Contract
2016年4月4日
堺市「有害図書類を青少年に見せない環境づくりに関する協定」に対する声明
一般社団法人 日 本 雑 誌 協 会 人 権 ・ 言 論 特 別 委 員 会一般社団法人 日本書籍出版協会 出版の自由と責任に関する委員会
私たちは、大阪府堺市が一部のコンビニエンスストアとの間で交わした、3月16日付「有害図書類を青少年に見せない環境づくりに関する協定」が図書類への過剰な規制につながるものと懸念し、堺市長宛に「公開質問状」(別掲)を送付しました。堺市長からは3月30日付で「公開質問状に対する回答」(別掲)を受け取りましたが、その内容は、懸念を払拭するものとはいえず、私たちは以下の理由から、堺市がこの協定を即刻解除することを求めます。
堺市長は、回答書で、図書類へのフィルム包装による目隠しカバーをはじめとした今回の取組は「府条例を逸脱するという問題は発生しない」「市民における『図書の選択の自由』を奪う結果とはならない」としています。
その理由として、「本取組は、双方の合意に基づく協定」であり、「公権力により全ての店舗に網羅的な規制を敷くものではない」ということを挙げています。しかし、回答書にあるように、この取組は、堺市が「資材提供等の形で協力・援助を行う」もので、図書類への目隠しカバー等の費用として、95万円もの公費を計上しています。この事実のみをもってしても、本件に公権力が関与していることは明らかです。したがって、私たちが指摘したように、今回の堺市のフィルム包装は、条例施行規則でいう「知事が認める方法」を逸脱した過剰な規制です。しかも、条例の「青少年に閲覧させない」という目的と、本協定の「表紙を見せない」こととは明確に異なり、成人に対する図書選択の自由を阻害するという私たちの見解は変わりません。
また、本協定では、フィルム包装の対象は、大阪府青少年健全育成条例第13条第1項の規定により指定を受けたもの及び同条第2項各号のいずれかに該当する「有害図書類」としています。しかし、公開質問状の包括指定に関する質問への回答では、堺市は「各出版社が、2点留め等の処置を施している雑誌」に対して「包装をお願いするもの」としています。「2点留め」の措置は出版社による自主規制によるものであり、「2点留め」を施している雑誌が必ずしも、府条例上の「有害図書類」に該当するものではありません。また、包括指定を含む「有害図書類」を誰がどのように決定するのか?という私たちの疑問も何ら解消されておらず不明確なままです。
さらに、本協定や市長の回答は、思慮分別の未熟な未xx者への配慮を目的とした青少年健全育成条例の「有害図書類」という概念を、充分な判断力を備えた成人女性に適用し、また、「性犯罪及び性暴力に対する市民意識の向上」につながるという次元の異なる問題に結びつけています。これこそ、市長が本件に関しツイッターで述べた「失当」であると考えます。
私たちは、堺市がすみやかに本協定を解除し、表現規制を伴わない思慮分別ある施策により、その「セーフシティ」化を実現されることを期待します。
以上