Contract
1 本時の学習目標
2-1
多様な契約
~保証人・連帯保証人と不実告知を例に~
教 師 用
•契約行為にともなう権利と責任について理解する。
•契約に関する留意点について様々な視点から考察し、判断し表現する。
•契約に関して興味を持ち、課題を主体的に解決しようとする。
2 評価規準
(知識・技能)
•契約行為にともなう権利と責任について理解している。
(思考・判断・表現)
•契約に関する留意点について様々な視点から考察し、判断し表現している。
(主体的に学習に取り組む態度)
5
20
導入 分
展開① 分
•契約に関して興味を持ち、課題を主体的に解決しようとしている。
3 本時の流れ
学習内容 | 主な教師・生徒の活動 | 指導上の留意点 | 資料 |
契約に関わる未xx者と成人の違い | 【発問】 ◯権利や義務、契約などに関わって17歳(未xx者)と18歳(成人)の違いは何か。¹ ◯〇×問題(18歳成人でできること)を出題する。² 【説明・解説】 ◯18歳(成人)になると、親の同意を得なくても様々な契約ができることを説明する。 【発問】 ◯未xx者は不動産(土地)の売買を行うことができるか。 | ○中学校社会科、技術・家庭科( 家庭分野)、高等学校の家庭科で学習した契約に関する復習として確認する。 ○口約束でも契約が成立することを確認する。 ○不動産の売買契約は未xx者でも行うことができるが、親権者が同意する必要がある。なお、住宅ローンを組んで購入する場合は、金融機関の審査にパスすることが要件となることに留意する。 | ¹ |
ワークシート Q1 | |||
² | |||
ワークシート Q2 | |||
事例検討① 家賃の支払い ( 保証人と連帯保証人) | 【事例検討①】³ ◯家賃を払えなくなりそうになったため、連帯保証人に対して家賃が請求された事例について考えてみよう。 【説明・解説】 ◯保証人と連帯保証人について説明する。⁴ | ○法律(民法)を学ぶ授業ではないので、条文や用語を暗記する必要はない。 ○保証人と連帯保証人の違いを理解させ、契約時の注意点を理解させたい。 ◯契約自由の原則について確認する。 | ³ 参考資料1 5 ⁴ |
ワークシート Q3 | |||
事例検討②購入契約をした中古自動車 | 【事例検討②】⁵ ◯事故車でないと言われて中古車を購入したが、すぐに車の調子が悪くなった。調べてもらったら事故車であった。この契約は有効か。⁶ 【グループワーク】 個人の考えをまとめてから、小グループで結論と理由を話し合う。⁷ 【個人ワーク】 グループで話し合ったことを基に自分の考えをまとめる。⁸ | ○民法と消費者契約法に触れるが深入りはしない。 ○自動車は訪問販売の適用対象から除外されているので、クーリング・オフの適用はないことを説明する。 ○消費者契約法、不実告知について触れる。次の用語について説明してもよい。 •公序良俗 •錯誤 •詐欺 •強迫 •所有権絶対の原則 | ⁵ 参考資料2 5 ⁶ |
ワークシート Q4 | |||
⁷ | |||
ワークシート Q5 | |||
⁸ | |||
ワークシート Q6 | |||
本時のまとめ | 【説明・解説】 契約において重要なことや、18歳(成人)になったら契約に関して気を付けたいことについてまとめる。⁹・¹⁰ | ○契約に関する相談ごとが生じたら消費者ホットライン188(いやや)に電話すると最寄りの消費生活センターにつながることを伝える。 ○契約における権利と責任に留意する。 | ⁹・¹⁰ |
ワークシート Q7、8 | |||
4 生徒用ワークシートの解答・解答例
20
5
展開② 分
まとめ 分
Q1 〔解答例〕
選挙権の有無、親の同意がなくても自分で自分名義の契約を結ぶことができる、他。 Q2 1 【 〇 】
2 【 〇 】(クレジットカード会社が許諾すれば)
3 【 × 】
4 【 × 】
5 【 〇 】
Q3 保証人と連帯保証人は、主債務者(お金を借りた人)が返済できなくなった場合、代わりに返済する義務を負うということは同じである。
①お金を貸した人は、借りた人ではなく、いきなり連帯保証人に返済を請求することができる。
②お金を貸した人は、お金を借りた人が、お金があるにもかかわらず返済を拒否した場合は、連帯保証人に請求することができる。
③連帯保証人が複数の場合でも、お金を貸した人は特定の連帯保証人に対して全額の返済を請求することができる。
*連帯保証人になるときは、自分が全額返済してもよいという覚悟が必要である。
Q4 Aさんは消費者契約法の不実告知に基づき、この中古車の売買契約を取り消すことができると考えられる。
Q5 生徒の自由記述 Q6 〔解答例〕
・消費者は、販売店の店員から提供された「事故車ではない」という情報を信じるしかないため、契約をするときは不利である。
・消費者は、中古車の情報について正しい情報を得ることが難しいため、試乗するなどしてよく確かめることが重要である。
・消費者が騙されないように注意することが大切であるが、どのように対策すればよいのかわからない。
・消費者もしっかりと知識を身に付けないといけないと思う。
・将来、自分が売る立場(事業者側)になったらお客さんには正しい情報・質の高い情報を提供しなければならないと思った。
Q7 〔解答例〕
本当に必要なものなのかどうかをよく考える。緊急を要する場合以外は即断即決をできるだけ避ける。契約書をよく読む。口約束でも契約が成立する(売買契約、賃貸借契約、交換契約など)ので注意する。
Q8 〔解答例〕
親の同意を得なくても自分で契約ができるようになるが、未xx者取消権は行使できなくなるので、契約に対して自分自身が責任を負うことになること。
5 参考資料・用語集
資料1
【事例①:家賃の支払い(保証人と連帯保証人)】
X県の高校を卒業して東京都内の会社に通うことになったAさん。X県は地方にあるので都内の会社に通勤するため会社近くのアパートを借りることにしました。その後、都合により転職したことにより、収入が大幅に減ってしまい、家賃の支払いが苦しくなり始めました。そんな状況をxxさんが知ったのか、家賃の支払いをAさんではなく「連帯保証人」のCさんに請求したのです。実は、契約の時にxxさんから「保証人」と「連帯保証人」を付けて欲しいと言われたので、中学校時代からの親友であるBさんに「保証人」、Cさんに「連帯保証人」をお願いしていました。
自分はまだ家賃を支払える余力があるだけに、Cさんに申し訳ない気持ちです。Cさんは家賃の支払いを拒むことができるのでしょうか。あなたはこの状況をどのように考えますか。契約する時にはどのようなことに気を付けなければならないでしょうか。
【事例①の解説】
〈解答〉
この場合は、連帯保証人であるCさんはxxさんからの請求額(家賃分)を支払わなければならない。
契約する時は、支払い義務は誰にあるのか、万が一の時はどうなるのかに関する項目をよく読むことが重要です。
〈理由〉
保証契約とは、債務者が債務の支払いをしない場合に、これに代わって支払いをする義務を負うことを約束する契約です。本事例のような住居の賃貸借契約のほか、金銭消費貸借契約
(借金する契約)でも保証人が付されることがあります。保証人になることはリスクの高い行為ですので、xxに友人に頼んだり、友人に頼まれたからと言って引き受けたりすべきではありません。
特に、「連帯保証」の場合は、単純な保証よりもさらに注意が必要となります。単純な保証人は、債権者から支払いを求められた場合、「まずは借りた本人に請求してください」、「借りた本人に返済能力があるので、本人の財産から回収してください」、「他の保証人と頭数で割った金額だけ支払います」などと主張することなどができますが、連帯保証人は、これらの主張をすることができません。連帯保証人になるということは、非常に責任の重い行為ですので、特に注意が必要です。
以上から、本事例の場合、Aさんにはまだ支払いの余力がありますが、Cさんはxxの家賃の支払請求を拒むことができず、これに応じる必要があります。Bさんという保証人もいますが、
「Bさんがいるから、自分は半額だけでいいでしょう」と主張することもできません。
資料2
【事例②:購入契約をした中古自動車】
Axxは、就職を機に自動車を購入することにしました。まだ就職して間もないし、事故が心配なこともあり新車ではなく中古車を購入することにしました。X中古車販売店で気に入った車の購入契約をしました。お店の看板には「我が社が扱う中古車に事故車はありません。」と宣伝文句があり、営業担当者からもそのような説明がありました。
Aさんは安心して中古車を購入しました。しかし、1週間も経たないうちにどうもエンジンの調子が悪くなりました。知り合いの自動車整備士に調べてもらったところ事故車であることが分かりました。AさんはX中古車販売店との中古車売買契約を取り消すことができるでしょうか。
【事例②の解説】
〈解答〉
Aさんは消費者契約法の不実告知のルールに基づき、この中古車の売買契約を取り消すことができる可能性があります。
〈理由〉
消費者が事業者と契約をするとき、両者の間には持っている情報の質・量や交渉力に格差があります。売る側はその商品のことをよく知っているが、買う側は商品の状態をよく知らないことを「情報の非対称性」といいます。このような状況にある消費者を守るため、日本には消費者契約法という法律があります。消費者契約法は、事業者と消費者の間で結ぶ契約について、不当な勧誘による契約を取り消しできることや、不当な契約条項が無効になること等を規定しています。
では、本事例の契約について、消費者契約法の規定に基づき取り消すことはできるでしょうか。消費者契約法は、事業者が「勧誘をするに際し」、「重要事項について事実と異なることを告げ」、消費者が「当該告げられた内容が事実であるとの誤認」をした結果、契約の申込み・承諾の意思表示をしたとき、消費者は、その契約を取り消すことができると規定しています(消費者契約法4条1項1号)。この類型は、一般的に「不実告知」と呼ばれています。
本事例の場合、Aさんは「我が社が扱う中古車に事故車はありません。」と言った営業担当者を信じて本当は事故車の中古車を購入していますので、“事業者が「勧誘をするに際し」、「重要事項について事実と異なることを告げ」、消費者が「当該告げられた内容が事実であるとの誤認」をした結果、契約の申込み・承諾の意思表示をした”といえそうです。
なお、消費者契約法の「不実告知」には、故意(事実と異なることを知っていること)が要件にはなっていません。業者がAさんをだましてやろうと思って嘘の説明をしていなかった(業者自身が事故車であると知らなかった)場合でも、結果的に重要事項について事実と異なる説明をされた場合は契約の取消しが認められています。
一般の消費者は中古車の状態をよく知ることができません。中古車のように、実際に購入してみないと品質を知ることができない財が取引される市場は、悪質な財(レモン)ばかりが流通するようになるためレモン市場といわれます。レモンとはアメリカの俗語で質の悪い中古車を意味する言葉です。
【法律用語解説】
契約自由の原則
契約は、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則のこと。民法に直接の規定はないが、第90条(公序良俗違反の法律行為の無効)や第91条(任意規定と異なる意思表示)などがその根拠となっている。契約自由の原則は以下4つに分類される。
(1) | 締結自由の原則 | 契約を結ぶかどうかを当事者が自分自身で決定することができること。 |
(2) | 相手方自由の原則 | 契約の相手方を誰にするかという意思決定の自由のこと。 |
(3) | 内容自由の原則 | 契約の中身に何を盛り込むかは自由ということ。売買なら、商品、金額や支払い方法、納品時期などについて当事者間で自由に決定できること。 |
(4) | 方法自由の原則 | 原則として、どのような方式で契約を結ぶか(例えば、書面を作るか、口頭ですませるか)を当事者が自由に決定できること。 |
公序良俗(xxxょりょうぞく)
公共の秩序を守るための常識的な観念のことをいいます。この公序良俗に違反する行為は無効になります(民法第90条)。
公序良俗に関しては、①財産秩序に反するもの、②倫理的秩序に反するもの、③自由・人権を侵害するもの、の3つに分類されることが多いです。
その中でも、③の自由・人権に関することでは「男性の定年年齢を60歳、女性の定年年齢を55歳と規定する就業規則」があります。企業におけるこのような規定を無効と判断した判例があります(最高裁昭和56年判決 日産自動車事件)。
1985年に制定された男女雇用機会均等法が男女別定年制の禁止を定めたことで、現在は男女別定年制について、(公序良俗の観点からの)法解釈の問題は生じなくなりました。
錯誤(さくご)
錯誤とは、意思表示した者の内心の意思と表示行為とが食い違っていることを表意者自身が知らない
(気づいていない)ことです。錯誤には「表示上の錯誤」「内容の錯誤」「動機の錯誤」などと呼ばれる種類がありますが、ここでは「表示上の錯誤」のみ説明します。「表示上の錯誤」とは、言い間違いや書き間違いなどであり、例えば、契約書に10万円と書かなければならないところを10円と書いてしまったというような場合です。うっかりミスには気をつけなければなりません。
詐欺(さぎ)
刑法上の詐欺と民法上の詐欺があります。刑法上の詐欺は、人を欺して金品を奪い取ることをいいます(刑法246条1、2項 詐欺罪)。
民法上の詐欺は、相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(民法96条)とされています。
強迫(きょうはく)
他人に恐怖心を生じさせ、その恐怖によって意思を決定、表示させること。強迫による意思表示は、取り消すことができます。(民法96条1項)
所有権絶対の原則
所有権者は、その所有物を自由に使用・収益・処分することができ、これを侵害する者に対しては、その侵害を排除することができるという原則です。例えば、土地の所有者は、その土地を許可なく占拠する者に対し、出ていくように請求する権利を有しているわけです。しかし、所有権絶対の原則ではあっても、自分の所有地だからといって、他の人や公共の利益を不当に害するような利用や権利行使は認められません。有名な判決に「宇奈月温泉事件」がxxxx(昭和10年大審院判決)。
ワークシート
~多様な契約~
年 組 番 名前
Q1 権利や義務、契約など 関して17歳(未xx者)と18歳(成人)では、どのような点 違いがありますか。
Q2
18歳(成人) なったらできること ○、できないこと は×を付けましょう。
18歳成人になったらできることは? | 回答 |
① 1人(自分だけ)で自動車の購入契約を結ぶことができる | |
② 自分名義のクレジットカードを作成することができる | |
③ 勝ち馬投票券(馬券)を購入できる | |
④ タバコを吸うこととお酒を飲むことができる | |
⑤ 証券会社の口座を自分で開設することができる |
Q3 保証人と連帯保証人の違いとは何でしょうか。
Q4
下記の事例で中古車の売買契約を取り消すことができるのか考え、その理由も記述しましょう。
【事例】
Axxは、就職を機に自動車を購入することにしました。まだ就職して間もないし、事故が心配なこともあり新車ではなく中古車を購入することにしました。X中古車販売店で気に入った車の購入契約をしました。お店の看板には「我が社が扱う中古車に事故車はありません。」と宣伝文句があり、営業担当者からもそのような説明がありました。
Aさんは安心して中古車を購入しました。しかし、1週間も経たないうちにどうもエンジンの調子が悪くなりました。知り合いの自動車整備士に調べてもらったところ事故車であることが分かりました。AさんはX中古車販売店との中古車売買契約を取り消すことができるでしょうか。
取り消すことが( できる • できない )その理由は、
ワークシート
Q5 Q4 ついてグループで話し合われたことをまとめましょう。
Q6 グループでの話し合いを基 、自分の考えをまとめましょう。
Q7 契約 おいて重要なことは何か。賃貸借契約や売買契約で注意するべきことをまとめましょう。
Q8 18歳(成人) なったら、どのようなこと 気を付けていかなければいけないか考えましょう。