PURMX Therapeutics への特許譲渡並びにライセンスに関する基本契約の締結 及び資本提携に関するお知らせ
2021 年8月3日
各 位
東 京 x x x 田 区 麹 町 三 丁 目 2 番 4 号 | ||
会 社 名 | 株式会社スリー・ディー・マトリックス | |
代 表 者 名 | 代 表 取 締 役 社 長 | 岡 x x |
(コード番号:7777) | ||
問 合 せ 先 | 取 締 役 | x x x x |
電 話 番 号 | 03 (3511)3440 |
PURMX Therapeutics への特許譲渡並びにライセンスに関する基本契約の締結 及び資本提携に関するお知らせ
当社は、株式会社 PURMX Therapeutics(パームエックス セラピューティックス、以下、「PURMX」)との間で、特許譲渡及びライセンスに関する基本契約を締結し、PURMX の株式の一部を取得することに合意しましたので、お知らせいたします。
1. 特許譲渡並びにライセンス契約及び資本提携に至った経緯
当社は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のサポートの下、国立大学法人広島大学(学長:xxxx)、同大学院医系科学研究科 xxxxxxらと「天然型マイクロ RNA*1」補充型核酸医薬*2「MIRX002」を共同開発しております。MIRX002 は、悪性胸膜中皮腫に効果のあるマイクロ RNA と、それをがん細胞に送達するための当社界面活性剤ペプチド*3
「A6K」を組み合わせたものです。2021 年 7 月 27 日に広島大学からの発表をご案内いたしましたように、この度アスベスト(石綿)が原因で発症することが知られている悪性胸膜中皮腫に対して、MIRX002 の医師主導治験を開始することとなりました。当社は本医師主導治験に A6K を提供いたします。
本医師主導治験開始までの準備構築、および今後の MIRX002 の開発推進に関して、広島大学のxxxx教授により設立されたベンチャー企業である PURMX が実施していくことになりました。当社は、xxxxらが発明し当社と広島大学で共同出願している MIRX002 に関する特許の当社持分を PURMX に譲渡し、MIRX002 の開発に関わる A6K の特許実施権をライセンスすることにいたしました。それに伴い、PURMX の株式の一部を当社が取得し、MIRX002 の製品化の後、一定程度のロイヤルティを受領する基本契約を締結いたしました。これにより、MIRX002の継続した共同研究開発を加速し、マイクロ RNA を含む核酸医薬の開発、A6K の用途可能性の探索を継続してまいります。
悪性胸膜中皮腫は、肺の胸膜と呼ばれる部分に発生するがんの一種であり、主にアスベスト(石綿)への曝露が原因で発生するといわれています。潜伏期間が 25~50 年と非常に長く、今後 2030 年頃が発生ピークとなり、年間 3000 人以上の罹患が予測されています。治療法として外科的切除、抗癌剤療法、免疫療法および放射線療法の組み合わせがあるものの、再発率は高く、予後が非常に悪い状況です。悪性胸膜中皮腫を根治し、患者さんの QOL(生活の質)を上げるような治療法が望まれています。本医師主導治験は、悪性胸膜中皮腫の患者を対象として胸腔内に MIRX002 を投与するものであり、安全性および忍容性を評価し、推奨用量を決定することを目的とした第 I 相試験*4 です。世界で初めて人に投与するファースト・イン・ヒューマン試験*5 であり、悪性胸膜中皮腫への有効性については探索的に検証します。
天然型マイクロ RNA は体内に投与すると瞬時に分解されてしまうため今まで開発が進んでいませんでしたが、当社界面活性剤ペプチド A6K と混合することでマイクロ RNA が天然型を保ったまま、分解からの保護と働きを調節したいがん細胞への送達を同時に達成し、本核酸医薬の開発に至りました。さらに、MIRX002 のマイクロ RNA は、悪性胸膜中皮腫のがん細胞だけでなく、再発の原因となる「がん幹細胞*6」や「抗がん剤耐性がん細胞」にも顕著な効果を示すことがわかっています。これにより、悪性胸膜中皮腫の根治が期待される画期的な治療です。当社は、このような核酸医薬によるがんの治療は、今後さらに広がっていくと考えており、その中で当社のドラッグ・デリバリー・システム(以下、「DDS」)技術が幅広く核酸の送達に活用されていく可能性があります。
なお、当社が提供する界面活性剤ペプチド「A6K」は、当社が開発中の難治性乳癌に対する siRNA 核酸医薬「TDM-812」においても既に用いられており、医師主導治験において人での核酸医薬の送達を実証済みです。
2.特許譲渡並びにライセンスに関する基本契約及び資本提携の内容
当社は、核酸医薬からなる抗がん剤 MIRX002 の臨床試験開始に向けて、PURMX に対して、広島大学と共同出願している「miRNA を含むがん治療用医薬組成物」に関する特許の当社持分を譲渡し、当社界面活性剤ペプチド A6K をドラッグデリバリーに利用した抗がん剤 MIRX002 に関する特許実施権を同社にライセンスいたします。弊社はその権利許諾の対価として抗がん剤 MIRX002 の製品化の後、一定程度のロイヤルティを受領する予定になっております。
また、今後も共同で親密に製品開発を推進していくことを目的として、PURMX に出資し同社株式の 10%を取得することといたしました。
3. 相手先の概要
(1)商号 | 株式会社 PURMX Therapeutics |
(2)本店所在地 | xxxxxxxxx 0 xx 0 x 0 x |
(3)代表者の役職・氏名 | 代表取締役社長 xxxx |
(4)事業内容 | 医薬品等の開発、製造、売買及び輸出入 |
(5)資本金の額 | 5百万円 |
(6)設立年月日 | 2021 年 1 月 27 日 |
(7)直近事業年度の純資産 | 4 百万円 | |
(8)直近事業年度の総資産 | 4 百万円 | |
(9)大株主及び持株比率 | xxxx 100% | |
(10)当社と当該会社との関係 | 資本関係 | 該当事項はありません。 |
人的関係 | 該当事項はありません。 | |
取引関係 | 該当事項はありません。 | |
関連当事者への 該当状況 | 該当事項はありません。 |
4.今後の見通し
今後、当社は日本国内で行われる MIRX002 の臨床試験をするために必要な界面活性剤ペプチド A6K を PURMX に対して有償支給する予定です。また、PURMX が A6K をドラッグデリバリーに利用した抗がん剤 MIRX002 を製品化した際は、契約に基づきロイヤリティ等が当社に支払われる予定です。
なお、本年度の通期業績に与える影響及び中長期への業績への影響につきましては現在精査中ですので、影響額が確定次第速やかに開示いたします。
(参考)当期業績予想及び前期実績
(単位:百万円)
事業収益 | 営業利益 | 経常利益 | 親会社株主に帰属する当期純利益 | |
当期連結業績予想 (2022 年4月期) | 2,379 | △1,746 | △1,751 | △1,871 |
前期連結実績 (2021 年4月期) | 1,024 | △2,648 | △1,900 | △2,012 |
以 上
【参考(語句説明)】
*1:マイクロ RNA
生体内に存在する 20~25 塩基からなる微小な RNA であり、他の遺伝子の発現を調節することで様々な生命現象を制御する分子です。人の体内には、判明しているだけでも 2500 種類以上のマイクロ RNA が存在しています。
*2:核酸医薬
核酸医薬とは、異常な遺伝子の働きに対し、それを抑制するように作用する新しい医薬品です。様々な遺伝子に対する核酸医薬が注目されていますが、現在のところ悪性胸膜中皮腫に対する治療薬として承認されている核酸医薬はなく、新たな開発が期待されております。マイクロ RNA は、人の細胞で合成される核酸の一種であることから、「天然型」の核酸と呼ばれています。
*3:界面活性剤ペプチド
6-10 残基程度のアミノ酸から構成されるペプチドで、 疎水性部分と電荷をもつ部分が分子内の共存することにより界面活性剤としての性質を示します。水溶液中で自己組織化されることでナノチューブを形成し、マイクロ RNA をはじめとする各種の分子と複合体を形成します。それにより体内での核酸の分解を保護したり、がん細胞への送達を達成できることがわかっています。
*4: 第Ⅰ相試験
新しい薬をはじめて人(患者さん)に投与する段階の試験。少数の患者さんで、投与量を段階的に増やしていき、薬の安全性と適切な投与量、投与方法を調べます。通常、標準的治療法のないがん患者さんが対象となります。
*5: ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験
新しい薬を全世界ではじめて人(患者さん)に投与する段階の試験。人における投与経験がないため、第I 相試験のなかでも特に緻密xx経験が要求されます。これまでの医薬品開発では、先に海外で FIH 試験とその後の開発が進んでから日本での開発が行われることが多く、ドラッグラグを生む一因となっていました。
*6:がん幹細胞
がんの転移や治療抵抗性を担う細胞集団といわれ、いわゆるがんの悪性度を司る親玉細胞のことです。がん細胞を生み出す元となる細胞ともいわれ、抗がん剤などの既存の治療法が効果を発揮しにくいとされています。がんの根治のため、核酸医薬をはじめとしたがん幹細胞を標的とする新規の薬剤の開発が望まれています。