契約総説 P317~P320
民法(債・親・相) 第7 回
P317~P329
契約総説 P317~P320
1.契約の内容が履行不可能な場合
①原始的不能…契約成立前に既に履行不可能 債務者に帰責性あり 債務不履行による
損賠請求
②後発的不能…契約成立後に履行不可能 債務者に帰責性なし 危険負担制度
※債務者の帰責事由の有無にかかわらず債権者は解除可
2.契約の分類
(1)典型契約と非典型契約
典型契約 (有名契約) | 民法に規定する13 種類(贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、 請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解)の契約である。 |
非典型契約 (無名契約) | 民法に規定されていない契約である。例えばフランチャイズ契約等が該当する。 |
(2)双務契約と片務契約
双務契約 | 契約の各当事者が契約の効果として互いに対価的な意味を有する債務を負担する契 約(例:売買契約、賃貸借契約)。 |
片務契約 | 契約の一方当事者のみが債務を負うか(例:贈与契約)、または双方の当事者が債務 を負担するがそれが互いに対価的意義を有しない契約。 |
(3)有償契約と無償契約
有償契約 | 契約当事者が互いに対価的意義を有する出捐(経済的損失)をする契約。 (例:売買契約、賃貸借契約) |
無償契約 | 有償契約でない契約(例:贈与契約、使用貸借契約)。 |
(4)諾成契約と要物契約
諾成契約 | 当事者の意思表示の合致のみで成立する契約(例:売買契約、贈与契約、賃貸借契約)。 |
要物契約 | 当事者の合意のほかに、一方の当事者が物の引渡し、その他の給付をなすことを成 立要件とする契約(例:書面によらない消費貸借契約)。 |
契約の効力(双務契約の特則) P322~P324
《同時履行の抗弁権》
1.意義
同時履行の抗弁権とは、双務契約における当事者は、相手方の債務(自己の債権)の履行がなされるまでは自己の債務の履行を拒絶できる権利である。
例えば、AがB惣菜店でコロッケを買った場合に、BはAにコロッケの引渡しを請求されたときは、
「Aが代金を払ってくれるまではコロッケは引渡さない!」と拒絶することができる。
コロッケの売買契約
A(客)
B(店)
「コロッケ引渡せ!」
「代金払うまでxxx!」
(同時履行の抗弁権)
→Aの代金支払義務とBのコロッケ引渡義務は、同時履行の関係である
※留置権との違い
留置権(物権) | 同時履行の抗弁権 | |
内容 | 物の引渡拒絶 | 契約における債務の履行拒絶 |
対第三者への主張 | 誰に対しても主張できる | 契約の相手方にのみ主張できる |
2.成立要件
同時履行の抗弁権が認められるには、原則として、次の要件を満たす必要がある。
①同一の双務契約から生じた相対立する債務が存在すること
②債務がともに弁済期にあること
③相手方がその債務の履行を提供せずに自己の債務の履行を請求してきたこと
※ 履行の提供をしても、その提供が継続されない限り、相手方の同時履行の抗弁権は失われない。つまり、相手方の同時履行の抗弁権を奪うには、その都度自分が履行の提供をしなければならない。
3.効果
(1)自己の債務の期日が到来していても履行を拒絶でき、遅滞の責任を負わない。
(2)訴訟において、原告の請求に対し、被告が同時履行の抗弁権を主張したときは、引換給付判決がなされる。
例)A(買主)の商品引渡請求に対し、B(売主)が同時履行の抗弁権主張。Aが提訴(原告A、被告B)。
判決:「Aから代金を貰い、商品をAに引き渡しなさい!」とBに命ずる。
4.同時履行の抗弁権の適用範囲と判例
同時履行の抗弁権は原則として双務契約の当事者双方に認められるものであるが、双務契約が存在しなくても準用または類推適用される場合がある。
同時履行の抗弁権が認められるもの |
①契約の解除や取消しにおける双方の原状回復義務 |
②弁済受領証書(領収書)の交付と弁済 |
③不動産売買における売主の登記協力義務と買主の代金支払義務 |
④建物買取請求権を行使した場合の建物及び土地の明渡し義務と建物代金支払債務 |
④建物買取請求権を行使した場合の建物及び土地の明渡し義務と建物代金支払債務
②Bが建物築造
B所有
①土地賃貸借契約
土地賃借人B
A(土地所有者・賃貸人)
③土地賃貸借契約終了
④(土地返還時)建物買取請求
同時履行の抗弁権…土地・建物ともに抗弁可 ※留置権
建物…留置xxx 土地…留置権不成立
しかし、建物留置により土地も留置可
同時履行の抗弁権が認められないもの |
①債務の弁済と担保権消滅手続(抵当権登記の抹消手続など) |
②敷金返還債務と不動産明渡債務 |
③債務の弁済と債権者の債権証書(金銭消費貸借契約書など)の返還 |
④造作買取請求権を行使した場合の建物の引渡し義務と造作物の買取代金支払債務 |
④造作買取請求権を行使した場合の建物の引渡し義務と造作物の買取代金支払債務
①建物賃貸借契約
②エアコン設置
(造作)
賃借人B
A(所有者・賃貸人)
③賃貸借契約終了
④(建物返還時)造作買取請求
同時履行の抗弁権…建物につき抗弁不可
※留置権…建物につき留置権不成立
契約の解除 P325~P329
《契約の解除とは》
1.解除の意義
契約の解除とは、契約が締結された後に、その一方当事者の意思表示によってその契約がはじめから存在しなかったのと同様の効果を生じさせるものである(直接効果説)。
例)AB間の不動産売買契約において、Bが代金を支払わないためAが売買契約を解除
③契約解除
代金 未払い
①土地売買契約
(売主)A
B(買主)
②土地引渡済
土地
2.解除の種類
約定解除 | 当事者間の契約であらかじめ解除権を留保しておき、契約に基づく一定の事情の発生による解除 | |
合意解除 | 契約であらかじめ定められてないが、契約当事者の合意によりする解除 | |
法定解除 | 法律の規定に基づく解除 | (一般的な法定解除) 契約において一般的に認められる解除。債務不履行に基づく解除等 |
(特別な法定解除) 各契約で特に定められた解除。売買契約における買主の解除xx |
《解除権の行使》
契約の当事者の一方がxxある場合には契約の解除はその全員から、またはその全員に対してのみすることができる(解除権不可分の原則)。この場合において解除権が当事者の1人につき消滅したときは他の者についても消滅する。
A
A
B
D
D
解除
B
C C
解除
《解除の要件》
債務者が債務を履行しない場合の債権者の解除において、債権者は債務者の帰責事由の有無に関わらず契約を解除することができる。しかし、債務の不履行につき債権者に帰責事由がある場合は、債権者は解除できない。
1.催告による解除
債務の本旨に従った履行がない場合(履行遅滞)、債権者は相当期間を定めて催告し、その期間内に履行がなければ契約を解除することができる。
①履行遅滞 → ②相当期間定めた催告 → ③期間内に履行なし → ④解除
※期間を定めないで催告した場合でも客観的にみて相当期間が経過すれば解除できる
2.催告によらない解除
債務不履行により契約目的の達成が不可能になった場合、債権者は催告なしに契約を解除できる。
①履行不能のとき
③定期行為において履行遅滞が生じたとき
例)誕生日パーティー当日にバースデーケーキを届けてもらう予定が届けてもらえなかった
《解除の効果(545 条)》
1.具体的な効果(直接効果説から)
契約が解除された場合、その契約ははじめから存在しなかったものとして扱われ、債権・債務は消滅する(解除の遡及効)
(1)原状回復義務(返還義務)
金銭の返還 受領時からの利息も含める
金銭以外の物の返還 受領時以降に生じた果実の返還も含める
(2)損害賠償請求
契約を解除した場合でも、損害が生じている場合には損害賠償請求もできる
2.第三者保護規定
解除により第三者の権利を害することはできない
ここでいう「第三者」とは契約解除前に登場した第三者である(第三者の善意・悪意は問わない)
(解除前の第三者)
①売却
A
B
②売却
③契約解除
登記
C(解除前の第三者)
※「第三者」が保護されるためには登記(不動産取引の契約解除の場合)が必要である