大手運送会社に運送業務を委託する場合など、農場が委託先と直接契約を交わすことが困難な場合、Web 上などから約款等を入手し、内容を確認した上で保管しておきましょう。
美味しまね通信
令 和 5 年 2 月 2 2 日 発 行
島 根 県 産 地 支 援 課
外部委託先の管理について(契約編)【GAP技術情報】
美味しまねゴールド生産工程管理基準 1.6.1 より抜粋
農場と外部委託先との間で交わされた契約文書は下記の内容が含まれている。
① 農場の経営者名、住所及び連絡先
② 外部委託先の名称、所在地、連絡先及び代表者名
③ 外部委託する業務(工程)及びその業務(工程)に関する食品安全のルール
④ 上記③について農場が定めたルールに従うことの合意
⑤ 契約違反の場合の措置に関する合意
⑥ 外部から審査を受ける可能性があること及び不適合がある場合には、是正処置を求める可能性があることについての合意
なお、農場と外部委託先が契約文書を交わせない場合には、外部委託先が公開・提示
している文書(約款等)を農場が確認することで契約文書として代替することができる。
農産物の生産工程(作物の栽培工程、収穫工程及び農産物取扱い工程までの一連の作業活動)に直接関わる作業を外部の事業者に委託することを‘外部委託’と呼びます。
外部委託する場合は、委託先が農場の定めた食品安全のルールを遵守できる能力を有しているか評価し、実際に遵守していることを点検・確認することを委託先に合意してもらうことが重要です。
外部委託する工程は【播種、育苗、防除、施肥、収穫、乾燥・調製、運送】などがあります。運送に関する契約文書の例を次ページに示しています。適合基準の①~⑥に該当する箇所に
囲いをしていますので参考にしてください。
大手運送会社に運送業務を委託する場合など、農場が委託先と直接契約を交わすことが困難な場合、Web 上などから約款等を入手し、内容を確認した上で保管しておきましょう。
※約款とは…
事業者が多くの人と契約するために、あらかじめ定型的に作った条項の集まり宅急便を利用する際の運送約款、保険の契約をする際の保険約款などがある
【農薬散布を委託する場合の契約書例】
生産工程管理の実施に関する契約書
〇〇農園株式会社(以下、甲という)と、△△(以下、乙という)とは、委託業務にかかる生産工程管理の実施に関し、次の通り契約を締結する。
(契約の目的)
第1条 甲は、安全で美味しい島根の県産品認証制度実施要綱(以下、「美味しまね認証制度実施要綱」という。)に基づく生産工程管理基準に従い、食品安全・地球環境等に配慮した農業経営を実施する。その中にあって、甲が乙に委託する業務についても、生産工程管理基準に基づき管理さ
れた状態であることが必要となるため、本契約を締結する。 ③ ④
(委託業務)
第2条 甲が乙に外部委託する業務は、次のとおりとする。
1)無人航空機によるxx農薬散布
(指導内容の遵守)
第3条 甲は、乙が遵守すべき事項を別紙「外部委託先へのお願い」に定める。乙は、これを遵守する。
(点検・審査)
第4条 甲は、前条の状況について、毎年 1 回以上、乙に対して点検を実施することができる。
2 島根県からの要求がある場合、島根県は乙に対して美味しまね認証制度実施要綱に基づく審査を実施することができる。
(改善要求及び制裁措置)
第5条 甲は、業務中に乙が第 3 条を履行できないことを発見した場合又は前条に定める点検・審査で不適合を発見した場合、乙に改善を求めることができる。
2 乙が改善要求に従わない場合、甲は乙に対して制裁措置(取引の一時停止・取引停止)をとることができる。
(協議) ⑤ ⑥
第6条 本契約の変更及び本契約に定めがない事項については、甲乙協議の上、解決にあたる。本契約締結の証として、本書 2 通を作成し、甲乙記名押印の上、各 1 通を保有する。
甲 組織名:〇〇農園株式会社
住所 :〇〇県**********代表者:代表取締役 〇〇〇〇
連絡先:電話********
乙 組織名:△△
住所 :△△県********代表者:△△△△
連絡先:電話*******
令和 5 年〇〇月〇〇日
① ②
【③の食品安全のルールに関する委託先へのお願い文書例】
2023.**.**
△△ 殿
〇〇農園株式会社
代表取締役
〇〇〇〇
外部委託先へのお願い
「委託業務にかかる生産工程管理にかかる契約書」に基づき、以下の点の遵守をお願いいたします。
1.実施日の連絡及び報告
(1)実施予定日については決定後速やかに連絡し、周辺住民に周知を行ってください。
(2)実施後は速やかに報告してください。
2.防除機の安全・衛生管理
(1)事前に点検を行ってください。
(2)散布後の散布容器の洗浄を十分に行い、容器に薬液が残っていないことを確認してください。
3.作業者の衛生管理
(1)防除衣、ヘルメット、手袋、ゴーグル等の防護装備を着用してください。
(2)喫煙や休息等は、ほ場以外で行い、吸い殻等のゴミは持ち帰ってください。
4.作業時の注意点
(1)「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」を遵守してください。
(2)散布計画に基づく希釈倍率、散布量を遵守してください。
(3)散布薬剤の調整はほ場外の平坦な場所で行ってください。
(4)風向き等に注意し、ほ場外のドリフトに注意してください。
(5)農薬の空き容器は、ほ場などに放置せず、適切に処理してください。
(6)誤って違う農薬等を散布した場合は、速やかに当法人の指示を仰いでください。
5.問題があった場合の処置
何か問題があった場合には、下記に必ず連絡を入れて指示を仰いでください。
6.業務を 2 次委託する場合の管理
貴社が他の事業者に 2 次委託する場合も、上記の1~5が遵守できるように指導の徹底をお願いします。
<連絡先>
○○農園株式会社 担当 ○○○○電話*******
委託先の行う業務が適合基準を満たすよう、委託先の遵守事項を定めます。契約書第4条第1項に基づき、お願いの内容が遵守されているかどうか
年に1回以上点検しましょう(生産工程管理基準 1.6.2 参照)
<外部委託に関するQ&A>
Q.他者が育苗した苗を購入した場合、育苗作業を外部委託と整理するのでしょうか。
A.育苗された苗を購入すること自体は外部委託にはあたりません。ただし、農場で種子を調達し、他者に育苗をお願いする場合は外部委託に該当するため、契約書の作成が必要です。
Q.米の乾燥調製を外部委託する場合、特に気を付けることはありますか。
A.委託先が様々な農場の米、多様な品種を乾燥調製している場合、自分の農場以外の米や別品種の米が商品に混入する恐れがあります。委託先との間で混入防止対策を検討し、委託先が遵守すべき事項(外部委託先へのお願い)に盛り込むようにしてください。
Q.農産物をECサイトで販売している生産者の輸送について、ECサイト側が契約している 運送会社を活用している場合でも外部委託契約が必要ですか。
A.ECサイトが指定した運送業者を活用しており、農場が運送業者側と直接契約を結ぶことがない場合は、運送会社への持ち込みまでが農産物取扱い工程となるため、外部委託には該当しません。
Q.シルバー人材センターから派遣されている作業者に野菜苗の定植を実施してもらっている 場合は外部委託にあたりますか。
A.シルバー人材センターの提供する業務形態には①労働者の派遣、②請負・委任契約による業務遂行があります。
①の場合、シルバー人材センターと農場の間で「労働者派遣契約」を結んだ上で、派遣された労働者は農場の指揮命令下で定植作業を行います。
②の場合、シルバー人材センターと農場の間で「請負契約」等を結んだ上で定植作業を実施します。作業者は自らの裁量で作業を行い、農場が作業者に対して指揮命令を行うことはできません。この時、請負契約の中でどのように定植するのか明確にしており、シルバー人材センター側が責任を負うことになります。
この考えに基づき、②の場合のみ外部委託に該当することになります。
Q.外部委託に該当しない作業にはどのようなものがあるのでしょうか。
A.例えば、燃料の納入業者に在庫量、施設、器具の管理をお願いしている場合、燃料は生産工程に直接関わる作業ではないため、外部委託には該当しません。その他、残留農薬検査、設備点検、基盤整備、経理業務等も同様の理由で外部委託にはあたりません。また、団体認証において、団体に所属する農場間の作業支援も外部委託とはなりません。
その他、外部委託に該当するか判断にお困りの場合、下記までお問い合わせください。
島根県農林水産部 産地支援課
美味しまね・GAPスタッフ(xx駐在) TEL:0000-00-0000
E-Mail:xxxxxxxxx@xxxx.xxxxxxx.xx.xx
★美味しまね認証 HP xxxx://xxx.xxxxxxxxx.xxx