している。販売先は、製紙業や輸送用機械器具製造業、化粧品製造業などがメインとなっている。
フィルム事業は、熱を加えると収縮し容器や製品を包装するシュリンクフィルムを製造・販売している。小ロット生産が可能な PVC(ポリ塩化ビニル)系シュリンクチューブや大ロットにも対応できる自動包装用ベリーシュリンク、多色カラー印刷ができるラベルシュリンクなどさまざまな種類のシュリンク包装資材を取り扱っており、一部 PVC を原料としたものは自社製造している。そのほか、静電気を嫌う電気部品や粉体などに最適な静電気障害対策用包装資材や手軽にシーリング作業を行えるハンディシーラーといったシュリンク包装資材以外の関連機器なども手掛けている。
◀PVC 系
シュリンクチューブ
静電気障害対策用
包装資材▶
健康食品事業では、関連会社であるウキシマメディカルが大手健康食品通販会社などから受注したサプリメントの製造を請け負っている。単純な OEM(受託製造)だけでなく設計から携わる ODM(設計製造)も可能であり、原料の調達から配合、商品の形状に関する提案、薬機法に 基づいたパッケージの記載内容のアドバイスまで行っている。製造するサプリメントは、ソフトカプセルやハードカプセルの製品であり、ソフトカプセルはカプセル被膜の調合から製品包装まで、ハードカプセルは内容物の充填から製品包装まで可能な生産ラインを確立している。
<ソフトカプセルの製造工程>
<ハードカプセルの製造工程>
2. 業界の動向
【拡大する健康食品市場】
健康食品市場は高齢化の進展や健康に対する関心の高まりから拡大を続けており、2020 年に日本での感染が確認された新型コロナウイルスの蔓延により、消費者の健康志向が一層高まっている。健康食品は特定健康用食品(トクホ)や機能性食品、栄養補助食品、サプリメントなど多く の種類があり、明確な定義が存在しない。また、公的統計も存在しないため正確な実態を確認することは難しいが、複数の民間調査会社によると市場規模は1兆円前後とも言われており、今後も市場の拡大が予想される。
丸一化成では、このような増加する需要に応えるため、大手健康食品通販会社などからサプリメントの製造を請け負い、市場への供給量を増やしている。多様な栄養ニーズにも対応すべく、ベンチャー企業などとのサプリメント開発にも取り組むことで、人々の健康に貢献している。
【高い安全性が求められる健康食品業界】
健康食品は、手軽に足りない栄養を補助したり健康の維持を助ける製品であるが、直接体内に摂取するため医薬品同様厳格な生産管理体制が求められる。健康被害は重篤な症状に至る可能性もあり、一部の製品で発生しただけでも市場全体の信用が揺らぎかねない。そのため、安全性や信頼性を高めることが業界全体の課題となっている。
丸一化成では、健康食品事業の関連会社であるウキシマメディカルを含め、徹底した安全管理を行っており、食品安全マネジメントシステムである ISO22000 に加え、製品が安全に作られ一定の品質を保たれることを目的とした健康食品 GMP を取得し、安全性・信頼性の高い生産管理体制を確保している。
以上のように丸一化成の企業概要や特徴および同社が属する業界動向を総合的に勘案した上で、UNEP FI のインパクト評価ツールを用いて網羅的なインパクト分析を実施し、ポジティブ・ネガティブ両面のインパクトが発現するインパクトカテゴリーを確認した。そして、同社の活動が、環境・社 会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に貢献すべきインパクトを次項のように特定した。
3. インパクトの特定および KPI の設定
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>食料、健康と衛生
<SDGs との関連性>
2.2 5 歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを 2025 年までに達成するなど、2030 年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、健康食品事業部の売上高を現状の 3,045 百万円から+114%増加させ、
6,500 百万円を達成する
<インパクトの内容>
丸一化成は、「時代が変化し続ける中で変わりゆく世の中を常にキャッチアップし対応できる企業」であり続けるために、同社の始まりである製紙業界向け化成品から取扱商材を拡大し、現在では、輸送用機械器具製造業や化粧品製造業、電気機械器具製造業、食品製造業などにも加工剤や原材料となる化成品を卸している。化成品事業の商材を増やすだけでなく、フィルム事業や健康食品事業といった新たな事業領域にも果敢に挑戦し、多角化を図ってきた。
その中でも、ソフトカプセルやハードカプセル形状のサプリメントを設計・受託製造する健康食品事業は、丸一化成の売上の約7割を占めるほどに成長した。元々は、サプリメントの原料を商材として扱っていただけだったが、サプリメントの将来性を見込み、1994年に健康食品業界へ参入。翌年の 1995年にはソフトカプセル型サプリメントの工場を建設し、受託製造を開始した。2017年にハードカプセルの充填ラインを敷き、ソフト・ハードの両形状のサプリメント製造に対応している。
▼ソフトカプセル型サプリメント
▲ハードカプセル型サプリメント
丸一化成で製造するサプリメントは、普段の食事の栄養バランスを補うものから生活習慣病の改善が期待できるもの、女性の貧血対策となるもの、高齢者の健康を維持するものなど、用途は多岐にわたり、老若男女あらゆる人々の栄養ニーズに応えている。
また、これまでに蓄積した豊富なノウハウを活用することで、単純な受託製造だけでなくソフト・ハードカプセルを用いたサプリメントの設計製造も可能であり、大学からサプリメントの製造協力の依頼があるなど、最適な原料や処方の提案によりベンチャー企業などのサプリメント開発にも貢献している。
このように、丸一化成はソフト・ハードカプセル型サプリメントの製造により人々の健康維持に貢献している。さらに、同社に蓄えられている知見を活用した設計製造は新たなサプリメントの製品化に 資する取組みであり、一層の栄養ニーズへの対応が期待される。これらの取組みは、インパクトレーダーの「食料」、「健康と衛生」に該当する。
静岡銀行は、丸一化成の多様な栄養ニーズへの対応度合いを定量的に確認するために、健康食品事業部の売上高をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性> 教育、雇用、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
<KPI(指標と目標)>
①2030 年までに、従業員数を現状の 162 人から+38 人増加させ、200 人を達成する
②2030 年までに、女性従業員比率を現状の 40.7%から+9.3pt 増加させ、50.0%を達成する
<インパクトの内容>
製紙業界向け化成品の卸売事業から現在の3事業部体制にまで事業領域を拡大した丸一化成には、新しいアイデアやチャレンジする精神を推奨する企業風土が根付いている。新規事業アイデアを募る社内コンペや会議などが設けられているわけではなく、決して規模の大きくない中小企業ならではの連携能力のxxx最低限のルールを逸脱しなければ失敗しても責任が問われない体制など から従業員が自主的に挑戦する環境が醸成されている。部署間での顧客の紹介や情報提供といった横の連携、上司と部下などの縦の連携も活発であり、自身のアイデアが実現することで従業員もモチベーションが向上している。
また、富士工場においては年に1度、会社に貢献したカイゼンを表彰しxx封を贈呈する制度がある。xxxx案の提案方法は口頭のみでよく、かしこまった形式ではないため若手従業員も案を出しやすくなっている。カイゼン結果については、短縮された作業時間などの数値で検証されており、貢献度が可視化されている。
従業員教育についても、健康食品 GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)や ISO9001、ISO22000 に基づいた体制が整備されている。期初に策定した年間教育計画に沿った訓練を行うよう体系化されており、部署ごとのテーマ設定や半年ごとの評価・見直しなど、充実した教育が施されるよう工夫されている。社内の教育・訓練だけでなく外部機関も活用しており、中小企業大学校の研修には毎年3~5名ほど参加することで企業経営やマネジメント能力向
上を図っている。そのほか、英会話教室やセミナーなど個人のスキルアップにつながり、将来的に丸一化成のためになることなら何でも同社が費用を負担している。
女性の活躍支援に関しては、結婚や出産などのライフイベントを経ても継続して就労できるよう産前産後休暇や育児休暇、休職制度の制定などに取り組んでいる。また、女性従業員は事務や製造現場など多くの部署で従事しているが、検査工程では7名中5名が女性従業員と割合が特に高くなっている。これは、特性に合わせた配属を行うことで、より活躍できるよう考慮された結果であ る。丸一化成全体の係長も7名中3名が女性となっており、男女平等に能力の高い人材を登用している。全従業員がxxに扱われるよう、同一労働同一賃金も実現されている。
このように、丸一化成はチャレンジ精神を育む企業風土や従業員の努力が評価されるカイゼン表彰、充実した教育体制などにより従業員の士気を向上させており、働きがいある職場づくりに貢献している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「教育」、「雇用」、「包摂的で健全な」経済」に該当する。
静岡銀行は、従業員のモチベーションを高く維持し、働きがいある職場を醸成する丸一化成の取組みを定量的に確認するために、従業員数と女性従業員比率をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>大気、水、土壌
<SDGs との関連性>
6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させる ことにより、水質を改善する。
11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
排水処理システムなど現在の環境保全対策を継続し、大気・水質・土壌汚染事故の発生件数
0件を維持する
<インパクトの内容>
丸一化成は「社員全員が地球環境への思いやりと調和を大切にし、化学製品の製造や販売を通じて自然環境と健康に配慮し、社会の発展に貢献すると共に、豊かな地球を次世代に引き継ぐことを目指します。」という環境方針を策定し、環境保全活動に積極的に取り組んでいる。
健康食品事業では、ソフトカプセルに充填される原液を粉体原料と油原料を釜で調合することで製造しているが、充填機に原液を移す際に釜に残らないようゴムベラを使い徹底的に取り除くこと で、油などの排出を抑制している。排水処理についても、凝集剤で不純物を沈殿させ浄化した水を排出するなどして水質や土壌の汚染を防いでいる。
大気汚染対策として、車両をすべてハイブリッドカーもしくは低排出ガス車に認定された車両に切り替え、事業活動に伴う有害物質の大気への放出を低減している。
このように、丸一化成は適切な排水処理や使用車両の低排出ガス車への切り替えに取り組んでおり、これらの活動は各種汚染対策に資する活動である。これらの取組みは、インパクトレーダーの
「大気」、「水」、「土壌」に該当する。
静岡銀行は、丸一化成の環境保全への取組みを確認するために、水質・土壌汚染事故の件数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性> 資源効率・資源安全確保、廃棄物
<SDGs との関連性>
12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
<KPI(指標と目標)>
健康食品事業部の歩留まり率を現状の水準(97%)で維持する
<インパクトの内容>
丸一化成は、ソフト・ハードカプセルやフィルムの製造に伴う廃棄物の排出量の削減にも注力している。食品事業部では、毎月開催される会議において3カ月に1度、原材料の管理について議論しており、賞味期限を考慮したタイミングで仕入れるなど無駄に廃棄することがないよう工夫を凝らしている。それでも賞味期限が近付いた原材料はサンプルや試作品、従業員への配付用に製造することで廃棄量を削減している。ソフトカプセルの被膜になるゼラチンは、さまざまな原液が付着することから再利用が非常に困難だが、家畜の飼料などに活用できないかゼラチンメーカーと検討しており、さらなる廃棄物の削減が期待される。また、原液の原材料として魚の皮や骨、大豆の搾りかすなどから DHE やカルシウム、ビタミンなどを抽出することで、従来廃棄される部位の有効活用にも貢献している。
フィルム事業では、フィルムを製造する過程で必ず端材が発生してしまうが、再生しリサイクル品として、バージン材で製造したフィルムよりも低い価格で販売し廃棄量を削減している。PVC(ポリ塩化ビニル)以外に環境負荷のより小さいPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)などのP O系(ポリオレフィン系)商材にも力を入れている。また、再生原料の積極的利用にも取り組んでいる。
化成品事業においても、紙ストローや紙コップにコーティングすると高い耐水性・耐油性を得られ脱プラスチックが図れる製品を取り扱うなど、持続可能性の高い商材で取引先に貢献している。
そのほか、GMP や ISO9001、ISO22000 に沿った製造工程、検査体制を徹底し製品ロスを削減することで、フィルム事業での歩留まり率は 80%ほど、健康食品事業においては 97%ほどと非常に高い水準を維持し、廃棄物の排出を抑制している。ごみの分別も徹底しており、製紙業が地元基幹産業ということもあり、特に紙の再生には注力している。持続可能な森林利用に貢献するた
めに、国際的な森林認証である FSC や PEFC 認証を取得している製品の積極的な使用にも取り組んでいる。
このように、丸一化成は適切な在庫管理や端材の再利用、製品ロスの削減などに取り組むことで、資源の有効活用や廃棄物の削減に貢献している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「資源効率・資源安全確保」、「廃棄物」に該当する。
静岡銀行は、丸一化成の資源の有効活用度合いを定量的に確認するために、健康食品事業における歩留まり率をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>気候変動
<SDGs との関連性>
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
2025 年までに、CO2 排出量の測定を開始し、CO2 排出量削減目標を策定する
<インパクトの内容>
丸一化成は気候変動対策として、事業活動によって排出される CO2 の削減に取り組んでいる。営業活動時や運搬作業時はエコドライブ、アイドリングストップを徹底しており、事務所においても適切なエアコン温度の設定、使用していない照明のこまめな消灯を行うなど、従業員がxxとなって活動している。製造現場でも製造効率の改善などを通して使用電力の削減に貢献している。
設備面では、照明の LED 化に取り組んでおり、本社は 100%、富士工場のxxも 100%切り替え済みであり、フィルム工場も LED 化率 100%となるよう工事中である。そのほか、営業車や配送用バン、トラックを合計した 18 台の車両をすべてハイブリッドカーもしくは低燃費車に切り替えることで、使用燃料の削減に努めている。
このように丸一化成は使用燃料や電力の削減、環境に配慮した設備の導入により、事業活動に伴う CO2 排出量を抑制している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「気候変動」に該当す る。
静岡銀行は、丸一化成の気候変動対策の取組みを確認するために、CO2 排出量の削減計画をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>食料、健康と衛生
<SDGs との関連性>
2.2 5 歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを 2025 年までに達成するなど、2030 年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
<KPI(指標と目標)>
優れた品質保証体制を継続し、日本健康・栄養食品協会の健康食品 GMP 認証および ISO22000 認証を維持する
<インパクトの内容>
丸一化成が営む健康食品事業は、人々の栄養ニーズを満たす一方、品質に問題がある場合は摂取した人に健康被害を及ぼす可能性を内包している。同社では、そのようなリスクを無くすために、製造しているソフト・ハードカプセル型サプリメントの品質管理に万全の体制を敷いている。
製造工程のうち、原料受け入れ時には各種原料ごとに定められた微生物試験(細菌数を測定し原料の汚染度を検査する試験)や酸化・過酸化物価試験(原料の油の変質・劣化の度合いを測定する試験)などを行い、ソフト・ハードカプセル成型後はベテラン検査員による全数選別検査が行われ異形状・異物・キズなどの不良球を除去している。その後、金属探知機による検査を経 て、出荷前に製剤試験(カプセルの大きさ、内容量などの測定をする試験)や崩壊試験(カプセルが規定時間内に崩壊するか測定する試験)、栄養分析などのバルク製品検査を行い出荷される。異物混入にも細心の注意を払っており、金属探知機や外観検査だけでなく、異物が混入して大きくなったカプセルを取り除くための篩掛けも行うことで対策している。同社は、このようなxxもの試験を徹底的に繰り返すことで高い水準で品質を維持している。
もちろん、製造工程に携わる従業員の能力も品質に関わってくるため、作業ごとに細かく訓練を施しており訓練を実施する度に教育・訓練実施記録を作成・保管している。全数選別検査を行う検査員においては、目視選別の能力評価を年3回実施し、不良球をすべて取り除けるか確認するなど選別能力の維持・向上に努めている。
丸一化成では、常に安心・安全な健康食品を提供するために、このような品質検査体制を体系化し、ソフト・ハードカプセルの製造・包装工程を対象範囲とした日本健康・栄養食品協会の健康食品 GMP 工場認定および ISO22000 認証を取得した。
GMP とは Good Manufacturing Practice の略であり、原料の受入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において、適正な製造管理と品質管理を求める適正製造規範である。日本健康・栄養食品協会は健康食品 GMP 認証機関として第1号指定を受けた健康食品・栄養食品関連の業界団体である。
<GMP の三原則>
・製造工程での人為的な誤りを防止します
・製品の汚染及び品質低下の防止に努めます
・個々の製品に係る品質の均質化を図ります
ISO22000 は食品安全マネジメントシステムに関する国際規格であり、リスクの大きい工程を重点的・継続的に監視・記録する工程管理手法である HACCP と品質マネジメントシステムに関する国際規格である ISO9001 の2つを基に食品安全のリスクを低減し、安全なフードサプライチェーンの展開を実現するものである。
<ISO22000 と ISO9001 と HACCP との関係>
このように、丸一化成の徹底した品質管理体制は健康食品事業の高い水準での品質の安定に貢献し、同社製品を摂取する人の健康被害リスクなどの低減に資する。これらの取組みは、インパクトレーダーの「食料」、「健康と衛生」に該当する。
静岡銀行は、丸一化成の優れた品質管理体制が維持されていることを確認するために、日本健康・栄養食品協会の健康食品 GMP 認証および ISO22000 認証の維持をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>健康と衛生、雇用
<SDGs との関連性>
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)>
労働災害対策を継続し、毎年の発生件数を2件に留める
<インパクトの内容>
丸一化成は、従業員が快適に安心して働けるよう、労働環境の整備に力を入れている。
全従業員が安心して働ける職場作りとしては安全性を高める取組みが挙げられる。安全衛生委員会を設置し、産業医を交えた会議を毎月開催している。台車の車輪の破損や原料搬入時の床の汚れなどといった工場巡回で発見した危険性について話し合い、今後の具体的な対策を検討している。業務災害や通勤災害、インフルエンザや感染性胃腸炎などといった感染症についても対象者の人数や対応策などを確認・検討している。そのほか、危険箇所の事前抽出・柵の設置や安全装備の着用徹底、交通事故防止の呼びかけなどを行い、労働災害のない安全な職場を醸成している。
このように、丸一化成の労働災害対策は安心安全な労働環境の醸成に貢献している。これらの取組みは、インパクトレーダーの「健康と衛生」、「雇用」に該当する。
静岡銀行は、丸一化成の安心安全な職場の醸成度合いを定量的に確認するために、労働災害発生件数をモニタリングしていく方針である。
4. 地域課題との関連性
丸一化成は、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、2030 年の売上高を 100 億円に、従業員数を 200 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この目標を達成することによって、丸一化成は、静岡県経済全体に年間 143 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
【地元産業への貢献】
丸一化成が所在する沼津市を含む静岡県東部地域は、富士山由来の豊かな水資源を背景に製紙業や化粧品製造業などの良質な水を必要とする産業が発展してきた歴史がある。現在では、大手メーカーや OEM 企業などが多数拠点を構え、静岡県のパルプ・紙・紙加工品製造業製造品出荷額は 8,709 億円と全国1位、化粧品生産額も 1,298 億円と全国5位の規模を誇りxx集積地となっている。
<パルプ・紙・紙加工品製造業製造品出荷額> <化粧品生産額>
順位 | 都道府県 | 製造品出荷額 (億円) | シェア (%) |
1位 | 静岡県 | 8,709 | 11.3 |
2位 | 愛媛県 | 5,702 | 7.4 |
3位 | 埼玉県 | 5,042 | 6.6 |
4位 | 愛知県 | 4,530 | 5.9 |
5位 | 北海道 | 3,874 | 5.0 |
全国計 | 76,879 |
順位 | 都道府県 | 生産額 (億円) | シェア (%) |
1位 | 滋賀県 | 2,061 | 14.8 |
2位 | 愛知県 | 1,754 | 12.6 |
3位 | 埼玉県 | 1,741 | 12.5 |
4位 | 神奈川県 | 1,467 | 10.5 |
5位 | 静岡県 | 1,298 | 9.3 |
全国計 | 13,937 |
資料:経済産業省「2020年 工業統計調査(2019年実績)」 資料:経済産業省「2020年 生産動態統計年報(化学工業編)」
このような中、丸一化成は静岡県東部地域の事業者へ原料となる化成品や工業薬品を卸すことで地元産業を支えている。特に、製紙業界向けには抄紙から排水、紙加工など各工程に必要な薬剤を幅広く取りそろえ、丁寧かつ迅速に届ける体制を整えることで円滑な事業の運営に貢献している。
【沼津市総合計画への貢献】
沼津市は、「人・まち・自然が調和し、躍動するまち ~誇り高い沼津を目指して~」を目指す将来都市像と掲げ、2021 年度から 2030 年度までの 10 年間のまちづくり方針「第5次沼津市総合計画」を策定した。この計画の中で、まちづくりの方向性とまちづくりの基本理念、まちづくりの柱を定め、沼津市が目指す将来都市像の実現に向けて施策を推進している。
<まちづくりの方向性と基本理念、柱>
資料:沼津市「第5次沼津市総合計画(概要版)」
丸一化成は、多様な栄養ニーズに応える健康食品事業や環境保全活動、女性の活躍推進に取り組んでおり、このような活動は第5次沼津市総合計画のまちづくりの柱1や3、6,8など多くの施策に貢献している。
5. マネジメント体制
丸一化成では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xx社長が陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者に、xx常務を実行責任者として、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。
最高責任者 | 代表取締役 xxxx |
xx責任者 | 常務取締役 xxxx |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と丸一化成の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行と丸一化成が協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する丸一化成から供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
研究部 研究員 xx xx
x000-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x TEL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 3 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 丸一化成株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が丸一化成株式会社(「丸一化成」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、丸一化成の持ちうるインパクトを、UEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、丸一化成がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である丸一化成から貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で
対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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