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債権を回収するためには
お金を貸すときに作成する契約書は?
債権も時効で消滅する?
継続して取引する際に留意すべき点は?
【民法改正対応】
つまこい法律事務所弁護士 xxxxx
【はじめに】
弁護士のxxxxxです。
これまで貸金、売買代金、請負代金等をめぐる紛争の代理人となってきましたが、トラブルを防止するには、取引先の資産や経営の状況を把握し、契約書を作成して、できれば担保を取っておくことが重要であると感じています。
とはいえ、特に中小企業の取引においては、不動産に抵当権を設定したり、商品や預金を担保に取ったりすることは困難であることが多いでしょう。このような「物的担保」が取れないときでも、債権を確実に回収するためにはどのような対策を講じておくべきか、債権回収に不安が生じた場合にはどのように対処したらよいのか、企業として迷ってしまうということがあるでしょう。
本パンフレットでは、民法改正に対応し、債権を確実に回収するための方法を10例挙げて簡潔に解説しました。ご高覧いただければ幸いです。
トラブルに対処するには、企業自身の判断だけで進めるのではなく、弁護士の助言を聞く、または弁護士を代理人に立てた方が、結局は解決に近道となる場合がありますので、お気軽にご相談ください。
もちろん紛争予防のため、契約書等のチェックも承ります。
事業者の法律相談料は、初回は1時間ごとに1万円(消費税は別途)です。
法律相談を希望される方は、電話または下記ホームページのフォームにてご予約ください。
つまこい法律事務所弁護士 xxxxx
TEL: 00-0000-0000 FAX: 00-0000-0000
電話受付 月曜日~金曜日 9:00~18:30 URL:xxxx://xxxxxxxxxxxx-xxxxxxxxxxx.xxx/
・ Q1: お金を貸すときに作成する契約書は?
付き合いのある業者から頼まれて、お金を貸すことはよくあります。知人といっても確実に弁済してもらえないと困ります。
金銭の貸し借りでトラブルになるのは、借用証書などの契約書を作成していないケースです。無用の金銭トラブルを避けるためには、借用証書を作成しておくことが重要です。ただし、改正後の民法では金銭の授受がなくても書面でする消費貸借契約が明文化されたので、契約書の作成は金銭の授受と同時である必要はありません。
借用証書の内容が法律で定められているわけではありませんが、契約日、貸し付けた金額、支払いの期限や方法、利息などを明記します。次ページに契約書のサンプルを紹介しましたので、参照してください。
分割払いであれば、支払の期限や分割金の額を明確にし、銀行振り込みの場合は振込手数料を借り主の負担とするなどを書いておくとよいでしょう。また、確実に分割払いをしてもらうために、2回以上支払いを怠ったときは残金を一括して支払うと
の「期限の利益喪失約款」を借用証書に入れてください。
また、支払いを怠った場合の遅延損害金の取り決めをすることもできます。合意がなくても、5~ 6%の遅延損害金を請求できます。こうした制裁条項を借用証書に入れておいた方が、相手方に心理的プレッシャーを与えられます。
さらに、確実に返済してもらうためには、連帯保証人を付けた方がよいでしょう。
代理人が署名押印をしても契約の効力が生ずるのですが、代理権の存在をめぐる紛争のおそれがあるので、なるべく本人に署名押印をしてもらった方がよいです。連帯保証人については、実印を押捺し、印鑑登録証明書を添付してもらいましょう。
費用はかかりますが、xx証書を作成しておくと、返済が滞った場合に訴訟を起こさなくても強制執行ができます(Q9)。借用証書やxx証書の作成、金銭トラブルなどの対応をしますので、借用証書や支払明細など資料をお持ちになって弁護士にご相談ください。
金銭消費貸借契約書
サンプル
を甲、 を乙、 を丙として、甲乙丙間にお
いて、次のとおり金銭消費貸借契約を締結した。
第1条(契約の成立)
甲は、乙に対し、金 円を貸し渡し、乙はこれを借り受けた。
第2条(利息)
甲及び乙は、前条の貸金の利息を元金に対する年 %の割合とすることを約
した。
第3条(弁済方法)
乙は、甲に対し、第1条の借受金を次のとおり分割して、甲の指定する銀行口座に振り込む方法で支払う。
年 月から 年 月まで毎月 日限り金 万円宛
第4条(期限の利益の喪失)
乙が前条の分割金の支払いを2回以上怠り、その額が 万円に達したときは当
然に期限の利益を喪失し、乙及び丙は、甲に対し、連帯して、前条の金員から既払額を控除した残額及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年 %の割合による遅延損害金を附加して直ちに支払う。
第5条(連帯保証人)
連帯保証人丙は、本契約に基づく乙の一切の債務について保証し、乙と連帯して履行の責を負うものとする。
Q2: 債務者が「期限の利益」を失うと?
Q1において、借用証書に「期限の利益喪失約款」を入れることを述べました。
「期限の利益」は、通常、債務の履行に期限が付けられており、債務者に履行の猶予を与えることになりますので、債務者の利益のために定めたものと推定されます。
ですから、期限の利益を有する債務者にその信用を失わせる事由が発生した場合には、債務者は期限の利益を主張することができなくなります。法律上、期限の利益の喪失事由について、①債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、②債務者が担保を滅失させ、損傷させ、または減少させたとき、③債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき、の3つが定められています。
しかし、民法は、債務者が債務の一部の履行を怠ったときを、期限の利益の喪失事由と規定していないので、2回以上支払いを怠ったときは残金を一括して支払うといった「期限の利益喪失約款」が必要となるのです。
また、その他の法的倒産手続開始(民事再生、会社更生、特別清算)、支払停止、強制執行、差し押さえ、滞納処分、担保権実行なども「期限の利益喪失約款」に入れておきましょう。
期限の利益を喪失すると、期限が到来し、債務者は債権者に対して直ちに弁済をしなければならなくなります。
その弁済を怠ると、債権者は、債務者に対し、債務不履行として契約の解除や損害賠償を請求することができますし、遅延損害金の請求をすることもできます。また、相殺(Q8)をすることができるようになります。
法律上、または約定により当然に期限の利益が喪失するといっても、内容証明郵便により支払いを催告した方がよいでしょう。
期限の利益の喪失により、債権者は権利行使ができるようになり、債権の消滅時効が進行することになります。契約書や支払明細などをお持ちになり、お早めに弁護士にご相談ください。
Q🡪 :継続して取引をするときに留意すべき点は?
売買契約においても、その内容に齟齬が生じないよう、契約書の作成は必要ですが、商品の引き渡しと売買代金の支払いが同時に行われるのであれば、契約書がなくても売掛金の回収に問題が生じないのが通常でしょう。
しかし、継続的な取引をするのであれば、納品してもその都度売買代金が支払われることがないのが通常ですので、継続取引基本契約書を作成しています。契約内容を特定する、売掛金を回収する、紛争を解決するなどの目的で継続取引基本契約書を作成しますが、債権回収を図るためには、Q1の借用証書と同様に、支払の期限、支払方法、期限の利益喪失約款、遅延損害金および連帯保証人を定めておきましょう。
支払の期限はなるべく短期間にしておくと残債権額が大きくなりません。また、取引限度額を設定しておけば、回収不能のリスクを抑えるこ
とができます。
また、個別の取引で継続取引基本契約とは別に売買契約書を作成することは少ないでしょうが、発注書、納品書、受領書、請求書、出荷依頼書といった書類を作成しておいた方がよいでしょう。
さらに、売掛金の回収を確実にするため、継続取引基本契約締結時に保証金を差し入れてもらう、信用不安が生じてくれば現金取引に切り替えることが考えられます。また、債権譲渡(Q7)を受ける、相殺(Q8)をすることも検討すべきです。
たまった売掛金を分割払いにするときは、借用証書と同様の契約書を作成することになります。
弁護士が契約書を作成することもできます。売掛金の回収のため裁判を検討しなければならないときは、契約書や発注書等の契約内容に関する資料、支払明細などをお持ちになり、お早めにご相談ください。
Q4 : 根保証とは何か?
知人の業者にお金を貸したり、取引先に商品を売ったりしたときに、貸金や売買代金を確実に回収するため、借り主や買い主に保証人を立ててもらうことがあります。
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います。保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含します。
同じ業者に、お金を頼まれたら貸し、さらに商品も継続して売る場合、逐一、保証人にサインをもらうことは手数や時間がかかるので、根保証をしてもらうことが考えられます。
根保証契約とは、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約をいいます。根保証のうち、個人の保証人が一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約を締結することは、長期間かつ多額の責任を負わせることになりかねないので、民法が個人根保証契約に制限を課しています。改正後の民法では、個人根保証契約の制限の対象は、貸金等債務や売掛金債
務、賃借人の債務など全ての主債務に関するものに拡大されました。ただし、保証人が法人である場合は根保証に制限は課されません。
まず金額についての制限を述べます。保証人は、主たる債務の元本・利息・違約金・損害賠償のほか、保証債務について約定した違約金・損害賠償の責任も負うのですが、その全部にかかる極度額を限度として、その履行する責任を負うとされています。しかも、極度額を書面で定めなければ、根保証契約の効力は生じません。次に保証期間についての制限です。
主たる債務の範囲に金銭の貸渡しまたは手形の割引を受けることによって負担する債務(貸金等債務)が含まれる個人根保証契約において、主たる債務の元本の確定すべき期日は、元本確定期日の定めがない場合は根保証契約の締結の日から3年を経過する日とし、元本確定期日が根保証契約締結日から5年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは無効とされ、3年を経過する日に短縮されます。元本確定期日の変更をする場合も制限があります。
さらに、改正後の民法では、主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる個人根保証契約を締結する場合は、その契約に先立ち、その締結の日前1か月以内に作成されたxx証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示しなければ、個人根保証契約の効力は生じません。なお、主たる債務者が法人である場合の取締役や過半数株主、共同個人事業主・事業専従者は保護の対象外です。
しかも、改正後の民法では、主たる債務の範囲に事業のために負担する債務(貸金等債務に限定されない) が含まれる個人根保証の委託をするとき、主債務者は、その委託を受ける者に対し、①財産・収支の状況、②主債務以外に負担している債務の有無やその額と履行状況、③主債務の担保として他に提供し、または提供
しようとするものがあるときは、その旨・内容といった情報を提供する義務を負います。主債務者が情報不提供や虚偽報告をした場合にこれを債権者が知り得たときには、個人根保証人は保証契約を取り消すことができます。なお、この制限は事業のために負担する債務を主債務とする個人保証の場合にも適用されます。
このように個人根保証契約は、保証人に都度サインをもらう必要がないなどの利便性がある一方、法律上の制限があるので、貸付や取引のたびに連帯保証人を個別に立ててもらう方がよいこともあるでしょう。
根保証を利用するのが適当か否かはxxx・xx・xxxであり、実情に応じた契約書を弁護士が作成することもできますので、ご相談ください。
Q5 :債権も時効で消滅する?
債権を回収するに当たって注意しなければならないのは、消滅時効です。消滅時効とは、債権者が債務者に対して請求をしないでいると、債権が存在し、まだその弁済がなされていなくても、債権が消滅するという制度です。
改正後の民法では、債権が時効により消滅する期間は、原則として権利を行使することができる時から10年間で、その間に債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間が経過すれば消滅時効が完成します。ただし、定期金債権、判決で確定した権利、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権、不法行為に基づく損害賠償請求権、労働債権の例外があります。
特に不確定期限付債権、条件付き債権、期限の定めのない債権については、債権者が権利を行使することができることを知った時がいつの時点かがxx的に明らかではなく、また、このことを知った時に、既に権利を行使することができる時から10年が目前に迫っていることがありますので、お早めに弁護士にご相談ください。
改正後の民法では、消滅時効の完成を阻止するため、時効を完成猶予させる必要があります。時効の完成猶予事由は、第1に裁判上の請求、支払督促、調停、破産手続参加・再生手続参加・更生手続参加、第2に強制執行、担保権実行、競売、財産開示手続です。これらの事由が終了した時から時効が更新され、新たに時効の進行が始まります。
更新がない時効の完成猶予事由としては、第1に仮差押え、仮処分、第 2に催告があります。仮差押えと仮処分の事由が終了した時から6か月を経過するまでの間は時効の完成が猶予されます。また、内容証明郵便で支払いの催告をすれば、6か月以内に裁判等を提起すれば時効の完成が猶予されます。
一方、承認とは、債務者が債権の存在を認識していることを表示することです。例えば、一部の弁済、利息の支払い、債務を承認する書面への署名押印などをすると、その時点から時効が更新され、新たに時効の進行が始まります。
ですから、消滅時効が完成しそうなときは、残債務額などを記載した
債務承認書を債務者から取得するか、それが無理であれば内容証明郵便で催告書を送り、訴訟の準備を始めるのが肝要です。
また、改正後の民法では、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、▽その合意があった時から1年を経過した時、▽その合意において当事者が協議を行う1年未満の期間を定めたときはその期間を経過した時、▽当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときはその通知の時から6か月を経過した時のいずれか早い時までの間は、時効は完成しません。そこで、時効が完成する前に権利についての協議を行う旨の合意書を作成しましょう。時効の
完成が猶予されている間にされた再度合意するとさらに時効の完成が猶予されます。ただし、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることはできません。催告との併用はできませんので、注意してください。連帯保証人がいる場合、消滅時効 の完成を阻止するには、主たる債務者だけでなく、連帯保証人に対しても請求をしていくことが必要です。債務承認書を作成する、内容証明 郵便を送るといった段階から弁護士が対応できますので、契約書、支払明細、債務者の資産・収入に関する資料などをお持ちになり、弁護士にご
相談ください。
Q6 :連帯保証人に対する時効の中断は必要?
消滅時効の完成猶予事由は債権者による裁判上の請求、更新事由は債務者による承認です(Q5)。連帯保証人がいる場合、主たる債務者が弁済をしている、主債務者に対して請求をしたといった時効の完成猶予の事由は、連帯保証人に対しても、その効力が生じます。
これに対し、連帯保証人が一部の弁済をしたといっても、それは主たる債務者に対して消滅時効の完成猶予の効力が及ぶわけではありません。保証債務は主たる債務を担保するものですから、主債務が成立しなければ保証債務も成立しませんし、主債務が消滅すれば保証債務も消滅します。とすると、連帯保証人が一部の弁済をしていたとしても、主たる債務者との関係では時効が進行しますので、主債務について消滅時効が完成すれば、保証債務も消滅します。
他方、連帯保証人に対して請求した場合は消滅時効の完成は猶予されるのでしょうか。改正後の民法では、
連帯保証人に対する履行の請求は、主債務者にはその効力は及ばず、別途主債務者にも請求をしなければ主債務者との関係で時効の完成は猶予されません。
時効の援用をする権利を有する者は、時効により直接利益を受ける者をいいます。改正後の民法は、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者として消滅時効の時効援用権者に含めています。したがって、連帯保証人は主たる債務の時効に関する援用権者となりますので、消滅時効を援用して主債務とともに保証債務も消滅したと主張することができます。連帯保証人が主債務の消滅時効完成前に一部の弁済をしていたとしても、原則として主債務の時効援用をすることができます。
契約書や支払明細、債務者の資産・収入に関する資料などをお持ちになり、お早めに弁護士にご相談ください。
Q7 :債権回収のために債権譲渡を活用するには?
売掛金の回収不安があり、それを確実なものとするため、現金払いではなく、債務者である取引先の第三債務者に対する債権を譲り受けることが考えられます。債権譲渡契約の内容については、次ページに債権譲渡契約書のサンプルを紹介しましたので、参照してください。
債権(将来債権を含む)は、譲り渡すことができるのが原則です。改正後の民法では、預貯金債権を除き、売買契約書や金銭消費貸借契約書に債権譲渡を禁止し、または制限する旨の特約が付されていたとしても、その債権譲渡は有効となります。ただし、その特約がされたことを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由を主張することができます。
そこで、債権譲渡を受ける場合は、まず譲渡人である債務者と第三債務者との金銭消費貸借契約や売買契約に債権譲渡禁止特約があるかどうかを確認すべきです。この特約自体は珍しいものではなく、確認を怠ると
重過失があると認定される可能性がありますので、留意してください。特に、現に発生していない将来債権を譲り受けるときは、対抗要件具備時(後述する譲渡人の通知または第三債務者の承諾)までに債権譲渡禁止特約が付されると、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなされるので、早めに対抗要件を具備する必要があります。
また、債権譲渡は、譲渡人である債務者が第三債務者に通知をし、または第三債務者が承諾をしなければ、第三債務者との関係で効力を有せず、特に「確定日付のある証書」によらなければ第三者にも効力を主張することができません。そのため、譲渡人が第三債務者に内容証明郵便で通知をするのが通常ですが、この発送を譲受人が代行することができます。ですから、取引先との間で債権譲渡契約を締結する際、日付を空欄にし、取引先の代表印を押捺した債権譲渡通知書を交付してもらった方がよいでしょう。なお、債権譲渡通知書では、債権の発生日、弁済期、金額等を特定します。
内容証明郵便による通知が到達し
た後に、第三債務者が譲渡人である債務者に支払いをしても法律上有効な弁済とはなりません。譲受人である債権者はあらためて第三債務者に弁済を求めることができます。
債権者が債権譲渡契約をして通知書の交付を受けていたとしても、そこから15日を経過した後に譲渡人である債務者の支払停止を知って債権譲渡通知書を発送した場合、破産手続開始後に否認されることがあります。
このリスクを回避するためには、
「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」により登記をすることが確実な方法です。譲渡人である債務者から見ても、第三債務者への債権譲渡通知は信用不安を引き起こす可能性があるので、登記にはメリットはあります。なお、債権譲渡の予約の通知をしたとしても、その後の予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に主張することはできないというのが最高裁判例ですから、この点からしても登記は有効な手段でしょう。
債権譲渡の登記がされたときは確定日付のある証書による通知があったものとみなされます。登記の日付が確定日付となります。ただ、登記
をするだけではあくまで第三者に対する対抗要件を具備したにすぎないので、第三債務者に弁済を求めるためには、譲渡人または譲受人が登記事項証明書を交付して通知をしなければなりません。
債権譲渡は既に発生している債権についてですが、将来発生する債権を含めて債権譲渡担保を設定することも考えられます。将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の有効性について、最高裁判決は、①「譲渡の目的とされる債権がその発生原因や譲渡に係る額等をもって特定される必要があること」、②「将来の一定期間内に発生し、又は弁済期が到来すべき幾つかの債権を譲渡の目的とする場合には、適宜の方法により右期間の始期と終期を明確にする」ことにより、「譲渡の目的とされる債権が特定されるべきである」と判断しています。債権譲渡担保を設定するに当たり、上記の特定がなされていれば有効となります。
債権譲渡担保においても、債権譲渡の対抗要件を具備しなければなりませんが、あくまで担保が目的なのですから、動産・債権譲渡対抗要件特例法による登記をすることが無難でしょう。
債権譲渡契約書
サンプル
譲渡人 (以下「甲」という。)と譲受人 (以下「乙」という。)は、次
のとおり、債権譲渡契約を締結する。
第1条(債権譲渡)
甲は、乙に対し、下記債権を譲渡し、乙はこれを譲り受けた。
記
甲と第三債務者との間での継続的取引契約に基づく 年 月 日から
年 月 日までの期間に発生した売買代金債権 円。
第2条(債権譲渡の通知)
甲は、債務者に対し、遅滞なく確定日付ある証書をもって債権譲渡の通知をしなければならない。
Q8 :債権回収をするために相殺を活用するには?
相殺とは、債務者が債権者に対して同種の債権を有する場合に、その債権によって、債権者に対して負っている債務を対当額において消滅させることです。
相殺をするには、「双方の債務が弁済期にあるとき」でなければなりません。また、両債権が同種の目的を有するものでなければならず、債務の性質が相殺を許すものでなければなりませんが、金銭債権であれば問題はありません。
このような相殺の要件を満たしていることを「相殺適状」といいますが、相殺適状にあれば、当事者の一方から相手方に対する意思表示によって相殺をすることができます。その意思表示には、条件または期限を付することができませんが、相手方の承諾は必要ありません。
また、時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺適状にあった場合は、相殺をすることができます。
さらに、債権が差し押さえを受けたとしても、その第三債務者は差し押さえ前に取得した債権または取得が差し押さえ後であっても差し押さ
え前の原因に基づいて生じた債権(他人の債権を取得した場合を除く)による相殺をすることができます。
したがって、相殺は、債権回収の有効な手段となり得ますし、担保としての機能を果たすともいえます。
なお、相殺禁止特約がある場合は相殺ができません。
前述したとおり相殺は単独で行うことができますが、その意思表示が相手方に到達しなければなりませんので、内容証明郵便をもって相殺通知書を発送するのが通常です。相殺通知書では、互いの債権の発生日、弁済期、金額等を特定します。
相手方の所在が不明で内容証明郵便が送達されなければ、普通郵便で送付することもありますが、個人については住民票や戸籍附票、法人については登記簿を調査したり、所在地とされていた場所の現況を調査したりした上で、裁判所等の掲示場と官報で公示をして意思表示を行います。とはいえ、相殺の意思表示は、双方の債務の弁済期が訪れたときにさかのぼって効力を生じますので、相手方の所在が判明した時点で内容
証明郵便をもって相殺の通知をしてもよいです。
もちろん公示による意思表示を経ずに、対当額で相殺をすると債務が消滅するのであれば、債務不存在確認訴訟を提起することもできます。
相手方が破産した場合でも相殺することはできますが、民事再生法は、債権の届け出をすべき期間の満了前に相殺適状にあれば同期間内に相殺をするよう制限していますので、相殺の時期については留意してくださ
い。
また、破産(再生)手続開始後に債務を負担したとき等は相殺が禁止されますので、相手方が倒産したときは相殺適状の時期が問題となります。
訴訟だけでなく、弁護士が代理人となって相殺の通知を発することもできますので、互いの債権の発生原因に関する資料(契約書等)、支払明細、相手方の所在地に関する資料などをお持ちになり、弁護士にご相談ください。
Q9 :債務者と弁済合意をしたときに作成する書面とは?
納品したのに取引先が売買代金を支払わないので、交渉したところ、分割払いをすることになった場合、 Q1の借用証書と同様の書面を作成することがあります。取引先が任意の履行をしてくれれば問題はないのですが、強制力はないので、支払いを怠っても直ちに財産を差し押さえることはできません。もちろん訴訟を起こして判決を得れば強制執行ができるのですが、それでは時間がかかってしまいます。
そのときは公証役場でxx証書を作成することがあります。作成手数料はかかりますが、債務者が金銭の一定の額の支払いを約定するとともに、債務者および連帯保証人が契約に定める金銭の支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服するとの条項 (強制執行認諾条項)を入れれば訴訟を起こさなくても強制執行をするこ
とができます。これを「債務名義」といいます。
また、簡易裁判所で訴え提起前の和解(即決和解)をすることも考えられます。和解が成立すると裁判所が和解調書を作成するのですが、和解調書は確定判決と同一の効力を有し、債務名義となります。費用はxx証書よりも安いのと、金銭の支払いだけでなく、物の引き渡しについても和解ができるのが特長です。
即決和解は、申立人および相手方が和解の期日に出頭しなければならず、xx証書よりも和解成立までに期間を要するので、早く書面を作成したいときはxx証書の方がよいでしょう。
xx証書の作成でも即決和解でも弁護士が代理人となることができますので、お早めにご相談ください。
Q10 :貸金の弁済がなされないとき、簡易な裁判手続を利用できるか?
貸金が60万円以下であれば少額訴訟、140万円未満であれば簡易裁判所の訴訟手続を利用することができます。和解ができる場合、借り主が争う可能性がある場合、裁判管轄が合意されている場合は、訴訟を選択することが考えられます。
これに対し、140万円以上であっても60万円以下であっても金額にかかわらず、支払督促という手続を利用することができます。支払督促は、金銭等の給付を目的とする請求について、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官が発します。支払督促は、債務者を審尋しないで発するので、簡易迅速な手続です。
債務者が支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは仮執行宣言が付され、債務者が仮執行宣言を付した支払督促の送達を受けた日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは、支払督促は確定判決と同一の効力を有することになり、債務名義となります。
ただし、支払督促は、債務者に送
達しなければならず、債務者に送達されたときに効力を生ずるので、債務者が所在不明であれば手続が無駄になります。
また、債務者は督促異議を申し立てることができ、督促異議にかかる請求については支払督促の申立てのときに訴えの提起があったものとみなされます。請求金額によって、支払督促を申し立てた簡易裁判所か、その地域を管轄する地方裁判所で通常訴訟を行うことになります。争いがあるときは手続が無駄になるばかりか、遠隔地での申立てをすると異義後の通常訴訟も遠隔地で対応しなければならなくなります。
どの手続を執るのが適当なのかは、弁護士に相談の上ご検討ください。
【弁護士費用】
債権回収事件を受任する場合、事件単位で費用を請求させていただくのが通常です。委任を受けた事件を担当したとき、実費や日当を除き、依頼者から、事件受任時に結果のいかんにかかわらず発生する「着手x」と、事件解決時に成功の程度に応じて発生する「報酬金」を、それぞれお支払いいただくこととなっています。
なお、消費税は別途付加します。
1. 債権回収事件
着手xは次のとおりです。
・交渉 10万~20万円
・訴訟(一審) 50万円まで(注)
(交渉から移行する場合30万~40万円)
(注)勝訴の見込みがかなり低いと認められる事案、特に複雑かつ困難な事案については、30万円の範囲内で着手金を増額することがあります。
報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として次表のとおり算定します。なお、債権回収事件に関する経済的利益の額は、金銭債権総額(利息および遅延損害金を含む)です。
経済的利益の額 | 報酬金 |
300万円以下の部分 | 20% |
300万円を超え3000万円以下の部分 | 15%+15万円 |
3000万円を超え3億円以下の部分 | 9%+195万円 |
仮差押・仮処分、強制執行をする場合は別途弁護士費用が掛かります。その他の事件に関する弁護士費用は個別に説明いたします。
2. 書類の作成手数料
① 契約書類の作成 :10万円以上30万円以下(定型の場合。非定型は加算)
② 内容証明郵便の作成 :3万円以上5万円以下
以上が基準となりますが、債権総額が高額になる場合は適正妥当な額に減額することを検討します。実情に合わせて協議をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
○銀座線「末広町駅」下車、出口4を出て、上野方向に進み、錬成通りを横断して左4軒目。徒歩2分。
○xxx線「湯島駅」下車、出口6を出て、御茶ノ水方向に進み、2つ目の路地を左に曲がり、中央通りに出たら右に曲がってすぐ。徒歩3分。
○JR山手線「御徒町駅」下車、xx1を出て中央通りを渡り、中央通り沿いを秋葉原方向に直進。徒歩6分。
○日比谷線「仲御徒町駅」下車、出口2を出て、昭和通りを秋葉原方向に進み、1つ目の路地を右に曲がり、中央通りを渡ったら左に曲がってすぐ。徒歩6分。
○大江戸線「上野徒町駅」下車、出口A4を出て中央通り沿いを秋葉原方向に直進。徒歩4分。
弁護士 xxxxx
xxxx法律事務所
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